(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】チャック装置および管状体加工装置
(51)【国際特許分類】
B23B 13/02 20060101AFI20220215BHJP
【FI】
B23B13/02 F
(21)【出願番号】P 2021122550
(22)【出願日】2021-07-27
【審査請求日】2021-07-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521330725
【氏名又は名称】株式会社小間工業
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小間 隆敏
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-044985(JP,U)
【文献】英国特許出願公開第02035178(GB,A)
【文献】実開昭63-004201(JP,U)
【文献】実開昭49-028270(JP,U)
【文献】実開平03-087502(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 13/02
B23B 31/00-31/42
B23B 19/00-19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状体に作業油を供給しながら切削加工を行う加工機構に用いられるチャック装置であって、
前記管状体の一端部が挿入され、この一端部を把持する把持部を有するチャック本体と、
前記チャック本体内に設けられ金属材料にて構成された封止部材と、を備え、
前記チャック本体は、前記把持部と挿通穴を介して連通する連結穴を有し、
前記封止部材は、
前記連結穴の内径寸法にほぼ等しい外径寸法を有する円盤状の基台部と、この基台部の一端面から突出する凸条部と、を有し、前記凸条部が前記挿通穴を挿通して前記把持部の内部に配置され、前記把持部に前記管状体の一端部を挿入して把持することにより、前記
管状体の一端部が当接し、この一端部を封止する、
ことを特徴とするチャック装置。
【請求項2】
前記凸条部は、前記管状体の内径寸法より大きな外径寸法を有し、
この凸条部の先
端側には、テーパ状のテーパ部が設けられている
ことを特徴とする請求項
1に記載のチャック装置。
【請求項3】
前記封止部材は、前記連結穴内に挿入される連結部材によって前記チャック本体内での軸方向に沿った移動が規制される
ことを特徴とする請求項1
または2に記載のチャック装置。
【請求項4】
前記封止部材と前記連結部材との間には、この封止部材を前記把持部に向けて付勢する付勢部材が取り付けられている
ことを特徴とする請求項
3に記載のチャック装置。
【請求項5】
請求項1ないし
4のいずれか一項に記載のチャック装置と、
このチャック装置を前記把持部の軸方向に移動させる移動機構と、
前記チャック装置にて把持された前記管状体に作業油を供給しながら切削加工を行う加工機構と、
を具備したことを特徴とする管状体加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状体の一端部が挿入され、この一端部を把持するチャック装置および管状体加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、持続可能な開発のための2030アジェンダ、平成27(2015)年9月25日国連サミット採択、以下「SDGs」という。)の推進に向けた取り組みが国際規模で行われている。具体的に、SDGsの目標としては、目標9:産業と技術革新の基板をつくろう、目標12:作る責任、使う責任、目標13:気候変動に具体的な対策を、目標14:海の豊かさを守ろう、目標15:陸の豊かさを守ろう、等があり、これら目標の解決を目指した技術の開発が望まれている。
【0003】
これら目標の解決に貢献できる技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。この特許文献1には、管状部材Wを把持するフィンガー部6と、フィンガー部を支持する本体部分2とを備え、フィンガー部は、割り溝8によって分割された複数のフィンガー7を有し、本体部分は、割り溝と流体連通する貫通穴3を有する。管状材料の中空部と、本体部分の貫通穴とを隔絶し、管状材料の中空部から貫通穴への切削油の漏出を阻止する漏出防止部材(ウレタンゴム又はシリコンゴム等の弾性材)10が、フィンガー部に設けられたフィンガーチャック1について記載されている。そして、特許文献1に記載のフィンガーチャックは、管状部材の中空部を逆流した切削油がフィンガーチャックからの流出を防止できる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のフィンガーチャックは、漏出防止部材がウレタンゴム又はシリコンゴム等の弾性材で構成されているため、切削油に触れ続ける環境においては劣化が生じ易く、長期間に亘って適切に切削油(作業油)の流出を防止することが容易でないという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、長期間に亘って適切に作業油の流出を防止することが容易にできるチャック装置および管状体加工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のチャック装置は、管状体に作業油を供給しながら切削加工を行う加工機構に用いられるチャック装置であって、前記管状体の一端部が挿入され、この一端部を把持する把持部を有するチャック本体と、前記チャック本体内に設けられ金属材料にて構成された封止部材と、を備え、前記封止部材は、前記把持部に前記管状体の一端部を挿入して把持することにより、前記筒状体の一端部が当接し、この一端部を封止する、ことを特徴としている。
【0008】
また、本発明の管状体加工装置は、前記チャック装置と、このチャック装置を前記把持部の軸方向に移動させる移動機構と、前記チャック装置にて把持された前記管状体に作業油を供給しながら切削加工を行う加工機構と、を具備した、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業油の流出を長期間に亘って適切に防止することが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るチャック装置を示す概略図である。
【
図2】上記チャック装置の軸方向概略断面図である。
【
図3】上記チャック装置のチャック本体を示す概略図で、(a)は径方向断面図、(b)は中心軸方向断面図である。
【
図4】上記チャック装置の封止部材を示す概略図で、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は背面図である。
【
図5】上記チャック装置を備えた管状体加工装置を示す概略図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るチャック装置を示す概略図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係るチャック装置を示す概略図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係るチャック装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
[構造:チャック装置]
本発明の第1実施形態について図面を参照して説明すると、
図1および
図2に示すように、本発明の第1実施形態に係るチャック装置であるフィンガーチャック1は、例えば直径1mm~60mm程度で長さ1m~5m程度の管状の管状体としてのパイプ材Aの軸方向の一端部を保持し、このパイプ材Aを軸方向に適宜移動させるためのものである。そして、フィンガーチャック1は、円筒状の装置本体としてのチャック本体2と、このチャック本体2の内部に同心状に挿入された封止部材としてのキャップ体3とを備えている。ここで、これらチャック本体2およびキャップ体3は、剛性に優れた同一素材の金属材料にて構成されている。
【0013】
チャック本体2の軸方向の一端側には、パイプ材Aの軸方向の一端部が挿入され、このパイプ材Aの一端部を把持する把持部21が設けられている。この把持部21は、チャック本体2の一端縁から他端側に向けて軸方向に沿って切り欠かれた切欠溝21aと、この切欠溝21aの他端側に中心軸方向に向けて貫通した貫通孔21bにて構成されている。切欠溝21aは、
図3(a)に示すように、チャック本体2の周方向に沿って等間隔に離間させた位置に等しい間隔で複数、例えば計2~4個ほど設けられている。また、これら各切欠溝21aは、チャック本体2の中心軸方向に貫通しており、このチャック本体2の一端縁からチャック本体2の長さ寸法の約3分の1程度の長さに亘って設けられている。
【0014】
さらに、貫通孔21bは、切欠溝21aの幅寸法より大きな径寸法とされ、各切欠溝21aの他端側に連続して設けられている。そして、各貫通孔21bは、各切欠溝21aによるチャック本体2の一端側の径方向に沿った弾性変形を容易にし、このチャック本体2の一端側の拡径幅を増幅させる機能を有している。また、各貫通孔21bは、チャック本体2の軸方向に沿って、各貫通孔21bの中心位置が、切欠溝21aの幅方向の中心位置に沿う位置に設けられている。
【0015】
図3(b)に示すように、チャック本体2の一端側の中心位置には、パイプ材Aの一端側を内嵌合させるための断面円形状の嵌合穴21cが同心状に設けられている。この嵌合穴21cは、パイプ材Aの外形寸法より若干大きな内径寸法に形成されており、チャック本体2の軸方向に沿って、このチャック本体2の一端側から貫通孔21bを越えた位置までに亘って設けられている。すなわち、嵌合穴21cは、切欠溝21aと貫通孔21bとを足した中心軸方向に沿った長さ寸法よりも、大きな長さ寸法を有している。
【0016】
さらに、チャック本体2の嵌合穴21cの他端側には、この嵌合穴21cより径寸法が小さな挿通穴22が同心状に設けられている。この挿通穴22は、パイプ材Aの内径寸法より若干大きな内径寸法に形成されており、チャック本体2の一端側から、パイプ材Aの一端側をチャック本体2の嵌合穴21cに挿入して嵌合させた際に、このパイプ材Aの一端が、嵌合穴21cと挿通穴22との間に形成された段部22aに当接し、このパイプ材Aの中心軸方向に沿った穴部A1と挿通穴22とが同心状に連通する構成となっている。
【0017】
また、チャック本体2の挿通穴22の他端側には、嵌合穴21cより内径寸法が大きな連結穴23が同心状に設けられている。この連結穴23は、チャック本体2の他端側に向けて開口しており、
図1および
図2に示すように、チャック本体2の他端側から挿入される連結部材5を固定させるものである。さらに、この連結穴23には、キャップ体3が取り付けられ、このキャップ体3を他端側から連結穴23に挿入してから、この連結穴23に連結部材5の一端側が挿入される構成となっている。また、チャック本体2の他端寄りの外周面には、このチャック本体2の外周面から連結穴に亘って径方向に沿って貫通した接続孔23aが設けられている。この接続孔23aは、チャック本体2の周方向に沿って等間隔に離間させた位置に180°間隔で計2個設けられている。そして、これら各接続孔23aは、チャック本体2の連結穴23へ連結部材5を挿入した際に、この連結部材5に設けられた挿通孔5aに連通し、これら連通した各接続孔23aおよび挿通孔5aにピン材5bを挿入させて、チャック本体2の他端側に連結部材5を固定させる構成となっている。なお、連結部材5をチャック本体2の他端側に固定する構成としては、上記のピン材5bを用いずに、例えばチャック本体2の他端側を雌ねじ形状とし、連結部材5の先端側を雄ねじ形状として、ねじ止めする構成も可能である。
【0018】
一方、キャップ体3は、
図4(a)ないし
図4(c)に示すように、チャック本体2の連結穴23の内径寸法より若干小さな外径寸法を有する円盤状の基台部としての円盤部3aと、この円盤部3aの軸方向の一端側に同心状に突出した円筒状の凸条部としての突出部3bと、この突出部3bの先端側に同心状に突出した円錐状のテーパ部3cと、を備えている。突出部3bは、チャック本体2の挿通穴22の内径寸法より若干小さく、パイプ材Aの穴部A1の内径寸法より若干大きな外径寸法であって、中心軸方向の高さ寸法がチャック本体2の挿通穴22の中心軸方向の長さ寸法とほぼ等しく形成されている。
【0019】
そして、キャップ体3は、
図1および
図2に示すように、このキャップ体3の突出部3bおよびテーパ部3cをチャック本体2の一端側に向けた状態で、このチャック本体2の他端側から連結穴23に挿入させて取り付けられている。この状態で、キャップ体3は、突出部3bおよびテーパ部3cがチャック本体2の挿通穴22に挿入され、このキャップ体3の円盤部3aの一端側の一側面が、チャック本体2の連結穴23と挿通穴22との間の平面部24に接触し、キャップ体3の突出部3bの外周面がチャック本体2の挿通穴22の内周面に接触した状態とされ、チャック本体2の一端側から嵌合穴21cに挿入されたパイプ材Aの穴部A1にキャップ体3のテーパ部3cが挿入される構成となっている。
【0020】
また、チャック本体2の他端側の連結穴23には、略円柱状の連結部材5の一端部が挿入される。この連結部材5の軸方向の一端側には、チャック本体2の連結穴23に挿入して、このチャック本体2に連結させる嵌合筒部5cが設けられている。この嵌合筒部5cは、チャック本体2の連結穴23の内径寸法より若干小さな外径寸法であって、この連結穴23の中心軸方向における長さ寸法にほぼ等しい長さ寸法を有する略円柱状に形成されている。そして、この嵌合筒部5cの中心軸方向の他端寄りの位置には、この嵌合筒部5cの径方向に貫通した挿通孔5aが設けられている。
【0021】
ここで、嵌合筒部5cをチャック本体2の連結穴23に挿入させて、この連結部材5の挿通孔5aをチャック本体2の接続孔23aに連通させる。そして、これら連通した挿通孔5aおよび接続孔23aにピン材5bを挿入して、この連結部材5をチャック本体2の他端側に連結させる。この状態で、連結部材5は、この連結部材5の嵌合筒部5cの先端部がキャップ体3の円盤部3aを押圧して、このキャップ体3のテーパ部3cを、チャック本体2の一端側から嵌合穴21cに挿入されたパイプ材Aの穴部A1に押し付ける。要するに、連結部材5は、パイプ材Aの内部に流入した作業油である切削油が穴部A1から漏れないように、このパイプ材Aの穴部A1の一端をテーパ部3cにて封止する構成となっている。
【0022】
[構成:管状体加工装置]
さらに、フィンガーチャック1は、
図5に示すように、パイプ材Aの先端部を加工する管状体加工装置としてのパイプ加工装置100に取り付けられている。このパイプ加工装置100は、フィンガーチャック1のチャック本体2の他端側に連結される連結部材5と、この連結部材5に取り付けられ、この連結部材5を中心軸方向に沿って移動させたり周方向に回転させたりすることで、フィンガーチャック1にてチャックしたパイプ材Aを中心軸方向に沿って移動させるとともに周方向に回転させる移動機構101と、このフィンガーチャック1にてチャックしたパイプ材Aの先端側が挿入され、このパイプ材Aの先端部に切削油を供給、具体的には吹き付け、又はパイプ材Aの先端部を切削油に浸からせながら、このパイプ材Aの先端部を切削加工する加工機構102と、を備えている。
【0023】
さらに、パイプ加工装置100は、複数本のパイプ材Aを載置させて支持し、この複数本のパイプ材Aのうちの1本のパイプ材Aを中心軸方向に沿って摺動させるための載置テーブル103を備え、この載置テーブル103の一端側に加工機構102が取り付けられ、この載置テーブル103の他端側に移動機構101が取り付けられた構成となっている。
【0024】
[作用]
次に、上記第1実施形態に係るフィンガーチャック1の作用(組み付け方法)について、
図1および
図2を参照しながら、説明する。
【0025】
まず、キャップ体3のテーパ部3cを、チャック本体2の一端側に向けた状態とし、この状態で、チャック本体2の他端側から、キャップ体3を挿入する。このとき、キャップ体3のテーパ部3cは、チャック本体2の挿通穴22を挿通し、この挿通穴22にキャップ体3の突出部3bが嵌合した状態となり、このキャップ体3の円盤部3aの一端側の一側面がチャック本体2の平面部24に接触した状態となる。
【0026】
その後、チャック本体2の他端側から、連結部材5の嵌合筒部5cをチャック本体2の連結穴23に挿入して、この連結部材5の挿通孔5aをチャック本体2の接続孔23aに連通させる。この状態で、これら連通した挿通孔5aおよび接続孔23aにピン材5bを挿入して、連結部材5をチャック本体2の他端側に連結させる。このとき、チャック本体2に対する連結部材5の周方向の移動および中心軸方向の移動のそれぞれが規制された状態となる。なお、連結部材5をチャック本体2に連結する構成としては、上記のようにねじ止めにて固定する構成も可能である。
【0027】
そして、パイプ加工装置100の載置テーブル103に複数本のパイプ材Aをセットした状態で、移動機構101にて連結部材5を中心軸方向に沿ってチャック本体2の一端側に向けて移動させ、この連結部材5とともにチャック本体2を中心軸方向に沿って移動させ、このチャック本体2の嵌合穴21cにパイプ材Aの一端を嵌合させる。
【0028】
このとき、パイプ材Aの一端部は、チャック本体2の切欠溝21a間の周面部の弾性変形によって、このチャック本体2の把持部21にて把持、すなわちパイプ材Aの周方向への移動および中心軸方向への移動が規制される。
【0029】
また、パイプ材Aの一端側の端面は、チャック本体2の嵌合穴21cの基端側に設けられた段部22aに接触し、かつこのパイプ材Aの一端側の穴部A1にキャップ体3のテーパ部3cが嵌合した状態となる。その結果、このテーパ部3cがパイプ材Aの穴部A1に押し付けられ、パイプ材Aの内部に流入した切削油がパイプ材Aの穴部A1から漏れないように、このパイプ材Aの穴部A1の一端がテーパ部3cにて封止された状態となる。
【0030】
この状態で、移動機構101を駆動させて、パイプ材Aの先端部をパイプ加工装置100の加工機構102内に挿入させ、このパイプ材Aの先端部に切削油を吹き付け、又はパイプ材Aの先端部を切削油に浸からせながら、このパイプ材Aの先端部を加工機構102にて内外径加工および切り離し加工等の所定の切削加工を行う。
【0031】
この加工機構102による切削加工のときに、このパイプ材Aの先端側の端部から切削油がパイプ材Aの穴部A1に侵入してしまうおそれがあるが、このパイプ材Aの穴部A1から内部に侵入した切削油は、チャック本体2のキャップ体3によるパイプ材Aの一端側の穴部A1の封止によって、このパイプ材Aの一端側の穴部A1からの切削油の漏れが防止される。
【0032】
[作用効果]
上記の第1実施施形態に係るフィンガーチャック1においては、チャック本体2の一端側から嵌合穴21cにパイプ材Aの一端部を嵌合させることによって、パイプ材Aの一端側の穴部A1が、チャック本体2内に挿入されたキャップ体3のテーパ部3cにて封止された状態となるため、パイプ加工装置100にてパイプ材Aの先端部を切削加工等する際に、このパイプ材Aの先端部に切削油を吹き付け、又はパイプ材Aの先端部を切削油に浸からせたときに、この切削油がパイプ材Aの穴部A1に侵入したとしても、このパイプ材Aの一端側の穴部A1からの切削油の流出、すなわち漏れを確実に防止することが容易にできる。
【0033】
そして、パイプ材Aの搬送時の暴れを防止するために移動機構1001に設置されたパイプ材Aにオイルを吹き付けるオイルフィーダー(図示せず)を用いたパイプ加工装置100の場合においては、パイプ材Aの一端側の穴部A1からの切削油の漏れを確実に防止することにより、この切削油によるオイルフィーダー用のオイルへの混入を防止でき、切削油が混入することで生じるオイルの劣化を防止できるので、特に有効である。
【0034】
特に、パイプ材Aの一端側の穴部A1をキャップ体3のテーパ部3cにて封止する構成としているため、内径寸法の異なるパイプ材Aであっても、このパイプ材Aの一端側の穴部A1をキャップ体3のテーパ部3cにて確実に封止できる。したがって、種々の内径寸法の異なるパイプ材Aに用いることができ、汎用性の高いフィンガーチャック1を提供することが可能となる。
【0035】
また、チャック本体2とキャップ体3のそれぞれを、剛性に優れた同一素材の金属材料にて構成しているため、例えば、パイプ材Aの一端側の穴部A1をウレタンゴム又はシリコンゴム等の弾性材で封止する場合に比べ、キャップ体3の劣化が生じ難いから、長期間に亘って適切に切削油の流出を防止することが容易にできる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明に係るフィンガーチャックの第2実施形態について、
図6を参照しながら説明する。この第2実施形態に係るフィンガーチャック1Aは、上記の第1実施形態に係るフィンガーチャック1に対し、チャック本体2の挿通穴22を設けずに、このチャック本体2の嵌合穴21cと連結穴23との間を壁材61にて仕切って封止する構成とされている。
【0037】
この壁材61は、円盤状に形成され、チャック本体2の嵌合穴21cと連結穴23との間に同心状に設けられている。そして、この壁材61は、チャック本体2の一端側から嵌合穴21cに挿入されたパイプ材Aの一端側の端面が周方向に亘って面接触し、このパイプ材Aの一端側の穴部A1を封止する構成となっている。
【0038】
したがって、上記の第2実施施形態に係るフィンガーチャック1Aであっても、チャック本体2の一端側から嵌合穴21cにパイプ材Aの一端部を嵌合させることによって、このパイプ材Aの一端側の穴部A1がチャック本体2の壁材61に接触して封止されるため、このパイプ材Aの内部に侵入した切削油が、パイプ材Aの一端側の穴部A1から漏れることを、簡単な構成で確実に防止できる。
【0039】
(第3実施形態)
次に、本発明に係るフィンガーチャックの第3実施形態について、
図7を参照しながら説明する。この第3実施形態に係るフィンガーチャック1Bは、上記の第1実施形態に係るフィンガーチャック1に対し、チャック本体2のキャップ体3と連結部材5の嵌合筒部5cとの間に、このキャップ体3をパイプ材Aの一端側の穴部A1に押し付けて付勢する付勢部材としてのスプリング材71が取り付けられた構成とされている。
【0040】
このスプリング材71は、螺旋状に巻回したコイルバネであり、チャック本体2の連結穴23の内径寸法、要するにキャップ体3の円盤部3aの外形寸法より若干小さな外径寸法に形成され、チャック本体2の連結穴23内のキャップ体3と嵌合筒部5cとの間に挿入されて取り付けられている。すなわち、スプリング材71の中心軸方向の一端側は、キャップ体3の円盤部3aの他端側の一側面に接しており、このスプリング材71の中心軸方向の他端側は、連結部材5の嵌合筒部5cの先端側の一端面に接した状態とされている。
【0041】
この結果、上記の第3実施施形態に係るフィンガーチャック1Bにおいては、チャック本体2の一端側から嵌合穴21cにパイプ材Aの一端部を嵌合させることによって、このパイプ材Aの一端側の穴部A1にチャック本体2内に取り付けられたキャップ体3のテーパ部3cが嵌合して封止され、このパイプ材Aの一端側の穴部A1に対するキャップ体3のテーパ部3cの嵌合がスプリング材71の弾性力にて付勢される。
【0042】
よって、このスプリング材71の弾性力によって、パイプ材Aの一端側の穴部A1に対するキャップ体3による封止がより確実となるので、このパイプ材Aの内部に侵入した切削油が、パイプ材Aの一端側の穴部A1から漏れることを、より確実に防止できる。
【0043】
(第4実施形態)
次に、本発明に係るフィンガーチャックの第4実施形態について、
図8を参照しながら説明する。この第4実施形態に係るフィンガーチャック1Cは、上記の第3実施形態に係るフィンガーチャック1Bとは異なり、キャップ体3の内部に、このキャップ体3をパイプ材Aの一端側の穴部A1に押し付けて付勢する付勢部材としてのスプリング材81が取り付けられた構成とされている。
【0044】
具体的に、フィンガーチャック1Cのチャック本体2は、このチャック本体2の挿通穴22の基端側に、この挿通穴22の内径寸法より内径寸法が小さな係止穴82が設けられている。そして、このチャック本体2の挿通穴22に挿通されるキャップ体3は、円盤部3aを有しておらず、突出部3bとテーパ部3cとで構成されている。そして、このキャップ体3の他端側の中心位置には、中心軸方向に沿った断面円形状の嵌合凹部83が設けられている。この嵌合凹部83の一端側には、この嵌合凹部83の内径寸法より小さな内径寸法を有するねじ穴84が設けられている。
【0045】
そして、チャック本体2の係止穴82には、この係止穴82の基端側からねじ材85の軸部86が中心軸方向に移動可能に挿入されており、このねじ材85の皿部87が係止穴82に係止する構成とされている。そして、このねじ材85の軸部86は、スプリング材81に挿通させて取り付けられ、このねじ材85の先端側がキャップ体3のねじ穴84にねじ止めされて固定されている。この状態で、スプリング材81は、キャップ体3の嵌合凹部83内に同心状に取り付けられ、この嵌合凹部83内に収容されている。よって、スプリング材81は、チャック本体2の係止穴82とキャップ体3との間におけるスプリング材81の弾性力によって、キャップ体3をチャック本体2の一端側に付勢する。さらに、ねじ材85の皿部87と係止穴82との間には、このねじ材85の軸部86を挿通させてワッシャ88が取り付けられている。
【0046】
この結果、上記の第4実施施形態に係るフィンガーチャック1Cは、チャック本体2の一端側から嵌合穴21cにパイプ材Aの一端部を嵌合させることによって、このパイプ材Aの一端側の穴部A1にチャック本体2内に取り付けられたキャップ体3のテーパ部3cが嵌合して封止され、このパイプ材Aの一端側の穴部A1に対するキャップ体3のテーパ部3cの嵌合がスプリング材81の弾性力にて付勢される。
【0047】
よって、このスプリング材81の弾性力によって、パイプ材Aの一端側の穴部A1に対するキャップ体3による封止がより確実となるので、このパイプ材Aの内部に侵入した切削油が、パイプ材Aの一端側の穴部A1から漏れることを、より確実に防止できる。
【0048】
(その他)
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形態様が含まれる。例えば、前述した実施形態は、本発明を分りやすく説明するために説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1,1A,1B,1C フィンガーチャック(チャック装置)
2 チャック本体
21 把持部
21a 切欠溝
21b 貫通孔
21c 嵌合穴
22 挿通穴
22a 段部
23 連結穴
23a 接続孔
24 平面部
3 キャップ体(封止部材)
3a 円盤部(基台部)
3b 突出部(凸条部)
3c テーパ部
5 連結部材
5a 挿通孔
5b ピン材
5c 嵌合筒部
61 壁材
71,81 スプリング材(付勢部材)
82 係止穴
83 嵌合凹部
84 ねじ穴
85 ねじ材
86 軸部
87 皿部
88 ワッシャ
100 パイプ加工装置(管状体加工装置)
101 移動機構
102 加工機構
103 載置テーブル
A パイプ材
A1 穴部
【要約】
【課題】長期間に亘って適切に切削油の流出を防止することが容易にできるフィンガーチャックおよびパイプ加工装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るフィンガーチャック1は、パイプ材Aに切削油を供給しながら切削加工を行う加工機構102に用いられる。フィンガーチャック1は、パイプ材Aの一端部が挿入され、この一端部を把持する把持部21を有するチャック本体2と、チャック本体2内に設けられ金属材料にて構成されたキャップ体3と、を備えている。キャップ体3は、把持部21にパイプ材Aの一端部を挿入して把持することにより、パイプ材Aの一端部が当接し、この一端部を封止する。
【選択図】
図1