(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】生成装置、注入装置、及び注入量決定方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20220215BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20220215BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
A61M5/168 512
A61B6/03 375
A61M5/172 500
(21)【出願番号】P 2017120364
(22)【出願日】2017-06-20
【審査請求日】2020-06-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391039313
【氏名又は名称】株式会社根本杏林堂
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【氏名又は名称】川内 英主
(72)【発明者】
【氏名】市川 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】弓場 孝治
(72)【発明者】
【氏名】根本 茂
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-200430(JP,A)
【文献】特開2012-232029(JP,A)
【文献】特開2014-014715(JP,A)
【文献】国際公開第2007/116892(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/081830(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/152841(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61B 6/03
A61M 5/172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体重、除脂肪体重、身長、ボディマス指数、循環血液量、及び体表面積のいずれかからなる身体パラメータである複数の被験者の身体パラメータと、前記被験者の撮像部位を撮像して取得された画素値又は造影されていない撮像部位から取得された画素値を前記取得された画素値から減算して得た造影値からなる取得値との相関を表すデータが記憶された記憶部と、
体重、除脂肪体重、身長、ボディマス指数、循環血液量、及び体表面積のいずれかからなる身体パラメータである被写体の身体パラメータを取得する被写体情報取得部と、
撮像対象である組織の目標造影値又は造影されている撮像部位の目標画素値である目標値を取得する目標値取得部と、
前記被写体の身体パラメータと前記目標値とに基づいて、造影剤の注入量を決定する注入量決定部とを備え、
前記注入量決定部は、
前記データに対して回帰分析を行うことにより、前記取得値が前記被験者の身体パラメータに反比例するような第1の数式により表される回帰曲線を求め、
前記被験者の身体パラメータと前記取得値とを変数とする前記第1の数式における係数に基づいて、造影剤の投与関数であって前記被写体の身体パラメータと前記目標値とを変数とする第2の数式を求め、
前記被写体の身体パラメータと前記目標値とに基づき、前記第2の数式を用いて前記注入量を決定する、生成装置。
【請求項2】
前記第1の数式は、Eを前記撮像部位の前記取得値、Bを前記被験者の身体パラメータ、mを前記造影剤の前記注入量、k及びbを所定の定数としたときに、下記式によって表される、請求項1に記載の生成装置。
【数1】
【請求項3】
前記第2の数式は、E
Tを前記目標値、Bを前記身体パラメータ、mを前記注入量、k及びbを所定の定数としたときに、下記式によって表される、請求項1又は2に記載の生成装置。
【数2】
【請求項4】
前記注入量決定部は、前記被写体が男性であるか又は女性であるかを判断し、男性であると判断した場合には、男性の投与関数を用いて前記注入量を決定し、女性であると判断した場合には、女性の投与関数を用いて前記注入量を決定する、請求項1から
3のいずれか1項に記載の生成装置。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の生成装置を備える、注入装置。
【請求項6】
体重、除脂肪体重、身長、ボディマス指数、循環血液量、及び体表面積のいずれかからなる身体パラメータである複数の被験者の身体パラメータと、前記被験者の撮像部位を撮像して取得された画素値又は造影されていない撮像部位から取得された画素値を前記取得された画素値から減算して得た造影値からなる取得値との相関を表すデータに対して回帰分析を行うことにより、前記取得値が前記被験者の身体パラメータに反比例するような、前記被験者の身体パラメータと前記取得値とを変数とする第1の数式により表される回帰曲線を求め、
体重、除脂肪体重、身長、ボディマス指数、循環血液量、及び体表面積のいずれかからなる身体パラメータである被写体の身体パラメータと、撮像対象である組織の目標造影値又は造影されている撮像部位の目標画素値である目標値とを取得し、
前記第1の数式における係数に基づいて、造影剤の投与関数であって前記被写体の身体パラメータと前記目標値とを変数とする第2の数式を求め、
前記被写体の身体パラメータと前記目標値とに基づき、前記第2の数式を用いて造影剤の注入量を決定する、注入量決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造影剤の注入量を決定する生成装置、該生成装置を備える注入装置、及び注入量決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、造影剤を用いて被写体としての被験者を撮像する際に、ユーザーが望む画素値が得られるような造影剤の注入量を求めることが望まれている。例えば、特許文献1は、肝実質の充分な造影効果を得るための体重あたり投与ヨード量が、600mgI/kgであることを開示している。これによれば、例えば被写体の体重が60kgである場合の注入プロトコルに含まれる造影剤の注入量は、36gI=比例定数0.6×体重60kgとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、体脂肪には造影剤の分布が少ないため、従来の比例定数(例えば0.6)のみを含む関数では、肥満な被写体(高体重の被写体)の場合、造影剤の注入量が過剰となることが知られている。また、低体重の被写体の場合、造影剤の注入量が少ないことにより造影効果が過小となることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一実施態様に係る生成装置は、体重、除脂肪体重、身長、ボディマス指数、循環血液量、及び体表面積のいずれかからなる身体パラメータである複数の被験者の身体パラメータと、前記被験者の撮像部位を撮像して取得された画素値又は造影されていない撮像部位から取得された画素値を前記取得された画素値から減算して得た造影値からなる取得値との相関を表すデータが記憶された記憶部と、体重、除脂肪体重、身長、ボディマス指数、循環血液量、及び体表面積のいずれかからなる身体パラメータである被写体の身体パラメータを取得する被写体情報取得部と、撮像対象である組織の目標造影値又は造影されている撮像部位の目標画素値である目標値を取得する目標値取得部と、前記被写体の身体パラメータと前記目標値とに基づいて、造影剤の注入量を決定する注入量決定部とを備え、前記注入量決定部は、前記データに対して回帰分析を行うことにより、前記取得値が前記被験者の身体パラメータに反比例するような第1の数式により表される回帰曲線を求め、前記被験者の身体パラメータと前記取得値とを変数とする前記第1の数式における係数に基づいて、造影剤の投与関数であって前記被写体の身体パラメータと前記目標値とを変数とする第2の数式を求め、前記被写体の身体パラメータと前記目標値とに基づき、前記第2の数式を用いて前記注入量を決定する、ことを特徴とする。
【0006】
これにより、高体重又は低体重に関わらず、所望の造影効果(画素値)を得ることができる造影剤の注入量を決定することができる。
【0007】
本発明のさらなる特徴は、添付図面を参照して例示的に示した以下の実施例の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明の第1実施形態に係る注入装置の概略ブロック図である。
【
図3】被験者の身体パラメータと撮像部位の取得値との相関を表すグラフである。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る撮像システムの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状及び構成要素の相対的な位置は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されない。
【0010】
特に言及した場合を除き、造影剤という用語は、造影剤単体と、造影剤に加えて他の溶媒及び添加物を含む薬液との両方を含む。また、以下では、特に言及した場合を除き、取得値という用語は、造影されている撮像部位における、CT値、関心領域(ROI)に含まれる画素のCT値の和若しくは平均値、又は関心領域のSD値(標準偏差値)を含む。さらに、取得値は、これらの値から造影されていない撮像部位における値(例えば、単純CTにおける撮像部位のCT値)を減算して得られた値、すなわち造影による値の増加分である造影値を含む。関心領域は予め設定されているか、又はユーザーが関心領域を選択することができる。
【0011】
図1に示すように、撮像システム100は、造影剤を注入する注入装置2と、注入装置2に有線又は無線で接続され且つ被写体を撮像する撮像装置3とを備えている。この撮像装置3としては、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、CT(Computed Tomography)装置、アンギオ撮像装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、CTアンギオ装置、MRアンギオ装置、超音波診断装置、及び血管撮像装置等の各種医療用の撮像装置がある。以下ではCT装置について説明する。
【0012】
撮像装置3は、撮像プランに従って被写体を撮像する撮像部31と、撮像装置3の全体を制御する制御装置32を有している。この撮像プランには、撮像部位、実効管電圧、機種名、メーカー名、撮像時間、管電圧、撮像範囲、回転速度、ヘリカルピッチ、曝射時間、線量、及び撮像方法等の情報が含まれている。そして、制御装置32は、撮像プランに従うように撮像部31を制御して被写体を撮像する。また、制御装置32は、撮像部31、注入装置2、及びサーバー(外部記憶装置)と有線又は無線によって通信できる。
【0013】
撮像部31は、寝台と、被写体にX線を照射するX線源と、被写体を透過したX線を検出するX線検出器とを有している。この撮像部31は、被写体にX線を曝射し、被写体を透過したX線に基づいて被写体の体内を逆投影することで、被写体の透視画像を撮像する。代替的に、撮像部31は、ラジオ波又は超音波を用いて撮像してもよい。以下の説明においては、特に断りがない限り、予めデータを取得するために行う撮像の対象を被験者(複数の被験者)という。また、撮像の目標値が設定される検査対象者を、被写体という。
【0014】
撮像装置3は、表示部としてのディスプレイ33を有している。このディスプレイ33は、制御装置32に接続されており、装置の入力状態、設定状態、撮像結果、及び各種情報を表示する。代替的に、制御装置32とディスプレイ33とは、一体的に構成することもできる。さらに、撮像装置3は、入力部34として、キーボード等のユーザインタフェースを有している。ユーザーは、薬液情報、部位情報、被写体情報及び目標値を、入力部34から撮像装置3に入力することができる。
【0015】
一例として、薬液情報は、製品ID、製品名称、化学分類、含有成分、造影剤濃度、粘度、消費期限、シリンジ容量、シリンジ耐圧、シリンダ内径、ピストンストローク、及びロット番号を含む。また、部位情報は、撮像対象として選択される部位(範囲)を特定できる情報である。例えば部位情報は、撮像部位名、撮像方法の名称、及び薬液の注入部位から撮像部位までの距離を含む。
【0016】
被写体情報は、少なくとも身体パラメータを備えている。一例として、被写体の身体パラメータは、体重、除脂肪体重、身長、ボディマス指数、循環血液量、及び体表面積を含んでいる。また、被写体情報は、身体パラメータの他に、例えば、被写体番号(被写体ID)、氏名、性別、生年月日、年齢、血液量、疾病、心拍数、心拍出量、ヘモグロビン量(g/dL)、血流速度、被写体の疾病・副作用の履歴、及びクレアチニン値を備えていてもよい。目標値は、少なくとも選択部位の目標画素値又は目標造影値(目標画素値から、造影されていない撮像部位の画素値又は撮像部位の生来の画素値を減算して得られる値)を備えており、目標値の目標持続時間をさらに備えていてもよい。
【0017】
注入装置2は、注入プロトコルに従って造影剤を注入する注入ヘッド21を備えている。この注入プロトコルは、注入量、注入速度及び注入時間の少なくとも一つを備えている。そして、注入装置2は、シリンジに充填された薬液、例えば、生理食塩水及び各種造影剤を被写体に注入する。さらに、注入プロトコルは、注入速度の加速度、注入量、注入タイミング、造影剤濃度、及び注入圧力等の注入条件に関する情報を含んでいてもよい。また、注入装置2は、注入ヘッド21を保持するスタンド22と、注入ヘッド21に有線又は無線で接続されたコンソール23とを備えている。
【0018】
コンソール23は、注入ヘッド21を制御する制御装置として機能すると共に、造影剤の注入プロトコルを生成する生成装置としても機能する。このコンソール23は、入力表示部として機能するタッチパネル26を備え、注入ヘッド21及び撮像装置3と有線又は無線で通信できる。このタッチパネル26は、注入プロトコル、装置の入力状態、設定状態、注入結果、及び各種情報を表示できる。注入装置2は、タッチパネル26に代えて、表示部としてのディスプレイと、入力部としてのキーボード等のユーザインタフェースとを備えていてもよい。
【0019】
注入装置2は、コンソール23に代えて、注入ヘッド21に接続された制御装置と、該制御装置に接続され且つ薬液の注入状況が表示される表示部(例えばタッチパネルディスプレイ)とを有していてもよい。この制御装置も、注入プロトコルの生成装置として機能する。また、注入ヘッド21及び制御装置は、スタンド22と一体的に構成することもできる。さらに、スタンド22に代えて天吊部材を設け、該天吊部材を介して天井から注入ヘッド21を天吊することもできる。
【0020】
また、注入装置2は、注入ヘッド21を遠隔操作する遠隔操作装置(例えばハンドスイッチ又はフットスイッチ)を有していてもよい。この遠隔操作装置は、注入ヘッド21を遠隔操作して注入を開始又は停止することができる。さらに、注入装置2は、電源又はバッテリーを有していてもよい。この電源又はバッテリーは、注入ヘッド21又は制御装置のいずれかに設けることができ、これらとは別に設けることもできる。
【0021】
注入ヘッド21は、薬液が充填されたシリンジが搭載されるシリンジ保持部と、注入プロトコルに従ってシリンジ内の薬液を押し出す駆動機構を備えている。また、注入ヘッド21は、駆動機構の動作を入力するための操作部212を有している。操作部212には、例えば駆動機構の前進ボタン、駆動機構の後進ボタン、及び最終確認ボタンが設けられている。さらに、注入ヘッド21は、注入条件、注入状況、装置の入力状態、設定状態、及び各種注入結果が表示されるヘッドディスプレイを備えていてもよい。
【0022】
造影剤が注入される際には、注入ヘッド21に搭載されたシリンジの先端部に延長チューブ等の付属品が接続される。そして、注入準備が完了すると、ユーザーが操作部212の最終確認ボタンを押す。これにより、注入ヘッド21は、注入を開始できる状態で待機する。注入を開始すると、シリンジから押し出された造影剤は、延長チューブを介して被写体の体内へ注入される。
【0023】
また、注入ヘッド21には、RFIDチップ、ICタグ、又はバーコード等のデータキャリアを有するプレフィルドシリンジ、及び種々のシリンジを搭載することができる。そして、注入ヘッド21は、シリンジに取り付けられたデータキャリアの読み取りを行う読取部213(
図2)を備えている。このデータキャリアには、薬液に関する薬液情報が記憶されている。
【0024】
注入装置2は、不図示のサーバー(外部記憶装置)から情報を受信することができ、サーバーへ情報を送信することもできる。また、撮像装置3も、サーバーから情報を受信することができ、サーバーへ情報を送信することもできる。このサーバーは、例えば、RIS(Radiology Information System)、PACS(Picture Archiving and Communication System)、及びHIS(Hospital Information System)である。
【0025】
サーバーには、予め検査オーダーが記憶されている。この検査オーダーは、被写体に関する被写体情報と、検査内容に関する検査情報とを備えている。また、検査情報は、一例として、検査番号(検査ID)、検査部位、検査日時、薬液種類、薬液名称、及び撮像する部位に関する部位情報を含む。また、サーバーは、撮像装置3から送信された画像のデータ等の撮像結果に関する情報と、注入装置2から送信された注入結果に関する情報を記憶することができる。なお、注入装置2及び撮像装置3を操作するために、外部の検像システム又は画像作成用ワークステーションを用いることもできる。
【0026】
[第1実施形態]
続いて、
図2を参照して、造影剤の注入量を決定する注入装置2について説明する。
図2は注入装置2の概略ブロック図である。
【0027】
図2に示すように、注入装置2は、注入量決定プログラム及び制御プログラムを記憶している記憶部24を有しているコンソール23(生成装置)を備えている。この記憶部24は、注入装置2の制御部25が動作するためのシステムワークメモリであるRAM(Random Access Memory)、プログラム若しくはシステムソフトウェアを格納するROM(Read Only Memory)、又はハードディスクドライブを有する。また、記憶部24は、注入量の投与関数及び注入プロトコル算出用の計算式を記憶している。
【0028】
コンソール23は、注入ヘッド21を含む注入装置2の全体を制御するCPUである制御部25と、入力表示部としてのタッチパネル26を有している。ユーザーは、タッチパネル26を介して所定の指令又は情報を入力することができる。さらに、コンソール23は、被写体の身体パラメータと目標値とに基づいて、造影剤の注入量を決定する注入量決定部として機能するプロトコル生成部16を備えている。代替的に、プロトコル生成部16は、制御部25とは別に設けることもできる。
【0029】
制御部25は、記憶部24に実装されたプログラムに対応して各種処理を実行する。これにより、各部が各種機能として論理的に実現される。代替的に、制御部25は、CD(Compact Disc)、及びDVD(Digital Versatile Disc)等の可搬記録媒体、又はインターネット上のサーバー等の外部記憶媒体に記憶されたプログラムに従って各種処理を制御することもできる。また、制御部25は、シリンジに充填された薬液に関する薬液情報を取得する薬液情報取得部11と、被写体情報取得部12とを備えている。被写体の身体パラメータは、被写体情報に含まれている。
【0030】
また、制御部25は、ユーザーが選択した選択部位の部位情報を取得する部位情報取得部13と、選択部位の目標値を取得する目標値取得部14とを備えている。この目標値とは、選択部位の撮像に求められる所望の造影値又は画素値であり、選択部位毎に予め設定するか、又はユーザーがタッチパネル26から入力できる。さらに、目標値取得部14は、目標値の上限値及び下限値、及び目標値の目標持続時間をさらに取得してもよい。この目標持続時間とは、目標値を維持する所望の時間であり、選択部位毎に予め設定するか、又はユーザーがタッチパネル26から入力できる。
【0031】
記憶部24に実装された造影剤の注入量決定プログラムは、生成装置23(コンピュータ)を、被写体の身体パラメータを取得する被写体情報取得部12と、目標値を取得する目標値取得部14と、被写体の身体パラメータと目標値とに基づいて、造影剤の注入量を決定する注入量決定部(プロトコル生成部)16として機能させる。さらに、注入量決定プログラムは、生成装置23(コンピュータ)を、ユーザーが選択した選択部位の部位情報を取得する部位情報取得部13と、決定した注入量に基づき注入プロトコルを生成するプロトコル生成部16として機能させてもよい。この注入量決定プログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記憶されている。
【0032】
[注入量の投与関数]
図3A~
図3Dを参照して、注入量の投与関数について説明する。
図3A~
図3Dは、複数の被験者の身体パラメータ(体重、除脂肪体重、循環血液量、及び体表面積)と、被験者の撮像部位の取得値(造影値)との相関を表すグラフである。
図3A~
図3Dにおいて、縦軸は撮像部位の取得値(HU)を示している。
図3Aの横軸は被験者の体重(kg)を示している。
図3Bの横軸は被験者の除脂肪体重(kg)を示している。
図3Cの横軸は被験者の循環血液量(L)を示している。
図3Dの横軸は被験者の体表面積(m
2)を示している。
【0033】
図3A~
図3Dの取得値は、造影されている撮像部位を撮像して取得された画素値から、造影されていない撮像部位を撮像して取得された画素値を減算して得られた造影値である。しかし、取得値は、造影されている撮像部位を撮像して取得された画素値であってもよい。
【0034】
撮像は、ヨード濃度300mgI/mLの非イオン性造影剤であるイオパミドール製剤100mLを、右手の肘正中皮静脈に3mL/sの注入速度及び33sの注入時間の条件で、20ゲージ留置針によって注入した。すなわち、投与ヨード量が30gIとなるように造影剤を注入した。
【0035】
撮像装置としては、東芝メディカルシステムズ株式会社製の「AquilionONE」(登録商標)を使用した。撮像条件は、管電圧を120kVpに設定し、管電流をAuto mAに設定し(noise index,12 volume EC, 東芝メディカルシステムズ)、回転速度を0.5s/rotation 32×1.0mm collimationに設定し、ビームピッチを0.844に設定した。そして、造影剤を使用しない単純撮像の後、撮像遅延時間を80sに設定して門脈相で腹部を撮像した。また、5mmのスライス厚及び再構成フォルダ関数FC13により再構成した。
【0036】
CT値の測定に際しては、単純撮像及び造影剤を使用した造影撮像のそれぞれの肝門部の断面において、腫瘍、脈管及び肝内胆管を避けて3点のROI(region of interest)を設定した。そして、造影撮像の各ROIのCT値から、単純撮像における同一撮像部位のCT値を減算し、3点の平均値を取得値E(HU)とした。
【0037】
被験者の体重は、株式会社タニタ製の「業務用自動身長計付き体重計WB-510」を使用して測定した。また、体重をW(kg)として身長をH(m)とした場合に、男性被験者の除脂肪体重は、除脂肪体重=1.10W-128(W2/(100H)2)の式で算出した。そして、女性被験者の除脂肪体重は、除脂肪体重=1.07W-148(W2/(100H)2) の式で算出した。また、男性被験者の循環血液量は、循環血液量=0.168H3+0.050W+0.444の式で算出した。そして、女性被験者の循環血液量は、循環血液量=0.250H3+0.063W-0.662の式で算出した。また、被験者の体表面積は、体表面積=W0.444×H0.663×0.008883の式で算出した。
【0038】
図3A~
図3Dに示すように、被験者の身体パラメータと、撮像部位の取得値との間には、反比例に近い関係が成り立っている。また、造影剤単体の注入量と、平衡相における肝実質の取得値とは比例する関係が成り立つ。そこで、被験者の身体パラメータと撮像部位を撮像して取得された取得値との相関を表すデータに対して、下記式(1)によって回帰分析を行うことにより、取得値が被験者の身体パラメータに反比例するような回帰曲線を求める。これにより、求めた回帰曲線に基づいて、造影剤の投与関数を求めることができる。
【0039】
【0040】
このとき、撮像部位の取得値(造影値)をE(HU)、被験者の身体パラメータである体重をB(kg)、造影剤の注入量(ヨード注入量)をm(gI)とする。所定の定数kは、身体パラメータBに対して選択した撮像部位に対応する分布容積を規定するための定数であり、1未満の値である。また、所定の定数bは、投与関数の傾きを調整して偏り(バイアス)を生じさせるための定数である。これにより、投与関数の傾きが緩やかになる結果、体重が高い場合には過剰注入を抑制し、体重が低い場合には過小造影を抑制することができる。
【0041】
各被写体に注入量mの造影剤を注入して得られた撮像部位の取得値Eから、式(1)を用いて曲線回帰を行うことで、定数k及び定数bの値を得ることができる。具体的には、被写体の体重と撮像部位の取得値との相関を表すデータに対して、以下のように回帰分析を行う。すなわち、市販されているソフトウェア「Microsoft Excel」(登録商標)に実装されているソルバーアドインを使用して回帰分析を行う。ソルバーアドインでは、最小二乗法に基づいてカーブフィッティングが実行され、各被験者の体重Bにおける回帰曲線上の取得値Eと測定取得値Eとの間の残差平方和が最小となる結果を得られるように、定数k及び定数bの値を求めた。代替的に、他の手法によって、回帰分析を行ってもよい。
【0042】
ここで、式(1)から、注入量mを求める投与関数として下記式(2)が一意に求められる。式(2)中、ETは目標値である。
【0043】
【0044】
[実施例1]
身体パラメータとして体重を用いる実施例1について説明する。実施例1では、各被験者の体重B(kg)に対して得られた取得値Eのプロット(
図3A)から式(1)による曲線回帰を行った。その結果、定数k=0.0092及び定数b=0.179の値を得て、下記式(3)の回帰式を得た。ここで、注入量mは30gIで固定である。
【0045】
【0046】
造影剤単体の注入量をI(mgI)とすると、式(2)より、下記式(4)の投与関数を得ることができる。目標値ETは、選択部位、すなわち撮像対象である組織の目標造影値である。すなわち、目標値ETは、造影されている撮像部位の目標画素値から、撮像部位の生来の画素値(造影されていない撮像部位を撮像して取得される画素値)を減算して得られる造影値である。代替的に、目標値ETは、造影されている撮像部位の目標画素値であってもよい。
【0047】
【0048】
例えば、目標値ETを50HUに設定すると、体重60kgの被写体に対する造影剤の注入量Iは、36550mgIとなる。つまり、ヨード濃度300mgI/mLの造影剤で換算すると、約122mLの薬液を注入する結果となる。さらに、体重90kgの被写体に対する造影剤の注入量Iは、約50350mgIとなる。従来の比例定数(0.6)を用いた方法で求めた造影剤の注入量が54000mgIであることから、高体重の被写体に対する造影剤の過剰投与を抑制できることが分かる。また、体重30kgの被写体に対する造影剤の注入量Iは、22750mgIとなる。従来の比例定数を用いた方法で求めた造影剤の注入量が18000mgIであることから、低体重の被写体に対する過少投与をも抑制できることが分かる。
【0049】
[実施例2]
同様に身体パラメータとして除脂肪体重を用いる実施例2について説明する。実施例2では、各被験者の除脂肪体重B(kg)に対して得られた取得値Eのプロット(
図3B)から式(1)による曲線回帰を行った。その結果、定数k=0.0125及び定数b=0.142の値を得て、下記式(5)の回帰式を得た。ここで、注入量mは30gIで固定である。
【0050】
【0051】
実施例1と同様に、式(2)より、下記式(6)の投与関数を得ることができる。
【0052】
【0053】
[実施例3]
同様に身体パラメータとして循環血液量を用いる実施例3について説明する。実施例3では、各被験者の循環血液量B(L)に対して得られた取得値Eのプロット(
図3C)から式(1)による曲線回帰を行った。その結果、定数k=0.1456及び定数b=0.132の値を得て、下記式(7)の回帰式を得た。ここで、注入量mは30gIで固定である。
【0054】
【0055】
実施例1と同様に、式(2)より、下記式(8)の投与関数を得ることができる。
【0056】
【0057】
[実施例4]
同様に身体パラメータとして体表面積を用いる実施例4について説明する。実施例4では、各被験者の体表面積B(m
2)に対して得られた取得値Eのプロット(
図3D)から式(1)による曲線回帰を行った。その結果、定数k=0.6171及び定数b=-0.247の値を得て、下記式(9)の回帰式を得た。ここで、注入量mは30gIで固定である。
【0058】
【0059】
実施例1と同様に、式(2)より、下記式(10)の投与関数を得ることができる。
【0060】
【0061】
第1実施形態の投与関数を用いることにより、高体重のときの造影剤の注入量が低下する結果、注入量が過剰となることを抑制できる。さらに、第1実施形態によれば、ユーザーが望む画素値を得るための投与関数を求めることができる。そのため、比例定数のみを用いた投与関数よりも、効果的且つ簡便に目標値を達成することができる。さらに、求められた投与関数から、1HUを得るための造影剤の注入量を求めることもできる。
【0062】
また、投与関数は、性別によって異ならせることができる。具体的には、男性被験者の身体パラメータと撮像部位を撮像して取得された取得値との相関を表すデータに対して、式(1)によって回帰分析を行うことにより、取得値が被験者の身体パラメータに反比例するような回帰曲線を求める。これにより、求めた回帰曲線に基づいて、男性の投与関数を求めることができる。同様に女性被験者についても、女性の投与関数を求めることができる。
【0063】
男性の投与関数と女性の投与関数とは、定数k及び定数bが異なると考えられる。そのため、男性の投与関数と女性の投与関数とをそれぞれ求めることによって、より正確に造影剤注入量を決定することができる。
【0064】
さらに、投与関数は、撮像部位(部位、実質、血管、動脈、静脈、頭、胸、腹又は臓器等)、病変、又は撮像遅延時間(動脈相、門脈相、遅延相又は平衡相等)によって異ならせることができる。例えば、被験者の身体パラメータと特定の臓器を撮像して取得された取得値との相関を表すデータに対して、式(1)によって回帰分析を行うことにより、取得値が被験者の身体パラメータに反比例するような回帰曲線を求める。これにより、求めた回帰曲線に基づいて、特定の臓器の投与関数を求めることができる。
【0065】
また、目標値として目標画素値を使用する場合は、被験者の身体パラメータと撮像部位を撮像して取得された画素値との相関を表すデータに対して、式(1)によって回帰分析を行うことにより、画素値が被験者の身体パラメータに反比例するような回帰曲線を求める。これにより、求めた回帰曲線に基づいて、投与関数を求めることができる。
【0066】
[注入量決定方法]
記憶部24には、予め複数の被験者の身体パラメータと撮像部位を撮像して取得された取得値との相関を表すデータが記憶されている。そして、注入量決定部としてのプロトコル生成部16は、記憶部24から当該データを読み出して、造影剤の投与関数を求める。具体的にプロトコル生成部16は、データに対して回帰分析を行うことにより、取得値が被験者の身体パラメータに反比例するような回帰曲線を求める。すなわち、プロトコル生成部16は、式(1)によって回帰分析を行う。そして、プロトコル生成部16は、求められた回帰曲線に基づいて、造影剤の投与関数を求める。その後、プロトコル生成部16は、求めた投与関数を記憶部24に記憶させる。
【0067】
代替的に、複数の被験者の身体パラメータと撮像部位を撮像して取得された取得値との相関を表すデータから、ユーザーが造影剤の投与関数を求めてもよい。ユーザーは、求めた投与関数を予め記憶部24に記憶させることができる。または、記憶部24には、予め求められた投与関数が記憶されていてもよい。
【0068】
被写体を撮像する際には、ユーザーは、入力表示部としてのタッチパネル26から撮像対象である部位の部位情報、被写体情報及び目標値を入力する。すると、部位情報取得部13は、選択された部位の部位情報を取得して、記憶部24に記憶させる。また、被写体情報取得部12は、入力された被写体情報(身体パラメータ)を取得して、記憶部24に記憶させる。さらに、目標値取得部14は、入力された目標値を取得して、記憶部24に記憶させる。
【0069】
注入量を決定する場合、プロトコル生成部16は、記憶部24から目標値及び被写体情報を読み出す。一例として、プロトコル生成部16は、被写体情報として、被写体の性別及び身体パラメータ(体重)を読み出す。そして、プロトコル生成部16は、被写体が男性であるか又は女性であるかを判断する。被写体が男性であると判断した場合、プロトコル生成部16は、記憶部24から男性の投与関数を読み出す。また、被写体が女性であると判断した場合、プロトコル生成部16は、記憶部24から女性の投与関数を読み出す。
【0070】
さらに、プロトコル生成部16は、記憶部24から部位情報(撮像部位の名称)を取得することができる。この場合、プロトコル生成部16は、取得した部位情報が示す選択部位に関連付けられた投与関数を記憶部24から読み出してもよい。この投与関数も、予め記憶部24に記憶されている。
【0071】
次いで、プロトコル生成部16は、被写体の身体パラメータと目標値とに基づき、投与関数を用いて、注入量を決定する。すなわち、プロトコル生成部16は、取得した目標値及び身体パラメータの値を、読み出した投与関数に代入して、造影剤単体の注入量Iを算出する。代替的に、プロトコル生成部16は、式(2)を用いて造影剤単体の注入量mを決定する。続いて、プロトコル生成部16は、決定した注入量に基づいて注入プロトコルを生成し、記憶部24に記憶させる。この注入プロトコルは、一例として、注入速度(mL/sec)及び注入時間(sec)を備えている。
【0072】
注入プロトコルを生成するときに、例えば、プロトコル生成部16は、薬液情報として記憶部24に記憶された造影剤濃度CM(mgI/mL)を読み出す。そして、プロトコル生成部16は、決定された造影剤の注入量I(mgI)に基づいて、造影剤の合計注入量SUM(mL)を下記式11により求める。
【0073】
【0074】
次に、プロトコル生成部16は、タッチパネル26を介してユーザーが入力した注入時間T(sec)を取得する。そして、プロトコル生成部16は、求めた合計注入量SUMに基づいて、造影剤の注入速度SV(mL/sec)を、下記式12により求める。
【0075】
【0076】
その後、制御部25は、生成された注入プロトコルをタッチパネル26に表示させる。そして、ユーザーは、表示された注入プロトコルを確認し、タッチパネル26に表示されたチェックボタン又は注入ヘッド21の最終確認ボタンを押す。これにより、注入準備が完了して、注入装置2は注入可能状態で待機する。
【0077】
以上説明した第1実施形態の投与関数を用いることにより、低体重の場合の注入量が増加する結果、造影効果が過小となることを抑制できる。また、高体重の場合の注入量が低下する結果、注入量が過剰となることを抑制できる。さらに、目標値のための投与関数を求めることができるため、比例定数のみを用いた投与関数よりも、効果的且つ簡便に目標値を達成できる。
【0078】
[第2実施形態]
図4を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では注入装置2が注入量決定部を備えていたが、第2実施形態では撮像装置3が注入量決定部を備えている。第2実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について説明し、第1実施形態で説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0079】
図4は撮像装置3と注入装置2とを備える撮像システム200の概略ブロック図である。
図4に示すように、注入装置2は、薬液を注入する注入ヘッド21と、コンソール23とを備えている。そして、コンソール23は、注入ヘッド21を含む注入装置2の全体を制御する制御部25と、入力表示部としてのタッチパネル26を有している。
【0080】
撮像装置3は、表示部としてのディスプレイ33と、入力部34と、注入プロトコルの生成装置323(例えばCPU)と、造影剤の注入量決定プログラムを記憶している記憶部324を有している。この記憶部324は、生成装置323が動作するためのシステムワークメモリであるRAM、プログラム若しくはシステムソフトウェア等を格納するROM、又はハードディスクドライブを有する。また、記憶部324は、注入量の投与関数、及び注入プロトコル算出用の計算式を記憶している。
【0081】
生成装置323は、記憶部324に実装されたプログラムに対応して各種処理を実行する。これにより、各部が各種機能として論理的に実現される。代替的に、生成装置323は、可搬記録媒体又は外部記憶媒体に記憶されたプログラムに従って各種処理を制御することもできる。また、生成装置323は、薬液の情報を取得する薬液情報取得部311と、被写体の情報を取得する被写体情報取得部312とを備えている。
【0082】
また、生成装置323は、ユーザーが選択した選択部位の部位情報を取得する部位情報取得部313と、選択部位の目標値を取得する目標値取得部314とを備えている。さらに、生成装置323は、身体パラメータと目標値とに基づいて、造影剤の注入量を決定する注入量決定部として機能するプロトコル生成部316を備えている。
【0083】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に注入量が決定される。すなわち、ユーザーは、入力部34から所望の部位の部位情報、被写体情報及び目標値を入力する。すると、部位情報取得部313は、選択された部位の部位情報を取得して、記憶部324に記憶させる。また、被写体情報取得部312は、入力された被写体情報を取得して、記憶部324に記憶させる。さらに、目標値取得部314は、入力された目標値を取得して、記憶部324に記憶させる。
【0084】
注入量を決定する場合、プロトコル生成部316は、記憶部324から目標値及び被写体情報を読み出す。具体的に、プロトコル生成部316は、被写体情報として、被写体の性別及び身体パラメータ(体重)を読み出す。そして、プロトコル生成部316は、被写体が男性であるか又は女性であるかを判断する。被写体が男性であると判断した場合、プロトコル生成部316は、記憶部324から男性の投与関数を読み出す。また、被写体が女性であると判断した場合、プロトコル生成部316は、記憶部324から女性の投与関数を読み出す。
【0085】
次いで、プロトコル生成部316は、取得した目標値及び身体パラメータに基づき、読み出した投与関数を用いて造影剤の注入量を決定する。続いて、プロトコル生成部316は、決定した注入量に基づいて注入プロトコルを生成し、記憶部324に記憶させる。その後、生成装置323は、生成された注入プロトコルをディスプレイ33に表示させると共に、注入装置2に生成された注入プロトコルを送信する。そして、ユーザーは、表示された注入プロトコルを確認し、注入装置2のタッチパネル26に表示されたチェックボタン又は注入ヘッド21の最終確認ボタンを押す。これにより、注入準備が完了して、注入装置2は注入可能状態で待機する。
【0086】
以上説明した第2実施形態によっても、投与関数を用いることにより、低体重の場合の注入量が増加する結果、造影効果が過小となることを抑制できる。また、高体重の場合の注入量が低下する結果、注入量が過剰となることを抑制できる。さらに、目標値のための投与関数を求めることができるため、比例定数のみを用いた投与関数よりも、効果的且つ簡便に目標値を達成できる。
【0087】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、各実施形態及び各変形例は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0088】
例えば、注入量決定部は、撮像装置3及び注入装置2とは別体に構成することもできる。この場合、注入量決定部は注入装置2又は撮像装置3と有線又は無線で接続され、注入装置2又は撮像装置3は外部の注入量決定部が生成した注入量を受信する。そして、注入装置2又は撮像装置3は、受信した注入量に基づいて注入プロトコルを生成する。また、注入装置2又は撮像システム100,200は、注入結果(注入履歴)に関する情報を、ネットワーク経由で外部記憶装置に送信し記憶させることもできる。
【0089】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0090】
[付記1]
造影剤の注入量を決定するプログラムであって、注入プロトコルの生成装置を、
被写体の身体パラメータを取得する被写体情報取得部、
目標値を取得する目標値取得部、及び
前記被写体の身体パラメータと前記目標値とに基づいて、造影剤の注入量を決定する注入量決定部として機能させ、
前記注入量決定部は、
被験者の身体パラメータと撮像部位を撮像して取得された取得値との相関を表すデータに対して回帰分析を行うことにより、前記取得値が前記被験者の身体パラメータに反比例するような回帰曲線を求め、
前記回帰曲線に基づいて、造影剤の投与関数を求め、
前記被写体の身体パラメータと前記目標値とに基づき、前記投与関数を用いて前記注入量を決定する、注入量決定プログラム。
【0091】
[付記2]
造影剤の注入量を決定するプログラムであって、注入プロトコルの生成装置を、
被写体の身体パラメータを取得する被写体情報取得部、
目標値を取得する目標値取得部、及び
前記身体パラメータと前記目標値とに基づいて、造影剤の注入量を決定する注入量決定部として機能させ、
前記注入量決定部は、E
Tを前記目標値、Bを前記身体パラメータ、mを前記注入量、k及びbを所定の定数としたときに、下記式を用いて前記注入量を決定する、注入量決定プログラム。
【0092】
造影剤の注入量を決定するプログラムであって、コンピューターに、
被験者の身体パラメータと撮像部位を撮像して取得された取得値との相関を表すデータに対して回帰分析を行うことにより、前記取得値が前記被験者の身体パラメータに反比例するような回帰曲線を求めさせ、
前記回帰曲線に基づいて、造影剤の投与関数を求めさせ、
被写体の身体パラメータと、目標値とを取得させ、
前記被写体の身体パラメータと前記目標値とに基づき、前記投与関数を用いて造影剤の注入量を決定させる、注入量決定プログラム。
【符号の説明】
【0093】
2:注入装置、12:被写体情報取得部、14:目標値取得部、16:注入量決定部、24:記憶部、312:被写体情報取得部、314:目標値取得部、316:注入量決定部、324:記憶部