(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】送風機用羽根車
(51)【国際特許分類】
F04D 17/04 20060101AFI20220215BHJP
F04D 29/60 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
F04D17/04 A
F04D29/60 H
(21)【出願番号】P 2015246291
(22)【出願日】2015-12-17
【審査請求日】2018-10-30
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】709002303
【氏名又は名称】日清紡メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】永田 武司
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】窪田 治彦
【審判官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-161197(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146371(WO,A1)
【文献】実開平5-69395(JP,U)
【文献】実開昭57-95491(JP,U)
【文献】実開昭58-158189(JP,U)
【文献】特開2001-214887(JP,A)
【文献】特開2000-205178(JP,A)
【文献】特開2013-79617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の羽根部材を
円盤状部材に円筒状に固定して形成される
構成ユニットと、
前記構成ユニットの端部に接続されるエンドプレートと
を備える送風機用羽根車
の製造方法であって、
前記エンドプレート
における前記構成ユニットと接続する側には、
前記構成ユニットとの位置決め用に3個以上の位置決め用突起と、モータ軸取付用の固定ボルトを有するボス部
とが設けられ、
前記エンドプレートに設けた位置決め用突起のうち1個は、前記エンドプレートに対する前記
構成ユニットの旋回方向の相対位置を一つに確定させるために、他の位置決め用突起とは前記エンドプレートの回転軸心からの半径方向位置が異なっており、
前記
構成ユニットにおける前記エンドプレートと接続する側の端面に、前記1個の位置決め用突起が嵌り込むように、旋回方向位置決め用の1個の凹部または穴部が設けられており、
前記
構成ユニットの端部には、回転軸心と同心状に設けられた芯位置合わせ用の穴部が形成され
ており、
前記
構成ユニットと前記エンドプレート
は位置決め接続
されており、
前記送風機用羽根車の製造方法は、
前記他の位置決め用突起を前記芯位置合わせ用の穴部の辺縁部に嵌め込むステップと、
前記1個の位置決め用突起を、前記旋回方向位置決め用の1個の凹部または穴部に嵌め込むステップと、
前記複数の羽根部材のうち前記固定ボルトの直上の1枚の羽根部材を切断除去するステップと
を含むことを特徴とする送風機用羽根車
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫流送風機などの送風機に用いられる羽根車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貫流送風機用羽根車は、同一の軸線の周りに間隔を空けて配置した複数のブレードを有し、当該軸線周りに回転することにより、静かな層流風を広い範囲に供給することができる。このため、エアコンの送風系統(又は、送風部分)等の様々な装置に採用されている。
【0003】
出願人は、この送風機用羽根車に種々の改良を行い性能向上及びコストダウンを実現している。例えば製品の形状や素材等を工夫して性能向上及びコストダウンを実現している。
【0004】
出願人は、このような送風機用羽根車の更なるコストダウンを、製品の形状と製造方法という観点から実現した。以下説明する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、更なるコストダウンのために、従来方法に比べてより製造工程を簡略化して製造された貫流送風機用羽根車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1発明の羽根車は、以下の特徴を有している。
複数の羽根部材を複数枚の円盤状固定板に円筒状に固定して形成される送風機用羽根車であって、
羽根車本体の端部に接続されるエンドプレートの羽根車本体と接続する側に、羽根車本体との位置決め用に3個以上の位置決め用突起を設け、
前記羽根車本体と前記エンドプレートを位置決め接続する。
【0007】
第1発明の羽根車は、羽根車のエンドプレートと羽根車の本体を位置決めするための位置決め用の突起を3個以上設けている。従って羽根車本体のエンドプレートとの接続部にエンドプレートの位置決め用の突起を嵌め込むような部位を設けることにより位置決めが容易になる。エンドプレートに設けた位置決め用の突起が嵌り込む羽根車本体(後述する構成ユニット)部位の形状は、位置決め用突起が嵌り込むような凹部でもよいし、穴でも、更に切欠き形状でも良い。羽根車本体とエンドプレートの位置決め用突起との嵌め込みについては、実施例において詳細に説明する。従来は、羽根車本体とエンドプレートとの接続作業において位置決めが必要であったが、その位置決めの作業が不要となる。従って送風機用羽根車の生産性が格段に向上する。
【0008】
第2発明の羽根車は、第1発明において以下の特徴を有している。
前記エンドプレートに設けた位置決め用突起のうちの少なくとも1個は、羽根車本体と前記エンドプレートとの送風機用羽根車の回転軸(軸線)に対する旋回角度方向の位置決めをするために設けたものである。
【0009】
第2発明によれば、エンドプレートに設ける位置決め用の突起のうち1個は羽根車本体とエンドプレートの旋回方向の位置決め用に設けられている。従って羽根車本体とエンドプレートの回転方向の位置が確実に決めることができる。エンドプレートには、羽根車を駆動するモーターが接続される。貫流送風機としてのサイズをコンパクトにするためにその接続部位(ボス部)を羽根車本体側に設けることがある。その場合にエンドプレートとモーターとの接続部位の固定用ボルト等を締め付ける作業が容易となる。すなわち羽根車本体とエンドプレートとが旋回方向に対して確実に位置決めされて接続されるので、固定用ボルト等を締め付ける工具が、羽根車本体のブレード(羽根)の間から挿入し締め付け作業を行うことができるような位置に固定用ボルトが位置するようにエンドプレートを接続することが可能になる。またブレードとブレードの隙間が殆どないような羽根車の場合は、締め付け作業を行う工具が挿入できるよう当該部位のブレートを1箇所切断除去して作業を行う必要がある。この場合、エンドプレートと羽根車本体の相対位置が決まっていないと、固定用ボルトの位置が見えないので、切断除去するブレードを間違えてしまうと、更に別のブレードも切断除去しないと締め付け作業は出来ない。この場合、羽根車は不良品となり廃棄することになる。本発明の羽根車では、ブレードを切断除去するという付帯作業が必要な製品において、間違いなくブレードの切断除去作業を行うことが出来るので、送風機用羽根車の歩留まりを向上させることができる。
【0010】
第3発明の羽根車は、第1発明または第2発明において以下の特徴を有している。
前記エンドプレートと羽根車本体とを位置決めするために、羽根車本体の前記エンドプレートと接続する側の端面に、前記位置決め用突起が嵌り込むように、位置決め用の凹部または穴部を設けている。
【0011】
第3発明によれば、第1発明と第2発明の効果が発現する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明の
図1の羽根車の構成ユニットの説明図である。
【
図3】本発明の羽根車用のエンドプレートの説明図である。
【
図4】本発明の羽根車における羽根車の構成ユニットとエンドプレートとの接続方法の説明図である。
【
図5】本発明の羽根車のエンドプレートの別例の説明図である。
【
図6】本発明の羽根車のエンドプレートの別例の説明図である。
【
図7】本発明の羽根車のエンドプレートと駆動モーターの接続作業の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図により説明する。
図1は、本発明の送風機用羽根車の説明図である。
図1において、(a)は送風機用羽根車の正面図であり、(b)はエンドプレートと構成ユニットとの接続部の詳細図であり、(c)は位置決め部の詳細図である。
図2は、
図1の羽根車の構成ユニットの説明図である。
図2において(a)は、構成ユニットの正面図であり、(b)は構成ユニットのX方向矢視図であり、(c)は構成ユニットのY方向断面矢視図である。
図3は、本発明の羽根車に使用するエンドプレ-トの説明図である。
図3において(a)は、エンドプレートの正面図であり、(b)はエンドプレートのX方向矢視図であり、(c)はエンドプレートのY方向断面矢視図である。
図4は、本発明の羽根車における構成ユニットとエンドプレートとの接続方法の説明図である。
図5と
図6は、本発明の羽根車に使用するエンドプレートの別例の説明図である。
図7は、本発明の羽根車のエンドプレートと駆動モーターの接続作業の説明図である。
【実施例1】
【0014】
<1>本発明の羽根車の構造
図1に示すように、実施例1の羽根車1は、複数の
図2の羽根車の構成ユニット2、エンドプレート(ボス側円盤状固定板)5、軸部側円盤状固定板6、ボス部7及び軸部8から構成されている。軸部8は、羽根車1の一方側の端部の構成ユニット2の円盤状部材6に取り付けされている。エンドプレート(ボス側円盤状固定板)5は、羽根車1の他方側の端部の構成ユニットの円盤状部材3側に取り付けされている。ボス部7は、エンドプレート5に設けられている。
【0015】
<2>羽根部材(構成ユニット2)の構造
羽根車1の構成ユニット2は、
図2に示すように、円盤状部材3、羽根部材4から構成されている。材質は、AS樹脂、ABS樹脂、PS樹脂およびPP樹脂などの合成樹脂を使用することができる。ここに記載した樹脂は一例であり、通常使われる合成樹脂として成形品に一定の強度をもたらす合成樹脂であれば十分使用することができる。またエンドプレート5、軸部側円盤状固定板6も同一素材で成形することができる。また構成ユニット2、エンドプレート5、及び軸部側円盤状固定板6は、それぞれ、射出成形、プレス法又は押出法などにより成形されている。各構成ユニット2同士の接続、構成ユニット2と軸部側円盤状固定板6の接続は、超音波溶着法等の接着法により接合することができる。
【0016】
構成ユニット2とエンドプレート5の接続は、以下の実施形態で説明するが、エンドプレート5は構成ユニット2に容易に位置決めされるような構成になっており、それらを組み立てて超音波溶着にて接続する。エンドプレート5及び構成ユニット2のエンドプレート5が接続される側に、以下実施形態で説明する位置決め機構を設けることにより、送風機用羽根車1の生産性と歩留まりを格段に向上させることができる。
【0017】
<3>具体的な実施形態
以下、本実施例における位置決め機構について説明するが、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図3は、エンドプレート5の詳細図である。エンドプレート5の材質は、上記のとおり構成ユニットと同一のものを使用することができる。エンドプレート5の端面には、モーター軸取付用のボス部7が取り付けられている。
図3(b)に示すように、ボス部7を取り付けている側の端面に位置決め用の突起51が3個、位置決め用突起52が1個設けられている。位置決め用突起51は、羽根車の回転軸(軸線)を中心とする円Cの内側になるように、しかもこの円Cに接するように設けている。この円Cは、
図2の構成ユニット2の穴部Hの円の直径よりも若干小さい程度の円である。これにより羽根車の回転軸に対して芯合わせが可能となる。また位置決め用突起52は、
図2の構成ユニットの円盤状部材3に設けられた凹部31(
図2参照)に嵌り込むように設けられている。これらのエンドプレート5及び構成ユニット2に設けられた位置決め用突起51、52と凹部31の作用によりエンドプレート5は羽根車本体(構成ユニット2)に確実に位置決めされ、超音波溶着により接続固定される。
【0019】
エンドプレート5の位置決め用突起51、52と構成ユニット2の凹部31により両者が位置決めされた状態を、
図1(b)の拡大図(c)に示す。また
図4は、 エンドプレート5の位置決め用突起51が構成ユニット2の穴部Hにはまり込み、エンドプレート5の位置決め用突起52が構成ユニット2の凹部31に嵌り込み組み付けされる状況の説明図である。
【0020】
本実施例の構成によれば、エンドプレート5と構成ユニット2が確実に位置決めできるので、羽根車の生産効率が格段に向上する。従来は、構成ユニット2とエンドプレート5の位置決めは、目視で行ったり、位置決め用治具を用いていたが、本発明によりそのような位置決め治具も不要になり、位置決め治具による位置決め作業も不要となった。しかも両者の部材を接続する時間も激減した。
【0021】
また
図7は、構成ユニット2のブレード4を切断除去して、構成ユニット2に接続したエンドプレート5のボス部7に駆動モーター軸Sを挿入し接続する作業の状態の説明図である。構成ユニット2のブレード4とブレード4の間に締め付け工具が挿入できるような隙間が存在する場合は良い。
【0022】
しかし隙間が殆ど無い場合は、ボス部7の孔hにモ-ター軸Sを挿入しボス部の固定ボルトBにてボス部と軸Sを固定するために、締め付け工具が挿入できるように、固定ボルトBの直上のブレード4を1箇所切断除去する。エンドプレート5には切断除去するブレード4の位置が分かるようにマークが付されている。従って本発明のようにエンドプレート5と構成ユニット2とが、ある1枚のブレード4の真下に位置する様に位置決め接続されていると、締め付け工具を挿入するために切断除去するブレード4は、どのブレードを切断除去すれば良いか直ぐに分かる。しかも適切かつ確実に当該位置のブレードを切断除去できる。
【0023】
一方エンドプレート5と構成ユニット2が本発明のように適切に位置決めされていない場合は、以下のように困った状態になる。ボス部7の固定ボルトBはブレード4に覆われていて、どこに固定ボルトがあるか分からない。従って間違った箇所のブレードを切断除去してしまうと、正しい位置のブレードを更に切断除去することになる。このような事態になると当該羽根車は不良品となってしまい廃棄することになる。本発明によれば、このような不具合は皆無となる。
【0024】
このように本発明の実施例1の羽根車によれば、羽根車の製造効率を高めることができ、更に歩留まりを向上させることができる。
【実施例2】
【0025】
実施例2の羽根車は、そのエンドプレート5は
図5のものを使用している。材質等は、実施例1と同様である。
図5(b)に示すように、ボス部7を取り付けている側の端面に位置決め用の突起51が2個、位置決め用突起52が1個設けられている。位置決め用突起51は、羽根車の回転軸(軸線)を中心とする円Cの内側になるように、しかも羽根車の回転中心と位置決め突起52を結ぶ直線に対して直角な方向の円Cの直径と円Cの交点に接するように設けている。この円Cは、構成ユニット2の穴部Hの円の直径よりも若干小さい程度の円である。また位置決め用突起52は、
図2の構成ユニットの円盤状部材3に設けられた凹部31(
図2参照)に嵌り込むように設けられている。これらのエンドプレート5及び構成ユニット2に設けられた位置決め用突起51、52と凹部31の作用によりエンドプレート5は羽根車本体(構成ユニット2)と確実に位置決め(軸芯と旋回方向)され、超音波溶着により接続固定される。
【実施例3】
【0026】
実施例3の羽根車は、そのエンドプレート5と構成ユニット2は
図6のものを使用している。材質等は、実施例1と同様である。
図6(a)に示すように、エンドプレート5のボス部7を取り付けている側の端面に位置決め用の突起53を3個その端部に設けている。一方
図6(b)に示すように、エンドプレート5の位置決め突起53が嵌り込むように構成ユニット2の円盤状部材3の外周に切欠き32が位置決め突起53と同数3個設けられている。このようにエンドプレート5の位置決め突起53と構成ユニットの切欠き32の作用によりエンドプレート5は羽根車本体(構成ユニット2)と確実に位置決め(芯と旋回方向)され、超音波溶着により接続固定される。
【0027】
実施例3における位置決め用の突起53と切欠き32は、それぞれ2個以上あればエンドプレートと羽根車の位置決めは可能である。その個数は、製品寸法等により適宜設定すれば良い。
【0028】
実施例2と実施例3の羽根車も実施例1と同様の効果が発現する。また実施例1から3における突起51から53の形状は、円柱状、円錐状、円錐台状でも良い。さらに実施例1の凹部31はスリット状の長孔でも良い。
【符号の説明】
【0029】
1 羽根車
2 羽根車の構成ユニット
3 円盤状部材
4 羽根部材(ブレード)
5 エンドプレート(ボス側円盤状固定板)
6 軸部側円盤状固定板
7 ボス部
8 軸部
31 凹部
32 切欠き
51 位置決め用突起(芯位置合わせ用)
52 位置決め用突起(旋回方向位置合わせ用)
53 位置決め用突起
C 円
M モーター
S モーター軸
B 固定用ボルト
H 穴部(円盤状部材3の穴)
h 孔部(モーター軸S嵌入用)