(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】防食システムおよび防食方法
(51)【国際特許分類】
C23F 13/04 20060101AFI20220214BHJP
C23F 13/02 20060101ALI20220214BHJP
E02D 31/00 20060101ALI20220214BHJP
E04B 1/64 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
C23F13/04
C23F13/02 A
C23F13/02 L
E02D31/00 Z
E04B1/64 A
E04B1/64 Z
(21)【出願番号】P 2021064405
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2021-04-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】蓑和 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】脇田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘隆
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-085752(JP,A)
【文献】特開2018-123394(JP,A)
【文献】特開2008-151696(JP,A)
【文献】特開2011-038131(JP,A)
【文献】特開2017-066655(JP,A)
【文献】特開2011-052246(JP,A)
【文献】特開2021-011614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 13/04
C23F 13/02
E02D 31/00
E04B 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌に埋設された鋼製の基礎梁を電気防食する防食システムであって、
犠牲陽極と、
前記基礎梁に接続された第1リード線と、
前記犠牲陽極に接続された第2リード線と、
前記第1リード線の端子である第1端子および前記第2リード線の端子である第2端子が収容されるとともに、内部で前記第1端子および前記第2端子が接続される接続箱と、を備え、
前記第1端子と前記第2端子との間に、防食電流の電流量を調整するための電池
のみを接続することも可能であり、かつ、前記第1端子と前記第2端子との間に、前記電流量を調整するための抵抗器
のみを接続することも可能であり、かつ、前記第1端子と前記第2端子との間に前記電池および前記抵抗器の両方を同時に接続することも可能である、防食システム。
【請求項2】
土壌に埋設された鋼製の基礎梁を電気防食する防食システムであって、
犠牲陽極と、
前記基礎梁に接続された第1リード線と、
前記犠牲陽極に接続された第2リード線と、
前記第1リード線の端子である第1端子および前記第2リード線の端子である第2端子が収容されるとともに、内部で前記第1端子および前記第2端子が接続される接続箱と、を備え、
前記第1端子と前記第2端子との間に、防食電流の電流量を調整するための電池、および、前記電流量を調整するための抵抗器
のうちの前記電池のみが接続された状態と、前記第1端子と前記第2端子との間に前記電池および前記抵抗器のうちの前記抵抗器のみが接続された状態と、が切り替えられる、防食システム。
【請求項3】
前記接続箱は、掘削不要で作業可能なハンドホールまたは分電盤である、請求項1
または2に記載の防食システム。
【請求項4】
前記第1端子と前記第2端子との間に電流計が接続可能である、請求項1から
3のいずれか1項に記載の防食システム。
【請求項5】
照合電極と、
前記照合電極に接続された第3リード線と、を更に備え、
前記接続箱には、前記第3リード線の端子である第3端子が収容され、
前記第1端子と前記第3端子との間に電位計が接続可能である、請求項1から
4のいずれか1項に記載の防食システム。
【請求項6】
土壌に埋設された鋼製の基礎梁を、前記基礎梁にリード線を介して接続される犠牲陽極を用いて電気防食する防食方法であって、
前記犠牲陽極が発生させる防食電流、および、前記基礎梁の対地電位をそれぞれ測定する第1工程と、
前記防食電流および前記対地電位それぞれの測定結果に基づいて、対処が必要と判定された場合に対処を実施した上で前記第1工程に戻る第2工程と、を含み、
前記第2工程では、
前記防食電流が所定の閾値を超えた場合には、前記リード線に抵抗器を設けて前記防食電流を抑制した上で前記第1工程に戻り、
前記防食電流が前記閾値を超えない場合であって、前記対地電位が前記基礎梁の防食電位を超える場合には、前記リード線に電池を設けて前記防食電流の電流量を増加させた上で前記第1工程に戻る、防食方法。
【請求項7】
前記リード線に前記抵抗器および前記電池のうちの一方のみが設けられる、請求項
6に記載の防食方法。
【請求項8】
前記リード線に前記抵抗器および前記電池のうちの前記抵抗器のみが接続された状態と、前記リード線に前記抵抗器および前記電池のうちの前記電池のみが接続された状態と、が切り替えられる、請求項
7に記載の防食方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食システムおよび防食方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼製の基礎梁の防食に電気防食(流電方式)を適用した技術として、特許文献1、2に記載された技術が知られている。
この種の建築の基礎梁の特徴として、いわゆるパイプラインとは異なり、地盤の表層部に配置されることが挙げられる。地盤の表層部は、掘削・購入土(クラッシャーラン等)での埋戻し等が行われる。そのため、地盤の表層部の性質は、安定しづらい。
また、建築の基礎梁の構造は、パイプラインのようにシンプルな構造ではない。例えば、建築の基礎梁の構造には、上部構造との取り合いがあったり、付帯物が多くあったりする。このように、建築の基礎梁の構造は、複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-85752号公報
【文献】特開2020-20210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建築の基礎梁は、上述したように、地盤の表層部の性質が安定しづらかったり、構造が複雑であったりすることもあり、施工者が実際に鋼製の基礎梁を設置したときには、以下の(1)、(2)に示す問題が生じ得る。
(1)基礎梁の土壌接地抵抗が想定よりも高くなる。この場合、基礎梁の対地電位が防食電位まで下がらず、防食電流も不足することが考えられる。
(2)基礎梁において予期しない導通が生じたり、基礎梁の土壌接地抵抗が想定よりも低くなったりする。これらの場合、基礎梁の対地電位が防食電位には到達するものの、電流が過大となる。そのため、陽極が早期に製品寿命(電気分解されて無くなる)を迎えてしまうことが考えられる。
【0005】
上記(1)の場合、この問題を解決するため、基礎周辺の地中に陽極を追加設置する方法が考えられる。しかしながらこの場合、建物の工事進捗状況等によっては、掘削が困難である。また、陽極を追加設置できる場所が限られるうえ、例えば、建物の外周部の掘削を行う場合はコストや工期がかかる。
【0006】
上記(2)の場合、この問題を解決するため、以下の(2-1)、(2-2)に示す方法が考えられる。
(2-1)想定外の導通が発生している原因を調査し、原因となる障害物を取り除く。
(2-2)陽極1個当たりの電流量を低減させるため、陽極を基礎周辺の地中に追加設置する。
しかしながら上記(2-1)の場合、複雑な建築物では、導通の原因の特定が非常に困難である。また上記(2-2)の場合は、上記(1)の場合と同様の問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、犠牲陽極の寿命を容易に維持し、かつ、防食電流の不足を容易に防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<1>本発明の一態様に係る防食システムは、土壌に埋設された鋼製の基礎梁を電気防食する防食システムであって、犠牲陽極と、前記基礎梁に接続された第1リード線と、前記犠牲陽極に接続された第2リード線と、前記第1リード線の端子である第1端子および前記第2リード線の端子である第2端子が収容されるとともに、内部で前記第1端子および前記第2端子が接続される接続箱と、を備え、前記第1端子と前記第2端子との間に、電池および抵抗器のうちの少なくとも一方が接続可能である。
【0009】
ここで、第1端子と第2端子との間に、電池および抵抗器のうちの少なくとも一方が接続可能であることは、第1端子と第2端子との間に電池のみを接続することも可能であり、かつ、第1端子と第2端子との間に抵抗器のみを接続することも可能であり、かつ、第1端子と第2端子との間に電池および抵抗器の両方を同時に接続することも可能であることも意味する。すなわち、第1端子と第2端子との間に、電池および抵抗器のうちの少なくとも一方が接続可能であることは、電池および抵抗器の一方のみが、第1端子と第2端子との間に接続可能であり、他方が、第1端子と第2端子との間に接続不能であること意味してはいない。
この防食システムでは、第1端子と第2端子との間に、電池または抵抗器が接続可能である。
したがって、(1)基礎梁の対地電位が防食電位まで下がらず、防食電流も不足する場合には、例えば作業者が、第1端子と第2端子との間に電池を接続する。すると、電位差が強制的に生じ、基礎梁に流れる防食電流の電流量が増加し、基礎梁の対地電位が下がる。なおこの場合、基礎梁周辺の分極も促進され、地中の酸素量が減って防食状態が安定する。基礎梁の防食に必要な電流は、例えば数十mA程度であり、電池としては、例えば乾電池の小容量の電池で対応可能である。
また、(2)防食電流が過大となっている場合には、例えば作業者が、第1端子と第2端子との間に抵抗器を接続する。これにより、防食電流が抑制され、防食電流の電流量および基礎梁の対地電位が適正化される。
ここで、上記(1)、(2)のいずれの場合であっても、例えば作業者が、第1端子と第2端子との間に電池または抵抗器を接続する。第1端子および第2端子は、いずれも接続箱に収容されている。そのため、建物の外周部の掘削などが不要となり、作業者が、電池や抵抗器を接続箱内で容易に設置することができる。
しかも、電池や抵抗器は、種類や個数、接続方法(直列、並列)を容易に調整可能である。そのため、使用者は、電池や抵抗器を適宜組み合わせることで、基礎梁の対地電位や防食電流の電流量などを、目標に対して容易に調整し易い。
【0010】
<2>上記<1>に係る防食システムでは、前記第1端子と前記第2端子との間に電流計が接続可能である構成を採用してもよい。
【0011】
第1端子と第2端子との間に電流計が接続可能である。したがって、使用者が防食電流の電流量を容易に測定することができる。
【0012】
<3>上記<1>または<2>に係る防食システムでは、照合電極と、前記照合電極に接続された第3リード線と、を更に備え、前記接続箱には、前記第3リード線の端子である第3端子が収容され、前記第1端子と前記第3端子との間に電位計が接続可能である構成を採用してもよい。
【0013】
第1端子と第3端子との間に電位計が接続可能である。したがって、使用者が基礎梁の対地電位を容易に測定することができる。
【0014】
<4>上記<1>から<3>のいずれか1項に係る防食システムでは、前記接続箱は、ハンドホールまたは分電盤である構成を採用してもよい。
【0015】
接続箱が、ハンドホールまたは分電盤である。したがって、使用者が接続箱内で容易に作業することができる。
【0016】
<5>本発明の一態様に係る防食方法は、土壌に埋設された鋼製の基礎梁を、前記基礎梁にリード線を介して接続される犠牲陽極を用いて電気防食する防食方法であって、前記犠牲陽極が発生させる防食電流、および、前記基礎梁の対地電位をそれぞれ測定する第1工程と、前記防食電流および前記対地電位それぞれの測定結果に基づいて、対処が必要と判定された場合に対処を実施した上で前記第1工程に戻る第2工程と、を含み、前記第2工程では、前記防食電流が所定の閾値を超えた場合には、前記リード線に抵抗器を設けた上で前記第1工程に戻り、前記防食電流が前記閾値を超えない場合であって、前記対地電位が前記基礎梁の防食電位を超える場合には、前記リード線に電池を設けた上で前記第1工程に戻る。
【0017】
第2工程で、(1)防食電流が所定の閾値を超えた場合には、例えば作業者がリード線に抵抗器を設ける。すなわち、防食電流が過大となっている場合には、例えば作業者がリード線に抵抗器を設けることで、防食電流が抑制され、防食電流の電流量および基礎梁の対地電位が適正化される。
第2工程で、(2)防食電流が前記閾値を超えない場合であって、対地電位が基礎梁の防食電位を超える場合には、例えば作業者がリード線に電池を設ける。すなわち、基礎梁の対地電位が防食電位まで下がらない場合には、例えば作業者がリード線に電池を設けることで、電位差が強制的に生じ、基礎梁に流れる防食電流の電流量が増加し、基礎梁の対地電位が下がる。
ここで、上記(1)、(2)のいずれの場合であっても、例えば作業者がリード線に電池または抵抗器を設ける。よって、作業者が、リード線のうち、作業がし易い位置を選択し、その位置に電池または抵抗器を設けることで、作業者が、電池や抵抗器を容易に設置することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、犠牲陽極の寿命を容易に維持し、かつ、防食電流の不足を容易に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る防食システムの平面図である。
【
図3】
図1に示す防食システムを電気回路に概念化した図である。
【
図4】
図1に示す防食システムを構成する第2接続箱の断面図である。
【
図5】
図1に示す防食システムにおいて、定常状態における第2接続箱内の各端子の状態を示す図である。
【
図6】
図5に第2接続箱であって、防食電流が測定される状態における第2接続箱内の各端子の状態を示す図である。
【
図7】
図5に第2接続箱内であって、基礎梁の対地電位が測定される状態における第2接続箱内の各端子の状態を示す図である。
【
図8】
図5に第2接続箱内であって、電池が設置された状態における第2接続箱内の各端子の状態を示す図である。
【
図9】
図5に第2接続箱内であって、電池が設置された状態における第2接続箱内の各端子の状態を示す図である。
【
図10】
図8に示す状態を、
図5のような電気回路に概念化した図である。
【
図11】
図9に示す状態を、
図5のような電気回路に概念化した図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る防食方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1から
図12を参照し、本発明の一実施形態に係る防食システム20および防食方法を説明する。
【0021】
(防食方法)
本実施形態に係る防食システム20は、鋼製の基礎梁10を電気防食する。防食システム20は、基礎梁10のコンクリート土壌マクロセル腐食(CSマクロセル腐食)を抑制する。
【0022】
(基礎梁10)
ここでは、防食システム20の説明にあたり、まず基礎梁10を説明する。
図1に示すような基礎梁10は、土壌に埋設されている。基礎梁10は、その一部のみが土壌に埋設されていてもよく、その全体が土壌に埋設されていてもよい。すなわち、基礎梁10の少なくとも一部が土壌に埋設されている。
【0023】
基礎梁10は、鋼材によって形成されている。基礎梁10は、例えば、H形鋼によって形成されている。基礎梁10は、第1梁11および第2梁12を備えている。第1梁11は、第1方向D1に延びる。第2梁12は、第2方向D2に延びる。第1方向D1および第2方向D2は、例えば、水平方向に平行である。第1方向D1および第2方向D2は、互いに直交している。第1梁11は、第2方向D2に間隔をあけて複数設けられている。第2梁12は、第1方向D1に間隔をあけて複数設けられている。第2梁12は、第2方向D2に隣り合う2つの第1梁11の間に架け渡されている。第2方向D2に隣り合う2つの第1梁11と、第1方向D1に隣り合う2つの第2梁12と、は、平面視において矩形状をなす。
【0024】
なお本実施形態では、基礎梁10には、絶縁被覆が施されている。基礎梁10には、ターミナル13が設けられている。本実施形態では、ターミナル13は、第1梁11に設けられている。ただし、基礎梁10に絶縁被覆が施されてなくてもよい。この場合、ターミナル13や、後述するプローブ電極23が不要である。
【0025】
基礎梁10は、図示しないコンクリート基礎によって支持されている。前記コンクリート基礎は、例えば、鉄筋コンクリート造などである。前記コンクリート基礎には、鋼材14(
図3等参照)が埋設されている。
【0026】
(防食システム20)
次に、上記基礎梁10を電気防食する防食システム20を説明する。
図1および
図2に示すように、防食システム20は、犠牲陽極21と、照合電極22と、プローブ電極23と、接続箱24と、第1リード線25と、第2リード線26と、第3リード線27と、第4リード線28と、渡り線29と、を備えている。
【0027】
犠牲陽極21の対地電位は、基礎梁10の対地電位よりも低い。犠牲陽極21と基礎梁10との電位差に基づいて、犠牲陽極21がアノードとなり、かつ、基礎梁10がカソードとなり、犠牲陽極21から基礎梁10に防食電流(
図2に破線で示す矢印)が流れる。犠牲陽極21は、例えば、マグネシウム合金などにより形成される。
【0028】
防食システム20は、複数(図示の例では8つ)の犠牲陽極21を備えている。複数の犠牲陽極21は、基礎梁10の平面視において、基礎梁10がなす矩形状の内側に位置している。複数の犠牲陽極21は、基礎梁10の平面視において、2つの第1梁11の間で、かつ、2つの第2梁12の間に配置されている。なお、犠牲陽極21の地中深さは、例えば、基礎梁10の地中深さに対して、深くてもよく、浅くてもよく、同等であってもよい。
【0029】
照合電極22は、基礎梁10の対地電位を測定するための基準となる電極である。照合電極22は、例えば、亜鉛などによって形成される。
プローブ電極23は、基礎梁10の模擬欠陥となる電極である。プローブ電極23は、基礎梁10と同一の鋼材14によって形成されている。プローブ電極23は、対地電位を測定するという観点では、基礎梁10の一部として機能する。
【0030】
これらの照合電極22およびプローブ電極23は、基礎梁10の近傍に埋設される。例えば、照合電極22やプローブ電極23と基礎梁10との距離は、犠牲陽極21と基礎梁10との距離よりも近い。照合電極22やプローブ電極23の地中深さは、基礎梁10の地中深さと同等であることが好ましい。
【0031】
防食システム20は、複数(図示の例では2つ)の接続箱24を備えている。接続箱24は、第1接続箱24Aと、第2接続箱24Bと、を含む。第1接続箱24Aおよび第2接続箱24Bは、基礎梁10の平面視において、基礎梁10がなす矩形状の外側に位置している。第1接続箱24Aおよび第2接続箱24Bは、第1方向D1に間隔をあけて配置されている。第1接続箱24Aおよび第2接続箱24Bは、第1梁11に対して第2方向D2に隣り合っている。
【0032】
接続箱24は、ハンドホールまたは分電盤である。本実施形態では、接続箱24は、ハンドホールである。
図2に示すように、接続箱24には、第1端子25aや第2端子26a、第3端子27a、第4端子28aが収容される。第1端子25aは、第1リード線25の端子である。第2端子26aは、第2リード線26の端子である。第3端子27aは、第3リード線27の端子である。第4端子28aは、第4リード線28の端子である。これらの第1リード線25、第2リード線26、第3リード線27、第4リード線28については、後述する。
【0033】
第1リード線25は、基礎梁10に接続されている。第1リード線25は、ターミナル13を介して基礎梁10に接続されている。第1リード線25は、ターミナル13から第2接続箱24Bに延びている。第1リード線25の第1端子25aは、第2接続箱24B内に収容されている。
【0034】
なお第1リード線25は、分岐されていてもよい。この場合、第1リード線25のうち、接続箱側の端子(すなわち、第1端子25a)が複数となるように、第1リード線25が分岐されていることが好ましい。
図2に示す例では、第1端子25aが2つとなるように、第1リード線25が分岐されている。
【0035】
第2リード線26は、犠牲陽極21に接続されている。本実施形態では、防食システム20は、複数の第2リード線26を備えている。第2リード線26の数は、犠牲陽極21の数と同一である。1つの犠牲陽極21には、1つの第2リード線26が接続されている。本実施形態では、8つの犠牲陽極21のうち、6つの犠牲陽極21に接続された各第2リード線26が、各犠牲陽極21から第1接続箱24Aに延びている。これらの6つの第2リード線26の第2端子26aは、第1接続箱24A内に収容されている。8つの犠牲陽極21のうち、残りの2つの犠牲陽極21に接続された各第2リード線26が、各犠牲陽極21から第2接続箱24Bに延びている。これらの2つの第2リード線26の第2端子26aは、第2接続箱24B内に収容されている。
【0036】
第1リード線25と第2リード線26とが接続されることで、基礎梁10と犠牲陽極21とが接続される。第1リード線25および第2リード線26は、基礎梁10と犠牲陽極21とを接続するリード線30として機能する。
【0037】
第3リード線27は、照合電極22に接続されている。第3リード線27は、照合電極22から第2接続箱24Bに延びている。第3リード線27の第3端子27aは、第2接続箱24B内に収容されている。
第4リード線28は、プローブ電極23に接続されている。第4リード線28は、プローブ電極23から第2接続箱24Bに延びている。第4リード線28の第4端子28aは、第2接続箱24B内に収容されている。なお本実施形態では、前述したように、対地電位を測定するという観点では、プローブ電極23が基礎梁10の一部として機能する。そのため、対地電位を測定するという観点では、第4リード線28は第1リード線25として機能し、かつ、第4端子28aは第1端子25aとして機能する。
【0038】
ここで、第1接続箱24A内に収容された複数の第2端子26aは、互いに接続されている。各第2端子26aは、例えば、いわゆる圧着端子である。複数の第2端子26aは、例えば、ボルト-ナット等の結線手段31(
図5参照)によって結線される。第1接続箱24A内で接続された複数の第2端子26aを、以下、第1集約端子24A1という。
【0039】
一方、第2接続箱24B内に収容された第1端子25a、第2端子26aおよび第4端子28aも、互いに接続されている。第1端子25a、第2端子26aおよび第4端子28aは、例えば、いわゆる圧着端子である。第1端子25a、第2端子26aおよび第4端子28aは、例えば、ボルト-ナット等の結線手段31によって結線される。第2接続箱24B内で接続された第1端子25a、第2端子26aおよび第4端子28aを、以下、第2集約端子24B1という。なお第3端子27aは、他の端子(第2集約端子24B1)に対して接続されていない。
【0040】
渡り線29は、第1接続箱24Aと第2接続箱24Bとの間に架け渡されている。渡り線29は、例えば、第1集約端子24A1と、第2集約端子24B1と、を接続する。渡り線29は、前記リード線30の一部として機能する。
第1集約端子24A1および第2集約端子24B1は、例えば、渡り線29に接続された状態で、絶縁材によって被覆されている。絶縁材は、第1集約端子24A1や第2集約端子24B1に、離脱可能に装着されている。第1集約端子24A1や第2集約端子24B1の結線を解除するときには、まず、第1集約端子24A1や第2集約端子24B1から絶縁材を離脱させ、その後、結線手段31による結線を解く。
【0041】
(防食システム20が形成する模式的な電気回路)
上記防食システム20が形成する模擬的な電気回路を
図3に示す。
この電気回路では、犠牲陽極21、基礎梁10、コンクリート基礎内の鋼材14をそれぞれ、電気抵抗として扱っている。犠牲陽極21の抵抗値Raは、犠牲陽極21の1つあたりの接地抵抗である。基礎梁10の抵抗値Rbは、土中の基礎梁10の接地抵抗である。コンクリート基礎内の鋼材14の抵抗値Rrは、前記鋼材14の接地抵抗である。
【0042】
各犠牲陽極21が並列に配置され、これらの犠牲陽極21が第1の抵抗を構成している。第1の抵抗の抵抗値(接地抵抗)はRa/Nとなる。
基礎梁10および前記鋼材14が並列に配置され、基礎梁10および前記鋼材14が第2の抵抗を構成している。第2の抵抗の抵抗値(接地抵抗)をR0とする。抵抗値R0は、鋼材14の総合接地抵抗であるともいえる。抵抗値R0は、(Rb×Rr)/(Rb+Rr)となる。
この電気回路では、第1の抵抗および第2の抵抗が直列に接続されている。その結果、回路全体での抵抗値Rは、以下(1)式で表される。
R=Ra/N+R0 … (1)
【0043】
一方、この電気回路において、基礎梁10の防食電位をEpとし、犠牲陽極21の閉路電位をEmとする。すると、電位差(起電力)Vは、以下(2)式で表される。
V=Ep-Em … (2)
以上から、この電気回路において、発生可能電流INは、以下の(3)式で表される。
IN=V/R=(Ep-Em)/(Ra/N+R0) … (3)
【0044】
上記(3)式からも明らかなように、発生可能電流INを増大させる方法としては、例えば、電位差Vを大きくする方策がある。発生可能電流INを減少させる方法としては、例えば、抵抗値Rを大きくする方策がある。
【0045】
(第2接続箱24B内における端子)
図4および
図5に示すように、第2接続箱24B内において、第2集約端子24B1は、第1端子25a、第2端子26aおよび第4端子28aに分解可能である。第2集約端子24B1は、結線手段31による結線を解除することで、各端子に分解される。
【0046】
図6に示すように、第1端子25aと第2端子26aとの間に電流計32が接続可能である。第1端子25aと第2端子26aとの間に電流計32を接続するときには、作業者は、まず、結線手段31による第2集約端子24B1の結線を解除する。そして作業者は、第1端子25aと第4端子28aとを結線手段31によって結線し、かつ、複数の第2端子26aを結線手段31によって結線した状態で、第1端子25aと、第2端子26aと、の間に電流計32を接続する。
【0047】
図7に示すように、第1端子25aと第3端子27aとの間に電位計33が接続可能である。第1端子25aと第2端子26aとの間に電位計33を接続するときには、作業者は、結線手段31による第2集約端子24B1の結線を維持したまま、第1端子25a(第2集約端子24B1、第4端子28a)と、第3端子27aと、の間に電位計33を接続する。
【0048】
図8および
図9に示すように、第1端子25aと第2端子26aとの間に、電池34(例えば、乾電池など)および抵抗器35のうちの少なくとも一方が接続可能である。
ここで、第1端子25aと第2端子26aとの間に、電池34および抵抗器35のうちの少なくとも一方が接続可能であることは、第1端子25aと第2端子26aとの間に電池34のみを接続することも可能であり、かつ、第1端子25aと第2端子26aとの間に抵抗器35のみを接続することも可能であり、かつ、第1端子25aと第2端子26aとの間に電池34および抵抗器35の両方を同時に接続することも可能であることも意味する。すなわち、第1端子25aと第2端子26aとの間に、電池34および抵抗器35のうちの少なくとも一方が接続可能であることは、電池34および抵抗器35の一方のみが、第1端子25aと第2端子26aとの間に接続可能であり、他方が、第1端子25aと第2端子26aとの間に接続不能であること意味してはいない。
【0049】
第1端子25aと第2端子26aとの間に電池34や抵抗器35を接続するときには、作業者は、まず、結線手段31による第2集約端子24B1の結線を解除する。そして作業者は、第1端子25aと第4端子28aとを結線手段31によって結線し、かつ、複数の第2端子26aを結線手段31によって結線した状態で、第1端子25aと第2端子26aとの間に電池34や抵抗器35を接続する。なお電池34や抵抗器35は、結線手段31によって、第1端子25a、第2端子26aおよび第4端子28aと一体に接続されてもよい。すなわち、電池34や抵抗器35が、ボルト-ナット(結線手段31)によって、第1端子25a、第2端子26aおよび第4端子28aと締結されていてもよい。
【0050】
なお
図8に示すように、第1端子25aと第2端子26aとの間に電池34を接続した場合、
図10に示すように、模式的な電気回路に電源が追加されることとなる。その結果、電位差Vが大きくなり、発生可能電流I
Nが大きくなる。
図9に示すように、第1端子25aと第2端子26aとの間に抵抗器35を接続した場合、
図11に示すように、模式的な電気回路に電気抵抗が追加されることとなる。その結果、抵抗値Rが大きくなり、発生可能電流I
Nが小さくなる。
【0051】
(防食方法)
次に、上記防食システム20を使用した防食方法の一例を説明する。この防食方法は、犠牲陽極21の寿命を容易に維持し、かつ、防食電流の不足を容易に防ぐための方法である。この防食方法は、防食システム20の管理方法(維持方法)であるともいえる。
【0052】
なおこの防食方法は、上記防食システム20の使用を前提としない。この防食方法は、基礎梁10にリード線30を介して接続される犠牲陽極21を備える他の防食システムにも適用可能である。例えば、第1リード線25と第2リード線26とが接続箱24内で接続されない他の防食システムであっても、この防食方法を適用可能である。
【0053】
図12に示すように、防食方法は、第1工程(S10)と、第2工程(S20)と、を含む。なお、第1工程の実施は、例えば、予め決められた所定の期間毎に実施してもよい。この期間は、犠牲陽極21の設計上の寿命より短い期間である。前記寿命は、例えば40年程度である。前記期間は、例えば、1年程度である。
【0054】
(第1工程)
第1工程では、例えば作業者が、犠牲陽極21が発生させる防食電流、および、基礎梁10の対地電位をそれぞれ測定する。作業者が防食電流を測定するときには、例えば、作業者は、
図6に示すように、第1端子25aと第2端子26aとの間に電流計32を接続する。作業者が対地電位を測定するときには、例えば、作業者は、
図7に示すように、第1端子25aと第3端子27aとの間に電位計33を接続する。なおこのとき、
図7に示すように、第1端子25aと第4端子28aとは導通している。
【0055】
(第2工程)
使用者は、第1工程を実施した後、第2工程を実施する。
第2工程では、例えば使用者は、防食電流および対地電位それぞれの測定結果に基づいて、対処が必要と判定された場合に対処を実施した上で第1工程に戻る。
【0056】
具体的には、まず、例えば作業者が、防食電流が所定の閾値を超えたか否かを判定する(S21)。防食電流が所定の閾値を超えている場合には(S21:Yes)、作業者が、第1端子25aと第2端子26aとの間に抵抗器35を設けた上で第1工程に戻る(S22)。前記閾値は、例えば、犠牲陽極21の設計上の寿命に基づいて設定される。この閾値は、例えば、犠牲陽極21の質量などに基づいて計算することができる。このように、防食電流が過大となっている場合には、例えば作業者がリード線30に抵抗器35を設けることで、防食電流が抑制され、防食電流の電流量および基礎梁10の対地電位が適正化される。
【0057】
防食電流が所定の閾値を超えていない場合には(S21:No)、例えば作業者が、対地電位が基礎梁10の防食電位を超えたか否かを判定する(S23)。対地電位が基礎梁10の防食電位を超えている場合には(S23:Yes)、作業者が、第1端子25aと第2端子26aとの間に電池34を設けた上で第1工程に戻る(S24)。このように、基礎梁10の対地電位が防食電位まで下がらない場合には、例えば作業者がリード線30に電池34を設けることで、電位差が強制的に生じ、基礎梁10に流れる防食電流の電流量が増加し、基礎梁10の対地電位が下がる。
【0058】
なお、上記いずれの判定を経ても第1工程に戻らない場合(S23:No)、終了する。
ここで、例えば作業者がリード線30に電池34または抵抗器35を設けるとき、作業者が、リード線30のうち、作業がし易い位置(例えば、本実施形態では、第2接続箱24Bの内部)を選択し、その位置に電池34または抵抗器35を設けることで、作業者が、電池34や抵抗器35を容易に設置することができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る防食システム20によれば、第1端子25aと第2端子26aとの間に、電池34または抵抗器35が接続可能である。
したがって、(1)基礎梁10の対地電位が防食電位まで下がらず、防食電流も不足する場合には、例えば作業者が、第1端子25aと第2端子26aとの間に電池34を接続する。すると、電位差が強制的に生じ、基礎梁10に流れる防食電流の電流量が増加し、基礎梁10の対地電位が下がる。なおこの場合、基礎梁10周辺の分極も促進され、地中の酸素量が減って防食状態が安定する。基礎梁10の防食に必要な電流は、例えば数十程度であり、電池34としては、例えば乾電池の小容量の電池34で対応可能である。
また、(2)防食電流が過大となっている場合には、例えば作業者が、第1端子25aと第2端子26aとの間に抵抗器35を接続する。これにより、防食電流が抑制され、防食電流の電流量および基礎梁10の対地電位が適正化される。
【0060】
ここで、上記(1)、(2)のいずれの場合であっても、例えば作業者が、第1端子25aと第2端子26aとの間に電池34または抵抗器35を接続する。第1端子25aおよび第2端子26aは、いずれも接続箱24に収容されている。そのため、建物の外周部の掘削などが不要となり、作業者が、電池34や抵抗器35を接続箱24内で容易に設置することができる。
しかも、電池34や抵抗器35は、種類や個数、接続方法(直列、並列)を容易に調整可能である。そのため、使用者は、電池34や抵抗器35を適宜組み合わせることで、基礎梁10の対地電位や防食電流の電流量などを、目標に対して容易に調整し易い。
【0061】
第1端子25aと第2端子26aとの間に電流計32が接続可能である。したがって、使用者が防食電流の電流量を容易に測定することができる。
第1端子25aと第3端子27aとの間に電位計33が接続可能である。したがって、使用者が基礎梁10の対地電位を容易に測定することができる。
接続箱24が、ハンドホールまたは分電盤である。したがって、使用者が接続箱24内で容易に作業することができる。
【0062】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0063】
接続箱24が1つであってもよい。犠牲陽極21が、7つ以下であってもよく、8つ以上であってもよい。
【0064】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 基礎梁
20 防食システム
21 犠牲陽極
22 照合電極
24 接続箱
25 第1リード線
25a 第1端子
26 第2リード線
26a 第2端子
27 第3リード線
27a 第3端子
30 リード線
【要約】
【課題】犠牲陽極の寿命を容易に維持し、かつ、防食電流の不足を容易に防ぐ。
【解決手段】防食システム20は、土壌に埋設された鋼製の基礎梁10を電気防食する防食システム20であって、犠牲陽極21と、基礎梁10に接続された第1リード線25と、犠牲陽極21に接続された第2リード線26と、第1リード線25の端子である第1端子および第2リード線26の端子である第2端子が収容されるとともに、内部で第1端子および第2端子が接続される接続箱24と、を備え、第1端子と第2端子との間に、電池および抵抗器のうちの少なくとも一方が接続可能である。
【選択図】
図1