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▶ プラスチック・オムニウム・ニュー・エナジーズ・フランスの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】ボスコネクタを備えた複合圧力容器
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20220215BHJP
   F17C 1/06 20060101ALI20220215BHJP
   F17C 1/16 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
F17C13/00 301Z
F17C1/06
F17C1/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020572513
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019067071
(87)【国際公開番号】W WO2020002467
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】18179930.5
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521525527
【氏名又は名称】プラスチック・オムニウム・ニュー・エナジーズ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エルス・マヒーウ
(72)【発明者】
【氏名】ヘールト・ナウエン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ヴィレムス
(72)【発明者】
【氏名】アクセル・ザイフェルト
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-266029(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0276294(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00857911(EP,A1)
【文献】特表2001-524653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
F17C 1/06
F17C 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を高圧で貯蔵するための圧力容器(1)であって、
キャビティ(5)の内壁を画定する内面を有するライナー(2)であって、前記キャビティは、中央開口(21)を有するドーム形状領域(5a)を含む、ライナー(2)と、
前記ライナー(2)の外面に結合された複合ラミネートシェル(3)と、
前記キャビティへのアクセスを提供するために前記複合ラミネートシェル(3)を横断するアクセスチャネル(22)であって、前記中央開口(21)は、前記アクセスチャネル(22)に面している、アクセスチャネル(22)と
を備える、圧力容器(1)において、
前記圧力容器(1)は、前記アクセスチャネル(22)内に配置または部分的に配置されたボスコネクタ(6)を含み、前記ボスコネクタ(6)は、
軸方向軸Xに沿って伸長し、バルブまたはプラグを受容するように構成された内孔部(6a)と、
前記複合ラミネートシェルにおける圧力分布を最適化するための複数の有間隔リブ要素(9)を含む外側ネック部(6b)であって、前記有間隔リブ要素(9)は、前記軸方向軸Xに対して径方向に前記複合ラミネートシェル(3)内へ突出している、外側ネック部(6b)と、
径方向外径DFLを有し、前記ライナー(2)と前記複合ラミネートシェル(3)との間に配置されたフランジ部(6c)であって、複数の前記有間隔リブ要素(9)のうちの少なくとも1つは、径方向外径DRMがDRM≧DFLである、フランジ部(6c)と
を含むことを特徴とする、圧力容器(1)。
【請求項2】
前記ボスコネクタ(6)は、前記軸方向軸Xに直交する平面において測定される径方向外径Dxを有し、前記径方向外径Dxは、前記軸方向軸Xに沿って変化し、複数の前記有間隔リブ要素(9)のうちの少なくとも1つの径方向外径に対応する最大値DMaxを有する、請求項1に記載の圧力容器(1)。
【請求項3】
前記ボスコネクタ(6)は、前記中央開口(21)内へ突出するチューブ延長部(6d)を含む、請求項1または2に記載の圧力容器(1)。
【請求項4】
前記ドーム形状領域(5a)は、凸状領域である、請求項1または2に記載の圧力容器(1)。
【請求項5】
前記ボスコネクタ(6)は、前記複合ラミネートシェル(3)に対する前記ボスコネクタ(6)の回転移動を低減するための回転防止部材を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の圧力容器(1)。
【請求項6】
前記有間隔リブ要素(9)のうちの1つと前記軸方向軸Xに直交する平面との間の断面が、円形、楕円形、多角形、鋸歯状、凹凸状、またはこれらの形状のいずれかの組み合わせである外周を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の圧力容器(1)。
【請求項7】
前記有間隔リブ要素(9)のうちの1つ以上が、丸形突出縁部、面取り突出縁部、三角形状突出縁部、または任意のタイプの多角形の形状を有する突出縁部を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の圧力容器(1)。
【請求項8】
前記有間隔リブ要素(9)は、さまざまな突出長さ(PL1、PL2、PL3、PL4)を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の圧力容器(1)。
【請求項9】
前記外側ネック部(6b)は、2個から10個の間の前記有間隔リブ要素(9)を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の圧力容器(1)。
【請求項10】
前記ライナー(2)は、ポリマーなどのプラスチック材料から作製され、または前記ライナー(2)は、金属から作製される、請求項1から9のいずれか一項に記載の圧力容器(1)。
【請求項11】
前記複合ラミネートシェル(3)は、ポリマーマトリックスに埋め込まれた炭素繊維を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の圧力容器(1)。
【請求項12】
前記ボスコネクタ(6)は、アルミニウムなどの金属から作製される、請求項1から11のいずれか一項に記載の圧力容器(1)。
【請求項13】
前記軸方向軸Xに沿って並んださらなるボスコネクタを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の圧力容器(1)。
【請求項14】
前記フランジ部(6c)は、前記軸方向軸Xに対する軸方向において前記ライナー(2)と接触する軸方向接触面を含み、複数の前記有間隔リブ要素(9)のうちの前記有間隔リブ要素(9)は、前記ライナー(2)の方を向いた第1の軸方向接触面(9a)と、前記第1の軸方向接触面(9a)の反対側にある第2の軸方向接触面(9b)とを有し、前記第2の軸方向接触面(9b)は、前記軸方向軸Xに対して軸方向に前記複合ラミネートシェル(3)の層と接触し、前記フランジ部(6c)の前記軸方向接触面は、複数の前記有間隔リブ要素(9)のうちの前記有間隔リブ要素(9)の前記第2の軸方向接触面(9b)の合計より低い、請求項1から13のいずれか一項に記載の圧力容器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を高圧で貯蔵するための圧力容器に関する。より具体的には、本発明は、ライナーとライナーの外面に結合された複合ラミネートシェルとを含む複合容器に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を高圧で貯蔵するための、たとえば水素ガスを貯蔵するための複合圧力容器が、本技術分野においてよく知られている。
【0003】
ライナーとライナーの外面に結合された複合ラミネートシェルとを含む圧力容器が、たとえば特許文献1または特許文献2に記載されている。ライナーの内面が、流体を高圧で収容することができるキャビティの内壁を画定している。この容器は、キャビティを気体で充填および充填解除するためのキャビティへのアクセスを提供するために複合ラミネートシェルを横断しているアクセスチャネルを含む。本技術分野において知られている圧力容器はまた、いわゆるボスコネクタを含む。ボスコネクタは、一般に、バルブまたはプラグを受容するように構成された円筒状孔部と、キャビティ内部に配置されてライナーと複合ラミネートシェルとの間に結合されているフランジ部と、を含む。ライナーとボスコネクタとを含む任意の圧力容器において、「フランジ」部は、ライナーと軸方向に接触しているボスコネクタの部分として定義することができる。フランジにより、容器が高圧下にあるときにボスコネクタを固定して保つことが可能になる。
【0004】
通常、複合ラミネートシェルは、フィラメントワインディングプロセスを用いて、炭素、ガラスまたはアラミドなどの含浸繊維をライナーの外面に適用することによって形成される。
【0005】
これらの複合容器を用いて加圧水素を貯蔵するとき、高圧はたとえば30MPaから75MPaの範囲になる。
【0006】
キャビティ5を画定するライナー2、複合ラミネートシェル3、および少なくとも1つのボスコネクタ6を含む、本技術分野において知られている複合圧力容器の典型的な一例が、図1に概略的に示されている。複合圧力容器または略してCPVという表現は、ライナーを包囲する複合シェルを有する圧力容器をカバーする。ライナーは一般にプラスチック材料から作製されているが、金属から作製することもできる。
【0007】
完全な複合オーバーラップを備えたプラスチックまたは金属ライナーを特徴とする複合容器は、全金属容器と比較したとき、多数の利点を有することが知られている。たとえば、複合材料は圧力容器の耐食性および全体的な安全性を顕著に向上させる。加えて、複合容器は一般に容器の耐用年数が延長されている。しかし、CPVの主な利点はその重量である。実際、CPVは全金属圧力容器より少なくとも3倍軽い。
【0008】
しかしながら、現在の複合圧力容器に伴う問題のうちの1つは、ボスコネクタのフランジ部が理想的な測地線等張(geodesic-isotensoid)形状に従わない圧力分布を複合ラミネートに作成することである。これにより、ボスコネクタの周りの複合ラミネートの補強作用の効率が減少する。これにより、圧力が容器に加えられたときにボスコネクタを固定して保つようにボスコネクタの周りに追加の複合補強材を取り付ける必要性が要求される。一般にこの問題は、複合ラミネートの追加のらせん層を適用することによって軽減され、これによって複合ラミネートシェルの厚さおよび重量が増加する。
【0009】
現在の複合容器に伴うさらなる問題は、金属製のボスコネクタが重いことである。
【0010】
圧力容器の重量は重要な役割を果たし、たとえば、自動車産業において用いられる圧力容器では、重量を低くすると、燃費が向上するとともに車両全体の重量が減少することになる。
【0011】
したがって、現存する複合圧力容器を改善するための余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許出願公開第2016/0348845(A1)号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0276294(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、既存の複合圧力容器と比較して減少した重量を有し、特にボスコネクタの領域において補強要素として作用するための複合ラミネートの効率が改善された複合圧力容器を提供することである。
【0014】
本発明は、添付の独立請求項において定義されている。好ましい実施形態は、従属請求項において定義されている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による流体を高圧で貯蔵するための圧力容器は、ライナーと、ライナーの外面に結合された複合ラミネートシェルと、を含む。ライナーは、キャビティの内壁を画定する内面を有する。キャビティは、中央開口を有するドーム形状領域を含む。アクセスチャネルが、キャビティへのアクセスを提供するために複合ラミネートシェルを横断しており、中央開口はアクセスチャネルに面している。
【0016】
本発明による圧力容器は、圧力容器が、アクセスチャネル内に配置または部分的に配置されたボスコネクタを含むことを特徴とする。ボスコネクタは、軸方向軸Xに沿って伸長し、バルブまたはプラグを受容するように構成された内孔部を含む。ボスコネクタは、ラミネートシェルにおける圧力分布を最適化するための複数の有間隔リブ要素を含む外側ネック部をさらに含む。リブ要素は、軸方向軸Xに対して径方向に複合ラミネートシェル内へ突出している。ボスコネクタは、ライナーと複合ラミネートシェルとの間に配置されたフランジ部を含む。フランジ部は径方向外径DFLを有する。複数の有間隔リブ要素のうちの少なくとも1つは、径方向外径DRMがDRM≧DFLである。
【0017】
複合ラミネートシェル内へ突出する複数の有間隔リブ要素を含む外側ネック部を提供することの利点は、複合ラミネートシェルがより効率的に作用すること、すなわちラミネートシェルの厚さ全体を用いてライナーの内壁に流体が及ぼす圧力に対して作用することである。結果として、先行技術の圧力容器と比較したとき、上で議論したように先行技術の容器において用いられる、ボスコネクタの周りの複合補強材の追加の層は必要とされない。
【0018】
複数の有間隔リブ要素を用いることの追加の利点は、先行技術のフランジと比較したとき、追加のフランジ部のサイズを大きく減少させることができるということである。したがってこのため、複数の有間隔リブ要素のうちの少なくとも1つのリブ要素は、径方向外径DRMがDRM≧DFLである。換言すれば、フランジ部の外径DFL以上の外径DRMを有する少なくとも1つのリブ要素がある。したがってボスコネクタの総重量は減少する。
【0019】
有利には、小さなサイズのフランジ、すなわちリブ要素の外径以下の外径を有するフランジのみを用いることによって、キャビティのドーム形状領域におけるキャビティの形状はあまり乱されず、これは、上で議論したように、圧力分布に正の効果を有する。
【0020】
好ましくは、本発明による圧力容器のボスコネクタは、軸方向軸Xに直交する平面において測定され、軸方向軸Xに沿って変化する径方向外径Dxを有し、外径Dxは、上記複数の有間隔リブ要素のうちの少なくとも1つの径方向外径に対応する最大値DMaxを有する。換言すれば、ボスコネクタの全体的な径方向寸法を決定するのは、リブ要素の径方向外径である。ボスコネクタがたとえばフランジ部またはチューブ延長部を含めば、これらの部分の外径は常に、リブ要素のうちの少なくとも1つの外径以下となることになる。
【0021】
径方向外径Dxは、直交平面においてボスコネクタの周りに円形の輪郭を作成するのに必要とされる円の最小直径として解釈されなければならない。実際、ボスコネクタの径方向外周は、円である必要はなく、たとえば楕円または任意の他の形状とすることができる
【0022】
本発明のこれらのおよびさらなる態様を例として、添付の図面を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】先行技術の複合圧力容器の断面図である。
図2a】本発明による圧力容器の一部の断面図である。
図2b】ライナーの一部、ボスコネクタ、および複合ラミネートシェルの一部の拡大図である。
図3】本発明による圧力容器の一実施形態の一部の断面図である。
図4】本発明による圧力容器の一代替実施形態の一部の断面図である。
図5】ボスコネクタが小さなフランジを含む、本発明による圧力容器の一部の断面図である。
図6a】チューブ延長部を含むボスコネクタの平面図である。
図6b】フランジのないボスコネクタの平面図である。
図6c】チューブ延長部と小さなフランジとを含むボスコネクタの平面図である。
図6d】小さなフランジを含むボスコネクタの平面図である。
図6e図6cのボスコネクタの径方向外径Dxの変化を示す図である。
図7図2aに示すボスコネクタのY-Z平面に沿った断面図である。
図8】本発明による圧力容器における圧力分布を概略的に示す図である。
図9a】本発明による第1のボスコネクタの断面を概略的に示す図である。
図9b】本発明による第2のボスコネクタの断面を概略的に示す図である。
図9c】本発明による第3のボスコネクタの断面を概略的に示す図である。
図9d】本発明による第4のボスコネクタの断面を概略的に示す図である。
図10a】本発明によるボスコネクタの一例の断面図を概略的に示す図である。
図10b】本発明によるボスコネクタのさらなる一例の断面図を概略的に示す図である。
図11a】ボスコネクタへのシールの提供を概略的に示す図である。
図11b】ボスコネクタへのシールの提供のさらなる一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図は一定の縮尺で描かれていない。一般に、同一の構成要素は、図において同じ参照番号によって示されている。
【0025】
流体を高圧で貯蔵するための圧力容器は、ライナー2、いくつかの複合ラミネート層からなる複合ラミネートシェル3、およびボスコネクタ6を含む。圧力容器のこれらの構成要素は、本技術分野において一般に知られており、先行技術の圧力容器を示す図1に示されている。
【0026】
ライナー2は、キャビティ5の内壁を画定している内面を有する。ライナーは、圧力容器のキャビティに含まれている流体のいかなる漏れをも防止するように設計されている。ライナー2は一般に、ポリマーなどのプラスチック材料から作製される。他の実施形態において、ライナーは、金属、たとえばアルミニウム製とすることができる。
【0027】
複合ラミネートシェル3は、ライナーの外面に結合されている。この複合ラミネートシェルは、容器を膨張させるだろう内圧荷重に耐えるように設計されている。複合ラミネートシェルは、膨張を制限し、圧力荷重によって引き起こされる内部応力を吸収する。
【0028】
複合ラミネートシェル3は通常、ポリマーマトリックスに埋め込まれた炭素繊維を含む。フィラメントワインディングの技術がたとえば、複合ラミネートシェルを製造するために用いられる。
【0029】
本発明による圧力容器のさまざまな実施形態が、図2aから図6dに概略的に示されている。
【0030】
キャビティを流体で充填および充填解除するためのキャビティへのアクセスを提供するため、複合ラミネートシェル3を横断するアクセスチャネル22が設けられている。これは図2bに概略的に示されており、本発明によるライナーの一部、ボスコネクタおよび複合ラミネートシェルの一部の拡大図が示されている。
【0031】
図2aおよび図2bに示すように、本発明による圧力容器のキャビティ5は、中央開口21を有するドーム形状領域5aを含む。中央開口21は、ドーム形状領域5aの眼球として解釈することができる。中央開口21はアクセスチャネル22に面している。実際、ライナー2によって画定されたキャビティは閉じたキャビティではなく、キャビティを流体で充填および充填解除するための少なくとも1つの開口がある。この開口は、キャビティのドーム形状部分における中央開口に対応する。一般にドーム形状領域は、測地線ドーム形状または測地線等張形状に対応する。
【0032】
本発明による圧力容器1は、アクセスチャネル22内に配置または部分的に配置されているボスコネクタ6を含む。実施形態において、図3および図4に示すように、ボスコネクタは、複合ラミネートシェルのアクセスチャネル内に完全に配置することができる。他の実施形態において、図2aおよび図5に示すように、ボスコネクタ6は、複合ラミネートシェル3のアクセスチャネルに部分的に配置され、複合ラミネートシェル3の外側に部分的に延在している。
【0033】
図6aから図6dにさらに示すように、本発明によるボスコネクタ6は、内孔部6aおよび外側ネック部6bを含む。内孔部6aは、軸方向軸Xに沿って伸長しており、バルブまたはプラグを受容するように構成されている。孔部6aは一般に中空円筒の形状を有する。
【0034】
実施形態において、内孔部6aはたとえば、バルブまたはプラグ40をボスコネクタ6の内孔部分6a内へねじ込むことを可能にするねじ山を含む。
【0035】
外側ネック部6bは、複合ラミネートシェル3内へ突出している複数の有間隔リブ要素9を含む。このように、ボスコネクタ6は複合ラミネートシェル3と結合されている。図2aから図6に示すように、リブ要素9は、軸方向軸Xに対して径方向に複合ラミネートシェル内へ突出している。図8に示すように、複数の有間隔リブ要素9のリブ要素9は、ライナー2の方を向いた第1の軸方向接触面9aと、第1の軸方向接触面9aの反対側にある第2の軸方向接触面9bとを有する。第1の軸方向接触面9aおよび第2の軸方向接触面9bはそれぞれ、軸方向軸Xに対して軸方向に複合ラミネートシェル3の層と接触する。内圧荷重に耐える複合ラミネートシェルの層を担持するのは、複数の有間隔リブ要素9のリブ要素9の第2の軸方向接触面9bである。
【0036】
第1の軸方向接触面9aおよび第2の軸方向接触面9bを有するリブ要素9の厚さは、第1の軸方向接触面9aと第2の軸方向接触面9bとの間の距離であることに留意されたい。
【0037】
本発明による複数の有間隔リブ要素9は、ラミネートシェルにおける圧力分布を最適化するのに適している。実際、複数の有間隔リブ要素9により、ボスコネクタと複合ラミネートとの間の界面が増加している。図8上の矢印23で概略的に示すように、ボスコネクタ6の近くのライナー2の内面への圧力は、キャビティ内部の流体の圧力によって引き起こされるが、図8上の黒矢印24によって示す複合ラミネートシェルからの反作用圧力に等しくあるべきである。複数の有間隔リブ要素9により、複合ラミネートシェルが複合ラミネートシェルのその断面全体にわたって完全に効率的になるため、キャビティの内壁への圧力に反作用するための複合ラミネートシェルの効率は改善される。他方、先行技術の複合容器では、主にライナー容器に近い複合ラミネートシェルの層が、キャビティにおける内圧に反作用するのに効率的である。
【0038】
ボスコネクタ6は、軸方向軸Xに直交する平面において測定される径方向外径Dxを有し、この径方向外径Dxは軸方向軸Xに沿って変化している。径方向外径のこの変化は、図6cに示す例示的なボスコネクタについて図6eに概略的に示されている。外径Dxは、上記複数の有間隔リブ要素のうちの少なくとも1つの径方向外径に対応する最大値DMaxを有する。換言すれば、ボスコネクタの径方向外径の最大値DMaxは、複数の有間隔リブ要素のうちの少なくとも1つによって決定される。したがって、外径Dxは、直交面が複数の有間隔リブ要素のうちの1つと交差している場所で最大値DMaxを有する。実際、図6aから図6dに示す実施形態で示すように、ボスコネクタ6の最大径方向外径は常に、リブ要素の外径によって決定される。
【0039】
ボスコネクタの径方向外周は円である必要はなく、たとえば、例示的なボスコネクタのリブ要素の一箇所での径方向外周を示す図7に例示するような楕円または任意の他の形状であり得ることに留意されたい。したがって、径方向外径Dxは、直交平面においてボスコネクタの周りに円形の輪郭を作るために必要とされる最小の円の直径として解釈されなければならない。外径Dxを決定するためのこのような最小外円は、図7に点線で示されている。
【0040】
本発明による実施形態において、図5に示すように、ボスコネクタ6は、ライナー2と複合ラミネートシェル3との間に配置されたフランジ部6cを含む。フランジ部6cは、軸方向軸Xに対する軸方向においてライナー2と接触する軸方向接触面を含む。フランジ部6cの軸方向接触面は、管状端部2aの外側にある。フランジ部は径方向外径DFLを有し、複数の有間隔リブ要素9のうちの少なくとも1つは、径方向外径DRMがDRM≧DFLである。換言すれば、フランジ部6cの外径以上の径方向外径を有するリブ要素が常にある。フランジ部の直径およびフランジ部の直径の測定は、上で議論したような外径Dxおよび外径Dxの測定と同じように解釈されるべきである。
【0041】
図6aから図6dに示すボスコネクタは、軸方向に沿って測定される長さLを有する。
【0042】
図6aに示す例において、ボスコネクタの外側ネック部6bは3つの有間隔リブ要素9を含む。この例示的なボスコネクタ6はまた、図2aに示すようにキャビティに入るためのチューブ延長部6dを含む。チューブ延長部は、軸方向軸Xに沿って測定される長さLinおよび外径Dinを有する。しかしながら、図6aに示すボスコネクタはフランジ部を含まない。図6aに示すように、ボスコネクタの最大径方向外径DMaxは、3つのリブ要素9のうちの1つと交差する平面において測定される外径DRMに対応する。この例において、3つのリブ要素は同じ外径を有する。
【0043】
図6bにおいて、フランジ部を含まない本発明によるボスコネクタ6のさらなる一実施形態が示されている。この例示的なボスコネクタはチューブ延長部も含まず、図3に示すように、ボスコネクタ全体を複合ラミネートシェル3に配置することができる。この例において、ボスコネクタの最大径方向外径DMaxは、3つのリブ要素9のうちの1つと交差する平面において測定される外径DRMに対応する。
【0044】
図6cにおいて、小さなフランジ部6c、3つのリブ要素9およびチューブ延長部6dを含む本発明によるボスコネクタ6が示されている。図5に示すように、フランジ部6cは、ライナー2と複合ラミネートシェルとの間に配置されている部分である。図6cに示すように、この例において、フランジ部6cの外径は、3つのリブ要素のそれぞれの外径より小さい。径方向外径Dについての最大値DMaxは、3つのリブ要素すべての中で最大の外径を有する中央リブ要素の位置で得られる。
【0045】
フランジ部6cを含む本発明によるボスコネクタ6のさらなる一例が、図6dに示されている。図6dに示すように、フランジ部6cの外径は、この例において、3つのリブ要素のうちの1つ、すなわち中央リブ要素の外径に等しい。この例において、ボスコネクタの径方向外径についての最大値DMaxは、中央リブ要素の径方向外径に対応し、フランジ部の径方向外径にも対応する。
【0046】
本発明による圧力容器のさらなる利点は、たとえば図1に示す先行技術の複合容器と比較したとき、ボスコネクタ6の近くの圧力分布が改善されることである。実際、上で議論したように、大きなフランジ部を有する先行技術のボスコネクタを用いるとき、複合ラミネートに作用する圧力分布は、理想的な測地線等張形状に従わない。この結果、複合ラミネートシェルの補強効率がさらに減少する。一方、本発明による圧力容器では、フランジ部がなく、またはフランジ部は非常に小さく、すなわち、少なくとも1つのリブ要素の外径より小さい。したがって、圧力分布の摂動は最小化される。好ましくは、フランジ部6cの軸方向接触面は、複数の有間隔リブ要素9のリブ要素9の第2の軸方向接触面9bの合計より低い。これは、「応力吸収」手段として作用する有間隔リブ要素9のおかげで、内圧荷重が複合ラミネートシェル3の層内へよりよく伝達および分散されるという事実によって達成される(図8参照)。
【0047】
いくつかの実施形態において、上で議論およびたとえば図6cおよび図5に例示したように、ボスコネクタ6は、キャビティのドーム形状領域の中央開口21内へ突出するチューブ延長部6dを含む。この実施形態において、図5に示すように、ライナーは、ボスコネクタ6のチューブ延長部6dを包囲する内側ネック部2bを有する。
【0048】
実施形態において、ドーム形状領域5aは好ましくは凸状領域である。図3および図4において、ドーム形状領域5aが凸状である本発明による圧力容器の例が示されている。
【0049】
好ましい実施形態において、ボスコネクタ6は、複合ラミネートシェルに対するボスコネクタの回転移動を低減するための回転防止部材を含む。
【0050】
回転防止部材を形成するためのさまざまな手段が存在する。いくつかの実施形態において、回転防止部材は、外側ネック部分6bに結合された1つ以上の追加の要素によって形成される。
【0051】
好ましい実施形態において、回転防止部材は、回転に対して作用するために最適化された形状を有する複数の有間隔リブ要素のうちの1つ以上のリブ要素を提供することによって得られる。リブ要素と軸方向軸Xに直交する平面との間に断面を作るとき、リブ要素の詳細な実施形態に応じて、さまざまなタイプの外周を観察することができる。たとえば、このような外周は、円形、楕円形、多角形、鋸歯状または凹凸状とすることができる。他の実施形態において、外周は、上記の形状の組み合わせによって形成される形状を有することができる。
【0052】
図7において、凹部を含むリブ要素の断面図が示されている。この例において、リブ要素9は、複数の周辺の凹部41を含む。この例において9つの凹部が示されている。繊維がライナーおよびボスコネクタの周りに適用されて複合ラミネートシェルを形成するとき、いくつかの繊維が凹部を埋め、複合ラミネートシェルに対するボスコネクタの回転移動に対するストップとして作用することになる。
【0053】
実施形態において、リブ要素9はリング形状を有する。換言すれば、リブ要素のそれぞれは、360°の角度にわたって複合ラミネートシェルに侵入している。
【0054】
図9aから図9dにおいて、本発明によるさまざまなタイプのボスコネクタ6のいくつかの実施形態が概略的に示されている。図示のように、リブ要素9の突出長さPLは、ボスコネクタ6の外側ネック部分6bのリブ要素のそれぞれについて同じである必要はない。いくつかの実施形態において、図9b図9cおよび図9dに示すように、リブ要素9はさまざまな突出長さPL1、PL2、PL3、PL4を有する。
【0055】
リブ要素は、ラミネートシェルに突出するためのさまざまなタイプの縁部を含むことができ、たとえばリブ要素は、丸形突出縁部または面取り突出縁部を含むことができる。図10aおよび図10bにおいて、リブ要素9が三角突出縁部を有するボスコネクタ6の例が示されている。
【0056】
本発明による外側ネック部分6bは、有間隔リブ要素9の数によって制限されない。好ましい実施形態において、有間隔リブ要素9の数は、2個から10個の間、好ましくは3個から8個の間に含まれる。
【0057】
実施形態において、図3図4および図8に示すように、ライナー2は、軸方向軸Xに沿って延在する管状端部2aを含み、ボスコネクタ6は、管状端部2aを受容するための窪みを含む。このように、ライナーの管状端部2aはボスコネクタに突出する。
【0058】
本発明は、圧力容器が収容することができるボスコネクタの数に限定されない。通常、圧力容器は、軸方向軸Xに沿って並んだ2つのボスコネクタを含む。
【0059】
ボスコネクタは、たとえばアルミニウムまたは鋼などの金属から作製され、標準的な金属加工技術によって製造することができる。任意選択の表面処理をボスコネクタに適用して、たとえばラミネートとの接着性を改善および/または水素腐食を防止することができる。
【0060】
複合ラミネートシェルを形成する炭素繊維がライナーおよびボスコネクタに巻き付けられる前に、ライナーとボスコネクタとがまず一緒に取り付けられる。通常、ライナーとボスとの間の取り付けは、接着剤を用いることによって、またはライナーおよびボスにねじを設けることによって、またはクリックタイプまたは他の機械タイプの接続を用いて行われる。
【0061】
圧力容器が気密であることを保証するため、たとえばOリングなどのシールがライナーとボスコネクタとの間に配置される。シールを配置する場所は、ボスコネクタの特定の実施形態に依存する。たとえば、上で議論して図6aに示すボスコネクタでは、ライナーとボスコネクタとの間の異なる場所にシール16を配置することができる。これは、図11aおよび図11bに示され、シール16を配置する2つの例示的な場所が示されている。本発明によるライナーとボスコネクタとの間にシール16を配置および設置することは、当業者に知られている。
【0062】
同じく本技術分野において知られているように、ボスコネクタの孔部にバルブまたはプラグを配置するとき、図11aおよび図11bに示すように、さらなるシール17が用いられる。
【0063】
本発明を特定の実施形態に関して説明してきたが、これらは本発明を例示するものであり、限定するものとして解釈されるべきではない。本発明は、上で特に示されたおよび/または説明されたものによって限定されず、本開示の全体的な教示に照らして代替例または修正された実施形態を開発することもできるということが、当業者によって理解されるであろう。「to comprise(含む)」という動詞、およびそれぞれの活用形を用いることにより、記載されたもの以外の要素の存在を排除するものではない。ある要素に先行する冠詞「a」、「an」または「the」を用いることにより、複数のこのような要素の存在を排除するものではない。
【符号の説明】
【0064】
1 圧力容器
2 ライナー
2a 管状端部
2b 内側ネック部
3 複合ラミネートシェル
5 キャビティ
5a ドーム形状領域
6 ボスコネクタ
6a 内孔部
6b 外側ネック部
6c フランジ部
6d チューブ延長部
9 リブ要素
9a 第1の軸方向接触面
9b 第2の軸方向接触面
16 シール
17 シール
23 圧力
24 反作用圧力
40 バルブまたはプラグ
41 凹部
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図10a
図10b
図11a
図11b