(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】搬送装置及びそれを備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 7/04 20060101AFI20220215BHJP
G05B 19/416 20060101ALI20220215BHJP
B23B 3/30 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
B23Q7/04 A
G05B19/416 E
B23B3/30
(21)【出願番号】P 2017168231
(22)【出願日】2017-09-01
【審査請求日】2020-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 友基
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-141872(JP,A)
【文献】特開2011-138463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/04,7/14,
G05B 19/404,19/409,19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを工作機械にロード及びアンロードする搬送装置
を備えた工作機械であって、
前記搬送装置は、前記工作機械の機外領域における早送りオーバライド設定値の機外設定値入力手段と、前記工作機械の機内領域における早送りオーバライド設定値の機内設定値入力手段とを備え、
前記機外設定値入力手段と機内設定値入力手段とはそれぞれ異なる早送りオーバライド設定値の入力が可能であ
り、
前記機外設定値入力手段又は/及び前記機内設定値入力手段は複数の区分に分けた入力手段を有
し、
前記工作機械の機内領域は、工作機械内に対向する一対の主軸を有し、
前記搬送装置に有するチャック部にて一方の主軸にワークの素材を引き渡し、他方の主軸から加工済みのワークを引き取る動作であり、
前記搬送装置は前記工作機械に備えたNCプログラムにて制御さ
れ、
前記工作機械の操作盤に前記早送りオーバライド設定値の機外設定値入力手段と機内設定値入力手段とを有することを特徴とする
搬送装置付き工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械にワークをロード及びアンロードする搬送装置の搬送制御に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機本体部にワークをロード(ローディング)及びアンロード(アンローディング)を行うためのガントリーローダ等の搬送装置を備えた工作機械が、例えば特許文献1等に開示されている。
搬送装置は、ワークを例えば前工程、被加工素材(ワーク素材)のストッカ等から工作機本体部に向けて搬送する又は次工程、完成品ストッカ等に向けて搬送する機外領域と、例えば主軸のチャックにワークの引き渡し、主軸からワークの引き取り等の機内領域とに区分される。
ここで、ワークの加工生産性(加工サイクル)に直接的に影響を与えるのは、前記機内領域における搬送時間であり、機外領域における搬送時間は加工サイクル内に収まる限りにおいて、この加工サイクルに影響を与えない。
しかし、従来は、この機外領域における搬送速度は機内領域と同じであったために、機外領域においても必要以上に速い搬送速度になっていた。
搬送速度が速いと、それだけ駆動部に大きな負荷がかかり、電力の消費が増大するだけでなく、部品の寿命が短くなったり、機外動作の振動が工作機本体部に伝わり、加工精度に影響を与える恐れもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、消費電力の低減及び負荷低減による部品の長寿命化に効果的なワークの搬送装置及びそれを備えた工作機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ワークを工作機械にロード及びアンロードする搬送装置であって、前記搬送装置は、前記工作機械の機外領域における早送りオーバライド設定値の機外設定値入力手段と、前記工作機械の機内領域における早送りオーバライド設定値の機内設定値入力手段とを備え、前記機外設定値入力手段と機内設定値入力手段とはそれぞれ異なる早送りオーバライド設定値の入力が可能であることを特徴とする。
なお、機外設定値入力手段又は/及び前記機内設定値入力手段は複数の区分に分けた入力手段を有していてもよい。
ここで複数の区分に分けるとは、機外領域において付加装置の計測装置やストッカの位置まで搬送する機外領域と、計測装置や完成品ストッカにワークを引き渡す機外領域等、複数の区分に分け、それぞれに適した早送りオーバライドの設定値に分けて入力できることをいう。
【0006】
前記搬送装置は前記工作機械に備えたNCプログラムにて制御されているのが好ましい。
また、工作機械の操作盤に前記早送りオーバライド設定値の機外設定値入力手段と機内設定値入力手段とを備え、前記オーバライド設定値による省エネルギー電力の表示手段を有していてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、加工サイクルに直接的な影響を与えない機外領域の早送り速度を、この加工サイクル内に収まる範囲にて遅くすることができる。
機外領域の早送り速度を下げることで、その分だけ消費電力量が低減され、低負荷により部品の寿命も長寿命化できる。
また、機外領域における搬送の動作の振動が小さくなり、機内で行われている機械加工への影響が小さくなり、ワークの加工精度が安定する。
【0008】
本発明は、早送りオーバライドの設定値を変更するだけなので、加工プログラムそのものの変更が不要であるため、工作機械のオペレータが操作盤上で入力することもできる。
また、早送りオーバライド設定値の入力値を下げることでのその値に合せた省エネルギー電力を表示することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】早送りオーバライド設定値の入力及び表示画面の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に工作機械に備えられた搬送装置10の動作の例を示す。
図1には図示を省略したが、工作機本体部20の上部に走行レール部を設け、ガントリーローダからなる搬送装置10が取り付けられている。
搬送装置10は、X,Y,Z軸方向にサーボモータ等の駆動源により位置制御されている。
この位置制御は、工作機械のNCプログラムにより制御されている。
【0011】
工作機本体部20内には、ワークをチャック保持し、回転制御する主軸22a,22bや、タレット等の刃物台23a,23b等が設けられ、NC制御によりワークに機械加工する。
本実施例では、搬送装置10のチャック部10aにてワークの素材を保持し、主軸22aに渡し、対向する主軸22bから加工完成品をチャック部10bにて引き取る例になっている。
これらの動作は、主軸の回転等を停止させて行われることから、加工サイクル内の動作であり、この動作を本明細書では機内領域21の動作と表現する。
これに対して、ワーク素材を工作機本体部20の機外にてワーク素材を前工程から搬送、あるいは加工完成品を次工程に搬送する動作を機外領域11の動作と表現する。
なお、本実施例では、工作機本体部20に対しては機外領域になるが、ワークの計測装置やストッカとの引き渡し動作を付加装置の領域12と表現する。
【0012】
図2に、操作盤の入力部及び表示例を示す。
機内領域21での搬送装置10の早送り速度を100%とし、機外領域(1)11の早送りオーバライド設定値を70%,付加装置領域12の早送りオーバライド設定値を50%に入力設定した例になっている。
この入力操作は、オペレータが実行する。
またこれに対する省エネ電力の値が表示される例になっている。
【符号の説明】
【0013】
10 搬送装置
11 機外領域
12 付加装置の領域
20 工作機本体部
21 機内領域