(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】薬品類収納装置
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20220215BHJP
A47B 88/457 20170101ALI20220215BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
A47B88/457
A61J3/00 310Z
B65G1/00 521E
(21)【出願番号】P 2019102512
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-255724(JP,A)
【文献】特開2002-320524(JP,A)
【文献】特開2007-303244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
B65G 1/00
A47B 88/457
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬品類を収容する多数の収納容器と、それらを個々に前方へ引出可能な状態で保持する庫部と、前記収納容器それぞれの後方に配設された多数の開駆動機構とを備えた装置であって、前記開駆動機構が、電動モータを具備した駆動部と、前記駆動部によって駆動されると配設先の収納容器を後押して前進させる押出機構と、前記駆動部によって駆動されると前記押出機構の後押しに先立って該収納容器から外れて該収納容器の前方引出を許容するが該収納容器が後へ押し込まれたときには該収納容器に係わって該収納容器の前方引出を阻止するロック機構とを具備している薬品類収納装置において、
前記押出機構が、前記駆動部の一回当たり駆動の途中だけ伝達を行う第1カム機構と、前記第1カム機構の従動節の回転運動と最前の関節の前進後退運動との相互変換伝達を行うリンク機構とを具備したものであることを特徴とする薬品類収納装置。
【請求項2】
前記ロック機構が、前記駆動部の一回当たり駆動の途中だけ伝達を行い且つ該伝達を前記第1カム機構の伝達開始より早く開始する第2カム機構を具備したものであることを特徴とする請求項1記載の薬品類収納装置。
【請求項3】
前記駆動部が、横向きに装備された前記電動モータに付設されたウォームと、前記ウォームと噛合するウォームホイールとを具備したものであることを特徴とする請求項2記載の薬品類収納装置。
【請求項4】
前記ウォームホイールの噛合相手の歯車と前記第1カム機構の原動節と前記第2カム機構の原動節とが同じ回転伝動軸に装着されていることを特徴とする請求項3記載の薬品類収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬品収納装置や,薬品棚,調剤台,医療具保管庫などの薬品類収納装置に関し、詳しくは、医薬品や医療材料などの薬品類を人手で出し入れしうる引出可能な収納容器を複数・多数具えていて、そこからの薬品類取出を薬品類払出情報に基づいて選択的に可能とする薬品類収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
収納対象を薬品類に限らなければ、分別保管機能の付いた収納庫の典型例として、収納部が多数の区画室に区切られて各々の区画室に扉が着いている汎用のロッカーや設備用物品台などが挙げられる。
これに対し、収納対象が薬品類の場合、アンプル剤等の薬品類を多数のカセット(収納容器)に収納して分別保管することに加えて、その中の薬品類の選択に加えて開動作まで自動で行うようになった薬品類収納装置が開発されている。
【0003】
この装置は(例えば特許文献1参照)、薬品類を収容する多数の収納容器と、それらを前方へ引出可能な状態で縦横に並べて保持する庫部と、前記収納容器それぞれの後方に配設されたモータとその回転軸に取着された偏心カムとを具えた機構からなりそれぞれが配設先の収納容器を対応する偏心カムで後押して前進させる多数の開駆動機構とを備えている、というものである。そして、そのように開駆動機構に偏心カムを採用したことにより、利便性向上に資する開駆動機構についてコストダウンが図られている。
【0004】
また、利便性に加えて保安性も確保するために、開駆動機構に加えてロック機構まで装備した薬品類収納装置も開発されている(例えば特許文献2参照)。
しかも、機構の複雑化や大型化を回避するため偏心カムにロック機構の駆動まで行わせるようになっているが、そのようにしてもロックの自動解除と収納容器の自動押出と収納容器の手動引出と収納容器の手動押戻といった一連の動作が不都合なく行えるような工夫もなされている。
【0005】
すなわち、この薬品類収納装置は(特許文献2参照)、上述した庫部と開駆動機構とに加えて、前記収納容器それぞれの後方に配設されたロック機構も備えている。
しかも、そのロック機構は、それぞれ、配設先の収納容器に対応する偏心カムが該収納容器の押込を許容する状態で停止しているときには、該収納容器に係合して該収納容器の前方引出を阻止するが、該偏心カムが回転動作を行うと、該偏心カムが該収納容器を後押しする前に、該偏心カムに押されて弾性変形することにより該収納容器から外れて、該収納容器の後押しや前方引出を許容するようになっている。
【0006】
その具体的な構成例を、図面を引用して説明する(特許文献2も参照)。
図6は、(a)が天板等の上部を外して庫部30を露出させた薬品類収納装置10の平面図、(b)が薬品類収納装置10の全体正面図、(c)が底板等の下部を外して庫部30を露出させた薬品類収納装置10の底面図である。
また、
図7は、(a)~(c)が、何れも、一個分の収納容器20と、庫部30のうち一個の収納容器20に対応する部分である引出枠31とを示す底面図である。
【0007】
薬品類収納装置10は、筐体のうち手を掛けやすい中央の大部分が庫部30になっており(
図6参照)、その上方に図示しない制御装置などの電装部35が内蔵されている(
図6(b)参照)。
庫部30は、格子状に区切られて(
図6参照)、多段多列(図では17段6列)の引出枠31を成しており(
図7参照)、引出枠31それぞれの内面が摩擦抵抗の小さい円滑面に仕上げられているので、それぞれ収納容器20を個々に前方へ引出可能な状態さらには押出や押込も可能な状態で縦横に並べて保持するものとなっている(
図6参照)。
【0008】
収納容器20は(
図6,
図7参照)、薬品類を収容して引き出せるように奥行きの長い上面解放の箱状体からなり、透明な又は不透明なプラスチック等で安価に量産しうるものである。
収納容器20の後端には、上述したロック機構43の係合部44に対応した係合部21が形成されている(
図7(a),(b)参照)。
【0009】
引出枠31には一つずつ電動部40が付設されており(
図6,
図7参照)、それぞれの電動部40にはモータ41と偏心カム42とロック機構43とが具備されているが、それらは、筐体内で収納容器20の後方に配置されているので、正面からは見えない。モータ41によって回転駆動される偏心カム42は、収納容器20を押し出す押出機構の要部であり、カム位置を検出する原点センサ等が付設されている。そして、偏心カムが原点位置に停止しているときには収納容器20を押し込んで閉めるのを許容するが(
図7(a)参照)、その状態からモータ駆動にて偏心カムが回転すると先ず偏心カムがロック機構43に作用して係合部44が収納容器20の係合部21から外れ(
図7(b)参照)、それから偏心カムが一回転を終えたときには、偏心カムの大径部が前方の収納容器20の後端面を後押して収納容器20を前進させて開けるようになっている(
図7(c)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2007-7093号公報
【文献】特開2013-255724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように薬品類をカセット(収納容器)で分別保管する薬品類収納装置について、薬品類の出し入れ対象になった選択カセットの自動開きと該カセットの押し戻しとを可能にしたものや(例えば特許文献1参照)、それらに加えて閉じた後のカセット自動ロックと開時の自動解錠まで可能にしたものが(例えば特許文献2参照)、開発されて実用に供されている。また、それらの薬品類収納装置には、カセット容量の削減を抑制するためにカセット後方の開駆動機構等の小形化を図るとともに、選択カセットの明確化のために発光手段を各カセットの前面脇に添設する、といったこともなされている。
そして、そのような装置の有用性の認識が深まるに連れて利用も拡大している。
【0012】
ところが、使用頻度が上がり使い慣れてくるに連れてカセット(収納容器)への薬品類の出し入れ作業が素早く行えるようになると、選択されたカセットの脇の発光状態を見てから選択カセットに目を移して該カセットに手を掛けるのが手間に感じられる等のため、非選択カセットがロックされているという安心感もあって、自動で開いたカセットを見たら速やかに手を掛けるという使い方が増えて来た。
とはいえ、上述のように小形化した開駆動機構では、自動で開いて前進した選択カセットの進出量が比較的小さいので、カセット前進状態が発光よりも目立つとは言えない。
【0013】
そのため、自動開きカセット(収納容器)の前進距離を拡大することに対して要望が高まってきている。そして、そのような要望に応えるには、既述した開駆動機構の押出機構の偏心カムを大きくすることが思い浮かぶ。
しかしながら、偏心カムの単なる拡大は、カセット後端部の短縮やモータの強化を招くことになるため、好ましくない。
そこで、同規模の偏心カムより進退距離の大きい開駆動機構を持った薬品類収納装置を実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の薬品類収納装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、
薬品類を収容する多数の収納容器と、それらを個々に前方へ引出可能な状態で保持する庫部と、前記収納容器それぞれの後方に配設された多数の開駆動機構とを備えた装置であって、前記開駆動機構が、電動モータを具備した駆動部と、前記駆動部によって駆動されると配設先の収納容器を後押して前進させる押出機構と、前記駆動部によって駆動されると前記押出機構の後押しに先立って該収納容器から外れて該収納容器の前方引出を許容するが該収納容器が後へ押し込まれたときには該収納容器に係わって該収納容器の前方引出を阻止するロック機構とを具備している薬品類収納装置において、
前記押出機構が、前記駆動部の一回当たり駆動の途中だけ伝達を行う第1カム機構と、前記第1カム機構の従動節の回転運動と最前の関節の前進後退運動との相互変換伝達を行うリンク機構とを具備したものであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の薬品類収納装置は(解決手段2)、上記解決手段1の薬品類収納装置であって、
前記ロック機構が、前記駆動部の一回当たり駆動の途中だけ伝達を行い且つ該伝達を前記第1カム機構の伝達開始より早く開始する第2カム機構を具備したものであることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の薬品類収納装置は(解決手段3)、上記解決手段2の薬品類収納装置であって、
前記駆動部が、横向きに装備された前記電動モータに付設されたウォームと、前記ウォームと噛合するウォームホイールとを具備したものであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の薬品類収納装置は(解決手段4)、上記解決手段3の薬品類収納装置であって、
前記ウォームホイールの噛合相手の歯車と前記第1カム機構の原動節と前記第2カム機構の原動節とが同じ回転伝動軸に装着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
このような本発明の薬品類収納装置にあっては(解決手段1)、押出機構の主要部材を、簡素ではあったが押出時の前進後退行程の割には大きかった偏心カムから、第1カム機構とリンク機構との組み合わせに変更して、機構の変形の自由度を高めたことにより、後退状態での占有空間が同じままでも前進距離を増やすことが可能になった。
そのうえ、第1カム機構には駆動部の一回当たり駆動の途中だけ伝達を行わせるようにしたことにより、押出動作前のロック解除時間を確保するのが機構の過大な複雑化を回避して比較的簡便にできるばかりか、押出動作後は、第1カム機構の従動節とそれに連なるリンク機構とを共に駆動の無い自由状態にすることができる。
【0019】
しかも、リンク機構について、第1カム機構の従動節の回転運動と最前の関節の前進後退運動との変換伝達が相互に行えるようにもしたことにより、第1カム機構が駆動伝達を行う時には第1カム機構の駆動に応じてリンク機構の最前の関節が前進するのでそれに押されて収納容器が開く一方、その駆動伝達の終了後は、リンク機構が自由状態になる。
このような自由状態では、例えばバネ力等にて自動的に最前の関節を後退させることも可能であり、従来品のように自動開き済みの収納容器を手先や指先で後方へ押し込んで最前の関節を後退させることも可能なので、装置の設計自由度が高い。
したがって、この発明によれば、開駆動機構の複雑化を抑制しつつ、同規模の偏心カムより進退距離の大きい開駆動機構を持った薬品類収納装置を実現することができる。
【0020】
また、本発明の薬品類収納装置にあっては(解決手段2)、押出機構の第1カム機構とは別の第2カム機構をロック機構に導入したことにより、駆動源は共有しても駆動伝達開始タイミング等の異なる押出機構とロック機構とに係るカム機構の設計を個別に行えるようになるので、押出機構の具体化もロック機構の具体化も容易になる。
【0021】
さらに、本発明の薬品類収納装置にあっては(解決手段3)、駆動部の電動モータの駆動ラインにウォームギヤを介装したことにより、ウォームギヤの回転伝動方向変換機能を利用して電動モータを縦向きでなく横向きにしてカム機構の原動節の支軸と電動モータとの縦向き干渉を回避するとともに、ウォームギヤの高い減速機能を利用して電動モータに小形だが高速回転可能なものを採用して押出機構やロック機構の占有空間を広げることができる。なお、小形の電動モータを高速回転させてもモータ駆動が休止期間の長い間欠駆動なのでモータ負荷が過大になるといった不都合は無い。
【0022】
また、本発明の薬品類収納装置にあっては(解決手段4)、押出機構やロック機構の占有空間が拡大したことを利用してウォームホイール噛合相手の歯車と第1カム機構の原動節と第2カム機構の原動節とを同じ回転伝動軸に装着することにより、狭い限定空間であっても各機構を低層から上層まで層分けして組み込めるので、各機構の設計が容易になるばかりか、製造や修理といった作業も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例1について、収納容器の後端部とその後方の開駆動機構とに係り、(a),(b)何れも底面図である。
【
図2】駆動部の構造と動作を示し、(a)~(d)は何れも底面図である。
【
図3】ロック機構の構造と動作を示し、(a)~(d)は何れも底面図である。
【
図4】押出機構の構造と動作を示し、(a)~(d)は何れも底面図である。
【
図5】開駆動機構の構造と動作を示し、(a)~(d)は何れも底面図である。
【
図6】従来の薬品類収納装置の全体構造を示し、(a)が天板等の上部を外した装置の平面図、(b)が装置全体の正面図、(c)が底板等の下部を外した装置の底面図である。
【
図7】そのうち収納容器一個分に対応する機構部分を示し、(a)~(c)は何れも底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
このような本発明の薬品類収納装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1~
図5に示した実施例1は、上述した解決手段1~4(出願当初の請求項1~4)を総て具現化したものである。
【0025】
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,電子回路(電気回路)の詳細などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。また、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示すとともに、それらについて背景技術の欄で述べたことは以下の各実施例についても共通するので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0026】
本発明の薬品類収納装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、収納容器20の後端部とその後方の開駆動機構50+60+70とに係る底面図であり、(a)は収納容器20が奥へ押し込まれた状態を示し、(b)は収納容器20が前へ押し出された状態を示している。
【0027】
さらに、
図2は、駆動部50に係る底面図であり、(a)~(d)は自動押出時の動作状態を時系列で示している。
また、
図3は、ロック機構60に係る底面図であり、(a)~(d)は自動押出時の動作状態を時系列で示している。
また、
図4は、押出機構70に係る底面図であり、(a)~(d)は自動押出時の動作状態を時系列で示している。
また、
図5は、開駆動機構50+60+70に係る底面図であり、(a)~(d)は自動押出時の動作状態を時系列で示している。
【0028】
この薬品類収納装置が、薬品類を収容する多数の収納容器20と、それらを個々に前方へ引出可能な状態で保持する庫部30と、収納容器20それぞれの後方に配設された多数の開駆動機構とを備えていることに加えて、それぞれの開駆動機構が、電動モータを具備した駆動部と、この駆動部によって駆動されると配設先の収納容器20を後押して前進させる押出機構と、上記の駆動部によって駆動されると押出機構の後押しに先立って収納容器20から外れて収納容器20の前方引出を許容するが収納容器20が後へ押し込まれたときには収納容器20に係わって収納容器20の前方引出を阻止するロック機構とを具備していることは、既述した薬品類収納装置10を踏襲しており、従来同様である。
【0029】
そこで、簡明化のため繰り返しとなる説明は割愛して、従来構成(41~43)と相違する改造後の開駆動機構50+60+70について詳述する。
開駆動機構50+60+70は(
図1参照)、駆動部50とロック機構60と押出機構70とを具備したロック付き駆動機構であり、収納容器20が押し込まれている押込状態では、引出枠31のうち収納容器20の後方に確保されている小空間に既述の電動部40と同じく収まっているが(
図1(a)参照)、収納容器20を前方へ押し出す押出状態では、前端のジョイント83(最前の関節)が既述の偏心カム42の最長径部よりも前へ移動するようになっている(
図1(b)参照)。以下、各部50,60,70を詳述する。
【0030】
駆動部50は(
図2参照)、電動モータ51とウォーム52とウォームホイール53と平歯車54と回転伝動軸55と支軸56とを具備したものであり、開駆動機構50+60+70の設置空間(占有空間)のうち上層部分に設置されている(
図2等は底面図)。
電動モータ51は、既述のモータ41より小形のものであり、特に本体部分の細いものが採用されて径方向の縮小が際立っている。電動モータ51は、本体部分に加えて回転出力軸も長手方向を左右にした横向き状態で設置空間の後方部分に装備されている。
【0031】
この電動モータ51の回転出力軸にはウォーム52が装備されており、その直ぐ側にウォームホイール53がウォーム52と噛合する状態で装備されていて、回転方向を横軸回りから縦軸回りに変えるとともに回転速度を下げるウォームギヤ52+53が構成されている。そのうちウォームホイール53には更なる減速を伴って回転伝動を行う平歯車54も噛合しており、平歯車54を回転伝動可能な固定状態で軸支する回転伝動軸55と、それらで駆動される他の部材(後述の63,73,75)を軸支する支軸56も、軸方向を上下にした縦向き状態で、ウォームホイール53の近くに装備されている。
【0032】
そして、電動モータ51が動作すると、それに応じて、ウォーム52が回転し、ウォームホイール53が減速しつつ回転し、平歯車54が更に減速しつつ回転し、回転伝動軸55も軸回転するようになっている。なお、それらの回転状態は図面では判然としないので、回転伝動軸55に固装された回転カム71の大径部72の移動状態を見ると、最初は後方を向いていたのが(
図2(a)では上方)、左後方へ向きを変え(
図2(b)では右上)、それから左前方へ向きを変え(
図2(c)では右下)、さらに前方へ向きを変え(
図2(d)では下方)、最後に最初の状態に戻る(
図2(a)参照)。この一連の動作が、ロック機構60と押出機構70とに対しては、駆動部50の一回当たり駆動になる。
【0033】
ロック機構60は(
図3参照)、回転カム61と従動節65とを備えた第2カム機構を主体としたものであり、開駆動機構50+60+70の設置空間のうち中層部分に設置されている(
図3等は底面図)。
そのうち回転カム61は、回転伝動軸55に個装されて原動節になっており、従動節65は、支軸56によって回転自由状態で軸支されている。回転カム61の大部分は大径部になっており、小径部62は少しだけである。これに対し、従動節65の大部分は小径部になっており、大径部である接触子66は上述の小径部62より小さい。
【0034】
また、従動節65の小径部のうち接触子66の反対側の部分からは、他の部材(後述の77)との干渉を避けるために曲がっている細長い部材が延び出ており、その先端が収納容器20の係合部21に対する係合部67になっている。
さらに、図示は割愛したが、従動節65の接触子66が回転カム61の小径部62の所に来ていて接触子66が自由状態になっているときには(
図3(a)参照)、カム動作を妨げない弱い弾性バネ等の付勢力にて係合部67を前方に位置させる付勢がなされるようにもなっている。
【0035】
そして、電動モータ51が動作して上述したように回転伝動軸55が一回転だけ軸回転すると、最初は前方に位置していた係合部67が(
図3(a)では下方)、速やかに左方へ移動し(
図3(b)では右方)、それからずっとその位置にとどまり(
図2(c),(d)でも右方)、最後に最初の状態に戻る(
図3(a)参照)。この一連の動作が、駆動部50の一回当たり駆動の途中だけ伝達を行う第2カム機構61+63の動作に該当する。また、回転カム61の回転が開始されると早々に従動節65の接触子66が回転カム61によって動かされようになっているので、第2カム機構61+63は、一回当たり駆動の途中だけ行う上述の伝達を、次に詳述する押出機構70の第1カム機構71+73の伝達開始より早く開始するものとなっている。
【0036】
押出機構70は(
図4参照)、回転カム71と従動節73とを備えた第1カム機構71~74と、平歯車75と平歯車76とを備えた回転伝動機構75+76と、リンク(節)78,79,82,84とジョイント(関節)81,83,85とを備えたリンク機構78~85とを主体としたものであり、開駆動機構50+60+70の設置空間のうち下層部分に設置されている(
図4等は底面図)。支軸77も、上述の縦軸55,56と同じく軸方向を上下にした縦向き状態で、支軸56の前方(図では下方)に設けられている。
【0037】
第1カム機構71~74は、原動節の回転カム71が上述の回転伝動軸55に固装されており、従動節73が支軸56によって回転自由状態で軸支されている。
そして、駆動部50の説明時に述べたように、駆動部50の一回当たり駆動に応じて、回転カム71の大径部72が、最初は後方を向いていたのが(
図4(a)では上方)、左後方へ向きを変え(
図4(b)では右上)、それから左前方へ向きを変え(
図4(c)では右下)、さらに前方へ向きを変え(
図4(d)では下方)、最後に最初の状態に戻るようになっている(
図4(a)参照)。
【0038】
しかも、回転カム71の大径部72も従動節73の大径部74も小さめなので、両部72,74が直に係わり合う時期は短いうえ早々に開始されるものでもない(
図4(c)参照)。
そのため、第1カム機構71~74は、一回当たり駆動の途中だけ伝達を行うものであって、その伝達を、上述のロック機構60の第2カム機構61+63の伝達開始よりも(
図3(b)参照)、遅く開始する(
図4(c)参照)、というものになっている。
【0039】
回転伝動機構75+76は、従動節73に対して固定的に連結されていて従動節73と一緒に回転する平歯車75と、平歯車75と噛合する状態で支軸77に固装されている平歯車76とを具備したものであり、従動節73が駆動されて回転するとそれに応じて平歯車76が従動節73の回転の向きとは逆向きに回転し、平歯車76が駆動されて回転するとそれに応じて従動節73が平歯車76の回転の向きとは逆向きに回転するようになっている。
【0040】
リンク機構78~85は、一端部が平歯車76に固定されたリンク78と、一端部が平歯車75に固定されたリンク79と、一端部がリンク78の他端部と共にジョイント85にて曲折可能に連結されたリンク84と、一端部がリンク79の他端部と共にジョイント81にて曲折可能に連結され更に他端部がリンク84の他端部と共にジョイント83にて曲折可能に連結されたリンク82とを具備したものであり、従動節73の回転運動による大径部74の揺動に応じてジョイント83(最前の関節)を前進させるとともに、ジョイント83の後退に応じて従動節73と大径部74とを逆向きに動かすようになっている。
【0041】
このような第1カム機構71~74の従動節73の回転運動とジョイント83(最前の関節)の前進後退運動との相互変換伝達について詳述すると、最初は(底面図の
図4(a)参照)、回転カム71の大径部72が後方を向き(図では上方)、従動節73の大径部74が右方を向き(図では左方)、この状態では第1カム機構71+73が係合していないので、駆動部50の駆動下にある回転カム71と異なり、従動節73は駆動部50には拘束されない。そのため、従動節73に連なる回転伝動機構75+76やリンク機構78~85は、ジョイント83の後退時には(図では上方)、ジョイント81,85が左右に離れるとともに、リンク78及び平歯車76が左後へ揺動し(図では反時計回り)、リンク79及び平歯車75が右後へ揺動した状態になっている(図では時計回り)。
【0042】
そして、駆動部50の一回当たり駆動が始まると(底面図の
図4(b)参照)、回転カム71が回転し始めて大径部72が左後方へ向きを変えるが(
図4(b)では右上)、しばらくは回転カム71の大径部72が従動節73の大径部74に到達しないので、従動節73と回転伝動機構75+76とリンク機構75~85とに能動的な動きは無く、それら73~85は上述した後退時の姿勢を保つ。
【0043】
それから(底面図の
図4(c)参照)、回転カム71の回転が進行して大径部72が右方向に至り更に左前方へ向きを変える間は(
図4(c)では右下)、回転カム71の大径部72と従動節73の大径部74とが係合して大径部72が大径部74を押すので、従動節73さらには回転伝動機構75+76が作動して、リンク79が右前から前方へ揺動するとともに(
図4(c)では左下から下方へ)、リンク78が左前から前方へ揺動する(
図4(c)では右下から下方へ)。そのため、左右のジョイント81,85が急接近し、そしてリンク82,83も急接近して並び、それによってジョイント83(最前の関節)が大きく前進する(
図4(c)では下方)。
【0044】
その後(底面図の
図4(d)参照)、回転カム71の回転が進行して大径部72が前向きになる頃には(図では下方)、回転カム71の大径部72が従動節73の大径部74から離れて第1カム機構71~74の係合が解けて、従動節73と回転伝動機構75+76とリンク機構75~85は、駆動部50の駆動を受けない状態になる。
この状態では、他の力が作用しなければジョイント83(最前の間接)が直前の前進状態を保つが(
図4(c)参照)、この押出機構70は、ジョイント83が自動的に後退するようになっている。
【0045】
詳述すると、押出機構70は、図示しない弾性バネが付設されていて、そのバネ力にてリンク機構78~85を折り畳む方へ付勢するようになっている。その付勢力は、第1カム機構71~74のカム動作を妨げない弱いものであるが、押出機構70が駆動部50の駆動を受けない自由状態のときには第1カム機構71~74を変形させることができる程度には強いように設定されている。
そのため、上述のようにして第1カム機構71~74の係合が解けると、バネの付勢力にて自動的に、リンク機構75~85が以前のように折り畳まれた状態に戻るとともに従動節73の大径部74も駆動部50の駆動を受ける前の位置に戻る(底面図の
図4(d)参照)。そして、駆動部50の一回当たり駆動が終わったときには(底面図の
図4(a)参照)、回転カム71が一回転を終えて大径部72が後方を向き(図では上方)、従動節73が逆回転して大径部74が元の位置(図では左方)に戻り、次の駆動を待つ。
【0046】
さらに(
図5参照)、開駆動機構50+60+70では、ウォームホイール53の噛合相手の平歯車54と、第1カム機構71~74の原動節である回転カム71と、第2カム機構61~67の原動節である回転カム61とが、一つの回転伝動軸55に対して固定状態で装着されている。
そのため、駆動部50によって一回当たり駆動が行われると、その駆動に連れて第1カム機構71~74と第2カム機構61~67とが所定の順序で動作し、更に押出機構70とロック機構60も所定の順序で動作するようになっている。
【0047】
この実施例1の薬品類収納装置について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図1(a)は収納容器20が手動で押し込まれたときの開駆動機構50+60+70の状態を示し、同図(b)は収納容器20を自動で押し出したときの開駆動機構50+60+70の状態を示している。また、
図5(a)~(d)は、自動押出時の開駆動機構50+60+70の動作状態を時系列で示している。
【0048】
薬品類収納装置の全体的な使い方や動作は、公知のものと同様なので、繰り返しとなる説明は割愛して、ここでは、収納容器20が手動で押し込まれたときと、収納容器20を自動で押し出すときとについて、詳述する。
先ず(
図1(a),
図5(a)参照)、収納容器20が庫部30の引出枠31の奥まで押し込まれており、駆動部50の駆動も無いときには、最前の関節であるジョイント83が後退していて押出機構70のリンク機構75~85が折り畳まれて左右に長いが前後に短い状態になっている。また、ロック機構60の係合部67が収納容器20の係合部21に係合して収納容器20の引き出しが阻止されている。
【0049】
次に(
図5(b)参照)、電子回路基板35の制御に応じて該当する収納容器(選択カセット)の駆動部50が一回当たり駆動を開始すると、押出機構70が駆動されるより先にロック機構60が駆動されて、従動節65が揺動し、その先端の係合部67が収納容器20の係合部21から外れるので、収納容器20の前進が可能な状態になる。
それから(
図1(b),
図5(c)参照)、少し遅れて、押出機構70が駆動され、リンク機構75~85の変形によってジョイント83(最前の間接)が前進し、それに後押しされて収納容器20が引出枠31内を前進して収納容器20の前面や前部が庫部30の引出枠31から前へ突き出る。その突出量は従来の三倍近くにもなる。
【0050】
さらに、その突き出し後は早々に第1カム機構71+73の係合が解かれて押出機構70が自由状態になるので、図示しない弾性バネの付勢力によって自動的にリンク機構78~85が折り畳み状態に戻る。そのため、ジョイント83(最前の間接)が後退して第1カム機構71~74や従動節73の大径部74が初期位置に戻るが(
図5(d)参照)、収納容器20は前進状態を保つ。また、第2カム機構61+63の係合も解かれて、ロック機構60の係合部67が元の位置に戻るが(
図3(a)参照)、収納容器20が前進したままなので、係合部67は係合部21との係合には至らず係合部21の戻りを待つ。
【0051】
そして、駆動部50が一回当たり駆動を終えたときには、回転カム71の大径部72が初期位置に戻り、その状態で開駆動機構50+60+70の自動動作は停止する。
それから、開いた収納容器20から所要の薬品類が取り出された後、収納容器20が手動で後方へ押し込まれると(
図1(a),
図5(a)参照)、ロック機構60の係合部67が弾性変形にて収納容器20の係合部21に係合して収納容器20が手動では引き出せない状態に戻る。収納容器20の押し戻し操作は、手動式であるが、収納容器20を押し出したジョイント83が先に自動後退しているので、手動操作でも軽快に押し戻せる。
【0052】
こうして、この薬品類収納装置では、従来の薬品類収納装置10と同じく、薬品類を収納容器20で分別保管することと、薬品類の出し入れ対象になった収納容器20(選択カセット)の自動開きと、その収納容器20の手動閉めと、閉じた収納容器20の自動ロックと、開時の自動解錠まで簡便に行うことができる。しかも、開いた収納容器20の前進量が従来の薬品類収納装置10より大きくて、収納容器20の開状態を目視で認識するのが容易にできるようにもなっている。
【0053】
[その他]
上記の実施例では、収納容器20の後面の凹部に平板状の係合部21の一端が突き出ている構造を図示したが、係合部21は、係合部67との協動により選択的に係合部67と係合したり離れたりできる構造のものであれば良く、例えば、アングル材や,キノコ状部材,カギ状部材などでも良く、植設や突設されたものでも良い。
また、図示は割愛したが、収納容器20が奥まで完全に押し込まれた閉状態にあるのか或いは多少なりとも前方へ引き出された開状態にあるのかを検出する収納確認センサも、収納容器20それぞれに対応させて、庫部30の支持板等に配設されている。
さらに、上記実施例ではジョイント83の後退がバネ力にて自動的に行われるようになっていたが、ジョイント83を収納容器20で押して後退させるときの抵抗力が気にならない場合は、自動用の弾性バネを省いて、手動で後退させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0054】
10…薬品類収納装置、20…収納容器、21…係合部、
30…庫部、31…引出枠、35…電子回路基板、
40…電動部(ロック付き開駆動機構)、41…モータ(駆動部)、
42…偏心カム(押出機構,兼ロック駆動)、43…ロック機構、44…係合部、
50+60+70…ロック付き開駆動機構、
50…駆動部、
51…電動モータ、52…ウォーム(ウォームギヤ)、
53…ウォームホイール(ウォームギヤ)、
54…平歯車、55…回転伝動軸、56…支軸、
60…ロック機構、
61…回転カム(原動節,第2カム機構)、62…小径部、
65…従動節(第2カム機構)、66…接触子、67…係合部、
70…押出機構、
71…回転カム(原動節,第1カム機構)、72…大径部、
73…従動節(第1カム機構)、74…大径部、
75…平歯車、76…平歯車、77…支軸、78…リンク(節)、
79…リンク(節)、81…ジョイント(関節)、82…リンク(節)、
83…ジョイント(関節)、84…リンク(節)、85…ジョイント(関節)