(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-10
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】超音波探触子及び超音波探傷方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20220214BHJP
G01N 29/26 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/26
(21)【出願番号】P 2021142877
(22)【出願日】2021-09-02
【審査請求日】2021-09-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500171268
【氏名又は名称】三菱重工パワー検査株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】竹川 勝也
(72)【発明者】
【氏名】門下 寛孝
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109725062(CN,A)
【文献】実開昭62-044255(JP,U)
【文献】特開2018-116049(JP,A)
【文献】特開2018-040630(JP,A)
【文献】特開2009-186489(JP,A)
【文献】国際公開第2019/150953(WO,A1)
【文献】特開2009-244210(JP,A)
【文献】特開平08-094595(JP,A)
【文献】特開2010-276465(JP,A)
【文献】特開2010-071971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ウエッジ部材と、
前記第1ウエッジ部材とは異なる第2ウエッジ部材と、
前記第1ウエッジ部材と前記第2ウエッジ部材との間に配置されて、前記第1ウエッジ部材と前記第2ウエッジ部材とを音響的に隔てる音響隔離板と、
前記第1ウエッジ部材の上面に配置される、複数の圧電素子を含む送信用素子と、
前記第2ウエッジ部材の上面に配置される、複数の圧電素子を含む受信用素子と、
前記音響隔離板を跨ぎ、前記第1ウエッジ部材と前記第2ウエッジ部材とに亘って配置され、前記送信用素子と前記受信用素子とを覆う筐体と、
を備え、
前記第1ウエッジ部材及び前記送信用素子は、探傷対象物内を伝搬する縦波の超音波を第1屈折角度θ1以上第2屈折角度θ2以下の範囲内で走査可能であり、且つ、屈折角度の範囲が前記第2屈折角度θ2以上第3屈折角度θ3未満の範囲と少なくとも一部で重複するクリーピング波を出力可能である
超音波探触子。
【請求項2】
前記第1屈折角度θ1は、30度であり、
前記第2屈折角度θ2は、84度であり、
前記第3屈折角度θ3は、89度である、
請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記送信用素子を含む第1基板と、
前記受信用素子を含み、前記第1基板とは異なる第2基板と、
を備え、
前記第1基板は、前記筐体に揺動可能に支持され、
前記第2基板は、前記筐体に前記第1基板とは独立して揺動可能に支持されている、
請求項1又は2に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記送信用素子及び前記受信用素子とに接続される信号線が束ねられたケーブルを備え、
前記第1ウエッジ部材の上面及び前記第2ウエッジ部材の上面は、前記音響隔離板の厚さ方向から見たときに、前記音響隔離板の延在方向であって前記第1ウエッジ部材の下面及び前記第2ウエッジ部材の下面の延在方向に沿う方向の内の一方側から他方側に向かうにつれて前記第1ウエッジ部材の下面及び前記第2ウエッジ部材の下面に近づくように前記第1ウエッジ部材の下面及び前記第2ウエッジ部材の下面に対して傾斜しており、
前記ケーブルは、前記厚さ方向から見たときに、前記筐体から前記他方側に向かって突出しており、
前記厚さ方向から見たときに、前記筐体からの前記ケーブルの突出方向と、前記音響隔離板の延在方向であって前記第1ウエッジ部材の下面及び前記第2ウエッジ部材の下面の延在方向に沿う方向との角度差は、15度以内である、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の超音波探触子。
【請求項5】
前記送信用素子と前記受信用素子とを含む単一の基板を備える、
請求項1、2及び4の何れか一項に記載の超音波探触子。
【請求項6】
前記送信用素子を含む第1基板と、
前記受信用素子を含み、前記第1基板とは異なる第2基板と、
を備える、
請求項1、2及び4の何れか一項に記載の超音波探触子。
【請求項7】
前記第1ウエッジ部材の前記上面と下面との距離は、前記音響隔離板の厚さ方向から見たときに、前記音響隔離板の延在方向であって前記第1ウエッジ部材の前記下面の延在方向に沿う方向の前記第1ウエッジ部材の寸法よりも小さく、
前記第2ウエッジ部材の前記上面と下面との距離は、前記厚さ方向から見たときに、前記音響隔離板の延在方向であって前記第2ウエッジ部材の前記下面の延在方向に沿う方向の前記第2ウエッジ部材の寸法よりも小さい、
請求項1乃至
6の何れか一項に記載の超音波探触子。
【請求項8】
前記第1ウエッジ部材の前記上面と下面との距離、及び、前記第2ウエッジ部材の前記上面と下面との距離は、前記音響隔離板の厚さ方向に沿った前記第1ウエッジ部材の寸法と前記第2ウエッジ部材の寸法との合計よりも小さい、
請求項1乃至
7の何れか一項に記載の超音波探触子。
【請求項9】
前記第1ウエッジ部材の前記上面と下面との距離は、前記音響隔離板の厚さ方向に沿った前記第1ウエッジ部材の寸法よりも小さく、
前記第2ウエッジ部材の前記上面と下面との距離は、前記音響隔離板の厚さ方向に沿った前記第2ウエッジ部材の寸法よりも小さい、
請求項
8に記載の超音波探触子。
【請求項10】
前記音響隔離板の厚さ方向に沿った前記筐体の寸法は、前記音響隔離板の厚さ方向に沿った前記第1ウエッジ部材の寸法と前記第2ウエッジ部材の寸法との合計よりも小さい、
請求項1乃至
9の何れか一項に記載の超音波探触子。
【請求項11】
請求項1乃至
10の何れか一項に記載の超音波探触子を用いて、探傷対象物における探傷領域を縦波の超音波で探傷するステップと、
該超音波探触子を用いて、前記探傷領域とは深さが少なくとも一部で異なる領域をクリーピング波で探傷するステップと、
を備える
超音波探傷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波探触子及び超音波探傷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体に対して超音波探傷を行うことで、被検体の内部を検査することが広く行われている。超音波探傷では、例えば被検体に送信した超音波の反射波に基づいて探傷画像を生成し、生成した探傷画像から被検体の内部のきずの有無やきずの位置を判断することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、探傷対象物が比較的板厚の厚い板部材や管である場合、探触子を配置した探傷対象物の表面から板厚方向に沿って比較的遠い領域を縦波の超音波で探傷し、板厚に沿って該表面に比較的近い領域をクリーピング波で探傷することが考えられる。
この場合、従来の超音波探傷では、探触子を配置した探傷対象物の表面から板厚方向に沿って比較的遠い領域を縦波の超音波で探傷する場合と、板厚に沿って該表面に比較的近い領域をクリーピング波で探傷する場合とで、異なる探触子を用いて探傷することが一般的である。
そのため、従来の超音波探傷では、探触子を変更して超音波探傷を2回実施しなければならず、探触子を変更して探傷対象物に設置し直す作業が必要である。
【0005】
そこで、探触子を変更して探傷対象物に設置し直す作業を行わなくても済むように、探触子を配置した探傷対象物の表面から板厚方向に沿って比較的遠い領域と比較的近い領域とを1つの探触子で探傷可能な探触子が求められている。
しかし、このような探触子において、1つの探触子で超音波の送信と受信とを行うようにすると、クリーピング波を発生させようとする場合に、ウエッジ部材内に様々な雑エコーが発生してしまうため、ウエッジ部材を比較的大きくせざるを得なかった。そのため、探傷対象物の表面に他の部材等が近接して配置されている場合等では、該他の部材と探触子とが干渉して探傷対象物の表面に探触子を配置できず、超音波探傷を行うことができない。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、超音波探触子の大きさを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る超音波探触子は、
第1ウエッジ部材と、
前記第1ウエッジ部材とは異なる第2ウエッジ部材と、
前記第1ウエッジ部材と前記第2ウエッジ部材との間に配置されて、前記第1ウエッジ部材と前記第2ウエッジ部材とを音響的に隔てる音響隔離板と、
前記第1ウエッジの上面に配置される、複数の圧電素子を含む送信用素子と、
前記第2ウエッジの上面に配置される、複数の圧電素子を含む受信用素子と、
前記音響隔離板を跨ぎ、前記第1ウエッジ部材と前記第2ウエッジ部材とに亘って配置され、前記送信用素子と前記受信用素子とを覆う筐体と、
を備える。
【0008】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係る超音波探傷方法は、
請求項1乃至11の何れか一項に記載の超音波探触子を用いて、探傷対象物における探傷領域を縦波の超音波で探傷するステップと、
該超音波探触子を用いて、前記探傷領域とは深さが少なくとも一部で異なる領域をクリーピング波で探傷するステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、超音波探触子の大きさを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】幾つかの実施形態に係る超音波探触子の外観の側面図である。
【
図2A】一実施形態に係る超音波探触子を側方から見たときの模式的な断面図である。
【
図2B】
図2AのIIb-IIb矢視断面を模式的に示した図である。
【
図3A】他の実施形態に係る超音波探触子を側方から見たときの模式的な断面図である。
【
図3B】
図3AのIIIb-IIIb矢視断面を模式的に示した図である。
【
図4】第1ウエッジ部材と第2ウエッジ部材と音響隔離板とについての分解図である。
【
図5】幾つかの実施形態に係る探触子を用いた超音波探傷検査の様子を模式的に示す図である。
【
図6】幾つかの実施形態に係る探触子を用いた超音波探傷方法における処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、幾つかの実施形態に係る超音波探触子の外観の側面図である。
図2Aは、一実施形態に係る超音波探触子を側方から見たときの模式的な断面図である。
図2Bは、
図2AのIIb-IIb矢視断面を模式的に示した図である。
図3Aは、他の実施形態に係る超音波探触子を側方から見たときの模式的な断面図である。
図3Bは、
図3AのIIIb-IIIb矢視断面を模式的に示した図である。
図4は、第1ウエッジ部材と第2ウエッジ部材と音響隔離板とについての分解図である。
【0013】
図2Aに示した超音波探触子1A、及び、
図3Aに示した超音波探触子1Bは、超音波の送信用の素子(送信用素子15)と受信用の素子(受信用素子16)とを備える超音波探触子である。なお、以下の説明では、
図2Aに示した超音波探触子1Aと
図3Aに示した超音波探触子1Bとを区別せずに説明する場合、符号のアルファベットを省略して、超音波探触子1、又は単に、探触子1と称することもある。
【0014】
幾つかの実施形態に係る探触子1は、第1ウエッジ部材11と、第1ウエッジ部材11とは異なる第2ウエッジ部材12と、第1ウエッジ部材11と第2ウエッジ部材12との間に配置されて、第1ウエッジ部材11と第2ウエッジ部材12とを音響的に隔てる音響隔離板13とを備えている。
幾つかの実施形態に係る探触子1は、第1ウエッジ部材11の上面11uに配置される、複数の圧電素子を含む送信用素子15と、第2ウエッジ部材12の上面12uに配置される、複数の圧電素子を含む受信用素子16とを備えている。
幾つかの実施形態に係る探触子1は、音響隔離板13を跨ぎ、第1ウエッジ部材11と第2ウエッジ部材12とに亘って配置され、送信用素子15と受信用素子16とを覆う筐体20を備えている。
【0015】
第1ウエッジ部材11の上面11u及び第2ウエッジ部材12の上面12uは、
図2A及び
図3Aのように音響隔離板13の厚さ方向(以下、第1方向Dr1と呼ぶ)から見たときに、音響隔離板13の延在方向であって第1ウエッジ部材11の下面11d及び第2ウエッジ部材12の下面12dの延在方向に沿う方向(以下、第2方向Dr2と呼ぶ)の内の一方側から他方側に向かうにつれて第1ウエッジ部材11の下面11d及び第2ウエッジ部材12の下面12dに近づくように第1ウエッジ部材11の下面11d及び第2ウエッジ部材12の下面12dに対して傾斜している。
【0016】
なお、第2方向Dr2の内の上記一方側を前方とし、上記他方側を後方とする。
第1方向Dr1と第2方向Dr2とは直交している。第1方向Dr1及び第2方向Dr2の双方に対して直交する方向を第3方向Dr3とする。
第1方向Dr1は、
図1、
図2A及び
図3Aにおいて紙面に直交する方向であり、
図2B及び
図3Bにおいて図示左右方向である。
第2方向Dr2は、
図1、
図2A及び
図3Aにおいて図示左右方向であり、
図2B及び
図3Bにおいて紙面に直交する方向である。
第3方向Dr3は、
図1、
図2A、
図2B、
図3A及び
図3Bにおいて図示上下方向である。
【0017】
例えば、超音波探触子を配置した探傷対象物Taの表面Tasから板厚方向Drtに沿って比較的遠い領域と比較的近い領域とを1つの超音波探触子で探傷可能な超音波探触子において、一つのウエッジ部材に送信用素子と受信用素子とを配置すると、クリーピング波を発生させようとする場合に、ウエッジ部材内に様々な雑エコーが発生してしまう。そのため、該超音波探触子では、ウエッジ部材を比較的大きくせざるを得なかった。
ウエッジ部材が大きくなると、ウエッジ部材における超音波の減衰量も大きくなってしまうという課題もある。
【0018】
幾つかの実施形態に係る探触子1によれば、第1ウエッジ部材11と第2ウエッジ部材12との間に音響隔離板13を配置し、第1ウエッジ部材11に送信用素子15を配置し、第2ウエッジ部材12に受信用素子16を配置することで、受信用素子16において上述した雑エコーの影響を効率的に抑制できる。これにより、一つのウエッジ部材に送信用素子と受信用素子とを配置した場合と比べて、該一つのウエッジ部材の容積よりも第1ウエッジ部材11の容積と第2ウエッジ部材12の容積との合計容積を小さくすることができる。
【0019】
また、幾つかの実施形態に係る探触子1によれば、送信用素子15と受信用素子16とを覆う筐体20が音響隔離板13を跨いで第1ウエッジ部材11と第2ウエッジ部材12とに亘って配置されるので、筐体20の大きさを比較的小さくすることができる。
したがって、幾つかの実施形態に係る探触子1によれば、縦波での探傷とクリーピング波での探傷とを1つの超音波探触子1で実施可能となり、探傷対象物Taにおいて、表面Tasから比較的遠い領域から、表面に比較的近い領域まで、1つの超音波探触子1で探傷可能となる。幾つかの実施形態に係る探触子1によれば、第1ウエッジ部材11及び第2ウエッジ部材12の大きさを抑制でき、超音波探触子1を小型化できるので、狭隘部における探傷が可能となる。
【0020】
幾つかの実施形態に係る探触子1では、
図2Bに示した超音波探触子1Aのように、送信用素子15と受信用素子16とを含む単一の基板17を備えていてもよい。
すなわち、
図2Bに示した超音波探触子1Aでは、単一の基板17には、送信用素子15としての複数の素子(振動子)と、受信用素子16としての複数の素子(振動子)とが形成されている。例えば、
図2Bに示した基板17では、一つのピエゾ素子複合体(基板17)に送信用素子15と受信用素子16が配置されている。
図2Bに示した超音波探触子1Aでは、音響隔離板13を介して、送信用素子15と受信用素子16とが異なるウエッジに接するように配置されている。
図2Bに示した超音波探触子1Aによれば、送信用素子15と受信用素子16とを異なる基板に設けた場合と比べて、該異なる1つの基板の合計容積よりも基板17の容積を小さくし易くなる。
【0021】
幾つかの実施形態に係る探触子1では、
図3Bに示した超音波探触子1Bのように、送信用素子15を含む第1基板18と、受信用素子16を含み、第1基板18とは異なる第2基板19と、を備えていてもよい。
すなわち、
図3Bに示した超音波探触子1Bでは、第1基板18には、送信用素子15としての複数の素子(振動子)が形成され、第2基板19には、受信用素子16としての複数の素子(振動子)が形成されている。例えば、
図3Bに示した第1基板18及び第2基板19では、1つのピエゾ素子複合体(第1基板18)に送信用素子15が配置され、他のピエゾ素子複合体(第2基板19)に受信用素子16が配置されている。
図3Bに示した超音波探触子1Bでは、送信用素子15が第1ウエッジ部材11にのみ接するように配置され、受信用素子16が第2ウエッジ部材12にのみ接するように配置されている。
図3Bに示した超音波探触子1Bによれば、例えば、第1ウエッジ部材11の上面11uと第2ウエッジ部材12の上面12uとが異なる平面上に存在していても、第1基板18と第2基板19とをそれぞれの上面11u、12uに配置できる。
【0022】
すなわち、幾つかの実施形態に係る探触子1では、探傷対象物Taが円柱や円管等のように表面Tasが円周面である場合に、第1ウエッジ部材11の下面11d、及び、第2ウエッジ部材12の下面12dを表面Tasに合わせて円周面を有するようにしてもよい。この場合に、
図3Bに示した超音波探触子1Bでは、第1ウエッジ部材11の上面11u、及び、第2ウエッジ部材12の上面12uを下面11d、12dの円周面に倣うように傾斜させてもよい。この場合には、第1ウエッジ部材11の上面11uと第2ウエッジ部材12の上面12uとが異なる平面上に存在することとなる。
【0023】
上述したように、探傷対象物Taの表面Tasが円周面である場合、探傷対象物Taによって該円周面の曲率半径が異なる場合が想定される。具体的には、探傷対象物Taが円管等である場合に、管径の異なる探傷対象物Taの探傷を行う必要が生じる。
そこで、該円周面の曲率半径に合わせて下面11d、12dの曲率半径が異なる複数の第1ウエッジ部材11及び第2ウエッジ部材12を用意しておき、探傷対象物Taの管径に合わせて第1ウエッジ部材11及び第2ウエッジ部材12を交換するようにしてもよい。
【0024】
下面11d、12dの曲率半径が異なる複数の第1ウエッジ部材11及び第2ウエッジ部材12において、上面11u、12uを下面11d、12dの曲率半径に応じて傾斜させてもよい。この場合、下面11d、12dの曲率半径が変われば、上面11u、12uを傾斜させる角度も変わることとなる。
【0025】
そこで、
図3Aに示した超音波探触子1Bでは、第1基板18は、筐体20に揺動可能に支持されているとよい。第2基板19は、筐体20に第1基板18とは独立して揺動可能に支持されているとよい。
具体的には、例えば
図3A及び
図3Bに示すように、第1基板18を第1保持部材31で保持し、第2基板19を第2保持部材32で保持する。そして、例えば
図3Aに示すように、第1保持部材31が上面11uの延在方向に平行な軸線AX周りに揺動可能に筐体20に軸支され、第2保持部材32が上面12uの延在方向に平行な軸線AX周りに揺動可能に筐体20に軸支されているとよい。
これにより、第1ウエッジ部材11の上面11uと第2ウエッジ部材12の上面12uとのなす角度が変わっても、各基板18、19を各上面11u、12uに配置し易くなる。
【0026】
なお、幾つかの実施形態に係る探触子1では、各ウエッジ部材11、12の下面11d、12dは、上述したように曲面であってもよいが、平面であってもよい。
【0027】
また、幾つかの実施形態に係る探触子1では、筐体20は、第1ウエッジ部材11及び第2ウエッジ部材12に対して、不図示のボルト等の締結部材によって着脱可能に取り付けられていてもよい。
また、例えば
図3Aに示す超音波探触子1Bでは、第1保持部材31及び第2保持部材32がそれぞれ第1ウエッジ部材11及び第2ウエッジ部材12に対して、不図示のボルト等の締結部材によって着脱可能に取り付けられ、第1保持部材31及び第2保持部材32を介して筐体20が第1ウエッジ部材11及び第2ウエッジ部材12に固定されるようにしてもよい。
【0028】
(ケーブルについて)
幾つかの実施形態に係る探触子1は、送信用素子15及び受信用素子16とに接続される信号線sが束ねられたケーブル35を備えているとよい。なお、
図3では、信号線sの記載を省略している。
幾つかの実施形態に係る探触子1では、ケーブル35は、第1方向Dr1から見たときに、筐体20から後方に向かって突出しているものとする。第1方向Dr1から見たときに、筐体20からのケーブル35の突出方向Drcと、第2方向Dr2との角度差は、15度以内であるとよい。なお、
図1、
図2A及び
図3Aでは、筐体20からのケーブル35の突出方向Drcと、第2方向Dr2との角度差は0度、すなわち、第1方向Dr1から見たときに、筐体20からのケーブル35の突出方向Drcは第2方向Dr2と平行である場合を表している。
【0029】
幾つかの実施形態に係る探触子1では、第1方向Dr1から見たときに、筐体20からのケーブル35の突出方向Drcが第2方向Dr2に比較的近づくこととなる。これにより、探傷対象物Taの表面Tasに他の部材等が近接して配置されている場合等であっても、該他の部材とケーブル35とが干渉し難くなり、狭隘部における探傷が可能となる。また、探傷対象物Taの表面Tasとケーブル35とが干渉し難くなるので、筐体20からケーブル35が突出する位置を探傷対象物Taの表面Tasに近づけ易くなる。これにより、筐体20の高さ、すなわち、探傷対象物Taの表面Tasからの距離を抑制できるので、上記他の部材とケーブル35とがさらに干渉し難くなる。
【0030】
例えば、探傷対象物Taが円柱や円管であって、円柱や円管が径方向に間隔を空けて複数配置されていて、隣り合う円柱や円管同士の間隔が比較的小さい場合を考える。このような場合であっても、幾つかの実施形態に係る探触子1によれば、ケーブル35が隣の円管に干渉し難くなるので、探触子1を円柱や円管の周方向に沿って移動させながら探傷できる。また、幾つかの実施形態に係る探触子1によれば、上述したように筐体20の高さを抑制できるので、筐体20が隣の円柱や円管に干渉し難くなり、探触子1を円柱や円管の周方向に沿って移動させながら探傷できる。
【0031】
図5は、幾つかの実施形態に係る探触子1を用いた超音波探傷検査の様子を模式的に示す図である。
なお、例えば、探傷対象物Taが円柱や円管である場合、幾つかの実施形態に係る探触子1の第2方向を探傷対象物Taである円柱や円管の軸線AXc方向と一致させ、第1方向Dr1を探傷対象物Taである円柱や円管の周方向を向くように探触子1を探傷対象物Taに配置するとよい。そして、探触子1を該周方向に沿って移動させながら探傷するとよい。
なお、
図5に示す例では、探傷対象物Taが円管51である場合に、円管51の円周方向の溶接部52の近傍に生じるきずの有無を検査する場合についての一例を表している。
【0032】
図5に示す例では、例えば探触子1は、溶接部52を挟んで円管51の軸線AXc方向に離間した2カ所に配置される。そして、2つの探触子1を円管51の周方向に移動させながら超音波探傷を行う。
図5において、超音波探傷装置55は、セクタ走査と呼ばれる電子走査の走査面が、円管51の軸線AXc方向及び円管51の板厚方向に沿って延在する平面に沿うように超音波を走査する。
図5に示す例では、探触子1は、探触子1の移動装置56に取り付けられている。移動装置56は、手動、又はモータ等の駆動力によって円管51の周方向に探触子1を移動可能に構成されている。なお、
図5に示す移動装置56は、2つの探触子1同士の周方向の位置がずれないように、且つ、軸線AXc方向の離間距離が変化しないように探触子1を移動可能に構成されている。
【0033】
(各ウエッジ部材11、12の寸法について)
図2A及び
図3Aに示すように、幾つかの実施形態に係る探触子1では、第1ウエッジ部材11の上面11uと下面11dとの距離、すなわち、第3方向に沿った距離であって、下面11dと、上面11uの内、下面11dから最も離れている上面11uの位置との距離h1は、第1方向Dr1から見たときに、第2方向Dr2の第1ウエッジ部材11の寸法L1よりも小さいとよい。
同様に、第2ウエッジ部材12の上面12uと下面12dとの距離、すなわち、第3方向に沿った距離であって、下面12dと、上面12uの内、下面12dから最も離れている上面12uの位置との距離h2は、第1方向Dr1から見たときに、第2方向Dr2の第2ウエッジ部材12の寸法L2よりも小さいとよい。
これにより、各ウエッジ部材11、12の高さ、すなわち、探傷対象物Taの表面Tasからの距離が抑制され、狭隘部における探傷が可能となる。
【0034】
図2B及び
図3Bに示すように、幾つかの実施形態に係る探触子1では、第1ウエッジ部材11の上面11uと下面11dとの距離(すなわち距離h1)、及び、第2ウエッジ部材12の上面12uと下面12dとの距離(すなわち距離h2)は、第1方向Dr1に沿った第1ウエッジ部材11の寸法W1と第2ウエッジ部材12の寸法W2との合計(W1+W2)よりも小さいとよい。
これにより、各ウエッジ部材11、12の高さ、すなわち、探傷対象物Taの表面Tasからの距離が抑制され、狭隘部における探傷が可能となる。
【0035】
図2B及び
図3Bに示すように、幾つかの実施形態に係る探触子1では、第1ウエッジ部材11の上面11uと下面11dとの距離(すなわち距離h1)は、第1方向Dr1に沿った第1ウエッジ部材11の寸法W1よりも小さいとよい。同様に、第2ウエッジ部材12の上面12uと下面12dとの距離(すなわち距離h2)は、第1方向Dr1に沿った第2ウエッジ部材12の寸法W2よりも小さいとよい。
これにより、各ウエッジ部材11、12の高さ、すなわち、探傷対象物Taの表面Tasからの距離がさらに抑制され、狭隘部における探傷が可能となる。
【0036】
図2B及び
図3Bに示すように、幾つかの実施形態に係る探触子1では、第1方向Dr1に沿った筐体20の寸法Wcは、第1方向Dr1に沿った第1ウエッジ部材11の寸法W1と第2ウエッジ部材12の寸法W2との合計(W1+W2)よりも小さいとよい。
例えば、探傷対象物Taが円柱や円管等のように表面Tasが円周面である場合に、筐体20の寸法Wcが大きくなるほど、第1方向Dr1における筐体20の端部と探傷対象物Taの表面Tasとの距離が大きくなる傾向にある。そのため、円柱や円管が径方向に間隔を空けて複数配置されていて、隣り合う円柱や円管同士の間隔が比較的小さい場合、第1方向Dr1における筐体20の端部と探傷対象物Taの表面Tasとの距離は、出来るだけ小さい方がよい。
幾つかの実施形態に係る探触子1によれば、上述したように第1方向Dr1に沿った筐体20の寸法Wcを寸法W1と寸法W2との合計(W1+W2)よりも小さくすることで、第1方向Dr1における筐体20の端部と探傷対象物Taの表面Tasとの距離を抑制できる。これにより、狭隘部における探傷が可能となる。
【0037】
なお、筐体20の上面20uは、第2方向Dr2に沿って見たときに、第1方向Dr1と平行であってもよく、
図2B及び
図3Bに示すように、第2方向Dr2に沿って見たときに、曲率半径の中心が第3方向Dr3に沿って上面20uよりも図示下方に位置するような湾曲面であってもよい。
【0038】
(超音波の走査範囲について)
幾つかの実施形態に係る探触子1では、第1ウエッジ部材11及び送信用素子15は、探傷対象物Ta内を伝搬する縦波の超音波を第1屈折角度θ1以上第2屈折角度θ2以下の範囲内で走査可能であり、且つ、屈折角度の範囲が第2屈折角度θ2以上第3屈折角度θ3未満の範囲と少なくとも一部で重複するクリーピング波を出力可能である。
なお、第1屈折角度θ1は、30度であるとよく、第2屈折角度θ2は、84度であるとよく、第3屈折角度θ3は、89度であるとよい。
これにより、探傷対象物Taにおいて、表面Tasから比較的遠い領域から、表面Tasに比較的近い領域まで、1つの超音波探触子1で探傷可能となる。
【0039】
(探傷について)
幾つかの実施形態に係る探触子1を用いた超音波探傷方法について説明する。
図6は、幾つかの実施形態に係る探触子1を用いた超音波探傷方法における処理手順を示すフローチャートである。
一実施形態に係る超音波探傷方法は、幾つかの実施形態に係る探触子1を用いて、探傷対象物Taにおける探傷領域を縦波の超音波で探傷するステップS1と、幾つかの実施形態に係る探触子1を用いて、上記探傷領域とは深さが少なくとも一部で異なる領域をクリーピング波で探傷するステップS2と、を備える。
なお、一実施形態に係る超音波探傷方法では、上記ステップS1及び上記ステップS2の何れを先に実施してもよい。
【0040】
以下、
図5を参照しながら一実施形態に係る超音波探傷方法について説明する。
縦波の超音波で探傷するステップS1では、超音波探傷装置55は、探傷対象物Taにおける探傷領域を縦波の超音波で探傷するように2つの探触子1を制御する。縦波の超音波で探傷するステップS1による探傷は、手動、又はモータ等の駆動力によって円管51の周方向に探触子1を1周移動するまで実施される。
縦波の超音波で探傷するステップS1において得られた探傷データは、超音波探傷装置55の不図示の記憶装置に格納される。
【0041】
クリーピング波で探傷するステップS2では、超音波探傷装置55は、探傷対象物Taにおける探傷領域をクリーピング波で探傷するように2つの探触子1を制御する。クリーピング波で探傷するステップS2による探傷は、手動、又はモータ等の駆動力によって円管51の周方向に探触子1を1周移動するまで実施される。
クリーピング波で探傷するステップS2において得られた探傷データは、超音波探傷装置55の不図示の記憶装置に格納される。
【0042】
一実施形態に係る超音波探傷方法によれば、縦波での探傷とクリーピング波での探傷とを探触子1を交換することなく実施可能となり、探傷対象物Taにおいて、表面Tasから比較的遠い領域から、表面に比較的近い領域まで、探触子1を交換することなく探傷可能となる。一実施形態に係る超音波探傷方法によれば、縦波での探傷とクリーピング波での探傷とで探触子1の交換作業を省略でき、効率的に検査できる。
【0043】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0044】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る超音波探触子1は、第1ウエッジ部材11と、第1ウエッジ部材11とは異なる第2ウエッジ部材12と、第1ウエッジ部材11と第2ウエッジ部材12との間に配置されて、第1ウエッジ部材11と第2ウエッジ部材12とを音響的に隔てる音響隔離板13と、第1ウエッジ部材11の上面11uに配置される、複数の圧電素子を含む送信用素子15と、第2ウエッジ部材12の上面12uに配置される、複数の圧電素子を含む受信用素子16と、音響隔離板13を跨ぎ、第1ウエッジ部材11と第2ウエッジ部材12とに亘って配置され、送信用素子15と受信用素子16とを覆う筐体20と、を備える。
【0045】
上記(1)の構成によれば、第1ウエッジ部材11と第2ウエッジ部材12との間に音響隔離板13を配置し、第1ウエッジ部材11に送信用素子15を配置し、第2ウエッジ部材12に受信用素子16を配置することで、受信用素子16において上述した雑エコーの影響を効率的に抑制できる。これにより、一つのウエッジ部材に送信用素子と受信用素子とを配置した場合と比べて、該一つのウエッジ部材の容積よりも第1ウエッジ部材11の容積と第2ウエッジ部材12の容積との合計容積を小さくすることができる。
また、上記(1)の構成によれば、送信用素子15と受信用素子16とを覆う筐体20が音響隔離板13を跨いで第1ウエッジ部材11と第2ウエッジ部材12とに亘って配置されるので、筐体20の大きさを比較的小さくすることができる。
したがって、上記(1)の構成によれば、縦波での探傷とクリーピング波での探傷とを1つの超音波探触子1で実施可能となり、探傷対象物Taにおいて、表面Tasから比較的遠い領域から、表面Tasに比較的近い領域まで、1つの超音波探触子1で探傷可能となる。上記(1)の構成によれば、第1ウエッジ部材11及び第2ウエッジ部材12の大きさを抑制でき、超音波探触子1を小型化できるので、狭隘部における探傷が可能となる。
【0046】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、第1ウエッジ部材11及び送信用素子15は、探傷対象物Ta内を伝搬する縦波の超音波を第1屈折角度θ1以上第2屈折角度θ2以下の範囲内で走査可能であり、且つ、屈折角度の範囲が第2屈折角度θ2以上第3屈折角度θ3未満の範囲と少なくとも一部で重複するクリーピング波を出力可能であるとよい。
【0047】
上記(2)の構成によれば、探傷対象物Taにおいて、表面Tasから比較的遠い領域から、表面に比較的近い領域まで、1つの超音波探触子1で探傷可能となる。
【0048】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、第1屈折角度θ1は、30度であってもよく、第2屈折角度θ2は、84度であってもよく、第3屈折角度θ3は、89度であってもよい。
【0049】
上記(3)の構成によれば、探傷対象物Taにおいて、表面Tasから比較的遠い領域から、表面Tasに比較的近い領域まで、1つの超音波探触子1で探傷可能となる。
【0050】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、送信用素子15と受信用素子16とを含む単一の基板17を備えていてもよい。
【0051】
上記(4)の構成によれば、送信用素子15と受信用素子16とを異なる基板に設けた場合と比べて、該異なる1つの基板の合計容積よりも基板17の容積を小さくし易くなる。
【0052】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、送信用素子15を含む第1基板18と、受信用素子16を含み、第1基板18とは異なる第2基板19と、を備えていてもよい。
【0053】
上記(5)の構成によれば、例えば、第1ウエッジ部材11の上面11uと第2ウエッジ部材12の上面12uとが異なる平面上に存在していても、第1基板18と第2基板19とをそれぞれの上面11u、12uに配置できる。
【0054】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、第1基板18は、筐体20に揺動可能に支持されているとよい。第2基板19は、筐体20に第1基板18とは独立して揺動可能に支持されているとよい。
【0055】
例えば探傷対象物Taが円管51の場合、管径に応じて下面11d、12dの形状や第1ウエッジ部材11の上面11uと第2ウエッジ部材12の上面12uとのなす角度が異なる、他の第1ウエッジ部材11及び第2ウエッジ部材12に変更することがある。この場合に、上記(6)の構成によれば、第1ウエッジ部材11の上面11uと第2ウエッジ部材12の上面12uとのなす角度が変わっても、各基板18、19を各上面に配置し易い。
【0056】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、送信用素子15及び受信用素子16とに接続される信号線sが束ねられたケーブル35を備えているとよい。第1ウエッジ部材11の上面11u及び第2ウエッジ部材12の上面12uは、音響隔離板13の厚さ方向(第1方向Dr1)から見たときに、音響隔離板13の延在方向であって第1ウエッジ部材11の下面11d及び第2ウエッジ部材12の下面12dの延在方向に沿う方向(第2方向Dr2)の内の一方側から他方側に向かうにつれて第1ウエッジ部材11の下面11d及び第2ウエッジ部材12の下面12dに近づくように第1ウエッジ部材11の下面11d及び第2ウエッジ部材12の下面12dに対して傾斜しているものとする。ケーブル35は、上記厚さ方向(第1方向Dr1)から見たときに、筐体20から上記他方側に向かって突出しているものとする。上記厚さ方向(第1方向Dr1)から見たときに、筐体20からのケーブル35の突出方向Drcと、音響隔離板13の延在方向であって第1ウエッジ部材の下面及び第2ウエッジ部材の下面の延在方向に沿う方向(第2方向Dr2)との角度差は、15度以内であるとよい。
【0057】
上記(7)の構成によれば、上記厚さ方向(第1方向Dr1)から見たときに、筐体20からのケーブル35の突出方向Drcが音響隔離板13の延在方向であって第1ウエッジ部材11の下面11d及び第2ウエッジ部材12の下面12dの延在方向(第2方向Dr2)に比較的近づくこととなる。これにより、探傷対象物Taの表面Tasに他の部材等が近接して配置されている場合等であっても、該他の部材とケーブル35とが干渉し難くなり、狭隘部における探傷が可能となる。また、探傷対象物Taの表面Tasとケーブル35とが干渉し難くなるので、筐体20からケーブル35が突出する位置を探傷対象物Taの表面Tasに近づけ易くなる。これにより、筐体20の高さ、すなわち、探傷対象物Taの表面Tasからの距離を抑制できるので、上記他の部材とケーブル35とがさらに干渉し難くなる。
【0058】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、第1ウエッジ部材11の上面11uと下面11dとの距離(距離h1)は、音響隔離板13の厚さ方向(第1方向Dr1)から見たときに、音響隔離板13の延在方向であって第1ウエッジ部材11の下面11dの延在方向に沿う方向(第2方向Dr2)の第1ウエッジ部材11の寸法L1よりも小さいとよい。第2ウエッジ部材12の上面12uと下面12dとの距離(距離h2)は、上記厚さ方向(第1方向Dr1)から見たときに、音響隔離板13の延在方向であって第2ウエッジ部材12の下面12dの延在方向に沿う方向(第2方向Dr2)の第2ウエッジ部材12の寸法L2よりも小さいとよい。
【0059】
上記(8)の構成によれば、各ウエッジ部材11、12の高さ、すなわち、探傷対象物Taの表面Tasからの距離が抑制され、狭隘部における探傷が可能となる。
【0060】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、第1ウエッジ部材11の上面11uと下面11dとの距離(距離h1)、及び、第2ウエッジ部材12の上面12uと下面12dとの距離(距離h2)は、音響隔離板13の厚さ方向(第1方向Dr1)に沿った第1ウエッジ部材11の寸法W1と第2ウエッジ部材12の寸法W2との合計(W1+W2)よりも小さいとよい。
【0061】
上記(9)の構成によれば、各ウエッジ部材11、12の高さ、すなわち、探傷対象物Taの表面Tasからの距離が抑制され、狭隘部における探傷が可能となる。
【0062】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、第1ウエッジ部材11の上面11uと下面11dとの距離(距離h1)は、音響隔離板13の厚さ方向(第1方向Dr1)に沿った第1ウエッジ部材11の寸法W1よりも小さいとよい。第2ウエッジ部材12の上面12uと下面12dとの距離(距離h2)は、音響隔離板13の厚さ方向(第1方向Dr1)に沿った第2ウエッジ部材12の寸法W2よりも小さいとよい。
【0063】
上記(10)の構成によれば、各ウエッジ部材11、12の高さ、すなわち、探傷対象物Taの表面Tasからの距離がさらに抑制され、狭隘部における探傷が可能となる。
【0064】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(10)の何れかの構成において、音響隔離板13の厚さ方向(第1方向Dr1)に沿った筐体20の寸法Wcは、音響隔離板13の厚さ方向(第1方向Dr1)に沿った第1ウエッジ部材11の寸法W1と第2ウエッジ部材12の寸法W2との合計(W1+W2)よりも小さいとよい。
【0065】
上記(11)の構成によれば、筐体20の高さ、すなわち、第1方向Dr1における筐体20の端部と探傷対象物Taの表面Tasとの距離が抑制されるので、狭隘部における探傷が可能となる。
【0066】
(12)本開示の少なくとも一実施形態に係る超音波探傷方法は、上記(1)乃至(11)の何れかの構成の超音波探触子1を用いて、探傷対象物Taにおける探傷領域を縦波の超音波で探傷するステップS1と、該超音波探触子1を用いて、上記探傷領域とは深さが少なくとも一部で異なる領域をクリーピング波で探傷するステップS2と、を備える。
【0067】
上記(12)の方法によれば、縦波での探傷とクリーピング波での探傷とを探触子1を交換することなく実施可能となり、探傷対象物Taにおいて、表面Tasから比較的遠い領域から、表面に比較的近い領域まで、探触子1を交換することなく探傷可能となる。上記(12)の方法によれば、縦波での探傷とクリーピング波での探傷とで探触子1の交換作業を省略でき、効率的に検査できる。
【符号の説明】
【0068】
1、1A、1B 超音波探触子
11 第1ウエッジ部材
12 第2ウエッジ部材
13 音響隔離板
15 送信用素子
16 受信用素子
17 基板
18 第1基板
19 第2基板
20 筐体
31 第1保持部材
32 第2保持部材
35 ケーブル
【要約】
【課題】超音波探触子の大きさを抑制する。
【解決手段】少なくとも一実施形態に係る超音波探触子は、第1ウエッジ部材と、第1ウエッジ部材とは異なる第2ウエッジ部材と、第1ウエッジ部材と第2ウエッジ部材との間に配置されて、第1ウエッジ部材と第2ウエッジ部材とを音響的に隔てる音響隔離板と、第1ウエッジの上面に配置される、複数の圧電素子を含む送信用素子と、第2ウエッジの上面に配置される、複数の圧電素子を含む受信用素子と、音響隔離板を跨ぎ、第1ウエッジ部材と第2ウエッジ部材とに亘って配置され、送信用素子と受信用素子とを覆う筐体と、を備える。
【選択図】
図2B