(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】アレーアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/08 20060101AFI20220215BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20220215BHJP
H04B 7/0413 20170101ALI20220215BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20220215BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20220215BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
H01Q21/08
H01Q3/26 Z
H04B7/0413
H04B7/06 150
H04B7/08 420
G01S7/02 216
(21)【出願番号】P 2017196161
(22)【出願日】2017-10-06
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】時枝 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】西山 拓真
(72)【発明者】
【氏名】小田 康明
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-116425(JP,A)
【文献】特開2017-090229(JP,A)
【文献】特開2005-257384(JP,A)
【文献】特開2013-217884(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0109191(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107102291(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0271311(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/08
H01Q 3/26
H04B 7/0413
H04B 7/06
H04B 7/08
G01S 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の間隔ごとに複数の第1の配設位置が設けられ、前記第1の配設位置のうち一部の第1の配設位置に第1の実在アンテナ素子が配設され、他の第1の配設位置には前記第1の実在アンテナ素子が配設されない第1の仮想アンテナ素子が配設された
送信アンテナと、
第2の間隔ごとに複数の第2の配設位置が設けられ、前記第2の配設位置のうち一部の第2の配設位置に第2の実在アンテナ素子が配設され、他の第2の配設位置には前記第2の実在アンテナ素子が配設されない第2の仮想アンテナ素子が配設された
受信アンテナと、を備え、
前記第1の実在アンテナ素子と前記第2の実在アンテナ素子は、前記送信アンテナと前記受信アンテナでMIMOレーダー用のアンテナを構成するように配設されているとともに、
前記第1の実在アンテナ素子間の信号差を利用して前記第1の仮想アンテナ素子の信号を補間できるように前記第1の実在アンテナ素子が配設され、前記第2の実在アンテナ素子間の信号差を利用して前記第2の仮想アンテナ素子の信号を補間できるように前記第2の実在アンテナ素子が配設され
て、
前記第1の実在アンテナ素子の配設位置に対応する数値を最上行として並べるとともに前記第1の実在アンテナ素子の配設位置に対応する前記数値を符号反転した数値を最左列として並べてこれらの数値を縦横加算した行列内の数値が連番であるとともに、
前記第2の実在アンテナ素子の配設位置に対応する数値を最上行として並べるとともに前記第2の実在アンテナ素子の配設位置に対応する前記数値を符号反転した数値を最左列として並べてこれらの数値を縦横加算した行列内の数値が連番であり、且つ、
前記MIMOレーダー用のアンテナにおける実在アンテナ素子の配設位置に対応する数値を最上行として並べるとともに前記実在アンテナ素子の配設位置に対応する前記数値を符号反転した数値を最左列として並べてこれらの数値を縦横加算した行列内の数値が連番である、
ことを特徴とするアレーアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナ素子(放射素子)が規則的に配設されたアレーアンテナ装置に関し、特に、仮想アンテナ素子を有するアレーアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダーのアレーアンテナ装置において、分解能を高めるにはアンテナの開口長を大きくすることが有効である。しかしながら、多くのアンテナ素子を配設すると、コストが嵩むばかりでなく、回路規模や演算規模が大きくなり実用化が困難になるおそれがある。一方、少ないアンテナ素子を長い開口に配設すると、グレーティングローブが発生し、測角できる角度範囲が狭くなって、真の方位を推定できなくなる。
【0003】
このため、少ないアンテナ素子で大開口と同等の性能を得るための手法として、共分散行列を利用したKhatri-Rao積(以下、「KR積」という)拡張アレーが提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。詳細は後述するが、このKR積拡張アレーは、所定の間隔で直線状に配設されるべき実在アンテナ素子のうち、所定の条件を満たす一部の位置に仮想アンテナ素子を配設する(実在アンテナ素子を配設しない)ことで、あたかもすべての位置に実在アンテナ素子が配設されたとみなせるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】W.K.Ma,et al., IEEE Transactions on Signal Processing, vol.58,no.4,pp.2168-2180, April 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、高周波数帯域のレーダーでは、ますますアンテナの大開口化が求められる。しかしながら、上記非特許文献1に示すような技術では、実在アンテナ素子と仮想アンテナ素子を直線状に配設するだけであるため、要求される大開口化に対応するには、多くの実在アンテナ素子を要する場合がある。
【0006】
そこで本発明は、少ない実在アンテナ素子でより大開口化に対応可能なアレーアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、第1の間隔ごとに複数の第1の配設位置が設けられ、前記第1の配設位置のうち一部の第1の配設位置に第1の実在アンテナ素子が配設され、他の第1の配設位置には前記第1の実在アンテナ素子が配設されない第1の仮想アンテナ素子が配設された送信アンテナと、第2の間隔ごとに複数の第2の配設位置が設けられ、前記第2の配設位置のうち一部の第2の配設位置に第2の実在アンテナ素子が配設され、他の第2の配設位置には前記第2の実在アンテナ素子が配設されない第2の仮想アンテナ素子が配設された受信アンテナと、を備え、前記第1の実在アンテナ素子と前記第2の実在アンテナ素子は、前記送信アンテナと前記受信アンテナでMIMOレーダー用のアンテナを構成するように配設されているとともに、前記第1の実在アンテナ素子間の信号差を利用して前記第1の仮想アンテナ素子の信号を補間できるように前記第1の実在アンテナ素子が配設され、前記第2の実在アンテナ素子間の信号差を利用して前記第2の仮想アンテナ素子の信号を補間できるように前記第2の実在アンテナ素子が配設されて、前記第1の実在アンテナ素子の配設位置に対応する数値を最上行として並べるとともに前記第1の実在アンテナ素子の配設位置に対応する前記数値を符号反転した数値を最左列として並べてこれらの数値を縦横加算した行列内の数値が連番であるとともに、前記第2の実在アンテナ素子の配設位置に対応する数値を最上行として並べるとともに前記第2の実在アンテナ素子の配設位置に対応する前記数値を符号反転した数値を最左列として並べてこれらの数値を縦横加算した行列内の数値が連番であり、且つ、前記MIMOレーダー用のアンテナにおける実在アンテナ素子の配設位置に対応する数値を最上行として並べるとともに前記実在アンテナ素子の配設位置に対応する前記数値を符号反転した数値を最左列として並べてこれらの数値を縦横加算した行列内の数値が連番である、ことを特徴とするアレーアンテナ装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、第1の実在アンテナ素子と第2の実在アンテナ素子がそれぞれ、第1の仮想アンテナ素子と第2の仮想アンテナ素子の信号を補間できるように配設されているため、少ない実在アンテナ素子でより大開口化に対応することが可能となる。すなわち、第1の実在アンテナ素子が配設されない第1の仮想アンテナ素子があっても、第1の仮想アンテナ素子の信号を補間できるように第1の実在アンテナ素子(換言すると第1の仮想アンテナ素子)が配設されていれば、KR積拡張アレーが形成され、すべての第1の配設位置に第1の実在アンテナ素子が配設されているものと等価となり、第1の実在アンテナ素子の配設数を減らすことができる。同様に、第2の実在アンテナ素子が配設されない第2の仮想アンテナ素子があっても、第2の仮想アンテナ素子の信号を補間できるように第2の実在アンテナ素子(換言すると第2の仮想アンテナ素子)が配設されていれば、KR積拡張アレーが形成され、すべての第2の配設位置に第2の実在アンテナ素子が配設されているものと等価となり、第2の実在アンテナ素子の配設数を減らすことができる。
【0010】
そして、このように配設された第1の仮想アンテナ素子を有する送信アンテナと、第2の仮想アンテナ素子を有する受信アンテナとを備えることで、アレーアンテナ装置全体としてもKR積拡張アレーが形成され、少ない実在アンテナ素子でより大開口化に対応することが可能となる、ことを本願発明者は見出したものである。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、また、送信アンテナと受信アンテナでMIMOレーダー用のアンテナが構成されるため、MIMOレーダー用のアンテナにおいて少ない実在アンテナ素子でより大開口化に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の実施の形態に係るアレーアンテナ装置のアンテナ構成を示す図である。
【
図2】
図1のアレーアンテナ装置を備えたレーダー装置を示す概略構成図である。
【
図3】この発明の実施の形態におけるKR積拡張アレーを説明するための共分散行列を示す図であり、すべてのアレーが存在する場合の図である。
【
図4】
図3の共分散行列において、一部のアレーが欠落する場合を示す図である。
【
図5】この発明の実施の形態におけるKR積拡張アレーを説明するためのアンテナ素子の補間状態例を示す図である。
【
図6】
図5の場合の共分散行列の指数のみを示す図である。
【
図7】この発明の実施の形態におけるMIMOレーダー用のアンテナによる仮想アレーアンテナを示す図である。
【
図8】
図1の場合における送信アンテナの共分散行列の指数のみを示す図(a)と、受信アンテナの共分散行列の指数のみを示す図(b)である。
【
図9】
図1の場合におけるアレーアンテナ装置全体(バーチャルアレー)の共分散行列の指数のみを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0014】
図1~
図9は、この発明の実施の形態を示し、
図2は、この実施の形態に係るアレーアンテナ装置2を備えたレーダー装置1を示す概略構成図である。このレーダー装置1は、第1のアンテナとしての送信アンテナ3と第2のアンテナとしての受信アンテナ4が上下に配置されたアレーアンテナ装置(仮想アレーアンテナ)2と、受信信号をデジタルビームフォーミング等によって信号処理してレーダー映像に変換する信号処理装置5と、を備える。
【0015】
ここで、まず、KR積拡張アレーについて説明する。所定の間隔で直線状に実在アンテナ素子が配設されている場合、例えば
図3に示すように、アンテナの受信信号と受信信号の複素共役との共分散行列は、その独立成分が連続(連番)となる。また、実在アンテナ素子が配設されるべき位置に実在アンテナ素子が配設されていない場合、すなわち、例えば
図4に示すように、共分散行列の成分に冗長性があれば受信信号と受信信号の複素共役とに欠落がある場合であっても、共分散行列における独立成分が連続となる場合がある。このように、所定の条件を満たす一部の位置に、実在アンテナ素子を配設しないで仮想アンテナ素子(欠落)を配設しても、すべての位置に実在アンテナ素子が配設されているとみなせる場合がある。つまり、信号の欠落をKR積で補間できる場合がある。
【0016】
具体的には、例えば
図5に示すように、所定の間隔dごとに複数の配設位置P
0~P
7が設けられ、この配設位置P
0~P
7のうち一部の配設位置P
0、P
1、P
2、P
4、P
7に実在アンテナ素子F
0、F
1、F
2、F
4、F
7が配設され、他の配設位置P
3、P
5、P
6には実在アンテナ素子が配設されない仮想アンテナ素子F
3、F
5、F
6が配設されているとする。この場合、仮想アンテナ素子F
3、F
5、F
6の信号を、間隔dを利用して実在アンテナ素子F
0、F
1、F
2、F
4、F
7の信号で補間することができる。
【0017】
すなわち、仮想アンテナ素子F3は、実在アンテナ素子F7から間隔4dだけ離れているため、実在アンテナ素子F0、F4間の信号差(位相回転)S4を利用して補間する。同様に、仮想アンテナ素子F5は、実在アンテナ素子F7から間隔2dだけ離れているため、実在アンテナ素子F0、F2間の信号差S2を利用して補間する。また、仮想アンテナ素子F6は、実在アンテナ素子F7から間隔dだけ離れているため、実在アンテナ素子F0、F1間の信号差S1を利用して補間する。
【0018】
さらに、同様にして、実在アンテナ素子F0を原点とする反対方向の配設位置P-1~P-7に、複素共役の仮想アンテナ素子F-1~F-7を配設することができる。このように、5つの実在アンテナ素子F0、F1、F2、F4、F7で、15のアンテナ素子F-7~F7を配設したのと等価のアンテナを構成することが可能となる。
【0019】
そして、このようなKR積拡張アレーが成立するには、共分散行列における独立成分が連続となる必要がある。すなわち、共分散行列e
inα(n:0、±1、±2・・・)における独立成分の指数のみを見た場合、
図5に示すアレーでは、
図6に示すような行列となり、-7~+7まで連番が得られ、KR積拡張アレーが成立することになる。換言すると、このように独立成分が連続となるように、実在アンテナ素子つまり仮想アンテナ素子を配設する必要がある。ここで、
図6は、図中最上行に実在アンテナ素子F
0、F
1、F
2、F
4、F
7の配設位置に対応する数値(0、1、2、4、7)が記載され、図中最左列に実在アンテナ素子F
0、F
1、F
2、F
4、F
7の配設位置に対応する複素共役の数値(-0、-1、-2、-4、-7)が記載され、これらの数値を縦横加算した数値がマトッリクス状に記載されているものに相当する。
【0020】
次に、MIMOレーダー用のアンテナにおける仮想アレーアンテナについて説明する。この仮想アレーアンテナは、例えば
図7に示すように、アンテナ素子が数波長間隔(第1の間隔)d1で配設された送信アンテナTxと、アンテナ素子が半波長間隔(第2の間隔)d2で配設され、送信アンテナTxのアンテナ素子間隔d1と同じ配列長を有する受信アンテナRxと、で構成される。
【0021】
そして、送信アンテナTxの各アンテナ素子からの送信信号を受信アンテナRxの各アンテナ素子で受信し、信号処理を施すことで、図中VAで示すように、間隔が広い送信アンテナTxのアンテナ素子間を受信アンテナRxのアンテナ素子で補間するように、仮想アレーアンテナが形成される。これにより、従来必要とされていた数分の1のアンテナ素子数で、所望のアンテナ指向性を実現できるものである。
【0022】
このようなKR積拡張アレーおよびMIMOレーダー用のアンテナを前提として、アレーアンテナ装置2が構成されている。ここで、以下に説明する送信アンテナ3や受信アンテナ4は一例であり、実在アンテナ素子FT、FRや仮想アンテナ素子VT、VRの配設位置などは、この例に限定されない。
【0023】
送信アンテナ3は、
図1に示すように、第1の間隔d1ごとに複数の第1の配設位置PT
0~PT
3が設けられ、第1の配設位置PT
0~PT
3のうち一部の第1の配設位置PT
0、PT
1、PT
3に第1の実在アンテナ素子FTが配設され、他の第1の配設位置PT
2には、第1の実在アンテナ素子FTが配設されずに第1の仮想アンテナ素子(欠落)VTが設けられている。
【0024】
同様に、受信アンテナ4は、第2の間隔d2ごとに複数の第2の配設位置PR0~PR3が設けられ、第2の配設位置PR0~PR3のうち一部の第2の配設位置PR0、PR2、PR3に第2の実在アンテナ素子FRが配設され、他の第2の配設位置PR1には、第2の実在アンテナ素子FRが配設されずに第2の仮想アンテナ素子(欠落)VRが設けられている。
【0025】
ここで、第1の実在アンテナ素子FTと第2の実在アンテナ素子FRは、送信アンテナ3と受信アンテナ4でMIMOレーダー用のアンテナを構成するように配設されている。すなわち、送信アンテナ3と受信アンテナ4で上記のような仮想アレーアンテナを構成するように、例えば上記
図7の場合と同様に、第1の間隔d1が数波長に設定され、第2の間隔d2が半波長に設定され、かつ、受信アンテナ4の配列長が第1の間隔d1と同じ長さに設定されている。
【0026】
また、第1の実在アンテナ素子FTは、第1の実在アンテナ素子FT間の信号差を利用して第1の仮想アンテナ素子VTの信号を補間できるように配設され、第2の実在アンテナ素子FRは、第2の実在アンテナ素子FR間の信号差を利用して第2の仮想アンテナ素子VRの信号を補間できるように配設されている。すなわち、送信アンテナ3および受信アンテナ4のそれぞれがKR積拡張アレーを形成するように、第1の仮想アンテナ素子VTと第2の仮想アンテナ素子VRを設ける必要があり、このためには、上記のように、共分散行列における独立成分が連続になる必要がある。このことは、送信アンテナ3および受信アンテナ4が個別にKR積によって等間隔のアレーに補間できるのであれば、MIMOレーダーによって形成される仮想アレーも、等間隔のアレーに補間できる、と本願発明者が見出したことによるものである。
【0027】
具体的には、送信アンテナ3の第1の配設位置PT
2に第1の仮想アンテナ素子VTを設けた場合、共分散行列における独立成分の指数のみを見た場合、
図8(a)に示すような行列となり、-3~+3まで連番が得られ、KR積拡張アレーが成立することになる。同様に、受信アンテナ4の第2の配設位置PR
1に第2の仮想アンテナ素子VRを設けた場合、共分散行列における独立成分の指数のみを見た場合、
図8(b)に示すような行列となり、-3~+3まで連番が得られ、KR積拡張アレーが成立することになる。
【0028】
このように、送信アンテナ3と受信アンテナ4がともにKR積拡張アレーとなるため、送信アンテナ3のすべての第1の配設位置PT
0~PT
3に第1の実在アンテナ素子FTが配設され、受信アンテナ4のすべての第2の配設位置PR
0~PR
3に第2の実在アンテナ素子FRが配設されているとみなすことができる。さらに、送信アンテナ3と受信アンテナ4によってMIMOレーダー用のアンテナによる仮想アレーアンテナが構成されているため、上記
図7の場合と同様に、素子間隔が広い送信アンテナ3のアンテナ素子間が、受信アンテナ4のアンテナ素子で補間される。
【0029】
具体的には、送信アンテナ3の第1の配設位置PT0~PT1間、PT1~PT2間、PT2~PT3間に、受信アンテナ4の第2の実在アンテナ素子FRおよび第2の仮想アンテナ素子VRが配設される。この結果、図中VAで示すように、第2の間隔d2ごとに16のアンテナ素子F0~F15が配設されているとみなすことができるものである。
【0030】
ここで、配設位置PV0、PV4、PV12に送信アンテナ3の第1の実在アンテナ素子FTが配設され、配設位置PV8に送信アンテナ3の第1の仮想アンテナ素子VTが配設され、これらのアンテナ素子FT、VT間に、受信アンテナ4のアンテナ素子FR、VRが第2の配設位置PR0~PR3の順に配設された状態となる。すなわち、配設位置PV0、PV2、PV3、PV4、PV6、PV7、PV12、PV14、PV15に実在アンテナ素子F0、F2、F3、F4、F6、F7、F12、F14、F15が位置し、配設位置PV1、PV5、PV8、PV9、PV10、PV11、PV13に仮想アンテナ素子F1、F5、F8、F9、F10、F11、F13が位置する。このように、6つの実在アンテナ素子FT、FRで16のアンテナ素子F0~F15が構成される。
【0031】
そして、このようなアンテナ素子F
0~F
15によってもKR積拡張アレーが成立するためには、共分散行列における独立成分が連続となる必要がある。すなわち、この共分散行列における独立成分の指数のみを見た場合、
図9に示すような行列となり、-15~+15まで連番が得られ、KR積拡張アレーが成立することがわかる。すなわち、送信アンテナ3と受信アンテナ4がそれぞれKR積拡張アレーを形成するのであれば、MIMOレーダー用のレーダーによって形成される仮想アレーもKR積拡張アレーを形成する、という本願発明者の推考が正しいことがわかる。
【0032】
以上のように、本アレーアンテナ装置2によれば、第1の実在アンテナ素子FTと第2の実在アンテナ素子FRがそれぞれ、第1の仮想アンテナ素子VTと第2の仮想アンテナ素子VRの信号を補間できるように配設されているため、少ない実在アンテナ素子FT、FRでより大開口化に対応することが可能となる。すなわち、第1の実在アンテナ素子FTが配設されない第1の仮想アンテナ素子VTがあっても、第1の仮想アンテナ素子VTの信号を補間できるように第1の実在アンテナ素子FT(換言すると第1の仮想アンテナ素子VT)が配設されていれば、KR積拡張アレーが形成され、すべての第1の配設位置PT0~PT3に第1の実在アンテナ素子FTが配設されているものと等価となり、第1の実在アンテナ素子FTの配設数を減らすことができる。同様に、第2の実在アンテナ素子FRが配設されない第2の仮想アンテナ素子VRがあっても、第2の仮想アンテナ素子VRの信号を補間できるように第2の実在アンテナ素子FR(換言すると第2の仮想アンテナ素子VR)が配設されていれば、KR積拡張アレーが形成され、すべての第2の配設位置PR0~PR3に第2の実在アンテナ素子FRが配設されているものと等価となり、第2の実在アンテナ素子FRの配設数を減らすことができる。
【0033】
そして、このように配設された第1の仮想アンテナ素子VTを有する送信アンテナ3と、第2の仮想アンテナ素子VRを有する受信アンテナ4とを備えることで、アレーアンテナ装置2全体としてもKR積拡張アレーが形成され、少ない実在アンテナ素子FT、FRでより大開口化に対応することが可能となる。
【0034】
しかも、送信アンテナ3と受信アンテナ4でMIMOレーダー用のアンテナによる仮想アレーアンテナが構成されているため、MIMOレーダー用のアンテナにおいて少ない実在アンテナ素子FT、FRでより大開口化に対応することが可能となる。具体的には、例えば上記のように、6つの実在アンテナ素子FT、FRで16のアンテナ素子F0~F15を構成することができる。さらに、上記のように、位相を逆回転することで、アンテナ素子F0を原点とする反対方向に複素共役のアンテナ素子(図示しないF-1~F-15)を配設することができる。つまり、6つの実在アンテナ素子FT、FRで31のアンテナ素子F-15~F15を構成することができる。
【0035】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、第1のアンテナがMIMOレーダー用のアンテナの送信アンテナ3を構成し、第2のアンテナがMIMOレーダー用のアンテナの受信アンテナ4を構成する場合について説明したが、第1のアンテナと第2のアンテナがどのようなアンテナを構成してもよい。例えば、第1のアンテナが水平方向のアンテナを構成し、第2のアンテナが垂直方向のアンテナを構成してもよい。
【0036】
1 レーダー装置
2 アレーアンテナ装置
3 送信アンテナ(第1のアンテナ)
4 受信アンテナ(第2のアンテナ)
5 信号処理装置
d1 第1の間隔
PT0~PT3 第1の配設位置
FT 第1の実在アンテナ素子
VT 第1の仮想アンテナ素子
d2 第2の間隔
PR0~PR3 第2の配設位置設
FR 第2の実在アンテナ素子
VR 第2の仮想アンテナ素子