(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】応答力発生装置および応答力発生装置を備えた車載用表示装置
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20220215BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20220215BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20220215BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20220215BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
B06B1/04
H01F7/16 B
G06F3/041 480
B60R11/02 C
B60R16/02 630L
(21)【出願番号】P 2018081069
(22)【出願日】2018-04-20
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一成
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-177360(JP,A)
【文献】特開2017-060217(JP,A)
【文献】特開平08-182296(JP,A)
【文献】特開2004-362428(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/022824(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0155012(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1887532(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
H01F 7/16
G06F 3/041
B60R 11/02
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が操作部とされた操作対象部材に、応答力を与える応答力発生装置において、
応答力発生方向とその逆方向に向け直線軌跡に沿って往復移動
する所定の質量を有する移動体と、
共に前記移動体に移動力を与える
第2ソレノイドおよび
前記第2ソレノイド
よりも前記応答力発生方向の前方に位置する第1ソレノイドとを有しており、
前記第1ソレノイドは、
前記移動体と共に移動する第1可動磁芯と、前記第1可動磁芯を前記応答力発生方向に向けて吸引する第1固定磁芯とを備え、前記第2ソレノイドは、
前記移動体と共に移動する第2可動磁芯と、前記第2可動磁芯を前記応答力発生方向に向けて吸引する第2固定磁芯とを備え、
前記第1ソレノイドと前記第2ソレノイドに通電されたときに、
前記第1ソレノイドと前記第2ソレノイドとで、前記移動体
が前記直線軌跡に沿う応答力発生方向に向けて吸引
されることを特徴とする応答力発生装置。
【請求項2】
前記第1ソレノイドと前記第2ソレノイドに、同時に通電する駆動回路が設けられている請求項1記載の応答力発生装置。
【請求項3】
前記移動体を前記応答力発生方向と逆方向の復帰方向へ付勢する復帰ばね部材が設けられている請求項1または2記載の応答力発生装置。
【請求項4】
前記応答力発生方向に移動した前記移動体が当たる衝突受け部材と、前記復帰方向へ移動した前記移動体が当たる戻り緩衝部材とが設けられており。
前記直線軌跡に沿う方向の弾性率は、前記衝突受け部材が、前記戻り緩衝部材よりも高い請求項3記載の応答力発生装置。
【請求項5】
前記第1ソレノイドが発揮する駆動力の中心線と前記第2ソレノイドが発揮する駆動力の中心線とが同一線上にあり、
前記移動体の重心が移動する移動線と、前記中心線とが、同一線上に存在せずに、平行に位置している請求項1ないし4のいずれかに記載の応答力発生装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載された応力発生装置を備え、
前記操作対象部材が、表示画面を有していることを特徴とする車載用表示装置。
【請求項7】
前記操作対象部材の移動方向を、前記直線軌跡に沿う方向に規制する規制案内機構が設けられている請求項6記載の車載用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作対象部材に設けられた操作部が手または指で操作されたときに、ソレノイドの動作によって操作対象部材に対して応答力を迅速に与えることができる応答力発生装置および応答力発生装置を備えた車載用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のタッチ操作入力装置は、ディスプレイの画面に複数の操作機能項目が表示されており、入力パッドをタッチ操作することによって、前記操作機能項目のいずれを選択入力することができる。このとき、制御部の信号に基づいてソレノイドが作動し、入力パッドが振動させられる。入力パッドの操作位置に応じて異なる振動を発生させることで、操作者は、画面を見なくてもどの部分をタッチ操作しているのか確認できるものとなっている。
【0003】
特許文献2に電磁ソレノイドに関する発明が記載されている。この電磁ソレノイドは、リニア電磁ソレノイドが2個組み合わされており、2個の電磁ソレノイドの内部で1個の可動鉄心が往復移動できるように収納され、可動鉄心に負荷が接続されている。正弦波電圧信号発生器から一方のリニア電磁ソレノイドの巻線に正弦波信号が与えられ、この正弦波信号が位相器を経て他方のリニア電磁ソレノイドの巻線に与えられる。2個のリニア電磁ソレノイドの巻線に位相差を有する交番電流を与えることで、可動鉄心を交番信号の周波数の2倍の周波数で往復駆動することができる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-194427号公報
【文献】特開平4-107804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1などに記載されているように、入力パッドが操作されたときに、操作者に反力を与えることは公知であり、特許文献1と特許文献2に記載された発明は、共にソレノイドを動作させることで、入力パッドに振動を与えている。しかしながら、入力パッドに振動を与えるだけでは操作者に認識させる操作反力として十分とはいえない。特に、車載用の操作対象部材は、走行中に車体が振動し続けているため、ソレノイドで発生する振動のみで、操作者が明確に認識できる十分な強度の操作反力を与えるのは難しい。
【0006】
また、特許文献2の第1図に示されているように、ソレノイドで駆動される負荷は所定の弾性係数(ばね係数)を有し、この弾性係数に伴って可動部が固有振動数を持つため、ソレノイドの巻線に通電してから、負荷が動作し始めるまで固有振動数の周期に対応した時間遅れが発生するのを避けることができない。そのため、入力パッドが指などで操作された直後に、制御部から指令が出され、ソレノイドが始動してから可動部で指に感じるだけの加速度が発生するまでに時間を要し、操作者は操作タイミングと操作反力を感じるタイミングとの間に時差を感じることになって、迅速な操作反力を得るのが難しくなっている。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、ソレノイドの動作により、迅速にしかも大きな衝撃の応答力を発生することができる応答力発生装置および応答力発生装置を備えた車載用表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも一部が操作部とされた操作対象部材に、応答力を与える応答力発生装置において、
応答力発生方向とその逆方向に向け直線軌跡に沿って往復移動する所定の質量を有する移動体と、共に前記移動体に移動力を与える第2ソレノイドおよび前記第2ソレノイドよりも前記応答力発生方向の前方に位置する第1ソレノイドとを有しており、
前記第1ソレノイドは、前記移動体と共に移動する第1可動磁芯と、前記第1可動磁芯を前記応答力発生方向に向けて吸引する第1固定磁芯とを備え、前記第2ソレノイドは、前記移動体と共に移動する第2可動磁芯と、前記第2可動磁芯を前記応答力発生方向に向けて吸引する第2固定磁芯とを備え、
前記第1ソレノイドと前記第2ソレノイドに通電されたときに、前記第1ソレノイドと前記第2ソレノイドとで、前記移動体が前記直線軌跡に沿う応答力発生方向に向けて吸引されることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の応答力発生装置は、前記第1ソレノイドと前記第2ソレノイドに、同時に通電する駆動回路が設けられているものである。
【0010】
本発明の応答力発生装置は、前記移動体を前記応答力発生方向と逆方向の復帰方向へ付勢する復帰ばね部材が設けられていることが好ましい。
【0011】
さらに本発明の応答力発生装置は、前記応答力発生方向に移動した前記移動体が当たる衝突受け部材と、前記復帰方向へ移動した前記移動体が当たる戻り緩衝部材とが設けられており、
前記直線軌跡に沿う方向の弾性率は、前記衝突受け部材が、前記戻り緩衝部材よりも高いことが好ましい。
【0012】
本発明の応答力発生装置は、前記第1ソレノイドが発揮する駆動力の中心線と前記第2ソレノイドが発揮する駆動力の中心線とが同一線上にあり、
前記移動体の重心が移動する移動線と、前記中心線とが、同一線上に存在せずに、平行に位置しているものとして構成することも可能である。
【0013】
次に、本発明の車載用表示装置は、前記のいずれかに記載された応力発生装置を備え、前記操作対象部材が、表示画面を有していることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の車載用表示装置は、前記操作対象部材の移動方向を、前記直線軌跡に沿う方向に規制する規制案内機構が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の応答力発生装置は、所定の負荷を有する移動体を、第1ソレノイドで応答力発生方向へ吸引すると共に第2ソレノイドで応答力発生方向へ押し出すように動作させるため、移動体を大きな加速度で移動させることができ、操作対象部材に対して衝撃的で操作者が感じやすい強度の応答力を与えることができる。また、第1ソレノイドの駆動力と第2ソレノイドの駆動力で、可動体を応答力発生方向へ移動させるため、駆動指令が出されてから、操作者が応答力を感じるまでの時間を短くでき、操作者に対して大きな加速度の応答力を迅速に与えることが可能になる。
【0016】
また、本発明の車載用表示装置では、車体振動が作用していても、前記応答力発生装置で発生する応答力を操作者が感度良く認識できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の応答力発生装置を備えた車載用表示装置を前方から見た斜視図、
【
図2】本発明の実施形態の応答力発生装置を備えた車載用表示装置を後方から見た斜視図、
【
図3】本発明の実施形態の応答力発生装置を後方から見た斜視図、
【
図4】
図3に示す応答力発生装置の主要部である加速度発生部を拡大した拡大斜視図、
【
図5】
図4に示す応答力発生装置の主要部をV-V線で切断した平断面図、
【
図6】本発明の第2実施形態の応答力発生装置の主要部である加速度発生部を示す拡大斜視図、
【
図7】本発明の実施形態の応答力発生装置を構成する回路ブロック図、
【
図8】(A)は本発明の実施形態の応答力発生装置の動作タイミングを示す線図、(B)は比較例の応答力発生装置の動作タイミングを示す線図、
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1と
図2に、本発明の実施形態の応答力発生装置20を備えた車載用表示装置1が示されている。車載用表示装置1および応答力発生装置20は、Z1方向が前方でZ2方向が後方である。Z1方向は車室内に向けられる表示方向であり、Z2方向は車両の進行方向の前方に向けられる。X1方向が左方向でX2方向が右方向、Y方向が上下方向である。
【0019】
車載用表示装置1は、基台2を有している。基台2は合成樹脂材料や軽金属材料で形成されている。基台2は、支持基台3と固定基台4を有している。固定基台4は、車室内の前方のダッシュボードまたはインストルメントパネルの内部または表面に固定される。支持基台3と固定基台4は、X1-X2方向と平行な回動軸(図示省略)を介して連結されており、支持基台3は、前記回動軸を支点として、固定基台4上で前後方向(Z1-Z2方向)へ回動自在である。あるいは、支持基台3が固定基台4に回動することなく固定されており。固定基台4が、昇降機構や前後移動機構さらには回動支持機構の可動部とされていてもよい。
【0020】
支持基台3は、前方(Z1方向)に解放された支持空間3aを有しており、支持空間3aの内部に操作対象部材5が配置されている。操作対象部材5は表示パネルであり、カラー液晶表示セルやエレクトロルミネッセンス表示セルなどの表示セルを有している。表示セルは表示画面6を有しており、表示画面6は、支持空間3aの開放部から前方(Z1方向)に露出し、表示方向である車室内に向けられている。
【0021】
車載用表示装置1では、表示画面6に表示セルで生成された画像が表示されるとともに、表示画面6が、透明なタッチセンサSを有する操作部となっている。タッチセンサSは、透明基板に複数の透明電極が設けられて構成された静電容量式センサである。表示画面6に操作者の指が触れると、電極で検知される静電容量が変化し、このときの静電容量の分布の変化により、指が触れた座標位置が検知される。または、タッチセンサSは、全面に透明電極が形成された透明基板に、同じく全面に透明電極が形成された透明フィルムが隙間を介して対向する抵抗式センサである。抵抗式センサは、透明フィルムのいずれかの箇所が押されると、透明フィルムに形成された透明電極と、透明基板に形成された透明電極とが短絡し、透明電極の縁部に設けられた電極部から短絡部までの抵抗値の変化が検知されて、指が触れた座標位置が判定される。なお、操作対象部材5では、表示画面6以外の領域に、操作部として、タッチセンサSが設けられ、あるいは機構式の押釦スイッチなどが設けられていてもよい。
【0022】
操作対象部材5は、支持空間3aの内部で、少なくともX1-X2方向へわずかに移動できる余裕を有して配置されている。
図2に示すように、支持基台3に支持穴7が開口し、操作対象部材5に固定された支持ねじ部材8と支持穴7との間に弾性ブッシュが介在している。支持穴7と支持ねじ部材8および弾性ブッシュで弾性支持機構が構成されており、弾性ブッシュの弾性変形により、操作対象部材5が支持空間3aの内部で少なくともX1-X2方向にわずかに移動自在に支持されている。
【0023】
図2に示すように、支持基台3と操作対象部材5との間に規制案内機構10が設けられている。規制案内機構10は、X1-X2方向に延びる軸体11と、軸体11のX1側の端部とX2側の端部のそれぞれに固定されている一対の固定ブラケット12,12を有している。X1-X2方向に離れて位置している固定ブラケット12,12の間には、軸体11が挿通されている一対の軸受け部材13,13が設けられている。固定ブラケット12,12と軸受け部材13,13のいずれか一方が、支持基台3に固定され、他方が操作対象部材5に固定されている。
図2に示すように、軸体11にワッシャ16が固定されており、X2側の軸受け部材13とワッシャ16との間に圧縮コイルばね14が設けられており、軸体11は圧縮コイルばね14の内部に挿通されている。
【0024】
規制案内機構10によって、操作対象部材5は、支持基台3に対してX1-X2方向へのみ動作できるように支持されている。また、圧縮コイルばね14により、操作対象部材5のX1-X2方向の不要ながたつきの発生が防止されている。さらに、軸体11と、支持基台3または操作対象部材5との間にY方向に延びる引っ張りコイルばね15が掛けられており、操作対象部材5の支持基台3に対するY方向の不要ながたつきの発生が防止されている。
【0025】
図3に示すように、応答力発生装置20は、伝達支持部材21と、伝達支持部材21の下部に固定された加速度発生部30とから構成されている。伝達支持部材21は、金属板や合成樹脂板などのX1-X2方向へ剛性の高い部材で構成されている。
図2に示すように、伝達支持部材21は、支持基台3の下端部から支持空間3aの内部に向けて上向きに挿入されている。伝達支持部材21は、操作対象部材5の後方(Z2方向)に向く背面と支持基台3の前方(Z1方向)に向く前面との間に位置し、伝達支持部材21に形成された固定穴21aが、操作対象部材5の背面に固定ねじで固定されている。また、加速度発生部30は固定基台4の内部空間に収納されている。固定基台4の内部空間内で動作する加速度発生部30で発生したX1方向に向く加速度は、伝達支持部材21を介して操作対象部材5に伝達され、操作対象部材5の表示画面6に触れて操作している指や手に対して、X1方向の加速度による応答力が作用する。
【0026】
図3と
図4および
図5に示すように、加速度発生部30には、支持ブラケット22が設けられている。支持ブラケット22は金属板または合成樹脂材料などで形成されておりX1-X2方向の剛性が高く構成されている。
図4に示すように、支持ブラケット22には支持穴22aが形成されている。
図3に示すように、支持穴22aに挿通された支持ねじ23が伝達支持部材21の下部にねじ止めされて、支持ブラケット22が伝達支持部材21の下部に固定されている。加速度発生部30は、第1ソレノイド31と第2ソレノイド35、および第1ソレノイド31と第2ソレノイド35とで駆動される移動体40を有している。加速度発生部30で発生する加速度の作用方向すなわち応答力発生装置20の応答力発生方向は、X1方向である。
【0027】
図5に示すように、第1ソレノイド31は、鋼板などの磁性材料板で形成された支持ヨーク32を有しており、支持ヨーク32は、固定ねじ24によって支持ブラケット22に固定されている。支持ヨーク32には、X1側に位置する支持片32aとX2側に位置する支持片32bが折り曲げ形成されており、支持片32aと支持片32bは、互いに平行に対向している。支持片32aと支持片32bとの間に円筒状の第1ボビン33aが固定されている。第1ボビン33aは非磁性材料で形成されており、第1ボビン33aの外側に第1コイル33bが巻かれている。第1ボビン33aの内部のX1側部分に第1固定磁芯34が設けられている。第1固定磁芯34は、鉄などの磁性材料で形成されており、X1側の支持片32aに圧入や溶接などの手段で固定されている。
【0028】
図5に示すように、第2ソレノイド35は、鋼板などの磁性材料板で形成された支持ヨーク36を有しており、支持ヨーク36は、固定ねじ24によって支持ブラケット22に固定されている。支持ヨーク36には、X1側に位置する支持片36aとX2側に位置する支持片36bとが折り曲げ形成されており、支持片36aと支持片36bとが互いに平行に対向している。支持片36aと支持片36bとの間に円筒状の第2ボビン37aが固定されている。第2ボビン37aは非磁性材料で形成されており、第2ボビン37aの外側に第2コイル37bが巻かれている。第2ボビン37aの内部のX1側部分に第2固定磁芯38が設けられている。第2固定磁芯38は、鉄などの磁性材料で形成されており、X1側の支持片36aに圧入や溶接などの手段で固定されている。
【0029】
移動体40は、質量体41を有している。質量体41は鉄などの磁性材料で直径がやや大きい円柱状に形成されており、所定の質量を有している。質量体41には、X1方向に延びる円柱形状の第1可動磁芯42が一体に形成されている。第1可動磁芯42は質量体41よりも直径が細く形成されている。第1可動磁芯42は、第1ソレノイド31に設けられた支持ヨーク32の支持片32bに開口する穴部32cの内部に挿入されて、第1ボビン33aの内部でX1-X2方向に摺動自在に挿入されている。第2ソレノイド35では、第2ボビン37aの内部に円柱形状の第2可動磁芯43がX1-X2方向に摺動自在に挿入されている。第2可動磁芯43にはX1方向に延びる連結軸43aが一体に形成されている。連結軸43aは第2可動磁芯43よりも小径に形成されている。連結軸43aは、支持ヨーク36の支持片36aに形成された穴部36cの内部をX1方向に通過し、連結軸43aは、質量体41に圧入されるなどして固定されている。
【0030】
第1可動磁芯42が第1ボビン33aの内部に摺動自在に挿入され、第2可動磁芯43が第2ボビン37aの内部に摺動自在に挿入されていることにより、移動体40は、X1-X2方向に延びる直線軌跡に沿って往復移動自在に支持されている。加速度発生部30は、X1方向が応答力発生方向である。第1ソレノイド31は、移動体40に対して、応答力発生方向(Z1方向)に向けて吸引力を発揮する吸引動作ソレノイドとして機能し、第1コイル33bに通電されると、第1固定磁芯34に第1可動磁芯42が磁気吸着される。第2ソレノイド35は、移動体40に対して、応答力発生方向(Z1方向)に向けて押圧力を発揮する押圧動作ソレノイドとして機能し、第2コイル37bに通電されると、第2固定磁芯38に第2可動磁芯43が磁気吸着され、移動体40に対して、応答力発生方向(Z1方向)に向けて押圧力が作用する。
【0031】
図5に示すように、加速度発生部30は、第1ソレノイド31において第1可動磁芯42を吸引する駆動力の作用中心線O1と、第2ソレノイド35において第2可動磁芯43を押圧する駆動力の作用中心線O2とが、X1-X2方向に延びる同一線上に位置している。また、移動体40の重心がX1-X2方向に移動する移動線は、作用中心線O1,O2と一致している。
【0032】
移動体40は、質量体41の一部に小径部41aが形成されており、小径部41aにリング部材44が装着されている。リング部材44にばね掛け部44aが形成され、支持ブラケット22にもばね掛け部22bが形成されており、ばね掛け部44aとばね掛け部22bとの間に、引っ張りコイルばねで形成された復帰ばね部材45が掛けられている。復帰ばね部材45の弾性力により、移動体40は、常に応答力発生方向(X1方向)と逆方向である復帰方向(X2方向)へ付勢されている。
【0033】
図5に示すように、支持ヨーク32に形成された支持片32bのX2方向に向く外面に衝突受け部材46が接着されて固定されている。支持ヨーク36に形成された支持片36aのX1方向に向く外面に戻り緩衝部材47が接着されて固定されている。第1コイル33bと第2コイル37bに通電されると、移動体40が応答力発生方向(X1方向)へ移動して質量体41が衝突受け部材46に衝突し、衝突衝撃(衝突加速度)による応答力が発生する。衝突受け部材46は、大きな衝突音が発生せず、しかも第1ソレノイド31を介して支持ブラケット22および伝達支持部材21に大きな衝撃力(加速度:G)を作用させることが必要である。よって、衝突受け部材46は、硬質ゴムや硬質な合成樹脂材料で形成されている。戻り緩衝部材47は、復帰ばね部材45の弾性力で移動体40が復帰方向(X2方向)へ復帰させられたときの衝撃力を緩和し、緩衝機能と、衝突音の抑制機能を発揮するものであるため、比較的軟質なゴム材料や軟質な合成樹脂材料などの弾性体で形成されている。
【0034】
衝突受け部材46をX1方向に向けて圧縮変形させるときの弾性係数(縦弾性係数)をk1とし、戻り緩衝部材47をX2方向に向けて圧縮変形させるときの弾性係数(縦弾性係数)をk2としたときに、k1がk2よりも十分に大きい(k1>>k2)ことが必要である。
【0035】
図7に、応答力発生装置20に付属する回路部の回路構成が示されている。表示画面6に設けられたタッチセンサSの検知出力は検出回路51で検知され、検出回路51においてタッチセンサSに対する指の接触位置が解析されて制御部50に通知される。制御部50からの駆動指令はソレノイド駆動回路52に与えられ、ソレノイド駆動回路52から、第1ソレノイド31の第1コイル33bと第2ソレノイド35の第2コイル37bに駆動電流が同時に通電される。第1コイル33bと第2コイル37bには、パルス状の短時間の駆動電流が同時に与えられる。この駆動電流は、各コイル33b,37bに1回与えられ、または時間を空けて複数回与えられる。第1コイル33bと第2コイル37bは巻き数が同じでインピーダンスが同じである。第1コイル33bに与えられる駆動電流のピーク値と、第2コイル37bに与えられる駆動電流のピーク値は一致していることが好ましい。周期が同じでピーク値が同じとなるパルス状の駆動電流が、第1コイル33bと第2コイル37bに同時に与えられることで、ソレノイド駆動回路52の回路構成を簡単にできる。
【0036】
次に、応答力発生装置20の動作を説明する。
図5には、第1コイル33bと第2コイル37bに通電されていない停止状態の応答力発生装置20が示されている。停止状態では、復帰ばね部材45の弾性力で移動体40が復帰方向(X2方向)へ引かれている。質量体41は戻り緩衝部材47に当接しており、質量体41のX1側の端部と衝突受け部材46との間に、移動体40の移動方向(X1-X2)である直線軌跡に沿って間隔δが空けられている。
【0037】
図1と
図2に示す車載用表示装置1では、操作対象部材5の操作部である表示画面6に表示された画像を参照しながら、表示画面6のいずれかの箇所に操作者の指または手を触れさせると、タッチセンサSからの検知出力が
図7に示す検出回路51で検出されて、指が画像のどの部分に触れたかが判別され、検出回路51から制御部50に検出信号が与えられる。なお、操作対象部材5に設けられる操作部のセンサとして、前記タッチセンサSに加えて表示画面6が指で押されたときの操作対象部材5のZ2方向への動きを検知するフォースセンサが設けられていてもよい。この場合には、表示画面6が指で押されたときに、フォースセンサから制御部50に検出信号が与えられる。
【0038】
制御部50は、検知信号を受けると、表示画面6に表示されている画像の画像信号から、どのような操作が行われたかを判別し、意図した操作に基づく処理動作が開始される。また、制御部50が前記検知信号を受けると、制御部50からソレノイド駆動回路52にソレノイド駆動指令が出される。
【0039】
ソレノイド駆動回路52が、制御部50からソレノイド駆動指令を受けると、ソレノイド駆動回路52から第1ソレノイド31の第1コイル33bと第2ソレノイド35の第2コイル37bに対して、パルス状の駆動電流が同じピーク値で同じタイミングで同時に与えられる。第1コイル33bと第2コイル37bに対しては、駆動電流が1回与えられ、あるいは時間を空けて複数回与えられる。
【0040】
第1ソレノイド31の第1コイル33bに通電されると、第1固定磁芯34が磁化されて、第1可動磁芯42が第1固定磁芯34に吸引され、同時に第2ソレノイド35の第2コイル37bに通電されると、第2固定磁芯38が磁化されて、第2可動磁芯43が第2固定磁芯38に吸引される。移動体40は、第1ソレノイド31によってX1方向へ吸引され、第2ソレノイド35によってX1方向へ押圧され、この吸引力と押圧力がほぼ同じ大きさで同時に作用する。よって、移動体40は大きな加速度でX1方向へ移動し、質量体41が衝突受け部材46に衝突し、衝突による加速度が第1ソレノイド31に作用する。衝撃による加速度は、支持ブラケット22に伝達され、さらに伝達支持部材21を介して操作対象部材5に伝達されて、操作対象部材5にX1方向の加速度が衝撃的に作用し、この加速度が表示画面6から操作者の指または手に応答力として与えられる。
【0041】
図2に示すように、操作対象部材5と支持基台3との間に規制案内機構10が設けられ、操作対象部材5が支持基台3に対してX1-X2方向へのみ移動できるように規制されている。そのため、加速度発生部30で発生するX1方向への衝撃的な加速度が、操作対象部材5をX1方向へのみ動かすように作用しやすくなる。よって車体振動によって表示画面が前後方向(Z1-Z2方向)へ常に揺れていても、表示画面6がX1方向へ大きな加速度で動くため、操作者の指または手に応答力を効果的に感じさせることが可能になる。
【0042】
図8(A)は、実施形態の応答力発生装置20が動作したときに、操作対象部材5に作用する加速度の変化を示している。横軸が経過時間(t)であり、縦軸がX1方向の加速度(G)である。経過時間(t)の始点は、制御部50からソレノイド駆動回路52にソレノイド駆動指令が与えられた時刻である。ソレノイド駆動指令が与えられると、ソレノイド駆動回路52から第1ソレノイド31と第2ソレノイド35に同時に駆動電流が与えられ、移動体40がX1方向へ直ちに動くため、
図8(A)に示すように、ソレノイド駆動指令から表示画面6に応答力が作用するまでの動作時間T1を短くすることができる。しかも、第1ソレノイド31と第2ソレノイド35とで、移動体40がX1方向へ同時に駆動されるため、質量体41のX1方向への加速度が大きく、衝突受け部材46に与えられる衝撃による加速度が大きくなる。よって、表示画面6をX1方向へ動作させる加速度(G)のピーク値が大きくなり、操作者の指に大きな応答力を与えることが可能になる。
【0043】
また、衝突受け部材46をX1方向に向けて圧縮変形させるときの弾性係数(縦弾性係数)k1を、戻り緩衝部材47をX2方向に向けて圧縮変形させるときの弾性係数(縦弾性係数)k2よりも十分に大きくしている。質量体41が、衝突受け部材46に衝突したときに、応答力発生装置20と操作対象部材5とがX1方向に動くときの固有振動数は、衝突受け部材46の弾性係数k1と、操作対象部材5および応答力発生装置20の質量とで決められるが、前記弾性係数k1を大きくすることで、固有振動数が高くなり振動周期が短くなるため、これによっても動作時間T1を短縮することができるようになる。
【0044】
図8(B)は、比較例の応答力発生装置の動作を示している。比較例の応答力発生装置は、移動体のX1側に設けられたソレノイドがX1方向へ吸引力を発揮し、X2側に設けられたソレノイドがX2方向へ吸引力を発揮する。そして、移動体が引っ張りコイルばねでX1方向へ付勢されている。比較例では、制御部からソレノイド指令信号が出されると、最初にX2側のソレノイドに通電されて移動体がX2方向へ引かれ、引っ張りコイルばねが伸びる。その直後に、X2側のソレノイドへの通電が断たれ、同時にX1側のソレノイドに通電されて、X1側のソレノイドで移動体がX1方向へ吸引され、移動体が衝突受け部材に衝突し、操作対象部材に加速度が与えられる。
【0045】
図8(B)に示すように、比較例の応答力発生装置では、ソレノイド動作指令が出されると、X2側のソレノイドが吸引動作し、その後にX1側のソレノイドが吸引動作するものであるため、ソレノイド動作指令が出されてから表示画面に応答力が作用するまでの動作時間T2が長くなる。また、移動体をX1方向へ移動させる力は、X1側のソレノイドの吸引力と、引っ張りコイルばねの弾性力だけであるため、加速度(G)のピーク値は、
図8(A)に示す実施形態の応答力発生装置20による加速度のピーク値よりも低くなる。
【0046】
図6に、本発明の第2実施形態の応答力発生装置に設けられた加速度発生部130が示されている。
【0047】
この加速度発生部130は、X2側に第1ソレノイド131が設けられ、X1側に第2ソレノイド135が設けられている。第1ソレノイド131は、第1コイルに通電したときに、X2方向への吸引力を発揮する吸引動作ソレノイドであり、第2ソレノイド135は、第2コイルに通電したときにX2方向への押圧力を発揮する押圧動作ソレノイドである。第1ソレノイド131の駆動力の作用中心線O1と、第2ソレノイド135の駆動力の作用中心線O2とが同一線上にある。移動体140は支持ブラケット122にX1-X2方向へ移動自在に支持されており、第1ソレノイド131と第2ソレノイド135の駆動力が移動体140に伝達される。移動体140の重心がX1-X2方向へ移動する移動線は、前記作用中心線O1,O2と一致しておらず、作用中心線O1,O2と平行である。この構造では、第1ソレノイド131と第2ソレノイド135の間に、移動体140と並ぶようにして、他の部材を配置することができる。
【0048】
第1ソレノイド131の可動磁芯には、移動体140を復帰方向(X1方向)へ付勢する復帰ばね部材145が設けられている。また支持ブラケット122には、移動体140が応答力作用方向(X2方向)へ移動したときに当たる衝突受け部材146が設けられている。第2実施形態の加速度発生部130でも、第1ソレノイド131の吸引力と、第2ソレノイド135の押圧力によって、移動体140が応答力作用方向(X2方向)に向けて大きな加速度で動作させられる。
【0049】
なお、前記実施形態は、操作対象部材5が表示画面を有しているが、操作対象部材はこれに限られるものではなく、例えば自動車の車室内に設けられたインストルメントパネルの一部などが、静電容量式センサや機構式の操作釦を備えた操作対象部材であり、この操作対象部材に応答力を発生させるものであってもよい。
【0050】
また、実施形態の応答力発生装置20は加速度発生部30,130の加速度が伝達支持部材21を介して操作対象部材5に与えられるが、加速度発生部30,130が、操作対象部材5に取付けられて、加速度発生部30,130から操作対象部材5に直接に加速度が作用するものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 車載用表示装置
2 基台
3 支持基台
4 固定基台
5 操作対象部材
6 表示画面
10 規制案内機構
11 軸体
20 応力発生装置
21 伝達支持部材
30 加速度発生部
31 第1ソレノイド
32 支持ヨーク
33a 第1ボビン
33b 第1コイル
34 第1固定磁芯
35 第2ソレノイド
36 支持ヨーク
37a 第2ボビン
37b 第2コイル
38 固定磁芯
40 移動体
41 質量体
42 第1可動磁芯
43 第2可動磁芯
45 復帰ばね部材
46 衝突受け部材
47 戻り緩衝部材
50 制御部
52 ソレノイド駆動回路
130 加速度発生部
131 第1ソレノイド
135 第2ソレノイド
140 移動体
145 復帰ばね部材
146 衝突受け部材
O1,O2 作用中心線
S タッチセンサ