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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】光学装置及び光学変換器
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20220215BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20220215BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
G03B21/14 D
G02B13/00
G03B21/00 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018507100
(86)(22)【出願日】2017-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2017003903
(87)【国際公開番号】W WO2017163627
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2016059377
(32)【優先日】2016-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391044915
【氏名又は名称】株式会社コシナ
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(72)【発明者】
【氏名】角田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】鋪田 和夫
(72)【発明者】
【氏名】中山 啓
(72)【発明者】
【氏名】土屋 道彦
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-122485(JP,A)
【文献】特開2013-235215(JP,A)
【文献】特開平08-062566(JP,A)
【文献】特開2011-053512(JP,A)
【文献】特開2005-173095(JP,A)
【文献】特開平09-101566(JP,A)
【文献】特開2001-141913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B21/00-21/10
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を除く光学装置本体部と、この光学装置本体部から出射する出射光を被投射面部に投射して画像を表示する投射レンズ部を有する光学系とを備える光学装置において、光路に沿って配し、かつ反射面を有する三つのプリズムメンバを組合わせて構成したプリズムユニットを用いるとともに、前記プリズムメンバの少なくとも一部を、光軸を回転中心にして回動させることにより、前記光学装置本体部からの出射光に係わる所定角度の画像を、光軸を回転中心にして少なくとも直角方向に回転させた画像に変更可能な画像角度変更機能を有する画像角度変換部と、この画像角度変換部の光進方向前方に配した前記投射レンズ部と、この投射レンズ部を支持して当該投射レンズ部を縦方向及び/又は横方向に変位させるレンズシフト機構部とを有する光学系を備えることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記光学系は、前記光学装置本体部に内蔵する表示パネル部の実際の配設位置に対して当該表示パネル部の実質的位置を光進方向前方に変移させ、この表示パネル部からの出射光を前記画像角度変換部に入光させるリレーレンズ部を備えることを特徴とする請求項1記載の光学装置。
【請求項3】
前記リレーレンズ部は、前記実際の配設位置における表示パネル部からの出射光により表示される画像に対して前記実質的位置における表示パネル部からの出射光により表示される画像を任意の倍率により縮小させる変倍特性を備えることを特徴とする請求項2記載の光学装置。
【請求項4】
光学系を除く光学装置本体部に対して着脱し、当該光学装置本体部から出射する出射光を被投射面部に投射して画像を表示する投射レンズ部に組合わせることにより所定の光学系を構成する光学変換器であって、光路に沿って配し、かつ反射面を有する三つのプリズムメンバを組合わせて構成したプリズムユニットを用いるとともに、前記プリズムメンバの少なくとも一部を、光軸を回転中心にして回動させることにより、前記光学装置本体部からの出射光に係わる所定角度の画像を、光軸を回転中心にして少なくとも直角方向に回転させた画像に変更可能な画像角度変更機能を有する画像角度変換部と、この画像角度変換部の光進方向前方に配した前記投射レンズ部を支持して当該投射レンズ部を縦方向及び/又は横方向に変位させるレンズシフト機構部とを備えてなることを特徴とする光学変換器。
【請求項5】
前記光学系は、前記光学装置本体部に内蔵する表示パネル部の実際の配設位置に対して当該表示パネル部の実質的位置を光進方向前方に変移させ、この表示パネル部からの出射光を前記画像角度変換部に入光させるリレーレンズ部を備えることを特徴とする請求項4記載の光学変換器。
【請求項6】
前記リレーレンズ部は、前記実際の配設位置における表示パネル部からの出射光により表示される画像に対して前記実質的位置における表示パネル部からの出射光により表示される画像を任意の倍率により縮小させる変倍特性を備えることを特徴とする請求項5記載の光学変換器。
【請求項7】
前記画像角度変換部は、出射側に、前記光学装置本体部に対するバックフォーカスを調整可能なバックフォーカス調整機構部を備えることを特徴とする請求項4又は5記載の光学変換器。
【請求項8】
前記レンズシフト機構部は、出射側に前記投射レンズ部を一体に備えることを特徴とする請求項4記載の光学変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系を除く光学装置本体部から出射する出射光を被投射面部に投射して画像を表示する投射レンズ部を備える光学装置及びこの投射レンズ部に組合わせて使用する光学変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プロジェクタ本体部から出射する出射光を、投射レンズ部を通してスクリーン部に投射し、当該スクリーン部に画像を表示するプロジェクタ(光学機器)は広く知られている。また、この種のプロジェクタの設置方式としては、据置き式と天吊り式が知られており、通常、天吊り式は、特許文献1及び2等に開示されるように、天井に吊金具を固定し、この吊金具の下端にプロジェクタを取付けている。
【0003】
天吊り式は、プロジェクタの置き場所を確保する必要がないため、例えば、図5に示すようなファッションショー等が行われる発表会場100でも採用されている。図5中、符号(101)は、吊金具102を介して天井103に取付けられたプロジェクタを示す。そして、このような発表会場100では、ビデオカメラ(不図示)により被写体となるステージ上の人物104をポートレート撮影し、プロジェクタ(101)によりステージ後方壁面に設けたスクリーン部105に拡大表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-014766号公報
【文献】特開2011-180407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した天吊り式により設置する従来のプロジェクタ(光学装置)は、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
即ち、通常、プロジェクタ(101)は、正面視の長手方向が左右に位置する横置状態に設置するため、画面形状は横長となる。したがって、人物104を撮影し、人物104のみを縦長のスクリーン部105に拡大表示するためには、画像処理等により人物104に対するトリミングを行う必要があるなど、煩雑な処理が必要になる。しかも、有効に使用できる画素数の減少を招くため、拡大表示する画像(映像)の画質(解像度等)を低下させる要因ともなる。
【0007】
一方、ビデオカメラを横にし、縦長の画面に人物104の全体が入るポートレート撮影を行うとともに、図5に仮想線で示すプロジェクタ101vのように、正面視の長手方向が上下に位置する縦置状態に設置すれば、画像処理等を行うことなくそのまま拡大表示可能になるが、反面、プロジェクタ(101)にとっては、変則的な設置方法となるため、画像を表示する画面に対するレンズシフト機構によるシフト範囲や台形補正範囲が十分に確保できなくなり、図5に仮想線で示すように、プロジェクタ101vを、天井103から下方に離れた位置、即ち、より低い高さに設置せざるを得ない。
【0008】
結局、従来のプロジェクタ(101)を使用してポートレート画像を拡大表示する場合、プロジェクタ101vのように、設置姿勢を縦置状態にする必要があるとともに、天井に対してより低い位置に設置する必要があり、プロジェクタが観客の視界に入り易い目障りな存在になるなど、特に一部の用途によっては設置性に難点があった。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した光学装置及び光学変換器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光学装置Pは、上述した課題を解決するため、光学系を除く光学装置本体部2と、この光学装置本体部2から出射する出射光を被投射面部4に投射して画像を表示する投射レンズ部3を有する光学系とを備える光学装置を構成するに際して、光路に沿って配し、かつ反射面8am,8bm,8cmを有する三つのプリズムメンバ8a,8b,8cを組合わせて構成したプリズムユニット8uを用いるとともに、プリズムメンバ8a,8b,8cの少なくとも一部を、光軸を回転中心にして回動させることにより、光学装置本体部2からの出射光Coに係わる所定角度の画像Vsを、光軸を回転中心にして少なくとも直角方向に回転させた画像Vtに変更可能な画像角度変更機能を有する画像角度変換部8と、この画像角度変換部8の光進方向Fc前方に配した投射レンズ部3と、この投射レンズ部3を支持して当該投射レンズ部3を縦方向Fv及び/又は横方向Fhに変位させるレンズシフト機構部7とを有する光学系5を備えることを特徴とする。
【0011】
一方、本発明に係る光学変換器1は、上述した課題を解決するため、光学系を除く光学装置本体部2に対して着脱し、当該光学装置本体部2から出射する出射光を被投射面部4に投射して画像を表示する投射レンズ部3に組合わせることにより所定の光学系を構成する光学変換器であって、光路に沿って配し、かつ反射面8am,8bm,8cmを有する三つのプリズムメンバ8a,8b,8cを組合わせて構成したプリズムユニット8uを用いるとともに、プリズムメンバ8a,8b,8cの少なくとも一部を、光軸を回転中心にして回動させることにより、光学装置本体部2からの出射光Coに係わる所定角度の画像Vsを、光軸を回転中心にして少なくとも直角方向に回転させた画像Vtに変更可能な画像角度変更機能を有する画像角度変換部8と、この画像角度変換部8の光進方向Fc前方に配した投射レンズ部3を支持して当該投射レンズ部3を縦方向Fv及び/又は横方向Fhに変位させるレンズシフト機構部7とを備えてなることを特徴とする。
【0012】
この場合、発明の好適な態様により、光学系5には、光学装置本体部2に内蔵する表示パネル部Pppの実際の配設位置Xsに対して当該表示パネル部Pppの実質的位置Xvを光進方向Fc前方に変移させ、この表示パネル部Pppからの出射光Coを画像角度変換部8に入光させるリレーレンズ部6を設けることができ、このリレーレンズ部6には、実際の配設位置Xsにおける表示パネル部Pppからの出射光Coにより表示される画像に対して実質的位置Xvにおける表示パネル部からの出射光により表示される画像を任意の倍率により縮小させる変倍特性を持たせることが望ましい。また、画像角度変換部8には、出射側に、光学装置本体部2に対するバックフォーカスを調整可能なバックフォーカス調整機構部12を設けることができる。なお、レンズシフト機構部7には、出射側に、投射レンズ部3を一体に設けてもよい。
【発明の効果】
【0013】
このような構成を有する本発明に係る光学装置P及び光学変換器1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) 光学装置本体部2からの出射光Coに係わる所定角度の画像Vsを、光軸を回転中心にして少なくとも直角方向に回転させた画像Vtに変換する画像角度変換部8と、この画像角度変換部8の光進方向Fc前方に配した投射レンズ部3を支持して当該投射レンズ部3を縦方向Fv及び/又は横方向Fhに変位させるレンズシフト機構部7とを備えてなるため、ビデオカメラを、例えば、縦画面にしてポートレート撮影を行った場合であっても、プロジェクタ等の光学装置Pを一般的な横置状態のまま、ビデオカメラにより撮影した画像をそのまま表示できるとともに、このような表示を行う場合であっても画質が無用に低下する不具合を回避できる。
【0015】
(2) 光学変換器1は、光学系を除く光学装置本体部2に対して着脱し、当該光学装置本体部2から出射する出射光Coを被投射面部4に投射して画像を表示する投射レンズ部3に組合わせることにより所定の光学系5を構成するようにしたため、光学変換器1は、独立した単体ユニットとして構成できる。したがって、交換式の投射レンズ部3を備える既存のプロジェクタ等の光学装置Pに対して後付けすることにより利用できるなど、汎用性及び発展性に優れる。
【0016】
(3) 画像角度変換部8は、複数の反射面8am,8bm,8cmの組合わせにより構成したため、複数のプリズムメンバ8a,8b,8cや複数のミラーメンバを組合わせて構成できるなど、特定の部品に限定されることなく、汎用性及び発展性に優れた画像角度変換部8として利用できる。
【0017】
(4) 画像角度変換部8は、複数のプリズムメンバ8a,8b,8cを組合わせたプリズムユニット8uにより構成したため、目的とする画像角度変換部8を容易に得ることができるとともに、精度の高い安定した画像角度変換部8を構成可能となる。
【0018】
(5) プリズムユニット8uは、光路に沿って配した三つのプリズムメンバ8a,8b,8cにより構成したため、低コスト性,軽量性,小型コンパクト性,透光性等の観点から最も有利な構成にすることができ、本発明を実施する際における最も望ましい形態として実施できる。
【0019】
(6) プリズムユニット8uには、プリズムメンバ8a,8b,8cの少なくとも一部を、光軸を回転中心にして回転させることにより画像Vsの角度を任意の角度に変更可能な画像角度変更機能を設けたため、プリズムメンバ8a,8b,8cによりプリズムユニット8uを構成する際に、少なくとも一部のプリズムメンバ8a,8b,8cを、光軸を回転中心にして回動可能に組付けるなどにより実現できる。これにより、光学機器Pの様々な設置場所や被投射面部4の形態、更には投射画像に対する様々なパフォーマンス等に対しても、柔軟かつ臨機応変に対応できるとともに、比較的容易に実施できる。
【0020】
(7) 好適な態様により、光学系5に、光学装置本体部2に内蔵する表示パネル部Pppの実際の配設位置Xsに対して当該表示パネル部Pppの実質的位置Xvを光進方向Fc前方に変移させ、この表示パネル部Pppからの出射光Coを画像角度変換部8に入光させるリレーレンズ部6を設ければ、表示パネル部Pppの実質的位置Xvを光学機器本体部2の前方、特に、光学機器本体部2の外部にまで変移させることが可能になるため、レンズシフト機構部7と組合わせた場合であっても、レンズシフト機構部7の大型化を伴うことなく、レンズシフト機構部7の配設位置の選定或いはシフト範囲(シフト率)の選定等に対しても容易かつ柔軟に対応できる。
【0021】
(8) 好適な態様により、リレーレンズ部6に、実際の配設位置Xsにおける表示パネル部Pppからの出射光Coにより表示される画像に対して実質的位置Xvにおける表示パネル部からの出射光により表示される画像を任意の倍率により縮小させる変倍特性を持たせれば、被投射面部4に投射する画像(画面)のシフト範囲(シフト率)を、レンズシフト機構部7の変更を伴うことなく容易に拡大できるため、プロジェクタ等の光学装置Pを被投射面部4に対して、より高い(より低い)高さに設置したり、より左右の離れた位置に設置できるとともに、被投射面部4に対して、より近い位置に設置できるなど、光学装置Pの設置性(設置の柔軟性)を飛躍的に高めることができる。
【0022】
(9) 好適な態様により、画像角度変換部8に、出射側に、光学装置本体部2に対するバックフォーカスを調整可能なバックフォーカス調整機構部12を設ければ、バックフォーカスの異なる様々な光学装置本体部2に対しても、光学変換器1側でバックフォーカスを容易に調整できるため、汎用性の高い光学変換器1として構築できるとともに、装着した光学装置本体部2に対して、精度の高い最適なバックフォーカスを設定することができる。
【0023】
(10) 好適な態様により、レンズシフト機構部7の出射側に、投射レンズ部3を一体に設ければ、投射レンズ部3を、光学変換器1に対する専用の投射レンズとして設計可能になるため、投射レンズ部3を、リレーレンズ部6とレンズシフト機構部7等にマッチングさせた最適な光学変換器1を構築できるなど、光学変換器1の最適化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の好適実施形態に係る光学変換器の外観平面図、
図2】同光学変換器を光学装置であるプロジェクタに装着した状態を示す外観平面図、
図3】同光学変換器を装着したプロジェクタの一部を示す正面図、
図4】同光学変換器の外観斜視図、
図5】同光学変換器を装着したプロジェクタの天吊り式を用いた設置例を示す概要図、
図6】同光学変換器に備えるリレーレンズ部のレンズデータ表、
図7】同光学変換器に備える画像角度変換部の斜視図、
図8】同画像角度変換部の分解斜視図、
図9】同光学変換器に備えるバックフォーカス調整機構部の上半部を示す側面断面図、
図10】同光学変換器を装着できるプロジェクタの一例を示す外観斜視図、
図11】同光学変換器を装着できるプロジェクタの光学系統及び信号系統の一例を示すブロック構成図、
図12】同光学変換器を装着できるプロジェクタの内部の光学系の一例を示す概略構成図、
図13】同光学変換器の各部の機能を順を追って示すフローチャート、
図14】同光学変換器に備えるリレーレンズ部の機能説明図、
図15】同光学変換器に備える画像角度変換部の機能説明図、
図16】同光学変換器を含む光学系の作用を説明するための模式的構成図、
【符号の説明】
【0025】
1:光学変換器,2:光学装置本体部,3:投射レンズ部,4:被投射面部,5:光学系,6:リレーレンズ部,7:レンズシフト機構部,8:画像角度変換部,8a:プリズムメンバ,8b:プリズムメンバ,8c:プリズムメンバ,8u:プリズムユニット,8am:反射面,8bm:反射面,8cm:反射面,12:バックフォーカス調整機構部,P:光学装置,Pp:プロジェクタ,Ppp:表示パネル部,Vh:画像,Vs:横方向の画像,Vt:縦方向の画像,Co:出射光,Fc:光進方向,Fv:縦方向,Fh:横方向,Xs:配設位置,Xv:実質的位置
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明に係る最良実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0027】
最初に、本発明に係る光学変換器1の理解を容易にするため、光学変換器1を用いることができる光学装置Pの概要について、図1図10図12を参照して説明する。なお、実施形態では、光学装置Pの一例として汎用的なプロジェクタPpを示す。
【0028】
図10に示すように、プロジェクタPpは、光学装置本体部2を構成するプロジェクタ本体部2pを備える。例示するプロジェクタ本体部2pは、比較的高さが低い直方体状のキャビネット21に覆われ、このキャビネット21の前面プレート21fには、レンズ装着用開口21hを有する。また、3は交換レンズ方式の投射レンズ部であり、図1に示すように、この投射レンズ部3の後端に備えるマウント部3mを、レンズ装着用開口21hからキャビネット21の内部に挿入し、プロジェクタ本体部2p側のマウント部2m(図1)に装着する。以上が、プロジェクタPp全体の外観構成となる。図10中、点線で示すPppは、プロジェクタ本体部2pに内蔵するDMD(デジタルミラーデバイス)や液晶パネル等の表示パネル部を示し、投射レンズ部3に対して適切なバックフォーカスが確保される所定の配設位置Xsに固定状態に実装されている。
【0029】
一方、図11は、プロジェクタ本体部2pにおける光学系統及び信号系統のブロック構成を示す。なお、図11中、21は上述したキャビネット、3は上述した投射レンズ部、Pppは上述した表示パネル部、をそれぞれ示している。プロジェクタ本体部2pは、投射レンズ部3に対して光進方向上流側に配した表示パネル部Pppを含む照明光学部31を備え、この照明光学部31の上流源には光源部32を配設する。この光源部32から投射レンズ部3までは、プロジェクタ本体部2pにおける光学系を構成する。なお、33は表示パネル部Pppに接続したパネル駆動部を示すとともに、34は光源部32を含む必要各部に電力を供給するための電源部を示す。
【0030】
図12に、プロジェクタ本体部2pにおける光学系の構成例を示す。図12に例示する光学系は、照明光学系51,色分離光学系52,リレー光学系53を備えるとともに、二枚のコンデンサレンズ54,55、三枚の液晶パネル56,57,58、色合成プリズム59、投射レンズ3とを備える。この場合、照明光学系51は、リフレクタ32r内に白色ランプ32oを収納した光源部32を備えるとともに、光源部32の光進方向下流側には、第一アレイレンズ61,第二アレイレンズ62,偏光変換素子63,集光レンズ64を順次配設して構成する。また、色分離光学系52は、集光レンズ64の下流側に配してR光を反射し、かつG光及びB光が透過するダイクロイックミラー65,このダイクロイックミラー65の反射光(R光)が反射する反射ミラー66を備え、この反射ミラー66を反射したR光はコンデンサレンズ55を透過する。さらに、色分離光学系52は、ダイクロイックミラー65の透過光であるG光を反斜し、かつB光が透過するダイクロイックミラー67を備え、ダイクロイックミラー67の反射光(G光)は、コンデンサレンズ54を透過する。一方、リレー光学系53は、ダイクロイックミラー65の下流側に配した、このダイクロイックミラー65の透過光であるB光が透過する第一リレーレンズ68,この第一リレーレンズ68を透過したB光が反射する反射ミラー69,反射ミラー69を反射したB光が透過する第二リレーレンズ70,この第二リレーレンズ70を透過したB光が反射する反射ミラー71,この反射ミラー71を反射したB光が透過する第三リレーレンズ72を順次配設して構成する。
【0031】
また、コンデンサレンズ55を透過したR光は、R光用液晶パネル56を通して色合成プリズム59のR光入光面に入光するとともに、コンデンサレンズ54を透過したG光は、G光用液晶パネル57を通して色合成プリズム59のG光入光面に入光し、さらに、第三リレーレンズ72を透過したB光は、B光用液晶パネル58を通して色合成プリズム59のB光入光面に入光する。そして、R光,G光及びB光は、色合成プリズム59により合成され、色合成プリズム59の出射面から投射レンズ部3に入光する。したがって、R光用液晶パネル56,G光用液晶パネル57及びB光用液晶パネル58の三つの液晶パネルが表示パネル部Pppを構成する。以上、例示した光学系は、公知の一般的なプロジェクタ要素を構成している。なお、図12において、光源部32及び投射レンズ部3を除く光学系は、前述した照明光学部31を構成する。また、図12中、4は平面スクリーンを用いた被投射面部を示す。
【0032】
さらに、プロジェクタ本体部2pは、図11に示すように、光源部33を含むキャビネット21内部を冷却する冷却部(冷却ファン等)35、映像信号の入力部及び出力部を備える映像信号入出力部36、音声信号の入力部及び出力部を備える音声信号入出力部37、外部との通信の授受を行う通信部38、CPUを含み各種制御処理を行う制御部39、不揮発性メモリ及びRAM等を含む内部メモリ40、外部に望む操作パネル等から各種入力を行うための操作部41、画像に関係する各種調整を行うことができる画像調整部42、ストレージ部43等を備え、これらは、バスライン,信号ライン,電源ライン等を含む各種接続ライン44を介して接続することにより、公知の一般的なプロジェクタ要素を構成している。
【0033】
次に、本実施形態に係る光学変換器1の構成について、図1図9及び図15を参照して具体的に説明する。
【0034】
図1及び図2に示すように、光学変換器1は、大別して、光進方向Fc前方における後側から前側へ、リレーレンズ部6,画像角度変換部8,レンズシフト機構部7を順次配して構成する。例示する、リレーレンズ部6,画像角度変換部8,レンズシフト機構部7は、それぞれ別体のユニットとして構成するとともに、前後に設けたフランジ部6f,8ff,8fr,7fを用いて連結し、全体を一体の光学変換器1として構成する。
【0035】
この場合、リレーレンズ部6は、図1に示すプロジェクタ本体部2pに内蔵する液晶パネル等の表示パネル部Pppの実際の配設位置Xsに対して、当該表示パネル部Pppの実質的位置Xvを、光進方向Fcの前方へ変移させる機能、即ち、リレー機能を備える。さらに、例示のリレーレンズ部6は、当該リレー機能に加え、実際の配設位置Xsにおける表示パネル部Pppからの出射光Coにより表示される画像を、当該リレーレンズ部6に入光する画像に対して、任意の倍率により縮小させる変倍特性(変倍機能)を持たせている。
【0036】
このように、リレーレンズ部6に、実際の配設位置Xsにおける表示パネル部Pppからの出射光Coにより表示される画像に対して実質的位置Xvにおける表示パネル部からの出射光により表示される画像を任意の倍率により縮小させる変倍特性を持たせれば、被投射面部4に投射する画像(画面)のシフト範囲(シフト率)を、レンズシフト機構部7の変更を伴うことなく容易に拡大できるため、プロジェクタ等の光学装置Pを被投射面部4に対して、より高い(より低い)高さに設置したり、より左右の離れた位置に設置できるとともに、被投射面部4に対して、より近い位置に設置できるなど、光学装置Pの設置性(設置の柔軟性)を飛躍的に高めることができる。
【0037】
また、リレーレンズ部6は、外郭となるレンズ鏡筒6cを備え、このレンズ鏡筒6cの後端に、プロジェクタ本体部2pに対して着脱するレンズ側のマウント部6mを有するとともに、前端に、フランジ部6fを有する。このレンズ鏡筒6cは、複数のレンズを配したレンズ群を内蔵させて構成する。例示するリレーレンズ部6のレンズデータを図6に示す。このリレーレンズ部6は、倍率を0.5倍に設定している。なお、図6中、ndは屈折率、νdはアッベ数である。また、図6中、面番号における「物体面」が再結合面となる。
【0038】
したがって、図1に示すように、プロジェクタ本体部2p内部の配設位置Xsにおける表示パネル部Pppの実質的位置Xv(結像点に相当する位置)は、リレーレンズ部6によりプロジェクタPpの外部にまで変移させることが可能となる。
【0039】
画像角度変換部8は、光軸を支点として、横方向の画像を縦方向の画像に変換する機能を備える。例示する画像角度変換部8の構成を、図2図7図8及び図15に示す。画像角度変換部8は、外郭となるハウジング8hを備え、図1に示すように、ハウジング8hの後端には、レンズ鏡筒6cに設けたフランジ部6fに結合するフランジ部8frを有するとともに、前端には、フランジ部8ffを有する。また、ハウジング8hには、図8に示す三つのプリズムメンバ8a,8b,8cを組合わせて構成した図7に示すプリズムユニット8uを内蔵する。これにより、図15に示すように、プリズムユニット8uに入光する横方向の画像Vs(横R)を縦方向の画像Vt(縦R)に変換し、プリズムユニット8uから出射させることができる。三つのプリズムメンバ8a,8b,8cにおいて、8am,8bm,8cmは、各プリズムメンバ8a,8b,8cの反射面をそれぞれ示している。
【0040】
このように、リレーレンズ部6とレンズシフト機構部7間に、光軸を支点として、横方向の画像Vsを縦方向の画像Vtに変換する画像角度変換部8を設ければ、ビデオカメラを縦画面にしてポートレート撮影を行った場合であっても、プロジェクタPpを一般的な横置状態にしたまま、ビデオカメラにより撮影した画像をそのまま表示できるとともに、画質が低下する不具合を回避できる。さらに、画像角度変換部8を構成するに際し、複数のプリズムメンバ8a,8b,8cを組合わせたプリズムユニット8uにより構成すれば、目的とする画像角度変換部8を容易に得ることができるとともに、精度の高い安定した画像角度変換部8を構成できる利点がある。特に、例示のように、プリズムユニット8uを、光路に沿って配した三つのプリズムメンバ8a,8b,8cにより構成すれば、低コスト性,軽量性,小型コンパクト性,透光性等の観点から最も有利な構成にできるため、本発明を実施する際における最も望ましい形態として実施できる。
【0041】
ところで、画像角度変換部8は、図8に示すように、複数のプリズムメンバ8a,8b,8cを組合わせることによりプリズムユニット8uを構成するため、画像角度変換部8には、プリズムメンバ8a…の少なくとも一部、即ち、プリズムメンバ8a…の一部又は全部を、光軸を回転中心にして回動させることにより、画像Vsの角度を任意の角度に変更可能な画像角度変更機能を設けることもできる。この場合、各プリズムメンバ8a,8b,8c同士の当接面を接着等により固定することなく、各プリズムメンバ8a,8b,8cに対して相対的に回動可能となる支持構造を付設すればよい。このような画像角度変更機能を設ければ、光学機器Pの様々な設置場所や被投射面部4の形態、更には投射画像に対する様々なパフォーマンス等に対しても柔軟かつ臨機応変に対応できるとともに、比較的容易に実施できる利点がある。
【0042】
一方、レンズシフト機構部7は、後端に、ハウジング8hに設けたフランジ部8ffに結合するフランジ部7fを兼ねる支持盤7sを備え、この支持盤7sの前面に、不図示の操作機構(駆動機構)によりX方向に変位するX方向可動盤7xを支持するとともに、X方向可動盤7xの前面に、不図示の操作機構(駆動機構)によりY方向に変位するY方向可動盤7yを支持する。そして、このY方向可動盤7yの前面には、投射レンズ部3が着脱するマウント部7mを一体に備える。
【0043】
さらに、図1に示すように、画像角度変換部8の出射側(レンズシフト機構部7に対する入光側)には、プロジェクタ本体部2pに対するバックフォーカスを調整することができるバックフォーカス調整機構部12を設ける。図9に、バックフォーカス調整機構部12の上半部の断面構造を示す。このバックフォーカス調整機構部12は、画像角度変換部8側に設けた第一固定筒部81とレンズシフト機構部7側に設けた第二固定筒部82を備え、第一固定筒部81の外周面を第二固定筒部82の内周面に挿入するとともに、第二固定筒部82に、前後(光軸方向)に長い複数(例示は、周方向等間隔位置に三つ)のガイド孔83…設け、かつ第一固定筒部81に、当該ガイド孔83…に係合してガイドされる回動ローラ84…を設ける。これにより、第二固定筒部82は第一固定筒部81に対して前後方向(光軸方向)変位のみ許容される。
【0044】
また、第一固定筒部81及び第二固定筒部82には、それぞれ大径をなすヘリコイドねじを用いた雄ねじ部81p及び82nを設けるとともに、第一固定筒部81及び第二固定筒部82間に跨がり、かつ各雄ねじ部81p及び82nに螺合するヘリコイドねじを用いた雌ねじ部85p及び85nを内周面に形成した調整リング85を装着する。この場合、雄ねじ部81pと82nのねじ形成方向は正逆関係にあるため、調整リング85を、正方向に回動操作すれば、第一固定筒部81と第二固定筒部82は相対的に離れる方向に変位し、逆方向に回動操作すれば、第一固定筒部81と第二固定筒部82は相対的に近付く方向に変位する。このように、調整リング85の操作によりバックフォーカスの調整を容易に行うことができる。特に、バックフォーカス調整機構部12を画像角度変換部8の出射側に配設することにより、画像角度変換部8の出射側から表示パネル部Ppp間における全体距離に対する修正を行うことができる。
【0045】
したがって、このようなバックフォーカス調整機構部12を設ければ、バックフォーカスの異なる様々なプロジェクタ本体部2p…に対しても、光学変換器1側でバックフォーカスを容易に調整できるため、汎用性の高い光学変換器1として構築できるとともに、装着したプロジェクタ本体部2p…に対して、精度の高い最適なバックフォーカスを設定できる利点がある。
【0046】
次に、本実施形態に係る光学変換器1の使用方法及び機能について、図1図16を参照して説明する。
【0047】
最初に、光学変換器1の使用方法について、図1図3を参照して説明する。光学変換器1は、プロジェクタ本体部2p及びこのプロジェクタ本体部2pから出射する出射光Coをスクリーン部4に投射して画像を表示する投射レンズ部3を備える一般的なプロジェクタPp、特に、このプロジェクタPpに備える投射レンズ部3と組合わせて使用することができる。
【0048】
使用に際しては、まず、図1に示すように、プロジェクタPpにおけるプロジェクタ本体部2pから、このプロジェクタ本体部2pに装着されている投射レンズ部3を取り外す。そして、取り外した投射レンズ部3のマウント部3mを、予め用意した光学変換器1の前端におけるマウント部7mに装着する。図4はこの状態を示すとともに、図1中、矢印D1は、この操作のイメージを示している。なお、図1図3において、21はプロジェクタ本体部2pのキャビネットであり、21fはキャビネット21における前面プレート、21hはこの前面プレート21fに設けたレンズ装着用開口を示す。
【0049】
一方、投射レンズ部3を装着した光学変換器1は、後端に設けたマウント部6mを、プロジェクタ本体部2pのマウント部2mに装着する。図2及び図3はこの状態を示す。したがって、投射レンズ部3及び光学変換器1を含む光学系が、プロジェクタPpにおける全体の光学系5を構成する。図1中、矢印D2は、この操作のイメージを示している。これにより、既に設置されているプロジェクタPpを、本実施形態に係る光学変換器1を装着したプロジェクタPpに変更することができ、特に、ポートレート画像を投射して表示するためのプロジェクタPpとして使用できる。
【0050】
次に、光学変換器1を備えるプロジェクタPpの全体の機能(作用)について、図1図16を参照して説明する。なお、全体の機能は、一例として示した図5のファッションショー会場に設置されたプロジェクタPpについて、図13に示すフローチャートを参照しつつ順を追って説明する。
【0051】
この場合、プロジェクタPpは、図5に示すように、会場101の天井103に、吊金具102を介して横置状態に取付けられ、ステージ後方の壁面における縦長のスクリーン部4にポートレート画像により拡大表示する機能を発揮する。また、ステージ上の被写体(人物104)は、90〔°〕横にした不図示のビデオカメラにより縦長画像、即ち、縦長画面として撮影されるものとする。なお、スクリーン部4は、壁面に対して別途のスクリーンを設置する場合であってもよいし、白色の壁面をそのままスクリーンとして使用する場合であってもよい。
【0052】
まず、ビデオカメラにより縦長画像(縦画面)が撮影される(ステップS1)。したがって、縦長画像となる被写体の画像データは、被写体の向きが90〔°〕回転した横向きとなる。一方、撮影に基づく画像データはプロジェクタPpに送信され、このプロジェクタPp(プロジェクタ本体部2p)の入力部に付与される(ステップS2)。これにより、プロジェクタ本体部2pからは、被写体が横向きとなる画像Vhに基づく出射光が出射する。
【0053】
また、プロジェクタ本体部2pから出射した出射光Coは、本実施形態に係る光学変換器1におけるリレーレンズ部6に入光し、このリレーレンズ部6を透過する(ステップS3)。リレーレンズ部6は、図6に示したレンズデータに基づき、表示パネル部Pppの実際の配設位置Xsに対して、当該表示パネル部Pppの実質的位置Xvが光進方向Fc前方に変移されるとともに、さらに、表示パネル部Pppの実質的位置Xvから出射される出射光により表示される画像を、実際の配設位置Xsにおける表示パネル部Pppから出射される出射光Coにより表示される画像に対して、任意の倍率(例示は、0.5倍)により縮小させる。
【0054】
図14(b)に、プロジェクタ本体部2pから出射した出射光Coに基づく画像を所定の倍率により縮小された画像Vsをイメージ的に示している。この場合、画像Vsにおける被写体の向きは、図15に示す「横R」の文字のように90〔°〕回転した横向きとなる。なお、図14(a)には、縮小後の画像Vsと対比するため、縮小前の画像Vhをイメージ的に示す。
【0055】
さらに、リレーレンズ部6から出射した画像Vsは、画像角度変換部8を構成するプリズムユニット8uに入光する。そして、このプリズムユニット8u(画像角度変換部8)を透過することにより、図15に示すように、横方向の画像Vsは、光軸を支点として90〔°〕回転し、縦方向の画像Vtに変換される(ステップS4)。即ち、図15に示すように、プリズムメンバ8aに対して水平方向に入光する横方向の画像Vsは、プリズムメンバ8aの反射面8amにより反射し、入光方向に対して直角方向上方に出射し、画像Vm1として次のプリズムメンバ8bに入光する。プリズムメンバ8bは、プリズムメンバ8aに対して向きが異なるため、プリズムメンバ8bに入光した入射光は、プリズムメンバ8bの反射面8bmにより水平方向右方に反射する。また、反射面8bmにより反射した画像Vsは、縦方向の画像Vm2として次のプリズムメンバ8cに入光する。プリズムメンバ8cは、プリズムメンバ8bに対して向きが異なるため、プリズムメンバ8cに入光した入射光は、プリズムメンバ8cの反射面8cmにより水平方向前方に反射するとともに、縦方向に変換された「R」に係る画像Vtは、プリズムメンバ8cから出射する。このように、プリズムユニット8uに入光する横方向の画像Vsは、このプリズムユニット8uにより、光軸を支点として90〔°〕回転し、縦方向の画像Vtに変換されることになる。
【0056】
次いで、プリズムユニット8u(画像角度変換部8)から出射した出射光(画像Vt)は、レンズシフト機構部7を通過する(ステップS5)。このレンズシフト機構部7により、X方向(横方向)及びY方向(縦方向)に対する画像を表示する画面位置に対するシフト調整が行われる。
【0057】
ところで、この場合、リレーレンズ部6により、画像Vhは所定の倍率(例示は、0.5倍)により縮小されているため、縮小した画像Vt(Vs)のシフト範囲は大幅に拡大される。図14に示す(a)は画像(画面)Vhの場合のシフト範囲、(b)は画像(画面)Vsの場合のシフト範囲をそれぞれ示している。なお、符号Aは有効像円である。画像Vhの場合、(a)に示すように、X方向のシフト範囲は、画像Vhp,Vhqで示す範囲となり、Y方向のシフト範囲は、画像Vhu,Vhdで示す範囲となる。これに対して、画像Vsの場合、(b)に示すように、X方向のシフト範囲は、画像Vsp,Vsqで示す範囲となり、Y方向のシフト範囲は、画像Vsu,Vsdで示す範囲となる。このように、縮小した画像Vsのシフト範囲は、縮小前の画像Vhに対して大きく拡大させることができる。
【0058】
一方、レンズシフト機構部7を通過した画像Vt(プリズムユニット8uの出射光)は、投射レンズ部3に入光し、この投射レンズ部3を透過する(ステップS6)。投射レンズ部3を透過した画像Vtは、スクリーン部4に投射される。この際、画像Vtに対しては、投射レンズ部3に備えるズーミング調整機構やフォーカシング調整機構を含む各種調整機構により調整が行われる。これにより、スクリーン部4には、最適に調整された画像Vtが表示される。
【0059】
なお、図16は、特に、光学系5に着目した光学変換器1を含む全体の構成を模式的イメージにより示したものである。
【0060】
同図に示すように、表示パネル部Pppから出射した出射光Coによる横長の画面イメージV1(画像は横向)は、前述したリレーレンズ部6を介してプリズムユニット8uに入射し、プリズムユニット8u内において、一旦、結像する。この結像は、第一結像面となり、第一結像面における画面イメージV2は、図16に示すように、縦長となり、90〔°〕回転した画面となる。
【0061】
この画面イメージV2は、リレーレンズ部6の変倍機能により縮小(例示は、0.5)されている。この縮小率は、レンズシフト機構部7の縦シフトに対応させることができる。なお、このときの画面イメージV2は、スクリーン部4に拡大投射される最終画面(画面イメージV3)に対して上下反転した画面となる。
【0062】
そして、プリズムユニット8u内に結像した画面イメージV2は、投射レンズ部3を通して、第二結像面となるスクリーン部4に拡大投射される。スクリーン部4に拡大投射された画面イメージは、図16中のV3、即ち、縦長の正式な画面イメージV3となる。なお、図16に示した投射レンズ部3及びリレーレンズ部6をはじめとする各種レンズ群におけるレンズの枚数,曲率,構成等は模式的に例示したものであり、各種態様により適宜設定可能である。
【0063】
このように、本実施形態に係る光学変換器1は、基本的な構成として、プロジェクタ本体部2pからの出射光Coに係わる所定角度の画像Vsを、光軸を回転中心にして少なくとも直角方向に回転させた画像Vtに変換する画像角度変換部8と、この画像角度変換部8の光進方向Fc前方に配した投射レンズ部3を支持して当該投射レンズ部3を縦方向Fv及び/又は横方向Fhに変位させるレンズシフト機構部7とを備えてなるため、ビデオカメラを、例えば、縦画面にしてポートレート撮影を行った場合であっても、プロジェクタ等の光学装置Pを一般的な横置状態のまま、ビデオカメラにより撮影した画像をそのまま表示できるとともに、このような表示を行う場合であっても画質が無用に低下する不具合を回避できる。
【0064】
また、光学変換器1は、光学系を除くプロジェクタ本体部2pに対して着脱し、当該プロジェクタ本体部2pから出射する出射光Coを被投射面部4に投射して画像を表示する投射レンズ部3に組合わせることにより所定の光学系5を構成するようにしたため、光学変換器1は、独立した単体ユニットとして構成できる。したがって、交換式の投射レンズ部3を備える既存のプロジェクタ等の光学装置Pに対して後付けすることにより利用できるなど、汎用性及び発展性に優れる。
【0065】
次に、本発明に係る光学変換器1の変更実施形態について、図1図4図13図16を参照して説明する。
【0066】
最初に、第一の変更実施形態について説明する。図1に示した光学変換器1は、プロジェクタ本体部2pと投射レンズ部3を備える一般的なプロジェクタPpと組合わせて使用する形態となり、特に、このプロジェクタPpに装着されている投射レンズ部3をそのまま使用する形態となる。これに対して、第一の変更実施形態は、プロジェクタPpに備える投射レンズ部3を利用しない光学変換器1としたものである。即ち、図1に示した光学変換器1に備えるレンズシフト機構部7の出射側に、専用の投射レンズ部3を設けて構成したものであり、全体の構成は、図4に示した形態となる。したがって、第一の変更実施形態に係る光学変換器1によれば、プロジェクタPpに装着されている投射レンズ部3と、第一の変更実施形態に係る光学変換器1を交換するのみで使用することができる。このように構成する第一の変更実施形態によれば、投射レンズ部3を、光学変換器1に対する専用の投射レンズとして設計可能になるため、投射レンズ部3を、リレーレンズ部6とレンズシフト機構部7等にマッチングさせた最適な光学変換器1を構築できるなど、光学変換器1の最適化を図れる利点がある。
【0067】
次に、第二の変更実施形態について説明する。第二の変更実施形態は、予め、光学変換器1をプロジェクタPpに一体に組込んで構成したものである。したがって、第二の変更実施形態における光学変換器1を一体に備えるプロジェクタは、本発明に係るプロジェクタPpを構成する。即ち、第二の変更実施形態として構成するプロジェクタPpは、光学系を除くプロジェクタ本体部2pと、このプロジェクタ本体部2pから出射する出射光をスクリーン部4に投射して画像を表示する投射レンズ部3を有する光学系とを備えるプロジェクタを構成するに際し、プロジェクタ本体部2pに内蔵する表示パネル部Pppの実際の配設位置Xsに対して、当該表示パネル部Pppの実質的位置Xvを光進方向Fc前方に変移させるリレーレンズ部6と、このリレーレンズ部6の光進方向Fc前方に配した投射レンズ部3と、この投射レンズ部3を支持して当該投射レンズ部3を縦方向Fv及び/又は横方向Fhに変位させるレンズシフト機構部7とを有する光学系5を備えて構成したものである。
【0068】
以上、最良実施形態(変更実施形態)について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0069】
例えば、リレーレンズ部6は、プロジェクタ本体部2pに内蔵する表示パネル部Pppの実際の配設位置Xsに対して、当該表示パネル部Pppの実質的位置Xvを光進方向Fc前方へ変移させるリレー機能を有すれば足り、例示のように、変倍機能を持たせるか否かは任意である。この際、変倍機能を持たせる場合、任意の倍率により縮小させることが望ましいが、等倍又は拡大させる場合を排除するものでない。なお、縮小させる倍率として、0.5倍を例示したが、0,3倍,0.8倍…等、各種倍率により実施可能である。一方、レンズシフト機構部7は、縦方向Fv及び横方向Fhの双方に変位させる構成を示したが、縦方向Fv又は横方向Fhのいずれか一方のみに変位させる構成を排除するものではない。また、表示パネル部Pppとしては、DMD方式に基づく表示パネル,液晶方式に基づく液晶パネル,DLP方式に基づく表示パネル等、各種表示方式に基づく表示パネルを適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る光学変換器は、着脱可能な投射レンズ部を備える各種プロジェクタをはじめ、同様な表示機能を有する各種光学装置に利用できるとともに、光学装置は、ポートレート撮影した人物等の縦長の被写体(画像)を投射して表示する場合をはじめ、各種の表示用途に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16