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特許7023285補助酸素の投与による低減された酸素分圧への暴露の遅延効果を最小化する方法
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  • 特許-補助酸素の投与による低減された酸素分圧への暴露の遅延効果を最小化する方法 図1
  • 特許-補助酸素の投与による低減された酸素分圧への暴露の遅延効果を最小化する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】補助酸素の投与による低減された酸素分圧への暴露の遅延効果を最小化する方法
(51)【国際特許分類】
   B64D 13/06 20060101AFI20220214BHJP
   A62B 7/02 20060101ALI20220214BHJP
   A61M 16/10 20060101ALI20220214BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
B64D13/06
A62B7/02
A61M16/10 Z
A61M16/00 305B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019538393
(86)(22)【出願日】2017-12-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 US2017068069
(87)【国際公開番号】W WO2018132245
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】15/403,240
(32)【優先日】2017-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519252136
【氏名又は名称】モデル ソフトウェア コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】MODEL SOFTWARE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ジェイ ケリー
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0206353(US,A1)
【文献】特開2009-062041(JP,A)
【文献】特表2005-518889(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0154981(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0258127(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0366875(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0044800(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 13/06
A62B 7/02, 7/14
A61M 16/10
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行後の発作を防止する方法であって、
ある位置での初期目標酸素分圧を決定するステップと、
ある位置での最終目標酸素分圧を決定するステップと、
前記ある位置での最終目標酸素分圧に設定された補助酸素源を用意するステップであって、前記補助酸素源は高所での飛行中に航空機上での輸送に適している、ステップと、
前記補助酸素源からの補助酸素を前記航空機上での航空輸送中の人に投与して、前記飛行中に前記航空機に存在する低減された酸素分圧を補償するステップと、
を含み、
前記補助酸素は、前記人が前記ある位置での2.3psiから3.1psiまでの最終目標酸素分圧を実質的に模倣する酸素分圧を経験するように2.3psiから3.1psiまでの量で投与され、
前記補助酸素を受ける前記人は既存の神経系の持病を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記初期目標酸素分圧は、出発都市の酸素分圧である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記人は、前記出発都市の酸素分圧に日常的に慣れている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記最終目標酸素分圧は、平均海抜での酸素分圧である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記飛行中に、前記補助酸素源上の1以上の圧力センサに基づいて、前記補助酸素源に対する目標酸素分圧を、自動的または手動で、前記初期目標酸素分圧から前記最終目標酸素分圧に調整するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
出発都市の酸素分圧が前記初期目標酸素分圧として設定され、到着都市の酸素分圧が前記最終目標酸素分圧として設定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
出発に先立って、出発空港における指定場所から前記補助酸素源を得るステップであって、前記補助酸素源は携帯用装置である、ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記補助酸素源を着陸後に到着空港における指定場所に返却するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記補助酸素は、前記飛行中に前記最終目標酸素分圧が実質的に維持されるように、連続的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記補助酸素は、前記飛行の少なくとも一部の間投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記既存の神経系の持病はてんかんである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
低減された酸素分圧への暴露の遅延効果を最小化する方法であって、
ある位置での初期目標酸素分圧を決定するステップと、
ある位置での最終目標酸素分圧を決定するステップと、
前記ある位置での最終目標酸素分圧に設定された補助酸素源を用意するステップであって、前記補助酸素源は高所での飛行中に航空機上での輸送に適している、ステップと、
前記補助酸素源からの2.3psiから3.1psiまでの量の補助酸素を前記航空機上での航空輸送中の人に投与して、前記飛行中に前記航空機において存在する前記低減された酸素分圧を補償するステップと、
一定期間、初期目標酸素分圧を維持して前記人が実質的な前記酸素分圧の変化を経験しないステップと、
を含み、前記初期目標酸素分圧は前記人が日常的に慣れているか、または順応された酸素分圧であり、
前記補助酸素を受ける前記人は既存の神経系の持病を有することを特徴とする方法。
【請求項13】
低減された酸素分圧への暴露の遅延効果を最小化する方法であって、
ある位置での初期目標酸素分圧を決定するステップと、
ある位置での最終目標酸素分圧を決定するステップと、
前記ある位置での最終目標酸素分圧に設定された補助酸素源を用意するステップであって、前記補助酸素源は高所での飛行中に航空機上での輸送に適している、ステップと、
前記低減された酸素分圧に暴露された人に、前記最終目標酸素分圧を実質的に模倣する2.3psiから3.1psiまでのある量の補助酸素を投与するステップと、
一定期間、前記最終目標酸素分圧を維持して前記人が前記初期目標酸素分圧からの実質的な酸素分圧の変化を経験しないステップと、
を含み、前記初期目標酸素分圧は前記人が日常的に慣れているか、または順応された酸素分圧であることを特徴とする方法。
【請求項14】
飛行後の発作を防止する方法であって、
ある位置での初期目標酸素分圧を決定するステップと、
ある位置での最終目標酸素分圧を決定するステップと、
前記ある位置での最終目標酸素分圧に設定された補助酸素源を用意するステップであって、前記補助酸素源は高所での飛行中に航空機上での輸送に適している、ステップと、
減された酸素分圧に暴露された人に、前記最終目標酸素分圧を実質的に模倣する2.3psiから3.1psiまでのある量の補助酸素を投与するステップと、
を含み、
前記補助酸素は、前記人が前記最終目標酸素分圧を実質的に模倣する酸素分圧を経験するような量で投与され、
前記補助酸素を受ける前記人は、前記低減された酸素分圧に対して特別な感度を有することを特徴とする方法。
【請求項15】
前記補助酸素を投与するステップは、前記人に対して高所での作業の生産性および集中力の向上をもたらす、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特に、環境における低減された酸素分圧に対して補償する期間の間、補助酸素を投与することによって、低減された酸素分圧への暴露の人への遅延効果を最小化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素は、人命にとって重要である。各細胞、組織、および人体の機能は、酸素を必要とする。酸素なくして、細胞は機能、修復および再生することができない。従って、酸欠、または低酸素症は、様々な問題を引き起こし、そのうちの幾つかは直ちに顕著な影響を与えうる。低酸素症の症状の例には、吐き気、頭痛、疲労、息切れが含まれるが、それらに限定されない。ひどい場合には、低酸素症は、意識の喪失、脳卒中、昏睡状態、および死さえも引き起こしうる。
【0003】
高所(高所)は、肺の中の酸素分圧を低減する。従って、与圧航空機中のような低減された酸素分圧環境下に晒されると、低酸素症を引き起こしうる。高所での航空機客室中の圧力は、典型的には、人が約7000フィート(約11psi)で経験する圧力に維持されている。同様の効果は、標高の高い地理的な位置において観察される。例えば、酸素分圧は、ニューオーリンズ、ルイジアナなどの海抜がゼロの都市と比べたとき、デンバー、コロラドなどの標高の高い都市では低い。デンバーの「現地気圧」は、典型的には、約23-24インチ/hg(約12psi)であるのに対して、海抜ゼロ地点での「現地気圧」は、典型的には、約30インチ/hg(約15psi)である。
【0004】
酸素は乾燥空気の約21%を占め、酸素分圧は大気圧の減少に比例して減少する。従って、例えば、海抜ゼロ地点での大気中の酸素分圧は約3.1psiであり、与圧航空機客室においては、約2.3psiまで比例的に減少するだろう。
【0005】
低減された酸素分圧環境および/または高い標高に対する人の感度は、一般的に2つのカテゴリー、すなわち健常者および特別な感度を有する人に分類できる。健常者は、典型的には、航空輸送中の高所での航空機上や、標高の高い地理的位置で観察されるような、低減された酸素分圧への露出から副作用を経験しないだろう。しかし、健常者のごく一部は、低減された酸素分圧環境への露出から、航空輸送中に高所での航空機上で経験するような副作用を経験するだろう。これは、典型的には、飛行後に「気分が悪い」として説明できる。もう1つのカテゴリーの人たちは、特別な感度を有するたちである。これらの人たちは、通常、てんかんなどの既存の神経系の持病を有する人たちである。これらの人たちは、高い標高から直ちにエピソードまたは症状を経験するかもしれないし、しないかもしれないが、その代わりに、低減された酸素分圧環境への露出の期間に続いて存在する遅延効果に敏感でありうる。一例として、ある種類のてんかん持ちの人々は、低減された酸素分圧環境に晒されている間には症状またはエピソードを経験しないが、露出に続いて、数日までの比較的短期間に発作を経験する増加されたリスクを有しうる。
【0006】
現在、低減された酸素分圧環境への露出により観察される酸素欠乏の同時期の影響に対処する多くの技術が存在する。こうした周知技術の1つは、補助酸素の投与である。個人がある程度の酸素欠乏症を患って低酸素症になったとき、補助酸素を供給して観察された酸素欠乏を補う。しかしながら、この技術は、酸素欠乏による同時または即時の影響に対処するのに適用されるのみである。この技術は、低減された酸素分圧への暴露の遅延効果を最小化または除去するのに予防的に使用されていない。
【0007】
別の類似の公知技術は、補助酸素を投与して、低減された酸素分圧環境への暴露による急性症状を緩和して、高所でのパイロットの集中力を促進/維持することである。この点について、航空機パイロットに補助酸素を供給して、低減された酸素分圧への露出時に高所での意識および/または集中力の喪失の発生を妨げることが知られている。上述した低酸素症の対処法に非常に似ているが、補助酸素を供給して酸素欠乏の即時の影響を弱める。
【0008】
補助酸素投与は、既存の肺疾患状態を有する人々に対処する既知の用途も有している。低酸素症の対処と同様に、既存の肺疾患状態を有する人々に対する補助酸素の使用は、治療的な性質を有し、既存の状態に対して同時である。
【0009】
既知の酸素供給装置は、固定流量または要求に応じた(オンデマンド)2つの方法の1つに従って酸素を人に供給するように動作可能である。酸素が固定流量で供給されるとき、酸素は、酸素に対する人のニーズにかかわらず、典型的には設定体積および設定流量で供給される。これは、酸素に対する人(個人)のニーズが設定された流量によって供給される酸素量よりも高いか、あるいは低い時にも当てはまる。オンデマンド供給装置においては、酸素は吸入サイクル中に人に供給される。オンデマンド供給装置は、人の呼吸サイクルの間ずっと連続的に自由に流れず、酸素は人が吸入するときにのみ供給されるため、流量一定装置よりもより多くの酸素を節約する傾向にある。
【0010】
酸素の供給は、人の要求を満たす流量を制御する必要もある。これは、当業者に既知の要求を見積もる幾つかの任意の技術に従って実現することができる。幾つかの技術において、1以上の圧力センサを人の呼吸位置(鼻または口)の比較的近くに配置して、大気圧および人の呼吸圧を測定する。呼吸圧は、呼吸サイクルの間に人によって吸入および/または吐き出される空気を表す。測定された圧力値は、次に流量を調整するのに使用される。大気圧と呼吸圧との圧力差がゼロであるように、流量を調整することが一般的な方法である。酸素の要求を見積もる別の代表的な方法は、人から吐き出される二酸化炭素の量を測定するステップと、流量を測定するステップと、人の活動レベルを測定するステップとを伴う。
【0011】
投与される酸素濃度を変更することによって、酸素要求を制御することも既知である。これは、純粋な酸素と混合された大気を供給することによって実現される。高度が増加するにつれて酸素濃度は減少するため、差の補償は、より高い高度のために人に投与される純酸素の比率を増加させることによって実現することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、酸素欠乏の即時効果を治療するための幾つかの公知の技術がある。しかし、これらの技術は、低減された酸素分圧環境への暴露後に生じ得る悪影響を考慮していない。従って、具体的には特別な感度を有する人において、暴露からの遅延効果の発生を最小化または除去するために、低減された酸素分圧環境への暴露を補償するための予防策または技術を開発する必要性が存在する。
【0013】
本開示は、補助酸素の投与によって、酸素分圧を低下させることに起因する人への遅延効果を最小化するための方法の説明を提供する。本開示はまた、飛行後の発作防止方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施形態では、低減された酸素分圧への暴露の遅延効果を最小化するための方法は、補助酸素源を提供するステップを含む。酸素分圧の低下は、高所での飛行中に発生することが知られているため、補助酸素源は、高所での飛行中に航空機上で輸送するのに適しているべきである。補助酸素は、航空機上で航空輸送中に人に投与され、飛行中に航空機に存在する減少した酸素分圧を補償する。また、補助酸素を受ける人が酸素分圧の変化を実質的に受けないように、補助酸素が目標酸素分圧を一定時間維持するように投与される。目標酸素分圧は、補助酸素を受ける人が日常的に慣れているか、または順応された酸素分圧である。
【0015】
別の実施形態では、低減された酸素分圧への暴露の遅延効果を最小化するための方法は、携帯用補助酸素源を提供するステップを含む。低減された酸素分圧に現在晒されている人に、目標酸素分圧に非常に近い量の補助酸素を投与する。補助酸素は、補助酸素を受ける人が、酸素分圧の変化をほとんど受けないように、目標酸素分圧を一定時間維持するように投与される。目標酸素分圧は、補助酸素を受ける人が日常的に慣れているか、または順応された酸素分圧である。
【0016】
さらに別の実施形態では、飛行後発作防止方法が開示される。飛行後発作防止方法は、高所にて飛行中に航空機上で輸送するのに適した携帯用補助酸素源を提供するステップと、飛行中に航空機に存在する減少した酸素分圧を補償するように航空機上の空気輸送中に人に補助酸素を投与するステップとを含む。補助酸素は、補助酸素を受ける人が、目標酸素分圧を極めて近い酸素分圧を受けるような量で投与される。幾つかの例では、ターゲット酸素分圧は、補助酸素を受ける人が日常的に慣れているか、または順応された酸素分圧である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、例示的な実施形態による、低減された酸素分圧への暴露の遅延効果を最小化するために補助酸素源を提供するためのシステムを示すブロック図である。
図2図2は、例示的な実施形態による飛行後発作防止のための例示的な方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に提示された方法は、低減された酸素分圧への人への暴露から生じ得る遅延効果に対処することを目的とする。これらの方法は、本質的には予防的であり、低減された酸素分圧への暴露から生じうる生理学的悪影響を最小化または除去するために、低減された酸素分圧環境に対するリアルタイムに補償するステップを含む。
【0019】
一実施形態では、低減された酸素分圧106への暴露から生じる遅延効果は、人にある量の補助酸素を投与することにより軽減される。補助酸素源108は、任意の特定の装置に限定されず、幾つかの実施形態では、源は携帯可能であることが好ましい。補助酸素の可搬性は、補助酸素を受ける人102にあるレベルの移動性を与える。他の実施形態では、補助酸素は、個別に携帯可能ではなく、輸送車両の中に直接取り付けられるか、または輸送車両の中に直接設置されることが好ましい。例えば、補助酸素源108は、航空機の客室に内蔵して、補助酸素が航空機の個々の座席または区画に配達可能であるように構成してもよい。輸送車両は、航空車両だけに限定されないことも意図している。そのような車両は、低減された酸素分圧環境に出くわすまたは遭遇する任意の車両を含むことができる。
【0020】
低減された酸素分圧環境106に晒された人102に供給される補助酸素の量は、目標酸素分圧を提供するように設定される。理想的には、目標酸素分圧は、人が日常的に慣れている典型的な酸素分圧環境を模倣するように設定される。人102が慣れている典型的な酸素分圧環境104は、通常、その人102の自宅の酸素分圧であると理解され得る。本開示の目的のために、人が日常的に慣れている酸素分圧と自宅の酸素分圧とを交互に使用することができる。
【0021】
例えば、人102が平均海抜で自分の時間の大部分を費やしている場合、目標酸素分圧は、平均海抜での酸素分圧(約3psi)と同じに設定される。換言すれば、自宅の酸素分圧は3psiだろう。このようにして補助酸素を受ける人102が、理想的には、彼/彼女が現在晒されている低減された酸素分圧環境106と、自宅の酸素分圧環境102との間において正味ゼロの酸素分圧差を経験するように、目標分圧が設定される。調整器110によって、低減された酸素分圧環境106に関して正味ゼロの酸素分厚差となるように目標酸素分圧を調整することにより、本質的に、低減された酸素分圧環境106が人102に及ぼす影響を打ち消す効果を有する。人102が低減された酸素分圧環境106に晒されても、人102は、彼/彼女の自宅の酸素分圧環境104からの酸素分圧の変化を実質的に受けない。
【0022】
理想的なシナリオは、人102が正味ゼロの酸素分圧差を経験するシナリオである。正味ゼロの酸素分圧差が得られないことは予見できない。補助酸素の投与の過程で、ある時間の間に正味ゼロの酸素分圧差を得ることはできないかもしれない。また、補助酸素投与の持続期間中、任意の時点で正味ゼロの酸素分圧差を達成することは不可能かもしれない。しかし、本明細書に記載の方法は、正味の酸素分圧差をある程度最小化するために使用することができる。本明細書に記載の方法を使用して、人102が現在露出されている低減された酸素分圧環境106と、自宅の酸素分圧104との間の正味の酸素分圧差の任意のレベルの最小化は、偏りがないことが好ましいと考えられる。
【0023】
また、本明細書に記載された任意の方法を使用して、余剰の補助酸素を人102に供給することができると考えられる。余剰の補助酸素を人102に供給することは、純酸素の供給として理解され得る。低減された酸素分圧環境への暴露を補償するために人102に純酸素を供給することは、純酸素が短期的に投与されることを前提として、本明細書に記載された方法の範囲内で許容できる。短期投与は、数時間までの時間の期間として理解することができる。例えば、純酸素は、24時間(または1日)を超えない期間で供給することができる。特定の時間数の上限は、人102によって変化しうるが、純酸素は、酸素を受ける人において負の効果を開始するのに十分な持続時間に亘って投与されるべきではない。
【0024】
目標酸素分圧はまた、人の自宅の酸素分圧ではない酸素分圧とすることができる。代わりに、目標酸素分圧は、人102が現在または一時的に順応している酸素分圧に設定されてもよい。例えば、人の自宅の酸素分圧は、平均海抜での酸素分圧(約3psi)とすることができる一方、人の順応した分圧は、より高い高度での酸素分圧(例えば、2.8psi)である。
【0025】
目標酸素分圧は、開示された方法で調節可能であることが望ましい。幾つかの実施形態では、目標酸素分圧は一定のままであるのが好ましい一方、他の実施形態では、目標酸素分圧が補助酸素の投与の過程で変化することが好ましい。
【0026】
初期目標酸素分圧は、補助酸素を受ける人102が順応している酸素分圧に設定することができる。例えば、初期目標酸素分圧は、海抜での酸素分圧(約3psi)に設定することができる。一例として、人102が低減された酸素分圧を有する位置(例えば、より高い高度)に移動している場合、位置間の酸素分圧のシフトを徐々に補償することが望ましい場合がある。この場合、より高い高度の位置は、約2.6psiの最終目標酸素分圧を有すると言うことができる。初期位置から最終目的地への酸素分圧の減少を補償するために、目標酸素分圧は、3psiから2.6psiまでの補助酸素の投与の過程で徐々に変化させることができる。目標酸素分圧の変化は、自動的にまたは手動で行うことができるようにすることができる。
【0027】
別の実施形態では、高所での航空機の低減された酸素分圧への暴露から生じる遅延効果は、ある量の補助酸素を人102に投与することによって緩和される。補助酸素源108は、任意の特定の装置に限定されず、高所での飛行中に航空機上で輸送するために承認されるべきである。例示的な携帯用補助酸素源108の1つは、Invacare(登録商標)XPO2携帯用酸素濃縮器(製品ID:XPO100)である。幾つかの実施形態では、補助酸素源108は個別に携帯可能ではなく、代わりに航空機に取り付けられるか、または航空機に直接設置されることが好ましい。飛行中に航空機に存在する低減された酸素分圧を補償するために、航空機上での航空輸送中に、ある量の補助酸素が人102に投与される。
【0028】
人102に供給される補助酸素の量は、目標酸素分圧を提供するように設定される(例えば、調整器110によって)。上述したものと同様に、目標酸素分圧は一定であっても調節可能であってもよい。理想的には、目標酸素分圧は、補助酸素を受ける人102が、出発空港から到着空港までの酸素分圧の変化を生じないように設定される。飛行および/または設備の持続時間に応じて、酸素分圧における正味ゼロの差は得られない可能性がある。補償は、その全体ではなく飛行の一部に対してのみ利用可能である。いずれの場合にも、高所での低減された酸素分圧に対するある量の補償は、補償しないより好ましい。
【0029】
低減された酸素分圧の不十分な補償または一時的な過補償が生じ得る。いずれの場合においても、補助酸素の投与は、低減された酸素分圧環境を補償または過補償するか否かにかかわらず、補償しないより好ましい。
【0030】
幾つかの実施形態では、補助酸素を投与する際に酸素のレベルが高すぎることが問題となる可能性がある。例えば、山を登るか、かなりの時間の間(例えば、数日、数週間等)低減された酸素分圧に曝される人102は、それらの暴露期間のための補助酸素として純酸素を受け取ることができない可能性がある。そのような実施形態では、補助酸素は、純粋でない(例えば、100%でない)酸素のような、選択された濃度に富化することができる。例えば、酸素を別の空気で富化して人102に補給して、純酸素への過剰暴露の機会を減少させながら、理想的な酸素分圧を達成することができる。一例では、補助酸素供給装置108は、純酸素を供給する第1の管と、周囲の空気を供給する第2の管とを含むことができ、管の出力を所定の比率で混合して所望の酸素分圧を達成することができる。このような例では、所定の比率は、各管に対するポンプの流量の電気的または手動の変更によって(例えば、調整器110によって)、または各管の入出力開口部を変更することによって変更することができる。例えば、装置(例えば、源108および調整器110)は、出力を測定する酸素センサを含むことができ、電気的に1つまたは双方の管の流量を変更して出力が所望の酸素分圧レベルを実現するのに適するのを保証するように構成できる。
【0031】
さらに別の実施形態では、補助酸素は、1つ以上の飛行後発作の発生に対する予防策として投与される。例えば、図2は、補助酸素を使用により飛行後発作を防止する方法200を示している。ステップ202では、高所での飛行中に航空機上で輸送するのに適した補助酸素源108が提供されるが、特にこれに限定されるものではない。幾つかの実施形態では、補助酸素源108は携帯用装置である。他の実施形態では、補助酸素源108は、個別に携帯可能ではなく、代わりに航空機に取り付けられるか、または航空機に直接設置されることが好ましい。ステップ204では、飛行中に航空機に存在する低減された酸素圧力を補償するように、航空機上での航空輸送中に、ある量の補助酸素が人102に投与される。補助酸素の量は、目標酸素分圧を提供するように設定される。既に説明したものと同様に、目標酸素分圧は一定であっても調節可能であってもよい。しかし、目標の酸素分圧は、理想的には、補助酸素を受ける人が出発空港から到着空港までの酸素分圧の変化を経験しないように設定される。幾つかの実施形態では、方法200は、ステップ206を含むことができ、目標酸素分圧を、人が酸素分圧の変化を実質的に受けないような期間に亘って維持することができる。
【0032】
飛行後発作防止方法はまた、携帯用酸素源108の取得および返却を含むことができる。特に、飛行後発作防止方法は、出発前に出発空港の指定された位置から携帯用補助酸素源108を得る追加のステップを含むことができる。飛行後発作防止方法は、着陸後に到着空港の指定された位置に携帯用補助酸素源108を返却するステップをさらに含むことができる。
【0033】
本明細書に記載のいずれの実施形態においても、目標酸素分圧は、補助酸素を受け取る人102の、出発都市とも呼ばれる初期位置104の酸素分圧として設定することができる。逆に、目標酸素分圧は、到着都市とも呼ばれる最終位置106の酸素分圧として設定することができる。目標酸素分圧は、説明した任意の実施形態において、補助酸素を受け取る人102が日常的に慣れている場所104に対応する酸素分圧に対応する酸素分圧に設定することができる。場所104は、その人102の居住都市とすることができる。
【0034】
本明細書に記載された任意の実施形態において、目標酸素分圧は、補助酸素の投与の過程において一定であっても可変であってもよい。投与の過程で目標酸素分圧が可変である場合には、当該分野で知られている任意の方法で変更を行うことができる。
【0035】
開示された任意の実施形態において、補助酸素の投与は、それが低減された酸素分圧環境を補償または過補償するか否かにかかわらず、補償しないよりも好ましい。この点について、補助酸素は、人102が低減された酸素分圧に晒される全期間に亘って、補助酸素を投与することができる。代わりに、補助酸素は、人102が低減された酸素分圧に晒される期間の一部の期間(サブセット)のみに投与されてもよい。補助酸素は、任意のシナリオにおいて連続的または間欠的に投与することができる。
【0036】
本明細書に記載された方法は、低減された酸素分圧にある期間晒されたことによる人の生理に対する遅延負効果を最小化または除去することを目的とする。本発明は、低酸素分圧環境106に対して特別な感度がなければ健康な人102や、てんかんなどの既存の神経系の持病を有する人102に対して適用されるが、誰102も本明細書に記載された方法の利点から除外されない。補助酸素の投与は、本明細書で説明されるように、低減された酸素分圧環境への暴露の遅延効果を防止することに加えて、例えば、健常者102が使用することができ、例えば、高所での作業の生産性、集中力等を向上させることができる。
【0037】
本開示に整合する技術は、他の特徴の中で、低減された酸素分圧への暴露の遅延効果を最小化する方法を提供する。開示されたシステムおよび方法の様々な例示的な実施形態が上で説明されてきたが、それらは、限定ではなく例示の目的のために提示されていることを理解すべきである。これは、網羅的ではなく、開示された正確な形態に開示を限定するものではない。修正および変形は、上記の教示に照らして可能であり、あるいは、本開示を実施することから、幅または範囲から逸脱することなく取得することができる。
図1
図2