(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】帛紗の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 33/00 20060101AFI20220214BHJP
B44C 5/00 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
A47G33/00 M
B44C5/00 F
(21)【出願番号】P 2020068496
(22)【出願日】2020-04-06
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】597090099
【氏名又は名称】高橋 テル子
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 テル子
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-291699(JP,A)
【文献】登録実用新案第3047015(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 33/00
B44C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布製の帛紗本体の表面に台座部を設け、該台座部の表面に表示部を設けた帛紗の製造方法であって、
台座部用接着芯の接着剤付着面に、台座部用紐を渦巻き状に巻
き、この台座部用紐の所々を糸で縫って止め付けた後、加熱押圧することにより前記台座部用紐を台座部用接着芯に接着して前記台座部を形成し、
表示部用接着芯の接着剤付着面に、表示部用紐を文字あるいは模様の形状に
糸で止め付けた後、加熱押圧することにより前記表示部用紐を表示部用接着芯に接着して前記表示部を形成し、
次いで、前記台座部を、前記台座部用接着芯を裏面側にして、前記帛紗本体の表面に取り付け、前記表示部を、前記表示部用接着芯を裏面側にして、前記台座部の表面に取り付ける
ことを特徴とする帛紗の製造方法。
【請求項2】
前記台座部が円形であり、前記台座部用接着芯の接着剤付着面に複数の円を同心状に描き、これらの円に沿って前記台座部用紐を渦巻き状に巻くことを特徴とする請求項1に記載の帛紗の製造方法。
【請求項3】
前記表示部用接着芯の接着剤付着面に、文字あるいは模様の輪郭に沿って前記表示部用紐を
糸で止め付けてから、その内側に前記表示部用紐を隙間なく
糸で止め付けることを特徴とする請求項1又は2に記載の帛紗の製造方法。
【請求項4】
前記帛紗本体は、表布と裏布とを重ねて成り、前記表布の裏面に接着芯を接着し、前記表布の表面に前記台座部を設け、該台座部の表面に前記表示部を設けることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の帛紗の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布製の帛紗本体の表面に文字あるいは模様が表示された帛紗の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
帛紗は、茶道において、茶道具を拭ったり、茶器を扱うための布帛であるが、進物の上に掛ける掛け帛紗として用いられることも多い。
従来、表面に吉祥柄や文字を刺しゅうした帛紗が知られているが、単に模様や文字を刺しゅうしただけでは、掛け帛紗として用いた場合に、見た目にも重量感にかけ、安定性が悪くてずり落ちる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、豪華で重量感があり、掛け帛紗として進物等に掛けた時に安定する帛紗を、高度な技術を必要とせずに容易に製造できる帛紗の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願請求項1に係る発明は、布製の帛紗本体の表面に台座部を設け、該台座部の表面に表示部を設けた帛紗の製造方法であって、台座部用接着芯の接着剤付着面に、台座部用紐を渦巻き状に巻き、この台座部用紐の所々を糸で縫って止め付けた後、加熱押圧することにより前記台座部用紐を台座部用接着芯に接着して前記台座部を形成し、表示部用接着芯の接着剤付着面に、表示部用紐を文字あるいは模様の形状に糸で止め付けた後、加熱押圧することにより前記表示部用紐を表示部用接着芯に接着して前記表示部を形成し、次いで、前記台座部を、前記台座部用接着芯を裏面側にして、前記帛紗本体の表面に取り付け、前記表示部を、前記表示部用接着芯を裏面側にして、前記台座部の表面に取り付けることを特徴とする帛紗の製造方法である。
【0005】
本願請求項2に係る発明は、前記台座部が円形であり、前記台座部用接着芯の接着剤付着面に複数の円を同心状に描き、これらの円に沿って前記台座部用紐を渦巻き状に巻くことを特徴とする請求項1に記載の帛紗の製造方法である。
【0006】
本願請求項3に係る発明は、前記表示部用接着芯の接着剤付着面に、前記文字あるいは模様の輪郭に沿って前記表示部用紐を糸で止め付けてから、その内側に前記表示部用紐を隙間なく糸で止め付けることを特徴とする請求項1又は2に記載の帛紗の製造方法である。
【0007】
本願請求項4に係る発明は、前記帛紗本体は、表布と裏布とを重ねて成り、前記表布の裏面に接着芯を接着し、前記表布の表面に前記台座部を設け、該台座部の表面に前記表示部を設けることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の帛紗の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、台座部用紐を渦巻き状に巻いて台座部を形成し、表示部用紐を文字あるいは模様の形状に取り付けて表示部を形成するので、高度な刺繍の技術がなくても、重量感のある豪華な台座部及び表示部を有する帛紗を作ることができ、この帛紗を掛け帛紗として使用した時、台座部の重さによって進物等の上に安定して掛けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】本発明の実施形態に係る帛紗の製造方法の第1工程を示す図。
【
図4】本発明の実施形態に係る帛紗の製造方法の第2工程を示す図。
【
図5】本発明の実施形態に係る帛紗の製造方法の第3工程を示す図。
【
図6】本発明の実施形態に係る帛紗の製造方法の第4工程を示す図。
【
図7】本発明の実施形態に係る帛紗の製造方法の第5工程を示す図。
【
図8】本発明の実施形態に係る帛紗の製造方法の第6工程を示す図。
【
図9】本発明の実施形態に係る帛紗の製造方法の第7工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、帛紗の平面図、
図2は、帛紗の断面図、
図3乃至図
9は、帛紗の製造工程を示す図である。
なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0011】
図1及び
図2に示すように、本実施形態において、帛紗1は、布製の帛紗本体2と、帛紗本体2の表面に設けられた台座部3と、台座部3の表面に設けられた表示部4とを有する。
帛紗本体2は、厚手の絹羽二重等を素材とし、表布5と裏布6とを二重に重ねて、適宜大きさの略正方形に形成される。帛紗本体2の色は、祝儀用の帛紗1であれば紫あるいは緋色とし、不祝儀用の帛紗1であれば、紫あるいは灰色とするのが望ましい。
【0012】
表布5の裏面には、接着芯7が接着され、帛紗本体2に張りをもたせてある。接着芯7は、不織布、麻布等を基布とする薄手でアイロン接着タイプのものを用いる。
また、帛紗本体2の四隅部には、帛紗1を掛け帛紗として用いた場合に周囲部が垂れ下がるように、金色、銀色、あるいは、帛紗本体2と同色の糸を素材とする房8が取り付けられている。
【0013】
台座部3は、円形であり、台座部用接着芯9の接着剤付着面に台座部用紐10を渦巻き状に取り付けて成る。台座部3の直径は、18cm~19cmとする。
台座部用接着芯9は、接着芯7と同様の素材を用いる。
台座部用紐10は、42本の白い絹糸と3本の金糸とを撚り合わせ、さらにこの撚り合わせた細紐を3束撚り合わせて形成する。
【0014】
本実施例では、表示部4は、「祝」のような祝儀用の文字の形状であり、表示部用接着芯11の接着剤付着面に表示部用紐12を取り付けて成る。
表示部用接着芯11は、接着芯7及び台座部用接着芯9と同様の素材を用いる。
表示部用紐12は、文字の輪郭に沿って取り付ける輪郭用紐12aと、その内側に取り付ける内部用紐12bとを含む(
図8)。
祝儀用の文字であれば、輪郭用紐12aは、30本の赤い絹糸と2本の金糸とを撚り合わせ、さらにこの撚り合わせた細紐を3束撚り合わせて形成する。内部用紐12bは、30本の赤い絹糸を撚り合わせ、さらにこの撚り合わせた細紐を3束撚り合わせて形成する。
なお、表示部4が「志」のような不祝儀用の文字であれば、赤い絹糸に替えて黒い絹糸を用いる。
【0015】
以下に、帛紗1の製造方法を説明する。
先ず、帛紗本体2の表布5および裏布6と、台座部3と、表示部4を用意する。表布5の裏面には接着芯7を接着しておく。
【0016】
台座部3は、次のように作成する。
図3に示すように、台座部用接着芯9の接着剤付着面に複数の円13を同心状に描く。この時、台座部用接着芯9の寸法は、台座部3の直径よりもやや大きくしてある。また、最も大きい円13の直径は、台座部3の直径とほぼ等しくする。
そして、円13を描いた台座部用接着芯9を台座部3の直径よりやや大径の刺しゅう枠に固定し、台座部用接着芯9を緊張させる。
【0017】
次に、
図4に示すように、台座部用紐10を円13の中心から外側へ向かって各円13に沿って渦巻き状に巻き、台座部用紐10の所々を糸14で縫って台座部用接着芯9に止め付ける。糸14の色は台座部用紐10と同じ色にする。
なお、祝儀用の帛紗1であれば、台座部用紐10を時計回りに巻き、不祝儀用の帛紗1であれば、台座部用紐10を反時計回りに巻く。
【0018】
台座部3の大きさに台座部用紐10を巻き終わったら、台座部用接着芯9を刺しゅう枠から外し、台座部用紐10の止め付け部分をアイロンで加熱押圧して、台座部用紐10を台座部用接着芯9に接着する。アイロンを掛けることにより、台座部用紐10が凹凸なく均等に台座部用接着芯9に接着される。
次いで、台座部用紐接着部分の周囲の不要な台座部用接着芯9を除去して、
図5のような台座部3を形成する。
【0019】
表示部4は、次のように作成する。
図6に示すように、表示部用接着芯11の接着剤付着面に文字の輪郭15を描く。
次に、表示部用接着芯11を刺しゅう枠に固定して緊張させ、
図7に示すように、文字の輪郭15に沿って輪郭用紐12aを糸14’で止付ける。
次いで、
図8に示すように、文字の輪郭15に沿って止めた輪郭用紐12aの内側に、内部用紐12bを隙間なく糸14’で止め付ける。
糸14’の色は表示部用紐12と同じ色(赤あるいは黒)にする。
【0020】
その後、表示部用接着芯11を刺しゅう枠から外し、表示部用紐12の止め付け部分をアイロンで加熱押圧して、表示部用紐12を表示部用接着芯11に接着する。
さらに、表示部用紐接着部分の周囲の不要な表示部用接着芯11を除去して表示部4を形成する。
【0021】
以上のように作成した台座部3を表布5の表面に配置し、台座部3の表面に表示部4を配置し、台座部3及び表示部4を表布5に縫い付ける。
勿論、予め重ねて縫い付けた台座部3及び表示部4を表布5に縫い付けてもよいし、台座部3を表布5に縫い付けてから、台座部3の表面に表示部4を縫い付けることもできる。
また、台座部3及び表示部4を表布5の表面に縫い付けてから、表布5の裏面に接着芯7を接着することも可能であるが、予め表布5の裏面に接着芯7を接着して張りをもたせておくと、台座部3及び表示部4を取り付けやすい。
【0022】
次に、
図9に示すように、表布5と裏布6を中表に重ね、周縁に沿って縫い留める。この時、周縁の一部は縫わずに返し口17を開けておく。
そして、返し口17を通して表布5および裏布6をひっくり返し、台座部3及び表示部4を設けた表面を外側にする。
さらに、
図1に示すように、帛紗本体2の周縁に沿って飾り縫い16を施す。
最後に、帛紗本体2の四隅部に房8を取り付ける。
なお、縫製作業の要所でアイロンを掛け、帛紗本体2の角部等を美しく仕上げることは言うまでもない。
【0023】
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態では帛紗本体を正方形としてあるが、円形等の他の形状としてもよい。
また、台座部を円形ではなく、四角形、六角形等にすることもできる。
本実施形態では、表示部を文字の形状としてあるが、花、鳥、鶴と亀のような模様とすることもできる。この場合、表示部用紐として、複数色の紐を用いることもできる。
【0024】
本実施形態では、表布の表面に台座部及び表示部を設けてあるが、表布及び裏布の表面にそれぞれ台座部と表示部を設け、一方の表示部を祝儀用の文字とし、他方の文字を不祝儀用の文字として、帛紗を慶弔両用にすることも可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 帛紗
2 帛紗本体
3 台座部
4 表示部
5 表布
6 裏布
7 接着芯
8 房
9 台座部用接着芯
10 台座部用紐
11 表示部用接着芯
12 表示部用紐
12a 輪郭用紐
12b 内部用紐
13 円
14,14’ 糸
15 文字の輪郭
16 飾り縫い
17 返し口