(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】多層印刷物および多層印刷方法
(51)【国際特許分類】
G09F 19/14 20060101AFI20220215BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220215BHJP
G09F 13/12 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
G09F19/14
B41J2/01 401
B41J2/01
G09F13/12
(21)【出願番号】P 2017192535
(22)【出願日】2017-10-02
【審査請求日】2020-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2017165407
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月29日、ウェブサイト((A)http://japan.mimaki.com/、(B)http://japan.mimaki.com/news/product/entry-265510.html、(C)http://japan.mimaki.com/product/inkjet/print-cut/ucjv300-160/、(D)http://japan.mimaki.com/product/inkjet/print-cut/ucjv150-160/、(E)http://ir.mimaki.com/library/press.html、(F)http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1511220)に掲載。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月31日~9月2日に東京ビッグサイト西1ホール(東京都江東区有明3-11-1)で行われたSIGN & DISPLAY SHOW 2017にて展示。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月11日にUCJV300-160・UCJV15-160カタログを発行
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雄平
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-226478(JP,A)
【文献】特開2009-223270(JP,A)
【文献】特開2018-180158(JP,A)
【文献】特開2010-117713(JP,A)
【文献】特開2011-110817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 7/00 - 7/22
G09F 13/00 -13/46
G09F 19/00 -27/00
B41J 2/01
B41J 2/165- 2/20
B41J 2/21 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
図柄が印刷される第1の図柄印刷層および第2の図柄印刷層と、
前記第1の図柄印刷層および前記第2の図柄印刷層の間に配置されて前記第1の図柄印刷層側に対して前記第2の図柄印刷層を隠蔽するとともに、前記第1の図柄印刷層側から入射した光を反射して前記第1の図柄印刷層側から前記第1の図柄印刷層を視認させるための第1の隠蔽用印刷層と、
前記第1の隠蔽用印刷層および前記第2の図柄印刷層の間に配置されて前記第1の図柄印刷層側に対して前記第2の図柄印刷層を隠蔽するための第2の隠蔽用印刷層とを含む印刷層群が媒体に形成されており、
前記第2の隠蔽用印刷層は、前記第1の隠蔽用印刷層と同一の厚みで比較した場合に、前記第1の隠蔽用印刷層より遮光性能が高
く、
前記第1の隠蔽用印刷層および前記第2の隠蔽用印刷層の少なくとも1つは、前記第1の図柄印刷層に対して一部が積層方向に存在しないことを特徴とする多層印刷物。
【請求項2】
前記第1の隠蔽用印刷層および前記第2の隠蔽用印刷層は、
前記第1の図柄印刷層側から前記多層印刷物に光が当たっている状態で前記第2の図柄印刷層に対して前記第1の図柄印刷層側とは反対側の光源から前記多層印刷物に光が当てられていない場合に、前記第1の図柄印刷層に対して前記第2の図柄印刷層側とは反対側から前記多層印刷物が視認されるとき、前記第2の図柄印刷層を隠蔽し、
前記第1の図柄印刷層側から前記多層印刷物に当たる光が抑えられている状態で前記光源から前記多層印刷物に光が当てられている場合に、前記第1の図柄印刷層に対して前記第2の図柄印刷層側とは反対側から前記多層印刷物が視認されるとき、前記第2の図柄印刷層を前記光源から当てられた光によって前記第1の図柄印刷層側に透けて見えさせることを特徴とする請求項1に記載の多層印刷物。
【請求項3】
図柄が印刷される第1の図柄印刷層および第2の図柄印刷層と、
前記第1の図柄印刷層および前記第2の図柄印刷層の間に配置されて前記第1の図柄印刷層側に対して前記第2の図柄印刷層を隠蔽するとともに、前記第1の図柄印刷層側から入射した光を反射して前記第1の図柄印刷層側から前記第1の図柄印刷層を視認させるための第1の隠蔽用印刷層と、
前記第1の隠蔽用印刷層および前記第2の図柄印刷層の間に配置されて前記第1の図柄印刷層側に対して前記第2の図柄印刷層を隠蔽するための第2の隠蔽用印刷層とを含む印刷層群が媒体に形成されており、
前記第2の隠蔽用印刷層は、前記第1の隠蔽用印刷層と同一の厚みで比較した場合に、前記第1の隠蔽用印刷層より遮光性能が高く、
前記第2の隠蔽用印刷層は、前記第1の隠蔽用印刷層より厚みが薄いことを特徴とする
多層印刷物。
【請求項4】
前記第2の隠蔽用印刷層は、黒の層であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の多層印刷物。
【請求項5】
前記第1の隠蔽用印刷層は、白の層であることを特徴とする請求項4に記載の多層印刷物。
【請求項6】
図柄が印刷される第1の図柄印刷層および第2の図柄印刷層と、
前記第1の図柄印刷層および前記第2の図柄印刷層の間に配置されて前記第1の図柄印刷層側に対して前記第2の図柄印刷層を隠蔽するとともに、前記第1の図柄印刷層側から入射した光を反射して前記第1の図柄印刷層側から前記第1の図柄印刷層を視認させるための第1の隠蔽用印刷層と、
前記第1の隠蔽用印刷層および前記第2の図柄印刷層の間に配置されて前記第1の図柄印刷層側に対して前記第2の図柄印刷層を隠蔽するための第2の隠蔽用印刷層とを含む印刷層群を媒体に形成し、
前記第2の隠蔽用印刷層は、前記第1の隠蔽用印刷層と同一の厚みで比較した場合に、前記第1の隠蔽用印刷層より遮光性能が高く、
前記第1の隠蔽用印刷層および前記第2の隠蔽用印刷層の少なくとも1つは、前記第1の図柄印刷層に対して一部が積層方向に存在しないことを特徴とする
多層印刷方法。
【請求項7】
前記印刷層群は、前記第1の図柄印刷層を形成するためのインクを吐出するインクジェットヘッドとしての第1のヘッド、前記第1の隠蔽用印刷層を形成するためのインクを吐出するインクジェットヘッドとしての第2のヘッド、前記第2の隠蔽用印刷層を形成するためのインクを吐出するインクジェットヘッドとしての第3のヘッド、および、前記第2の図柄印刷層を形成するためのインクを吐出するインクジェットヘッドとしての第4のヘッドを備えるインクジェットプリンターによって形成され、
前記第1のヘッド、前記第2のヘッド、前記第3のヘッドおよび前記第4のヘッドは、特定の方向における上流から下流に向けて、前記第1のヘッド、前記第2のヘッド、前記第3のヘッド、前記第4のヘッドの順に配設されており、
前記第1のヘッド、前記第2のヘッド、前記第3のヘッドおよび前記第4のヘッドと、前記媒体との一方に対して他方を、前記特定の方向と、前記特定の方向の反対の方向とのうち、いずれか一方の方向のみに相対移動させて、前記印刷層群を形成することを特徴とする請求項6に記載の多層印刷方法。
【請求項8】
前記第1のヘッド、前記第2のヘッド、前記第3のヘッドおよび前記第4のヘッドと、前記媒体との一方に対して他方を主走査方向に相対移動させる際に前記第1のヘッド、前記第2のヘッド、前記第3のヘッドおよび前記第4のヘッドによって前記媒体に向けてインクを吐出させ、
前記第1のヘッド、前記第2のヘッド、前記第3のヘッドおよび前記第4のヘッドは、前記主走査方向とは直交する副走査方向における吐出領域の長さが同一であり、前記副走査方向において前記吐出領域の長さ分ずつずれて配設されており、
前記特定の方向は、前記副走査方向のうちのいずれか一方向であり、
前記第1のヘッド、前記第2のヘッド、前記第3のヘッドおよび前記第4のヘッドによる前記主走査方向における印刷が終了する度に、前記第1のヘッド、前記第2のヘッド、前記第3のヘッドおよび前記第4のヘッドに対して前記媒体を、前記副走査方向における前記吐出領域の長さ分、前記副走査方向のうちの特定の一方向に相対移動させることを特徴とする請求項7に記載の多層印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に印刷層群が形成された多層印刷物および多層印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面および裏面の両方に図柄が印刷された透明または半透明のシートが知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載されたシートは、表面側から光が当たっている状態で裏面側の光源から光が当てられていない場合には、主に表面側の図柄が表面側から視認される。一方、特許文献1に記載されたシートは、表面側から当たる光が抑えられている状態で裏面側の光源から光が当てられている場合には、裏面側の図柄が光源から当てられた光によって表面側に透けて見えるので、裏面側の光源から光が当てられていない場合と比較して、裏面側の図柄が表面側から視認され易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたシートにおいては、表面側から光が当たっている状態で裏面側の光源から光が当てられていない場合であっても、裏面側の図柄が表面側に透けて見えているので、裏面側の図柄が表面側から視認されるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、裏面側の光源から光が当てられていない場合に表面側に対して複数の図柄のうち光源側の図柄の隠蔽性を向上することができる多層印刷物および多層印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多層印刷物は、図柄が印刷される第1の図柄印刷層および第2の図柄印刷層と、前記第1の図柄印刷層および前記第2の図柄印刷層の間に配置されて前記第1の図柄印刷層側に対して前記第2の図柄印刷層を隠蔽するとともに、前記第1の図柄印刷層側から入射した光を反射して前記第1の図柄印刷層側から前記第1の図柄印刷層を視認させるための第1の隠蔽用印刷層と、前記第1の隠蔽用印刷層および前記第2の図柄印刷層の間に配置されて前記第1の図柄印刷層側に対して前記第2の図柄印刷層を隠蔽するための第2の隠蔽用印刷層とを含む印刷層群が媒体に形成されており、前記第2の隠蔽用印刷層は、前記第1の隠蔽用印刷層と同一の厚みで比較した場合に、前記第1の隠蔽用印刷層より遮光性能が高いことを特徴とする。
【0007】
この構成により、本発明の多層印刷物は、第1の図柄印刷層および第2の図柄印刷層の間に隠蔽用印刷層を備えるので、第1の図柄印刷層側から光が当たっている状態で第2の図柄印刷層に対して第1の図柄印刷層側とは反対側の光源から光が当てられていない場合に、第1の図柄印刷層に対して第2の図柄印刷層側とは反対側から視認されるとき、第2の図柄印刷層の隠蔽性を向上することができる。すなわち、本発明の多層印刷物は、裏面側の光源から光が当てられていない場合に表面側に対して複数の図柄のうち光源側の図柄の隠蔽性を向上することができる。また、本発明の多層印刷物は、第1の隠蔽用印刷層と、第2の隠蔽用印刷層とを同一の厚みで比較した場合に、第2の隠蔽用印刷層が第1の隠蔽用印刷層より遮光性能が高いので、第1の隠蔽用印刷層のみで隠蔽用印刷層が形成される場合と比較して隠蔽用印刷層全体の厚みを薄くしても、同一の隠蔽性能を得ることができる。すなわち、本発明の多層印刷物は、隠蔽用印刷層全体の厚みを薄くすることができる。したがって、本発明の多層印刷物は、第1の図柄印刷層側から当たる光が抑えられている状態で第2の図柄印刷層に対して第1の図柄印刷層側とは反対側の光源から光が当てられている場合に、光源から当てられた光が隠蔽用印刷層を透過する際に隠蔽用印刷層によって散乱される量を抑えることができ、その結果、第2の図柄印刷層を光源からの光によって第1の図柄印刷層側に鮮明に透けて見えさせることができる。
【0008】
本発明の多層印刷物において、前記第1の隠蔽用印刷層および前記第2の隠蔽用印刷層は、前記第1の図柄印刷層側から前記多層印刷物に光が当たっている状態で前記第2の図柄印刷層に対して前記第1の図柄印刷層側とは反対側の光源から前記多層印刷物に光が当てられていない場合に、前記第1の図柄印刷層に対して前記第2の図柄印刷層側とは反対側から前記多層印刷物が視認されるとき、前記第2の図柄印刷層を隠蔽し、前記第1の図柄印刷層側から前記多層印刷物に当たる光が抑えられている状態で前記光源から前記多層印刷物に光が当てられている場合に、前記第1の図柄印刷層に対して前記第2の図柄印刷層側とは反対側から前記多層印刷物が視認されるとき、前記第2の図柄印刷層を前記光源から当てられた光によって前記第1の図柄印刷層側に透けて見えさせることを特徴とする。
【0009】
本発明の多層印刷物において、前記第2の隠蔽用印刷層は、前記第1の隠蔽用印刷層より厚みが薄くても良い。
【0010】
この構成により、本発明の多層印刷物は、隠蔽用印刷層をインクで印刷する場合に、隠蔽用印刷層を印刷するためのインクの量を低減させることができる。
【0011】
本発明の多層印刷物において、前記第2の隠蔽用印刷層は、黒の層であっても良い。
【0012】
この構成により、本発明の多層印刷物は、第2の隠蔽用印刷層が薄くても高い遮光性能を発揮するので、第2の隠蔽用印刷層の厚みを薄くすることができる。
【0013】
本発明の多層印刷物において、前記第1の隠蔽用印刷層は、白の層であっても良い。
【0014】
この構成により、本発明の多層印刷物は、第1の隠蔽用印刷層の明度が高いので、第1の図柄印刷層側から光が当たっている状態で第2の図柄印刷層に対して第1の図柄印刷層側とは反対側の光源から光が当てられていない場合に、第1の図柄印刷層に対して第2の図柄印刷層側とは反対側から第1の図柄印刷層が視認されるとき、第1の図柄印刷層によって表される図柄の明度を第1の隠蔽用印刷層の明度によって向上することができる。
【0015】
本発明の多層印刷物において、前記第1の隠蔽用印刷層および前記第2の隠蔽用印刷層の少なくとも1つは、前記第1の図柄印刷層に対して一部が積層方向に存在しなくても良い。
【0016】
この構成により、本発明の多層印刷物は、第1の図柄印刷層側から当たる光が抑えられている状態で第2の図柄印刷層に対して第1の図柄印刷層側とは反対側の光源から光が当てられている場合に、第1の隠蔽用印刷層および第2の隠蔽用印刷層の少なくとも1つが第1の図柄印刷層に対して積層方向に存在しない領域を光源からの光が透過し易いので、第1の図柄印刷層側から当たる光が抑えられている状態で第2の図柄印刷層に対して第1の図柄印刷層側とは反対側の光源から光が当てられている場合に、第1の図柄印刷層に対して第2の図柄印刷層側とは反対側から視認されるとき、第1の隠蔽用印刷層および第2の隠蔽用印刷層の少なくとも1つが第1の図柄印刷層に対して積層方向に存在しない領域を強調表示することができる。
【0017】
本発明の多層印刷方法は、図柄が印刷される第1の図柄印刷層および第2の図柄印刷層と、前記第1の図柄印刷層および前記第2の図柄印刷層の間に配置されて前記第1の図柄印刷層側に対して前記第2の図柄印刷層を隠蔽するとともに、前記第1の図柄印刷層側から入射した光を反射して前記第1の図柄印刷層側から前記第1の図柄印刷層を視認させるための第1の隠蔽用印刷層と、前記第1の隠蔽用印刷層および前記第2の図柄印刷層の間に配置されて前記第1の図柄印刷層側に対して前記第2の図柄印刷層を隠蔽するための第2の隠蔽用印刷層とを含む印刷層群を媒体に形成し、前記第2の隠蔽用印刷層は、前記第1の隠蔽用印刷層と同一の厚みで比較した場合に、前記第1の隠蔽用印刷層より遮光性能が高いことを特徴とする。
【0018】
この構成により、本発明の多層印刷方法によって製造される多層印刷物は、第1の図柄印刷層および第2の図柄印刷層の間に隠蔽用印刷層を備えるので、第1の図柄印刷層側から光が当たっている状態で第2の図柄印刷層に対して第1の図柄印刷層側とは反対側の光源から光が当てられていない場合に、第1の図柄印刷層に対して第2の図柄印刷層側とは反対側から視認されるとき、第2の図柄印刷層の隠蔽性を向上することができる。すなわち、本発明の多層印刷方法によって製造される多層印刷物は、裏面側の光源から光が当てられていない場合に表面側に対して複数の図柄のうち光源側の図柄の隠蔽性を向上することができる。また、本発明の多層印刷方法によって製造される多層印刷物は、第1の隠蔽用印刷層と、第2の隠蔽用印刷層とを同一の厚みで比較した場合に、第2の隠蔽用印刷層が第1の隠蔽用印刷層より遮光性能が高いので、第1の隠蔽用印刷層のみで隠蔽用印刷層が形成される場合と比較して隠蔽用印刷層全体の厚みを薄くしても、同一の隠蔽性能を得ることができる。すなわち、本発明の多層印刷方法によって製造される多層印刷物は、隠蔽用印刷層全体の厚みを薄くすることができる。したがって、本発明の多層印刷方法によって製造される多層印刷物は、第1の図柄印刷層側から当たる光が抑えられている状態で第2の図柄印刷層に対して第1の図柄印刷層側とは反対側の光源から光が当てられている場合に、光源から当てられた光が隠蔽用印刷層を透過する際に隠蔽用印刷層によって散乱される量を抑えることができ、その結果、第2の図柄印刷層を光源からの光によって第1の図柄印刷層側に鮮明に透けて見えさせることができる。
【0019】
本発明の多層印刷方法において、前記印刷層群は、前記第1の図柄印刷層を形成するためのインクを吐出するインクジェットヘッドとしての第1のヘッド、前記第1の隠蔽用印刷層を形成するためのインクを吐出するインクジェットヘッドとしての第2のヘッド、前記第2の隠蔽用印刷層を形成するためのインクを吐出するインクジェットヘッドとしての第3のヘッド、および、前記第2の図柄印刷層を形成するためのインクを吐出するインクジェットヘッドとしての第4のヘッドを備えるインクジェットプリンターによって形成され、前記第1のヘッド、前記第2のヘッド、前記第3のヘッドおよび前記第4のヘッドは、特定の方向における上流から下流に向けて、前記第1のヘッド、前記第2のヘッド、前記第3のヘッド、前記第4のヘッドの順に配設されており、前記第1のヘッド、前記第2のヘッド、前記第3のヘッドおよび前記第4のヘッドと、前記媒体との一方に対して他方を、前記特定の方向と、前記特定の方向の反対の方向とのうち、いずれか一方の方向のみに相対移動させて、前記印刷層群を形成しても良い。
【0020】
この構成により、本発明の多層印刷方法は、インクジェットヘッドに対して媒体を特定の方向と、特定の方向の反対の方向とのうち、いずれか一方の方向のみに相対移動させるだけで、第1の図柄印刷層、第2の図柄印刷層、第1の隠蔽用印刷層および第2の隠蔽用印刷層の4層を同時に印刷することができるので、各印刷層を全領域ずつ順に印刷する方法と比較して、各印刷層同士の位置精度を向上することができ、高品質の多層印刷物を製造することができる。
【0021】
本発明の多層印刷方法において、前記第1のヘッド、前記第2のヘッド、前記第3のヘッドおよび前記第4のヘッドと、前記媒体との一方に対して他方を主走査方向に相対移動させる際に前記第1のヘッド、前記第2のヘッド、前記第3のヘッドおよび前記第4のヘッドによって前記媒体に向けてインクを吐出させ、前記第1のヘッド、前記第2のヘッド、前記第3のヘッドおよび前記第4のヘッドは、前記主走査方向とは直交する副走査方向における吐出領域の長さが同一であり、前記副走査方向において前記吐出領域の長さ分ずつずれて配設されており、前記特定の方向は、前記副走査方向のうちのいずれか一方向であり、前記第1のヘッド、前記第2のヘッド、前記第3のヘッドおよび前記第4のヘッドによる前記主走査方向における印刷が終了する度に、前記第1のヘッド、前記第2のヘッド、前記第3のヘッドおよび前記第4のヘッドに対して前記媒体を、前記副走査方向における前記吐出領域の長さ分、前記副走査方向のうちの特定の一方向に相対移動させても良い。
【0022】
この構成により、本発明の多層印刷方法は、インクジェットヘッドに対して媒体を副走査方向における特定の一方向に相対移動させるだけで、第1の図柄印刷層、第2の図柄印刷層、第1の隠蔽用印刷層および第2の隠蔽用印刷層の4層を同時に印刷することができるので、各印刷層を全領域ずつ順に印刷する方法と比較して、各印刷層同士の位置精度を向上することができ、高品質の多層印刷物を製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の多層印刷物および多層印刷方法は、裏面側の光源から光が当てられていない場合に表面側に対して複数の図柄のうち光源側の図柄の隠蔽性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る多層印刷物の平面図である。
【
図3】(a)
図2に示す表層の平面図である。 (b)
図2に示す白層の平面図である。
【
図4】(a)
図2に示す黒層の平面図である。 (b)
図2に示す裏層の平面図である。
【
図5】
図1に示す多層印刷物を備えた表示装置の側面図である。
【
図6】表層側から当たる光が抑えられている状態で
図5に示す光源から光が当てられている場合の多層印刷物の平面図である。
【
図7】
図1に示す多層印刷物の製造システムのブロック図である。
【
図8】
図7に示すコンピューターのブロック図である。
【
図9】
図1に示す多層印刷物の製造方法のフローチャートである。
【
図10】
図8に示すプレビュー実行手段によって実行されるプレビュー画面の一例を示す図である。
【
図11】チェックボックスにチェックが付けられている状態の
図10に示すプレビュー画面の一例を示す図である。
【
図12】
図1に示す多層印刷物とは異なる多層印刷物を備えた表示装置の側面図である。
【
図13】
図7に示すインクジェットプリンターによる表層、白層、黒層および裏層の印刷方法の一例を示す図である。
【
図14】
図7に示すインクジェットプリンターによる表層、白層、黒層および裏層の印刷方法の、
図13に示す例とは異なる一例を示す図である。
【
図15】
図7に示すインクジェットプリンターによる表層、白層、黒層および裏層の印刷方法の、
図13および
図14に示す例とは異なる一例を示す図である。
【
図16】
図7に示すインクジェットプリンターによって印刷およびカットが実行される場合に、トンボが利用されないときの、多層印刷物の製造方法のフローチャートである。
【
図17】
図7に示すインクジェットプリンターによって印刷およびカットが実行される場合に、トンボが利用されるときの、多層印刷物の製造方法のフローチャートである。
【
図18】
図7に示すインクジェットプリンターによって印刷が実行された後、インクジェットプリンターとは異なるカッティングプロッターによってカットが実行される場合に、トンボが利用されないときの、多層印刷物の製造方法のフローチャートである。
【
図19】
図7に示すインクジェットプリンターによって印刷が実行された後、インクジェットプリンターとは異なるカッティングプロッターによってカットが実行される場合に、トンボが利用されるときの、多層印刷物の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0026】
まず、本実施の形態に係る多層印刷物の構成について説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態に係る多層印刷物10の平面図である。
図2は、多層印刷物10の側面図である。
【0028】
図1および
図2に示すように、多層印刷物10は、媒体20と、媒体20に形成されている印刷層群30とを備えている。
【0029】
媒体20は、例えば透明な媒体であっても良いが、不透明な媒体であっても良い。
【0030】
印刷層群30は、表層31と、白の層(以下「白層」という。)32と、黒の層(以下「黒層」という。)33と、裏層34とを含んでいる。
【0031】
図3(a)は、表層31の平面図である。
図3(b)は、白層32の平面図である。
図4(a)は、黒層33の平面図である。
図4(b)は、裏層34の平面図である。
【0032】
表層31は、
図3(a)に示すように図柄を表しており、本発明の第1の図柄印刷層を構成している。
【0033】
図3(b)に示す白層32は、
図2に示すように、表層31および裏層34の間に配置されて表層31側に対して裏層34を隠蔽するとともに、表層31側から入射した光を反射して表層31側から表層31を視認させており、本発明の第1の隠蔽用印刷層を構成している。白層32は、白インクで印刷されている。白層32は、媒体20において印刷対象となる全ピクセルに白インクが着弾した場合を100%とすると、例えば200%で印刷されている。
【0034】
図4(a)に示す黒層33は、
図2に示すように、白層32および裏層34の間に配置されて表層31側に対して裏層34を隠蔽しており、本発明の第2の隠蔽用印刷層を構成している。黒層33は、黒インクで印刷されているので、白インクで印刷されている白層32と比較して遮光性能が高い。黒層33は、
図2に示すように、表層31に対して矢印10aで示す積層方向に存在していない部分33aを備えている。黒層33は、媒体20において印刷対象となる全ピクセルに黒インクが着弾した場合を100%とすると、例えば30%~70%で印刷されている。黒層33は、白層32と同一の厚みで比較した場合に、白層32より遮光性能が高い。
【0035】
裏層34は、
図4(b)に示すように、図柄を表しており、本発明の第2の図柄印刷層を構成している。
【0036】
次に、多層印刷物10を備えた表示装置の構成について説明する。
【0037】
図5は、多層印刷物10を備えた表示装置40の側面図である。
【0038】
図5に示すように、表示装置40は、多層印刷物10と、多層印刷物10の裏層34に対して表層31側とは反対側に配置されている光源50とを備えている。
【0039】
表示装置40は、多層印刷物10の表層31に対して裏層34側とは反対側から、利用者60によって多層印刷物10が視認される。
【0040】
次に、表示装置40の動作について説明する。
【0041】
多層印刷物10は、表層31側から光が当たっている状態で裏層34側の光源50から光が当てられていない場合、
図1に示すように、表層31の図柄が利用者60によって視認される。
【0042】
図6は、表層31側から当たる光が抑えられている状態で裏層34側の光源50から光が当てられている場合の多層印刷物10の平面図である。
【0043】
多層印刷物10は、表層31側から当たる光が抑えられている状態で裏層34側の光源50から光が当てられている場合、
図6に示すように、裏層34の図柄が光源50から当てられた光によって表層31側に透けて見えるので、表層31の図柄と、裏層34の図柄とが合成された図柄が利用者60によって視認される。
【0044】
次に、多層印刷物10の製造システムの構成について説明する。
【0045】
図7は、多層印刷物10の製造システム70のブロック図である。
【0046】
図7に示すように、製造システム70は、媒体20(
図2参照。)に印刷を実行するインクジェットプリンター80と、インクジェットプリンター80に印刷データを送信するPC(Personal Computer)などのコンピューター90とを備えている。
【0047】
インクジェットプリンター80は、ロール状に巻かれた媒体20に対して印刷を実行することができる例えば株式会社ミマキエンジニアリング製のUCJV-300であっても良いし、他のインクジェットプリンターであっても良い。
【0048】
【0049】
図8に示すように、コンピューター90は、種々の操作が入力されるキーボード、マウスなどの入力デバイスである操作部91と、種々の情報を表示するLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである表示部92と、LAN(Local Area Network)などのネットワークを介して、または、ネットワークを介さずに有線または無線で直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部93と、各種の情報を記憶する半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶デバイスである記憶部94と、コンピューター90全体を制御する制御部95とを備えている。
【0050】
記憶部94は、画像データを生成するための画像データ生成プログラム94aと、多層印刷物のプレビューを実行するためのプレビュー実行プログラム94bと、印刷データを生成するための印刷データ生成プログラム94cとを記憶している。画像データ生成プログラム94a、プレビュー実行プログラム94bおよび印刷データ生成プログラム94cは、それぞれ、コンピューター90の製造段階でコンピューター90にインストールされていても良いし、USB(Universal Serial Bus)メモリー、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)などの外部の記憶媒体からコンピューター90に追加でインストールされても良いし、ネットワーク上からコンピューター90に追加でインストールされても良い。
【0051】
制御部95は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを予め記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMまたは記憶部94に記憶されているプログラムを実行するようになっている。
【0052】
制御部95は、画像データ生成プログラム94aを実行することによって、表層31、白層32、黒層33および裏層34のそれぞれの画像データを生成する画像データ生成手段95aを実現する。制御部95は、プレビュー実行プログラム94bを実行することによって、画像データ生成手段95aによって生成された画像データに基づいて印刷される多層印刷物のプレビューを実行するプレビュー実行手段95bを実現する。制御部95は、印刷データ生成プログラム94cを実行することによって、画像データ生成手段95aによって生成された画像データに基づいた印刷データを生成する印刷データ生成手段95cを実現する。
【0053】
次に、多層印刷物10の製造方法、すなわち、多層印刷方法について説明する。
【0054】
図9は、多層印刷物10の製造方法のフローチャートである。
【0055】
図9に示すように、作業者は、コンピューター90に画像データ生成プログラム94aを実行させて、表層31、白層32、黒層33および裏層34のそれぞれの画像データの生成を操作部91から指示する(S101)。したがって、画像データ生成手段95aは、操作部91を介した指示に応じて表層31、白層32、黒層33および裏層34のそれぞれの画像データを生成する。
【0056】
作業者は、S101の工程の後、コンピューター90にプレビュー実行プログラム94bを実行させて、S101において生成された画像データに基づいて印刷される多層印刷物のプレビューの実行を操作部91から指示する(S102)。したがって、プレビュー実行手段95bは、S101において生成された画像データに基づいて印刷される多層印刷物のプレビューを実行する。
【0057】
図10は、プレビュー実行手段95bによって実行されるプレビュー画面110の一例を示す図である。
【0058】
図10に示すプレビュー画面110は、画像データに基づいて印刷される多層印刷物のプレビューが表示されるプレビュー領域111と、画像データに基づいて印刷される多層印刷物が
図5に示すような表示装置40に使用された場合に光源50から光が当てられたときの多層印刷物のプレビューを表示するか否かが選択されるチェックボックス112とを含んでいる。
【0059】
図10に示すプレビュー画面110は、チェックボックス112にチェックが付けられていない状態のプレビュー画面110である。したがって、
図10に示すプレビュー領域111には、表層31側から光が当たっている状態で裏層34側の光源50から光が当てられていない場合の多層印刷物のプレビューが表示されている。
【0060】
図11は、チェックボックス112にチェックが付けられている状態のプレビュー画面110の一例を示す図である。
【0061】
図11に示すプレビュー画面110は、チェックボックス112にチェックが付けられている状態のプレビュー画面110である。したがって、
図11に示すプレビュー領域111には、表層31側から当たる光が抑えられている状態で裏層34側の光源50から光が当てられている場合の多層印刷物のプレビューが表示されている。
【0062】
図9に示すように、作業者は、S102におけるプレビューの結果、画像データの修正が必要であるか否かを判断する(S103)。
【0063】
作業者は、画像データの修正が必要であるとS103において判断すると、S101の工程を実行する。
【0064】
作業者は、画像データの修正が必要ではないとS103において判断すると、コンピューター90に印刷データ生成プログラム94cを実行させて、S101において生成された画像データに基づいた印刷を操作部91から指示する(S104)。したがって、印刷データ生成手段95cは、S101において生成された画像データに基づいた印刷データを生成し、生成した印刷データをインクジェットプリンター80に送信する。インクジェットプリンター80は、コンピューター90から送信されてきた印刷データを受信すると、受信した印刷データに基づいて媒体20に印刷層群30を形成する。すなわち、インクジェットプリンター80は、媒体20に裏層34、黒層33、白層32、表層31を順に印刷することによって、
図5に示す多層印刷物10を製造する。
【0065】
なお、インクジェットプリンター80は、媒体20に表層31、白層32、黒層33、裏層34を順に印刷することによって、
図12に示す多層印刷物120を製造することも可能である。
【0066】
図13は、インクジェットプリンター80による表層31、白層32、黒層33および裏層34の印刷方法の一例を示す図である。
【0067】
図13に示すインクジェットプリンター80は、インクを吐出するインクジェットヘッド81~86を備えている。インクジェットヘッド81~86は、シリアルヘッド方式用のインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド81~86によって吐出されるインクの色は、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(黒)、ホワイト(白)、ホワイト(白)である。
【0068】
表層31および裏層34は、主に、インクジェットヘッド81~84によって吐出されるインクによって印刷される。白層32は、インクジェットヘッド85および86によって吐出されるインクによって印刷される。黒層33は、インクジェットヘッド84によって吐出されるインクによって印刷される。
【0069】
インクジェットヘッド81~86は、キャリッジ87に搭載されていて、キャリッジ87が媒体20に対して相対移動させられることによって、媒体20に対して相対移動させられる。
【0070】
図13に示すインクジェットプリンター80は、インクジェットヘッド81~86および媒体20の一方に対して他方を矢印80aで示す主走査方向に相対移動させる際に、インクジェットヘッド81~86によって媒体20に向けてインクを吐出させる。
【0071】
図13に示すインクジェットプリンター80は、インクジェットヘッド81~86によって媒体20に向けてインクを吐出させる場合に、インクジェットヘッド81~86におけるインクの吐出領域のうち、主走査方向とは直交する矢印80bに示す副走査方向のうちの矢印80cに示す方向における上流側から下流側への1/4の領域ずつ、順に、裏層34の印刷用の領域81a、82a、83a、84a、85aおよび86a、黒層33の印刷用の領域81b、82b、83b、84b、85bおよび86b、白層32の印刷用の領域81c、82c、83c、84c、85cおよび86c、表層31の印刷用の領域81d、82d、83d、84d、85dおよび86dとする。
【0072】
なお、上述したように、白層32がインクジェットヘッド85および86によって吐出されるインクによって印刷されるので、領域81c、82c、83cおよび84cは、実際には使用されない。同様に、黒層33がインクジェットヘッド84によって吐出されるインクによって印刷されるので、領域81b、82b、83b、85bおよび86bは、実際には使用されない。
【0073】
インクジェットヘッド81~84のうちの領域81d、82d、83dおよび84dは、本発明の第1のヘッドを構成している。インクジェットヘッド85および86のうちの領域85cおよび86cは、本発明の第2のヘッドを構成している。インクジェットヘッド84のうちの領域84bは、本発明の第3のヘッドを構成している。インクジェットヘッド81~84のうちの領域81a、82a、83aおよび84aは、本発明の第4のヘッドを構成している。領域81d、82d、83dおよび84dと、領域85cおよび86cと、領域84bと、領域81a、82a、83aおよび84aとは、矢印80cに示す方向の反対の方向、すなわち、特定の方向における上流から下流に向けて、この順に配設されている。
【0074】
図13に示すインクジェットプリンター80は、インクジェットヘッド81~86による主走査方向における印刷が終了する度に、インクジェットヘッド81~86に対して媒体20を、例えば、副走査方向における吐出領域の長さ80dの1/16の長さ分、矢印80cに示す方向に相対移動させることによって、
図5に示す多層印刷物10を製造することができる。
【0075】
なお、
図13に示すインクジェットプリンター80は、インクジェットヘッド81~86による主走査方向における印刷が終了する度に、インクジェットヘッド81~86に対して媒体20を長さ80dの1/16の長さ分、矢印80cに示す方向に相対移動させる場合、表層31、白層32、黒層33および裏層34のそれぞれに対して、任意の箇所をインクジェットヘッド81~86による主走査方向における4回の印刷、すなわち、4パスで完成させることになる。したがって、
図13に示すインクジェットプリンター80は、多層印刷物10における任意の箇所の印刷を16パスで完成させることになる。しかしながら、
図13に示すインクジェットプリンター80は、表層31、白層32、黒層33および裏層34のそれぞれの任意の箇所の印刷を完成させるパス数として、4パス以外のパス数を採用しても良い。
【0076】
図13に示すインクジェットプリンター80は、インクジェットヘッド81~86による主走査方向における印刷が終了する度に、インクジェットヘッド81~86に対して媒体20を例えば長さ80dの1/16の長さ分、矢印80cに示す方向とは反対方向に相対移動させることによって、
図12に示す多層印刷物120を製造することができる。
【0077】
図14は、インクジェットプリンター80による表層31、白層32、黒層33および裏層34の印刷方法の、
図13に示す例とは異なる一例を示す図である。
【0078】
図14に示すインクジェットプリンター80は、インクを吐出するインクジェットヘッド181~191を備えている。インクジェットヘッド181~191は、シリアルヘッド方式用のインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド181~191によって吐出されるインクの色は、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(黒)、ブラック(黒)、ホワイト(白)、ホワイト(白)、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(黒)である。インクジェットヘッド181~191によって吐出されるインクは、紫外線が照射されることによって硬化するUVインクである。
【0079】
図14に示すインクジェットプリンター80は、インクジェットヘッド181~191によって吐出されたインクに紫外線を照射するための紫外線照射装置192および紫外線照射装置193を備えている。紫外線照射装置192および紫外線照射装置193は、矢印80aで示す主走査方向においてインクジェットヘッド181~191を挟む位置に配置されている。
【0080】
裏層34は、インクジェットヘッド181~184によって吐出されるインクによって印刷される。黒層33は、インクジェットヘッド185によって吐出されるインクによって印刷される。白層32は、インクジェットヘッド186および187によって吐出されるインクによって印刷される。表層31は、インクジェットヘッド188~191によって吐出されるインクによって印刷される。
【0081】
インクジェットヘッド188~191は、本発明の第1のヘッドを構成している。インクジェットヘッド186および187は、本発明の第2のヘッドを構成している。インクジェットヘッド185は、本発明の第3のヘッドを構成している。インクジェットヘッド181~184は、本発明の第4のヘッドを構成している。インクジェットヘッド188~191と、インクジェットヘッド186および187と、インクジェットヘッド185と、インクジェットヘッド181~184とは、矢印80cに示す方向の反対の方向、すなわち、特定の方向における上流から下流に向けて、この順に配設されている。
【0082】
インクジェットヘッド181~191、紫外線照射装置192および紫外線照射装置193は、キャリッジ194に搭載されていて、キャリッジ194が媒体20に対して相対移動させられることによって、媒体20に対して相対移動させられる。
【0083】
図14に示すインクジェットプリンター80による多層印刷物10および多層印刷物120の製造方法は、基本的には、
図13に示すインクジェットプリンター80による多層印刷物10および多層印刷物120の製造方法と同様である。ただし、
図14に示すインクジェットプリンター80では、インクジェットヘッド181~191によって吐出されたインクは、媒体20側に着弾した直後に、紫外線照射装置192および紫外線照射装置193のうち、媒体20に対するキャリッジ194の主走査方向における相対移動の方向における上流側の紫外線照射装置によって紫外線が照射されて硬化させられる。
【0084】
図15は、インクジェットプリンター80による表層31、白層32、黒層33および裏層34の印刷方法の、
図13および
図14に示す例とは異なる一例を示す図である。
【0085】
図15に示すインクジェットプリンター80は、インクを吐出するインクジェットヘッド281~291を備えている。インクジェットヘッド281~291は、ラインヘッド方式用のインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド281~291によって吐出されるインクの色は、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(黒)、ブラック(黒)、ホワイト(白)、ホワイト(白)、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(黒)である。インクジェットヘッド281~291によって吐出されるインクは、紫外線が照射されることによって硬化するUVインクである。
【0086】
図15に示すインクジェットプリンター80は、インクジェットヘッド281~291によって吐出されたインクに紫外線を照射するための紫外線照射装置292~296を備えている。紫外線照射装置292および紫外線照射装置293は、矢印80bに示す方向においてインクジェットヘッド281~284を挟む位置に配置されている。紫外線照射装置293および紫外線照射装置294は、矢印80bに示す方向においてインクジェットヘッド285を挟む位置に配置されている。紫外線照射装置294および紫外線照射装置295は、矢印80bに示す方向においてインクジェットヘッド286および287を挟む位置に配置されている。紫外線照射装置295および紫外線照射装置296は、矢印80bに示す方向においてインクジェットヘッド288~291を挟む位置に配置されている。
【0087】
裏層34は、インクジェットヘッド281~284によって吐出されるインクによって印刷される。黒層33は、インクジェットヘッド285によって吐出されるインクによって印刷される。白層32は、インクジェットヘッド286および287によって吐出されるインクによって印刷される。表層31は、インクジェットヘッド288~291によって吐出されるインクによって印刷される。
【0088】
インクジェットヘッド288~291は、本発明の第1のヘッドを構成している。インクジェットヘッド286および287は、本発明の第2のヘッドを構成している。インクジェットヘッド285は、本発明の第3のヘッドを構成している。インクジェットヘッド281~284は、本発明の第4のヘッドを構成している。インクジェットヘッド288~291と、インクジェットヘッド286および287と、インクジェットヘッド285と、インクジェットヘッド281~284とは、矢印80cに示す方向の反対の方向、すなわち、特定の方向における上流から下流に向けて、この順に配設されている。
【0089】
インクジェットヘッド281~291および紫外線照射装置292~296は、互いの相対的な位置が固定されている。
【0090】
図15に示すインクジェットプリンター80は、多層印刷物10を製造する場合、インクジェットヘッド281~291および紫外線照射装置292~296に対して媒体20を矢印80cで示す方向に相対移動させる際に、インクジェットヘッド281~291によって媒体20に向けてインクを吐出させる。なお、
図15に示すインクジェットプリンター80では、多層印刷物10を製造する場合、インクジェットヘッド281~284によって吐出されたインク、インクジェットヘッド285によって吐出されたインク、インクジェットヘッド286および287によって吐出されたインク、インクジェットヘッド288~291によって吐出されたインクは、媒体20側に着弾した直後に、それぞれ、紫外線照射装置293、294、295、296によって紫外線が照射されて硬化させられる。
【0091】
図15に示すインクジェットプリンター80は、多層印刷物120を製造する場合、インクジェットヘッド281~291および紫外線照射装置292~296に対して媒体20を矢印80cで示す方向とは反対方向に相対移動させる際に、インクジェットヘッド281~291によって媒体20に向けてインクを吐出させる。なお、
図15に示すインクジェットプリンター80では、多層印刷物120を製造する場合、インクジェットヘッド281~284によって吐出されたインク、インクジェットヘッド285によって吐出されたインク、インクジェットヘッド286および287によって吐出されたインク、インクジェットヘッド288~291によって吐出されたインクは、媒体20側に着弾した直後に、それぞれ、紫外線照射装置292、293、294、295によって紫外線が照射されて硬化させられる。
【0092】
インクジェットプリンター80による表層31、白層32、黒層33および裏層34の印刷方法は、
図13~
図15に示す方法以外の方法であっても良い。
【0093】
以上においては、コンピューター90によって生成された印刷データに基づいて、インクジェットプリンター80によって媒体20に印刷層群を形成することによって、多層印刷物を製造する方法について説明している。ここで、多層印刷物は、カッティングプロッターによって媒体20のうち多層印刷物以外の部分から切り離されても良い。以下においては、媒体20にインクジェットプリンター80によって印刷層群を形成した後、カッティングプロッターによって多層印刷物を媒体20のうち多層印刷物以外の部分から切り離すことによって、多層印刷物を製造する方法について説明する。
【0094】
まず、インクジェットプリンター80がカッティングプロッターの機能を備えている場合に、インクジェットプリンター80によって印刷およびカットが実行されるときの、多層印刷物の製造方法について説明する。
【0095】
図16は、インクジェットプリンター80によって印刷およびカットが実行される場合に、カットの位置合わせ用のトンボが利用されないときの、多層印刷物の製造方法のフローチャートである。
【0096】
図16に示すように、作業者は、多層印刷物の印刷データをコンピューター90によって作成し(S301)、S301において作成した印刷データに合わせて多層印刷物のカットデータをコンピューター90によって作成する(S302)。次いで、作業者は、S301において作成した印刷データと、S302において作成したカットデータとをコンピューター90によって合成することによって印刷カットデータを作成し(S303)、S303において作成した印刷カットデータをコンピューター90によってインクジェットプリンター80に送信する(S304)。
【0097】
インクジェットプリンター80は、S304においてコンピューター90から送信されてきた印刷カットデータを受信すると、媒体20における原点位置を記憶する(S305)。
【0098】
次いで、インクジェットプリンター80は、印刷カットデータのうちの印刷データに基づいて、媒体20への印刷層群の印刷を開始し(S306)、媒体20への印刷層群の印刷が終了したと判断するまで、媒体20への印刷層群の印刷が終了したか否かを判断する(S307)。
【0099】
インクジェットプリンター80は、媒体20への印刷層群の印刷が終了したとS307において判断すると、印刷層群の印刷によって媒体20を搬送した分だけ媒体20を戻すために、S305において記憶していた原点位置に基づいて媒体20を移動させる(S308)。
【0100】
次いで、インクジェットプリンター80は、印刷カットデータのうちのカットデータに基づいて、カッティングプロッターの機能によって媒体20のカットを開始し(S309)、カットデータに基づいたカットが終了したと判断するまで、カットデータに基づいたカットが終了したか否かを判断する(S310)。
【0101】
カットデータに基づいたカットが終了したとS310においてインクジェットプリンター80によって判断されると、媒体20のうち多層印刷物以外の部分から切り離された多層印刷物が製造される。
【0102】
図17は、インクジェットプリンター80によって印刷およびカットが実行される場合に、トンボが利用されるときの、多層印刷物の製造方法のフローチャートである。
【0103】
図17に示すように、作業者は、多層印刷物の印刷データをコンピューター90によって作成し(S321)、S321において作成した印刷データに合わせて多層印刷物のカットデータをコンピューター90によって作成する(S322)。次いで、作業者は、S322において作成したカットデータに合わせたトンボを、S321において作成した印刷データにコンピューター90によって付加する(S323)。次いで、作業者は、S323においてトンボを付加した印刷データと、S322において作成したカットデータとをコンピューター90によって合成することによって印刷カットデータを作成し(S324)、S324において作成した印刷カットデータをコンピューター90によってインクジェットプリンター80に送信する(S325)。
【0104】
インクジェットプリンター80は、S325においてコンピューター90から送信されてきた印刷カットデータを受信すると、媒体20における原点位置を記憶する(S326)。
【0105】
次いで、インクジェットプリンター80は、印刷カットデータのうちの印刷データに基づいて、媒体20への印刷層群およびトンボの印刷を開始し(S327)、媒体20への印刷層群およびトンボの印刷が終了したと判断するまで、媒体20への印刷層群およびトンボの印刷が終了したか否かを判断する(S328)。
【0106】
インクジェットプリンター80は、媒体20への印刷層群およびトンボの印刷が終了したとS328において判断すると、印刷層群およびトンボの印刷によって媒体20を搬送した分だけ媒体20を戻すために、S326において記憶していた原点位置に基づいて媒体20を移動させる(S329)。
【0107】
次いで、インクジェットプリンター80は、媒体20に印刷されているトンボを読み取り(S330)、S330において読み取ったトンボの位置に応じて、印刷カットデータのうちのカットデータに基づいて、カッティングプロッターの機能によって媒体20のカットを開始し(S331)、カットデータに基づいたカットが終了したと判断するまで、カットデータに基づいたカットが終了したか否かを判断する(S332)。
【0108】
カットデータに基づいたカットが終了したとS332においてインクジェットプリンター80によって判断されると、媒体20のうち多層印刷物以外の部分から切り離された多層印刷物が製造される。
【0109】
次に、インクジェットプリンター80によって印刷が実行された後、インクジェットプリンター80とは異なるカッティングプロッターによってカットが実行される場合の、多層印刷物の製造方法について説明する。
【0110】
図18は、インクジェットプリンター80によって印刷が実行された後、インクジェットプリンター80とは異なるカッティングプロッターによってカットが実行される場合に、トンボが利用されないときの、多層印刷物の製造方法のフローチャートである。
【0111】
図18に示すように、作業者は、多層印刷物の印刷データをコンピューター90によって作成し(S341)、S341において作成した印刷データに合わせて多層印刷物のカットデータをコンピューター90によって作成する(S342)。次いで、作業者は、S341において作成した印刷データをコンピューター90によってインクジェットプリンター80に送信する(S343)。
【0112】
インクジェットプリンター80は、S343においてコンピューター90から送信されてきた印刷データを受信すると、印刷データに基づいて媒体20への印刷層群の印刷を開始し(S344)、媒体20への印刷層群の印刷が終了したと判断するまで、媒体20への印刷層群の印刷が終了したか否かを判断する(S345)。
【0113】
媒体20への印刷層群の印刷が終了したとS345においてインクジェットプリンター80によって判断されると、作業者は、インクジェットプリンター80によって印刷層群が印刷された媒体20を、インクジェットプリンター80から取り出して、インクジェットプリンター80とは異なるカッティングプロッターにセットする(S346)。ここで、作業者は、媒体20における原点位置がカッティングプロッターにおける特定の位置に合うように、媒体20を適切にカッティングプロッターにセットする。
【0114】
次いで、作業者は、S342において作成したカットデータをコンピューター90によってカッティングプロッターに送信する(S347)。
【0115】
カッティングプロッターは、S347においてコンピューター90から送信されてきたカットデータを受信すると、カットデータに基づいて媒体20のカットを開始し(S348)、カットデータに基づいたカットが終了したと判断するまで、カットデータに基づいたカットが終了したか否かを判断する(S349)。
【0116】
カットデータに基づいたカットが終了したとS349においてカッティングプロッターによって判断されると、媒体20のうち多層印刷物以外の部分から切り離された多層印刷物が製造される。
【0117】
図19は、インクジェットプリンター80によって印刷が実行された後、インクジェットプリンター80とは異なるカッティングプロッターによってカットが実行される場合に、トンボが利用されるときの、多層印刷物の製造方法のフローチャートである。
【0118】
図19に示すように、作業者は、多層印刷物の印刷データをコンピューター90によって作成し(S361)、S361において作成した印刷データに合わせて多層印刷物のカットデータをコンピューター90によって作成する(S362)。次いで、作業者は、S362において作成したカットデータに合わせたトンボを、S361において作成した印刷データにコンピューター90によって付加する(S363)。次いで、作業者は、S363においてトンボを付加した印刷データをコンピューター90によってインクジェットプリンター80に送信する(S364)。
【0119】
インクジェットプリンター80は、S364においてコンピューター90から送信されてきた印刷データを受信すると、印刷データに基づいて、媒体20への印刷層群およびトンボの印刷を開始し(S365)、媒体20への印刷層群およびトンボの印刷が終了したと判断するまで、媒体20への印刷層群およびトンボの印刷が終了したか否かを判断する(S366)。
【0120】
媒体20への印刷層群およびトンボの印刷が終了したとS366においてインクジェットプリンター80によって判断されると、作業者は、インクジェットプリンター80によって印刷層群およびトンボが印刷された媒体20を、インクジェットプリンター80から取り出して、インクジェットプリンター80とは異なるカッティングプロッターにセットする(S367)。ここで、作業者は、媒体20における原点位置がカッティングプロッターにおける特定の位置に合うように、媒体20を適切にカッティングプロッターにセットする。
【0121】
次いで、作業者は、S362において作成したカットデータをコンピューター90によってカッティングプロッターに送信する(S368)。
【0122】
カッティングプロッターは、媒体20に印刷されているトンボを読み取り(S369)、S369において読み取ったトンボの位置に応じて、カットデータに基づいて媒体20のカットを開始し(S370)、カットデータに基づいたカットが終了したと判断するまで、カットデータに基づいたカットが終了したか否かを判断する(S371)。
【0123】
カットデータに基づいたカットが終了したとS371においてカッティングプロッターによって判断されると、媒体20のうち多層印刷物以外の部分から切り離された多層印刷物が製造される。
【0124】
以上に説明したように、多層印刷物10および多層印刷物120は、表層31および裏層34の間に隠蔽用印刷層としての白層32および黒層33を備えるので、表層31側から光が当たっている状態で裏層34に対して表層31側とは反対側の光源50から光が当てられていない場合に、表層31に対して裏層34側とは反対側から、すなわち、光源50側とは反対側から利用者60によって視認されるとき、裏層34の隠蔽性を向上することができる。すなわち、多層印刷物10および多層印刷物120は、裏面側の光源50から光が当てられていない場合に表面側に対して複数の図柄のうち光源50側の図柄の隠蔽性を向上することができる。
【0125】
多層印刷物10および多層印刷物120は、白層32と、黒層33とを同一の厚みで比較した場合に、黒層33が白層32より遮光性能が高いので、白層32のみで隠蔽用印刷層が形成される場合と比較して隠蔽用印刷層全体の厚みを薄くしても、同一の隠蔽性能を得ることができる。すなわち、多層印刷物10および多層印刷物120は、隠蔽用印刷層全体の厚みを薄くすることができる。したがって、多層印刷物10および多層印刷物120は、表層31側から当たる光が抑えられている状態で裏層34に対して表層31側とは反対側の光源50から光が当てられている場合に、光源50から当てられた光が隠蔽用印刷層を透過する際に隠蔽用印刷層によって散乱される量を抑えることができ、その結果、裏層34を光源50からの光によって表層31側に鮮明に透けて見えさせることができる。例えば、多層印刷物10および多層印刷物120は、表層31側から当たる光が抑えられている状態で裏層34に対して表層31側とは反対側の光源50から光が当てられている場合に、裏層34における図柄の輪郭を光源50からの光によって表層31側に鮮明に透けて見えさせることができる。
【0126】
多層印刷物10および多層印刷物120は、材質の遮光性能が異なる2つの隠蔽用印刷層、すなわち、白層32および黒層33を備えるので、2つの隠蔽用印刷層の材質のうち遮光性能が低い白層32の材質、すなわち、白インクのみで隠蔽用印刷層が形成される場合と比較して隠蔽用印刷層全体の厚みを薄くしても、同一の隠蔽性能を得ることができる。したがって、多層印刷物10および多層印刷物120は、隠蔽用印刷層全体の厚みを薄くすることによって、例えば、隠蔽用印刷層を印刷するためのインクの量を低減させることができる。また、多層印刷物10および多層印刷物120は、隠蔽用印刷層の印刷方法によっては、隠蔽用印刷層全体の厚みを薄くすることによって、隠蔽用印刷層の印刷時間を短縮することもできる。例えば、媒体20に対するインクジェットヘッド81~86の副走査方向における位置が同一の位置である場合に、媒体20に対するインクジェットヘッド81~86の主走査方向への相対移動の回数、すなわち、パス数を増やすことによって、インクジェットヘッド81~86から媒体20に向けて吐出されるインクの量を増やす印刷方法であるときには、隠蔽用印刷層全体の厚みを薄くすること、すなわち、インクジェットヘッド81~86から媒体20に向けて吐出されるインクの量を減らすことによって、隠蔽用印刷層の印刷時間を短縮することができる。
【0127】
なお、多層印刷物10および多層印刷物120は、裏層34側の隠蔽用印刷層(以下「裏層側隠蔽用印刷層」という。)の遮光性能が低過ぎると、利用者60側からの光、すなわち、環境光が当てられた場合に、利用者60によって裏層34の図柄が視認され易い。また、多層印刷物10および多層印刷物120は、裏層側隠蔽用印刷層の遮光性能が高過ぎると、光源50から光が当てられても、光源50側とは反対側から利用者60によって裏層34の図柄が視認し難い。したがって、多層印刷物10および多層印刷物120は、裏層側隠蔽用印刷層の黒の濃度が低過ぎず、高過ぎない適度な濃度であることが好ましい。例えば、多層印刷物10および多層印刷物120は、媒体20の厚みを薄くする場合、光源50からの光を媒体20が透し易くなるので、裏層側隠蔽用印刷層の黒の濃度を高くすることが好ましい。また、多層印刷物10および多層印刷物120は、利用者60側からの光、すなわち、環境光が強くなる場合、利用者60によって裏層34の図柄が視認し易くなるので、裏層側隠蔽用印刷層の黒の濃度を高くすることが好ましい。
【0128】
多層印刷物10および多層印刷物120は、表層31側から当たる光が抑えられている状態で裏層34側の光源50から光が当てられている場合に、黒層33が表層31に対して積層方向に存在しない領域10b(
図6参照。)を光源50からの光が透過し易いので、表層31側から当たる光が抑えられている状態で裏層34側の光源50から光が当てられている場合に、光源50側とは反対側から利用者60によって視認されるとき、黒層33が表層31に対して積層方向に存在しない領域10bを強調表示することができる。
【0129】
なお、多層印刷物10および多層印刷物120は、本実施の形態において、表層31に対して積層方向に存在しない部分33aが黒層33に存在する。しかしながら、多層印刷物10および多層印刷物120は、表層31に対して積層方向に存在しない部分が白層32に存在しても良い。
【0130】
多層印刷物10および多層印刷物120は、裏層側隠蔽用印刷層が黒層33であり、裏層側隠蔽用印刷層が薄くても高い遮光性能を発揮するので、裏層側隠蔽用印刷層の厚みを薄くすることができる。なお、多層印刷物10および多層印刷物120は、裏層側隠蔽用印刷層が黒でなくても良い。
【0131】
多層印刷物10および多層印刷物120は、表層31側の隠蔽用印刷層(以下「表層側隠蔽用印刷層」という。)が白層32であり、表層側隠蔽用印刷層の明度が高いので、表層31側から光が当たっている状態で裏層34側の光源50から光が当てられていない場合に、光源50側とは反対側から利用者60によって表層31が視認されるとき、表層31によって表される図柄の明度を表層側隠蔽用印刷層の明度によって向上することができる。なお、多層印刷物10および多層印刷物120は、表層側隠蔽用印刷層が白でなくても良い。
【0132】
多層印刷物10および多層印刷物120は、裏層側隠蔽用印刷層の材質の遮光性能が表層側隠蔽用印刷層の材質の遮光性能より高いので、表層側隠蔽用印刷層の明度を裏層側隠蔽用印刷層より高くすることができる。多層印刷物10および多層印刷物120は、表層側隠蔽用印刷層である白層32の明度が裏層側隠蔽用印刷層である黒層33より高いので、表層31側から光が当たっている状態で裏層34側の光源50から光が当てられていない場合に、光源50側とは反対側から利用者60によって表層31が視認されるとき、表層31によって表される図柄の明度を白層32の明度によって向上することができる。
【0133】
多層印刷物10および多層印刷物120において、裏層側隠蔽用印刷層は、表層側隠蔽用印刷層と同一の厚みで比較した場合に、裏層側隠蔽用印刷層より遮光性能が高く、光の反射性能が低い。遮光性能や光の反射性能の違いは、材質の違いによって実現されることができるし、たとえ同じ材質であっても構造の違いによって実現されることもできる。ここで、構造の違いとは、例えば、インクに含まれる粒子の大きさや含有率の違いである。
【0134】
図13~
図15に示す多層印刷方法は、それぞれ、インクジェットヘッド81~86、インクジェットヘッド181~191、インクジェットヘッド281~291に対して媒体20を矢印80bで示す副走査方向における特定の一方向に相対移動させるだけで、表層31、白層32、黒層33および裏層34の4層を同時に印刷することができるので、各印刷層を全領域ずつ順に印刷する方法と比較して、各印刷層同士の位置精度を向上することができ、高品質の多層印刷物10および多層印刷物120を製造することができる。
【0135】
本実施の形態においては、多層印刷物の印刷方法としてインクジェット印刷が用いられている。しかしながら、多層印刷物の印刷方法は、インクジェット印刷以外の印刷方法であっても良い。
【符号の説明】
【0136】
10 多層印刷物
10a 矢印(積層方向を示す矢印)
20 媒体
30 印刷層群
31 表層(第1の図柄印刷層)
32 白層(第1の隠蔽用印刷層)
33 黒層(第2の隠蔽用印刷層)
33a 部分(第1の図柄印刷層に対して積層方向に存在しない部分)
34 裏層(第2の図柄印刷層)
80 インクジェットプリンター
80a 矢印(主走査方向を示す矢印)
80b 矢印(副走査方向を示す矢印)
80c 矢印(副走査方向のうちの特定の一方向を示す矢印、特定の方向の反対の方向を示す矢印)
81~86 インクジェットヘッド
81a、82a、83a、84a 領域(第4のヘッド)
84b 領域(第3のヘッド)
85c、86c 領域(第2のヘッド)
81d、82d、83d、84d 領域(第1のヘッド)
120 多層印刷物
181~184 インクジェットヘッド(第4のヘッド)
185 インクジェットヘッド(第3のヘッド)
186~187 インクジェットヘッド(第2のヘッド)
188~191 インクジェットヘッド(第1のヘッド)
281~284 インクジェットヘッド(第4のヘッド)
285 インクジェットヘッド(第3のヘッド)
286~287 インクジェットヘッド(第2のヘッド)
288~291 インクジェットヘッド(第1のヘッド)