(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】胆汁うっ滞性そう痒の処置
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20220214BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20220214BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P17/04
A61P1/16
(21)【出願番号】P 2020538758
(86)(22)【出願日】2018-09-24
(86)【国際出願番号】 US2018052490
(87)【国際公開番号】W WO2019067373
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-21
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514114611
【氏名又は名称】サイマベイ・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CymaBay Therapeutics,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ポル・ブーズ
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・エイ・マックウェーター
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ・エス・スタインバーグ
【審査官】一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-508817(JP,A)
【文献】JONES, D. et al.,LB-9, A phase 2 proof concept study of MBX-8025 in patients with Primary Biliary Cholangitis (PBC) who are inadequate responders to ursodeoxycholic acid (UDCA),HEPATOLOGY,2016年12月,Vol.64, No.6(Suppl.),pp.1123A-1124A
【文献】HEPATOLOGY,2014年,Vol. 60, No. 1,pp.399-407
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/327
A61P 17/04
A61P 1/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラデルパル(Seladelpar)またはその塩である化合物を含む、胆汁うっ滞性そう痒の治療
のための薬剤であって、
化合物の量が、0.5 mg/日~50 mg/日のセラデルパルに相当する薬剤。
【請求項2】
セラデルパルまたはその塩が、セラデルパルL-リシン塩である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
セラデルパルL-リシン塩が、セラデルパルL-リシン二水和物塩である、請求項2に記載の薬剤。
【請求項4】
化合物が経口投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項5】
化合物の量が、少なくとも1 mg/日のセラデルパルに相当する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項6】
化合物の量が、25 mg/日以下のセラデルパルに相当する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項7】
化合物の量が、2 mg/日、5 mg/日または10 mg/日のセラデルパルに相当する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項8】
化合物の量が、2 mg/日のセラデルパルに相当する、
請求項7に記載の薬剤。
【請求項9】
化合物の量が、5 mg/日のセラデルパルに相当する、
請求項7に記載の薬剤。
【請求項10】
化合物の量が、10 mg/日のセラデルパルに相当する、
請求項7に記載の薬剤。
【請求項11】
化合物が、1日1回投与される、
請求項1~10のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項12】
化合物が、1週間に1回から2日に1回投与される、
請求項1~10のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項13】
胆汁うっ滞性そう痒が、肝胆道疾患に関連する、
請求項1~12のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項14】
胆汁うっ滞性そう痒に関連する肝胆道疾患が、肝細胞性胆汁うっ滞である、
請求項13に記載の薬剤。
【請求項15】
胆汁うっ滞性そう痒に関連する肝胆道疾患が、胆管細胞性胆汁うっ滞である、
請求項13に記載の薬剤。
【請求項16】
胆汁うっ滞性そう痒に関連する肝胆道疾患が、閉塞性胆汁うっ滞である、
請求項13に記載の薬剤。
【請求項17】
胆汁うっ滞性そう痒が、肝内胆汁うっ滞性疾患に関連する、
請求項1~12のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項18】
肝内胆汁うっ滞性疾患が、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、進行性家族性肝内胆汁うっ滞またはアラジール症候群である、
請求項17に記載の薬剤。
【請求項19】
胆汁うっ滞性そう痒が、原発性胆汁性胆管炎に関連する、
請求項18に記載の薬剤。
【請求項20】
胆汁うっ滞性そう痒が、原発性硬化性胆管炎に関連する、
請求項18に記載の薬剤。
【請求項21】
胆汁うっ滞性そう痒が、進行性家族性肝内胆汁うっ滞に関連する、
請求項18に記載の薬剤。
【請求項22】
胆汁うっ滞性そう痒が、アラジール症候群に関連する、
請求項18に記載の薬剤。
【請求項23】
胆汁うっ滞性そう痒が、妊娠中肝内胆汁うっ滞に関連する、
請求項1~12のいずれか一項に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胆汁うっ滞性そう痒の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
胆汁うっ滞性そう痒
そう痒(かゆみ)は、様々な肝胆道疾患、特に胆汁うっ滞性障害のよく知られた、頻繁で、しばしば苦痛を伴う症状であり、この場合には胆汁うっ滞性そう痒(cholestatic pruritus)または胆汁うっ滞のそう痒(pruritus of cholestasis)と称される。それは、軽度で忍容可能であり得るが、クオリティ・オブ・ライフを劇的に低下させ得て、深刻な睡眠不足および抑うつ気分を引き起こし、最も影響を受ける患者で自殺念慮さえ誘発し得る。患者の大多数は、かゆみの強さの日内変動を報告しており、最も強いかゆみは深夜および早夜に生じる。かゆみは、典型的に手足および足の裏および手のひらに局在すると報告されているが(手掌足底そう痒)、全身のかゆみもまた生じ得る。かゆみは、しばしば心理的ストレス、熱、および羊毛などの特定の生地との接触により悪化する。
【0003】
Beuersらの"Pruritus in Cholestasis: Facts and Fiction", Hepatology, vol. 60, pp. 399-407 (2014)は、胆汁うっ滞性そう痒に典型的に関連する肝胆道疾患の下記例をその表1(401頁)に記載する:
肝細胞性胆汁うっ滞:
妊娠中肝内胆汁うっ滞(ICP);エストロゲン-、プロゲステロン-またはテストステロン-誘発胆汁うっ滞;毒素-または他の薬物-誘発肝細胞性胆汁うっ滞;良性再発性肝内胆汁うっ滞(BRIC);進行性家族性肝内胆汁うっ滞1型および2型(PFIC1、PFIC2);および慢性ウイルス性C型肝炎(ただし、非経口栄養-誘発胆汁うっ滞、慢性B型肝炎、およびアルコール性または非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、かゆみを伴わないかまたは例外的にのみかゆみを伴うことが注記された)、
胆管細胞性胆汁うっ滞(肝内胆管損傷を有する):
原発性胆汁性胆管炎(PBC、以前は原発性胆汁性肝硬変と呼ばれていた);原発性硬化性胆管炎(PSC);続発性硬化性胆管炎(SSC);サルコイドーシス;ABCB4欠損症(PFIC3を含む);アラジール症候群(AS);および薬物-誘発小管胆管症(ただし、胆管板形成異常、例えば胆管過誤腫[フォン・マイエンバーグ複合体]、カロリ症候群および先天性肝線維症は、典型的にかゆみを伴わないことが注記された)、
閉塞性胆汁うっ滞:
胆石症;原発性および続発性硬化性胆管炎(PSC、SSC);IgG4-関連胆管炎;胆管閉鎖症;胆管細胞性癌腫;良性胆管腺腫;肺門リンパ節腫脹;および膵頭部癌腫。
【0004】
Hegadeらの"Drug treatment of pruritus in liver diseases", Clin. Med., vol. 15(4), pp. 351-357 (2015)は、「臨床診療において、最も一般的に遭遇する、そう痒に関連する胆汁うっ滞性肝疾患(CLD)は、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)および妊娠中肝内胆汁うっ滞である。歴史的に、そう痒は、黄疸を伴うことが観察されているが、黄疸または他の症状の発症前でさえ、胆汁うっ滞の最初の症状としてそう痒が見られることは珍しくない。種々の胆汁うっ滞状態におけるそう痒の頻度および有病率にかなりの変動がある。例えば、PBCおよびPSCの患者の最大80%および慢性C型肝炎の患者5~15%が、疾患の過程のどこかの時点で経験する。1つのシリーズではそう痒は非新生物性閉塞性黄疸の全患者の17%および新生物性閉塞性黄疸の患者の45%で発症するので、肝外胆汁うっ滞を有する患者ではあまり一般的ではない。また、そう痒は、一般的な肝疾患、例えばアルコール関連肝疾患および非アルコール性脂肪性肝疾患において珍しい。興味深いことに、現在説明がつかない理由により、胆汁うっ滞状態で見られるそう痒の重症度は、胆汁うっ滞の重症度と関連がない、すなわち、肝疾患および胆汁うっ滞の重症度が同様の患者は、著しく異なる程度のそう痒を有し得る」と述べている。Hegadeらの"A systematic approach to the management of cholestatic pruritus in primary biliary cirrhosis", Frontline Gastroenterology, vol. 7, pp. 158-166 (2016)は、PBCの患者におけるそう痒は、生化学的重症度、疾患の継続期間およびPBCの組織学的段階と無関係であり;そのため、早期PBCであって肝機能検査が正常である患者が重度のかゆみを有し得て、一方、進行したPBCであって肝機能不全がある患者がそう痒を有さないことがあると述べている。
【0005】
Beuersらによれば、そう痒におけるシグナル伝達の研究は、つい20年前の一般的見解と対照的に、かゆみ知覚は、疼痛線維により伝達されず、疼痛自体がかゆみに対して阻害効果を有することを明らかにした。内因性オピオイド、ヒスタミン、セロトニン、様々なステロイド代謝物(特にプロゲストゲンおよびエストロゲン)、そして最も重要なことに、胆汁酸塩を含む様々な分子は、胆汁うっ滞性そう痒における潜在的な原因物質として議論されてきた。しかし、Beuersらによれば、これらの疑わしい起痒物質の血清および/または組織レベルは、かゆみの強さと密接に相関することが見出されておらず、いくつかはかゆみシグナル伝達連鎖を開始するのではなく調節するかもしれないにしても、真の原因物質である可能性が低くなった(Beuersら、表2、403頁参照)。Beuersらは、胆汁うっ滞性そう痒におけるかゆみの発生の重要な因子は、リゾホスファチジン酸(LPA)、およびリゾホスファチジルコリンからのLPAの形成に関与するオートタキシン(ATX;リゾホスホリパーゼD、NPP2およびENPP2としても知られている)であり得ると結論付けており;彼らは、これをサポートする観察を述べている一方、彼らはまた、ATXの増加が非胆汁うっ滞性生理学的状態、例えば正常な妊娠において生じ得ることも述べている。
【0006】
そう痒は、いくつかの方法で数値的に評価され得る。2つの1次元数値評価方法は、対象体に左端点に「かゆみ無し」のラベルが付けられ、右端点に「予想される最悪のかゆみ」のラベルが付けられた線が提示されるVisual Analog Scale(VAS)と、対象体に定規のように、典型的には0~10もしくは0~100、または0~10の番号が付けられた一連の11個の四角のマークが付けられた線が提示されるNumerical Rating Scale(NRS)である。いずれの方法においても、対象体は、かゆみのレベル(現在のかゆみのレベル、または過去24時間など想起期間中に経験した最悪のかゆみのレベルであり得る)に対応する、線上の場所をマークするか、または四角を選択するよう求められる。用語VASはまた、ラベルが付けられた端点を有することに加えて、線が定規のようにマークされているスケールを説明するために用いられることもある。VASは、そう痒を測定するための臨床試験における使用が検証されており、International Forum for the Study of Itchにより推奨されている(Staender et al., "Pruritus Assessment in Clinical trials: Consensus Recommendations from the International Forum for the Study of Itch (IFSI) Special Interest Group Scoring Itch in Clinical Trials", Acta Derm. Venereol., vol. 93, pp. 509-514 (2013))。2つの多次元数値評価方法は、期間(1日当たりどのくらいの長さか)、程度(どのくらいの強さか)、方向(増加または減少)、能力障害(かゆみが生活に与える影響)および分布(身体の位置)について、各次元を数値でスコアリングして、過去2週間のそう痒を評価する5-D itch scale(Elman et al., "The 5-D itch scale: a new measure of pruritus", Br. J. Dermatol., vol. 162(3), pp. 587-593 (2010));および過去4週間のクオリティ・オブ・ライフについて40の質問を用い、かゆみに特有の質問を3つの数値でスコアリングするPBC-40(Jacoby et al., "Development, validation, and evaluation of the PBC-40, a disease specific health related quality of life measure for primary biliary cirrhosis", Gut, vol. 54, pp. 1622-1629 (2005))である。
【0007】
胆汁うっ滞性そう痒の薬理学的処置
Hegadeら(Clin. Med.)は、以下を胆汁うっ滞性そう痒についてのエビデンスに基づく治療上の推奨事項として挙げる(表2、353頁):
胆汁酸吸収のために用いられる陰イオン交換樹脂である胆汁酸レジンのコレスチラミンおよびコレセベラムが、第1選択治療として推奨される。副作用は、不快な味覚、腹部膨満、便秘および下痢;ならびに経口糖尿病薬、チアジド利尿薬、ワルファリン、およびその他の薬との相互作用(一般的に吸収の低下)(他の薬物の2~4時間前か後に投与されることが必要となる)を含む。Hegadeらは、コレセベラムの引き起こす副作用は、コレスチラミンより少ないが、小規模の二重盲検試験は、PBCおよびPSCにおける胆汁うっ滞性そう痒の緩和においてプラセボより効果がないことを見出したと述べている;
プレグナンX受容体アゴニストおよび酵素誘導剤である一般的抗菌薬のリファンピシンが、第2選択治療として推奨される。リファンピシンは、プラセボと比較して血清ATXレベルを低下させることが示されており、処置は、多くの患者においてそう痒の少なくとも部分的解消をもたらす。しかしながら、副作用は、悪心、嘔吐、下痢、食欲不振、頭痛、発熱、発疹および紅潮を含む一方、これらすべて、典型的には一時的なものであり、中止すると消失する。より深刻な副作用は、肝炎、溶血性貧血、血小板減少症、腎障害および薬物代謝の変化を含む。初期の研究は、リファンピシン肝炎の発生率が12.5%であることを報告しており、より最近の研究は、重大な肝炎の発生率が7.3%であることを報告している。血球数および肝生化学モニタリングが必要である;
オピオイドアンタゴニストであるナルトレキソンが、第3選択治療として推奨される。いくつかの研究は、経口アンタゴニスト、例えばナルトレキソンおよびナルメフェン、およびIVアンタゴニストのナロキソンはすべて、対照介入より胆汁うっ滞性そう痒を減少させる可能性がより高いことを示している。しかしながら、これらの薬物は、腹痛、頻脈、高血圧、鳥肌、悪夢および離人症により特徴付けられる一群の症状であるオピオイド離脱様反応という重大な懸念があるが、この反応は、用量漸増により最小限にされ得る。肝毒性もまた報告されており、オピオイドアンタゴニストは、急性肝炎、肝不全、肺機能抑制、薬物中毒において、およびオピオイド薬治療を受けているものにおいて禁忌である;そして
抗うつ薬として一般的に処方される選択的セロトニン再取り込み阻害剤のセルトラリンは、第4選択治療として推奨される。Hegadeらは、2つの研究が、セルトラリンは忍容性良好であり、胆汁うっ滞性そう痒におけるかゆみの強さを減少させるのに中等度に効果的であり、効果はうつ病の改善と無関係であることを示したことを報告している。セルトラリンは、一般的に忍容性良好であるが、まれな副作用は、悪心、めまい、下痢、幻視および疲労感増加を含む。
【0008】
実験薬物として下記が挙げられる:
ASBT(アピカル側ナトリウム依存性胆汁酸トランスポーター;IBAT、回腸胆汁酸トランスポーターとも称される)阻害剤。GSK2330672は、ヒトASBTの選択的阻害剤であり、2016年にそう痒のPBC患者における第2a相試験を完了した;GSK2330672は、プラセボよりかゆみスコア(1~10の数値評価スケール、PBC-40かゆみ領域スコア、および5-Dかゆみスコア)を著しく大きく減少させたと報告された。最も一般的な副作用は、下痢であり(対象体の33%)、研究者は、「この薬物の長期使用を制限し得る」と述べている。より大規模の応答応試験(NCT02966834)が募集中である;
フィブラート(フェノフィブラートおよびベザフィブラート)は、UDCAと組み合わせて、PBCの抗胆汁うっ滞性治療として既に検討されている。日本の初期の研究は、フィブラートで処置されたPBCの患者においてそう痒の改善または消失を報告している。400mg/日のベザフィブラートまたはプラセボを患者の標準用量のウルソジオールに加える、ウルソデオキシコール酸(UDCA、ウルソジオール)に対する生化学反応が不十分であるPBC患者における、2年間の第3相試験(BEZURSO、NCT01654731)が、International Liver Congressにて2017年4月に報告され(Corpechot et al., "A 2-year multicenter, double-blind, placebo-controlled study of bezafibrate for the treatment of primary biliary cholangitis in patients with inadequate response to ursodeoxycholic acid (Bezurso)", J. Hepatol., vol. 66, p. S89, Abstract LBO-01 (2017))、2018年に公表された(Corpechot et al., "A Placebo-Controlled Trial of Bezafibrate in Primary Biliary Cholangitis", New Engl. J. Med., vol. 378(23), pp. 2171-2181 (2018))。肝機能スコアの改善に加えて、かゆみスコアが、ベザフィブラート群においてVASの減少により評価された;しかしながら、その結果の有意性は、その後の文書で批判された。PBC、PSCまたはSSCを有し、0.0(かゆみ無し)から10.0(予想される最悪のかゆみ)までのスケールにおいて≧5.0のかゆみスコアを有し、そしてかゆみの主要評価項目が50%以上減少した患者における、400mg/日のベザフィブラートまたはプラセボを用いる、3年間の第3相試験(FITCH、NCT02701166)が、ヨーロッパで募集されていたが、現在の状況は不明である;そして
ATX/LPA 阻害剤。Castagnaらの"Development of Autotaxin Inhibitors: An Overview of the Patent and Primary Literature", J. Med. Chem., vol. 59, pp. 5604-5621 (2016)は、ATXが1992年に最初に単離されたが、1つのATX阻害剤のみが臨床試験に進んだと報告した。その化合物のGLPG1690は、特発性肺線維症における12週間のプラセボ対照第2a相試験(NCT02738801)を完了した。
【0009】
UDCA自体が、いくつかの試験において、かゆみを軽減し、妊娠中肝内胆汁うっ滞における血清肝臓検査値を改善することを示しており、それは第1選択処置とみなされている。UDCAは、肝胆道分泌の改善により胆汁うっ滞を減少させるその作用のため、肝内胆汁うっ滞性疾患のための一般的な処置であるが、胆汁うっ滞性そう痒の他の形態においてそう痒を減少させるのに効果的でなく、現在のガイドラインは、その使用を推奨していない。
【0010】
オベチコール酸(OCA、6α-エチルケノデオキシコール酸、Intercept PharmaceuticalsのOCALIVA)は、極めて強力なファルネソイドX受容体アゴニストである半合成胆汁酸アナログであり、UDCAと組み合わせた、またはUDCAに忍容性でないPBCの処置について米国で承認されている。しかしながら、それは、アルカリホスファターゼ(胆汁うっ滞のバイオマーカー)を減少させる一方、そう痒を悪化させる一般的な副作用がある。OCALIVAの処方情報から、重度のそう痒が、216名の患者による12か月二重盲検無作為化対照試験において、OCALIVA 10 mg群の患者の23%、OCALIVA用量設定(titration)群の患者の19%、およびプラセボ群の患者の7%で報告されている。
【0011】
したがって、胆汁酸アナログなどの抗胆汁うっ滞性薬物は、胆汁うっ滞性そう痒に対して効果を有しないか、または悪化させる効果さえ有する。
【0012】
セラデルパル(Seladelpar)
セラデルパル(国際一般名、INN)の化学名は、[4-({(2R)-2-エトキシ-3-[4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]プロピル}スルファニル)-2-メチルフェノキシ]酢酸[WHO推奨INN:リスト77からのIUPAC名]であり、そのコード番号はMBX-8025である。セラデルパルならびにその合成、製剤および使用は、例えば、米国特許第7301050号(表1における化合物15、実施例M、請求項49)、米国特許第7635718号(表1における化合物15、実施例M)、および米国特許第8106095号(表1における化合物15、実施例M、請求項14)に開示されている。セラデルパルのリシン(L-リシン)塩および関連化合物は、米国特許第7709682号(実施例全体にわたってセラデルパルL-リシン塩、請求項に記載の結晶形態)に開示されている。
【0013】
セラデルパルは、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体-δ(PPARδ)の経口で活性かつ強力な(2 nM)アゴニストである。それは特異的である(PPARαおよびPPARγと比較して>600倍および>2500倍)。PPARδ活性化は、脂肪酸の酸化および利用を刺激し、血漿脂質およびリポタンパク質の代謝、グルコースの利用ならびにミトコンドリアの呼吸を改善し、そして幹細胞ホメオスタシスを維持する。米国特許第7301050号によれば、セラデルパルなどのPPARδアゴニストは、「糖尿病、心血管疾患、代謝性症候群X、高コレステロール血症、低-高密度リポタンパク質(HDL)-コレステロール血症、高-低密度タンパク質(LDL)-コレステロール血症、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症および肥満」を含むPPARδ介在性状態を処置することが示唆されており、該脂質異常症は高トリグリセリド血症および混合型高脂血症を含むとされる。
【0014】
米国特許第9486428号およびPCT国際公開第2015/143178号は、セラデルパルおよびその塩で肝内胆汁うっ滞性疾患、例えばPBC、PSC、PFICおよびASを処置することを開示している。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、セラデルパルまたはその塩の投与による胆汁うっ滞性そう痒の処置である。
【0016】
様々な態様において、本発明は、
胆汁うっ滞性そう痒の処置における使用のためのセラデルパルまたはその塩;
胆汁うっ滞性そう痒の処置のため、または胆汁うっ滞性そう痒の処置のための医薬の製造におけるセラデルパルまたはその塩の使用;
セラデルパルまたはその塩を含む、胆汁うっ滞性そう痒の処置のための医薬組成物;および
セラデルパルまたはその塩の投与による胆汁うっ滞性そう痒の処置方法
である。
【0017】
セラデルパルは、5、10、50および200 mg/日の経口用量にてPBCの処置で有効であることが既に示されており;0.5 mg/日~25 mg/日の投与量において有効であると予想される。同様の投与量にて他の肝内うっ滞性疾患において有用であると予想され、またうっ滞性そう痒の処置において有用であると予想される。
【0018】
本発明の好ましい実施態様は、出願時の本願の明細書および請求項1~24の特徴により特徴付けられる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
胆汁うっ滞性そう痒およびその処置は、[背景技術]の「胆汁うっ滞性そう痒」および「胆汁うっ滞性そう痒の処置」と題したサブセクションに記載される。
【0020】
ヒトにおいて胆汁うっ滞性そう痒を「処置する」または「処置」は、下記の1つ以上を含む:
(1)そう痒を発症する危険性を防止するかまたは減少させること、すなわち、胆汁うっ滞性そう痒が症状である状態に罹患しやすいかもしれないが、そう痒をまだ経験していないかまたは呈していない対象体において胆汁うっ滞性そう痒を発症しないようにすること(すなわち予防);
(2)そう痒を抑制すること、すなわち、そう痒の発症を妨げるかまたは軽減すること;ならびに
(3)そう痒を緩和すること、すなわち、そう痒の数、頻度、持続もしくは重症度を減少させること。
【0021】
セラデルパルまたはセラデルパル塩の「治療上有効量」は、胆汁うっ滞性そう痒を処置するためにヒトに投与されるとき、そう痒の処置をもたらすのに十分である量を意味する。特定の対象体についての治療上有効量は、処置される対象体の年齢、健康状態および身体状態、根底にある肝胆道疾患、そう痒およびその程度、医療状況の評価ならびに他の関連因子に応じて変化する。治療上有効量は、日常的な試験によって決定することができる比較的広い範囲に入ると予想される。
【0022】
セラデルパルは、[背景技術]の「セラデルパル」と題したサブセクションに記載される。
【0023】
セラデルパルの塩(例えば医薬的に許容される塩)は、本発明に含まれ、本願に記載の方法に有用である。これらの塩は、好ましくは医薬的に許容される酸と形成される。医薬的な塩、その選択、製造および使用の広範囲な説明については、例えば"Handbook of Pharmaceutically Acceptable Salts", StahlおよびWermuth編, Verlag Helvetica Chimica Acta, Zurich, Switzerland参照。文脈上別段の解釈が必要でない限り、セラデルパルへの言及は、化合物およびその塩両方への言及である。
【0024】
セラデルパルがカルボキシル基を含有するため、存在する酸性プロトンが無機または有機塩基と反応するとき、塩を形成し得る。典型的にセラデルパルは、適当なカチオンを含有する、過剰なアルカリ剤、例えば水酸化物、炭酸塩またはアルコキシドで処理される。Na+、K+、Ca2+、Mg2+およびNH4
+などのカチオンは、医薬的に許容される塩に存在するカチオンの例である。したがって、適切な無機塩基としては、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムが挙げられる。塩はまた、有機塩基を用いて製造され得て、例えば第1級、第2級および第3級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、ならびに環状アミンなどの塩であり、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N-アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジンなどの塩が挙げられる。「セラデルパル」のサブセクションで述べたように、セラデルパルは、現在そのL-リシン二水和物塩として製剤化されている。
【0025】
「を含む(comprising)」または「を含有する(containing)」およびそれらの文法上の変形は、包含の用語であって、限定するものではなく、記載される構成要素、群、工程などの存在を特定するものであるが、他の構成要素、群、工程などの存在または付加を排除するものではないことを意味する。したがって、「を含む(comprising)」は、「からなる(consisting of)」、「から実質的になる(consisting substantially of)」または「のみからなる(consisting only of)」を意味するものではなく;例えば、ある化合物「を含む(comprising)」製剤は、その化合物を含有しなければならないが、他の活性成分および/または添加剤を含有してもよい。
【0026】
製剤および投与
セラデルパルは、処置される対象体および対象体の状態の性質に適する任意の経路によって投与され得る。投与経路は、静脈内、腹腔内、筋肉内および皮下注射を含む注射による投与、経粘膜または経皮送達による投与、局所適用、経鼻スプレー、坐剤などによる投与を含み、あるいは経口投与されてもよい。製剤は、所望により、リポソーム製剤、エマルジョン、粘膜を介して薬物を投与するよう設計された製剤、または経皮製剤であり得る。これらの投与方法各々に適する製剤は、例えば"Remington: The Science and Practice of Pharmacy", 20版, Gennaro編, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, Pa., U.S.A.で見出すことができる。セラデルパルが経口的に利用可能であるため、典型的な製剤は経口であり、典型的な剤形は、経口投与用の錠剤またはカプセル剤になる。「セラデルパル」のサブセクションで述べたように、セラデルパルは、臨床試験のためにカプセル剤に製剤化されている。
【0027】
所期の投与様式に応じて、医薬組成物は、固形、半固形または液体の剤形の形態、好ましくは正確な用量の単回投与に適する単位用量形態であり得る。有効量のセラデルパルに加えて、組成物は、医薬的に用いられ得る製剤への活性化合物の処理を容易にするアジュバントを含む、適切な医薬的に許容される添加剤を含有し得る。「医薬的に許容される添加剤」は、活性化合物の生物学的活性の有効性に干渉せず、それが投与される対象体に対して毒性がないかまたはその他で望ましくないものではない添加剤または添加剤の混合物を指す。
【0028】
固形組成物について、従来の添加剤としては、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。液体の薬理学的に投与可能な組成物は、例えば、本明細書に記載の活性化合物および所望により医薬アジュバントを水または水性添加剤、例えば水、生理食塩水、デキストロース水溶液などに溶解、分散させるなどにより製造されて、液剤または懸濁剤を形成し得る。必要に応じて、投与される医薬組成物はまた、少量の無毒性の補助添加剤、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンナトリウムアセテート、トリエタノールアミンオレエートなどを含み得る。
【0029】
経口投与について、組成物は、一般的に錠剤またはカプセル剤の形態を取り;または、特に小児用については、水性もしくは非水性液剤、懸濁剤またはシロップ剤であり得る。錠剤およびカプセル剤は、好ましい経口投与形態である。経口用の錠剤およびカプセル剤は、1つ以上の一般的に用いられる添加剤、例えばラクトースおよびコーンスターチを一般的に含む。滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムもまた、典型的に加えられる。液体の懸濁剤が用いられるとき、活性剤は、乳化および懸濁させる添加剤と組み合せられ得る。必要に応じて、香料、着色剤および/または甘味剤もまた加えられ得る。経口製剤に組み込むための他の任意の添加剤としては、防腐剤、懸濁化剤、増粘剤などが挙げられる。
【0030】
典型的には、セラデルパルの医薬組成物またはセラデルパルの組成物を含むキットは、胆汁うっ滞性そう痒の処置における医薬組成物またはキットの使用を示すラベルもしくは説明書またはその両方を有する容器に包装される。
【0031】
経口投与に適切な(すなわち治療上有効な)セラデルパルまたはその塩の量は、セラデルパルとして計算されるとき、そう痒の程度および重症度、そう痒に関連する根底にある状態ならびに肝機能および腎機能などの因子に応じて、胆汁うっ滞性そう痒の成人対象体に対して、少なくとも0.5 mg/日、例えば少なくとも1 mg/日、例えば少なくとも2 mg/日、または少なくとも5 mg/日であるが;50 mg/日以下、例えば25 mg/日以下、例えば15 mg/日以下、または10 mg/日以下であり;例えば、「少なくとも」の値または「以下」の値の1つにより定義される任意の範囲内、例えば少なくとも1 mg/日かつ25 mg/日以下(すなわち、1~25 mg/日)または少なくとも2 mg/日かつ10 mg/日以下;例えば 2 mg/日、5 mg/日、または10 mg/日であると予想される。すなわち、PBCなどの状態における胆汁うっ滞性そう痒を処置するために成人に対して経口投与するのに適するセラデルパルの量は、実施例1で用いた量の下限以下であるが、実施例2で用いた量を含むと予想される。上記外側範囲を超える下限へまたはそれ未満に用量を適切に減少させることは、年齢および体重などの更なる要因に応じて、PFICおよびASなどの疾患における子供の対象体に;ならびに重度の肝障害を有する対象体、例えば障害の程度に応じてChild-PughクラスBおよびCの対象体においてなされる。これらの量は、平均1日用量を表し、必ずしも単回用量で与えられる量ではない。投与は、1日1回以上の頻度であってもよいが(該量または1日用量は、1日当たりの投与回数に分割される)、より典型的には1日1回である(該量は、単回投与で与えられる)。場合により、特に重度の肝障害の場合、投与は、1日1回より少ない頻度、例えば1週間に1回から2日に1、例えば1週間に1回、1週間に2回(特に少なくとも3日開けて投与)、1週間に3回(特に少なくとも2日開けて投与)、または2日に1回であり得る;そのため、対象体は、1.4 mg/日(1日用量)の量については、5 mgを1週間に2回投与され得る。
【0032】
胆汁うっ滞性そう痒の処置の分野における当業者(典型的には肝胆道疾患の分野における当業者であるが、ICPの場合は婦人科医であり得る)は、特定の程度のそう痒、根底にある肝胆道疾患および患者についてセラデルパルまたはセラデルパル塩の治療上有効量を確認して、過度の実験をすることなく個人の知識、当該分野の技術および本願の開示に基づいて、胆汁うっ滞性そう痒の処置のための治療上有効量に達することできる。
【実施例】
【0033】
実施例1:PBCにおける高用量試験(NCT02609048)
試験対象体は、下記の3つの基準のうち少なくとも2つによりPBCと診断された成人男性または女性である:(a)少なくとも6ヵ月間、アルカリホスファターゼ(ALP)が正常値上限(ULN)を超える既往歴、(b)免疫蛍光法において陽性抗ミトコンドリア抗体価>1/40、または酵素結合免疫吸着法によりM2陽性、または陽性PBC特異的抗核抗体、ならびに(c)PBCに一致する肝生検の結果、過去12ヵ月間の安定かつ推奨される用量のUDCAおよびALP≧1.67×ULN。除外基準には、ASTまたはALT≧3×ULN、総ビリルビン(TBIL)≧2×ULN、自己免疫性肝炎または慢性ウイルス性肝炎の既往歴、PSC、フィブラートまたはシンバスタチンの現在の使用、コルヒチン、メトトレキサート、アザチオプリンまたは合成ステロイドの過去2ヶ月における使用、PBCに対する実験的処置の使用、および実験的または未承認の免疫抑制剤の使用が含まれる。対象体は、プラセボ、L-リシン二水和物塩として50 mg/日または200 mg/日のセラデルパルいずれかがカプセル剤の形態で1日1回12週間経口投与されるよう無作為に割付けられた。そう痒を、VAS、5-DかゆみおよびPBC-40を用いて評価した。試験中に、トランスアミナーゼの無症候性の増加が3例観察された(200 mg群において2例および50 mg群において1例)。すべて処置中断で可逆的であり、総ビリルビンの増加を伴わなかった。試験が明らかな有効性シグナルをすでに示していたので、試験を中止した。試験を非盲検化した後、試験に登録され少なくとも2週間の処置を完了した26名の対象体(プラセボ群で10名、50 mg/日セラデルパル群で9名、200 mg/日セラデルパル群で7名)の利用可能なデータを用いて、主要評価項目ALPの変化を分析した。強力な抗胆汁うっ滞作用が観察された。強力な胆汁うっ滞抑制作用にもかかわらず、そう痒の有害事象が処置において報告されなかったこともまた注目すべきである。
【0034】
実施例2:PBCにおける低用量試験(NCT02955602)
この実施例は、実施例1と同様であるが、UDCAに不忍容の対象体を含み、そしてL-リシン二水和物塩として5 mg/日または10 mg/日のセラデルパルをカプセル剤形態で1日1回経口投与することを用いる試験を記載する。12週にて、5 mg/日の低用量でもセラデルパルは、胆汁うっ滞を反転させ、トランスアミナーゼを減少させ、LDL-コレステロールを減少させ、そして炎症を軽減した。激しいそう痒を有する試験に参加した1名の対象体は、10 mg/日でセラデルパルを5日投与した後、PBCに関連する可能性があるそう痒が増加したため中止した。
【0035】
12週にて、VAS(0~100スケール)によるそう痒評価の結果は次のとおりであった。
【表1】
【0036】
表から分かるように、5 mg/日および10 mg/日両方のセラデルパルは、PBCに関連する胆汁うっ滞性そう痒を顕著に軽減した。
【0037】
12週間後、5 mg/日群の対象体は、彼らのALP応答に基づいて10 mg/日へセラデルパル用量を増加させることが可能であった(5/10 mg群)。26週にて、119名の対象体が、少なくとも1つの用量のセラデルパルを投与されており、そのうち79名(66%)が、そう痒の病歴を報告した。ベースラインにてVAS>0の37名の対象体を、26週の中間分析で評価した:5/10 mg群の18名および10 mg群の19名の対象体。ベースライン中央値VASは、5/10 mgおよび10 mg群でそれぞれ15(範囲1~68)および50(範囲5~90)であった。26週目にて、VASの中央値変化は、5/10 mgおよび10 mg群でそれぞれ-50%および-55%であった。そう痒による重度の有害事象は無かったが、24/119名(20%)の対象体においてそう痒が有害事象として報告された。26週にて、セラデルパルに関連する中止は無かった。
【0038】
実施例3
PSC、PFICまたはASなどのそう痒に典型的には関連する肝胆道疾患の成人対象体を、1、2、5および10 mg/日のセラデルパルの経口投与で処置する。対象体は、UDCAを含む通常の他の医薬が許される。試験前、試験中一定間隔、例えば試験中4週間ごと、およびセラデルパル治療の最後の投与の4週間後に、安全性および薬力学的評価のために、対象体を評価する。各来院時に、対象体を、胆汁うっ滞性症状およびバイオマーカーについて評価し、胆汁うっ滞性そう痒について、評価する。対象体はまた健康日記を継続し、これは各来院時にレビューされる。対象体は、例えばALPおよびGGTの減少によって示されるように、疾患の改善、および胆汁うっ滞性そう痒の改善を示す。