(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】柔軟性、接着力、及び表面強度が向上したターポリン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 15/227 20060101AFI20220215BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20220215BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220215BHJP
D06M 101/20 20060101ALN20220215BHJP
D06M 101/32 20060101ALN20220215BHJP
【FI】
D06M15/227
B32B27/12
B32B27/32 E
D06M101:20
D06M101:32
(21)【出願番号】P 2020565248
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 KR2019001431
(87)【国際公開番号】W WO2019156447
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】10-2018-0015299
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0007622
(32)【優先日】2019-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520298569
【氏名又は名称】ポリテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】POLYTECH INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ウン ハ
(72)【発明者】
【氏名】キム、キョン ジュン
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-014031(JP,A)
【文献】特開2002-137681(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0183194(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1797525(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-0820597(KR,B1)
【文献】実開昭55-120933(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00-15/715
B32B 1/00-43/00
D04H 1/00-18/04
D03D 1/00-27/18
B60J 11/00-11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度ポリエチレン(HDPE)マルチフィラメント糸、前記HDPEマルチフィラメント糸と交差するように配列されたポリプロピレン(PP)マルチフィラメント糸、及び前記HDPEマルチフィラメント糸と前記PPマルチフィラメント糸をバインディングするポリエチレンテレフタレート(PET)グラウンド糸を含む生地層;及び
前記生地層の少なくとも一面に結合された樹脂層を含み、
前記樹脂層は、
低密度ポリエチレン(LDPE)30重量%乃至50重量%、PP30重量%乃至50重量%、及びオレフィン系共重合体10重量%乃至20重量%を含むことを特徴とする、ターポリン。
【請求項2】
前記HDPEマルチフィラメント糸の太さは200デニール乃至3,000デニールであり、前記PPマルチフィラメント糸の太さは200デニール乃至3,000デニールであり、前記PETグラウンド糸の太さは30デニール乃至150デニールであることを特徴とする、請求項1に記載のターポリン。
【請求項3】
前記オレフィン系共重合体は、エチレンモノマー15重量%乃至20重量%、及びプロピレンモノマー80重量%乃至85重量%を含むモノマー混合物の共重合体であることを特徴とする、請求項
1に記載のターポリン。
【請求項4】
前記LDPEの溶融指数は5g/10min乃至20g/10minであり、
前記樹脂層に含まれる前記PPの溶融指数は15g/10min乃至35g/10minであり、前記オレフィン系共重合体の溶融指数は7g/10min乃至12g/10minであることを特徴とする、請求項
1に記載のターポリン。
【請求項5】
スクリューを含むシリンダー内で
、樹脂原料混合物を混練して溶融するステップ
であって、前記樹脂原料混合物は低密度ポリエチレン(LDPE)30重量%乃至50重量%、ポリプロピレン(PP)30重量%乃至50重量%、及びオレフィン系共重合体10重量%乃至20重量%を含むステップ;
前記溶融された樹脂原料混合物を一定の量でT-ダイに提供するステップ;
前記溶融された樹脂原料混合物を前記T-ダイを通過させて樹脂フィルムを形成するステップ;及び
高密度ポリエチレン(HDPE)マルチフィラメント糸、前記HDPEマルチフィラメント糸と交差するように配列されたポリプロピレン(PP)マルチフィラメント糸、及び前記HDPEマルチフィラメント糸と前記PPマルチフィラメント糸をバインディングするポリエチレンテレフタレート(PET)グラウンド糸を含む生地層と前記樹脂フィルムとを結合するステップを含み、
前記樹脂原料混合物を混練するステップ、前記溶融された樹脂原料混合物を前記T-ダイに提供するステップ、及び前記樹脂フィルムを形成するステップは260℃以下で進行されることを特徴とする、ターポリンの製造方法。
【請求項6】
前記オレフィン系共重合体は、エチレンモノマー15重量%乃至20重量%、及びプロピレンモノマー80重量%乃至85重量%を含むモノマー混合物の共重合体であることを特徴とする、請求項
5に記載のターポリンの製造方法。
【請求項7】
前記LDPEの溶融指数は5g/10min乃至20g/10minであり、
前記樹脂フィルムに含まれる前記PPの溶融指数は15g/10min乃至35g/10minであり、前記オレフィン系共重合体の溶融指数は7g/10min乃至12g/10minであり、前記溶融された樹脂原料混合物の溶融指数は8g/10min乃至12g/10minであることを特徴とする、請求項
5に記載のターポリンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はターポリン及びその製造方法に関し、より詳しくは、低い加工温度でも改善された柔軟性、接着力、及び表面強度が向上したターポリン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ターポリン(Tarpaulin)は防水用天幕、農業用施設天幕、臨時天幕などに使われることができる防水生地であり、軽く、柔軟で、かつ耐久性が高くて広く使われている。このようなターポリンは、使用原料によってPE(ポリエチレン)系ターポリン、PP(ポリプロピレン)系ターポリン、PVC(ポリ塩化ビニル)系ターポリンなどに区分できる。
【0003】
PE系ターポリンは、HDPE(高密度ポリエチレン)フィルムをスリット/延伸して得られたスリット糸の織物または編物の生地の上に、LDPE(低密度ポリエチレン)フィルムを、一面または両面ラミネートして形成される製品である。PE系ターポリンは、生産過程が簡単で、費用が経済的で、製品のリサイクルが可能で、無毒性という長所があるが、耐久性と物理的な強度が弱い。
【0004】
PP系ターポリンは、ホモPPフィルムをスリット/延伸して得られたスリット糸の織物または編物の生地の上に、ホモPPフィルムを一面または両面ラミネートして形成される製品である。PP系ターポリンは引張強度が大きいという長所があるが、柔軟性が低い。
【0005】
PVC系ターポリンは、ポリエステルマルチフィラメント糸(multifilament yarn)で作られた織物または編物の生地の上に、PVCフィルムをラミネートするか、または液状PVCゾル(sol)を含浸させて形成される製品である。PVC系ターポリンは耐久性がよいので、長期間使用可能であり、PE系ターポリンより柔軟な長所があるが、リサイクルが不可能で、フィルム層の毒性によって焼却が不可能であるので、生産と使用に対する制約が増加している。
【0006】
最近、PVC系ターポリンに代える製品を作るための多い努力があり、その結果、PPマルチフィラメント糸を素材にした編物または織物の生地の上にオレフィン系共重合体(elastomer)及びスチレン-エチレン-ブタジエン共重合体(合成ゴム)原料を使用して防水膜を形成する製品が生産されている。しかしながら、このような製品は生地の基本材料であるホモPPの屈曲弾性力が高くてPVC系ターポリンのポリエステル織物に比べて柔軟性が格段に低い。
【0007】
また、前記防水膜の材料(elastomer及び合成ゴム)は硬度が低くて表面硬度がPCV系ターポリンに比べて格段に低下することがある。
また、前記PPマルチフィラメント糸生地及び前記防水膜の接着力を維持するために、前記防水膜を形成するための加工温度は300℃乃至330℃であるが、このような高い温度の加工はPPマルチフィラメント糸の引張強度を低下させることがある。
【0008】
また、前記防水膜材料の価格が他のターポリンの主材料(LDPE、homo PP、PVC樹脂ペースト)より高くて価格競争力が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような問題点を解決するためのものであって、柔軟性と接着力及び表面硬度が改善されたターポリンを提供するためのものである。
本発明の他の目的は、前記ターポリンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するためのターポリンは、生地層及び前記生地層の少なくとも一面に結合された樹脂層を含む。前記生地層は、高密度ポリエチレン(HDPE)マルチフィラメント糸、前記HDPEマルチフィラメント糸と交差するように配列されたポリプロピレン(PP)マルチフィラメント糸、及び前記HDPEマルチフィラメント糸と前記PPマルチフィラメント糸をバインディングするポリエチレンテレフタルレート(PET)グラウンド糸を含む。前記樹脂層は、PP及び低密度ポリエチレン(LDPE)を含む。
【0011】
一実施形態によれば、前記HDPEマルチフィラメント糸の太さは200デニール乃至3,000デニールであり、前記PPマルチフィラメント糸の太さは200デニール乃至3,000デニールであり、前記PETグラウンド糸の太さは30デニール乃至150デニールである。
【0012】
一実施形態によれば、前記樹脂層はLDPE30重量%乃至70重量%及びPP70重量%乃至30重量%を含む。
一実施形態によれば、前記樹脂層はLDPE30重量%乃至50重量%、PP30重量%乃至50重量%及びオレフィン系共重合体10重量%乃至20重量%を含む。
【0013】
一実施形態によれば、前記オレフィン系共重合体は、エチレンモノマー15重量%乃至20重量%及びプロピレンモノマー80重量%乃至85重量%を含むモノマー混合物の共重合体である。
【0014】
一実施形態によれば、前記LDPEの溶融指数は5g/10min乃至20g/10minであり、前記PPの溶融指数は15g/10min乃至35g/10minであり、前記オレフィン系共重合体の溶融指数は7g/10min乃至12g/10minである。
【0015】
本発明の一実施形態に従うターポリンの製造方法は、スクリューを含むシリンダー内で、PP及びLDPEを含む樹脂原料混合物を混練して溶融するステップ、前記溶融された樹脂原料混合物を一定の量でT-ダイに提供するステップ、前記溶融された樹脂原料混合物を前記T-ダイを通過させて樹脂フィルムを形成するステップ、及び生地層と前記樹脂フィルムとを結合するステップを含む。前記生地層は、高密度ポリエチレン(HDPE)マルチフィラメント糸、前記HDPEマルチフィラメント糸と交差するように配列されたポリプロピレン(PP)マルチフィラメント糸、及び前記HDPEマルチフィラメント糸と前記PPマルチフィラメント糸をバインディングするポリエチレンテレフタレート(PET)グラウンド糸を含む。前記樹脂原料混合物を混練するステップ、前記溶融された樹脂原料混合物を前記T-ダイに提供するステップ、及び前記樹脂フィルムを形成するステップは260℃以下で進行される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高価のオレフィン系共重合体の代りに、LDPE及びPPを樹脂層の主材料に用いて製造費用を低減し、かつ既存のポリオレフィン系ターポリンに比べてターポリンの柔軟性、表面強度、及び耐クラック性を改善することができる。また、従来のポリオレフィン系ターポリンで樹脂層と生地層とを結合するためには300℃以上の高温が必要であり、低い温度で結合する場合、接着力の低下による分離/剥離が発生することがあるが、本発明で用いられる樹脂材料は従来の樹脂材料より低い温度(45℃以上の温度差)で生地層に結合できるので、高温加工で生地層のPPマルチフィラメント糸の溶融によって、最終の製品の引張強度及び引裂強度が低下することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に従うターポリンを図示した断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に従うターポリンの生地層を拡大図示した斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に従うターポリンの生地層を拡大図示した斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に従うターポリンの製造方法及びこれに用いられる装置を図示した断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に従うターポリンの製造方法で、T-ダイの温度勾配を図示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本出願で、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明することに使われることができるが、前記構成要素は前記用語により限定されてはならない。前記用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使われる。例えば、本発明の権利範囲を逸脱することなく第1構成要素は第2構成要素と命名されることができ、類似するように、第2構成要素も第1構成要素と命名できる。
【0019】
本出願で使用した用語は単に特定の実施形態を説明するために使われたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味を有しない限り、複数の表現を含む。本出願で、“含む”または“有する”などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはその以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。
【0020】
ターポリン
図1は、本発明の一実施形態に従うターポリンを図示した断面図である。
本発明の一実施形態に従うターポリンは生地層(fabric)10及び樹脂層20を含む。前記生地層10は織物または編物でありえる。前記樹脂層20は前記生地層10の両面または一面に結合できる。
【0021】
前記生地層10は、ポリエチレン(PE)マルチフィラメント糸、ポリプロピレン(PP)マルチフィラメント糸、及びポリエチレンテレフタレート(PET)グラウンド(ground)糸を含むことができる。好ましくは、前記PEマルチフィラメント糸は、高密度ポリエチレン(HDPE)マルチフィラメント糸のものが好ましい。前記HDPEマルチフィラメント糸及び前記PPマルチフィラメント糸は各々経糸及び緯糸、または緯糸及び経糸でありえる。前記PETグラウンド糸は、前記経糸及び前記緯糸をバインディングするアンカーの役割をすることができる。以下、高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)の区分は通常の知られた基準に従う。
【0022】
好ましくは、前記HDPEマルチフィラメント糸の太さは200デニール乃至3,000デニールでありえ、前記PPマルチフィラメント糸の太さは200デニール乃至3,000デニールでありえ、前記PETグラウンド糸の太さは30デニール乃至150デニールでありえる。
【0023】
前記HDPEマルチフィラメント糸の太さが200デニール未満の場合、前記生地層10上に前記樹脂層20を形成する過程で生地層10が溶融されて前記樹脂層20と張り付くことがあり、この場合、生地層10の強度が格段に低下することがある。また、前記HDPEマルチフィラメント糸の太さが3,000デニール超過の場合、生地層10の生産が困難であり、生地層10の厚さが過度に増加して樹脂層20のラミネーションが困難である。
【0024】
前記PPマルチフィラメント糸の太さが200デニール未満の場合、前記生地層10上に前記樹脂層20を形成する過程で生地層10が溶融されて前記樹脂層20と張り付くことがあり、この場合、生地層10の強度が格段に低下することがある。また、前記PPマルチフィラメント糸の太さが3,000デニール超過の場合、生地層10の製織が困難であり、生地層10の厚さが過度に増加して樹脂層20のラミネーションが困難である。
【0025】
前記PETグラウンド糸は、従来のPPグラウンド糸対比生地層10の生産時、節糸を大きく減少させて生産効率を改善することができる。また、PPグラウンド糸は溶融点が低くて樹脂層20を形成する過程で溶融されて、経糸と緯糸を堅くバインディングできないので、生地の強度(tearing強度)が低下できる。
【0026】
前記PETグラウンド糸の太さが30デニール未満の場合、生地層10の生産時に節糸現象が格段に増加することがある。また、前記PETグラウンド糸の太さが150デニール超過の場合、樹脂層20のラミネーション後に、前記グラウンド糸が樹脂層20を貫通して突出することによって防水効果が格段に低下することがある。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、前記樹脂層20はLDPE及びPPを含むことができる。例えば、前記樹脂層20はLDPE30重量%乃至70重量%及びPP70重量%乃至30重量%を含むことができる。前記PPはホモPPまたはランダムPPを含むことができる。
【0028】
本発明の他の実施形態によれば、前記樹脂層20は、LDPE、PP、及びオレフィン系共重合体を含むことができる。例えば、前記樹脂層20は、LDPE10重量%乃至70重量%、PP10重量%乃至70重量%、及びオレフィン系共重合体10重量%乃至70重量%を含むことができる。好ましくは、前記樹脂層20は、LDPE30重量%乃至50重量%、PP30重量%乃至50重量%、及びオレフィン系共重合体10重量%乃至20重量%を含むことができる。
【0029】
前記樹脂層20を形成するための樹脂混合物(混練物)が、前記オレフィン系共重合体をさらに含む場合、溶融物の均一度が増加し、溶融物がT-ダイを通過する時、樹脂フィルム幅が減少するネック-イン(neck-in)現象を防止することができ、フィルムの数値安定性を改善することができる。前記オレフィン系共重合体の含有量が10重量%未満の場合、上記の効果を期待し難く、前記オレフィン系共重合体の含有量が多過ぎる場合、表面硬度が低下することがあり、生産費用が不必要に増加することがある。一実施形態によれば、前記オレフィン系共重合体はエチレンモノマー15重量%乃至20重量%、及びプロピレンモノマー80重量%乃至85重量%を含むモノマー混合物の共重合体でありえる。
【0030】
一実施形態によれば、前記樹脂層20のLDPEの溶融指数は5g/10min乃至20g/10minのものが好ましい。前記LDPEの溶融指数が5g/10minより低ければ、他の原料と溶融混練が妨害されて、樹脂フィルムがT-ダイから分かれるか、または不規則に落ちる現象が発生することがある。また、前記LDPEの溶融指数が20g/10minを超過すると、T-ダイでネック-イン現象が格段に増加する。
【0031】
一実施形態によれば、前記樹脂層20のPPの溶融指数は15g/10min乃至35g/10minのものが好ましい。前記PPの溶融指数が15g/10minより低ければ、他の原料と溶融混練が妨害されて、樹脂フィルムがT-ダイから分かれるか、または不規則に落ちる現象が発生することがある。また、前記PPの溶融指数が35g/10minを超過すれば、T-ダイエーでネック-イン現象が格段に増加する。より好ましくは、前記PPの溶融指数は20g/10min乃至30g/10minでありえる。
【0032】
一実施形態によれば、前記樹脂層20を形成するための樹脂混合物の溶融指数は5g/10min乃至15g/10minでありえる。前記樹脂混合物の溶融指数が5g/10minより低ければ、押出コーティングの生産性が低下し、シリンダーとT-ダイに多過ぎる圧力が加えられて工程進行が困難である。また、前記樹脂混合物の溶融指数が15g/10minより大きければ、ネック-イン現象が発生することがある。
【0033】
好ましくは、前記樹脂混合物の溶融指数は8g/10min乃至12g/10minでありえる。前記範囲の溶融指数を得るために前記オレフィン系共重合体の溶融指数は7g/10min乃至12g/10minであり、前記LDPE及びPP混合物の溶融指数は6g/10min乃至15g/10minのものが好ましい。
【0034】
前記樹脂混合物は、記載された原料成分の他に添加剤をさらに含むことができる。例えば、フィラー、着色剤、紫外線安定剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤などが製品の目的及び用途によって添加できる。
【0035】
図2及び
図3は、本発明の一実施形態に従うターポリンの生地層を拡大図示した斜視図である。
図2を参照すると、生地層10は、経糸11、緯糸12、及びグラウンド糸13aを含むことができる。前記経糸11及び前記緯糸12のうちのいずれか1つは、HDPEマルチフィラメント糸であり、他の1つはPPマルチフィラメント糸でありえる。前記グラウンド糸13aはPET糸でありえる。
【0036】
例えば、前記経糸11の上に前記緯糸12が配置され、前記グラウンド糸13aは前記経糸11と前記緯糸12との交差点を横切って前記経糸11に沿って捩れたZ配列構造を有することができる。
【0037】
図3を参照すると、経糸11の上に緯糸12が配置され、グラウンド糸13bは経糸11と同一の方向に延長され、前記経糸11と前記緯糸12との交差点で捩れるI配列構造を有することができる。
【0038】
図2及び
図3に配置された生地層の構造は例示的なものであって、本発明はこれに限定されず、ターポリンに適用できることと知られた多様な構造を有することができる。
ターポリンの製造方法
図4は、本発明の一実施形態に従うターポリンの製造方法及びこれに用いられる装置を図示した断面図である。
【0039】
図4を参照すると、本発明の一実施形態に従うターポリンの製造方法は、生地層10に樹脂層20を結合するステップを含み、このために樹脂コーティング装置が利用できる。
まず、樹脂コーティング装置のホッパー700を通じて、LDPE、PP、オレフィン系共重合体のような樹脂層原料が投入される。前記樹脂層原料はシリンダー600に供給され、シリンダー600に加えられる熱と、シリンダー600の内部のスクリューの回転運動と直線運動により溶融混合される。
【0040】
一実施形態によれば、前記樹脂層原料はLDPE及びPPを含むことができる。例えば、前記樹脂層原料はLDPE30重量%乃至70重量%、及びPP70重量%乃至30重量%を含むことができる。前記PPはホモPPまたはランダムPPを含むことができる。
【0041】
本発明の他の実施形態によれば、前記樹脂層原料は、LDPE、PP、及びオレフィン系共重合体を含むことができる。例えば、前記樹脂層原料は、LDPE10重量%乃至70重量%、PP10重量%乃至70重量%、及びオレフィン系共重合体10重量%乃至70重量%を含むことができる。好ましくは、前記樹脂層原料は、LDPE30重量%乃至50重量%、PP30重量%乃至50重量%、及びオレフィン系共重合体10重量%乃至20重量%を含むことができる。
【0042】
前記樹脂層原料は既説明されたことと同一であるので、具体的な説明は省略する。
前記溶融された樹脂混合物はアダプター500に提供され、前記アダプター500は前記溶融された樹脂混合物を一定量でT-ダイ100に提供する。前記アダプター500と前記T-ダイ100との間にはスクリーン400が配置され、前記溶融された樹脂混合物が前記スクリーン400を通過する過程で異質物などが除去される。
【0043】
前記T-ダイ100は前記溶融された樹脂混合物から樹脂フィルム25を形成する。前記T-ダイ100の下部には移送ローラー200及び加圧ローラー300が配置される。前記移送ローラー200は生地層10を移送し、前記加圧ローラー300の加圧により、前記生地層10の一面に前記樹脂フィルム25が結合される。例えば、前記移送ローラー200はゴムローラーでありえ、前記加圧ローラー300はエンボローラーでありえる。
【0044】
前記樹脂コーティング装置またはこれと同一の構成の他のコーティング装置を用いて、前記生地層の他面に樹脂層をさらに形成することができる。
前記樹脂コーティング装置で、前記シリンダー600、前記アダプター500、前記スクリーン400、及び前記T-ダイ100は適正工程温度を有するように熱が加えられることができる。
【0045】
一実施形態によれば、前記シリンダー600の温度は90℃乃至260℃でありえ、前記アダプター500の温度は230℃乃至260℃でありえ、前記スクリーン400の温度は225℃乃至255℃でありえる。好ましくは、前記シリンダー600の温度は90℃乃至245℃でありえ、前記アダプター500の温度は230℃乃至245℃でありえ、前記スクリーン400の温度は225℃乃至240℃でありえる。
【0046】
前記シリンダー600の温度は位置によって異なることができる。例えば、前記シリンダー600の温度はホッパー700に近い領域で相対的に低く、前記アダプター500に近いほど徐々に増加することができる。
【0047】
図5は、本発明の一実施形態に従うターポリンの製造方法で、T-ダイの温度勾配を図示した図である。
前記T-ダイ100の温度は領域によって異なることができる。例えば、前記T-ダイ100は樹脂フィルム25を吐出する方向(D1)に垂直な方向に沿って温度が変わることがある。
【0048】
例えば、前記T-ダイ100のフィルム形成部は中心領域(C1)と離隔した第1周辺領域(P1)、前記第1周辺領域(P1)と反対方向に前記中心領域(C1)から離隔した第2周辺領域(P2)、前記中心領域(C1)と前記第1周辺領域(P1)との間に配置された第1中間領域(M1)、及び前記中心領域(C1)と前記第2周辺領域(P2)との間に配置された第2中間領域(M2)を含むことができる。
【0049】
一実施形態によれば、前記中心領域(C1)、前記第1周辺領域(P1)、及び前記第2周辺領域(P2)は互いに同一の第1温度に加熱することができ、前記第1中間領域(M1)及び前記第2中間領域(M2)は第1温度より高い第2温度に加熱できる。
【0050】
例えば、前記第1温度は220℃乃至240℃でありえ、前記第2温度は230℃乃至250℃でありえる。
本発明の一実施形態によれば、前記のようなT-ダイ100の温度分配を通じて樹脂層の平滑度を改善することができる。
【0051】
本発明によれば、高価のオレフィン系共重合体の代りに、LDPE及びPPを樹脂層の主材料に用いて製造費用を低減し、かつ既存のポリオレフィン系ターポリンに比べてターポリンの柔軟性、表面強度、及び耐クラック性を改善することができる。また、従来のポリオレフィン系ターポリンで樹脂層と生地層を結合するためには300℃以上の高温が必要であり、低い温度で結合する場合、接着力の低下による分離/剥離が発生することがあるが、本発明で用いられる樹脂材料は従来の樹脂材料より低い温度(45℃以上の温度差)で生地層に結合できるので、高温加工で生地層のPPマルチフィラメント糸の溶融によって、最終の製品の引張強度及び引裂強度が低下することを防止することができる。
【0052】
以下、本発明の実施形態に従うターポリン及び比較例の性能実験を通じて本発明の効果を説明する。
実施形態1
HDPEマルチフィラメント糸及びPPマルチフィラメント糸を経糸及び緯糸に用いて、PET糸をグラウンド糸に用いて製織された生地(厚さ0.48mm、XTE350、ポリテックアイエヌディー)に、
図4の樹脂コーティング装置を用いて両面に樹脂層(厚さ0.12mm)を形成した。
【0053】
前記樹脂層を形成するための樹脂原料はLDPE(LDPE963、ハンファ石油化学)40重量%、ホモPP(4017M、大韓油化)45重量%及びオレフィン系共重合体(CA207A、Lyondell Basell)15重量%を混合しており、以下の表1及び表2の温度条件によって加熱/押出/ラミネートした。以下の表1で#1はホッパーに近い領域であり、#6はアダプターに近い領域である。表2で、#1及び#9は最外郭領域であり、#5は中心領域であり、#2、#3、#6、#7は最外郭領域と中心領域との間の中間領域である。
【0054】
【0055】
【0056】
前記実施形態1のターポリン試片と、比較例として、PPマルチフィラメント糸の生地層の上にエチレン-プロピレンオレフィン系共重合体(CA207A、Lyondell Basell)とスチレン-エチレン-ブタジエン共重合体(CA10A、Lyondell Basell)からなる樹脂層を形成したターポリン試片の引裂強度(ASTM D751-06:Trapezoid method)、耐摩耗性(表面硬度、ASTM D3884:Taber method)及び接着力(生地層-樹脂層の分離後、肉眼観察)を評価して以下の表3に示した。
【0057】
【0058】
表3を参照すると、本発明により製造されたターポリンは従来のオレフィン系ターポリンに比べて引裂強度、表面硬度、及び接着力に優れることを確認することができる。
前述したように、本発明の例示的な実施形態を参照して説明したが、該当技術分野で通常の知識を有する者であれば、下記の特許請求範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更させることができることを理解することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、防水用天幕、農業用施設天幕、臨時天幕などに使われることができる。