(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】美容促進装置、美容促進方法、および美容促進プログラム
(51)【国際特許分類】
A45D 44/00 20060101AFI20220215BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20220215BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20220215BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220215BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
A45D44/00 A
A61B5/00 M
A61B5/107 800
G06T7/00 660A
G01N21/27 A
(21)【出願番号】P 2019180497
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2021-08-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510045494
【氏名又は名称】B-by-C株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 えな
(72)【発明者】
【氏名】黒田 祐二
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-245666(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121518(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/011898(WO,A1)
【文献】特開2014-213065(JP,A)
【文献】特開2006-204901(JP,A)
【文献】特開2002-355223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/00
A61B 5/00
A61B 5/107
G06T 7/00
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの肌を撮像した撮像データを用いて、ユーザの肌の任意の箇所を、その色相の値により、ユーザの肌の状態を分類するために予め設定された複数のステージに区分けする肌色評価部と、
前記肌色評価部により区分けされたステージに基づいて、ユーザの肌の任意の箇所に、色素沈着によるシミを含む色素異常部が生じている部分を特定する色素沈着特定部と、
前記色素沈着特定部により特定された前記色素異常部の色相の値により、ユーザの肌における色素異常部の肌表面からの深さを推定する深さ推定部を備えている美容促進装置。
【請求項2】
前記撮像データに対して、前記肌色評価部が区分けしたステージ毎に、前記箇所の位置を表示するとともに、前記色素沈着特定部が特定した前記色素異常部にマーキングを行う評価結果表示部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の美容促進装置。
【請求項3】
前記評価結果表示部は、同一のユーザに対して異なる時期に撮像した複数の撮像データに対して、前記ステージ毎の位置表示およびマーキングを行い、並べて表示することを特徴とする請求項2に記載の美容促進装置。
【請求項4】
前記深さ推定部が推定した色素異常部の深さに基づいて、色素沈着の改善を促す施策を提案する施策提案部を備えていることを特徴とする請求項
1に記載の美容促進装置。
【請求項5】
前記撮像データに対して、前記色素異常部における色素沈着が改善された状態を想定し、前記色素異常部の色相を変化させてユーザに表示する改善データ生成部を備えていることを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の美容促進装置。
【請求項6】
コンピュータが、
ユーザの肌を撮像した撮像データを用いて、ユーザの肌の任意の箇所を、その色相の値により、ユーザの肌の状態を分類するために予め設定された複数のステージに区分けする肌色評価ステップと、
前記肌色評価ステップにより区分けされたステージに基づいて、ユーザの肌の任意の箇所に、色素沈着によるシミを含む色素異常部が生じている部分を特定する色素沈着特定ステップと、
前記色素沈着特定ステップにより特定された前記色素異常部の色相の値により、ユーザの肌における色素異常部の肌表面からの深さを推定する深さ推定ステップを実行する美容促進方法。
【請求項7】
コンピュータに、
ユーザの肌を撮像した撮像データを用いて、ユーザの肌の任意の箇所を、その色相の値により、ユーザの肌の状態を分類するために予め設定された複数のステージに区分けする肌色評価機能と、
前記肌色評価機能により区分けされたステージに基づいて、ユーザの肌の任意の箇所に、色素沈着によるシミを含む色素異常部が生じている部分を特定する色素沈着特定機能と、
前記色素沈着特定機能により特定された前記色素異常部の色相の値により、ユーザの肌における色素異常部の肌表面からの深さを推定する深さ推定機能とを、
を実現させる美容促進プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容促進装置、美容促進方法、および美容促進プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像処理技術を用いて、ユーザに対して美容を促進するシステムが知られている。
例えば、特許文献1には、フェイシャルマッサージ等の顔面に対する美容施術の前後に撮影された画像を用いて、顔面の皮膚のひずみ分布を求め、このひずみ分布を評価指標として美容施術の効果を定量的に解析するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の美容促進システムでは、ユーザの肌の物理的な形態の変化を評価することはできたが、シミや色素斑のような色素沈着について評価することができなかった。これらの色素沈着は、例えば加齢とともに顕在化する傾向のある症状であり、日頃から美容を意識するユーザにとって、改善したいという強い要望がある。
【0005】
そこで本発明は、シミや色素斑のような色素沈着の程度を定量的に評価し、美容に供することができる美容促進装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る美容促進装置は、ユーザの肌を撮像した撮像データを用いて、ユーザの肌の任意の箇所を、その色相の値により、ユーザの肌の状態を分類するために予め設定された複数のステージに区分けする肌色評価部と、肌色評価部により区分けされたステージに基づいて、ユーザの肌の任意の箇所に、色素沈着によるシミを含む色素異常部が生じている部分を特定する色素沈着特定部と、を備えている。
【0007】
また、撮像データに対して、肌色評価部が区分けしたステージ毎に、箇所の位置を表示するとともに、色素沈着特定部が特定した色素異常部にマーキングを行う評価結果表示部を備えてもよい。
【0008】
また、評価結果表示部は、同一のユーザに対して異なる時期に撮像した複数の撮像データに対して、ステージ毎の位置表示およびマーキングを行い、並べて表示してもよい。
【0009】
また、色素沈着特定部により特定された色素異常部の色相の値により、ユーザの肌における色素異常部の肌表面からの深さを推定する深さ推定部を備えてもよい。
【0010】
また、深さ推定部が推定した色素異常部の深さに基づいて、色素沈着の改善を促す施策を提案する施策提案部を備えてもよい。
【0011】
また、撮像データに対して、色素異常部における色素沈着が改善された状態を想定し、色素異常部の色相を変化させてユーザに表示する改善データ生成部を備えてもよい。
【0012】
また、本発明に係る美容促進方法は、コンピュータが、ユーザの肌を撮像した撮像データを用いて、ユーザの肌の任意の箇所を、その色相の値により、ユーザの肌の状態を分類するために予め設定された複数のステージに区分けする肌色評価ステップと、肌色評価ステップにより区分けされたステージに基づいて、ユーザの肌の任意の箇所に、色素沈着によるシミを含む色素異常部が生じている部分を特定する色素沈着特定ステップと、を実行する。
【0013】
また、本発明に美容促進プログラムは、コンピュータに、ユーザの肌を撮像した撮像データを用いて、ユーザの肌の任意の箇所を、その色相の値により、ユーザの肌の状態を分類するために予め設定された複数のステージに区分けする肌色評価機能と、肌色評価機能により区分けされたステージに基づいて、ユーザの肌の任意の箇所に、色素沈着によるシミを含む色素異常部が生じている部分を特定する色素沈着特定機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の美容促進装置では、肌色評価部が、ユーザの肌を撮像した撮像データを用いて、ユーザの肌の任意の箇所を、その色相の値により、予め設定された複数のステージに区分けする。そして、色素沈着特定部が、肌色評価部により区分けされたステージに基づいて、ユーザの肌における色素異常部の位置を特定する。これにより、シミや色素斑のような色素沈着の程度を定量的に評価し、美容に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る美容促進システムの構成例を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す美容促進装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】肌色評価部の評価基準となる評価テーブルの一例である。
【
図4】(a)美容促進システムにおける処理結果の一例を示す図、(b)
図4(a)の一部拡大図である。
【
図5】
図1に示す携帯端末の構成例を示すブロック図である。
【
図6】美容促進装置における処理フローを示す図である。
【
図7】美容促進システムにおける処理結果の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る美容促進システム1ついて、
図1から
図7を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る美容促進システム1の構成例を示す模式図である。美容促進システム1は、ユーザ50の美容促進に資するために、ユーザ50の顔を撮像した撮像データに対してデータ処理を行い、ユーザ50の顔の肌の状態を定量的に評価するエイジングマネジメント向けのシステムである。
なお、以下の説明では、ユーザ50の顔の肌の状態を評価する内容を例に挙げて説明するが、美容促進システム1は、ユーザ50の顔以外の部分における肌の状態を評価することに用いてもよい。
【0017】
図1に示すように、美容促進システム1は、ネットワーク20を介して互いに接続された撮像装置10、および美容促進装置30を備えている。また、図示の例では、ネットワーク20にユーザ50の携帯端末40が接続されている。携帯端末40は、ネットワーク20に無線通信により接続されている。
【0018】
ここで、本発明の美容促進システム1は、エステサロン等の美容関連サービスを提供する店舗において、ユーザ50の顔を撮像して定量的に評価した結果を示し、例えばユーザ50が自身の顔の肌の状態を改善するために、今後取り組むべき施策を提案するために用いられる。
なお、美容促進システム1の使用に際しては、
図1に示すように、店舗のオペレータ60の操作のもとで行われてもよいし、ユーザ50自身が操作を行ってもよい。
【0019】
撮像装置10は、ユーザ50の顔を撮像して撮像データを取得できる装置であれば、特に限定されない。撮像装置10は、例えばCMOSやCCD等の撮像素子を有する撮像部を備えている。また、撮像装置10は、撮像部が撮像した撮像データを美容促進装置30に送信する送信部を備えている。
【0020】
撮像装置10が取得する撮像データは、2Dデータであっても3Dデータであってもよい。本実施形態では撮像部が2Dデータとしての撮像データを取得する構成について説明する。
なお、撮像装置10は、例えば撮像部が間隔をあけて複数配置された3Dカメラであってもよいし、1つの撮像部と距離センサとを備えている構成であってもよい。
【0021】
ネットワーク20は、撮像装置10、美容促進装置30、および携帯端末40の間を相互に接続させるためのネットワークであり、例えば、無線ネットワークや有線ネットワークである。
具体的には、ネットワーク20は、ワイヤレスLAN(wireless LAN:WLAN)や広域ネットワーク(wide area network:WAN)、ISDNs(integrated service digital networks)、無線LANs、LTE(long term evolution)、LTE-Advanced、第4世代(4G)、第5世代(5G)、CDMA(code division multiple access)、WCDMA(登録商標)、イーサネット(登録商標)などである。
【0022】
また、ネットワーク20は、これらの例に限られず、例えば、公衆交換電話網(Public Switched Telephone Network:PSTN)やブルートゥース(Bluetooth(登録商標))、ブルートゥースローエナジー(Bluetooth Low Energy)、光回線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線、衛星通信網などであってもよく、どのようなネットワークであってもよい。
【0023】
また、ネットワーク20は、例えば、NB-IoT(Narrow Band IoT)や、eMTC(enhanced Machine Type Communication)であってもよい。なお、NB-IoTやeMTCは、IoT向けの無線通信方式であり、低コスト、低消費電力で長距離通信が可能なネットワークである。
【0024】
また、ネットワーク20は、これらの組み合わせであってもよい。また、ネットワーク20は、これらの例を組み合わせた複数の異なるネットワークを含むものであってもよい。
例えば、ネットワーク20は、LTEによる無線ネットワークと、閉域網であるイントラネットなどの有線ネットワークと、を含むものであってもよい。
【0025】
次に、
図2を用いて、美容促進装置30の構成について説明する。
図2は、美容促進装置30の構成例を示すブロック図である。
美容促進装置30は、装置側通信部31、データ記憶部32、データ処理部33、および装置側表示部34を備えている。美容促進装置30は、ユーザ50の顔を撮像した撮像データから、ユーザ50の顔の肌の状態を解析する情報処理装置であって、一例として、本実施形態では、パソコンが用いられる。
【0026】
装置側通信部31は、ネットワーク20を介して、各種のデータを送受信する通信インターフェースである。各種のデータとして、撮像データ、処理データ、改善データが含まれる。すなわち装置側通信部31は、撮像装置10の送信部から送信された撮像データを受信する受信部として機能する。
ここで、撮像データとは、撮像装置10により、ユーザ50の顔を撮像したデータを指す。処理データとは、後述する評価結果表示部33Cにより、撮像データに対して、シミの位置を特定しマーキングを行ったデータを指す。改善データとは、後述する改善データ生成部33Fが、撮像データに対して、色素異常部における色素沈着が改善された状態を想定し、色素異常部の色相を変化させてユーザ50に表示するデータを指す。
【0027】
データ記憶部32は、データ処理部33が動作するうえで必要とする各種の制御プログラムや、装置側通信部31が外部から受信した各種のデータを記憶する機能を有する。また、データ記憶部32は、後述する肌色評価部33Aが、ユーザ50の肌の色を評価する際に用いる際の基準となる評価テーブルを有している。
データ記憶部32は、例えば、HDD、SSD、フラッシュメモリなど各種の記憶媒体により実現される。
【0028】
データ記憶部32に記憶された制御プログラムを実行することで、データ処理部33が、美容促進システム1として実現すべき各機能を実現する。ここでいう各機能とは、肌色評価機能、色素沈着特定機能、評価結果表示機能、深さ推定機能、施策提案機能、改善データ生成機能を含んでいる。
装置側表示部34は、美容促進装置30の操作の内容や処理の結果を表示するモニタ装置である。
【0029】
データ処理部33は、美容促進装置30の各部を制御するコンピュータであり、例えば、中央処理装置(CPU)やマイクロプロセッサ、ASIC、FPGAなどであってもよい。
なお、データ処理部33は、これらの例に限られず、美容促進装置30の各部を制御するコンピュータであれば、どのようなものであってもよい。
【0030】
そしてデータ処理部33は、肌色評価部33A、色素沈着特定部33B、評価結果表示部33C、深さ推定部33D、施策提案部33E、および改善データ生成部33Fを備えている。
肌色評価部33Aは、ユーザ50の肌を撮像した撮像データを用いて、ユーザ50の肌の任意の箇所を、複数のステージに区分けする。
【0031】
複数のステージとは、ユーザ50の肌の状態を分類するために予め設定された階層であって、例えばステージ1からステージ4で表され、ステージの数値が大きいほど、色素異常の症状が重いことを意味する。
肌色評価部33Aは、肌の色相の値(一例としてRGB値)により、ユーザ50の肌の色を、複数のステージに区分けする。この内容について
図3を用いて詳述する。
図3は、肌色評価部33Aの評価基準となる評価テーブルの一例である。なお、色相の値としては、RGB値に限られず、CMYK値やその他の指標値であってもよい。
【0032】
図3に示す評価テーブルの一例では、色素異常部のうち、色素斑の種類に対して、色相とステージとの分類が記載されている。色相は例えばRGB値により表現することができる。すなわち、この図では、色相が色によって表現されているが、対応するRGB値のデータを備えていてもよい。
【0033】
例えば、
図3に示すように、老人性色素斑の場合には、色素異常部が頬骨の上に生じやすく、茶褐色から茶色の場合に、ステージ1と判断される。また、色素異常部が薄い茶褐色から薄い茶色の場合に、ステージ2と判断される。また、色素異常部が、淡い茶褐色から淡い茶色の場合に、ステージ3と判断される。
【0034】
次に、炎症後色素沈着の場合には、顔全体に生じやすく、色素異常部が、茶褐色から茶色の場合に、ステージ1と判断される。また、色素異常部が、薄い茶褐色から薄い茶色の場合に、ステージ2と判断される。また、淡い茶褐色から淡い茶色の場合に、ステージ3と判断される。また、青色からグレーの場合には、ステージ4と判断される。ここで、色素斑の種類の判断については、色素異常部の位置や外観から、オペレータ60が選択する。
なお、この評価テーブルはあくまで一例であり、別の評価テーブルを採用することもできる。
【0035】
色素沈着特定部33Bは、肌色評価部33Aにより区分けされたステージに基づいて、ユーザ50の肌の任意の箇所に、色素沈着によるシミを含む色素異常部が生じている部分を特定する。ここで、色素沈着とは、黒色メラニンの表皮への蓄積により生じる肌の色素異常を指す。
【0036】
ここで、肌にシミ(色素斑)のような色素異常部が生じるメカニズムについて説明すると、紫外線等の刺激を肌が受けることで、肌の内部組織であるメラノサイト(メラニン形成細胞)が黒色メラニンを生成する。この黒色メラニンは肌を守る役割を持っているが、健康な肌の場合には、時間の経過とともに体外に排出される。
【0037】
一方、肌の新陳代謝のサイクルが乱れている場合や、黒色メラニンの生成量が多い場合には、黒色メラニンの一部が、体外に排出されずに、表皮に残留して蓄積される。このような色素の異常のうち、炎症や紫外線に起因するものを色素沈着もしくは色素斑(シミ)とよぶ。
【0038】
評価結果表示部33Cは、撮像データに対して、肌色評価部33Aが区分けしたステージ毎に、その箇所の位置を表示する。また、評価結果表示部33Cは、色素沈着特定部33Bが特定した色素異常部にマーキングを行う。これにより、撮像データに対してシミの位置の表示とマーキングが付された処理データが生成される。マーキングは、色相がステージ1から4のうちのいずれかに該当する部分に、ステージ毎に設定された色のマークを付すことで行われる。
さらに、評価結果表示部33Cは、同一のユーザ50に対して異なる時期に撮像した複数の撮像データに対して、ステージ毎の位置表示およびマーキングを行い、並べて表示することもできる。
【0039】
ここで、処理データの一例について
図4を用いて説明する。
図4(a)は、美容促進システム1における処理結果の一例を示す図、(b)
図4(a)の一部拡大図である。
図4(a)および
図4(b)に示すように、ユーザ50の顔の肌の任意の位置に対して、複数のシミの位置が特定されている。そして、それぞれの位置において、色素異常部がマーキングM1~M3されて表現されている。このマーキングのなかには、視認して判別できないものも含まれている。
図4(a)および
図4(b)において、最も薄いマークM1がステージ1を示し、最も濃いマークM3がステージ3を示している。そして、中間の濃さのマークM2が、ステージ2を示している。この図では、ステージ4のマークは確認されていない。
【0040】
深さ推定部33Dは、色素沈着特定部33Bにより特定された色素異常部の色相の値により、ユーザ50の肌における色素異常部の肌表面からの深さを推定する。ここで、一般に、シミや色素斑の色相により、肌表面からの深さが異なることが知られている。
【0041】
例えば、
図3に示すシミ(色素斑)の評価テーブルでは、ステージ1に該当する色素異常部は表皮の上層に発生しており、ステージ2に該当する色素異常部は表皮の中層に発生していると判断される。また、ステージ3に該当する色素異常部は表皮の下層に発生しており、ステージ4に該当する色素異常部は表皮の下層から真皮層に発生していると判断される。
ここで、上側とは肌の内部のうち、表面を向く側を指し、下側とは肌の内部のうち、体内に向かう側を指す。このような色と深さとの判断基準は、任意に設定することができる。
【0042】
施策提案部33Eは、深さ推定部33Dが推定した色素異常部の深さに基づいて、色素沈着の改善を促す施策を提案する。施策の内容としては、美顔器の使用、導入美容液の使用、炭酸パックの使用、UVケア等がある。これらは、色素異常部の深さによりどれが適切か判断される。また、深層に形成された色素異常部については、医療機関の診察を受けることを提案してもよい。
【0043】
改善データ生成部33Fは、撮像データに対して、色素異常部における色素沈着が改善された状態を想定し、色素異常部の色相を変化させてユーザ50に表示する。すなわち、提案する施策を一定期間行った際に、どのような効果が得られるかを視覚的に表現する機能を有している。
【0044】
改善データ生成部33Fは、例えば過去の履歴データを用いて、同様の状態から一定期間、当該施策を行った場合に、色素異常部がどのように変化するかという値を推測する。この推測に基づいて、改善データ生成部33Fは、撮像データから改善データを生成する。
【0045】
次に、
図5を用いて、携帯端末40の構成について説明する。
図5は、携帯端末40の構成例を示すブロック図である。
携帯端末40は、端末側通信部41、端末記憶部42、端末処理部43、カメラ44、および端末側表示部45を備えている。
【0046】
端末側通信部41は、ネットワーク20を介して、各種のデータを送受信する通信インターフェースである。各種のデータとして、撮像データ、比較結果を示すデータが含まれる。すなわち、端末側通信部41は、各種の情報を美容促進装置30から受信する。
【0047】
端末記憶部42は、端末処理部43が動作するうえで必要とする各種の制御プログラムや各種データを記憶する機能を有する。端末記憶部42は、例えば、HDD、SSD、フラッシュメモリなど各種の記憶媒体により実現される。
端末記憶部42に記憶された制御プログラムを実行することで、端末処理部43が、美容促進システム1として実現すべき各機能のうちの少なくとも一部を実現してもよい。
【0048】
端末処理部43は、携帯端末40の各部を制御するコンピュータであり、例えば、中央処理装置(CPU)やマイクロプロセッサ、ASIC、FPGAなどであってもよい。なお、端末処理部43は、これらの例に限られず、携帯端末40の各部を制御するコンピュータであれば、どのようなものであってもよい。
【0049】
端末処理部43は、受付部43Aを備えている。受付部43Aは、美容促進装置30から送信されてきた撮像データや比較結果を受付けて、端末側表示部45に表示する。
カメラ44は、ユーザ50の操作により、撮像を行うことができる。本実施形態に係る撮像装置10に代えて、携帯端末40のカメラ44により、撮像データを取得して、美容促進装置30に送信してもよい。
端末側表示部45は、美容促進装置30により処理された比較結果を示す情報を表示するモニタ装置である。端末側表示部45は、比較結果とともに、撮像データを表示することができる。
【0050】
次に、
図6を用いて、美容促進システム1による処理の内容について説明する。
図6は、美容促進装置30における処理フローを示す図である。
図6に示すように、まず、撮像装置10によりユーザ50の顔を撮像する(撮像ステップ:S501)。
次に、肌色評価部33Aが、評価テーブルを参照しながら、ユーザ50の肌を複数のステージに区分けする(肌色評価ステップ:S502)。
【0051】
次に、色素沈着特定部33Bが、ユーザ50の肌において、色素異常部が生じている部分を特定する(色素沈着特定ステップ:S503)。そして、評価結果表示部33Cは、色素異常部にマーキングを行うことで、シミや色素斑を特定する(評価結果表示ステップ:S504)。
【0052】
次に、深さ推定部33Dが、色素異常部の肌表面からの深さを推定する(深さ推定ステップ:S505)。この際、深さ推定部33Dは、予め記憶された色素異常部の色と、肌表面からの深さと、の対応データを参照する。
【0053】
次に、施策提案部33Eが、ユーザ50に色素沈着を改善する施策を提案する(施策提案ステップ:S506)。
最後に、改善データ生成部33Fが、改善データを生成して表示する(改善データ生成ステップ:S507)。改善データ生成部33Fは、撮像データに対して、色素異常部における色素沈着が改善された状態を想定し、色素異常部の色相を変化させてユーザ50に表示する。これにより、ユーザ50は、施策を行った際にどのような効果が得られるかを視覚的に把握することができ、施策を継続して行うことの動機付けを得ることができる。
【0054】
次に、処理結果の他の例について、
図7を用いて説明する。
図7は、美容促進システム1における処理結果の他の例を示す図である。
図7に示すように、前述した
図4よりもシミの数が多い場合であっても、複数のステージに区分けした状態で、色素異常部にマーキングが施されている。そして、確認された複数のシミについて、該当するステージ毎に、個数を評価することができる。また、シミの個数を集計し、理想値や平均値と比較することで、ユーザ50の現状を客観的に表示することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る美容促進システム1によれば、肌色評価部33Aが、ユーザ50の肌を撮像した撮像データを用いて、ユーザ50の肌の任意の箇所を、その色相の値により、予め設定された複数のステージに区分けする。そして、色素沈着特定部33Bが、肌色評価部33Aにより区分けされたステージに基づいて、ユーザ50の肌における色素異常部の位置を特定する。これにより、シミや色素斑のような色素沈着の程度を定量的に評価し、美容に供することができる。
【0056】
また、評価結果表示部33Cが、撮像データに対して、肌色評価部33Aが区分けしたステージ毎に、その箇所の位置を表示するとともに、色素沈着特定部33Bが特定した色素異常部にマーキングを行う。これにより、ユーザ50が、評価結果を視覚的に把握することが可能になり、ユーザ50の利便性を確保することができる。
【0057】
また、評価結果表示部33Cが、同一のユーザ50に対して異なる時期に撮像した複数の撮像データに対して、ステージ毎の位置表示およびマーキングを行い、並べて表示する。これにより、ユーザ50の肌の状態における経時的変化を、視覚的に把握させることができる。
【0058】
また、深さ推定部33Dが、色素異常部の色相の値により、ユーザ50の肌における色素異常部の肌表面からの深さを推定するので、色素異常部の改善に向けた施策を検討するうえでの判断材料を提供することができる。
【0059】
また、施策提案部33Eが、色素異常部の深さに基づいて、色素沈着の改善を促す施策を提案するので、色素異常部の状態に応じて、適切な施策を提案することができる。
【0060】
また、改善データ生成部33Fが、撮像データに対して、色素異常部における色素沈着が改善された状態を想定し、色素異常部の色相を変化させてユーザ50に表示するので、ユーザ50に提案する施策により期待できる効果を視覚的に伝えることで、ユーザ50に対して、施策を継続して行うための動機づけを行うことができる。
【0061】
なお、美容促進システム1は、上記実施形態に限定されるものではなく、他の手法により実現されてもよいことは言うまでもない。以下、各種変形例について説明する。
例えば、上記実施形態の制御プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供されてもよい。記憶媒体は、「一時的でない有形の媒体」に、制御プログラムを記憶可能である。記憶媒体は、HDDやSDDなどの任意の適切な記憶媒体、またはこれらの2つ以上の適切な組合せを含むことができる。記憶媒体は、揮発性、不揮発性、または揮発性と不揮発性の組合せでよい。なお、記憶媒体はこれらの例に限られず、制御プログラムを記憶可能であれば、どのようなデバイスまたは媒体であってもよい。
【0062】
また、美容促進システム1は、例えば、記憶媒体に記憶された制御プログラムを読み出し、読み出した制御プログラムを実行することによって、実施形態に示す各機能を実現することができる。
また、当該制御プログラムは、任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して、美容促進システム1に提供されてもよい。美容促進システム1は、例えば、インターネット等を介してダウンロードした制御プログラムを実行することにより、各実施形態に示す複数の機能部の機能を実現する。
【0063】
また、当該制御プログラムは、例えば、ActionScript、JavaScript(登録商標)などのスクリプト言語、Objective―C、Java(登録商標)などのオブジェクト指向プログラミング言語、HTML5などのマークアップ言語などを用いて実装してもよい。
【0064】
美容促進システム1における処理の少なくとも一部は、1以上のコンピュータにより構成されるクラウドコンピューティングにより実現されていてもよい。また、美容促進システム1の各機能部は、上記実施形態に示した機能を実現する1または複数の回路によって実現されてもよく、1の回路により複数の機能部の機能が実現されることとしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、美容促進装置30と携帯端末40とを別の装置とした例について説明したが、このような態様に限られない。美容促進装置30の一部又は全ての機能を、携帯端末40が備えていてもよい。
【0066】
また、本開示の実施形態を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、各実施形態に示す構成を適宜組み合わせることとしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 美容促進システム
10 撮像装置
20 ネットワーク
30 美容促進装置
40 携帯端末