(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 1/62 20060101AFI20220214BHJP
E06B 7/12 20060101ALI20220214BHJP
E06B 7/22 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
E06B1/62 Z
E06B7/12
E06B7/22 B
(21)【出願番号】P 2020027526
(22)【出願日】2020-02-20
(62)【分割の表示】P 2016001161の分割
【原出願日】2016-01-06
【審査請求日】2020-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 富広
(72)【発明者】
【氏名】山田 良
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-231773(JP,A)
【文献】特開2006-188925(JP,A)
【文献】特開2014-062372(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0269432(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-1/70
E06B 7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子を納めるとともに、少なくとも金属枠を有する枠体と、
金属框と樹脂框とで構成される框体と、
前記枠体及び屋内側部材の間に形成された間隙に設置した介装部材と、を備え、
前記介装部材は、樹脂製であり、前記障子の前記框体に向かって延び、該框体に当接するヒレ部を有し、
前記金属枠には、前記框体に向かって延びるシール部材が設けられ、
前記シール部材は、前記金属框に当接することで気密ラインが形成され、
前記ヒレ部と前記シール部材との間に形成された空間が断熱層として機能
し、
前記介装部材は、該介装部材に設けた係止部または係合受け部の見込み方向屋内側に前記係止部または係合受け部を囲うように延びて、前記枠体に当接する当接部を備えたことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記ヒレ部は、前記介装部材と一体形成されており、該介装部材の他の部位よりも軟質で弾性変形可能な樹脂で形成されている請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記介装部材は、前記枠体の屋内側に該枠体を覆うように設けられ、
前記間隙内には、前記枠体と前記介装部材の一方に設けた係止部と他方に設けた係合受け部とを互いに係合して配設されている請求項1または請求項2に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体と介装部材を固定した建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建具において、枠体を額縁等の躯体に連結するアングル構造として次の2種類のものが知られている。
例えば特許文献1に記載されたアングル付きのサッシ枠では、下枠と額縁との間に小さな間隙が形成されている。この間隙内に断面略L字状でアルミ合金の押出形材からなるアングル材の一方の取付片が挿入されてネジで枠体に固定されている。アングル材の他方の取付片は額縁の上面にネジで固定されている。そして、アングル材の他方の取付片の上面にカバー材を載置して枠体の上端と額縁との間に嵌合して隠している。
【0003】
また、
図7に示す他の構造のアングル付きのサッシ枠100では、アルミ合金製の下枠101と額縁102とを当接させて、額縁102から下枠101の一段下がった面上の内障子走行用のレール103との間に階段形状で樹脂製のアングル104を設置している。
アングル104は、額縁102上で一端部をネジ止めすると共に、アングル104の下段の両端部を下枠101の屋内側壁面とレール103の付け根との2カ所の係止部に係止して固定している。
しかも、内障子106の下框に設けたシール部材105はレール103より外側に設定されていて先端がレール103に当接して気密にシールしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されたサッシ枠のアングルは、間隙に挿入された一方の取付片が枠体にネジ止めされているために、設置後にアングルが割れたり損傷したりした場合でも取り外すことができなかった。
【0006】
また、後者のサッシ枠のアングル104は、アングル104の下段の両端部を下枠101の屋内側壁面とレール103の付け根との2カ所の係止部で固定しているため、取り付け後に係止部を取り外すことが困難であった。そのため、アングル104の取り付け使用後にアングル104が割れたり損傷したりした場合に取り外しや交換が困難であった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、介装部材の取り付けと取り外しを容易に行える建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による建具は、障子を納めるとともに、少なくとも金属枠を有する枠体と、金属框と樹脂框とで構成される框体と、前記枠体及び屋内側部材の間に形成された間隙に設置した介装部材と、を備え、前記介装部材は、樹脂製であり、前記障子の前記框体に向かって延び、該框体に当接するヒレ部を有し、前記金属枠には、前記框体に向かって延びるシール部材が設けられ、前記シール部材は、前記金属框に当接することで気密ラインが形成され、前記ヒレ部と前記シール部材との間に形成された空間が断熱層として機能し、前記介装部材は、該介装部材に設けた係止部または係合受け部の見込み方向屋内側に前記係止部または係合受け部を囲うように延びて、前記枠体に当接する当接部を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、前記ヒレ部は、前記介装部材と一体形成されており、該介装部材の他の部位よりも軟質で弾性変形可能な樹脂で形成されていてもよい。
【0010】
また、前記介装部材は、前記枠体の屋内側に該枠体を覆うように設けられ、前記間隙内には、前記枠体と前記介装部材の一方に設けた係止部と他方に設けた係合受け部とを互いに係合して配設されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明による建具では、枠体と屋内側部材の間隙内で枠体とアングルの係止部と係合受け部を係合させることでアングルを枠体に固定できる上に、係止部と係合受け部が枠体の屋内側の間隙内に位置するために、アングルを引っ張ることで係止部と係合受け部の係合を離脱させて取り外しできる。そのため、枠体に対するアングルの取り付けと取り外しが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態による引き違い窓の要部縦断面図である。
【
図2】
図1に示す引き違い窓の要部水平断面図である。
【
図3】
図1に示す引き違い窓の上部拡大断面図である。
【
図4】
図1に示す引き違い窓の下部拡大断面図である。
【
図5】
図4に示す下枠と下部樹脂アングルとの配置構成を示す要部拡大断面図である。
【
図6】
図5において、下部樹脂アングルを取り外す状態を示す
図5と同様な断面図である。
【
図7】従来の下枠と額縁と下部樹脂アングルの配置構成を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態による複合建具の一例としての引き違い窓について添付図面により説明する。
本発明の実施形態による引き違い窓1を
図1から
図6に基づいて説明する。
図1及び
図2に示す実施形態による引き違い窓1は、上枠2と下枠3と左右の縦枠4とで四角形枠状に形成された枠体5内に内障子7と外障子8が見込み方向に納められている。内障子7と外障子8はそれぞれ上框10と下框11と左右の縦框12、13とで四角形枠状に形成され、その内部に例えばペアガラス等の複層ガラス9が納められている。
図1及び
図3において、枠体5の上枠2は主として金属上枠15で形成され、その屋内側の面に樹脂製の上部樹脂アングル
(介装部材)16が連結されている。金属上枠15はその上面部をなす基部15aの見込み方向にみて屋外側端部から垂下する屋外側垂下片部15bと中間部から垂下する中間レール部15cと屋内側端部から垂下する屋内側垂下片部15dとを有している。
【0015】
中間レール部15cにはその屋内側に断面略櫛形をなす中間樹脂枠17が連結され、屋内側垂下片部15dにはその屋外側の面に略板状の内側樹脂枠18が当接されている。しかも中間樹脂枠17と内側樹脂枠18は樹脂製の連結板14によって接続されて基部15aに係合されている。金属製の屋内側垂下片部15dは内側樹脂枠18と上部樹脂アングル16によって屋内外の面a1,a2を囲われている。
そして、屋外側垂下片部15bと中間レール部15cとの間に外障子8が走行可能に保持されている。中間レール部15cと屋内側垂下片部15dとの間にも内障子7が走行可能に保持されている。
また、
図1及び
図4において、下枠3は主として金属下枠19で形成されており、金属下枠19の見込み方向に見て屋外側領域に外側レール20が形成され、屋内側領域には内側レール21が形成されている。外側レール20には外障子8の図示しない戸車が走行可能に載置され、内側レール21には内障子7の戸車が走行可能に載置され、それぞれ外障子8と内障子7の荷重を受けている。金属下枠19の屋内側端部には
図4に示す木製の額縁22との間に断面略L字形状で樹脂製の下部樹脂アングル
(介装部材)24が取り外し可能に設置されている。
【0016】
また、
図2において、左右の縦枠4は主として金属縦枠25で形成され、左側の金属縦枠25の屋内側に複数のホロー部を形成した樹脂縦枠26が連結され、右側の金属縦枠25の屋内側には上部樹脂アングル16と同様な構成を備えた側部樹脂アングル
(介装部材)27が連結されている。
また、外障子8と内障子7は、複層ガラス9の四辺の框部が上框10、下框11、左右の縦框12,13で構成されている。複層ガラス9はグレージングチャンネルを介して金属上框10a、金属下框11a、左右の金属縦框12a、13aにそれぞれ設けたガラス受け部34で四辺の側縁部を支持されている。これら金属框の屋内側を樹脂上框10b、樹脂下框11b、左右の樹脂縦框12b、13bでそれぞれ覆っている。
なお、金属上枠15、金属下枠19、左右の金属縦枠25、金属上框10a、金属下框11a、左右の金属縦框12a、13aは例えばアルミ合金製である。
【0017】
次に
図3により上枠2の金属上枠15と内障子7の上框10との間の気密構造と断熱構造について説明する。金属上枠15の屋内側端部に形成した屋内側垂下片部15dは基部15aから垂下されており、その下端部の屋外側の面a2には受け部35が形成されている。この受け部35には気密材として例えば弾性を有するアルミ合金製のシール部材36が嵌合しており、その先端は内障子7の金属上框10aの屋内側に形成した面部10aaに当接して気密にシールしている。
なお、気密材としてアルミ合金等の金属に代えてゴム等の弾性部材を用いてもよい。また。屋内側垂下片部15dの屋内側の面a2には係合受け部37が形成されている。
【0018】
また、金属上枠15の屋内側垂下片部15dに係合された樹脂製の上部樹脂アングル16は、段付き部16aを備えた本体部16bを有し、その先端片16cが屋内側垂下片部15dの下端に当接して覆っている。
更に、上部樹脂アングル16は、段付き部16aの近傍先端側に基部が屋内側垂下片部15dに当接すると共に先端側が屋内側に屈曲して係合受け部37に係合可能な係止片38(係止部)を有する。更に、上部樹脂アングル16は、本体部16bから上方に延びていて係止片38を囲うように先端側で屈曲または湾曲して屋内側垂下片部15dに当接する当接片39(当接部)を形成している。
また、段付き部16aの角部には屋外側即ち内障子7の上框10に向かって延びる軟質樹脂からなるヒレ部40が連結または一体形成されている。ヒレ部40の軟質樹脂は他の樹脂よりも軟質で弾性変形可能に形成されており、内障子7の上框10に当接している。
内障子7を走行させるとヒレ部40が当接した状態で変位し、気密状態を維持する。
なお、ヒレ部40は他の樹脂と同様に比較的硬質の樹脂で形成してもよく、この場合には内障子7の上框10と非接触で近接することが気密を保持するために好ましい。
【0019】
一方、内障子7の上框10には、金属上框10aの屋内側端部は例えば鉛直に延びる面部10aaが、上部樹脂アングル16のシール部材36に当接して気密にシールしている。シール部材36と面部10aaとで外気の屋内への通気を阻止する気密ラインを構成する。
また、金属上框10aに屋内側で連結された樹脂上框10bは、ヒレ部40が当接する部分が例えば平面状をなす屋内側鉛直部10baを形成している。更に、その下方部分は屋内側に向かって拡幅するように傾斜するテーパ部10bbを形成し、更にその下方側には先端に突起部を有する凹部10bcを形成している。
なお、樹脂上框10bは内障子7を枠体5から屋内側に外す際に上枠2に当接して損傷しないように軟質樹脂で形成してもよい。
【0020】
そのため、上部樹脂アングル16の段付き部16aと先端片16cとヒレ部40とで、屋外側から伝達される冷気を断熱する断面略コの字状の断熱層42を構成し、断熱ラインを構成する。また、屋内側垂下片部15dの面a1,a2に付着した結露がその面a1,a2に沿って降下した場合でも断熱層42によって保持することができる。更にこの断熱層42から結露水が軟質のヒレ部40を経由して樹脂上框10bに流れ落ちても凹部10bcで貯留することができる。断熱層42において、先端片16cは上框10に非接触でヒレ部40は接触しているが、ヒレ部40も非接触でもよく上框10に近接する位置に延びていればよい。
そして、樹脂上框10bは凹部10bcから垂直面またはわずかに傾斜して降下する面と複層ガラス9側に傾斜する逆テーパ面10bdとを有している。これによって凹部10bcをあふれ出た結露水は樹脂上框10bに沿って流れて逆テーパ面10bdから複層ガラス9上に流れ落ちるため、室内に落下しない。
【0021】
なお、
図1及び
図3において上枠2の金属上枠15における中間レール部15cの屋外側にも外障子8の上框10に当接する気密材としてシール部材36Aが設置されており、気密ラインを構成している。
また、中間レール部15cの屋内側に連結した中間樹脂枠17は、上述した屋内側垂下片部15dに取り付けた上部樹脂アングル16と同様な構成を有している。即ち、中間レール部15cの屋内側に連結した中間樹脂枠17も先端片17aが中間レール部15cの下端部に当接することで屋内側と先端を囲っている。中間樹脂枠17の先端片17aと傾斜段部と軟質樹脂製のヒレ部40Aとによって断面略コの字状の断熱層42Aを形成し、断熱層42Aによって断熱ラインを構成している。
また、外障子8の金属上框10aに取り付けた樹脂上框10bにおいて、内障子7に設けた樹脂上框10bと同様に、ヒレ部40Aが当接する屋内側鉛直部10ba、テーパ部10bb、凹部10bc、凹部10bcから垂直またはわずかに傾斜して降下する面と逆テーパ面10bdとを有している。
【0022】
次に下枠3の金属下枠19と額縁22との間に設けた下部樹脂アングル24について
図4乃至
図6により説明する。
下部樹脂アングル24は上述した上部樹脂アングル16と略同一の構成を有している。
金属下框11aは屋内側端部で樹脂下框11bとの係合部の更に下側に延びていて屈曲する下部枠11aaを形成している。金属下枠19の屋内側端部に設けた屋内側壁面19aは上下方向に延びており、上端部で下部枠11aaと水平方向に重なっていて、その屋外側に受け部19bが形成されている。屋内側壁面19aの屋内側には係合受け部19cが形成されている。
そして、この受け部19bに嵌合するアルミ合金製またはゴム製等の弾性部材からなるシール部材44が金属下框11aの下部枠11aaに当接しており、冷気の屋内側への通気を阻止する気密材を構成する。
【0023】
また、金属下枠19の屋内側壁面19aと額縁22との間には小さな間隙Kが形成され、その上部に下部樹脂アングル24が設置されている。下部樹脂アングル24は略平板状に形成されていてその基部は固定ボルト45によって額縁22の段部に固定され、先端は屋内側壁面19aの上端に載置されて先端に形成した弾性を有する軟質樹脂製のヒレ部46が金属下框11aに設けた下部枠11aaに当接している。
下部樹脂アングル24には、ヒレ部46の近傍で間隙K内の下方に向けて係合受け部19cに係合可能な係止片48(係止部)が爪部として形成され、更にその額縁22側には間隙K内の下方に延びていて先端側で屈曲または湾曲して金属下枠19の屋内側壁面19aに当接する当接片49(当接部)を形成している。
【0024】
そのため、下部樹脂アングル24は固定ボルト45と係止片48によって額縁22と金属下枠19に係止されている。しかも係止片48は屋内側壁面19aの屋内側に設けられているため、固定ボルト45を額縁22から外して下部樹脂アングル24のヒレ部46側の先端を引き上げると、当接片49が弾性変形することで係止片48が係合受け部19cから外れるため取り外すことができる。そのため、下部樹脂アングル24は着脱交換可能である。
また、上述した上部樹脂アングル16、中間樹脂枠17も下部樹脂アングル24と概略で同一構成を備えている。即ち、下部樹脂アングル24では、先端片16cを引き下げると当接片39が弾性変形して係止片38を係合受け部37から離脱させて着脱交換できる。中間樹脂枠17も先端片17aを引き下げると基部15aに設けた係合受け部と係合部が外れて交換可能である。
また、外障子8の金属下框11aと金属下枠19の当接部分には、金属下枠19に形成された受け部19dに嵌合するアルミ合金製またはゴム製等の弾性部材からなるシール部材44Aが金属下框11aに当接しており、シール部材44Aは冷気の屋内側への通気を阻止する気密材を構成する。
【0025】
本実施形態による引き違い窓1は上述した気密及び断熱構造を備えており、次にその作用を説明する。
図1及び
図2に示す引き違い窓1は例えば中層階や高層階等のビルディングに設置されているものとする。引き違い窓1の外障子8と内障子7の閉鎖状態において、内障子7側では、低温の外気が、上枠2の中間レール部15c及び中間樹脂枠17と内障子7の上框10との間の空間を流れて屋内側に流入する。
そして、外気は屋内側の金属上枠15と内障子7の上框10との隙間を通って屋内側垂下片部15d側に流れる。ここでは、屋内側垂下片部15dに設けたシール部材36が内障子7の金属上框10aに当接することで気密シールできるので、外気がシール部材36を超えて屋内側に流れることを阻止する。
【0026】
また、屋内側垂下片部15dと内障子7の上框10との間に流入する一部の外気が屋内側垂下片部15dを冷却して下方に向けて冷気を伝達する。この場合、上部樹脂アングル16の先端には断面略コの字状の断熱層42が形成されているために、上部樹脂アングル16を通した低温の伝達や屋内側への冷気の流入が阻止され、或いは低減できる。
しかも、
図3に示すように、屋内側垂下片部15dは屋外側の内側樹脂枠18と屋内側の上部樹脂アングル16によって先端と両面a1,a2を囲われているため、表面温度が高く結露を抑制できる。特に、屋内側垂下片部15dの先端と屋内側は、上部樹脂アングル16の断熱層42と当接片39が屋内側垂下片部15dの屋内側の面a1を覆うために断熱効果を発揮して、屋内への冷気の伝達を抑制すると共に屋内側垂下片部15dの屋内側の面a1に結露が生じることを低減できる。
しかし、一部の冷気は内側樹脂枠18を回り込んで屋内側垂下片部15dに接触することで、屋内側垂下片部15dの内外の面a1,a2に結露が生じることがある。この場合でも、屋内側垂下片部15dは上部樹脂アングル16の当接片39で覆われており、屋内側に露出しないので屋内の人が目視できない。
【0027】
そして、低温によって屋内側垂下片部15dの面a1,a2が結露して一部の結露水が水滴になって下方に流れたとしても、断面コの字状の断熱層42のヒレ部40で結露水を受け止めて保水することができ、結露水の落下を抑制できる。
また、断熱層42に保水された結露水がその重みでヒレ部40を経由して下方に流れる場合には、樹脂上框10bにおける屋内側鉛直部10baからテーパ部10bbを流れて突起を有する凹部10bcに貯留される。これによっても結露水が屋内側を落下することを防止できる。
更に凹部10bcを結露水が溢れたとしても、この結露水は床面等に落下することなく、樹脂上框10bの凹部10bcの略鉛直の面から逆テーパ面10bdを経由して複層ガラス9の表面に流れ落ちる。そのため、結露水の一部が内障子7の屋内側で樹脂上框10bから複層ガラス9を通って下方に流れたとしても目立たない。
【0028】
また、金属上枠15の屋外側垂下片部15bと外障子8の上框10との間を冷気が進入した場合でも、内障子7の場合と同様に断熱できる。即ち、外障子8の屋内側に設けた金属上枠15の中間レール部15cと外障子8の金属上框10aとの間に当接させたシール部材36Aによって内障子7の上框10との間で気密ラインを構成する。そのため、外気はシール部材36Aによって屋内側への進入を阻止される。
【0029】
更に、中間樹脂枠17は先端片17aが中間レール部15cの先端に当接して覆い、先端片17aとヒレ部40Aによる断面略コの字状の断熱層42Aを備えているため外気の屋内側への伝達を低減または阻止できる。
しかも、断熱層42Aに加えて、中間レール部15cの屋内側の面は中間樹脂枠17で囲われているために表面温度を向上でき、冷気による結露を阻止できる。仮にわずかに結露が生じたとしても、中間樹脂枠17で覆われているために屋内側に露出せず室内から目視できない。そして、中間レール部15cの屋外側の表面に結露が生じた場合、結露水が降下しても断熱層42Aで結露水の貯留を行えるため、落下を阻止できる。
また、断熱層42Aで貯留された結露水の一部がヒレ部40Aから降下した場合でも、同様に、流れ落ちる結露水を樹脂上框10bの凹部10bcに貯留でき、更には複層ガラス9に沿って流れ落とすことができる。
なお、上部樹脂アングル16を屋内側垂下片部15dに係止させ、中間樹脂枠17を中間レール部15cに係止させることで、熱によって上部樹脂アングル16や中間樹脂枠17が伸縮することを抑制できる。
【0030】
また、
図4乃至
図6において、下部樹脂アングル24が経時的に破損したり摩耗したりした場合でも容易に交換できる。即ち、下部樹脂アングル24を額縁22に固定した固定ボルト45を外して、ヒレ部46を有する先端を上方に持ち上げると、当接片49の先端が屋内側壁面19aに当接しているため弾性変形する。すると係止片48も変形して屋内側壁面19aの係合受け部19cから外れるため、容易に下部樹脂アングル24を取り外すことができる。そして、新しい下部樹脂アングル24を上述の操作と逆の操作で取り付けて固定ボルト45で額縁22に固定すればよい。
また、上部樹脂アングル16についても、同様に先端片16cを引っ張ることで当接片39を弾性変形させて係止片38を係合受け部37から外せばよい。
【0031】
また、
図1及び
図4において、内側レール21の屋内側において、内障子7の金属下框11aに金属下枠19の屋内側壁面19aに設けたシール部材44が当接して気密状態に保持している。そして、下部樹脂アングル24のヒレ部46も金属下框11aに当接して気密状態に保持している。また、外側レール20の屋内側において、外障子8の金属下框11aに金属下枠19の受け部19dに設けたシール部材44Aが当接して気密状態に保持されている。
そのため、雨水等が引き違い窓1に吹き付けたとしても内障子7や外障子8の金属下枠19における屋外側壁面11cで水切りされて屋内側に流入する雨水は少ない。しかも内障子7と外障子8のシール部材44、44Aは内側レール21、外側レール20の屋内側に設置されているため、外気圧と内気圧の差圧によって雨水がシール部材44、44Aを介して屋内側に流入することを防止できる。
【0032】
上述のように本実施形態による引き違い窓1によれば、下枠3の下部樹脂アングル24と上枠2の上部樹脂アングル16は、屋内側壁面19a、屋内側垂下片部15dの屋内側に係止片48、38と当接片49、39を設けたため、屋外側の先端を引き剥がすことで弾性変形させて容易に取り外しと取り付けを行える。しかも、当接片49、39によって係止片48、38との間や、屋内側壁面19a、屋内側垂下片部15dとの間に断熱層を形成できる。
また、下枠3において、内障子7及び外障子8の各金属下枠19は内側レール21、外側レール20の屋内側にシール部材44、44Aを設けたため、高層ビルの中高層階等であっても下枠3に吹き込んだ雨水等が内外の気圧差で屋内側に浸入することを防止できる。
【0033】
なお、本発明による引き違い窓1は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能である。以下に、本発明の他の実施形態や変形例等について説明するが、上述した実施形態で説明した部品や部材等と同一または同様なものについては同一の符号を用いて説明を省略する。
【0034】
上述した実施形態において、下部樹脂アングル24や上部樹脂アングル16の当接片49、39は金属下枠19の屋内側壁面19aや金属上枠15の屋内側垂下片部15dに当接するまで延ばして形成したが、係止片38、48を覆うように長く延びて断熱性を確保できれば非接触でもよい。この場合でも下部樹脂アングル24や上部樹脂アングル16を取り出す際に弾性変形させると、当接片49、39は屋内側壁面19aや金属上枠15の屋内側垂下片部15dに当接する。
また、下部樹脂アングル24と屋内側壁面19aや上部樹脂アングル16と屋内側垂下片部15dに係止片48、38と係合受け部19c、37をそれぞれ設けたが、係止片48、38と係合受け部19c、37の配置を逆に設定してもよい。この場合、下部樹脂アングル24や上部樹脂アングル16に係合受け部19c、37を設けることになる。
【0035】
また、上述した各実施形態では気密材を形成するシール部材44、44A、36を屋内側壁面19a、金属下枠19、屋内側垂下片部15dに設けて内外障子7,8の下框11、上框10に当接させるようにしたが、これとは逆に下框11や上框10にシール部材44、44A、36を取り付けて屋内側壁面19a、金属下枠19、屋内側垂下片部15dに当接させてシールするようにしてもよい。
【0036】
また、上述の実施形態では、下部樹脂アングル24を固定ボルト45で固定する額縁22を設けたが、下部樹脂アングル24を固定できれば他の部材でもよく、これらの部材は躯体であり、本発明の屋内側部材に含まれる。
また、上部樹脂アングル16における断熱層42の形状は断熱効果を発揮できるものであればよく、他の適宜の構成を採用できる。例えば、断熱層42として断面コの字状や中空のホロー部形状に代えて、中空部を樹脂で充填した中実の断面四角形状やその他の断面形状等でもよいし、或いは上框10の樹脂上框10bに対向して略Z字状の断面形状を有していてもよい。また、内側樹脂枠18は必ずしも設置しなくてもよい。
【0037】
なお、上述した実施形態では下部樹脂アングル24、上部樹脂アングル16を樹脂で形成したが、弾性変形可能であればアルミ合金等の金属製でもよく、これらは本発明のアングルに含まれる。
また、本発明は引き違い窓1に限定されることなく、片引き障子等の各種の複合建具や金属製の建具等に適用できる。また、本発明はビルだけでなく一般住宅等にも適用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 引き違い窓
2 上枠
7 内障子
8 外障子
10 上框
11 下框
10a 金属上框
10b 樹脂上框
15 金属上枠
15d 屋内側垂下片部
16 上部樹脂アングル(介装部材)
16c、17a 先端片
19 金属下枠
19a 屋内側壁面
19c 係合受け部
22 額縁
24 下部樹脂アングル(介装部材)
36,36A シール部材
38,48 係止片
39,49 当接片
40、46 ヒレ部