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  • 特許-冷却圧縮機のヘッド締結装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】冷却圧縮機のヘッド締結装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/12 20060101AFI20220215BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
F04B39/12 D
F04B39/00 104E
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017112278
(22)【出願日】2017-06-07
(65)【公開番号】P2017223227
(43)【公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】10 2016 013780 2
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】506198746
【氏名又は名称】ワールプール・エシ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ラセルダ・デ・アンドラージ
(72)【発明者】
【氏名】ディエゴ・サコモリ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ダ・シウバ・カストロ
(72)【発明者】
【氏名】アルシャンドル・デ・アシス・ペレイラ
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0020554(US,A1)
【文献】特開2006-183530(JP,A)
【文献】実開昭62-176491(JP,U)
【文献】特開2013-221450(JP,A)
【文献】特開2012-082785(JP,A)
【文献】特開平11-303743(JP,A)
【文献】実開昭58-042379(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04B 39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却圧縮機のシリンダ(3)と、
冷却圧縮機のシリンダ(3)の近くに配置され、ヘッド蓋(2)を有するヘッドと、
同様にシリンダ(3)の近くに配置される少なくとも1つの支持装置(4)と、
ヘッド蓋(2)の支持装置(4)への少なくとも1つの連結要素(6)であって、ヘッド蓋(2)と支持装置(4)をシリンダ(3)に対して押圧する力を伝達することができる連結要素(6)と、
を備え、
ヘッドが、シリンダ(3)の前部に配置され、支持装置(4)が、シリンダ(3)の後部(14)に配置され、
支持装置(4)が、ヘッドと反対側の位置に配置される、冷却圧縮機のヘッド締結装置であって、
支持装置(4)は、シリンダに対向する表面(9)に配置される少なくとも4つの予備接触領域(10A、10B、10C、10D)を備え、
支持装置(4)が、アーチ状の形を備え、
第1の予備接触領域(10A)および第2の予備接触領域(10B)が、支持装置(4)のアーチ状本体の第1の端部領域(11A)および第2の端部領域(11B)にそれぞれ配置され、さらに、第3および第4の接触領域(10C、10D)が、支持装置(4)のアーチ状本体の最後部の領域(11c)に配置される、
ことを特徴とする、装置。
【請求項2】
支持装置(4)のアーチ状本体の最後部の領域(11c)には、さらに剛性セグメント(13)が設けられ、剛性セグメント(13)が、円弧状の形を備え、第3および第4の接触領域(10C、10D)間に配置され、両方に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
連結要素(6)が、少なくとも1つのねじ山に結合されるねじであり、ヘッド蓋(2)には、少なくとも1つの有孔突出タブ(15)が設けられ、支持装置(4)には、少なくとも1つの締結孔(8)が設けられ、さらに、ねじが、前記締結孔(8)および前記有孔突出タブ(15)の穿孔を横切るように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
支持装置(4)の締結孔(8)によって形成される少なくとも1つのねじ山にそれぞれ結合される2つのねじを備えることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
支持装置(4)が、互いに対向する位置に配置される少なくとも2つの締結孔(8)を備え、ヘッド蓋(2)が、互いに対向する位置に配置される少なくとも2つの前記有孔突出タブ(15)を備え、前記有孔突出タブ(15)と締結孔(8)が、互いに対して位置合わせされることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却圧縮機のブロック(より正確には、シリンダ)にヘッドを締結するための新規な構造的装置に関する。本発明の目的は、ヘッドの締結効率を高め、部品の製造コストを低減するために開発された解決策を開示する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機ブロック、より正確には、シリンダへのヘッドの締結には、圧縮機の機能に固有のいくつかの課題がある。克服すべきこれらの課題の中には、シリンダとヘッドを構成する部品との間のガスケットの封止、さらにヘッドの締結力の伝達によって生じるシリンダ壁の変形がある。
【0003】
現在のところ、ヘッドをシリンダに締結する従来の方法は、通常、ヘッド(弁、弁板、およびヘッド蓋)上に存在する組をシリンダブロックの壁の周囲に位置する穴に位置合わせした4つのねじが貫通する位置合わせ穴を形成するステップを含む。この従来の方法の一例を図9に示す。
【0004】
この従来の方法にはいくつかの欠点がある。第1に、封止する必要がないねじ周囲の領域では接触圧がより集中するので、ガスケット封止を保証することができるように、ねじに高い締結力を加える必要がある。これらの高い締結力は、シリンダ壁に伝達される変形を生じさせることになる。第2に、全てのヘッド部品の穴と、主にシリンダブロックのねじ穴とを有する必要があり、これらの穴は、高い位置公差の精度と長い加工時間を必要とし、このことは、確実にこの解決策のコストを著しく上昇させる。
【0005】
特許文献に関連して、ねじを用いた上述の締結方法は、例えば、米国特許第9074591号明細書に見られる。
【0006】
別の例は、韓国特許第2001-054069号公報で確認することができる。この特許文献は、吐出弁、弁板、および吸入弁の間の締結および位置合わせを支援するためにクランプを使用する解決策を記載している。クランプは、ヘッドの前部に配置される。しかしながら、クランプは、位置合わせおよび締結を補助する機能しか有さないので、締結および位置合わせ自体は、依然として前述した従来の解決策で述べたのと同じねじで行われる。
【0007】
上述したように、最新技術には、締結効率の低下および付随する損傷(例えば、ブロックのシリンダ壁の変形の増大)をさらにもたらすことなく、製造の複雑性およびコストが低い冷凍圧縮機用のヘッド締結方法が依然としてない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第9074591号明細書
【文献】韓国特許第2001-054069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、基本的に、現在の既存の冷凍圧縮機のヘッド締結方法の高い複雑性、ひいては高い製造コストの問題を解決することを目的とする。
【0010】
また、本発明の目的の1つは、ヘッドとシリンダガスケットとの間の封止を確実にする締結装置によって、ヘッド締結力がシリンダ壁に伝達されることによって生じる変形を最小限に抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、冷却圧縮機のヘッド締結装置であって、蓋を有する密閉型圧縮機のシリンダの近くに配置されるヘッドと、シリンダの近くに配置される少なくとも1つの支持装置と、ヘッド蓋の支持装置への少なくとも1つの連結要素であって、ヘッド蓋と支持装置をシリンダに対して押圧する力を伝達することができる連結要素と、を備えるヘッド締結装置によって達成される。
【0012】
本発明を、以下の図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のヘッド締結装置の分解斜視図であり、密閉圧縮機の内部、より正確には、当業者に周知の他の部品のうちヘッド、シリンダ、ピストン、コネクティングロッドが配置される圧縮機の上部の斜視図である。
図2】本発明の支持装置の斜視図である。
図3】本発明の装置を備えた密閉型圧縮機のシリンダの側断面図である。
図4】本発明の装置の斜視図である。
図5】本発明の装置の上面図である。
図6】従来の締結方法における変形をねじの数の関数として表したグラフである。
図7】本発明の装置による変形をねじの数の関数として表したグラフである。
図8図2に示された支持装置が受ける変形を意図的に誇張して示した上部概略断面図である。
図9】最新技術の従来の解決方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
請求される保護範囲を逸脱することなく、調整および変更を行うことができるので、単に例示的かつ非限定的な特徴を示した添付図面に基づいて、本発明の目的を詳細に記載および説明する。
【0015】
本発明の締結装置は、例えば、家庭用および商用の冷凍システムに使用されるような冷凍圧縮機に適用することが好ましい。当然、本発明はこの用途に限定されず、この用途は請求項の範囲内にある可能性のうちの1つに過ぎない。
【0016】
図1図3図4、および図5から分かるように、本発明の締結装置は、圧縮機のシリンダ3の近くに配置されるヘッドを備える。ヘッドは、蓋2を有する。ところで、「シリンダ蓋」としても周知の蓋2は、ここでは、ヘッド部品を包囲するので、ヘッド蓋2と呼ぶ。しかしながら、いずれにしても、この命名法のわずかな差異は、本発明の保護範囲の理解を低下させる、または理解に支障を来すものと見なすことはできない。
【0017】
さらに、本発明の締結装置1はまた、同様にシリンダ3の近くに配置される少なくとも1つの支持装置4を含む。本発明の一実施形態では、支持装置4は、ヘッドに対して、つまり、ヘッド蓋2に対して反対側の位置に配置される。さらに、本発明の範囲内で、装置1は、複数の支持装置4を用いて構成することができる。図1図3図4、および図5に示す本発明の例示的な実施形態では、支持装置4はシリンダ3の後部14の近くに配置され、ヘッドはシリンダ3の前部の近くに配置される。本発明の他の構成では、前記支持装置4は、シリンダ3の中間領域の近くに配置されてよい。明らかに、本明細書の「前部」および「後部」の用語は、読者に最小限の空間的参照を与えるという性質を有し、したがって厳密に文字通りに解釈されるべきではない。
【0018】
ここで図2を参照すると、支持装置4が実質的にアーチ状、すなわち「馬蹄」の形を備えることが分かる。この特定のアーチ状の形は、2つの端部領域11A、11Bと、端部領域11A、11B間に配置される退避領域11Cと、を含む。さらに、支持装置4は、シリンダ3と対向する表面9に配置される予備縮小領域10A、10B、10C、および10Dを備える。より正確には、支持装置4は、4つの予備接触領域10B、10C、および10Dを備え、第1の予備接触領域10Aおよび第2の予備接触領域10Bは、支持装置4のアーチ状本体の第1の端部領域11Aおよび第2の端部領域11Bにそれぞれ配置される。また、第3および第4の予備接触領域10C、10Dは、支持装置4のアーチ状本体の退避領域12に配置される。
【0019】
退避領域12は、接触領域10C、10D以外に、剛性セグメント13をさらに備え、剛性セグメント13も、表面9に対して与えられる。このセグメント13の機能は、その名の通り、支持装置4の剛性を確実に実現するためのものである。図示されている本発明の実施形態の例では、このセグメント13は円弧状の形を備え、第3の接触領域10Cと第4の接触領域10Dとの間に配置され、両方に接続される。
【0020】
さらに、予備接触領域10A、10B、10C、および10Dは、本発明の範囲内の任意の形にすることができることを強調する価値がある。したがって、例えば、図面では、これらの接触領域10A、10B、10C、および10Dは実質的に円形のリバウンド部として示されているが、図面は本発明を実施するための様々な可能性のうちの1つのみを表しているので、他の形態を採用することも可能である。
【0021】
本発明の締結装置1は、ヘッド蓋2を少なくとも1つの支持装置4に連結する少なくとも1つの連結要素6であって、ヘッド蓋2と支持装置4をシリンダ3に対して押圧する力を伝達することができる連結要素6を備える。本発明の一実施形態では、連結要素6は、支持装置4上に配置される少なくとも1つねじ山に結合されるねじである。本発明の他の実施形態では、連結要素6は、支持装置4とヘッド蓋2をシリンダ3に対して押圧する機能を発揮する別の部品、装置、または機構としてよく、ナットまたはねじ山と結合されても、または結合されなくてもよい。なお、本明細書で言及される用語「ねじ山」は、本明細書に記載されている機能を果たすためにねじによって使用可能なナットまたは他の任意の部品のような同等の部品も含めるものとする。
【0022】
本発明の実施形態では、連結要素6は、支持装置4に設けられた少なくとも1つのねじ山に結合されるねじであり、ヘッド蓋2は、少なくとも1つの有孔突出タブ15を有する。この有孔突出タブ15は、図1図4、および図5から分かるように、シリンダの直径を超えて延びる。特に、ヘッド蓋2は、少なくとも2つの突出タブ15を備え、さらに具体的には、蓋2は、互いに対して反対位置に配置される2つの突出タブ15を備える。
【0023】
一方、支持装置4には少なくとも1つの締結孔8が設けられており、図2に示す実施形態では、支持装置4は互いに反対側の位置に配置される2つの締結孔8を備える。この構造から、有孔突出タブ15と締結孔8は互いに位置合わせされるので、ねじは締結孔8と前記突出タブ15の穿孔を横切るように構成される。このようにして、既に述べたように、支持装置4と蓋2は連結されて、シリンダ3に対して支持装置4と蓋2を押圧する力を伝達し、結果として、さらに互いに対して押圧し合う。本発明のこの実施形態におけるねじの締結に関しては、支持装置4の締結孔8によって1つまたは複数のねじ山を設けることができる。
【0024】
本発明の締結装置1の上記の構造から、より少ない部品を使用して、締結の質を低下させることなく、より効果的にヘッドを圧縮機ブロックに締結することが可能である。これらの利点に加えて、本発明をさらに良くする予備接触領域10A、10B、10C、および10Dについて言及することは重要である。これらの領域は、図3に見られるように、シリンダ3の後部14と効果的に接触する領域である。このように、予備縮小領域10A、10B、10C、および10Dにおいてシリンダ3との物理的接触を集中させる場合には、特定の点のみで連結要素6(および、例えば、ねじ山のような可能性のある追加の部品)と協働して締結力が伝達され、このことは、シリンダへのモーメント伝達を大幅に減少させる。これらの予備接触領域10A、10B、10C、および10Dが使用されなかった場合、表面9の全てまたは大部分がシリンダ3と接触することになり、このことは、伝達されるモーメントを大きく増加させる。接触領域10A、10B、10C、および10Dの効果は、モーメントの作用を概略的に示した図8で確認することができる。
【0025】
したがって、接触領域10A、10B、10C、および10Dを実現すると、安全かつ効果的な固定が保証され、締結する部品の数を減らすことができる。この意味で、図6について再度言及する価値がある。この図は、従来技術の解決策においてねじの数に応じてどの程度変形に差が生じるかを示している以外に、予備接触領域10A、10B、10C、および10Dのない支持装置4を使用した場合に生じる変形の差を示している。このシナリオでは、効果的かつ変形の小さい締結を実現するために、多数のねじを使用すべきである。ねじの数を増やすと、各ねじのコストだけでなく、各ねじが貫通する部品に正確な穴を開ける必要もあることを覚えておくことが重要である。
【0026】
一方、本発明の締結装置1では、適切な締結を達成するだけでなく、ヘッド部品のブロック加工領域および輪郭周囲長の大幅な削減に伴うコストを低減することも可能であり、さらにねじの数を減らしてシリンダ壁の変形を適切なレベルで維持することができる。この挙動は、図7に示されている。
【0027】
上述したように、本発明は、最新技術の問題を完全に解決し、より効果的な締結方法を提供し、部品数を減らすことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 締結装置
2 ヘッド蓋
3 シリンダ
4 支持装置
6 連結要素
8 締結孔
9 表面
10A 第1の予備接触領域
10B 第2の予備接触領域
10C 第3の予備接触領域
10D 第4の予備接触領域
11A 第1の端部領域
11B 第2の端部領域
11C 退避領域
13 剛性セグメント
14 後部
15 有孔突出タブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9