(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】排水装置
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20220215BHJP
F04B 49/02 20060101ALI20220215BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
F04B49/06 311
F04B49/02 311
F04D15/00 B
F04D15/00 D
F04D15/00 H
(21)【出願番号】P 2018076829
(22)【出願日】2018-04-12
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】502002407
【氏名又は名称】川本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】深川 豊明
(72)【発明者】
【氏名】玉川 充
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 邦宜
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-207030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
F04D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水タンク内に配置され、前記貯水タンク内の水を前記貯水タンク外へ排水する排水装置において、
第1のモータ及び前記貯水タンク内の基準水位に相当する高さ位置に配置された第1の通信部を有する第1のポンプ装置と、
第2のモータ及び前記第1の通信部と連続或いは間欠的に通信を行う第2の通信部を有する第2のポンプ装置と、
前記第1の通信部と前記第2の通信部との間で送受信が行われない時に、前記第1のポンプ装置及び前記第2のポンプ装置の少なくとも一方を始動し、前記第1の通信部と前記第2の通信部との間で送受信が行われた時に、前記第1のモータ及び前記第2のモータのうち動作中のモータを停止させる制御部と、
を具備する排水装置。
【請求項2】
前記第1のポンプ装置及び前記第2のポンプ装置は、それぞれ、筐体内の温度を測定する温度検出センサと、
前記モータを駆動し、前記モータへの印加電流
及び前記モータの運転周波数の情報を前記制御部に送信するインバータとを具備し
、
前記制御部は、前記温度検出センサにより検出された温度が設定温度以上、前記印加電流
が設定電流値
以下、前記運転周波数
が設定周波数以上のいずれかを満たした時に、前記モータを停止する請求項1に記載の排水装置。
【請求項3】
貯水タンク内に配置され、前記貯水タンク内の水を前記貯水タンク外へ排水する複数のポンプ装置を連携制御する排水装置において、
前記複数のポンプ装置にそれぞれ設けられたモータと、
前記複数のポンプ装置にそれぞれ設けられ、前記複数のポンプ装置の相互間で情報交換を行うための通信部と、
前記通信部相互間で送受信が行われない時に、いずれかのモータを始動し、前記通信部相互間で送受信が行われた時に、前記複数のモータのうち動作中のモータを停止させる制御部と、
を具備する排水装置。
【請求項4】
前記複数のポンプ装置は、それぞれ、筐体内の温度を測定する温度検出センサと、
前記モータを駆動し、前記モータへの印加電流
及び前記モータの運転周波数の情報を前記制御部に送信するインバータとを具備し
、
前記制御部は、前記温度検出センサにより検出された温度が設定温度以上、前記印加電流
が設定電流値
以下、前記運転周波数
が設定周波数以上のいずれかを満たした時に、前記モータを停止する請求項3に記載の排水装置。
【請求項5】
前記複数のポンプ装置は、それぞれ前記ポンプ装置の積算運転時間を記憶する記憶部を具備し、
前記ポンプ装置の始動順序は、前記通信部によって情報交換して得られた、各ポンプ装置の前記積算運転時間に基づく順序によって決定する請求項3に記載の排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水タンク等に貯留された水を排水する排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚水等の送水に用いる排水装置には、制御装置が収納されたヘッドの下端に、モータ及びポンプを設けた水中ポンプ装置を用いる技術が知られている。水中ポンプ装置は、水位検出センサを備え、汚水の液位を検出して駆動及び停止の制御を行う。水位検出装置としては、例えばフロートスイッチが用いられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、1台のポンプに複数の無線通信部を設けて、水中では無線通信できない性質を利用して、水位制御を行う技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-286990号公報
【文献】特開2017-207030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フロートスイッチを用いた自動運転型の水中ポンプ装置にあっては次のような問題があった。すなわち、フロートスイッチはある程度の大きさがあるため、狭い設置場所に水中ポンプ装置を設置する場合に、電源ケーブルや配管等に接触して正確な水位が検出できない虞があった。また、フロートスイッチ以外の水位検出装置を用いた場合には、水位検出装置自体のコストや、取付作業によって製造コストが高くなる虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、水位検出装置を無くし、部品コストや製造コストを低減することができる排水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、貯水タンク内に配置され、前記貯水タンク内の水を前記貯水タンク外へ排水する排水装置において、前記貯水タンク内の基準水位に相当する高さ位置に配置された第1の通信部を有する第1のポンプ装置と、前記第1の通信部と連続或いは間欠的に通信を行う第2の通信部を有する第2のポンプ装置と、前記第1の通信部と前記第2の通信部との間で送受信が行われない時に、前記第1のポンプ装置及び前記第2のポンプ装置の少なくとも一方を始動し、前記第1の通信部と前記第2の通信部との間で送受信が行われた時に、前記第1のポンプ装置及び前記第2のポンプ装置のうち動作中のポンプ装置を停止させる制御部とを具備する。
【発明の効果】
【0008】
そこで、本発明は、水位検出装置を無くし、部品コストや製造コストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る排水装置を示す説明図。
【
図2】同排水装置の交互運転動作の一例を示すフロー図。
【
図3】同排水装置の交互運転動作における停止条件判断動作の一例を示すフロー図。
【
図4】同排水装置の交互・並列運転動作の一例を示すフロー図。
【
図5】同排水装置の交互・並列運転動作における停止条件判断動作の一例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る排水装置10の構成を示す説明図である。なお、
図1中100は貯水タンク、200は吐出管を示している。
図1中Lはポンプの動作の始動・停止の基準となる基準水位を示している。
【0011】
排水装置10は、貯水タンク100内に配置された一対のポンプ装置20A及びポンプ装置20Bを備えている。なお、
図1中90は、排水装置10の運転状態を通信部34A及び通信部34Bとの通信によって把握することができる携帯型の情報端末を示している。情報端末としては、スマートフォン、タブレット、ノートパソコン等を利用できる。ポンプ装置20A,20Bは、貯水タンク100内に貯留された水を外部配管200に向けて圧送可能に形成されている。
【0012】
ポンプ装置20Aは、円筒状の筐体21Aと、この筐体21Aの下部に設けられたポンプ22Aと、筐体21A内に設けられ、ポンプ22Aを駆動するモータ23Aと、筐体21Aの上部に設けられた電装部30Aを備えている。
【0013】
ポンプ22Aは、筐体21Aの下部に設けられた開口部22aから貯水タンク100内の水を吸い上げ、吐出口22bから吐出する。
【0014】
電装部30Aは、制御部31A、インバータ32A、温度検出センサ33A、通信部34A及び時間計測部35Aを備える。制御部31Aと、インバータ32A、温度検出センサ33A、通信部34A及び時間計測部35Aとは、システムバスにより接続されている。制御部31Aは、予め定められたプログラムに従い、通信部34Aの出力値に基づいて制御を行う。制御部31Aは、「周波数一定モード」及び「電流値一定モード」を必要に応じて切り換えることが可能である。制御部31Aを動作させるプログラムは、排水装置10を後述するように交互運転又は交互並列運転のいずれかを実行させるものである。また、制御部31Aは、モータ23Aの運転時間を計測し、積算運転時間として記憶する。さらに、制御部31Aは、ポンプ22Aを識別するための固有の識別番号を記憶している。インバータ32Aは、モータ23Aを駆動すると共に、モータ23Aへの印加電流、及び、モータ23Aの運転周波数の情報を制御部31Aに送信する。温度検出センサ33Aは、電装部30Aの内部温度を計測する。通信部34Aは、基準水位Lの高さ位置に設置されている。通信部34Aは、他方のポンプ装置20Bの通信部34Bとの間で状態信号、すなわち自機の状態(運転/停止状態、タイマ-値等)を表す信号や、相手機に対して運転の許可又は禁止を指示する信号等の通信を行う。時間計測部35Aは、ポンプ22Aの積算運転時間、始動からの運転時間で定義された時間等を計測する。
【0015】
ポンプ装置20Bは、円筒状の筐体21Bと、この筐体21Bの下部に設けられたポンプ22Bと、筐体21B内に設けられ、ポンプ22Bを駆動するモータ23Bと、筐体21Bの上部に設けられた電装部30Bを備えている。
【0016】
ポンプ22Bは、筐体21Bの下部に設けられた開口部22aから貯水タンク100内の水を吸い上げ、吐出口22bから吐出する。
【0017】
電装部30Bは、制御部31B、インバータ32B、温度検出センサ33B、通信部34B及び時間計測部35Bを備える。制御部31Bと、インバータ32B、温度検出センサ33B、通信部34B及び時間計測部35Bとは、システムバスにより接続されている。制御部31Bは、予め定められたプログラムに従い、通信部34Bの出力値に基づいて制御を行う。制御部31Bは、「周波数一定モード」及び「電流値一定モード」を必要に応じて切り換えることが可能である。制御部31Bを動作させるプログラムは、排水装置10を後述するように交互運転又は交互並列運転のいずれかを実行させるものである。また、制御部31Bは、モータ23Bの運転時間を計測し、積算運転時間として記憶する。さらに、制御部31Bは、ポンプ22Bを識別するための固有の識別番号を記憶している。インバータ32Bは、モータ23Bを駆動すると共に、モータ23Bへの印加電流、及び、モータ23Bの運転周波数の情報を制御部31Bに送信する。温度検出センサ33Bは、電装部30Bの内部温度を計測する。通信部34Bは、基準水位Lの高さ位置に設置されている。通信部34Bは、他方のポンプ装置20Aの通信部34Aとの間で状態信号、すなわち自機の状態(運転/停止状態、タイマ-値等)を表す信号や、相手機に対して運転の許可又は禁止を指示する信号等の通信を行う。時間計測部35Bは、ポンプ22Bの積算運転時間、始動からの運転時間等を計測する。
【0018】
情報端末90は、上述した各ポンプ装置20A及びポンプ装置20Bの通信部34A及び通信部34Bと通信を行うことで、各ポンプ装置20の稼働状態(運転/停止/故障状態等)を取得し、表示部91に表示する。
【0019】
ポンプ装置20Aの通信部34Aとポンプ装置20Bの通信部34Bは、連続的又は間欠的に状態信号の通信を行っており、この時の周波数は、例えば、100MHz以上の範囲である。この範囲の周波数の信号は水によって遮断される。
【0020】
貯水タンク100には、外部から水が流入する。基準水位Lは、全てのポンプ装置20A,20Bを停止する停止水位である。
【0021】
以下、このように構成された排水装置10によって行われる排水動作について説明する。始めに、交互運転動作について、
図2及び
図3のフロー図に沿って説明する。交互運転動作とは、ポンプ装置20A,20Bのいずれか一方のみを運転する動作である。なお、この例においては、ポンプ装置20Aが先に動作し、次にポンプ装置20Bが動作するものとする。この順については、適宜決めることができ、例えば、最初に始動する方は、積算運転時間を比較し、短い方とするとよい。あるいは、交互に始動するようにしてもよい。勿論、ランダムであってもよく、適宜定めることが可能である。
【0022】
使用者が電源をONにすると、制御部31A及び制御部31Bが起動する(ステップST10)。制御部31Aと制御部31Bは無線通信を開始し、初期設定を行う(ステップST11)。このとき、情報端末90への情報通信が開始され、表示部91にポンプ装置20A及びポンプ装置20Bの稼働状況が表示される。制御部31Aは、ポンプ22Aの動作の停止を確認する(ステップST12)。これにより、制御部31Aは、ポンプ22Aを運転許可とする。制御部31Aは、通信部34Aにて無線の受信が行われているか否かを判定する(ステップST13)。この場合、無線の受信が行われていなければ、貯水タンク100の液面が基準水位Lを超えたと判定する。制御部31Aは、無線の受信が無く、貯水タンク100の液面が基準水位Lを超えたと判定したならば、ポンプ22Aを始動する(ステップST14)。
【0023】
次に、制御部31Aは、停止条件の第1段階として、通信部34Aにて無線の受信が行われているか否かを判定する(ステップST15)。この場合、無線の受信が行われていれば、貯水タンク100の液面が基準水位Lを下回ったと判定する。このとき、制御部31Aは、ポンプ22Aの運転情報を、通信部34Aからポンプ装置20Bの制御部31Bへと送信する。次に、制御部31Aは、停止条件の第2段階を満たしたか否かを判定する(ステップST16)。ステップST16における判定フローについては
図3に示すステップST16a~ステップST16bにより説明する。
【0024】
制御部31Aは、温度検出センサ33Aの温度が設定温度以上か否かを判定する(ステップST16a)。そして、設定温度未満であれば、制御部31AはステップST16bに進み(ステップST16aのNo)、設定温度以上であれば制御部31AはステップST17に進む(ステップST16aのYes)。
【0025】
制御部31Aは、モータ23Aへの印加電流が設定電流以下か否か(電流値一定モードの場合)、又は、モータ23Aの運転周波数が設定周波数以上か否か(周波数一定モードの場合)を判定する(ステップST16b)。そして、設定電流を超えている、又は、設定周波数未満であれば、制御部31AはステップST16bに戻り(ステップST16bのNo)、設定電流以下、又は、設定周波数以上であれば、制御部31AはステップST17に進む(ステップST16bのYes)。
【0026】
なお、ステップST16における停止条件は、水位が基準水位Lより低下しており、かつ、ポンプ22Aが空転していることである。すなわち、ポンプ22Aが空転している場合は、ポンプ22Aを駆動するモータ23Aに供給される電流値は、揚水時の電流値より小さい値となると共に、回転数が増加する。また、ポンプ22Aが水に浸されていないため、温度が上昇する状態である。
【0027】
図2の説明に戻る。
制御部31Aは、ポンプ22Aを停止する(ステップST17)。これにより、制御部31Aは、ポンプ22Aを運転禁止とする。制御部31Aは、ポンプ22Aが停止した情報を、通信部34Aからポンプ装置20Bの制御部31Bへと送信する(ステップST18)。制御部31Aは、ポンプ22Aの停止を確認して待機する(ステップST18)。
【0028】
制御部31Aは、次に無線通信が無くなるまで待機し(ステップST19)、さらに無線通信が再開するまで待機する(ステップST20)。無線通信が再開すると、制御部31Aは、ポンプ22Aの動作の停止を確認し、ステップST12に戻る(ステップST21)。これにより、制御部31Aは、ポンプ22Aを運転許可とする。
【0029】
一方、制御部31Bは無線通信を開始し、初期設定を行う(ステップST31)。制御部31Bは、ポンプ22Bの動作の停止を確認する(ステップST32)。これにより、制御部31Bは、ポンプ22Bを運転禁止とする。制御部31Bは、通信部34Bにて無線の受信が行われているか否かを判定する(ステップST33)。この場合、無線の受信が行われていなければ、貯水タンク100の液面が基準水位Lを超えたと判定する。
【0030】
制御部31Bは、無線の受信が開始され、貯水タンク100の液面が基準水位Lを低下したと判定した場合、上述したようにポンプ22Aが停止信号を受ける(ステップST35)。これにより、制御部31Bは、ポンプ22Bを運転許可とし、運転対象となるポンプがポンプ22Aからポンプ22Bに切り替える。
【0031】
制御部31Bは、通信部34Bにて無線の受信が行われているか否かを判定する(ステップST36)。この場合、無線の受信が行われていなければ、貯水タンク100の液面が基準水位Lを超えたと判定する。制御部31Bは、無線の受信が無く、貯水タンク100の液面が基準水位Lを超えたと判定したならば、ポンプ22Bを始動する(ステップST37)。
【0032】
次に、制御部31Bは、停止条件の第1段階として、通信部34Bにて無線の受信が行われているか否かを判定する(ステップST38)。この場合、無線の受信が行われていれば、貯水タンク100の液面が基準水位Lを下回ったと判定する。次に、制御部31Bは、停止条件の第2条件を満たしたか否かを判定し、停止条件を満たしたらステップST39に進む。なお、ステップST39は、上述したステップST16と同じ動作であるため、詳細は省略する。
【0033】
なお、ステップST39における停止条件は、水位が基準水位Lより低下しており、かつ、ポンプ22Bが空転していることである。すなわち、ポンプ22Bが空転している場合は、ポンプ22Bを駆動するモータ23Bに供給される電流値は、揚水時の電流値より小さい値となると共に、回転数が増加する。また、ポンプ22Bが水に浸されていないため、温度が上昇する状態である。
【0034】
制御部31Bは、ポンプ22Bを停止する(ステップST40)。これにより、制御部31Bは、ポンプ22Bを運転禁止とする。制御部31Bは、ポンプ22Bが停止した情報を、通信部34Bからポンプ装置20Aの制御部31Aへと送信し(ステップST41)、ステップ32に戻る。これにより、制御部31Bは、運転対象となるポンプをポンプ22Bからポンプ22Aに切り替える。
【0035】
排水装置10では、このような制御が行われると、ポンプ装置20Aが始動条件を満たして始動した後、停止条件が満たされると、ポンプ装置20Aは運転禁止となり、ポンプ装置20Bの運転が許可となる。そして、ポンプ装置20Bが始動条件を満たして始動した後、停止条件が満たされると、ポンプ装置20Bは運転禁止となり、ポンプ装置20Aの運転が許可となる。このようなサイクルが繰り返されることで、一対のポンプ装置20A及びポンプ装置20Bは交互運転することになる。
【0036】
このように一対のポンプ装置20A及びポンプ装置20Bが交互運転する場合において、排水装置10は、ポンプ装置20Aの始動・停止及びポンプ装置20Bの始動・停止の基準となる水位検出を通信部34Aと通信部34Bとの間の送受信の有無によって行うことができる。このため、水位検出センサを用いることなく、ポンプ装置20A及びポンプ装置20Bの始動・停止を行うことが可能となる。
【0037】
次に、交互並列運転動作について、
図4及び
図5に示すフロー図に沿って説明する。交互並列運転動作とは、基準水位Lを超えた場合は両方共に運転する動作である。ポンプ装置20A,20Bのうち、先に始動する方を主機(始動優先権有)、後に始動する方を従機(始動優先権無)とする。主機と従機は、後述するように切り替えられる他、電源ON時に、積算運転時間やランダム、交互など、適宜定めることが可能である。
【0038】
使用者が電源をONにすると、制御部31A及び制御部31Bが起動する(ステップST60)。ここでは、ポンプ装置20Aを主機とする。制御部31Aと制御部31Bは無線通信を開始し、初期設定を行う(ステップST61)。このとき、情報端末90への情報通信が開始され、表示部91にポンプ装置20A及びポンプ装置20Bの稼働状況が表示される。制御部31Aは、ポンプ22Aの動作の停止を確認する(ステップST62)。これにより、制御部31Aは、主機であるポンプ22Aを運転許可とする。制御部31Aは、通信部34Aにて無線の受信が行われているか否かを判定する(ステップST63)。この場合、制御部31Aは、通信部34Aと通信部34Bとの間で無線の受信が行われていなければ、貯水タンク100の液面が基準水位Lを超えたと判定する。制御部31Aは、無線の受信が無く、貯水タンク100の液面が基準水位Lを超えたと判定したならば、ポンプ22Aを始動する(ステップST64)。
【0039】
次に、制御部31Aは、停止条件の第1段階として、互いの運転状況を確認する信号を送信することで、通信部34Aにて無線の受信が行われているか否かを判定する(ステップST65)。この場合、無線の受信が行われていれば、貯水タンク100の液面が基準水位Lを下回ったと判定する。制御部31Aと制御部31Bは、通信部34Aと通信部34Bを介して互いの運転状況を送受信する。次に、制御部31Aは、停止条件の第2段階を満たしたか否かを判定する(ステップST66)。ステップST66における判定フローについては
図5に示すステップST66a~ステップST66bにより説明する。
【0040】
制御部31Aは、温度検出センサ33Aの温度が設定温度以上か否かを判定する(ステップST66a)。そして、設定温度未満であれば、制御部31AはステップST66bに進み(ステップST66aのNo)、設定温度以上であれば制御部31AはステップST67に進む(ステップST66aのYes)。
【0041】
制御部31Aは、モータ23Aへの印加電流が設定電流以下か否か(電流値一定モードの場合)、又は、モータ23Aの運転周波数が設定周波数以上か否か(周波数一定モードの場合)を判定する(ステップST66b)。そして、設定電流を超えている、又は、設定周波数未満であれば、制御部31AはステップST66bに戻り(ステップST66bのNo)、設定電流以下、又は、設定周波数以上であれば、制御部31AはステップST17に進む(ステップST66bのYes)。
【0042】
なお、ステップST66における停止条件は、水位が基準水位Lより低下しており、かつ、ポンプ22Aが空転していることである。すなわち、ポンプ22Aが空転している場合は、ポンプ22Aを駆動するモータ23Aに供給される電流値は、揚水時の電流値より小さい値となると共に、回転数が増加する。また、ポンプ22Aが水に浸されていないため、温度が上昇する状態である。
【0043】
図4の説明に戻る。
制御部31Aは、ポンプ22Aを停止する(ステップST67)。これにより、制御部31Aは、ポンプ22Aを始動優先権の無い運転許可とする。制御部31Aは、無線通信が有りと判断して待機する(ステップST68)。このとき、制御部31Aと制御部31Bは、通信部34Aと通信部34Bを介して互いの運転状況を送受信する。
【0044】
制御部31Aは、次に無線通信が無くなるまで待機する(ステップST69)。このとき、制御部31Aと制御部31Bは、通信部34Aと通信部34Bを介して互いの運転状況を送受信する。続いて、無線通信が行われなくなると例えば3分のタイマー計測が行われ、引き続き無線通信が無いと判定されると(ステップST70)、ポンプ22Aを始動し、並列運転を開始する(ステップST71)。
【0045】
次に、制御部31Aは、停止条件の第1段階として、互いの運転状況を確認する信号を送信することで、通信部34Aにて無線の受信が行われているか否かを判定する(ステップST72)。この場合、無線の受信が行われていれば、貯水タンク100の液面が基準水位Lを下回ったと判定する。制御部31Aと制御部31Bは、通信部34Aと通信部34Bを介して互いの運転状況を送受信する。次に、制御部31Aは、停止条件の第2段階を満たしたか否かを判定する(ステップST73)。なお、ステップST73は、上述したステップST66と同じ動作であるため、詳細は省略する。
【0046】
なお、ステップ72及びステップST73における停止条件は、水位が基準水位Lより低下しており、かつ、ポンプ22Aが空転していることである。すなわち、ポンプ22Aが空転している場合は、ポンプ22Aを駆動するモータ23Aに供給される電流値は、揚水時の電流値より小さい値となると共に、回転数が増加する。また、ポンプ22Aが水に浸されていないため、温度が上昇する状態である。
【0047】
制御部31Aは、ポンプ22Aを停止する(ステップST74)。これにより、制御部31Aは、ポンプ22Aを始動優先権の有る運転許可とする。制御部31Aは、無線通信が有りと判断して待機する(ステップST75)。このとき、制御部31Aと制御部31Bは、通信部34Aと通信部34Bを介して互いの運転状況を送受信する。そして、制御部31Aはステップ62に戻る。
【0048】
一方、制御部31Bは、ポンプ22Bの動作の停止を確認する(ステップST82)。これにより、制御部31Bは、従機であるポンプ22Bを始動優先権の無い運転許可とする。制御部31Bは、通信部34Bにて無線の受信が行われているか否かを判定する(ステップST83)。続いて、無線通信が行われなくなると例えば3分のタイマー計測が行われ、引き続き無線通信が無いと判定されると(ステップST84)、ポンプ22Bを始動し、並列運転を開始する(ステップST85)。
【0049】
次に、制御部31Bは、停止条件の第1段階として、互いの運転状況を確認する信号を送信することで、通信部34Bにて無線の受信が行われているか否かを判定する(ステップST86)。この場合、無線の受信が行われていれば、貯水タンク100の液面が基準水位Lを下回ったと判定する。制御部31Bと制御部31Aは、通信部34Bと通信部34Aを介して互いの運転状況を送受信する。次に、制御部31Bは、停止条件の第2段階を満たしたか否かを判定する(ステップST87)。なお、ステップST87は、上述したステップST66と同じ動作であるため、詳細は省略する。
【0050】
なお、ステップST87における停止条件は、水位が基準水位Lより低下しており、かつ、ポンプ22Bが空転していることである。すなわち、ポンプ22Bが空転している場合は、ポンプ22Bを駆動するモータ23Bに供給される電流値は、揚水時の電流値より小さい値となると共に、回転数が増加する。また、ポンプ22Bが水に浸されていないため、温度が上昇する状態である。
【0051】
制御部31Bは、ポンプ22Bを停止する(ステップST88)。これにより、制御部31Bは、ポンプ22Bを始動優先権の有る運転許可とする。制御部31Bは、無線通信が有りと判断して待機する(ステップST89)。このとき、制御部31Bと制御部31Aは、通信部34Bと通信部34Aを介して互いの運転状況を送受信する。
【0052】
制御部31Bは、次に無線通信が無くなるまで待機する(ステップST90)。このとき、制御部31Bと制御部31Aは、通信部34Bと通信部34Aを介して互いの運転状況を送受信する。制御部31Bは、無線通信が無いと判定すると、ポンプ22Bを始動する(ステップST91)。
【0053】
次に、制御部31Bは、停止条件の第1段階として、互いの運転状況を確認する信号を送信することで、通信部34Bにて無線の受信が行われているか否かを判定する(ステップST92)。この場合、無線の受信が行われていれば、貯水タンク100の液面が基準水位Lを下回ったと判定する。制御部31Bと制御部31Aは、通信部34Bと通信部34Aを介して互いの運転状況を送受信する。次に、制御部31Bは、停止条件の第2段階を満たしたか否かを判定する(ステップST93)。なお、ステップST93は、上述したステップST66と同じ動作であるため、詳細は省略する。
【0054】
なお、ステップ92及びステップST93における停止条件は、水位が基準水位Lより低下しており、かつ、ポンプ22Bが空転していることである。すなわち、ポンプ22Bが空転している場合は、ポンプ22Bを駆動するモータ23Bに供給される電流値は、揚水時の電流値より小さい値となると共に、回転数が増加する。また、ポンプ22Bが水に浸されていないため、温度が上昇する状態である。
【0055】
制御部31Bは、ポンプ22Bを停止する(ステップST94)。これにより、制御部31Bは、ポンプ22Bを始動優先権の無い運転許可とする。制御部31Bは、無線通信が有りと判断して待機する(ステップST95)。このとき、制御部31Bと制御部31Aは、通信部34Bと通信部34Aを介して互いの運転状況を送受信する。そして、制御部31BはステップST82に戻る。
【0056】
このように一対のポンプ装置20A及びポンプ装置20Bが交互並列運転する場合において、排水装置10は、交互並列運転におけるポンプ装置20Aの始動・停止及びポンプ装置20Bの始動・停止の基準となる水位検出を通信部34Aと通信部34Bとの間の通信の有無によって行うことができる。このため、水位検出センサを用いることなく、ポンプ装置20A及びポンプ装置20Bの始動・停止を行うことが可能となる。
【0057】
このように本実施形態に係る排水装置10においては、水位検出センサを用いないことで、部品コスト及び製造コストを低減することが可能となる。また、狭いスペースに設置した場合であっても、フロートスイッチ等の水位検出センサが配線類に干渉することを防止でき、正確な検出が可能である。
【0058】
なお、上述した実施形態においては、2台のポンプ装置の交互運転又は交互並列運転について説明したが、水位検出に通信の有無を利用して制御するものであれば、3台以上のポンプ装置を連携制御するものであってもよい。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1]
貯水タンク内に配置され、前記貯水タンク内の水を前記貯水タンク外へ排水する排水装置において、
第1のモータ及び前記貯水タンク内の基準水位に相当する高さ位置に配置された第1の通信部を有する第1のポンプ装置と、
第2のモータ及び前記第1の通信部と連続或いは間欠的に通信を行う第2の通信部を有する第2のポンプ装置と、
前記第1の通信部と前記第2の通信部との間で送受信が行われない時に、前記第1のポンプ装置及び前記第2のポンプ装置の少なくとも一方を始動し、前記第1の通信部と前記第2の通信部との間で送受信が行われた時に、前記第1のモータ及び前記第2のモータのうち動作中のモータを停止させる制御部と、
を具備する排水装置。
[2]
前記第1のポンプ装置及び前記第2のポンプ装置は、それぞれ、筐体内の温度を測定する温度検出センサと、前記モータへの印加電流を計測する電流計測部と、前記モータの運転周波数を計測する運転周波数計測部と、予め決められた前記温度検出センサにおける設定温度、前記電流計測部における設定電流値、前記運転周波数計測部における設定周波数を記憶する記憶部とを具備し、
前記制御部は、前記温度検出センサにより検出された温度が設定温度以上、前記印加電流が前記設定電流値未満、前記運転周波数が前記設定周波数以上のいずれかを満たした時に、前記モータを停止する[1]に記載の排水装置。
[3]
貯水タンク内に配置され、前記貯水タンク内の水を前記貯水タンク外へ排水する複数のポンプ装置を連携制御する排水装置において、
前記複数のポンプ装置にそれぞれ設けられたモータと、
前記複数のポンプ装置にそれぞれ設けられ、前記複数のポンプ装置の相互間で情報交換を行うための通信部と、
前記通信部相互間で送受信が行われない時に、いずれかのモータを始動し、前記通信部相互間で送受信が行われた時に、前記複数のモータのうち動作中のモータを停止させる制御部と、
を具備する排水装置。
[4]
前記複数のポンプ装置は、それぞれ、筐体内の温度を測定する温度検出センサと、前記モータへの印加電流を計測する電流計測部と、前記モータの運転周波数を計測する運転周波数計測部と、予め決められた前記温度検出センサにおける設定温度、前記電流計測部における設定電流値、前記運転周波数計測部における設定周波数を記憶する記憶部とを具備し、
前記制御部は、前記温度検出センサにより検出された温度が設定温度以上、前記印加電流が前記設定電流値未満、前記運転周波数が前記設定周波数以上のいずれかを満たした時に、前記モータを停止する[3]に記載の排水装置。
[5]
前記複数のポンプ装置は、それぞれ前記ポンプ装置の積算運転時間を記憶する記憶部を具備し、
前記ポンプ装置の始動順序は、前記通信部によって情報交換して得られた、各ポンプ装置の前記積算運転時間に基づく順序によって決定する[3]に記載の排水装置。
[6]
前記複数のポンプ装置は、それぞれ前記ポンプ装置に固有の識別番号を記憶する記憶部を具備し、
前記ポンプ装置の始動順序は、前記通信部によって情報交換して得られた、各ポンプ装置の前記識別番号に基づく順序によって決定する[3]に記載の排水装置。
【符号の説明】
【0060】
10…排水装置、20A,20B…ポンプ装置、21A,21B…筐体、22A,22B…ポンプ、22a…開口部、22b…吐出口、23A,23B…モータ、30A,30B…電装部、31A,31B…制御部、32A,32B…インバータ、33A,33B…温度検出センサ、34A,34B…通信部、35A,35B…時間計測部、90…情報端末、91…表示部、100…貯水タンク、200…外部配管。