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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】リチウムバッテリー用の液体電解質
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/056 20100101AFI20220214BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20220214BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20220214BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20220214BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220214BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20220214BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20220214BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20220214BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20220214BHJP
【FI】
H01M10/056
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/052
H01M10/054
H01G11/64
H01G11/62
H01G11/60
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019503447
(86)(22)【出願日】2017-07-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2017068709
(87)【国際公開番号】W WO2018019804
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】16181016.3
(32)【優先日】2016-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ペトルッチ, シルヴィア リータ
(72)【発明者】
【氏名】マッコーネ, パトリツィア セレネッラ
(72)【発明者】
【氏名】ダーメン, リベロ
(72)【発明者】
【氏名】ハモン, クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】オリアーニ, アンドレーア ヴィットーリオ
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-520956(JP,A)
【文献】特表2011-530565(JP,A)
【文献】特表2016-500373(JP,A)
【文献】特開2016-018770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0028114(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102675058(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05- 10/0587
H01M 10/36- 10/39
H01G 9/00
H01G 11/00- 11/86
C07B 31/00-409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体組成物[組成物]であって、
(a)2つの鎖末端を有する少なくとも1つの(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(Rpf)]を含む少なくとも1つの(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー]であって、少なくとも1つの鎖末端が鎖[鎖(R]を含む少なくとも1つのポリマー(P)と
(b)少なくとも1つのリチウム塩と、
(c)任意選択により少なくとも1つの溶媒と、
(d)任意選択により少なくとも1つのさらなる成分とを含み、
前記鎖(R pf )は、式:
-O-D-(CFX z1 -O(R )(CFX z2 -D -O-
[式中、
z1及びz2は、互いに等しいか又は異なり、1以上であり;
及びX は、互いに同じであるか異なり、-F又は-CF であるが、
ただし、z1及び/又はz2が1より大きい場合、X 及びX は、-Fであることを条件とし;
D及びD は、互いに等しいか又は異なり、1~6個の炭素原子を含むアルキレン鎖であり、前記アルキレン鎖は、1~3個の炭素原子を含む少なくとも1つのペルフルオロアルキル基で任意選択的に置換されており、
(R )は、式:
(R -IIA) -[(CF CF O) a1 (CF O) a2 ]-
(式中、
a1及びa2は、独立して、数平均分子量が400~10,000であるような0以上の整数であり;a1及びa2は共にゼロではなく、比a1/a2は0.1~10に含まれる)
の鎖である]
の鎖であり、
前記鎖(R )は、以下の式(R -I)~(R -III):
(R -I) -(CH CH O) j1 -H、
(R -II) -[CH CH(CH )O] j2 -H、
(R -III) -[(CH CH O) j3 -(CH CH(CH )O) j4 j(x) -H
(式中、
j1及びj2は、それぞれ独立して、1~50の整数であり;
j3、j4、及びj(x)は、j3とj4との合計が2~50であるような1~25の整数である)
のうちの1つに従う、液体組成物[組成物]。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポリマー(P)が、組成物(C)の全重量に基づいて5~90重量%の量である、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項3】
前記リチウム塩が、LiPF、LiBF、LiClO、リチウムビス(オキサラト)ボラート(「LiBOB」)、LiN(CFSO(LiTFSI)、LiN(CSO、M[N(CFSO)(RSO)](RはC、C、CFOCFCFである)、LiAsF、LiC(CFSO、4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾール(LiTDI)、及びそれらの組合せ又は混合物を含む群において選択される、請求項1又は2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのリチウム塩が、0.5モル/リットル超の濃度である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの溶媒が、任意選択によりフッ素化された脂肪族及び環状カーボネート、脂肪族及び環状エーテル、グライム、イオン液体、及びそれらの混合物を含む群において選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの溶媒が、組成物の全重量に基づいて1~80重量%の量である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項7】
前記さらなる成分が、溶媒、蒸気圧抑制剤、過充電防止剤、脱水剤、脱酸剤、固体電解質界面(SEI)形成剤等を含む群において選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項8】
前記さらなる成分のそれぞれが、組成物の全重量に基づいて0.01~5重量%の量である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項9】
少なくとも1つのアノードと、少なくとも1つのカソードと、セパレーターと、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物(C)を含む液体電解質とを含む組立体。
【請求項10】
請求項に記載の組立体を含む電気化学デバイス。
【請求項11】
前記電気化学デバイスが、Na、Li、Al、Ca、Mg、Zn、K、Y二次バッテリーによるアルカリ又はアルカリ土類二次バッテリー;電気二重層キャパシタ;及びエレクトロクロミックウインドウを含む群において選択される、請求項10に記載の電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年7月25日に出願された欧州特許出願公開第16181016.3号からの優先権を主張するものであり、この出願の全ての内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、リチウムバッテリーにおいて使用される新規な液体電解質に関し、前記電解質は、リチウム塩と(ペル)フルオロポリエーテル(PFPE)ポリマーとを含む。
【背景技術】
【0003】
二次電池、とりわけリチウムバッテリー用の非水電解質は典型的に、カーボネート系溶媒中に溶解されたリチウム塩を含む。しかしながら、カーボネート系溶媒は通常、低い引火点を有し、易燃性であり、したがってそれらはバッテリーの安全性に対する大きな関心を招く。
【0004】
このような問題を克服するために、カーボネート系溶媒を1つ以上のより引火性の低い溶媒と共に含む溶媒の組合せが当技術分野において開示されている。
【0005】
例えば、米国特許出願公開第2011/0020700号明細書(ASAHI GLASS COMPANY LIMITED)には、リチウム塩と、少なくとも1つのハイドロフルオロエーテルと、電解質の全量に基づいて最大でも10体積%の量の、カーボネート官能基を含む少なくとも1つの化合物とを含む、二次電池用の非水電解質が開示されている。
【0006】
米国特許出願公開第2010/0047695号明細書(CALIFORNIA INSTITUTE OF TECHNOLOGY;UNIVERSITY OF SOUTHERN CALIFORNIA)には、エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、フッ素化補助溶媒と、難燃剤添加剤と、リチウム塩との混合物を含むリチウムイオン電気化学セルにおいて使用するための電解質が開示されている。フッ素化補助溶媒は、低い分子量を有するフッ素化液体から選択される。
【0007】
(ペル)フルオロポリエーテルポリマー(PFPE)は、例えば米国特許出願公開第20020127475号明細書(AUSIMONT S.P.A.)において電解組成物のための添加剤として当技術分野において開示されている。
【0008】
もっと最近では、国際公開第2014/062898号パンフレット(THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL)には、バッテリー用の液体及び固体電解質組成物が共に開示されている。いくつかの実施形態において、組成物は、(a)ペルフルオロポリエーテル(PFPE)とポリエチレンオキシド(PEO)とを含む均質な溶媒系と、(b)溶媒系に溶解されたアルカリ金属イオン塩とを含む液体電解質組成物である。一般的には、組成物は、付加的な溶媒の非存在下でPFPE、PEO、アルカリ金属塩及び任意選択により光開始剤を組み合わせることによって製造されると考えられている。実施例2において、PFPE/PEO液体ブレンドは、PFPE、PFPE/PEO及びPEOブレンドにリチウム塩10重量%を直接に添加して約12時間の間室温で撹拌することによって調製されると考えられている。しかしながら、このようなブレンドの特性決定のデータはこの特許出願において記載されていない。
【0009】
国際公開第2014/204547号パンフレット(THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL;THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA)には、(a)1つ又は2つのカーボネート末端基がそれに共有結合したフルオロポリマーを含む均質な溶媒系と、(b)前記溶媒系に溶解されたアルカリ金属塩とを含む液体又は固体電解質組成物が開示されている。フルオロポリマーカーボネートには、以下の式(I)又は(II):
R’O-C(=O)-O-R-O-C(=O)-OR’’(I)
R’O-C(=O)-O-R(II)
(式中、Rは、0.2、0.4又は0.5~5、10又は20Kg/モルの重量平均分子量を有するフルオロポリマーであり、R’及びR’’はそれぞれ独立に、脂肪族基、芳香族基又は混合脂肪族及び芳香族基から選択される)を有する化合物が含まれる。
【0010】
最近の文献の記事には、リチウムバッテリー用の電解質としてエトキシル化アルコール末端ペルフルオロポリエーテルとLiTFSIとの混合物が言及されている(DEVAUX,Didier,et al.Conductivity of carbonate- and perfluropolyether-based electrolytes in porous separators.Journal of Power Sources.20/05/2016,vol.323,p.158-165)しかしながら、結論において、ニートPFPEE10H-系電解質、すなわちエトキシル化アルコール末端ペルフルオロポリエーテルの導電率は、溶媒としてエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合物中にリチウム塩としてLiPF6を含有する従来の電解質の導電率よりも2~3桁低いと著者は言及した。
【0011】
米国特許出願公開第20160028114号明細書(SEEO INC.,)には、電気化学セルにおいて使用するための電極組立体が開示されている。2つの異なった実施形態によれば、フッ素化カソライトは、
- それに共有結合した1つ又は2つの末端ウレタン基、又は
- それに共有結合した1つ又は2つの末端環状カーボネート基
のどちらかをそれぞれ有する、ペルフルオロポリエーテルの混合物を含有する。別の実施形態によれば、この文献には、PFPE-ジオール(求核試薬)を求電子性PEG分子と反応させることによって得られた、PFPE及びPEOをベースとした交互共重合体が開示されており、以下の一般式:
-[O-(CHCHO)-(CHXCHO)-PFPE]
(式中、rは1~10,000であり;sは1~10,000であり;及びtは1~10,000である)を有する。
【0012】
しかしながら、この文献は、上記の式に従うポリマーのいずれの例も提供せず、バッテリー内で電解質として使用されるときにそれらの性質をたいして提供しない。
【発明の概要】
【0013】
ジメチルカーボネートは引火性液体であり、したがって、とりわけリチウムバッテリー用の液体電解質中の溶媒としてのその使用は避けられるのがよく、又は少なくともそれは小さな濃度で使用されるのがよいことを出願人はよく認識している。
【0014】
出願人は、易燃性及び電極の浸蝕などの問題がなく良い導電率を示す、リチウムバッテリー用の液体電解質として使用される新規な組成物を提供する課題に直面している。
【0015】
したがって、第1の態様では、本発明は、
(a)2つの鎖末端を有する少なくとも1つの(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(Rpf)]を含む少なくとも1つの(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマーP]であって、少なくとも1つの鎖末端が式-[CH(J)CHO]na[CHCH(J)O]na’-の鎖[鎖(R)]
(式中、
それぞれのJが独立に水素、直鎖若しくは分岐状アルキル又はアリール、好ましくはメチル、エチル又はフェニルであり、
na及びna’がそれぞれ独立にゼロであるか又は1~50の整数であるが、ただし、na+na’が1~50であることを条件とする)を含む少なくとも1つの(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマーP]と、
(b)少なくとも1つのリチウム塩と、
(c)任意選択により少なくとも1つの溶媒と、
(d)任意選択により少なくとも1つのさらなる成分とを含む、液体組成物[組成物(C)]に関する。
【0016】
第2の態様において、本発明は、少なくとも1つのアノードと、少なくとも1つのカソードと、セパレーターと、上で定義した組成物Cを含む、好ましくはからなる液体電解質とを含む組立体に関する。
【0017】
有利には、前記組立体は電気化学デバイスにおいて使用される。
【0018】
このように、さらなる態様において、本発明は、上で定義した組立体を含む電気化学デバイスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書及び以降の請求項において、
- 例えば「ポリマー(P)」などのような表現における、式を特定する記号又は数字を囲む括弧の使用は、本文の残りから記号又は数字をよりよく区別する目的を有しているに過ぎず、したがって、前記括弧は省略することもでき;
- 頭字語「PFPE」は、「(ペル)フルオロポリエーテル」を表し、名詞として用いられる場合、文脈に依存して、単数形と複数形のいずれかを意味することが意図されており;
- 用語「(ペル)フルオロポリエーテル」は、完全に又は部分的にフッ素化されたポリエーテルを示すことが意図されており;
- 用語「セパレータ」は、電気化学セル中の反対極性の電極を電気的及び物理的に分離し、かつそれらの間を流れるイオンに対して透過性である、ポリマー材料を表すように意図される。
【0020】
好ましくは、前記鎖(Rpf)は、式-O-D-(CFXz1-O(R)(CFXz2-D-O-の鎖であり、
式中、
z1及びz2は、互いに等しいか又は異なり、1以上であり;
及びXは、互いに同じであるか異なり、-F又は-CFであるが、
ただし、z1及び/又はz2が1より大きい場合、X及びXは、-Fであることを条件とし;
D及びDは、互いに等しいか又は異なり、1~6個、更により好ましくは1~3個の炭素原子を含むアルキレン鎖であり、前記アルキル鎖は、1~3個の炭素原子を含む少なくとも1つのペルフルオロアルキル基で任意選択的に置換されており;
(R)は、繰り返し単位R°を含み、好ましくはそれからなり、前記繰り返し単位は、
(i)-CFXO-(式中、XはF又はCFである);
(ii)-CFXCFXO-(式中、Xは、出現ごとに等しいか又は異なり、F又はCFであり、ただし、Xの少なくとも1つは、-Fであることを条件とする);
(iii)-CFCFCWO-(式中、Wのそれぞれは、互いに同じであるか異なり、F、Cl、Hである);
(iv)-CFCFCFCFO-;
(v)-(CF-CFZ-O-(式中、jは0~3の整数であり、Zは一般式-O-R(f-a)-Tの基であり、R(f-a)は、0~10の数の繰り返し単位を含むフルオロポリオキシアルケン鎖であり、前記繰り返し単位は、以下:-CFXO-、-CFCFXO-、-CFCFCFO-、-CFCFCFCFO-(Xのそれぞれは、独立して、F又はCFである)の中から選択され、Tは、C~Cペルフルオロアルキル基である)からなる群から独立に選択される。
【0021】
好ましくは、z1及びz2は、互いに等しいか又は異なり、1~10、より好ましくは1~6、更により好ましくは1~3である。
【0022】
好ましくは、D及びDは、互いに等しいか又は異なり、式-CH-、-CHCH-、又は-CH(CF)-の鎖である。
【0023】
好ましくは、鎖(R)は、以下の式:
(R-I)
-[(CFXO)g1(CFXCFXO)g2(CFCFCFO)g3(CFCFCFCFO)g4]-
(式中、
- Xは、-F及び-CFから独立して選択され;
- X、Xは、互いに及び出現ごとに等しいか又は異なり、独立して-F、-CFであるが、Xの少なくとも1つは-Fであることを条件とし;
- g1、g2、g3、及びg4は、互いに等しいか又は異なり、独立して、g1+g2+g3+g4が2~300、好ましくは2~100の範囲であるような0以上の整数であり;g1、g2、g3及びg4の少なくとも2つがゼロと異なる場合、異なる繰り返し単位は、鎖に沿って概して統計的に分布している)
を満たす。
【0024】
より好ましくは、鎖(R)は、式:
(R-IIA) -[(CFCFO)a1(CFO)a2]-
(式中、
a1及びa2は、独立して、数平均分子量が400~10,000、好ましくは400~5,000であるような0以上の整数であり;a1及びa2は共に好ましくはゼロではなく、比a1/a2は好ましくは0.1~10に含まれる);
(R-IIB) -[(CFCFO)b1(CFO)b2(CF(CF)O)b3(CFCF(CF)O)b4]-
(式中、
b1、b2、b3、b4は、独立して、数平均分子量が400~10,000、好ましくは400~5,000であるような0以上の整数であり;好ましくは、b1は0であり、b2、b3、b4は0より大きく、ここで、比b4/(b2+b3)は、1以上である);
(R-IIC) -[(CFCFO)c1(CFO)c2(CF(CFcwCFO)c3]-
(式中、
cw=1又は2であり;
c1、c2、及びc3は、独立して、数平均分子量が400~10,000、好ましくは400~5,000であるように選択される0以上の整数であり;好ましくは、c1、c2及びc3は、全て0より大きく、比c3/(c1+c2)は、概して0.2より小さい);
(R-IID) -[(CFCF(CF)O)]-
(式中、
dは、数平均分子量が400~10,000、好ましくは400~5,000であるような0より大きい整数である);
(R-IIE) -[(CFCFC(HalO)e1-(CFCFCHO)e2-(CFCFCH(Hal)O)e3]-
(式中、
- Halは、出現ごとに等しいか又は異なり、フッ素及び塩素原子から選択されるハロゲン、好ましくはフッ素原子であり;
- e1、e2、及びe3は、互いに等しいか又は異なり、独立して、(e1+e2+e3)の和が2~300に含まれるような0以上の整数である)
の鎖から選択される。
【0025】
更により好ましくは、鎖(R)は、以下の式(R-III):
(R-III) -[(CFCFO)a1(CFO)a2]-
(式中、
a1、及びa2は、数平均分子量が400~10,000、好ましくは400~5,000であるような0より大きい整数であり、ここで、比a1/a2は、概して0.1~10、より好ましくは0.2~5に含まれる)
に従う。
【0026】
好ましくは、前記鎖(R)において、na+na’は1~45、より好ましくは4~45、さらにより好ましくは4~30である。好ましい実施形態はna+na’が4~15である実施形態である。
【0027】
より好ましくは、前記鎖(R)は、
(Ra-I) -(CHCHO)j1-H、
(Ra-II) -[CHCH(CH)O]j2-H、
(Ra-III) -[(CHCHO)j3-(CHCH(CH)O)j4j(x)-H
(式中、
j1及びj2は、それぞれ独立に、1~50、好ましくは2~50、より好ましくは3~40、更により好ましくは4~15、また更により好ましくは4~10の整数であり;
j3、j4、及びj(x)は、j3とj4との合計が2~50、より好ましくは3~40、更により好ましくは4~15、また更により好ましくは4~10であるような1~25の整数である)
から選択される。
【0028】
指数としてのj3及びj4を有する繰り返し単位は、ランダムに分布していてもよく、又はこれらが並んでブロックを形成していてもよい。
【0029】
ポリマーPは、Solvay Specialty Polymers(Italy)から市販されており、また国際公開第2014/090649号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY S.P.A.)に開示の方法に従って得ることができる。
【0030】
好ましくは、前記少なくとも1つのポリマーPは、組成物Cの全重量に基づいて5~90重量%、より好ましくは10~85重量%の量である。
【0031】
好ましくは、前記リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiClO、リチウムビス(オキサラト)ボラート(「LiBOB」)、LiN(CFSO(LiTFSI)、LiN(CSO、M[N(CFSO)(RSO)](RはC、C、CFOCFCFである)、LiAsF、LiC(CFSO、4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾール(LiTDI)、及びそれらの組合せ又は混合物を含む群において選択される。
【0032】
好ましくは、組成物Cは、前記少なくとも1つのリチウム塩を0.5モル/リットル超、より好ましくは0.5~2モル/リットルの濃度で含む。
【0033】
前記少なくとも1つの溶媒は、存在しているとき、非水溶媒である。
【0034】
好ましくは、前記非水溶媒は、任意選択によりフッ素化された脂肪族及び環状カーボネート、脂肪族及び環状エーテル、グライム、イオン液体、及びそれらの混合物を含む群において選択される。脂肪族及び環状カーボネートがより好ましい。
【0035】
より好ましくは、前記脂肪族カーボネートは、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート、メチルイソプロプリルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート、エチルイソプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、3-フルオロプロピルメチルカーボネート及びそれらの混合物を含む、好ましくはからなる群において選択される。エチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びメチルエチルカーボネートがより好ましい。
【0036】
ジメチルカーボネート(DMC)が本発明による液体組成物中で溶媒として使用される実施形態もまた、本発明によって包含されるが、にもかかわらず、易燃性の問題を避けるためにそれは好ましくは異なった溶媒と取り替えられる。
【0037】
より好ましくは、前記環状カーボネートは、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、4-クロロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-トリフルオロメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、ジメチルビニレンカーボネート、ビニレンカーボネート及びそれらの混合物を含む、好ましくはからなる群において選択される。エチレンカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートがより好ましい。
【0038】
より好ましくは、前記少なくとも1つの溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びそれらの混合物から選択される。
【0039】
好ましくは、前記少なくとも1つの溶媒は、前記組成物Cの総重量に基づいて1~80重量%、より好ましくは5~70重量%、更に好ましくは10~70重量%の量である。
【0040】
さらなる適した成分を前記組成物(C)に添加することができる。前記さらなる成分の量は、電気化学デバイスの当業者によって個別的に調節することができる。
【0041】
適したさらなる成分(添加剤とも称される)は、溶媒、蒸気圧抑制剤、過充電防止剤、脱水剤、脱酸剤、固体電解質界面(SEI)形成剤等を含む群において選択される。
【0042】
好ましくは、前記さらなる成分のそれぞれは、組成物Cの全重量に基づいて0.01~5重量%の量で使用される。
【0043】
好ましくは、適した溶媒は、アルキルプロピオネート、ジアルキルマロネート及びアルキルアセテートなどのカルボン酸エステル;ガンマ-ブチロラクトンなどの環状エステル;プロパンスルホンなどの環状スルホネート;アルキルスルホネート;アルキルホスフェート;及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0044】
好ましくは、適した蒸気圧抑制剤は、例えばn-CCHCH、n-C13CHCH、n-C13H、n-C17H及びそれらの混合物など、4~12個の炭素原子を有するフッ素化アルカンを含む群から選択される。
【0045】
好ましくは、前記過充電防止剤は、ビフェニル、アルキルビフェニル、テルフェニル、部分的に水素化されたテルフェニル、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼ、2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、及びそれらの混合物を含む群において選択される。
【0046】
好ましくは、前記脱水剤は、硫酸マグネシウム、カルシウム水和物、ナトリウム水和物、カリウム水和物、リチウムアルミニウム水和物及びそれらの混合物を含む群において選択される。
【0047】
好ましくは、前記組成物Cは、前記ポリマーPと前記少なくとも1つのリチウム塩とを一緒に混合することによって調製される。
【0048】
また、上に記載された溶媒のような少なくとも1つの溶媒を少なくとも1つのポリマーPと少なくとも1つのリチウム塩とを含む混合物に添加することができる。
【0049】
典型的に、最初にリチウム塩を上で定義した少なくとも1つの溶媒中に溶解し、次にポリマーPを混合物に添加する。
【0050】
また、上に記載された成分のような少なくとも1つのさらなる成分を少なくとも1つのポリマーPと、少なくとも1つのリチウム塩と少なくとも1つの溶媒とを含む混合物に添加することができる。
【0051】
アノード(負極)のための適した活性材料は、
- リチウムをホストする粉末、フレーク、繊維又は球体(例えば、メソカーボンマイクロビーズ)などの形態で典型的に存在する、リチウムを挿入することができる黒鉛炭素;
- リチウム金属;
- とりわけ米国特許第6203944号明細書(3M INNOVATIVE PROPERTIES)及び/又は国際公開第00/03444号パンフレット(MINNESOTA MINING)において記載されたリチウム合金組成物など、リチウム合金組成物;
- 一般に式LiTi12で表される、リチウムチタネート(これらの化合物は、可動イオン、すなわち、Liを受け入れるときに低レベルの物理的膨脹を有する、「ゼロ歪」挿入材料と一般に考えられる);
- 高いLi/Si比のケイ化リチウムとして一般に知られるリチウム-ケイ素合金、特に式Li4.4Siのケイ化リチウム;
- 式Li4.4Geの結晶相を含むリチウム-ゲルマニウム合金
からなる群から選択される。
【0052】
アノードは、当業者によく知られているであろう添加剤を含むことができる。それらの中でも、特に、カーボンブラック、グラフェン又はカーボンナノチューブを挙げることができる。当業者に認識されるであろうように、負極は、箔、板、棒状体、ペーストなどの任意の好都合な形態で、又は導電性集電体もしくは他の好適な支持体上に負極材料の塗膜を形成することによって作製された複合体として存在してもよい。
【0053】
二次電池の代表的なカソード(正極)材料としては、ポリマーバインダー(PB)、粉末電極材料、ならびに場合により導電性付与剤及び/又は粘度調整剤を含む複合体が挙げられる。
【0054】
正極のための活性材料は好ましくは、一般式LiMY(式中、Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr、及びVなどの少なくとも1種の遷移金属種を表し、且つYは、O又はSなどのカルコゲンを表す)で表される金属カルコゲン化物複合体を含む。これらの中でも、一般式LiMO(式中、Mは、前述と同じである)で表されるリチウム系複合金属酸化物を用いることが好ましい。それらの好ましい例としては、LiCoO、LiNiO、LiNiCo1-x(0<x<1)及びスピネル構造化LiMnを挙げることができる。
【0055】
別の選択肢として、リチウム-イオン二次バッテリー用の正極を形成する場合、活性材料は、式
M1M2(JO4)1-f
のリチウム化又は部分的にリチウム化した遷移金属オキシアニオン系電気活性材料を含んでもよく、式中、
M1はリチウムであり、M1金属の20%未満を占める別のアルカリ金属によって部分的に置換されていてもよく、
M2は、Fe、Mn、Ni又はそれらの混合物から選択される+2の酸化レベルの遷移金属であり、+1~+5の間の酸化レベルで且つ0を含めて、M2金属の35%未満を占める1つ以上の付加的な金属によって部分的に置換されていてもよく、
JO4は、任意のオキシアニオンであり(JはP、S、V、Si、Nb、Mo又はそれらの組合せのどれかである)、
Eは、フッ化物、水酸化物又は塩化物アニオンであり、
fは、概して0.75~1の間に含まれる、JO4オキシアニオンのモル分率である。
【0056】
上で定義されたようなMM2(JO4)fE1-f電気活性材料は、好ましくはホスフェートベースであり、規則正しい又は変性されたカンラン石構造を有してもよい。
【0057】
より好ましくは、活性材料は、式Li(FeMn1-x)PO(式中、0≦x≦1であり、xは、好ましくは1である(すなわち、式LiFePOのリチウム鉄ホスフェートである))のホスフェート系電気活性材料である。
【0058】
LiCoO又はLiFePOなど、限られた電子導電率を示す活性材料が使用されるとき、正極は好ましくはまた、得られた複合電極の導電率を改良するために、導電性付与添加剤を含有する。前記導電性付与添加剤の例としては、カーボンブラック、黒鉛微粉末及び繊維などの、炭素質材料、ならびにニッケル及びアルミニウムなどの、金属の微粉末及び繊維が挙げられてもよい。
【0059】
ポリマーバインダー(PB)について、好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)ポリマー、更に詳細にはVDFから誘導される繰り返し単位と次式
(式中、
R1、R2、R3のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立に水素原子又はC-C炭化水素基であり、及び
OHは、水素原子、又は少なくとも1つの水酸基を含むC~C炭化水素部位である)の少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー[モノマー(MA)]から誘導される繰り返し単位0.01~5モル%とを含むVDFポリマーなど、当技術分野で周知のポリマーを使用することができる。
【0060】
電気二重層キャパシタについて、活性物質は好ましくは、0.05~100μmの平均粒子(又は繊維)直径及び100~3000m/gの比表面積を有する、すなわち、バッテリーのための活性物質のそれらと比較して比較的小さな粒子(又は繊維)直径及び比較的大きい比表面積を有する、活性炭、活性炭繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、シリカ又はアルミナ粒子などの微粒子又は繊維を含む。
【0061】
本発明の電気化学電池用セパレーターは、有利には、電気化学電池に使用するのに適した電気絶縁複合セパレーターであり得る。
【0062】
典型的に、セパレーターは、本発明による組成物Cでコート/含浸される1つの基材層[層S]を含む。
【0063】
「基材層[層S]」という用語は、単一層からなる単層基材又は互いに隣接した少なくとも2つの層を含む複数層基材のどちらかを意味することが本明細書によって意図される。
【0064】
層Sは、非多孔質の基材層又は多孔質の基材層であることができる。基材層が複数層基材である場合、前述の基材の外層は、非多孔質の基材層又は多孔質の基材層であることができる。
【0065】
「多孔質の基材層」という用語は、本明細書においては、有限寸法の孔を含む基材層を意味することを意図する。
【0066】
層Sは典型的に、例えば重量/密度比に基づいた方法によって又は、例えばASTM(米国材料試験協会)D-2873に従う液体もしくはガス吸収方法又は当業者に公知の同等の方法を使用して測定されるとき、有利には少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%又は少なくとも40%及び有利には最大でも90%、好ましくは最大でも80%の多孔度を有する。
【0067】
層Sの厚さは、特に限定されないが、典型的には3~100マイクロメートル、好ましくは5~50マイクロメートルである。
【0068】
層Sは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレン、ナフタリン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素化ポリマー、例えばPVDF及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、電気化学デバイス内のセパレーターのために一般的に使用される任意の多孔質基材又は布によって製造することができる。好ましくは、層Sはポリエチレン又はポリプロピレンから製造される。
【0069】
有利には、本発明の組立体は、Na、Li、Al、Ca、Mg、Zn、K、Y二次バッテリーによるアルカリ又はアルカリ土類二次バッテリーなどのバッテリー(リチウムバッテリーがより好ましい);電気二重層キャパシタ(「スーパーキャパシタ」とも称される);及びエレクトロクロミックウインドウから好ましくは選択される、電気化学デバイスにおいて使用される。
【0070】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0071】
本発明は、以下の実験の項に含まれる実施例によってより詳細に以下に例証され、実施例は、例証的であるに過ぎず、本発明の範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【実施例
【0072】
原材料
以下の材料はSigma-Aldrichから得られた:
エチレンカーボネート(EC)
ジメチルカーボネート(DMC)
リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(LiTFSI)
リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)
【0073】
以下の材料はSolvay Specialty Polymers Italy S.p.A.から得られた:
Fluorolink(登録商標)ZDOL(平均数分子量Mn=1000)-非アルコキシ化PFPEポリマー
Fluorolink(登録商標)E10-H(平均数分子量Mn=1700)-2より低いエトキシル化度を有するPFPEポリマー
Solef(登録商標)5130 PVDF
【0074】
以下の材料は後でここに記載するように調製された:
P(I):式:
H(OCHCHj1OCHCFO(CFCFO)a1(CFO)a2CFCHO(CHCHO)j1
(式中、j1=7、比a1/a2=1.2、平均数分子量(Mn)=2,200及びF=1.8である)に従うポリ(エトキシ)ペルフルオロポリエーテルが前述の国際特許出願国際公開第2014/090649号パンフレットに開示された手順に従って製造され、上に引用した先行技術の文献米国特許第7,098,173号明細書(GENERAL MOTORS CORPORATION)に開示されたPFPEを代表する。
P(II):式:H(OCHCHj1OCHCFO(CFCFO)a1(CFO)a2CFCHO(CHCHO)j1
(式中、j1=5、比a1/a2=1.2、平均数分子量(Mn)=2,000及びF=1.8である)に従うポリ(エトキシ)ペルフルオロポリエーテルが、国際公開第2014/090649号パンフレットに開示された手順に従って製造された。
P(III):式:
H(OCH(CH)CHj2(OCHCHj1OCHCFO(CFCFO)a1(CFO)a2CFCHO(CHCHO)j1(CHCH(CH)O)j2
(式中、j1=8.5、j2=4.5、比a1/a2=1.2、平均数分子量(Mn)=2,900及びF=1.8である)に従うポリ(エトキシ-プロポキシ)-ペルフルオロポリエーテルポリマーが、上に引用された国際公開第2014/090649号パンフレットに開示された手順に従って製造された。
【0075】
引火性及び可燃性の試験
ポリマーP(I)及びポリマーP(II)の引火性及び可燃性特性をInnovhub(IT)で試験した。
【0076】
燃焼試験は、UNI EN ISO 3680-2005に従ってポリマーの引火点を評価することによって実施された。揮発性材料の引火点は、点火源が与えられたとすると材料の蒸気が点火する最も低い温度である。引火点の値は典型的に、引火性液体(ガソリンなど)を可燃性液体から区別するために使用される。
【0077】
ポリマーP(I)及びポリマーP(II)の両方とも難燃性であることがわかった。
【0078】
可燃性試験がASTM D4206-96に従って実施され、持続可燃性試験が国連のManual of tests and criteria of ADR p.348のパラグラフ32.5.2(5th改訂版、2009)に従って実施された。
【0079】
ポリマーP(I)及びポリマーP(II)の両方とも可燃性を持続しないことがわかった。
【0080】
実施例1-LP30との混和性の評価
液体調合物は、室温で撹拌下にてP(I)又はP(II)を標準LP30電解質(1/1重量比のEC/DMC中のLiPF6 1M)と以下の比率で混合することによって調製された:
調合物A:P(I)/LP30=1/4重量比
調合物B:P(II)/LP30=1/4重量比。
【0081】
比較用調合物を同じ手順に従って調製した:
調合物C1():Fluorolink(登録商標)ZDOL/LP30=1/4重量比及び
調合物C2():Fluorolink(登録商標)E10-H/LP30=1/5重量比。
【0082】
それぞれの調合物の物理的外観を目視検査によって評価した。結果は次の表1に報告されている。
【0083】
上に記載されたように調製されたそれぞれの調合物のイオン導電率の値は、200mHz~200kHzの周波数範囲にわたり、ならびに±5mVの摂動振幅の電気化学インピーダンス分光法(EIS)によって密封鋼導電率セル内で25℃で測定された。それぞれの温度について3つの単一セルで測定された平均値が表1に報告される。
【0084】
標準LP電解質のイオン導電率もまた比較のために測定した。
【0085】
【0086】
Fluorolink(登録商標)ZDOL(比較組成物C1に添加された)及びFluorolink(登録商標)E-10H(比較組成物C2に添加された)の両方とも、5重量%の濃度でも同じく、LP30と混和性でないという結果になった。
【0087】
また、上記の結果は、本発明による調合物A及びBが標準LP30と同じ程度の導電率を有することを示した。
【0088】
実施例2-LiTFSIとの混和性の評価
LiTFSIを高純度PFPEポリマー中に室温及び撹拌下で溶解することによって液体調合物を調製した:
調合物D:P(I)中のLiTFSI 20%(w/w)(1,1M)
調合物E:P(II)中のLiTFSI 20%(w/w)(1,1M)。
【0089】
比較用調合物を同じ手順に従って調製した:
調合物F():Fluorolink(登録商標)ZDOL中のLiTFSI 20%(w/w)(1,1M)
調合物G():1/1重量比のEC/DMC中のLiTFSI 20%(w/w)(0,9M)。
【0090】
それぞれの調合物の物理的外観を目視検査によって評価した。結果は次の表2に報告されている。
【0091】
上に記載されたように調製されたそれぞれの調合物のイオン導電率の値は、200mHz~200kHzの周波数範囲にわたり、ならびに±5mVの摂動振幅の電気化学インピーダンス分光法(EIS)によって密封鋼導電率セル内で25℃で測定された。それぞれの温度について3つの単一セルで測定された平均値が表2に報告される。
【0092】
【0093】
上記の結果は、本発明による調合物に沈殿物も相分離も観察されなかったことを示す。
【0094】
実施例3-エチレンカーボネートとLiTFSIとを有する混合物の導電率の評価
エチレンカーボネート(EC)とP(I)、P(II)及びP(III)のうちの1つとを1/1、3/1及び5/1の重量比で使用して調製された混合物中にLiTFSI 20重量%を室温で撹拌下にて混合することによって電解質調合物を調製した。
【0095】
上に記載されたように調製されたそれぞれの調合物のイオン導電率の値は、200mHz~200kHzの周波数範囲にわたり、ならびに±5mVの摂動振幅の電気化学インピーダンス分光法(EIS)によって密封鋼導電率セル内で25℃及び55℃で測定された。それぞれの温度について3つの単一セルで測定された平均値が表3に報告される。
【0096】
【0097】
導電率の値は許容範囲であり、且つ非引火性の利点を提供しながら、標準LP30電解質と比較した時に同じ大きさの程度であることがわかった。
【0098】
実施例4-Li輸率の評価
Li+輪率の評価を目的として、定電位分極(PP)実験を実施した。電解質は、リチウムイオンバッテリーの性能を決定するのに重要な役割を果たし、Li+輪率が一単位、すなわち1に近づく電解質が充電及び放電サイクルの間の濃度勾配を避けるために望ましい。
【0099】
電解質を2つのLi可逆電極の間に置いた(Li-Li対称セル)。全イオンによって運ばれる初期電流とLi+イオンのみによって運ばれる定常電流とを測定した。使用される分極は10mVであった。
【0100】
このLi+の輪率は、2つの電流の比によって定義された。
【0101】
リチウム輸率を以下の調合物:
調合物L:P(II)/EC1/1(w/w)中のLiTFSI 20%(w/w)
調合物M:P(I)/EC1/1(w/w)中のLiTFSI 20%(w/w)
について、及び比較として標準電解質LP30について25℃で測定した。結果は次の表4に報告されている。
【0102】
【0103】
上記のデータは、標準LP30電解質と比較したとき、本発明による調合物ではいっそう高いリチウムイオン移動度を示す。
【0104】
実施例5:低温での試験
室温で撹拌下にてLiTFSI 1Mと以下の成分とを混合することによって電解質調合物を調製した:
比較として調合物N():LiTFSI 1Mと高純度エチレンカーボネート(EC)
調合物O:LiTFSI 1Mと高純度P(II)
調合物P:LiTFSI 1Mと1/1重量比の混合物P(II)/EC
調合物Q:LiTFSI 1Mと1/5重量比の混合物P(II)/EC。
【0105】
全ての電解質調合物は23℃で液体であり、一晩4℃で貯蔵された。
【0106】
それぞれの調合物の物理的外観が目視検査によって評価された:
本発明による調合物O、P及びQは透明であり、ただ1つの単一相が可視的であった;
比較用調合物N()は凍結した。
【0107】
実施例6-LiFePOを有するバッテリーの試験
以下の調合物:
実施例3において上に開示されたように調製された、
P(II)/EC1/1(w/w)中のLiTFSI 20%(w/w)[調合物R]及び
P(II)/EC1/5(w/w)中のLiTFSI 20%(w/w)[調合物S]
をLi/LiFePOバッテリーにおいて試験した。
【0108】
82%のLiFePO、10%の導電性炭素及びバインダーとして8%のSolef(登録商標)5130PVDFを混合することによってLiFePO電極(厚さ50ミクロン、0.51mAh/cm)を作製した。円形電極(直径12mm)を切り分け、液体電解質を添加せずに、リチウム金属を対電極として使用してコインセルにおいて試験した。T=55℃で、CレートをC/20からC/2に増加させて試験プロトコルを適用した。カットオフはLiに対して4.0~2.5Vであった。
【0109】
以下の表5において2つの液体電解質調合物について結果を報告する。
【0110】
【0111】
Cレートは、バッテリーがその最大容量に対して放電されるレートの尺度である。例えば、「C/20」レートは、放電電流が20時間でバッテリー全体を放電すること
を意味する。
【0112】
比放電容量は、100パーセントの充電状態からより低いカットオフ電圧までの特定の放電電流(Cレートとして規定された)で、バッテリーの容量出力と組み立てられた電極中のLiFePOの重量との間の比である。
【0113】
クーロン効率は、バッテリーによる電荷の出力(放電ステップ)の、電荷の入力(充電ステップ)に対する比である。
【0114】
上記の結果は、本発明による電解質調合物を使用して作製されたバッテリーの良い性能を示した。