(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】レーダ受信信号処理装置、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/295 20060101AFI20220215BHJP
G01W 1/00 20060101ALI20220215BHJP
G01S 7/18 20060101ALI20220215BHJP
G01S 13/95 20060101ALN20220215BHJP
【FI】
G01S7/295
G01W1/00 C
G01S7/18
G01S13/95
(21)【出願番号】P 2017144121
(22)【出願日】2017-07-26
【審査請求日】2020-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】諸富 和臣
(72)【発明者】
【氏名】柏柳 太郎
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104849777(CN,A)
【文献】特開平11-118905(JP,A)
【文献】特開平09-281214(JP,A)
【文献】特開平11-083983(JP,A)
【文献】特開2001-324567(JP,A)
【文献】特開2011-214849(JP,A)
【文献】特開2003-207559(JP,A)
【文献】特開平02-257077(JP,A)
【文献】特開昭58-044371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 7/52- 7/64,
G01S 13/00-13/95,
G01S 15/00-15/96,
G01W 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方位角方向の機械走査を行ないながら仰角方向の電子走査を行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理装置であって、
方位角方向の各セクタ内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向の情報を取得する電子走査情報取得部と、
方位角方向の各セクタ内及び各セクタの隣りの又は近傍のセクタ内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向に基づいて、方位角方向の各セクタ内での
何れかの方位角方向である表示方位角方向における、仰角方向毎のレーダ受信信号を補間により算出するレーダ受信信号補間部と、
を備えることを特徴とするレーダ受信信号処理装置。
【請求項2】
前記レーダ受信信号補間部は、方位角方向の各セクタ内での所定の仰角より高い仰角方向毎のレーダ受信信号を、方位角方向の各セクタ内での
何れかの方位角方向である表示方位角方向における、前記所定の仰角より高い仰角方向毎のレーダ受信信号として採用することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ受信信号処理装置。
【請求項3】
前記レーダ受信信号補間部は、方位角方向の各セクタ内での所定の仰角より低い仰角方向毎の観測方位角方向を、方位角方向の各セクタ内での
何れかの方位角方向である表示方位角方向として採用することを特徴とする、請求項1又は2に記載のレーダ受信信号処理装置。
【請求項4】
方位角方向の各セクタ内での
何れかの方位角方向である表示方位角方向における、補間により算出された仰角方向毎のレーダ受信信号を表示するレーダ受信信号表示部、をさらに備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のレーダ受信信号処理装置。
【請求項5】
方位角方向の機械走査を行ないながら仰角方向の電子走査を行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理プログラムであって、
方位角方向の各セクタ内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向の情報を取得する電子走査情報取得ステップと、
方位角方向の各セクタ内及び各セクタの隣りの又は近傍のセクタ内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向に基づいて、方位角方向の各セクタ内での
何れかの方位角方向である表示方位角方向における、仰角方向毎のレーダ受信信号を補間により算出するレーダ受信信号補間ステップと、
を順にコンピュータに実行させるためのレーダ受信信号処理プログラム。
【請求項6】
方位角方向の機械走査を行ないながら仰角方向の電子走査を行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理方法であって、
方位角方向の各セクタ内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向の情報を取得する電子走査情報取得ステップと、
方位角方向の各セクタ内及び各セクタの隣りの又は近傍のセクタ内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向に基づいて、方位角方向の各セクタ内での
何れかの方位角方向である表示方位角方向における、仰角方向毎のレーダ受信信号を補間により算出するレーダ受信信号補間ステップと、
を順に備えることを特徴とするレーダ受信信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、方位角方向の機械走査を行ないながら仰角方向の電子走査を行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元のボリュームスキャンを行なうレーダとして、パラボラアンテナを用いるパラボラレーダ及びDBF(Digital Beam Forming)を用いるフェーズドアレイレーダが、従来から知られている。
【0003】
パラボラレーダでは、仰角方向の機械走査をある一定仰角で止めたうえで、方位角方向の機械走査を360°に渡って行なうことにより、PPI(Plan Position Indicator)観測を行ない、仰角を変えPPI観測を繰り返すことにより、3次元のボリュームスキャンを行なう。
【0004】
フェーズドアレイレーダでは、従来のパラボラレーダの機械走査で観測していた部分を電子走査で観測することで、三次元観測を高速化できる。例えば、方位角方向の機械走査をあるセクタ内で行ないながら、仰角方向の電子走査を例えば90°に渡って行なうことにより、RHI(Range Height Indicator)観測を行ない、セクタを変えRHI観測を繰り返すことにより、3次元のボリュームスキャンを行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】George P. Cressman,“An Operational Objective Analysis System”,Monthly Weather Review,Vol.87,pp.367-374,1959.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
方位角方向の機械走査を止めたうえで、仰角方向の電子走査を行なう仮想の場合における、レーダ受信信号処理を
図1に示す。仮想の場合では、1回のRHI観測において、観測方位角方向が変化しない。そこで、方位角方向の各セクタ・・・、S(n-1)、S(n)、S(n+1)、・・・内での表示方位角方向(=観測方位角方向)における、仰角方向毎のレーダ受信信号を観測して表示する。しかし、方位角方向の機械走査の停止/作動の繰り返しが必要であるため、レーダ装置の機械走査部に負荷を与えるとともに、方位角方向の機械走査を行ないながら仰角方向の電子走査を行なう場合と比べて、3次元のボリュームスキャンに時間を要する。
【0008】
方位角方向の機械走査を行ないながら、仰角方向の電子走査を行なう実際の場合の一例における、レーダ受信信号処理を
図2に示す。実際の場合の一例では、1回のRHI観測において、観測方位角方向が変化する。例えば、1回のボリュームスキャン当たりに、300回~360回のRHI観測を行なうと、1回のRHI観測において、最低仰角方向と最高仰角方向での観測方位角方向の差分は、最大1.0°~1.2°となる。そこで、方位角方向の各セクタ・・・、S(n-1)、S(n)、S(n+1)、・・・内での仰角方向毎及び観測方位角方向毎のレーダ受信信号を、方位角方向の各セクタ・・・、S(n-1)、S(n)、S(n+1)、・・・内での表示方位角方向における、仰角方向毎のレーダ受信信号としてそのまま使用して表示する。よって、方位角方向の機械走査の停止/作動の繰り返しが必要でないため、レーダ装置の機械走査部に負荷を与えないとともに、方位角方向の機械走査を止めたうえで仰角方向の電子走査を行なう場合と比べて、3次元のボリュームスキャンに時間を要さない。
【0009】
しかし、方位角方向の機械走査を行ないながら、仰角方向の電子走査を行なう実際の場合の一例において、以下に記載の課題が生じる。つまり、方位角方向の各セクタ・・・、S(n-1)、S(n)、S(n+1)、・・・内での仰角方向の電子走査において、ある仰角方向における表示方位角方向が観測方位角方向から位置ずれをしていることがある。すると、本来はその仰角方向における観測方位角方向において観測されたレーダ受信信号が、誤って表示方位角方向において観測されたレーダ受信信号としてそのまま使用されて表示される。例えば、水平面内における表示方位角方向が観測方位角方向から0.5°位置ずれをしているときには(
図2を参照。)、レーダ装置から30kmの地点では、30km×2π×0.5°/360°=260mのレーダ受信信号データの表示上の位置ずれが発生し、レーダ装置から60kmの地点では、60km×2π×0.5°/360°=520mのレーダ受信信号データの表示上の位置ずれが発生する。
【0010】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、方位角方向の機械走査を行ないながら仰角方向の電子走査を行なうレーダにおいて、1回のRHI観測での観測方位角方向の変化に伴うレーダ受信信号データの表示上の位置ずれを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、方位角方向の各セクタ内及び各セクタの隣りの又は近傍のセクタ内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向に基づいて、方位角方向の各セクタ内での表示方位角方向における、仰角方向毎のレーダ受信信号を補間により算出することとした。
【0012】
具体的には、本開示は、方位角方向の機械走査を行ないながら仰角方向の電子走査を行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理装置であって、方位角方向の各セクタ内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向の情報を取得する電子走査情報取得部と、方位角方向の各セクタ内及び各セクタの隣りの又は近傍のセクタ内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向に基づいて、方位角方向の各セクタ内での表示方位角方向における、仰角方向毎のレーダ受信信号を補間により算出するレーダ受信信号補間部と、を備えることを特徴とするレーダ受信信号処理装置である。
【0013】
また、本開示は、方位角方向の機械走査を行ないながら仰角方向の電子走査を行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理プログラムであって、方位角方向の各セクタ内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向の情報を取得する電子走査情報取得ステップと、方位角方向の各セクタ内及び各セクタの隣りの又は近傍のセクタ内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向に基づいて、方位角方向の各セクタ内での表示方位角方向における、仰角方向毎のレーダ受信信号を補間により算出するレーダ受信信号補間ステップと、を順にコンピュータに実行させるためのレーダ受信信号処理プログラムである。
【0014】
また、本開示は、方位角方向の機械走査を行ないながら仰角方向の電子走査を行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理方法であって、方位角方向の各セクタ内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向の情報を取得する電子走査情報取得ステップと、方位角方向の各セクタ内及び各セクタの隣りの又は近傍のセクタ内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向に基づいて、方位角方向の各セクタ内での表示方位角方向における、仰角方向毎のレーダ受信信号を補間により算出するレーダ受信信号補間ステップと、を順に備えることを特徴とするレーダ受信信号処理方法である。
【0015】
この構成においても、方位角方向の各セクタ内での仰角方向の電子走査において、ある仰角方向における表示方位角方向が観測方位角方向から位置ずれをしていることがある。しかし、表示方位角方向において算出されたレーダ受信信号は、その仰角方向における観測方位角方向において観測されたレーダ受信信号ではなく、方位角方向の各セクタ内及び各セクタの隣りの又は近傍のセクタ内において観測されたレーダ受信信号を用いて補間されたレーダ受信信号である。よって、方位角方向の機械走査を行ないながら仰角方向の電子走査を行なうレーダにおいて、1回のRHI観測での観測方位角方向の変化に伴うレーダ受信信号データの表示上の位置ずれを防止することができる。
【0016】
また、本開示は、前記レーダ受信信号補間部は、方位角方向の各セクタ内での所定の仰角より高い仰角方向毎のレーダ受信信号を、方位角方向の各セクタ内での表示方位角方向における、前記所定の仰角より高い仰角方向毎のレーダ受信信号として採用することを特徴とするレーダ受信信号処理装置である。
【0017】
高仰角方向の観測では、遠距離部分に雨雲等の物標が存在しないため、低仰角方向と比べ、方位角方向の表示上の位置ずれの影響が少ない。この構成によれば、1回のRHI観測での観測方位角方向の変化に伴うレーダ受信信号データの表示上の位置ずれの影響が少ない高仰角方向について、レーダ受信信号の補間処理を省くことができる。よって、レーダスキャン処理又はレーダ受信信号処理を高速化することができる。
【0018】
また、本開示は、前記レーダ受信信号補間部は、方位角方向の各セクタ内での所定の仰角より低い仰角方向毎の観測方位角方向を、方位角方向の各セクタ内での表示方位角方向として採用することを特徴とするレーダ受信信号処理装置である。
【0019】
低仰角方向の観測では、物標となる雨雲等が近距離から遠距離まで広く分布する可能性があるため、高仰角方向と比べ、方位角方向の表示上の位置ずれの影響が大きい。この構成によれば、1回のRHI観測での観測方位角方向の変化に伴うレーダ受信信号データの表示上の位置ずれの影響が大きい低仰角方向について、レーダ受信信号の補間処理を行なう必要がなく、レーダ受信信号の観測結果をそのまま使うことができる。よって、1回のRHI観測での観測方位角方向の変化に伴う、レーダ受信信号データの表示上のずれの影響を小さくすることができる。
【0020】
また、本開示は、方位角方向の各セクタ内での表示方位角方向における、補間により算出された仰角方向毎のレーダ受信信号を表示するレーダ受信信号表示部、をさらに備えることを特徴とするレーダ受信信号処理装置である。
【0021】
この構成によれば、補間により算出されたレーダ受信信号を表示することができる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本開示によれば、方位角方向の機械走査を行ないながら仰角方向の電子走査を行なうレーダにおいて、1回のRHI観測での観測方位角方向の変化に伴うレーダ受信信号データの表示上の位置ずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】方位角方向の機械走査を止めたうえで、仰角方向の電子走査を行なう仮想の場合における、レーダ受信信号処理を示す図である。
【
図2】方位角方向の機械走査を行ないながら、仰角方向の電子走査を行なう実際の場合の一例における、レーダ受信信号処理を示す図である。
【
図3】本開示のレーダシステムの構成を示す図である。
【
図4】第1の実施形態のレーダ受信信号処理を示す図である。
【
図5】第2の実施形態のレーダ受信信号処理を示す図である。
【
図6】第3の実施形態のレーダ受信信号処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0025】
(本開示のレーダシステムの構成)
本開示のレーダシステムの構成を
図3に示す。本開示のレーダシステムRは、雨雲等の物標Tを探査するために、レーダ装置1及びレーダ受信信号処理装置2から構成される。
【0026】
レーダ装置1は、方位角方向の機械走査を行ないながら仰角方向の電子走査を行なうために、レーダ送信部11、レーダ受信部12、機械走査部13及び電子走査部14から構成される。レーダ送信部11は、雨雲等の物標Tへとレーダ送信波を送信する。レーダ受信部12は、雨雲等の物標Tからレーダ反射波を受信する。機械走査部13は、レーダ送受信の方位角方向の機械走査を行なう。電子走査部14は、レーダ送受信の仰角方向の電子走査を行なう。本開示のレーダシステムRでは、1回のRHI観測において、観測方位角方向が変化する。例えば、1回のボリュームスキャン当たりに、300回~360回のRHI観測を行なうと、1回のRHI観測において、最低仰角方向と最高仰角方向での観測方位角方向の差分は、最大1.0°~1.2°となる(
図4~
図6を参照。)。
【0027】
レーダ受信信号処理装置2は、フェーズドアレイレーダにおけるレーダ受信信号を処理するために、電子走査情報取得部21、レーダ受信信号補間部22及びレーダ受信信号表示部23から構成される。電子走査情報取得部21は、方位角方向の各セクタ内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向の情報を取得する。例えば、仰角方向毎のレーダ受信信号並びに最低仰角方向及び最高仰角方向での観測方位角方向の情報を取得する。そして、最低仰角方向及び最高仰角方向での観測方位角方向に基づいて、仰角方向毎の観測方位角方向を線形補間により算出する。レーダ受信信号補間部22については、第1~第3の実施形態において詳述する。レーダ受信信号表示部23は、方位角方向の各セクタ内での表示方位角方向における、補間により算出された仰角方向毎のレーダ受信信号を表示する。本開示のレーダ受信信号処理は、レーダ受信信号処理装置2にインストールされたプログラムにより、実現することができる。
【0028】
(第1の実施形態のレーダ受信信号処理)
第1の実施形態のレーダ受信信号処理を
図4に示す。第1の実施形態では、レーダ受信信号補間部22は、方位角方向の各セクタ・・・、S(n-1)、S(n)、S(n+1)、・・・内及び各セクタの隣りの又は近傍のセクタ内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向に基づいて、方位角方向の各セクタ・・・、S(n-1)、S(n)、S(n+1)、・・・内での表示方位角方向における、仰角方向毎のレーダ受信信号を補間により算出する。
【0029】
具体的には、方位角方向のセクタS(n)内での、例えば中仰角方向(
図4では、40°~50°)での観測方位角方向を、方位角方向のセクタS(n)内での表示方位角方向として採用する。そして、低仰角方向(
図4では、0°~40°)については、方位角方向のセクタS(n)内及びセクタS(n)の隣りのセクタS(n+1)内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向に基づいて、方位角方向のセクタS(n)内での表示方位角方向における、仰角方向毎のレーダ受信信号を線形補間により算出する。一方で、高仰角方向(
図4では、50°~90°)については、方位角方向のセクタS(n)内及びセクタS(n)の隣りのセクタS(n-1)内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向に基づいて、方位角方向のセクタS(n)内での表示方位角方向における、仰角方向毎のレーダ受信信号を線形補間により算出する。
【0030】
以上の説明では、方位角方向のみについて、線形補間を行なっている。ここで、第1の変形例として、特許文献1等を参照して、方位角方向及び仰角方向について、線形補間を行なってもよい。或いは、第2の変形例として、非特許文献1等を参照して、方位角方向及び仰角方向について、Cressman補間を行なってもよい。
【0031】
第1の実施形態においても、方位角方向の各セクタ内での仰角方向の電子走査において、ある仰角方向における表示方位角方向が観測方位角方向から位置ずれをしていることがある。しかし、表示方位角方向において算出されたレーダ受信信号は、その仰角方向における観測方位角方向において観測されたレーダ受信信号ではなく、方位角方向の各セクタ内及び各セクタの隣りの又は近傍のセクタ内において観測されたレーダ受信信号を用いて補間されたレーダ受信信号である。よって、方位角方向の機械走査を行ないながら仰角方向の電子走査を行なうレーダにおいて、1回のRHI観測での観測方位角方向の変化に伴うレーダ受信信号データの表示上の位置ずれを防止することができる。
【0032】
(第2の実施形態のレーダ受信信号処理)
第2の実施形態のレーダ受信信号処理を
図5に示す。第2の実施形態では、第1の実施形態に加えて、レーダ受信信号補間部22は、方位角方向の各セクタ・・・、S(n-1)、S(n)、S(n+1)、・・・内での所定の仰角より高い仰角方向毎のレーダ受信信号を、方位角方向の各セクタ・・・、S(n-1)、S(n)、S(n+1)、・・・内での表示方位角方向における、上記の所定の仰角より高い仰角方向毎のレーダ受信信号として採用する。
【0033】
具体的には、方位角方向のセクタS(n)内での、例えば中仰角方向(
図5では、40°~50°)での観測方位角方向を、方位角方向のセクタS(n)内での表示方位角方向として採用する。そして、低仰角方向(
図5では、0°~40°)については、方位角方向のセクタS(n)内及びセクタS(n)の隣りのセクタS(n+1)内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向に基づいて、方位角方向のセクタS(n)内での表示方位角方向における、仰角方向毎のレーダ受信信号を線形補間により算出する。一方で、高仰角方向(
図5では、50°~70°)については、方位角方向のセクタS(n)内及びセクタS(n)の隣りのセクタS(n-1)内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向に基づいて、方位角方向のセクタS(n)内での表示方位角方向における、仰角方向毎のレーダ受信信号を線形補間により算出する。さらに、最高仰角方向(
図5では、70°~90°)については、方位角方向の各セクタS(n)内での仰角方向毎のレーダ受信信号を、方位角方向の各セクタS(n)内での表示方位角方向における、仰角方向毎のレーダ受信信号として採用する。
【0034】
以上の説明では、方位角方向のみについて、線形補間を行なっている。ここで、第1の変形例として、特許文献1等を参照して、方位角方向及び仰角方向について、線形補間を行なってもよい。或いは、第2の変形例として、非特許文献1等を参照して、方位角方向及び仰角方向について、Cressman補間を行なってもよい。
【0035】
高仰角方向の観測では、遠距離部分に雨雲等の物標が存在しないため、低仰角方向と比べ、方位角方向の表示上の位置ずれの影響が少ない。第2の実施形態では、1回のRHI観測での観測方位角方向の変化に伴うレーダ受信信号データの表示上の位置ずれの影響が少ない高仰角方向について、レーダ受信信号の補間処理を省くことができる。よって、レーダスキャン処理又はレーダ受信信号処理を高速化することができる。
【0036】
(第3の実施形態のレーダ受信信号処理)
第3の実施形態のレーダ受信信号処理を
図6に示す。第3の実施形態では、第1及び第2の実施形態に加えて、レーダ受信信号補間部22は、方位角方向の各セクタ・・・、S(n-1)、S(n)、S(n+1)、・・・内での所定の仰角より低い仰角方向毎の観測方位角方向を、方位角方向の各セクタ・・・、S(n-1)、S(n)、S(n+1)、・・・内での表示方位角方向として採用する。
【0037】
具体的には、方位角方向のセクタS(n)内での、例えば最低仰角方向(
図6では、0°~10°)での観測方位角方向を、方位角方向のセクタS(n)内での表示方位角方向として採用する。そして、最低仰角方向(
図6では、0°~10°)については、方位角方向の各セクタS(n)内での仰角方向毎のレーダ受信信号を、方位角方向の各セクタS(n)内での表示方位角方向における、仰角方向毎のレーダ受信信号としてそのまま採用する。一方で、他の仰角方向(
図6では、10°~90°)については、方位角方向のセクタS(n)内及びセクタS(n)の隣りのセクタS(n-1)内での仰角方向毎のレーダ受信信号及び観測方位角方向に基づいて、方位角方向のセクタS(n)内での表示方位角方向における、仰角方向毎のレーダ受信信号を線形補間により算出する。
【0038】
以上の説明では、方位角方向のみについて、線形補間を行なっている。ここで、第1の変形例として、特許文献1等を参照して、方位角方向及び仰角方向について、線形補間を行なってもよい。或いは、第2の変形例として、非特許文献1等を参照して、方位角方向及び仰角方向について、Cressman補間を行なってもよい。
【0039】
低仰角方向の観測では、物標となる雨雲等が近距離から遠距離まで広く分布する可能性があるため、高仰角方向と比べ、方位角方向の表示上の位置ずれの影響が大きい。第3の実施形態では、1回のRHI観測での観測方位角方向の変化に伴うレーダ受信信号データの表示上の位置ずれの影響が大きい低仰角方向について、レーダ受信信号の補間処理を行なう必要がなく、レーダ受信信号の観測結果をそのまま使うことができる。よって、1回のRHI観測での観測方位角方向の変化に伴う、レーダ受信信号データの表示上のずれの影響を小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示のレーダ受信信号処理装置は、方位角方向の機械走査を行ないながら仰角方向の電子走査を行なうフェーズドアレイレーダであれば、雨雲等を探査する気象レーダのみならず、種々の物標を探査するレーダに対しても、適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
R:レーダシステム
T:物標
1:レーダ装置
2:レーダ受信信号処理装置
11:レーダ送信部
12:レーダ受信部
13:機械走査部
14:電子走査部
21:電子走査情報取得部
22:レーダ受信信号補間部
23:レーダ受信信号表示部