IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中川産業株式会社の特許一覧

特許7023476筋金棒体成形用金型およびこれを使用した筋金棒体の製造方法
<>
  • 特許-筋金棒体成形用金型およびこれを使用した筋金棒体の製造方法 図1
  • 特許-筋金棒体成形用金型およびこれを使用した筋金棒体の製造方法 図2
  • 特許-筋金棒体成形用金型およびこれを使用した筋金棒体の製造方法 図3
  • 特許-筋金棒体成形用金型およびこれを使用した筋金棒体の製造方法 図4
  • 特許-筋金棒体成形用金型およびこれを使用した筋金棒体の製造方法 図5
  • 特許-筋金棒体成形用金型およびこれを使用した筋金棒体の製造方法 図6
  • 特許-筋金棒体成形用金型およびこれを使用した筋金棒体の製造方法 図7
  • 特許-筋金棒体成形用金型およびこれを使用した筋金棒体の製造方法 図8
  • 特許-筋金棒体成形用金型およびこれを使用した筋金棒体の製造方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】筋金棒体成形用金型およびこれを使用した筋金棒体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/30 20190101AFI20220215BHJP
   B29C 48/06 20190101ALI20220215BHJP
   B29C 48/154 20190101ALI20220215BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20220215BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20220215BHJP
【FI】
B29C48/30
B29C48/06
B29C48/154
B29C70/54
B29K105:08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021187527
(22)【出願日】2021-11-18
【審査請求日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2020192874
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211857
【氏名又は名称】中川産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕茂
(72)【発明者】
【氏名】中川 敬章
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030318(JP,A)
【文献】特開昭58-132514(JP,A)
【文献】特開昭64-045832(JP,A)
【文献】国際公開第2020/060506(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機から出力される熱可塑性樹脂材を通過させる主流路が、本体の中心部で前記押出機の押し出し方向へ貫通する貫通穴として形成されるとともに、前記熱可塑性樹脂材を通過させて前記主流路内の外周部に合流させる第1副流路が、少なくともその下流部がリング状断面の全周流路となるように前記本体の外周部に形成され、かつ、強化繊維材が通過する第2副流路が前記貫通穴とほぼ同径の貫通穴として形成されて、前記主流路と前記第1副流路の合流位置よりも上流位置で前記主流路に連結されて、前記強化繊維材を当該主流路内へ供給するようになっている筋金棒体成形用金型。
【請求項2】
円柱形の複数種の型を上流側から下流側へ結合して、これら型内に前記主流路、前記第1副流路および前記第2副流路を形成した請求項1に記載の筋金棒体成形用金型。
【請求項3】
前記第1副流路のリング状断面の径および厚を下流側へ向けて小さくした請求項1又は2に記載の筋金棒体成形用金型。
【請求項4】
前記第2副流路を主流路に沿う方向へ湾曲させて形成した請求項1ないし3のいずれかに記載の筋金棒体成形用金型。
【請求項5】
前記第2副流路を前記本体内の周方向の複数位置に形成した請求項1ないし4のいずれかに記載の筋金棒体成形用金型。
【請求項6】
前記強化繊維材をエアで開繊して使用する請求項1ないし5のいずれかに記載の筋金棒体成形用金型を使用した筋金棒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリートの補強等に好適に使用できる筋金棒体を製造するための成形用金型およびこれを使用した筋金棒体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の筋金棒体として従来の鉄製のものに代えて、錆を生じずコンクリートの強度を長く維持できるバサルト繊維を使用したものが注目されている。このような筋金棒体として、例えば特許文献1に示されているように、バサルト繊維の束を芯材としてその周囲を所定厚さの熱可塑性樹脂層で覆った構造のものが提案されている。そして芯材の周囲に樹脂層を形成する方法としては従来、上記特許文献1に示されているように芯材を樹脂の溶融溶液中に通すディップ法が多用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-251378
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ディップ法は溶融樹脂の貯留槽を設ける必要がある等によって装置全体が大掛かりになり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、十分な強度を有する筋金棒体を簡易かつ安価に製造することができる筋金棒体成形用金型およびこれを使用した筋金棒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明の筋金棒体成形用金型(1)では、押出機(2)から出力される熱可塑性樹脂材(Rt)を通過させる主流路(F1)が、本体の中心部で前記押出機の押し出し方向へ貫通する貫通穴として形成されるとともに、前記熱可塑性樹脂材(Rt)を通過させて前記主流路(F1)内の外周部に合流させる第1副流路(F2)が、少なくともその下流部がリング状断面の全周流路となるように前記本体の外周部に形成され、かつ、強化繊維材(4)が通過する第2副流路(F3)が前記貫通穴とほぼ同径の貫通穴として形成されて、前記主流路(F1)と前記第1副流路(F2)の合流位置よりも上流位置で前記主流路に連結されて、前記強化繊維材を当該主流路(F1)内へ供給するようになっている。
【0007】
本第1発明によれば、押出機と成形用金型によって簡易かつ安価に、熱可塑性樹脂材が含浸された強化繊維が中心部に位置しその周囲が所定厚の熱可塑性樹脂材で被覆された十分な強度の筋金棒体を得ることができる。
【0008】
本第2発明の筋金棒体成形用金型(1)では、円柱形の複数種の型(11~14)を上流側から下流側へ結合して、これら型(11~14)内に前記主流路(F1)、前記第1副流路(F2)および前記第2副流路(F3)を形成する。
【0009】
本第2発明によれば、円柱形の複数種の型を結合することによって筋金棒体成型用金型を容易に製造することができる。
【0010】
本第3発明の筋金棒体成形用金型(1)では、前記第1副流路(F2)のリング状断面の径および厚を下流側へ向けて小さくする。
【0011】
本第3発明によれば、中心部に位置する熱可塑性樹脂材が含浸された強化繊維の周囲を所定厚の熱可塑性樹脂材で良好に被覆することができる。
【0012】
本第4発明の筋金棒体成形用金型(1)では、前記第2副流路(F3)を主流路(F1)に沿う方向へ湾曲させて形成する。
【0013】
本第4発明によれば、強化繊維に熱可塑性樹脂材を良好に浸入させることができる。
【0014】
本第5発明の筋金棒体成形用金型(1)では、前記第2副流路(F3)を前記本体内の周方向の複数位置に形成する。
【0015】
本第5発明によれば、第2副流路を本体内の周方向の複数位置に形成することによって、強化繊維を小分けして主流路に供給することができ、強化繊維間に熱可塑性樹脂材を良好に浸入させることができる。なお、この場合、金型の複雑化との兼ね合いから、周方向の2カ所~4カ所に第2副流路を形成するのが良い。
【0016】
本第6発明の筋金棒体成形用金型を使用した筋金棒体の製造方法では、前記強化繊維材(4)をエアで開繊して使用する。
【0017】
本第6発明によれば、強化繊維内への熱可塑性樹脂材の浸入がさらに良好に行われる。
【0018】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の筋金棒体成形用金型およびこれを使用した筋金棒体の製造方法によれば、十分な強度を有する筋金棒体を簡易かつ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態における筋金棒体成形用金型を備えた筋金棒体製造装置の全体構成を示す概略斜視図である。
図2】筋金棒体成形用金型の全体縦断面図である。
図3】供給型の縦断面図である。
図4】供給型の正面図で、図3のX矢視図である。
図5】合流型の縦断面図である。
図6】合流型の正面図で、図5のY矢視図である。
図7】被覆型の縦断面図である。
図8】成形型の縦断面図である。
図9ノズルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0022】
図1には、本発明の筋金棒体成形用金型(以下、成型用金型)1を備えた筋金棒体成形装置の全体構成を示す。図1において、公知構造の押出機2が設けられて、その一端上面に設置された投入ホッパから押出機2内へ熱可塑性樹脂材としてのポリプロピレン(PP)樹脂Rtが供給されている。PP樹脂Rtは押出機2内で所定温度へ加熱されて溶融状態となり、内設されたスクリューによって押出機2の他端に結合された、詳細を以下に説明する成形用金型1内へ供給される。
【0023】
成形用金型1の金型本体は円柱形で、供給型11、合流型12、被覆型13、成形型14の4つの型を結合して構成されており、その全体断面図を図2に示す。図3には供給型11の縦断面図を示し、図4には図3のX矢視における供給型11の正面図を示す。供給型11は、中心部を山形に膨出させた一端面11aが、押出機2他端の出口開口21に覆着される。供給型11の中心には一端面11aから他端面11bへ貫通する貫通穴111が形成されており、貫通穴111は、供給型11の他端面11b中心部から先端に向けて縮径しつつ突出するガイド部112の中心を貫通している。
【0024】
供給型11の膨出する一端面中心部115の周囲には間隔をおいて、他端面11bへ貫通する複数の貫通穴113が形成されている。さらに供給型11には、外周面の径方向対称位置からそれぞれ中心部へ向けて、縦断面内を湾曲して延びる貫通穴114が形成されており、これら貫通穴114は他端面11bの中心部に至ってここで貫通穴111内に開口しこれに合流している。
【0025】
図5には合流型12の縦断面図を示し、図6には図5のY矢視における正面図を示す。合流型12には中心に貫通穴121が形成されており、当該貫通穴121は一端面12aの内周部に大きく開口するとともに、他端に向けて漸次円錐状に縮径して他端面12bの円形に突出する内周部122に至っている。
【0026】
図7には被覆型13の縦断面図を示す。被覆型13は一端面13aの内周部を一定深さで凹陥させて円形凹所131とし、円形凹所131の中心部には他端面13bへ貫通する貫通穴132が形成されている。円形凹所131の周壁には、周方向の複数位置に等間隔で位置調整用のボルト133が外方から貫通設置されている。
【0027】
図8には成形型14の縦断面図を示す。成形型14には中心に貫通穴141が形成されており、貫通穴141は一端面14a側から漸次縮径して最終製品としての筋金棒体の外径に等しくしてある。
【0028】
このような供給型11、合流型12、被覆型13、成形型14の結合設置は以下のようにして行う。すなわち、合流型12の貫通穴121(図5)内に供給型11の突出するガイド部112(図3)を進入させた状態で、合流型12の外周部に等間隔で設けたボルト穴123(図6)にボルトを挿入して、これらボルトを供給型11の外周部に等間隔で設けたボルト穴116(図4)に挿通して、各ボルトを押出機2の出口開口21周囲に設けたネジ穴(図示略)にねじ込む。これによって、成形型11と合流型12が一体に押出機2に固定される。
【0029】
被覆型13はその円形凹所131内に合流型12の突出する内周部122を進入させた状態で、その外周部に等間隔で設けたボルト穴134(図7)にボルトを挿入し、これらボルトを合流型12の内周部122に等間隔で設けたネジ穴124(図6)にねじ込んで合流型12に結合固定される。この際、供給型11の突出するガイド部112の先端が被覆型13の貫通穴132内に進入する。
【0030】
成形型14はその外周部に等間隔で設けたボルト穴142(図8)にボルトを挿入し、これらボルトを被覆型13の内周部に等間隔で設けたネジ穴135(図7)にねじ込んで被覆型13に結合固定される。
【0031】
供給型11、合流型12、被覆型13、成形型14が上述のように結合された成形用金型1を押出機2の出口開口21に固定した状態(図2)で、互いに連通する供給型11の貫通穴111と成形型14の貫通穴141によって主流路F1が形成される。また、供給型11の貫通穴113と、供給型11のガイド部112外周と合流型12の貫通穴121内周との間に生じた間隙125、および供給型11のガイド部112先端外周と被覆型13の貫通穴132内周との間に生じた間隙136が互いに連通して、成形型14との境界で主流路F1内の外周部に合流する第1副流路F2が形成される。
【0032】
なお、第1副流路F2は、合流型12内でその全周流路のリング状断面が漸次縮径されて被覆型13内に至り、ここで所望径かつ所望厚のリング状断面を有する全周流路となっている。また、供給型11内の、湾曲して延びる貫通穴114は、主流路F1と第1副流路F2の合流位置よりも上流の、供給型11の他端面11b中心部で主流路F1に合流して第2副流路F3を形成している。
【0033】
筋金棒体を製造する場合には、図1に示すように、一対のコイル3からそれぞれ引き出した強化繊維材としてのバサルト繊維束4を、成形用金型1を構成する供給型11の外周に開口する第2副流路F3へそれぞれ供給し、第2副流路F3からこれが合流する主流路F1を経て、成形型1から後段の冷却装置5の冷却水51中に通し、その後、最後段の引取りベルト6に上下から挟持させる。なお、バサルト繊維束4の太さの一例は4800TEXである。
【0034】
なお、コイル3から引き出されたバサルト繊維束4は途中それぞれ図9に示すようなノズル7に通されて、これに供給されたエア71によって開繊される。開繊されたバサルト繊維束4はテンションローラ8を経て第2副流路F3の開口へ供給される。ここで、図1では理解を容易にするために第2副流路F3の開口位置は実際とは異なっている。
【0035】
この状態で、バサルト繊維束4を引取りベルト6で撚ることなくストレートに引きつつ、押出機2から成形用金型1の主流路F1と第1副流路F2へ溶融したPP樹脂Rtを供給する。主流路F1を流れるPP樹脂Rtには途中合流する第2副流路F3から開繊状態の上記バサルト繊維束4が供給されて、バサルト繊維間にPP樹脂Rtが良好に浸透させられ、さらに下流位置にて、PP樹脂Rtが含浸したバサルト繊維束の外周にこれを覆うように第1副流路F2からPP樹脂Rtが供給される。そして後段の冷却装置5で冷却されて、PP樹脂Rtが含浸されたバサルト繊維束4が中心部に位置しその周囲が所定厚のPP樹脂Rtで被覆された十分な強度の筋金棒体9(図1)が得られる。ここで、筋金棒体9の直径の一例は約5mm、上記中心部の直径の一例は約4mm~4.5mmであり、実現された筋金棒体9の引張強度は15kN程度である。
【0036】
なお、上記実施形態では第2副流路を径方向対称位置で周方向の二カ所に形成したが、強化繊維を小分けして主流路に供給した方が、強化繊維間に熱可塑性樹脂材を良好に浸入させることができ、金型の複雑化との兼ね合いを考慮すると周方向の二カ所~四カ所に第2副流路を形成するのが好適である。
【0037】
上記実施形態における熱可塑性樹脂材としてはPP樹脂以外にポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂等が使用できる。また強化繊維としてはバサルト繊維以外にガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維やアラミド繊維、アクリル繊維等の有機繊維が使用できる。
【0038】
このような本実施形態によれば、従来のディップ法によるものに比して、溶融樹脂の貯留槽を設ける必要が無いため装置全体がコンパクトになって、製造コストを低下させることができ、十分な強度を有する筋金棒体を簡易かつ安価に製造することができる。なお、成型用金型の具体的構造は必ずしも図2に示すものとする必要はない。
【符号の説明】
【0039】
1…筋金棒体成形用金型、11…供給型、12…合流型、13…被覆型、14…成形型、2…押出機、4…バサルト繊維(強化繊維材)、7…ノズル、F1…主流路、F2…第1副流路、F3…第2副流路、Rt…PP樹脂(熱可塑性樹脂材)。
【要約】
【課題】十分な強度を有する筋金棒体を簡易かつ安価に製造することができる筋金棒体成形用金型を提供する。
【解決手段】筋金棒体成形用金型に、押出機2から出力される熱可塑性樹脂材Rtを通過させる主流路F1を金型本体の中心部に形成するとともに、熱可塑性樹脂材Rtを通過させて主流路F1内の外周部に合流させる第1副流路F2を金型本体の外周部に形成し、かつ、強化繊維材4を通過させて主流路F1と第1副流路F2の合流位置よりも上流位置で主流路F1に合流させる第2副流路F3を形成する。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9