IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンアロマー株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】ポリプロピレン樹脂コンパウンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20220215BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20220215BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20220215BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20220215BHJP
   C08K 7/04 20060101ALI20220215BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L23/16
C08L23/26
C08K7/00
C08K7/04
C08J5/00 CES
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2016253745
(22)【出願日】2016-12-27
(65)【公開番号】P2018104597
(43)【公開日】2018-07-05
【審査請求日】2019-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】597021842
【氏名又は名称】サンアロマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100108899
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 謙
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】安元 一寿
(72)【発明者】
【氏名】神村 和華子
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-256247(JP,A)
【文献】特開2012-158648(JP,A)
【文献】特開平11-021391(JP,A)
【文献】特開平07-173342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L23、53、C08J5、C08K7
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A1)として、(A1-1)および(A1-2)からなるポリプロピレン組成物を10~50重量%
(A1-1)ポリプロピレン60~80重量%
(A1-2)25~50重量%のエチレン由来単位を含むプロピレン-エチレンコポリマー20~40重量%
成分(A2)としてポリプロピレンを0~50重量%
成分(A3)として変性ポリプロピレンを2~15重量%
成分(B)としてマイカを15~25重量%
成分(C)として繊維状無機充填剤を5~20重量%、ならびに
成分(D)として有機核剤を含む核剤を、前記(A1)~(C)の合計量100重量部に対して、0.1~3重量部含むコンパウンドであって、
当該コンパウンドのメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が3~15g/10分であ
成分(A1)が、成分(A1-1)の原料モノマーおよび成分(A1-2)の原料モノマーを、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および内部電子供与体を含有する固体触媒、(b)有機アルミニウム化合物、ならびに(c)外部電子供与体化合物を含む触媒を用いて重合する工程を含む方法で得られたポリプロピレン組成物である、
ポリプロピレン樹脂コンパウンド。
【請求項2】
前記(A1)~(C)の総量中、(A1)~(A3)の合計量が55~80重量%、(B)と(C)の合計量が20~45重量%である、請求項に記載のコンパウンド。
【請求項3】
前記成分(A1)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が10~120g/10分である、請求項1または2に記載のコンパウンド。
【請求項4】
前記成分(A1)のキシレン可溶分の極限粘度が1~3dl/gである、請求項1~のいずれかに記載のコンパウンド。
【請求項5】
前記成分(A3)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が10~150/10分である請求項1~のいずれかに記載のコンパウンド。
【請求項6】
前記成分(B)の平均粒子径が100~300μmである、請求項1~のいずれかに記載のコンパウンド。
【請求項7】
前記成分(C)の平均アスペクト比が30~300である、請求項1~のいずれかに記載のコンパウンド。
【請求項8】
前記成分(A2)がポリプロピレン粉末である、請求項1~のいずれかに記載のコンパウンド。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載のコンパウンドを射出成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリプロピレン樹脂コンパウンドおよびこれを成形してなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは優れた物理的特性を有することから、自動車等の用途に有用である。しかしながら、エンジン周辺の部材には高い剛性および耐衝撃性が求められるため、これらの物性を改善したポリプロピレン樹脂コンパウンドが提案されている。例えば特許文献1にはマイカ等の無機充填剤を含有するポリプロピレン樹脂コンパウンドが、特許文献2にはガラス繊維とマイカを含有するポリプロピレン樹脂コンパウンドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-29026号公報
【文献】特開2005-23164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献に開示されている無機充填剤含有コンパウンドにおいては無機充填材近傍のポリプロピレンマトリックスの結晶化度が向上することが知られている。発明者らは無機充填材の近傍でない部分のマトリックスの結晶化度を向上できれば、コンパウンドの剛性をより向上できるという着想を得た。よって、本願発明はより高い剛性を有するポリプロピレン樹脂コンパウンドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、ポリプロピレン樹脂コンパウンドにおいて有機核剤を含む核剤を用いることで前記課題を解決できることを見出した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
[1]成分(A1)として、(A1-1)および(A1-2)からなるポリプロピレン組成物を10~50重量%
(A1-1)ポリプロピレン60~85重量%
(A1-2)25~50重量%のエチレン由来単位を含むプロピレン-エチレンコポリマー15~40重量%
成分(A2)としてポリプロピレンを0~50重量%
成分(A3)として変性ポリプロピレンを2~15重量%
成分(B)として板状無機充填剤を15~25重量%
成分(C)として繊維状無機充填剤を5~20重量%、ならびに
成分(D)として有機核剤を含む核剤を、前記(A1)~(C)の合計量100重量部に対して、0.1~3重量部含むコンパウンドであって、
当該コンパウンドのメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が3~15g/10分である、ポリプロピレン樹脂コンパウンド。
[2]前記(A1)~(C)の総量中、(A1)~(A3)の合計量が55~80重量%、(B)と(C)の合計量が20~45重量%である、[1]に記載のコンパウンド。
[3]前記成分(A1)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が10~120g/10分である、[1]または[2]に記載のコンパウンド。
[4]前記成分(A1)のキシレン可溶分の極限粘度が1~3dl/gである、[1]~[3]に記載のコンパウンド。
[5]前記成分(A3)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が10~150/10分である[1]~[4]のいずれかに記載のコンパウンド。
[6]前記成分(B)の平均粒子径が100~300μmである、[1]~[5]のいずれかに記載のコンパウンド。
[7]前記成分(C)の平均アスペクト比が30~300である、[1]~[6]のいずれかに記載のコンパウンド。
[8]前記成分(A2)がポリプロピレン粉末である、[1]~[7]のいずれかに記載のコンパウンド。
[9]前記[1]~[8]のいずれかに記載のコンパウンドを射出成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、高い剛性を有するポリプロピレン樹脂コンパウンドを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X~Y」はその端値であるXおよびYを含む。
【0008】
1.ポリプロピレン樹脂コンパウンド
本発明のポリプロピレン樹脂コンパウンドは、以下を含む。
成分(A1):ポリプロピレン組成物
必要に応じて成分(A2):ポリプロピレン
成分(A3):変性ポリプロピレン
成分(B):板状無機充填剤
成分(C):繊維状無機充填剤
成分(D):有機核剤を含む核剤
【0009】
(1)成分(A1):ポリプロピレン組成物
ポリプロピレン組成物は、(A1-1)ポリプロピレンおよび(A1-2)25~50重量%のエチレン由来単位を含むプロピレン-エチレンコポリマーからなる。成分(A1-1)と(A1-2)の重量比は60~85:15~40である。成分(A1-2)の量がこの上限を超えると剛性が不足し、下限未満であると耐衝撃性が不足する。この観点から、前記比率は好ましくは、60~80:20~40である。
【0010】
成分(A1-1)はプロピレン単独重合体であるが、製造プロセスにおけるリサイクルモノマーの存在や移行品の混入等により、発明の趣旨を損なわない程度に、2.0重量%以下、好ましくは1.0重量%以下の少量のエチレンまたはC4~C10-α-オレフィン由来単位が1種類以上含まれていてもよい。成分(A1-2)はプロピレン-エチレンコポリマーであり、エチレン由来単位を25~50重量%含む。エチレン由来単位の含有量が下限値未満であると耐衝撃性が不足し、上限値を超えると剛性と耐衝撃性のバランスが低下する。この観点からエチレン由来単位の含有量は25~40重量%が好ましい。
【0011】
成分(A1)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)は、10~120g/10分が好ましく、20~110g/10分がより好ましい。MFRが上限値を超えると耐衝撃性が低下し、下限値未満であると成形性が悪化することがある。以下、当該条件で測定したメルトフローレートを単に「MFR」ともいう。
【0012】
成分(A1)のキシレン可溶分(XS)の極限粘度(XSIV)は、成分(A1)における結晶性を持たない成分の分子量の指標でもある。XSIVは25℃のキシレンに可溶な成分を得て、当該成分の極限粘度を定法にて測定することで求められる。成分(A1)のXSIVは1~3dl/gが好ましく、1.5~2.8がより好ましい。XSIVが上限値を超えるとコンパウンドの流動性が悪化しやすくなり、下限未満であると耐衝撃性が低下することがある。
【0013】
成分(A1)は任意の方法で製造してよいが、成分(A1-1)の原料であるプロピレンおよび成分(A1-2)の原料モノマーを、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および内部電子供与体を含有する固体触媒、(b)有機アルミニウム化合物、ならびに(c)外部電子供与体化合物を含む触媒を用いて重合する工程を含む方法で得ることが好ましい。内部電子供与体化合物としては、フタレート系化合物、スクシネート系化合物、ジエーテル系化合物が挙げられ、本発明ではいずれの内部電子供与体化合物も使用できる。しかしながら、経済的な観点からフタレート系化合物を内部電子供与体化合物として含む触媒を使用することが好ましい。
【0014】
成分(A1)の重合には公知の方法を用いることができる。例えば、成分(A1-1)の原料であるプロピレンおよび成分(A1-2)の原料モノマーを、2つ以上の反応器を用いて重合することが好ましい。重合は、液相中、気相中または液-気相中で実施してよい。また、モノマー濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いてもよい。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接続されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、ポリマー生成物を回収する。この方法は、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的または部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体または液体混合物を下降管中に導入する。上記の重合方法として、例えば、特表2002-520426号公報に記載された方法を適用することができる。
【0015】
(2)成分(A2):ポリプロピレン
本発明のコンパウンドは成分(A2)として0~50重量%のポリプロピレンを含む。成分(A2)は、マトリックスにおける無機充填剤である成分(B)および(C)の分散性を向上させる。この観点から、成分(A2)の量は0.1重量%以上が好ましく、1~40重量%程度がより好ましい。ただし、コンパウンド製造時に無機充填剤である成分(B)および(C)をサイドフィードする場合は成分(A2)を用いずとも成分(B)および(C)の分散性を向上できる場合がある。成分(A2)のMFRは5~2000g/10分が好ましい。成分(A2)は、製造時に無機充填剤と混合しやすいことからポリプロピレン粉末であることが好ましい。ポリプロピレン粉末の平均粒子径は600~2000μmであることが好ましい。平均粒子径はJIS Z 8801に定められた標準篩を用いて測定された体積(重量)粒径分布により求められる。
【0016】
(3)成分(A3):変性ポリプロピレン
本発明のコンパウンドは、成分(A3)として2~15重量%の変性ポリプロピレンを含む。変性ポリプロピレンとは官能基を導入したポリプロピレンである。変性ポリプロピレンを用いることで、無機充填剤である成分(B)および(C)とマトリックスとの接着性が向上する。この観点から、成分(A3)の量は5~10重量%が好ましい。
【0017】
官能基としては酸基またはエポキシ基等が挙げられる。酸基を導入する場合は、不飽和カルボン酸またはその誘導体をポリプロピレンにグラフトする、またはプロピレンと共重合する方法が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、およびこれらの誘導体が挙げられる。エポキシ基を導入する場合は、エチレン性二重結合基とエポキシ基を有する化合物をポリプロピレンにグラフトする、またはプロピレンと共重合する方法が挙げられる。エチレン性二重結合基とエポキシ基を有する化合物としては、不飽和カルボン酸のグリシジルエーテル等が挙げられる。変性率はポリプロピレンを基準として0.1~2%が好ましく、0.1~1.5%がより好ましい。
【0018】
成分(A3)のMFRは10~150g/10分が好ましく、15~120g/10分がより好ましい。MFRが上限値を超えると最終製品の耐衝撃性が悪化し、下限未満であると剛性と強度が低下することがある。
【0019】
(4)成分(B):板状無機充填剤
本発明のコンパウンドは、成分(B)として15~25重量%の板状無機充填剤を含む。成分(B)はコンパウンドの剛性を向上させる。この観点から成分(B)の量は17~23重量%が好ましい。板状無機充填剤としては、マイカ、クレー、タルク等が挙げられるが、本発明においては剛性の向上効果の高いマイカが好ましい。板状無機充填剤の平均粒子径は100~300μmが好ましく、110~160μmがより好ましい。平均粒子径が上限値を超えると耐衝撃性が低下し、下限未満であると剛性が不足することがある。平均粒子径はJIS Z 8825に従って測定される。
【0020】
(5)成分(C):繊維状無機充填剤
本発明のコンパウンドは、成分(C)として5~20重量%の繊維状無機充填剤を含む。成分(C)はコンパウンドの剛性を向上させる。この観点から成分(C)の量は8~18重量%が好ましい。平均繊維径は5~20μmが好ましく、10~15μmがより好ましく、アスペクト比は30~300が好ましく、50~150がより好ましい。平均繊維径はJIS Z 8825に従って測定される。平均繊維径およびアスペクト比が上限値を超えると流動性が低下し、下限未満であると剛性が低下することがある。繊維状無機充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、ウィスカ等が挙げられるが、コスト面等からガラス繊維が好ましい。
【0021】
成分(A1)、(A2)、(A3)、(B)、および(C)の総量中、成分(A1)、(A2)、(A3)の合計量(「樹脂の合計量」ともいう)と、成分(B)および(C)の合計量(「無機充填剤の合計量」ともいう)との比(樹脂の合計量:無機充填剤の合計量)は55~80重量%:20~45重量%であることが好ましく、60~75重量%:25~40重量%であることがより好ましい。
【0022】
(6)成分(D):有機核剤を含む核剤
本発明のコンパウンドは、前記(A1)、(A2)、(A3)、(B)、および(C)の合計量100重量部に対して、成分(D)として有機核剤を含む核剤を0.1~3重量部含む。有機核剤とは結晶造核効果を有する有機化合物であり、本発明においては無機充填剤の近傍でない部分においてマトリックスの結晶化度を向上させる。この観点から、成分(D)の前記量は、0.1~0.5重量部が好ましい。
【0023】
有機核剤を含む核剤は特に限定されず、当該分野で通常使用されるものを使用してよいが、リン酸エステル系核剤、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、トリアミノベンゼン誘導体核剤、カルボン酸金属塩核剤、およびキシリトール系核剤から選択されることが好ましい。
【0024】
リン酸エステル系核剤として、アルミニウム-ビス(4,4’,6,6’-テトラ-tert-ブチル-2,2’-メチレンジフェニル-ホスファート)-ヒドロキシド、リン酸-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リチウム塩系化合物等が挙げられる。市販のリン酸エステル系核剤として、例えばアデカスタブNA-11(株式会社ADEKA製)、アデカスタブNA-18(株式会社ADEKA製)、アデカスタブNA-21(株式会社ADEKA製)、アデカスタブNA-71(株式会社ADEKA製)などが挙げられる。
【0025】
ノニトール系の核剤として、例えば、1,2,3―トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトールが挙げられる。
【0026】
キシリトール系核剤として、例えば、ビス-1,3:2,4-(5’,6’,7’,8’-テトラヒドロ-2-ナフトアルデヒドベンジリデン)1-アリルキシリトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1-プロピルキシリトールが挙げられる。
【0027】
ソルビトール系核剤として、例えば、ビス-1,3:2,4-(4’-エチルベンジリデン)1-アリルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’-メチル-4’-フルオロ-ベンジリデン)1-プロピルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1’-メチル-2’-プロペニルソルビトール、ビス-1,3,2,4-ジベンジリデン2’,3’-ジブロモプロピルソルビトール、ビス-1,3,2,4-ジベンジリデン2’-ブロモ-3’-ヒドロキシプロピルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’-ブロモ-4’-エチルベンジリデン)-1-アリルソルビトール、モノ2,4-(3’-ブロモ-4’-エチルベンジリデン)-1-アリルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(4’-エチルベンジリデン)1-アリルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1-メチルソルビトール、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス-o-(4-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-o-(ベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-o-(3,4-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール等が挙げられる。
【0028】
トリアミノベンゼン誘導体核剤として、例えば、1,3,5-トリス(2,2-ジメチルプロパンアミド)ベンゼン等が挙げられる。市販のトリアミノベンゼン誘導体核剤として、例えばIRGACLEAR XT386(BASFジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0029】
カルボン酸金属塩核剤として、例えば、アジピン酸ナトリウム、アジピン酸カリウム、アジピン酸アルミニウム、セバシン酸ナトリウム、セバシン酸カリウム、セバシン酸アルミニウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸アルミニウム、ジ-p-t-ブチル安息香酸アルミニウム、ジ-p-t-ブチル安息香酸チタン、ジ-p-t-ブチル安息香酸クロム、ヒドロキシ-ジ-p-t-ブチル安息香酸アルミニウム、1,2-シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩等が挙げられる。市販のカルボン酸金属塩核剤として、例えばHyperform HPN-20E(ミリケンジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0030】
本発明においては、リン酸エステル系核剤核剤の使用が好ましい。上記の核剤は、単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
(7)他の成分
さらにコンパウンドには、酸化防止剤、塩素吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物、油展および他の有機および無機顔料などの当該分野で通常用いられる慣用の添加剤を添加してもよい。各添加剤の添加量は公知の量としてよい。
【0032】
本発明のコンパウンドは高熱環境下で使用されるため、上記添加剤のうち酸化防止剤を含むことが好ましい。硫黄系酸化防止剤を用いる場合、その量は、前記(A1)~(C)の合計量100重量部に対して好ましくは0.3~1重量部、より好ましくは0.5~0.8重量部である。これ以外の酸化防止剤を用いる場合、その量は、前記(A1)~(C)の合計量100重量部に対して好ましくは0.07~1.2重量部、より好ましくは0.09~0.6重量部である。
【0033】
(7)コンパウンドの特性
1)MFR
本発明のコンパウンドのMFRは3~15g/10分であり、好ましくは4~10g/10分である。MFRが上限を超えると衝撃強度が低下し、下限未満であると流動性が低下する。
【0034】
2)比重
本発明のコンパウンドの比重は好ましくは1.09~1.17、より好ましくは1.11~1.15である。
【0035】
3)剛性
本発明のコンパウンドの曲げ弾性率は23℃において4000~7000MPaが好ましく、4600~7000MPaがより好ましい。
【0036】
4)衝撃強度
本発明のコンパウンドのアイゾット衝撃強度は23℃において40~100J/mが好ましく、60~100J/mがより好ましい。
【0037】
2.製造方法
本発明のコンパウンドは、成分(A1)~(D)、必要に応じて添加剤を溶融混練することにより製造できる。混練方法は限定されないが、押出機等の混練機を用いることが好ましい。混練条件は特に限定されないが、シリンダー温度を180~250℃とすることが好ましい。前記成分を一括して混練機にフィードしてもよいが、成分(B)および(C)を溶融樹脂にフィードするサイドフィードを行ってもよい。サイドフィードの場合は成分(A2)を用いなくてもよい。このようにして得られたコンパウンドはペレット状であることが好ましい。
【0038】
3.射出成形
本発明のコンパウンドは射出成形に好適である。また、本発明のコンパウンドは、高剛性、高耐衝撃性を有するので自動車部品に、特にエアークリーナーケース等のエンジン周辺部品に好適である。一般的な射出条件は、シリンダー温度190~230℃、金型温度20~50℃、射出速度30~300mm/秒である。
【実施例
【0039】
以下の材料を準備した。
(1)成分A1:ポリプロピレン樹脂組成物の製造
MgCl上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州特許第728769号公報の実施例5に記載された方法により調製した。次いで、上記固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの重量比が20、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予備重合を行った。
得られた予備重合物を、二段の重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を製造し、二段目の重合反応器でプロピレン-エチレンコポリマーを製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。
重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、水素濃度が、それぞれ70℃、3.33モル%、二段目の反応器では、重合温度、水素濃度、C2/(C2+C3)が、それぞれ80℃、1.88モル%、0.25モル比であった。また、共重合体成分の量が30重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。
得られたポリプロピレン重合体100重量部に、酸化防止剤として、BASF社B225を0.2重量部、中和剤として、淡南化学(株)製カルシウムステアレートを0.05重量部配合し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌、混合した後、スクリュー直径15mmの2軸押出機(株式会社テクノベル製、型番KZW15TW-30MG)を用いて、シリンダー温度200℃で溶融混練して押出した。ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレットを得た。
得られたポリプロピレン樹脂組成物A1は、MFR=37g/10分、プロピレン-エチレンコポリマーのエチレン由来単位=30重量%、XSIV=2.3dL/gであった。
【0040】
(2)成分A2:ポリプロピレン(サンアロマー株式会社製PX600N)
MFR=7g/10分
【0041】
(3)成分A3:変性ポリプロピレン
MFR=23g/10分
マレイン酸変性率0.2%
【0042】
(4)成分(B):マイカ
マイカ1(株式会社レプコ製M-60)D50=160μm
マイカ2(株式会社ヤマグチマイカ製B-82)D50=110μm
マイカ3(株式会社福岡タルク工業所製マイカパウダー)D50=80μm
【0043】
(5)成分(C):ガラス繊維(日本電子硝子株式会社製ECS03T-480/SW)
平均繊維径13μm、平均繊維長3mm
【0044】
(6)成分(D)有機核剤を含む核剤
有機核剤を含む核剤1 アデカスタブNA-11(株式会社ADEKA製)
有機核剤を含む核剤2 アデカスタブNA-21(株式会社ADEKA製)
(7)添加剤
酸化防止剤1(BASF製Ir1010)
酸化防止剤2(三菱化学株式会社製DMTP(ジミリスチルチオジプロピオネート))
中和剤(淡南化学株式会社製ステアリン酸カルシウム)
顔料(東京インキ株式会社製カーボンブラック)
【0045】
[実施例1~8]
表1に示す成分をヘンシェルミキサーで1分間撹拌して混合した後、スクリュー直径30mmの2軸押出機(株式会社JSW製、型番TEX-30α)を用いて、シリンダー温度200℃で溶融混練して押出した。ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレットを得た。次いで、射出成型機(ファナック株式会社製、型番ロボショットS-2000i 100B)を用いて、当該ペレットを各種試験片に射出成形した。成形条件は、シリンダー温度200℃、金型温度40℃、射出速度200mm/秒であった。試験片を用い、各種物性を評価した。評価方法は後述する。
【0046】
[比較例1~4]
表1に示す成分を用いて実施例と同様にして比較用のコンパウンドを製造し評価した。
結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
本発明のコンパウンドは優れた剛性および耐衝撃性を有することが明らかである。
【0049】
以下に物性値の測定方法を示す。
[MFR]
230℃、荷重21.18Nの条件下で測定した。
[引張特性]
島津株式会社製 全自動試験機AG-X(引張モード)を用いて測定した。
試験速度:50mm/分
試験温度:23℃
【0050】
[曲げ特性]
島津株式会社製 全自動試験機AG-X(曲げモード)を用いて測定した。
試験速度:10mm/分
試験温度:23℃
【0051】
[衝撃強度]
株式会社東洋精機製作所製デジタル衝撃試験機を用いて評価した。条件は以下のとおりである。
ひょう量:5.5J
振り子先端形状:1インチ(R;12.7mm、直径;25.4mm)半球
槽内雰囲気:23℃、-10℃、-30℃
【0052】
[HDT]
株式会社東洋精機製作所製AUTO HDT.TESTER 6A-2を用いて評価した。
4.6kgf/cmにおける荷重たわみ温度を計測した。(ASTM準拠)
【0053】
[キシレン可溶分の採取]
ポリマー2.5gを、o-キシレン(溶媒)を250mL入れたフラスコに入れ、ホットプレートおよび還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間、攪拌し、組成物を完全溶解させた後、25℃で1時間、冷却を行った。得られた溶液を、濾紙を用いて濾過した。濾過後の濾液を100mL採取し、アルミカップ等に移し、窒素パージを行いながら、140℃で蒸発乾固を行い、室温で30分間静置し、キシレン可溶分(XS)を得た。
[XSIV]
上記のキシレン可溶分を試料とし、ウベローデ型粘度計(SS-780-H1、柴山科学器械製作所製)を用いて135℃テトラヒドロナフタレン中で極限粘度の測定を行った。
【0054】
[ポリプロピレン樹脂組成物A1中の共重合体中のエチレン濃度および共重合体の量]
1、2、4-トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、Bruker社製AVANCEIII HD400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、測定温度120℃、フリップ角45度、パルス間隔7秒、試料回転数20Hz、積算回数5000回の条件で13C-NMRのスペクトルを得た。
【0055】
<ポリプロピレン樹脂組成物A1中の総エチレン量>
上記で得られたスペクトルを用いて、Kakugo,Y.Naito、K.Mizunuma and T.Miyatake、Macromolecules、15、1150-1152(1982)の文献に記載された方法により、成分(A1)中の総エチレン量(重量%)を求めた。
【0056】
<共重合体中のエチレン濃度>
上記で得られたTββの積分強度の替わりに下記式で求めた積分強度を使用した以外は、総エチレン量と同様の方法で計算を行い、共重合体中のエチレン濃度を求めた。
T’ββ= 0.98×Sαγ×A/(1-0.98×A)
ここで、A= Sαγ/(Sαγ+Sαδ)
【0057】
<ポリプロピレン樹脂組成物A1中の共重合体の量>
以下の式で求めた。
共重合体の量(重量%)= 総エチレン量/(共重合体中のエチレン濃度/100)