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  • 特許-多数の貫通孔を有する制振性シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】多数の貫通孔を有する制振性シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/08 20060101AFI20220214BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220214BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20220214BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
B32B25/08
B32B27/00 M
C09J7/22
B32B27/30 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019546615
(86)(22)【出願日】2018-09-19
(86)【国際出願番号】 JP2018034571
(87)【国際公開番号】W WO2019069684
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2017192360
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104906
【氏名又は名称】クラレプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 岳洋
(72)【発明者】
【氏名】北村 照夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 芳典
(72)【発明者】
【氏名】野坂 幸夫
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/023932(WO,A1)
【文献】特開2004-299273(JP,A)
【文献】特開2006-045344(JP,A)
【文献】特開平08-258206(JP,A)
【文献】特開平03-043244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 25/08
B32B 27/00
C09J 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の貫通孔を有する熱可塑性エラストマー製シートと、該熱可塑性エラストマー製シートの片面または両面に存在する粘着剤層を含む制振性シートであって、
熱可塑性エラストマーは、
(a)ビニル芳香族化合物に由来する構造単位から構成される少なくとも2個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物に由来する構造単位から構成される少なくとも1個の重合体ブロックBと、からなるブロック共重合体、および/または該ブロック共重合体の水素添加物
であり、
該熱可塑性エラストマー製シートは、開口率5~80%を有し、0℃、30Hzにおける損失係数tanδが0.3以上である、制振性シート。
【請求項2】
前記ブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物(a)は、
(a1)イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45モル%以上であるブロック共重合体、および/または該ブロック共重合体の水素添加物
である、請求項に記載の制振性シート。
【請求項3】
前記ブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物(a)は、
(a1)イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45モル%以上であるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体の水素添加物と、
(a2)イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45モル%未満であるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体の水素添加物と、
から構成され、
(a1)と(a2)の質量比は(a1):(a2)=95:5~30:70
である、請求項に記載の制振性シート。
【請求項4】
熱可塑性エラストマーは、
前記ブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物(a)100質量部に対し、(b)炭化水素系軟化剤50~300質量部
を含む、請求項のいずれかに記載の制振性シート。
【請求項5】
熱可塑性エラストマーは、
前記ブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物(a)と炭化水素系軟化剤(b)の合計100質量部に対し、(c)ポリオレフィン系樹脂3~50質量部
を含む、請求項に記載の制振性シート。
【請求項6】
粘着剤層を構成する粘着剤は、100~15000mPa・s(25℃)の粘度を有する、請求項1~のいずれかに記載の制振性シート。
【請求項7】
貫通孔の平均孔径は0.1~8mmである、請求項1~のいずれかに記載の制振性シート。
【請求項8】
厚さが0.1~7mmの孔あきシートである、請求項1~のいずれかに記載の制振性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は日本国特許出願第2017-192360号(出願日:2017年10月2日)についてパリ条約上の優先権を主張するものであり、ここに参照することによって、その全体が本明細書中へ組み込まれるものとする。
本発明は、制振性シート、詳しくは、被着体としてのバットやテニスラケットなどのスポーツ用品のグリップに接着して使用したときのような、激しい衝撃を受けた場合でも、手、足、身体が被るしびれが極めて少ない制振性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム弾性を有する高分子材料として熱可塑性エラストマーが知られている。特にビニル芳香族化合物―共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(以下、ブロック共重合体水添物とも称する)を用いた熱可塑性エラストマー組成物に関し、いくつかの提案がなされている。例えば、ブロック共重合体水添物に炭化水素系油およびオレフィン系重合体を配合した熱可塑性エラストマー組成物が知られている(特許文献1、2)。
【0003】
また、ポリエステル、ポリウレタンなどの合成樹脂の穴あきフィルムに粘着剤を被覆した粘着シートも知られている(特許文献3、4)。
また、防音シートに粘着層を設け、その上に粘着力抑制層として網目状物を積層した防音シートも知られている(特許文献5)。
【0004】
さらにまた、ビニル芳香族モノマーからなる重合体ブロックと、共役二重結合を有するモノマーからなる重合体ブロックとを含有するブロック共重合体またはその水素添加物である熱可塑性エラストマーからなる伸縮性、吸音性、制振性に優れる不織布(特許文献6)にポリエチレンフィルムにアクリル系粘着剤を塗布した両面テープを積層すること(特許文献6の[0036]および各実施例)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭50-014742号公報
【文献】特開昭58-206644号公報
【文献】特開平11-148052号公報
【文献】特願2016-23521
【文献】特開平2001-348540号公報
【文献】特開平2014-218764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1~6に記載された熱可塑性エラストマー組成物をスポーツ用品用のシートとして使用しても、激しい衝撃を受けた場合に、しびれ感の少ない十分な制振性を得ることは難しかった。
【0007】
本発明の目的は、被着体としてのバットやテニスラケットなどのスポーツ用品のグリップに接着して使用したときのような、激しい衝撃を受けた場合でも、手、足、身体のしびれの極めて少ない熱可塑性エラストマー製制振性シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、熱可塑性エラストマー、好適には特定の熱可塑性エラストマーからなる多数の貫通孔を有するシートを使用し、さらにそのシートの片面または両面に粘着剤を有する制振性シートが有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、次のような態様を提供する。
[1]多数の貫通孔を有する熱可塑性エラストマー製シートと、該熱可塑性エラストマー製シートの片面または両面に存在する粘着剤層を含む制振性シートであって、該熱可塑性エラストマー製シートは、開口率5~80%を有し、0℃、30Hzにおける損失係数tanδが0.3以上である、制振性シート。
[2]熱可塑性エラストマーは、
(a)ビニル芳香族化合物に由来する構造単位から構成される少なくとも2個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物に由来する構造単位から構成される少なくとも1個の重合体ブロックBと、からなるブロック共重合体、および/または該ブロック共重合体の水素添加物
である、前記[1]に記載の制振性シート。
[3]前記ブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物(a)は、
(a1)イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45モル%以上であるブロック共重合体、および/または該ブロック共重合体の水素添加物
である、前記[2]に記載の制振性シート。
[4]前記ブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物(a)は、
(a1)イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45モル%以上であるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体の水素添加物と、
(a2)イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45モル%未満であるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体の水素添加物と、
から構成され、
(a1)と(a2)の質量比は(a1):(a2)=95:5~30:70
である、前記[2]に記載の制振性シート。
[5]熱可塑性エラストマーは、
前記ブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物(a)100質量部に対し、(b)炭化水素系軟化剤50~300質量部
を含む、前記[2]~[4]のいずれかに記載の制振性シート。
[6]熱可塑性エラストマーは、
前記ブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物(a)と炭化水素系軟化剤(b)の合計100質量部に対し、(c)ポリオレフィン系樹脂3~50質量部
を含む、前記[5]に記載の制振性シート。
[7]粘着剤層を構成する粘着剤は、100~15000mPa・s(25℃)の粘度を有する、前記[1]~[6]のいずれかに記載の制振性シート。
[8]貫通孔の平均孔径は0.1~8mmである、前記[1]~[7]のいずれかに記載の制振性シート。
[9]厚さが0.1~7mmの孔あきシートである、前記[1]~[8]のいずれかに記載の制振性シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被着体としてのバットやテニスラケットなどのスポーツ用品のグリップに接着して使用したときのような、激しい衝撃を受けた場合でも、手、足、身体が被るしびれの極めて少なく、かつ好適には振動減衰性の優れた制振性シートを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1と比較例1で得られた各シートのサンプルに対して、振動減衰性を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、多数の貫通孔を有する熱可塑性エラストマー製シートと、該熱可塑性エラストマー製シートの片面または両面に存在する粘着剤層を含む制振性シートに関し、該熱可塑性エラストマー製シートは、開口率5~80%を有し、0℃、30Hzにおける損失係数tanδが0.3以上である。
【0013】
本発明の制振性シートを構成する熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されないが、ポリビニル芳香族系エラストマー、ポリアクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどが挙げられる。
【0014】
本発明の一実施形態では、ビニル芳香族化合物に由来する構造単位から構成される少なくとも2個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物に由来する構造単位から構成される少なくとも1個の重合体ブロックBと、からなるブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物(a)が、特に好適である。本明細書では、このようなブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物(a)を単に「ブロック共重合体(a)」と称することがある。以下に、このようなブロック共重合体(a)について詳述する。
【0015】
<ブロック共重合体(a)>
ブロック共重合体(a)は、ビニル芳香族化合物に由来する構造単位から構成される少なくとも2個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物に由来する構造単位から構成される少なくとも1個の重合体ブロックBと、からなるブロック共重合体、および/または該ブロック共重合体を水素添加して得られるもの(すなわち、水添ブロック共重合体)である。
【0016】
前記ビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。これらの中でも、スチレンおよびα-メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
前記ブロック共重合体(a)におけるビニル芳香族化合物の含有量、すなわち全ての重合体ブロックAの含有量は、5~75質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。
【0018】
前記共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、前記共役ジエン化合物がイソプレン及びブタジエンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、イソプレンとブタジエンの組合せ(混合物)であることがより好ましい。
【0019】
前記ブロック共重合体(a)は、耐熱性や耐性(耐光性または耐候性)の観点から、前記重合体ブロックBの共役ジエン化合物に由来する炭素-炭素二重結合の50%以上が水素添加されていることが好ましい。このような水素添加率は、75%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、98%以上であることが特に好ましい。水素添加率は100%以下であり、通常は99.9%以下である。
【0020】
前記ブロック共重合体(a)は、重合体ブロックAと重合体ブロックBとをそれぞれ少なくとも1個含有していればよい。好適には、前記ブロック共重合体(a)は、重合体ブロックAを2個以上、重合体ブロックBを1個以上含有する。重合体ブロックAと重合体ブロックBの結合様式は、線状、分岐状あるいはこれらの任意の組み合わせであってよい。好適な構造としては、重合体ブロックAをAで、重合体ブロックBをBで表したとき、A-B-Aで示されるトリブロック構造や、(A-B)n、(A-B)n-Aで示されるマルチブロック共重合体(ここでnは2以上の整数を表す)などを挙げることができる。これらの中でも、A-B-Aで示されるトリブロック構造のものが、特に好ましい。
【0021】
前記ブロック共重合体(a)の重量平均分子量は、4万~50万の範囲内であることが、得られる制振性シートの成形加工性、力学的特性の点から好ましい。
なお、本明細書でいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。
【0022】
測定条件:
GPC:LC Solution (SHIMADZU製)
検出器:示差屈折率計 RID-10A(SHIMADZU製)
カラム:TSKgelG4000Hxlを2本直列(TOSOH製)
ガードカラム:TSKguardcolumnHxl-L(TOSOH製)
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
流速:1ml/分
濃度:2mg/ml
【0023】
本発明の一実施形態において、ブロック共重合体(a)は、下記の(a1)
(a1)ビニル芳香族化合物に由来する構造単位からなる少なくとも2個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物に由来する構造単位からなる少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体であって、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45モル%以上であるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体の水素添加物
であることが好適である。
【0024】
すなわち、本発明の上記実施形態において、前記ブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物(a)は、
(a1)イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45モル%以上であるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体の水素添加物
であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の一実施形態において、ブロック共重合体(a)が、上記の(a1)と下記の(a2)
(a2)ビニル芳香族化合物に由来する構造単位からなる少なくとも2個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物に由来する構造単位からなる少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体であって、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45モル%未満であるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体の水素添加物、
との組合せであって、
(a1)と(a2)の質量比は(a1):(a2)=95:5~30:70
であることが好ましい。
【0026】
すなわち、本発明の上記実施形態において、前記ブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物(a)は、
(a1)イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45モル%以上であるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体の水素添加物と、
(a2)イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45モル%未満であるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体の水素添加物と、
から構成され、
(a1)と(a2)の質量比は(a1):(a2)=95:5~30:70
であることが好ましい。
【0027】
(a1)と(a2)の質量比(a1):(a2)は、90:10~40:60であることが好ましく、85:15~50:50であることがより好ましく、80:20~60:40であることがより好ましい。
【0028】
前記ブロック共重合体(a1)における重合体ブロックBは、本発明の目的とする制振性シートを得る観点から、イソプレン単独、またはイソプレンとブタジエンの組合せ(混合物)に由来する構造単位から構成されることが好適である。なお、本明細書では、イソプレンに由来する構造単位における3,4-結合単位および1,2-結合単位、並びにブタジエンに由来する構造単位における1,2-結合単位を、それぞれビニル結合単位と称し、その合計量をビニル結合含有量と称する。好適には、前記ブロック共重合体における重合体ブロックBのビニル結合含有量は45モル%以上であり、さらに好ましくは47モル%以上であり、最適には50モル%以上である。前記ブロック共重合体における重合体ブロックBのビニル結合含有量の上限は、通常80モル%である。
【0029】
上記の実施形態では、前記(a1)と組み合わせて用いるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体の水素添加物で構成される(a2)において、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量は45モル%未満であるが、好適には43モル%以下、最適には40モル%以下である。かかる含有量の下限値は通常8モル%以上、好ましくは10モル%以上である。
【0030】
ブロック共重合体(a1)およびブロック共重合体(a2)の芳香族化合物の含有量、重量平均分子量、水素添加率は、上記したブロック共重合体(a)と同様である。
【0031】
本発明におけるブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物(a)、とりわけ、上記したブロック共重合体(a1)およびブロック共重合体(a2)は、たとえば特開2014-218764およびWO2011/040586などに記載されている、以下に例示する方法により得ることができるが、特にこれらの方法に限定されない。
【0032】
ブロック共重合体(a)は、例えば、アニオン重合やカチオン重合などのイオン重合法、シングルサイト重合法、ラジカル重合法などの重合方法によって製造することができる。アニオン重合法による場合は、例えば、アルキルリチウム化合物などを重合開始剤として用いて、n-ヘキサンやシクロヘキサンなどの重合反応に不活性な有機溶媒中で、芳香族ビニル化合物と、イソプレン(またはイソプレンとブタジエンの混合物)とを逐次重合させ、所望の分子構造および分子量を有するブロック共重合体を製造した後、アルコール類、カルボン酸類、水などの活性水素化合物を添加して重合を停止させることによりブロック共重合体を製造することができる。重合は、通常、0~80℃の温度で、0.5~50時間行われる。
【0033】
水添ブロック共重合体(a)は、上記の方法によって得られたブロック共重合体を単離した後、または好ましくは単離せずに引き続き、重合反応に不活性な有機溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加反応を行うことにより得ることができる。
【0034】
重合開始剤としてアルキルリチウム化合物を用いる場合、このようなアルキルリチウム化合物としては、アルキル残基の炭素原子数が1~10のアルキルリチウム化合物が挙げられる。なかでも、特にメチルリチウム、エチルリチウム、ブチルリチウム、ペンチルリチウムが好ましい。これらのアルキルリチウム化合物などの開始剤の使用量は、重合に用いられる全モノマー100質量部に対し、好ましくは、概ね0.01~0.2質量部である。
【0035】
ブロック共重合体(a1)および(a2)において、イソプレン、またはイソプレンとブタジエンの組合せに由来する3,4-結合単位および/または1,2-結合単位の含有量を所望の含有量にするためには、重合の際に共触媒としてルイス塩基を用いることが好ましい。ルイス塩基としては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N-メチルモルホリンなどのアミン系化合物;ピリジンなどの含窒素複素環式芳香族化合物;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンなどが挙げられる。これらのルイス塩基は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ルイス塩基としては、エーテル類、アミン系化合物が好ましく、THF、TMEDAがより好ましい。
【0036】
ルイス塩基の使用量は、アルキルリチウム化合物のリチウム原子1モルに対して、好ましくは、概ね0.1~1000モルであり、より好ましくは0.1~100モル、さらに好ましくは1~100モルである。この範囲内で適宜調整することによって、任意にビニル結合含有量を制御することができ、3,4-結合単位および/または1,2-結合単位の含有量が45モル%以上のもの、またはこれらの含有量が45モル%未満のものを得ることができる。
【0037】
このようなブロック共重合体(a1)、または(a1)と(a2)との組合せは、共役ジエン化合物からなる重合体ブロックに枝分かれが多く、嵩高い構造を有している。このため、本発明の制振性シートは、これに対して振動エネルギーが及ぼされた際、分子同士が衝突する確率が高くなり、振動エネルギーが熱エネルギーに効率良く変換される。そのため、被着体としてのバットやテニスラケットなどのスポーツ用品のグリップに接着して使用したときのような、激しい衝撃を受けた場合であっても、手、足、身体が被るしびれの極めて少ない。
【0038】
上記した熱可塑性エラストマーから得られる多数の貫通孔を有するシートは、0℃、30Hzにおける損失係数tanδが0.3以上であるという特徴を備える。かかる特徴は、本発明の目的を達成するための重要な特徴の一つである。損失係数tanδは、好適には0.4以上、最適には0.5以上である。損失係数tanδが0.3に満たない熱可塑性エラストマーや、さらには通常の合成樹脂では、後述の比較例1~5からも明らかなように本発明の目的を達成することができない。損失係数tanδは、動的粘弾性測定装置を用いて、周波数30Hz、温度0℃において測定された値であり、その測定法の詳細は後述の実施例で述べる。損失係数tanδの上限はとくに限定されないが、通常は10以下であり、5以下であることが好適である。
【0039】
次に、本発明の一実施形態において、上記の熱可塑性エラストマーに好適に配合される炭化水素系軟化剤(b)について説明する。
【0040】
<炭化水素系軟化剤(b)>
本発明の一実施形態において用い得る炭化水素系軟化剤(b)としては、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等のプロセスオイル、流動パラフィン等の炭化水素系軟化剤が挙げられ、中でもパラフィン系オイル、ナフテン系オイル等のプロセスオイルが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明における熱可塑性エラストマーは、前記ブロック共重合体(a)100質量部に対して、前記炭化水素系軟化剤(b)50~300質量部を含有することが好適である。炭化水素系軟化剤のより好ましい含有量は60~200質量部であり、さらに好ましくは60~150質量部である。
【0042】
次に、本発明の一実施形態において、上記の熱可塑性エラストマーに好適に配合されるポリオレフィン系樹脂(c)について説明する。
【0043】
<ポリオレフィン系樹脂(c)>
本発明の一実施形態において、本発明の目的をより高度に達成するために、熱可塑性エラストマーにポリオレフィン系樹脂(c)を含有させることが好適である。このようなポリオレフィン系樹脂(c)としては、プロピレン系重合体、エチレン系重合体等が挙げられる。プロピレン系重合体としては、例えばホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン等を使用することができる。中でも、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンを用いるのが好ましい。エチレン系重合体としては、例えば中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のエチレン単独重合体;エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-ヘプテン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ノネン共重合体、エチレン・1-デセン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体等を使用することができる。
【0044】
ポリオレフィン系樹脂(c)の含有量は、上記成分(a)と(b)の合計100質量部に対して3~50質量部であることが好ましく、5~20質量部がより好ましい。
【0045】
<ポリフェニレンエーテル樹脂>
また、高温での耐圧縮永久歪特性の改善の目的で、熱可塑性エラストマーに対してさらにポリフェニレンエーテル樹脂を含有させることもできる。具体的には、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジフェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)などが挙げられる。また、2,6-ジメチルフェノールと1価のフェノール類(例えば、2,3,6-トリメチルフェノールや2-メチル-6-ブチルフェノール)との共重合体の如きポリフェニレンエーテル共重合体も用いることができる。なかでも、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)や2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、さらに、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)が好ましい。
【0046】
ポリフェニレンエーテル樹脂の含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.01~3質量部であることが好ましく、0.05~1質量部であることがより好ましい。
【0047】
本発明の制振性シートを構成する熱可塑性エラストマーには、各種の添加剤を配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、クレー、珪藻土、シリカ、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、金属酸化物、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウムなどのリン片状無機系添加剤、各種の金属粉、木片、ガラス粉、セラミックス粉、粒状あるいは粉末ポリマー等の粒状あるいは粉末状固体充填材、その他の各種の天然または人工の短繊維、長繊維(例えば、わら、毛、ガラスファイバー、金属ファイバー、その他各種のポリマーファイバー等)などが挙げられる。
【0048】
また、中空フィラー、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーンなどの無機中空フィラー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体などからなる有機中空フィラーを配合することにより、制振性シートの軽量化をはかることができる。
【0049】
また、熱可塑性エラストマーは、上記の成分の他に、用途に応じて各種のブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、結晶核剤、発泡剤、着色剤等を含有することも可能である。ここで、酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジtert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジtert-ブチルフェノール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、4,4'-ジヒドロキシジフェニル、トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ-5,5-ウンデカンなどのフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。中でもフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。酸化防止剤の含有量は、本発明における熱可塑性エラストマーに含まれる上記成分(a)~(c)の合計100質量部に対して、0.01~3質量部であることが好ましく、0.05~1質量部であることがより好ましい。
【0050】
本発明において、熱可塑性エラストマーとしては、上記したブロック共重合体またはその水素添加物が最適であるが、これ以外の熱可塑性エラストマーを組み合わせて用いることもできる。このような他の熱可塑性エラストマーとしては、例えばアクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーが挙げられ、かつそのシートの損失係数tanδが0.3以上のものも使用することができる。
【0051】
本発明の制振性シートを構成する熱可塑性エラストマー製シートは、多数の貫通孔を有することを、一つの重要な特徴とする。
このような多数の貫通孔を有するシートとしては、いわゆる孔あきシート、多孔性シートなどが挙げられる。孔あきシートとしては、孔のないシート(またはフィルム)、織布、不織布などに、パンチングなどにより孔を設けたシート、網状体シート、編状体シートなどが挙げられる。また多孔性シートとしては、比較的孔径の大きい多孔膜が挙げられる。いずれの場合にあっても、シートの表裏が貫通した孔が多数設けられていることが重要である。また、孔の大きさは均一であることが好適である。これらの多数の貫通孔を有するシートのうち、孔あきシートが、本発明の目的達成のためには、より好適である。本発明の制振性シート、とりわけ孔あきシートの厚さは、0.1mm(100μm)~7mmが好適であり、0.2mm(200μm)~5mmがより好適である。
【0052】
また、本発明の制振性シートは、多数の貫通孔を有し、その開口率は5~80%である。開口率は、好適には10~70%であり、さらに好適には20~60%である。開口率は、後述の実施例に記載された測定法に従って求めることができる。
【0053】
貫通孔の平均孔径は、0.1mm(100μm)~8mmであることが好適であり、より好ましくは0.3mm(300μm)~6mm、さらに好ましくは0.5mm(500μm)~5mmである。ここで平均孔径とは、孔の最短径と最長径との平均値を言う。
【0054】
本発明の多数の貫通孔を有するシートを構成する熱可塑性エラストマー(それが熱可塑性エラストマーの樹脂組成物である場合を含む)の製造は、通常の樹脂組成物の製造方法あるいはエラストマー組成物の製造方法に従って行われる。その際、たとえば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて各成分を均一に混合する方法を用いることができる。押出機の設定温度は、150℃~300℃の中から任意に選ぶことができる。
【0055】
このようにして得られた溶融混錬物から、公知の方法を用いて、多数の貫通孔を有するシートを製造することができる。たとえば、凹凸を有するロール上に溶融混錬物を押出す方法、溶融混錬物をシート状に押出して得たシートをパンチングする方法、さらには溶融混錬物を繊維状に押出し、網状または編物状のシートを形成する方法により、所望の開口率と平均孔径を有するシートを得ることができる。さらには、多孔性分離膜の製法などにより目的のシートを得ることもできる。これらの方法うち、特に、パンチング法により得られるシートを得ることが、本発明の目的達成のためにはより好適である。
【0056】
パンチング法によりシートを得る方法としては、前記熱可塑性エラストマーまたは樹脂組成物からフィルムまたはシートを作成し、各種パンチング法により多数の貫通孔を有するシートを得る方法、または、前記熱可塑性エラストマーまたは樹脂組成物から調製した織布または不織布を用い、各種パンチング法により多数の貫通孔を有するシートを得る方法などが挙げられる。
【0057】
本発明の制振性シートは、上記した多数の貫通孔を有するシートの片面または両面に粘着剤(粘着剤層)を有する粘着剤付きシートとすることを極めて重要な特徴とする。以下、この点について述べる。
【0058】
<粘着剤(粘着剤層)>
このような粘着剤付きシートを得るための方法としては、多数の貫通孔を有するシート上に粘着剤が片面または両面に付与されたテープを被覆(または貼付)する方法、多数の貫通孔を有するシート上に粘着剤を塗布し、または該シートを粘着剤に含浸する方法などが挙げられる。これらの方法のうち、粘着剤が付与された両面テープをシート上に被覆(または貼付)する方法が好適である。多数の貫通孔を有するシートは貫通孔において開口して開口部を形成しているため、片面または両面の粘着剤は開口部を通じてシート内部にも存在することによりシートを強固に接着させる。特に、シートの両面に粘着剤層が存在する場合は、両面に存在する粘着剤が開口部を通じてシート内部にも容易に存在することによりシートを強固に接着させる。この場合、さらにシートの両面に存在する粘着剤が相互に強固に接着するため、シートのより強固な接着が得られる。そのため、たとえば、特に激しい衝撃を受けた場合であっても、多数の貫通孔を有するシートと粘着剤がずれることがない。本発明の制振性シートは、シートが多数の貫通孔を有することとシートの片面または両面に粘着剤層が存在することの相乗効果により、接着性に優れ、とくに手にしびれなどの極めて少ないグリップ材などに好適な部材として有用である。
【0059】
粘着剤は、粘度100~15000mPa・s(25℃)を有する粘着剤であることが、本発明の目的達成のために好適であり、さらには多数の貫通孔を有するシートの貫通孔を通過しやすく、より強固な接着を与える点からも好適である。より好適な粘度は500~7000mPa・sである。ここで粘着剤とは、使用前は液体で、使用後は固体となる接着剤とは異なり、液体と固体の両方の性質を有し、常に濡れた状態で安定しているものを言う。
【0060】
このような特性を満足する粘着剤としては、具体的には、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂などの粘着剤が挙げられる。このうちアクリル樹脂が前記した熱可塑性エラストマー、特にポリスチレン系エラストマーと柔軟性が類似し親和性も良好であることから好適である。
【0061】
アクリル系樹脂としては、炭素数1~14のアルキル基を有するアクリレートおよび/またはメタクリレート(以下、(メタ)アクリレートともいう)を少なくとも1種含むアクリルポリマーが好ましい。上記アクリルポリマーは、炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートをモノマー成分として、50質量%~100質量%含有することが好ましい。
【0062】
炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは1種のみ用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0063】
なかでも、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数4~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートをモノマー成分として含むことが好ましい。
【0064】
上記アクリルポリマーは、炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレート以外に、任意の適切な他のモノマー成分を含んでいてもよい。他のモノマー成分としては、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物などの凝集力・耐熱性向上に寄与し得るモノマー成分や、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、N-アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類等の接着力向上や架橋化基点として働く官能基を有するモノマー成分が挙げられる。このような他のモノマー成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0065】
スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などが挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。シアノ基含有モノマーとしては、例えば、アクリロニトリルが挙げられる。ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニルが挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレンが挙げられる。
【0066】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。酸無水物基含有モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどが挙げられる。アミド基含有モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、ジエチルアクリルアミドなどが挙げられる。アミノ基含有モノマーとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。ビニルエーテル類としては、例えば、ビニルエチルエーテルなどが挙げられる。
【0067】
このような他のモノマー成分は、例えば、粘着力を調整し易いという点から、得られるアクリルポリマーのTgが0℃以下となるよう用いられる。なお、アクリルポリマーのTgは、例えば、-100℃以上であることが好ましい。
上記アクリルポリマーの重量平均分子量は、10万以上が好適である。
【0068】
上記アクリルポリマーは、任意の適切な重合方法により得られる。例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などアクリルポリマーの合成手法として一般的に用いられる重合方法が挙げられる。
【0069】
粘着剤は、上記樹脂以外の他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、ポリエーテル樹脂、変性ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。他の樹脂を含む場合、他の樹脂の含有割合は20質量%以下であることが好ましい。
【0070】
粘着剤は、樹脂成分以外に任意の適切な添加剤を含みうる。このような添加剤としては、例えば、架橋剤、カップリング剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レべリング剤、界面活性剤、帯電防止剤、スベリ性向上剤、濡れ性向上剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、架橋促進剤、架橋触媒、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料などの粉体、粒子状、箔状物等が挙げられる。
【0071】
架橋剤としては、任意の適切な架橋剤を用いることができ、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン化合物が挙げられる。架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0072】
架橋剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~15質量部であり、より好ましくは2質量部~10質量部である。
【0073】
多数の貫通孔を有するシートへの粘着剤の被覆、または含浸は、任意の適切な方法により行い得る。たとえば、被覆または含浸方法としては、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などが挙げられる。粘着剤はシートの片面または両面に被覆または含浸されるが、両面に被覆または含浸することが好適である。シート上に存在する粘着剤層の厚み(片面の厚みまたは両面の合計厚み)は20μm~3mmが好適であり、より好適には50μm~2mmである。
【0074】
このようにして得られた多数の貫通孔を有する制振性シートは、使用に際し、通常、その片方の粘着剤面(手等の身体に接触する側の面)に、皮革、合成皮革、樹脂などからなる表皮材または外装材が積層され、もう一方の粘着剤面には各種被着体が接着される。ここで合成皮革としては、塩化ビニルレザー、熱可塑性ポリウレタン(TPU)レザーが例示され、樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル樹脂などの各種樹脂、各種ゴム、各種熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。さらに被着体としては、野球用の金属製または木製バット、テニスラケットなどに用いるグリップ材などのスポーツ用品が好適である。他の被着体として、さらにはシューズの底材、コルセットなどの医療用衣類、ブラジャーなどのインナー類なども挙げられる。
本発明の制振性シートは、被着体に合わせて、任意の形状に成形することが可能である。
【実施例
【0075】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例の物性評価は、以下に示す方法によって行った。
【0076】
(1)損失係数(tanδ)の測定
動的粘弾性測定装置を用いて、周波数30Hz、温度0℃における損失係数(tanδ)の値を求めた。
機種:Rheogel-E4000
測定法:動的粘弾性率測定(正弦波)
測定モード:温度依存性
チャック:引っ張り
波形:正弦波
サンプル形状:幅4.90mm、厚み0.3mm、長さ15mmのシート(粘着剤被覆前)
【0077】
(2)開口率の測定
10cm×10cmの(多孔)シートを複写機(リコー製IPSio0 SP6310 RPCS型)を用い、400%倍率でA4サイズにコピー後、(多孔)シート以外の部分を除去したコピー用紙の質量(W1[g])を測定した後、コピー用紙の開孔部に相当する部分を全て切り抜き、切り抜いたコピー用紙の質量(W2[g])を測定し、下記の式に従って開孔率(%)を算出した。
開孔率(%)=[(W1-W2)/W1]×100
【0078】
(3)手のしびれ感覚(官能試験)
グリップテープを巻き付けた球技用バット(製品名:スカイビート31K、SSK製)を用いて2人の野球経験者が20球打球し、打球箇所が芯から外れたときの手のしびれ感を官能的に調べた。
ここで、下記「反発弾性(振動減衰性)」に記載した測定用サンプルをグリップテープとして使用し、離型紙を剥離し、右巻きにテープの重なりが1~2mmとなるようにして長さ約20cmにわたって螺旋状に球技用バットに巻き付けた。
1.かなり激しいしびれ感がある。
2.かなりしびれ感がある。
3.少ししびれ感がある。
4.ほとんどしびれ感がない。
5.しびれ感を感じない
(4)反発弾性(振動減衰性)
以下の測定用サンプル(幅25cm、厚み1.5cm、長さ15cm)を、(a)~(d)をこの順に積層することにより作製し、リュプケ式反発弾性試験機を用い、JIS K 6255:2013に準じて振子式試験を行った。測定開始から振子が静止するまでの時間を測定することにより、反発弾性(振動減衰性)を評価した。
振子が静止するまでの弾性率/時間チャートの一例を図1に示す。
(a)表皮材(ウレタン系合成皮革、共和ライフテクノ株式会社製)
(b)両面粘着テープ(製品名:No.53100、日東電工株式会社製)
(c)エラストマーシート
(d)両面粘着テープ/離型紙(製品名:No.53100、日東電工株式会社製)
振子が静止するまでの時間が短いほど、振動減衰性に優れることを意味する。
(5)被着体接着性
以下の測定用サンプル(幅25cm、厚み1.5cm、長さ15cm)を、(a)~(d)をこの順に積層することにより作製し、島津社製AG-Iの引張試験機を用いて、引張速度100mm/分の速度で(b)(c)間の180°剥離強度を測定して、被着体との接着性を評価した。
(a)表皮材(ウレタン系合成皮革、共和ライフテクノ株式会社製)
(b)両面粘着テープ(製品名:No.53100、日東電工株式会社製)
(c)エラストマーシート
(d)両面粘着テープ/離型紙(製品名:No.53100、日東電工株式会社製)
【0079】
<ブロック共重合体(a1)の調製>
以下に示す方法により、ブロック共重合体(a1)として、成分(a1-1)、成分(a1-2)、及び成分(a1-3)を調製した。
【0080】
・成分(a1-1)
種類:スチレン-イソプレン-スチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体[スチレンの含有量:20質量%、重量平均分子量100,000、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量60モル%]
調製:
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン64L、開始剤としてsec-ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)0.20Lを仕込み、有機ルイス塩基としてテトラヒドロフラン0.3L(開始剤中のリチウム原子に対して、量論比で15倍相当)を仕込んだ。50℃に昇温した後、スチレン2.3Lを加えて3時間重合させ、引き続いてイソプレン23Lを加えて4時間重合を行い、さらにスチレン2.3Lを加えて3時間重合を行った。得られた反応液をメタノール80Lに注ぎ、析出した固体を濾別して50℃で20時間乾燥することにより、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンからなるトリブロック共重合体を得た。
続いて、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンからなるトリブロック共重合体10kgをシクロヘキサン200Lに溶解し、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を該共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンからなるトリブロック共重合体の水添物を得た。
【0081】
・成分(a1-2)
種類:スチレン-イソプレン-スチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体
[スチレンの含有量:30質量%、重量平均分子量290000、イソプレン及び//またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量55モル%]
調製:
乾燥した窒素で置換された耐圧容器に、スチレン1.84kgおよび溶媒としてシクロヘキサン55.8kgを仕込んだ。この溶液に、開始剤としてsec-ブチルリチウム(10質量%、シクロヘキサン溶液)45mlを加え、60℃で1時間重合させた。次いで、この反応混合物にルイス塩基としてテトラヒドロフラン305gを加えた後、イソプレン8.57kgを加えて2時間重合を行い、さらにスチレン1.84kgを加えて1時間重合することにより、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレントリブロック共重合体を得た。続いて、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)をポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンからなるトリブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で5時間、水添反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンからなるトリブロック共重合体の水添物を得た。
【0082】
・成分(a1-3)
種類:スチレン-イソプレン-スチレン型トリブロック共重合体
[スチレンの含有量:20質量%、重量平均分子量100,000、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量56モル%]
調製:
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン64L、開始剤としてsec-ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)0.20Lを仕込み、有機ルイス塩基としてテトラヒドロフラン0.3L(開始剤中のリチウム原子に対して、量論比で15倍相当)を仕込んだ。50℃に昇温した後、スチレン2.3Lを加えて3時間重合させ、引き続いてイソプレン23Lを加えて4時間重合を行い、さらにスチレン2.3Lを加えて3時間重合を行った。得られた反応液をメタノール80Lに注ぎ、析出した固体を濾別して50℃で20時間乾燥することにより、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンからなるトリブロック共重合体を得た。
続いて、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンからなるトリブロック共重合体10kgをシクロヘキサン200Lに溶解し、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を該共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンからなるトリブロック共重合体の水添物を得た。
【0083】
<ブロック共重合体(a2)の調製>
以下に示す方法により、ブロック共重合体(a2)として、成分(a2-1)、及び成分(a2-2)を調製した。
・成分(a2‐1)
種類:スチレン-イソプレン・ブタジエン-スチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体
[スチレンの含有量:30質量%、重量平均分子量270000、イソプレン及びブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量8モル%]
調製:
乾燥した窒素で置換された耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサンを55.8kg、開始剤としてsec-ブチルリチウム(10質量%、シクロヘキサン溶液)53ml、ルイス塩基を加えず、重合させるモノマーとしてスチレン1.59kg、イソプレンとブタジエンの混合物[イソプレン/ブタジエン=55/45(モル比)]7.44kg、スチレン1.59kgを逐次添加して重合させポリスチレン-ポリ(イソプレン/ブタジエン)-ポリスチレントリブロック共重合体を得た。水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を該共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で5時間、水添反応を行い、脱触媒および乾燥を行い、ポリスチレン-ポリ(イソプレン/ブタジエン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物を得た。
【0084】
・成分(a2‐2)
種類:スチレン-ブタジエン-スチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体[スチレンの含有量:34質量%、重量平均分子量260000、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量40モル%]
調製:
乾燥した窒素で置換された耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサンを55.8kg、開始剤としてsec-ブチルリチウム(10質量%、シクロヘキサン溶液)59ml、ルイス塩基としてN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン99g、重合させるモノマーとしてスチレン1.84kg、ブタジエン8.57kg、スチレン1.84kgを逐次添加してポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレントリブロック共重合体を得た。水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を該共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で5時間、水添反応を行い、脱触媒および乾燥を行い、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物を得た。
【0085】
<炭化水素系軟化剤(b)>
・成分(b-1)
ダイアナプロセスオイルPW-380(商品名)、出光石油化学株式会社製、パラフィン系オイル、動粘度(40℃):381.6mm/s、環分析パラフィン:73%、環分析ナフテン:27%、重量平均分子量:1304
・成分(b-2)
ダイアナプロセスオイルPW-90(商品名)、出光石油化学株式会社製、パラフィン系オイル、動粘度(40℃):95.5mm/s、環分析パラフィン:71%、環分析ナフテン:29%、重量平均分子量:790
【0086】
<ポリオレフィン系重合体(c)>
・成分(c-1)
ポリプロピレン:プライムポリプロ F219DA(商品名)、株式会社プライムポリマー製、MFR(230℃):8.0g/10分
・成分(c-2)
ポリプロピレン:プライムポリプロ J108M(商品名)、株式会社プライムポリマー製、MFR(230℃):45g/10分
【0087】
<実施例1~11>
二軸押出機(口径46mm、L/D=46)を使用して、上記の各構成成分を表1に示す配合に従って混合した後、190℃で溶融混練し、ペレット状の樹脂組成物を得た。これらの樹脂組成物を用い、ノズル温度290℃の条件で吐出しフィルム化し、得られたフィルムをパンチングして、所定の平均孔径と開口率を有する、多数の貫通孔を有するシート(孔あきシート)を得た。これらの多数の貫通孔を有するシートの両面に、両面テープ(アクリル系粘着剤:No.53100、日東電工株式会社製)を貼り粘着材被覆シートを得た。この被覆シートの片面の粘着剤層に熱可塑性ポリウレタン(TPU)レザーを被覆し、積層体シートを得た。
【0088】
<比較例1~2>
表1に示す樹脂配合に従って、実施例1と同様にして多層シート(積層体シート)を得た。
【0089】
<比較例3~4>
実施例1の樹脂組成物フィルムの代わりにポリエチレンテレフタレートフィルム(PET、商品名:ルミラーS10)(比較例3)、ポリウレタンフィルム(TPU、商品名:パンデックスT8180Nを製膜)をそれぞれ使用し、他は実施例1と同様にして積層体シートを得た。
【0090】
<比較例5>
実施例1の孔あきシートの代わりに、孔なしフィルムを使用し、他は実施例1と同様にして積層体シートを得た。
【0091】
<比較例6>
実施例1の孔あきシートの代わりに、特開平2014-218764号公報(特許文献6)に記載された実施例1に準じて調製したエラストマー不織布(目付40g/m、tanδ1.2、メルトブローン不織布)を使用し、他は実施例1と同様にして積層体シートを得た。
【0092】
実施例1~12および比較例1~5の結果を表1に示す。





















【0093】
【表1】
【0094】
表1に示すとおり、本発明の制振性シートは、いずれも激しい衝撃を受けた場合でも、手のしびれが極めて少なかったが、比較例1~5では本発明ほどの効果は示さなかった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の制振性シートは、激しい衝撃を受けた場合でも、手、足、身体が極めて少ないので、とくにバットやテニスラケットなどのグリップとして極めて有用である。さらには、日用品・スポーツ用品の手袋、防具、シューズ、さらには医療用品のコルセットやサポーターやマスク、下着類のブラジャーやファンデーション類やおむつ等にも適用できる。
図1