(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】バックラッシュ防止機能を有するサイクロイド減速機
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20220214BHJP
F16H 55/18 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
F16H1/32 A
F16H55/18
(21)【出願番号】P 2020535946
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(86)【国際出願番号】 KR2018009413
(87)【国際公開番号】W WO2019054651
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2020-03-10
(31)【優先権主張番号】10-2017-0116854
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0032492
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520083563
【氏名又は名称】ミントロボット カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】カン ヒョンソク
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-75350(JP,A)
【文献】特開平1-150043(JP,A)
【文献】特開2005-54950(JP,A)
【文献】特開2005-201308(JP,A)
【文献】実開平6-47756(JP,U)
【文献】特開2011-27253(JP,A)
【文献】特開昭57-107465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16H 55/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力トルクを減速する減速部
(1
)と、前記減速部
(1
)を介して、あらかじめ設定された減速トルクを伝達されて外部に出力トルクを伝達する出力部
(2
)と、を備えたサイクロイド減速機であって、
前記減速部
(1
)のサイクロイドローター
(13、14)の内部領域に円周方向へ等間隔で配置された多数の貫通孔(136、146)内から後段側に向けて伸張されている多数の弾性変形可能なローターピン
(16
)を含んで構成され、
前記ローターピン
(16
)は、内部に中空部
(161
)を有して弾性変形可能な円筒型の部材を含み、前記ローターピン
(16
)は、上段部が
中空型出力シャフト
(21
)の収容溝
(212
)に軸結合され
る中実部であり、その残部が前記中空部(161)からなり、
前記出力部(2)は、前記減速部(1)の前記サイクロイドローター(13、14)から伝達されたトルクを外部に伝達する中空型出力シャフト(21)と、前記出力シャフト(21)を取り囲む中空型のハウジングカバー(22)と、前記出力シャフト(21)の外周面の周囲に配置された第5のベアリング(B5)と、前記出力シャフト(21)のジャーナル(213)の外周面の周囲に配置された第6のベアリング(B6)と、前記ハウジングカバー(22)に向けて前記第6のベアリング(B6)の軸線方向に予圧を付与するディスクスプリング(23)を含むことを特徴とする、バックラッシュ防止機能のサイクロイド減速機。
【請求項2】
入力トルクを減速する減速部
(1
)と、前記減速部
(1
)を介して、あらかじめ設定された減速トルクを伝達されて外部に出力トルクを伝達する出力部
(2
)と、を備えたサイクロイド減速機であって、
前記減速部
(1
)のサイクロイドローター
(13、14)の内部領域に円周方向へ等間隔で配置された多数の貫通孔(136、146)内から後段側に向けて伸張されている多数の弾性変形可能なローターピン
(16
)を含んで構成され、
前記ローターピン16は、内部に中空部161を有して弾性変形可能な円筒型の部材を含み、前記ローターピン
(16
)は、下段部から長さ方向にスロット
(162
)を追加で形成
し、
前記出力部(2)は、前記減速部(1)の前記サイクロイドローター(13、14)から伝達されたトルクを外部に伝達する中空型出力シャフト(21)と、前記出力シャフト(21)を取り囲む中空型のハウジングカバー(22)と、前記出力シャフト(21)の外周面の周囲に配置された第5のベアリング(B5)と、前記出力シャフト(21)のジャーナル(213)の外周面の周囲に配置された第6のベアリング(B6)と、前記ハウジングカバー(22)に向けて前記第6のベアリング(B6)の軸線方向に予圧を付与するディスクスプリング(23)を含むことを特徴とする、バックラッシュ防止機能のサイクロイド減速機。
【請求項3】
前記減速部
(1
)は、入力トルクを伝達される入力シャフト
(11
)と、前記入力シャフト
(11
)を収容することができる中空型のハウジング
(12
)と、をさらに含み、
前記サイクロイドローター
(13、14)は、エッジの周囲に沿って形成された歯形突起(135、145)を有して、前記入力シャフト
(11
)の外周面上に偏心回転可能に軸線方向に積層配列されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバックラッシュ防止機能のサイクロイド減速機。
【請求項4】
前記減速部
(1
)は、前記サイクロイドローター
(13、14)の歯形突起(135、145)と接触可能に前記ハウジング
(12
)の内周面の周囲に沿って配置されている多数のインナーピン
(15
)と、をさらに含み、
前記インナーピン
(15
)は、弾性変形可能であり、内部に中空部
(151
)を有する円筒型の部材を含むことを特徴とする、請求項3に記載のバックラッシュ防止機能のサイクロイド減速機。
【請求項5】
前記
出力シャフト(21)は、中空型の本体
(211
)と、前記本体
(211
)の一面の中央部から後段側に長さ延長された中空型のジャーナル
(213
)と、前記ローターピン
(16
)の一端部を収容するように、前記本体
(211
)の前段側に円周方向へ等間隔で配置された収容溝
(212
)を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のバックラッシュ防止機能のサイクロイド減速機。
【請求項6】
前記サイクロイドローター
(13、14)は、前記貫通孔(136、146)の内周面の周りにチューブ型ブッシュ
(17
)を配置することを特徴とする、請求項1又は2に記載のバックラッシュ防止機能のサイクロイド減速機。
【請求項7】
前記チューブブッシュ
(17
)は、低い摩擦係数を有する合成樹脂で製作され得ることを特徴とする、請求項6に記載のバックラッシュ防止機能のサイクロイド減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックラッシュ防止機能がついたサイクロイド減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットは、アクチュエータモータ、サーボモータなどを通して多数の関節自由度を有する関節構造に動きを提供している。ロボットの関節は、サーボモータなどから高出力トルクを得るために、サーボモータの出力段に減速機を設置するのが一般的である。
【0003】
産業用ロボットは、減速のためにハーモニック駆動(HARMONIC DRIVE:登録商標)方式又はサイクロイド駆動(cycloidal drive)方式を採用しているが、例えば、特許文献1のサイクロイド減速機は、サイクロイドディスクの外歯が出力シャフトの内歯と噛み合って回転することにより、入力シャフトの回転力を減速して出力シャフトに伝達する構造を介して大きなトルクの伝達が可能であり、減速比が大きいため、多様な分野の減速装置として使用されている。しかしながら、特許文献1に記載されているように、サイクロイド歯形ギヤの並進運動による騒音、振動及びバックラッシュのために位置精度の限界を有する問題をもたらしている。
【0004】
簡単に、特許文献1では、互いに分離製作された第1のサイクロイドディスクと第2のサイクロイドディスクの1ペアが相互対面する状態で1組1セットに構成されており、各ディスクに形成された歯形の間に微小な位相差を提供してバックラッシュを低減するように働くと記述されている。
【0005】
しかし、第1のサイクロイドディスクの外歯及び第2のサイクロイドディスクの外歯は、出力部材の内歯と部分的に噛み合う過程で、ギヤ(歯車)の回転を助けるために、その背面にバックラッシュ(backlash)を提供するしかない。
【0006】
当該分野の熟練者は、サイクロイドディスクの外周面に形成された外歯と噛み合う部分にローラ(roller)を配置しているが、これもバックラッシュのような余裕空間なしに、ローラの回転を保障できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、ハウジング内で偏心回転するサイクロイドローターの外歯と噛み合うインナーピン、又はサイクロイドローターの貫通孔の内部に配置されたローターピンを弾性変形可能な円筒型の構造に設計し、構成部材間のバックラッシを除去(防止)することができる減速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の好ましい実施形態によるバックラッシュ防止機能を有するサイクロイド減速機は、入力トルクを減速する減速部と、この減速部を通じてあらかじめ設定された減速トルクを伝達されて外部に出力トルクを伝達する出力部と、を備え、
減速部は、入力トルクを伝達される入力シャフトと、入力シャフトを収容することができる中空型のハウジングと、内部領域に円周方向へ等間隔で配置された多数の貫通孔とエッジの周囲に沿って形成された歯形突起を有し、入力シャフトの外周面上に偏心回転可能に軸線方向に積層されている1つ以上のサイクロイドローターと、1つ以上のサイクロイドローターの歯形突起と接触可能にハウジングの内周面の周囲に沿って配置されている多数の弾性変形可能なインナーピンと、軸線方向に配置された多数の貫通孔内で後段側に向けて伸張されている多数の弾性変形可能なローターピンと、からなり、
出力部は、空中型の本体と、本体の一面の中心部から後端側に長さ延長された空中型のジャーナルと、弾性変形可能なローターピンの一端部を収容するように本体の前端側に円周方向へ等間隔で配置された収容溝を有し、出力トルクを外部に伝達する出力シャフトと、出力シャフトを収容することができる空中型ハウジングカバーと、からなっている。
【0010】
本発明の実施形態では、弾性変形可能なインナーピンは、偏心回転時に、サイクロイドローターの歯形突起に予圧を提供して、インナーピンとサイクロイドローターの歯形突起との間にバックラッシを防止することができるよう、内部に中空部を有する円筒型部材からなる一方、弾性変形可能なローターピンは、偏心回転時に、サイクロイドローターの貫通孔に予圧を提供してローターピンとサイクロイドローターの貫通孔との間にバックラッシュを防止することができるよう、内部に中空部を有する円筒型部材からなっている。
【0011】
さらに、本発明は、弾性変形可能なインナーピンの下端部から長さ方向にスロットを追加で形成することができ、弾性変形可能なローターピンの下端部から長さ方向にスロットを追加で形成することができる。
【0012】
本発明は、出力シャフトのスラスト荷重に対する遊び(裕隔)を除去するために弾性力を介して予圧を提供することができるように、本体とジャーナルの交差点にディスクスプリングを追加で配置することができる。
【0013】
選択可能になるように、ディスクスプリングは、弾性力を有する素材で製作され得る。
【0014】
好ましくは、空中型のハウジングは、内部領域の中央に入力シャフトの貫通を許容する中心孔を有する環状プレートと、環状のプレートのエッジの周囲に沿って形成された側壁と、中心孔のエッジの周囲に形成された段差部と、インナーピンを軸線方向に配置させるため、内周面の周囲に沿って円周方向に等間隔で配置された収容溝と、を備えることができる。
【0015】
好ましくは、空中型のハウジングカバーは、内部領域の中央に出力シャフトの貫通を許容する中心孔を有する環状プレートと、環状のプレートのエッジの周囲に沿って形成された側壁と、中心孔のエッジの周囲に形成された段差部と、を備えることができる。
【0016】
本発明は、ローターピンとサイクロイドローターの貫通孔との間に摩擦力を減少させるため、貫通孔の内周面の周囲にチューブ型ブッシュを配置することができる。
【0017】
好ましくは、本発明は、1つ以上のサイクロイドローターの間にディスク型ブッシュを介在することができ、選択可能になるように積層配列された1つ以上のサイクロイドローターの前段側と後段側にディスク型ブッシュを追加で配置することができる。
【0018】
ここで、チューブ型ブッシュとディスク型ブッシュは、低い摩擦係数を有する合成樹脂で製作され得る。
【0019】
ディスク型ブッシュはローターピンの貫通を許容する挿通孔を追加で形成することができる。
【0020】
本発明の特徴及び利点は、添付図面に基づいた次の詳しい説明でさらに明らかになるだろう。
【0021】
これに先立ち、本明細書及び請求の範囲で使用された用語や単語は、通常的かつ辞典的な意味に解釈してはならず、発明者が自分の発明を最も最良の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づいて、本発明の技術的思想に符合する意味と概念に解釈されるべきである。
【発明の効果】
【0022】
以上、本発明の説明によれば、本発明は、サイクロイドローターの偏心回転時に、サイクロイドローターと接触するインナーピン及び/又はローターピンとの間にバックラッシュを除去して優れた位置決め精度、耐久性、トルク伝達能力を向上させることができる。
【0023】
特に、本発明は、バックラッシュを防止するために、別途の構成部材がなくても、単純に中空のインナーピン及び/又はローターピンの弾性変形を介して実現され得る。
【0024】
本発明は、スラスト方向の荷重に対する構成部材間の遊びを除去し、予圧を付与するスプリング効果を有する構造を提供することができる。これは高価なローラーベアリングの代わりに低価格のボールベアリングを採択することができる利点とともに構造の安定化を介して低摩擦駆動、騒音、及び振動を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の好ましい実施形態によるバックラッシュ防止機能を有するサイクロイド減速機を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されたバックラッシュ防止機能を有するサイクロイド減速機を後段側から見た分解斜視図である。
【
図3】
図1に示されたバックラッシュ防止機能を有するサイクロイド減速機を前段側から見た分解斜視図である。
【
図4】
図1のA-A線で切り取ったバックラッシュ防止機能を有するサイクロイド減速機の断面図である。
【
図5】出力シャフトの配列状態を確認できるように、ハウジングカバーを取り外した状態の出力部を概略的に示す分解斜視図である。
【
図6】サイクロイドローターの配列状態を確認できるように、出力部を除去した状態の減速機を後段側から示す平面図である。
【
図7】入力シャフトの軸上に配置された2つのサイクロイドローターの結合状態を確認できるように示す平面図として、
図6に示された減速部でディスク型ブッシュとハウジングを除去した。
【
図8】入力シャフトの軸上に配置された2つのサイクロイドローターの結合状態を確認できる側面図として、
図7に示された減速部を側面から見た図面である。
【
図9】
図2に示された減速部の要部を概略的に示す分解斜視図である。
【
図10】多様なタイプのローターピンを図解した図面である。
【
図11】多様なタイプのインナーピンを図解した図面である。
【
図12】本発明の弾性変形可能な中空型のローターピンと従来のソリッド型のローターピンの応力分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の目的、特定の利点及び新規な特徴は、添付された図面と関連付けられている、以下の詳しい説明と実施形態からさらに明らかになるだろう。本明細書では、各図面の構成要素に参照符号を付加するにあたって、同一の構成要素に限っては、たとえ他の図面上に表示されても、可能な限り同一の符号を有するようにしていることに留意しなければならない。なお、本発明を説明するにあたって、関連した公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不必要に曖昧にすると判断される場合、その詳しい説明は省略する。本明細書では、第1、第2などの用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別するために使用されるものであり、構成要素が前記用語によって限定されるものではない。添付図面において、いくつかの構成要素は、誇張されたり、省略されたり、概略的に図示されたりしており、各構成要素のサイズは、実際のサイズを完全に反映するものではない。
【0027】
以下、添付された図面を参照して、本発明の実施形態を詳しく説明することにする。本発明の好ましい実施形態によるサイクロイド減速機は、サイクロイドローターの偏心回転運動にもかかわらず、バックラッシュを無くし位置決め精度と耐久性の向上を期待することができ、これにより、騒音や振動を低減させることができるように設計されていることを特徴とする。
【0028】
図1~
図9を参照すると、本発明の好ましい実施形態によるバックラッシュ防止機能を有するサイクロイド減速機が概略的に図解されている。
【0029】
当該分野の熟練者には、すでに広く知られているように、産業用ロボットは、動力発生用モータと、このモータの入力トルクを減速する減速機を必要とする。本発明は、モータ、例えばサーボモータの入力トルクを減速するだけでなく、先に記述されたようにバックラッシュを防止(あるいは低減)させることができる減速機を提案するものである。本発明による減速機は、産業用多関節ロボットに限定されず、多様な産業分野に採用され得るであろう。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によるバックラッシュ防止機能を有するサイクロイド減速機は、軸線方向に沿って結合されている駆動装置(図示せず)と出力装置(図示せず)との間に動力伝達可能に結合され得る。駆動装置は、減速機の前段側の入力段に配置されて、モータの回転力を通じて後段設備である減速機の中空型入力シャフトを回転駆動させることができる。出力装置は、減速機の後段側の出力段に配置されて駆動装置のモーターなどの入力トルクを減速機内に配置されたサイクロイドローターの偏心回転を介して、あらかじめ設定された減速トルクを伝達されて出力トルクを外部に伝達する。ここで、前段側とは、駆動装置の入力トルクを供給されて中空型入力シャフトに向けて方向設定された入力段を意味し、これに対応される後段側とは、出力トルクを外部に伝達する中空型出力シャフトに向けて方向設定された出力段を意味する。
【0031】
前述したように、本発明の好ましい実施形態によるバックラッシュ防止機能を有するサイクロイド減速機は、モータなどの駆動装置から提供される入力トルクを減速する減速部1と、駆動装置の入力トルクを減速部1を通して予め設定された減速トルクを伝達されて出力トルクを外部に伝達する出力部2と、で構成されるが、減速部1と出力部2は、軸線方向に沿って結合されている。例えば、本発明は、減速部1のハウジング12と出力部2のハウジングカバー22をねじ締結などの多様な結合方式で軸線方向に沿って一体に結合され得る。
【0032】
減速部1は、モータの入力トルクを伝達される中空型入力シャフト11と、この入力シャフト11を取り囲む空中型のハウジング12と、入力シャフト11の外周面に結合された1つ以上のサイクロイドローター(cycloid rotor)(13、14)と、サイクロイドローター(13、14)の外周面の周囲に形成された歯形突起と噛み合うようにハウジング12の内周面の周囲に沿って配置された多数のインナーピン(inner pin)15と、軸線方向に積層配列された1つ以上のサイクロイドローター(13、14)の内部領域に配置されて外部に減速トルクを伝達するローターピン(rotor pin)16と、からなる。
【0033】
ハウジング12は、後段側を開放した中空の円筒型あるいはコップ型に形成されるが、内部領域の中央に中心孔123を有する環状プレート121と、この環状プレート121のエッジの周囲に沿って形成された側壁122と、で構成される。中心孔123は、中空型入力シャフト11の前段側を回転可能に収容することができるサイズと形状に形成されるが、ハウジング12の中心孔123と中空型入力シャフト11との間に第1のベアリングB1を介在することができる。ちなみに、ハウジング12は、これの内周面の周囲に沿って円周方向に等間隔で配置された収容溝125を配置し、収容溝125内にインナーピン15を軸線方向に沿って位置させることができる。
【0034】
中心孔123は、中空型入力シャフト11前段側の貫通を可能にするサイズと形状に形成されるが、中心孔123のエッジに隣接している環状のプレート121の内部面に段差部124を形成している。段差部124は、環状のプレート121の内部面に第1のベアリングB1の安着を助ける。
【0035】
サイクロイドローター(13、14)は、入力シャフト11の外周面に形成された1つ以上の段差面(参照符号なし)に配置されるが、好ましくはサイクロイドローター(13、14)の中央挿入孔(131、141)と入力シャフト11の外周面との間に、第2及び第3のベアリング(B2、B3)を介在することができる。サイクロイドローター(13、14)は、ベアリング(B2、B3)を手段にして入力シャフトの外周面に形成された段差面上に安定的に支持され得るだろう。ここで、1つ以上の段差面は、先に記述されたように中空型の入力シャフト11の外周面に形成されるが、その軸中心に対して偏心されている。
【0036】
図示されたように、サイクロイドローター13は、平らなディスク型に形成されるが、内部領域の中心に入力シャフトの外周面(具体的には、段差面)の周囲に嵌め込まれる中央挿入孔131と、内部領域に円周方向へ等間隔で配置された1つ以上の貫通孔136と、これのエッジの周囲に沿って連続的に配置された歯形突起135と、を備える。
【0037】
サイクロイドローター14は、平らなディスク型を有し、サイクロイドローター13と平行に配列されて入力シャフト11の軸線方向に沿って配置され得るが、内部領域の中心に入力シャフトの外周面(具体的には、段差面)の周囲に嵌め込まれる中央挿入孔141と、内部領域に円周方向へ等間隔で配置された1つ以上の貫通孔146と、これのエッジの周囲に沿って連続的に配置された歯形突起145と、を備える。サイクロイドローター14は、サイクロイドローター13と同一である形状及び/又は同一のサイズに形成され得る。
【0038】
参考として、サイクロイドローター(13、14)は、湾曲形状のラウンディング歯形突起(135、145)を有し、インナーピン15と転がり接触する過程でサイクロイドローターの偏心回転時の摩擦を最小化する。
【0039】
本発明は、サイクロイドローターの偏心回転時の摩擦を最小化するため、サイクロイドローター(13、14)のエッジの周囲にインナーピン15を配置して、インナーピン15とサイクロイドローターの歯形突起(135、145)を転がり接触するようにする。
【0040】
インナーピン15は、空中型のハウジング12の内周面の円周に沿って形成された収容溝125内に安着される一方、ハウジング12の開放後段側のエッジの内周面の周囲に配置された環状のカバー19で覆われて位置固定される。インナーピン15は、図示されたように、サイクロイドローター(13、14)のエッジの周囲の歯形突起(135、145)と噛み合うように配置して、入力側のスラスト荷重を効果的に支持する一方、サイクロイドローター(13、14)の偏心回転が可能になるように支持することができる。
【0041】
特別として、インナーピン15は、内部に中空部151を有した円筒型部材であって、弾性変形可能な材質で製作され得る。すなわち、インナーピン15は、中が空いている円筒型の構造を備えるので、インナーピンは、サイクロイドローター(13、14)の歯形突起と噛み合う場合に、サイクロイドローター(13、14)の歯形突起の形状と対応されるように、インナーピンの形状を変形させることができる。これは、インナーピン15とサイクロイドローターの歯形突起(135、145)との間のバックラッシュをなくすことができるようにする。
【0042】
減速部1は、先に記述したように、入力されたトルクを減速させて高出力トルクに変換する減速トルクを生成し、モーターと連結されて入力トルクを伝達され、これを再び出力部2に伝達する入力シャフト11を備えるが、入力シャフト11の軸線方向に沿って1つ以上のサイクロイドローター(13、14)を配置することができる。
【0043】
減速部1は、サイクロイドローター(13、14)を偏心回転させて所定の減速比に応じて回転速度を減らすことができる構造でなされている。通常、サイクロイドローターが偏心回転しながら振動を誘発するようになるが、このような振動を抑制することができるように1つ以上のローター、好ましくは2つのサイクロイドローター(13、14)を軸線方向に配置する。
【0044】
サイクロイドローター(13、14)は、これの内部領域に円周方向へ等間隔で離隔配置された貫通孔(136、146)内で多数のローターピン16を後段側に向けて伸長されるように挿入配置する。多数のローターピン16は、図示されたように、軸線方向に積層されている1つ以上のサイクロイドローター(13、14)の位置選定を支援する一方、出力シャフト21の収容溝212に結合される。サイクロイドローター(13、14)の偏心回転が、軸線方向に一列に配列された貫通孔(136、146)内に配置された各々のローターピン16をサイクロイド回転方向に強制的に回転させながら減速比に応じて、入力シャフトの入力トルクを出力シャフトに軸結合して出力トルクに伝達されるように回転させる。
【0045】
貫通孔(136、146)は、ローターピン16のサイズよりも大きい直径を有するようにする。貫通孔(136、146)は、サイクロイドローター(13、14)の偏心回転を保障できるようにローターピン16の外形よりも大きいサイズに形成されなければならないだろう。選択可能になるように、貫通孔(136、146)は、円形断面の中空部に形成され得る。貫通孔が円筒型のローターピン16と対応する形状に形成され、ローターピン16が貫通孔(136、146)の内周面と接触しながら回動できるにする。なお、貫通孔の内周面と円筒型のローターピンの外周面が互いに対応する形状で構成されているため、回動時に貫通孔とローターピンの摩耗を著しく減らすことができる。
【0046】
さらに、本発明は、ローターピン16を内部に中空部161(
図10参照)を有する円筒型部材で形成されるが、好ましくは、弾性変形可能な材質で製作することができる。すなわち、ローターピン16は、中が空いている円筒型の構造を有しているため、ローターピンは、サイクロイドローターの偏心回転時に貫通孔(136、146)の内周面と接触されながら、貫通孔(136、146)の内径形状と対応されるようにローターピンの形状を変形させることができる。これはローターピン16とサイクロイドローターの貫通孔(136、146)との間の応力緩和だけでなく、バックラッシュを無くすことができるようにする。サイクロイドローターの貫通孔内に配置されたローターピンの変形状態は、
図12を参照して、さらに詳しく説明する。
【0047】
ちなみに、本発明は、偏心回転時にサイクロイドローター(13、14)の貫通孔(136、146)内周面とローターピン16との間の摩擦力を低減させるために、貫通孔(136、146)の内周面の周りにチューブ(tube)型ブッシュ17を配置する。チューブ型ブッシュ(bush)17は、低い摩擦係数を有する合成樹脂、例えばテフロン(登録商標)で製作され得る。チューブ型ブッシュ17は、前述したように低い摩擦係数の回転を可能にするだけでなく、ローターピンと貫通孔の接触時に騒音や振動を低減させることもできる。
【0048】
本発明では、中空型入力シャフト11は、軸線方向に積層配列された2つのサイクロイドローター(13、14)の間に、ディスク型ブッシュ18を介在する。ディス型ブッシュ18は、スラスト方向に予圧を付与して、2つのサイクロイドローター(13、14)の間に遊び(裕隔)を除去することができるようにする。好ましくは、ディスク型ブッシュ18は、低い摩擦係数を有する合成樹脂、例えばテフロンで製作され得る。ディスク型ブッシュ18は、サイクロイドローター上に両面テープ、接着剤などの多様な方式で位置固定され得る。
【0049】
ディスク型ブッシュ18は、サイクロイドローター(13、14)との間にだけ限定されるように配置されずに、隣接の構成部材との遊び現象を除去し、低い摩擦状態で隣接できるように、多様な部位に配置され得る。例えば、ディスク型ブッシュ18は、ハウジング12の環状のプレート121の内側面とサイクロイドローター14との間の接触部位である積層配列された1つ以上のサイクロイドローターの前段側に、そしてハウジングカバー22の環状のプレート221の内側面とサイクロローター13との間の接触部位である積層配列された1つ以上のサイクロイドローターの後段側にも選択的に配置可能である。
【0050】
選択可能になるように、ディスク型ブッシュ18は、2つのサイクロイドローター(13、14)の貫通孔(136、146)に収容されたローターピン16の貫通を許容できるよう貫通孔(136、146)に対応するように挿通孔186を形成することもできる。
【0051】
出力部2は、減速部1のサイクロイドローター(13、14)から伝達されたトルクを外部に伝達する中空型出力シャフト21と、この出力シャフト21を取り囲む空中型のハウジングカバー22と、出力シャフト21の外周面の周囲に配置された第5のベアリングB5と、出力シャフト21のジャーナル213の外周面の周囲に配置された第6のベアリングB6と、ハウジングカバー22に向けて第6のベアリングB6の軸線方向に予圧(preload)を付与するディスクスプリング23と、で構成されている。
【0052】
中空型出力シャフト21は、中空型、あるいは円筒型の本体(body)211と、この本体211の一面の中心部から外部方向(後段側)に長さ延長された中空型あるいは円筒型のジャーナル(journal)213と、本体211の他面(前段側)にローターピン16の一端部を収容する多数の収容溝212と、を備える。多数の収容溝212は、本体211の他面に円周方向に等間隔で離隔配置され得る。
【0053】
ハウジングカバー22は、サイクロイドローターの収容空間を形成するハウジング12の後段側の解放部を覆いかぶせられるように前段側を開放した中空の円筒型あるいはコップ型の構成部材として、前述したように出力シャフト21を収容することができる形状に形成されている。ハウジングカバー22は、内部領域の中央に中心孔223を有する環状プレート221と、この環状プレート221のエッジの周囲に沿って形成された側壁222と、で構成されている。中心孔223は、中空型出力シャフト21のジャーナル213の貫通を許容できるサイズと形状に形成されるが、中心孔223エッジに隣接している環状プレート221の内部面に段差部224を形成している。段差部224は、環状のプレート221の内部面に第6のベアリングB6の安着を助ける。
【0054】
第6のベアリングB6は、出力シャフト21のジャーナル213を軸支持するためにボールベアリングを採用することができ、これに限定されず、多様なタイプのベアリングに置き換え可能である。出力部2は、スラスト(thrust)方向の荷重によって第6のベアリングB6と環状のプレート222、更に具体的に環状のプレートの段差部224の間に遊びを除去するために、出力シャフト21の本体211とジャーナルの交差点にディスクスプリング23を配置する。ディスクスプリング23は、第6のベアリングB6を後段側、言い換えれば軸線方向に予圧を加え、出力シャフト21の回転時に摩耗、騒音、振動などを未然に防止することができる。ディスクスプリング23は、図示されたように、リング(ring)状に形成され、第6のベアリングB6の内輪部位と接触することができるようにする。ディスクスプリング23は、例えばウレタン素材、合成樹脂などで製作されることができ、弾性力を備えスプリング効果を提供することができる任意の材料であっても構わないだろう。
【0055】
図10は、弾性変形可能なローターピンの多様な実例を図解した図面である。
【0056】
ローターピン16は、サイクロイドローターの偏心回転時に貫通孔(136、146)との接触に加わる外力のため弾性変形可能な構造を提供することができる中空部を有する円筒型の部材である。ローターピン16の上段部は、出力シャフト21の収容溝212に軸結合され、ローターピン16の下段部は、サイクロイドローター(13、14)の貫通孔(136、146)内に配置される(
図4を参照)。
【0057】
図10(a)は、内部に中空部161を備えて上部を閉鎖した円筒型のローターピン16を図解しており、中空部161によって外力が加わると容易に弾性変形を提供することができる。
【0058】
図10(b)は、内部に中空部161を備えて上部を閉鎖した円筒型のローターピン16’を図解しており、側面の下段部から長さ方向にスロット162を追加で備える。外力が加わると、ローターピン16’は、中空部161によって、より容易に弾性変形を可能にする。
【0059】
図10(c)は、内部に中空部161を備えたチューブ型のローターピン16”を図解しており、中空部161によって外力が加わると、容易に弾性変形を提供することができる。
【0060】
図10(d)は、内部に中空部161を備えて側面の下段部から長さ方向に沿って上段部までスロット162を追加で備える。外力が加わると、ローターピン16”は、中空部161によって、より容易に弾性変形を可能にする。
【0061】
図11は、弾性変形可能なインナーピンの多様な実例を図解した図面である。
【0062】
インナーピン15は、サイクロイドローターの偏心回転時に歯形突起(135、145)との接触から加わる外力にため弾性変形可能な構造を提供することができる中空部を有する円筒型の部材である。インナーピン15の上段部は、環状のカバー19に位置固定され、インナーピン15の下段部は、ハウジング12の内周面に形成された収容溝125内に配置される(
図2参照)。
【0063】
図11(a)は、内部に中空部151を有するチューブ型のインナーピン15を図解しており、中空部151によって外力が加わると、容易に弾性変形を提供することができる。
【0064】
図11(b)は、内部に中空部161を備えて側面の下端部から長さ方向に沿って上段部までスロット152を追加で備える。外力が加わると、インナーピン15’は、中空部151によって、より容易に弾性変形を可能にする。
【0065】
図11(c)は、内部に中空部151を備えて上部を閉鎖した円筒型のインナーピン15”を図解しており、中空部151によって外力が加わると容易に弾性変形を提供することができる。
【0066】
図11(d)は、内部に中空部151を備えて上部を閉鎖した円筒型のインナーピン15’’’を図解しており、側面の下段部から長さ方向にスロット152を追加で備える。外力が加わると、インナーピン15’’’は、中空部151によって、より容易に弾性変形を可能にする。
【0067】
図12は、サイクロイドローターの貫通孔(136、146)とローターピンとの間の接触部位に応じた応力分布として、
図12(a)は、本発明の弾性変形可能な中空(hollow)型のローターピンの応力分布であり、
図12(b)は、従来技術によるソリッド(solid)型のローターピンの応力分布図である。今度の実験は、貫通孔の内周面にチューブ型ブッシュを取り外した状態で実施した。
【0068】
図12(a)は、前述したように弾性変形可能に中空(中が空いている)型のローターピンが遊びなく軸線方向に積層配列された2つのサイクロイドローターに形成された貫通孔(136、146)に挿入された状態下で部品間の接触部位の応力分布を図解している。図示されたように、ローターピン16は、貫通孔(136、146)の接触内周面と同一である形状に弾性変形されて、ローターピンと貫通孔との間にバックラッシュの除去を可能にするだけでなく、応力が分散されて、相互間の円滑な回転を保障することができる。
【0069】
図12(b)は、ソリッド(中がいっぱい詰まっている)型のローターピンが遊びなく軸線方向に積層配列された2つのサイクロイドローターに形成された貫通孔(136、146)に挿入された状態下で部品間の接触部位の応力分布を図解している(0.1mmの+誤差付与)。図示されたように、ローターピンは、貫通孔(136、146)の内部に強制嵌め込み方式で配置されてローターピンと貫通孔の間にバックラッシュ除去を達成することができるが、接触部位に応力集中があり、かなりの摩擦力が発生して、相互間の回転が円滑にならないため騒音・振動を伴うしかない。
【0070】
ちなみに、本発明のインナーピンも、サイクロイドローターの歯形突起と噛み合う間にバックラッシュを防止することができるように弾性変形可能な構造を採択しており、前述した中空型ローターピンと類似した構造を備えており、歯形突起との接触時に応力分散を期待することができる。
【0071】
以上、本発明は、実施形態を通して詳しく説明されたが、これは本発明を具体的に説明するためであって、本発明によるバックラッシュ防止機能を有するサイクロイド減速機は、これに限定されず、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者(当業者)によってその変形や改良が可能であることは明らかになる。
【0072】
本発明の単純な変形及び変更は、すべて本発明の範囲に属するものであって、本発明の具体的な保護範囲は、添付された特許請求の範囲によって明確になるだろう。