(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】段差測定方法及び段差測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/06 20060101AFI20220215BHJP
【FI】
G01B11/06 Z
(21)【出願番号】P 2017249238
(22)【出願日】2017-12-26
【審査請求日】2020-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】西村 良浩
(72)【発明者】
【氏名】青木 善浩
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-007556(JP,A)
【文献】特開2017-198491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な膜が露出した部分を含む試料の表面の段差を測定する段差測定方法であって、
前記透明な膜は、複数の透明な層が積層された多層膜であり、
共焦点光学系の対物レンズの光軸方向に沿って、前記試料に対する前記対物レンズの位置を変化させた場合に、照明光が前記試料で反射した反射光の輝度のピークを示す前記位置の違いから、前記試料の表面における疑似段差を測定するステップと、
前記透明な膜の膜厚を測定するステップと、
前記輝度と、前記位置と、の関係を示すZ依存性関数を決定するステップと、
前記透明な膜の前記膜厚及び屈折率を用いて算出した光学的な界面位置における前記Z依存性関数と、前記界面位置における前記透明な膜のフレネル係数と、の積のZ依存フレネル係数を導入するステップと、
各前記界面位置
の前記Z依存フレネル係数
を全て合成した、全体構造の合成Z依存フレネル係数の絶対値の二乗より算出された反射率が、前記光軸方向においてピークを示す前記位置からシフト量を決定するステップと、
前記疑似段差及び前記シフト量より段差を導出するステップと、
を備えた段差測定方法。
【請求項2】
前記膜厚を測定するステップは、
前記共焦点光学系を介して、前記試料に第1波長の照明光と第2波長の照明光とを切替えて照射し、
前記試料で反射した反射光を、前記共焦点光学系を介して検出して、前記第1波長の光 による第1画像と、前記第2波長の光による第2画像とを取得し、
前記透明な膜の膜厚を算出するために、前記第1画像と前記第2画像とに基づいて、前記第1波長及び第2波長に対する反射率の測定データをそれぞれ求め、
波長と反射率との関係が前記透明な膜の膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、前記測定データから前記透明な膜の膜厚を近似して算出する、
請求項1に記載の段差測定方法。
【請求項3】
前記膜厚を測定するステップは、
前記対物レンズの光軸方向に沿って、前記試料に対する前記対物レンズの位置を変化させた場合に、照明光が前記試料で反射した反射光の輝度と、前記位置と、の関係を示すIZ曲線を測定し、
前記透明な膜について想定される複数の前記膜厚の場合の前記Z依存フレネル係数を用いてシミュレーションされた反射率をプロットした計算IZ曲線を準備し、
測定されたIZ曲線に、前記計算IZ曲線をフィッティングして、前記透明な膜の膜厚を算出する、
請求項1に記載の段差測定方法。
【請求項4】
前記Z依存性関数を決定するステップにおいて、
前記Z依存性関数として、ローレンツ関数の平方根を用いる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の段差測定方法。
【請求項5】
前記Z依存フレネル係数を導入するステップは、
前記透明な膜の前記膜厚及び屈折率を用いて、前記透明な膜の光学的膜厚を算出するステップと、
前記光学的膜厚を用いて、前記透明な膜の光学的界面位置を算出するステップと、
を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の段差測定方法。
【請求項6】
透明な膜が露出した部分を含む試料の表面の段差を測定する段差測定装置であって、
前記透明な膜は、複数の透明な層が積層された多層膜であり、
照明光が前記試料で反射した反射光を検出する光検出器と、
対物レンズを有し、前記照明光を前記試料まで導くとともに、前記試料からの前記反射光を前記光検出器まで導く共焦点光学系と、
前記対物レンズの光軸方向に沿って、前記試料に対する前記対物レンズの位置を変化させる処理部と、
を備え、
前記処理部は、
前記照明光が前記試料で反射した反射光の輝度のピークを示す前記位置の違いから、前記試料の表面における疑似段差を測定し、
前記透明な膜の膜厚を測定し、
前記輝度と、前記位置と、の関係を示すZ依存性関数を決定し、
前記透明な膜の前記膜厚及び屈折率を用いて算出した光学的な界面位置における前記Z依存性関数と、前記界面位置における前記透明な膜のフレネル係数と、の積のZ依存フレネル係数を導入し、
各前記界面位置
の前記Z依存フレネル係数
を全て合成した、全体構造の合成Z依存フレネル係数の絶対値の二乗より算出された反射率が、前記光軸方向においてピークを示す前記位置からシフト量を決定し、
前記疑似段差及び前記シフト量より段差を導出する、
段差測定装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記透明な膜の膜厚を測定する際に、
前記共焦点光学系を介して、前記試料に第1波長の照明光と第2波長の照明光とを切替えて照射し、
前記試料で反射した反射光を、前記共焦点光学系を介して検出して、前記第1波長の光 による第1画像と、前記第2波長の光による第2画像とを取得し、
前記透明な膜の膜厚を算出するために、前記第1画像と前記第2画像とに基づいて、前記第 1波長及び第2波長に対する反射率の測定データをそれぞれ求め、
波長と反射率との関係が前記透明な膜の膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、前記測定データから前記透明な膜の膜厚を近似して算出する、
請求項
6に記載の段差測定装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記膜厚を測定する際に、
前記対物レンズの光軸方向に沿って、前記試料に対する前記対物レンズの位置を変化させた場合に、照明光が前記試料で反射した反射光の輝度と、前記位置と、の関係を示すIZ曲線を測定し、
前記透明な膜について想定される複数の前記膜厚の場合の前記Z依存フレネル係数を用いてシミュレーションされた反射率をプロットした計算IZ曲線を準備し、
測定されたIZ曲線に、前記計算IZ曲線をフィッティングして、前記透明な膜の膜厚を算出する、
請求項
6に記載の段差測定装置。
【請求項9】
前記Z依存性関数は、ローレンツ関数の平方根である、
請求項
6~8のいずれか一項に記載の段差測定装置。
【請求項10】
前記処理部は、前記Z依存フレネル係数を算出する際に、
前記透明な膜の前記膜厚及び屈折率を用いて、前記透明な膜の光学的膜厚を算出し、
前記光学的膜厚を用いて、前記透明な膜の光学的界面位置を算出する、
請求項
6~9のいずれか一項に記載の段差測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段差測定方法及び段差測定装置に関し、特に、透明な膜を含む試料の段差測定方法及び段差測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の表面の段差を非接触及び非破壊で測定する方法としては、共焦点光学系を用いる方法、干渉計を用いる方法等が挙げられる。例えば、共焦点光学系を用いた段差測定においては、対物レンズの光軸方向に沿って、試料に対する対物レンズの位置を変化させる。この場合に、照明光が試料により反射した反射光の輝度がピークとなる位置の違いから表面の段差を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-087197号公報
【文献】特開2005-266084号公報
【文献】特開2007-199511号公報
【文献】特開2010-075997号公報
【文献】特開2012-098692号公報
【文献】特開2002-039721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化合物半導体レーザ等の電子デバイス、ディスプレイ用薄膜トランジスタ及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等の3次元構造体の製造過程において、透明または半透明な絶縁膜が形成された基板上に、不透明な金属膜が形成される場合がある。
【0005】
図1は、基板141上に形成された透明な絶縁膜142上に、金属膜143が形成された試料140を例示した断面図である。
図1に示すように、試料140の絶縁膜142は、透明な膜からなる複数の層142a~142dを含んでいる。試料140の金属膜143は、不透明な膜であり、例えば、パターン化された電極である。試料140の表面には段差が形成されている。具体的には、金属膜143の上面を上段とし、絶縁膜142の上面を下段とする段差が形成されている。
【0006】
図1のように、試料140の表面に、可視光を透過する透明な絶縁膜142が露出していると、照明光は、絶縁膜142を透過し、絶縁膜142の下面でも反射する。したがって、照明光が試料140で反射した反射光は、絶縁膜142の上面で反射した反射光と、絶縁膜142の下面で反射した反射光とを含んでいる。透明な膜が多層膜の場合には、試料140で反射した反射光は、各層142a~142dの界面で反射した反射光も含んでいる。
【0007】
したがって、反射光の輝度がピークを示すZ位置は、絶縁膜142の上面を示す位置からずれた位置になる。したがって、このような場合には、試料140の金属膜143の上面と、絶縁膜142の上面との段差を精度よく測定することができない。
【0008】
図2は、凹凸のある基板141上に膜厚が異なる透明な絶縁膜142が形成された試料140aを例示した断面図である。
図2に示すように、一方の絶縁膜142は、4層の層142a~142dを含み、他方の絶縁膜142は、2層の層142e及び142fを含んでいる。このように、一方の透明な絶縁膜142と他方の透明な絶縁膜142との膜厚が異なる場合に、単に、膜厚の差が表面の段差になるとは限らない。例えば、基板141の表面に凹凸が形成されている場合には、一方の透明な絶縁膜142の上面と、他方の透明な絶縁膜142の上面との段差は、膜厚の差と、基板141の凹凸とを含んでいる。
【0009】
このような段差を測定する場合に、反射光の輝度がピークを示す位置は、絶縁膜142の上面を示す位置からずれた位置になる。よって、このような場合にも、一方の透明な絶縁膜142の上面と、他方の透明な絶縁膜142の上面との段差を精度よく測定することができない。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、透明な膜を含む試料の表面の段差を、精度良く測定することができる段差測定方法及び段差測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る段差測定方法は、透明な膜が露出した部分を含む試料の表面の段差を測定する段差測定方法であって、共焦点光学系の対物レンズの光軸方向に沿って、前記試料に対する前記対物レンズの位置を変化させた場合に、照明光が前記試料で反射した反射光の輝度のピークを示す前記位置の違いから、前記試料の表面における疑似段差を測定するステップと、前記透明な膜の膜厚を測定するステップと、前記輝度と、前記位置と、の関係を示すZ依存性関数を決定するステップと、前記透明な膜の前記膜厚及び屈折率を用いて算出した光学的な界面位置における前記Z依存性関数と、前記界面位置における前記透明な膜のフレネル係数と、の積のZ依存フレネル係数を導入するステップと、各前記界面位置において合成した前記Z依存フレネル係数の絶対値の二乗より算出された反射率が、前記光軸方向においてピークを示す前記位置からシフト量を決定するステップと、前記疑似段差及び前記シフト量より段差を導出するステップと、を備える。このような構成により、透明な膜を含む試料の表面の段差を、精度良く測定することができる。
【0012】
また、前記膜厚を測定するステップは、前記共焦点光学系を介して、前記試料に第1波長の照明光と第2波長の照明光とを切替えて照射し、前記試料で反射した反射光を、前記共焦点光学系を介して検出して、前記第1波長の光による第1画像と、前記第2波長の光による第2画像とを取得し、前記透明な膜の膜厚を算出するために、前記第1画像と前記第2画像とに基づいて、前記第1波長及び第2波長に対する反射率の測定データをそれぞれ求め、波長と反射率との関係が前記透明な膜の膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、前記測定データから前記透明な膜の膜厚を近似して算出する。
【0013】
さらに、前記膜厚を測定するステップは、前記対物レンズの光軸方向に沿って、前記試料に対する前記対物レンズの位置を変化させた場合に、照明光が前記試料で反射した反射光の輝度と、前記位置と、の関係を示すIZ曲線を測定し、前記透明な膜について想定される複数の前記膜厚の場合の前記Z依存フレネル係数を用いてシミュレーションされた反射率をプロットした計算IZ曲線を準備し、測定されたIZ曲線に、前記計算IZ曲線をフィッティングして、前記透明な膜の膜厚を算出する。
【0014】
前記Z依存性関数を決定するステップにおいて、前記Z依存性関数として、ローレンツ関数の平方根を用いる。
【0015】
また、前記Z依存フレネル係数を導入するステップは、前記透明な膜の前記膜厚及び屈折率を用いて、前記透明な膜の光学的膜厚を算出するステップと、前記光学的膜厚を用いて、前記透明な膜の光学的界面位置を算出するステップと、を含む。
【0016】
さらに、前記透明な膜は、複数の透明な層が積層された多層膜である。
【0017】
本発明に係る段差測定装置は、透明な膜が露出した部分を含む試料の表面の段差を測定する段差測定装置であって、照明光が前記試料で反射した反射光を検出する光検出器と、対物レンズを有し、前記照明光を前記試料まで導くとともに、前記試料からの前記反射光を前記光検出器まで導く共焦点光学系と、前記対物レンズの光軸方向に沿って、前記試料に対する前記対物レンズの位置を変化させる処理部と、を備え、前記処理部は、前記照明光が前記試料で反射した反射光の輝度のピークを示す前記位置の違いから、前記試料の表面における疑似段差を測定し、前記透明な膜の膜厚を測定し、前記輝度と、前記位置と、の関係を示すZ依存性関数を決定し、前記透明な膜の前記膜厚及び屈折率を用いて算出した光学的な界面位置における前記Z依存性関数と、前記界面位置における前記透明な膜のフレネル係数と、の積のZ依存フレネル係数を導入し、各前記界面位置において合成した前記Z依存フレネル係数の絶対値の二乗より算出された反射率が、前記光軸方向においてピークを示す前記位置からシフト量を決定し、前記疑似段差及び前記シフト量より段差を導出する。このような構成により、透明な膜を含む試料の表面の段差を、精度良く測定することができる。
【0018】
また、前記処理部は、前記透明な膜の膜厚を測定する際に、前記共焦点光学系を介して、前記試料に第1波長の照明光と第2波長の照明光とを切替えて照射し、前記試料で反射した反射光を、前記共焦点光学系を介して検出して、前記第1波長の光 による第1画像と、前記第2波長の光による第2画像とを取得し、前記透明な膜の膜厚を算出するために、前記第1画像と前記第2画像とに基づいて、前記第 1波長及び第2波長に対する反射率の測定データをそれぞれ求め、波長と反射率との関係が前記透明な膜の膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、前記測定データから前記透明な膜の膜厚を近似して算出する。
【0019】
さらに、前記処理部は、前記膜厚を測定する際に、前記対物レンズの光軸方向に沿って、前記試料に対する前記対物レンズの位置を変化させた場合に、照明光が前記試料で反射した反射光の輝度と、前記位置と、の関係を示すIZ曲線を測定し、前記透明な膜について想定される複数の前記膜厚の場合の前記Z依存フレネル係数を用いてシミュレーションされた反射率をプロットした計算IZ曲線を準備し、測定されたIZ曲線に、前記計算IZ曲線をフィッティングして、前記透明な膜の膜厚を算出する。
【0020】
前記Z依存性関数は、ローレンツ関数の平方根である。
【0021】
また、前記処理部は、前記Z依存フレネル係数を算出する際に、前記透明な膜の前記膜厚及び屈折率を用いて、前記透明な膜の光学的膜厚を算出し、前記光学的膜厚を用いて、前記透明な膜の光学的界面位置を算出する。
【0022】
さらに、前記透明な膜は、複数の透明な層が積層された多層膜である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、透明な膜を含む試料の表面の段差を、精度良く測定することができる段差測定方法及び段差測定装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】基板上に形成された透明な絶縁膜上に、金属膜が形成された試料を例示した断面図である。
【
図2】凹凸のある基板上に膜厚が異なる透明な絶縁膜が形成された試料を例示した断面図である。
【
図3】実施形態に係る段差測定装置1の構成を例示した図である。
【
図4】実施形態に係る段差測定方法を例示したフローチャート図である。
【
図5】実施形態に係る段差測定方法により表面の段差が測定される試料を例示した断面図である。
【
図6】実施形態に係る段差測定方法の膜厚測定を例示したフローチャートである。
【
図7】実施形態に係るIZ曲線を例示したグラフであり、横軸は、Z方向の位置を示し、縦軸は規格化された反射光の輝度を示す。
【
図8】実施形態に係る段差測定方法のZ依存フレネル係数の導入を例示した図である。
【
図9】実施形態に係る段差測定方法のZ依存フレネル係数の導入を例示したフローチャートである。
【
図10】実施形態に係る段差測定方法のZ依存フレネル係数の導入において、光学的膜厚を例示した図である。
【
図11】実施形態に係る段差測定方法のZ依存フレネル係数の導入において、光学的界面位置を例示した図である。
【
図12】実施形態に係る段差測定方法のZ依存フレネル係数の導入において、フレネル係数を例示した図である。
【
図13】実施形態に係る段差測定方法のZ依存フレネル係数の導入において、Z依存フレネル係数を例示した図である。
【
図14】実施形態に係る段差測定方法のシフト量の決定を例示したフローチャート図である。
【
図15】実施形態に係る段差測定方法のZ依存フレネル係数の合成を例示した図である。
【
図16】実施形態に係る段差測定方法の合成された拡張フレネル係数の絶対値の二乗より算出された絶対反射率を例示した図である。
【
図17】実施形態に係る実施例1の試料を例示した断面図である。
【
図18】実施形態に係る実施例1のIZ曲線を例示したグラフであり、横軸は、Z方向の位置を示し、縦軸(左)は、輝度を示し、縦軸(右)は、各界面のフレネル係数の絶対値を示す。
【
図19】実施形態に係る実施例2の試料を例示した断面図である。
【
図20】実施形態に係る実施例2のIZ曲線を例示したグラフであり、横軸は、Z方向の位置を示し、縦軸(左)は、輝度を示し、縦軸(右)は、各界面のフレネル係数の絶対値を示す。
【
図21】実施形態に係る実施例3の試料を例示した断面図である。
【
図22】実施形態に係る実施例3のIZ曲線を例示したグラフであり、横軸は、Z方向の位置を示し、縦軸(左)は、輝度を示し、縦軸(右)は、各界面のフレネル係数の絶対値を示す。
【
図23】実施形態に係る実施例4の試料を例示した断面図である。
【
図24】実施形態に係る実施例4のIZ曲線を例示したグラフであり、横軸は、Z方向の位置を示し、縦軸(左)は、輝度を示し、縦軸(右)は、各界面のフレネル係数の絶対値を示す。
【
図25】実施形態に係る実施例5のIZ曲線を例示したグラフであり、横軸は、Z方向の位置を示し、縦軸(左)は、輝度を示し、縦軸(右)は、各界面のフレネル係数の絶対値を示す。
【
図26】実施形態に係る平均入射角度因子を導くための説明図である。
【
図27】実施形態に係る平均位相差を導くための説明図である。
【
図28】実施形態の変形例に係る段差測定方法及び膜厚測定方法と、NA対物レンズとの関係を例示した図である。
【
図29】実施形態の変形例に係る段差測定方法において、膜厚測定を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本実施形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0026】
(実施形態)
実施形態に係る段差測定装置及び段差測定方法を説明する。まず、段差測定装置の構成を説明する。その後、段差測定装置を用いた段差測定方法を説明する。
(段差測定装置)
【0027】
本実施形態に係る段差測定装置1の構成を説明する。
図3は、実施形態に係る段差測定装置1の構成を例示した図である。
図3に示すように、本実施形態に係る段差測定装置1は、光源11、干渉フィルター12、レンズ13a、13b、13c、スリット14、ビームスプリッタ15、振動ミラー16、対物レンズ17、ステージ18、光検出器19、処理部30を備えている。光源11及び干渉フィルター12は光源部10を構成している。レンズ13a、13b、13c、スリット14、ビームスプリッタ15、振動ミラー16及び対物レンズ17は、共焦点光学系20を構成している。ステージ18上には、試料40が載置されている。段差測定装置1は、透明な膜が露出した部分を含む試料40の表面の段差を測定する装置である。透明な膜とは、所定の波長の照明光の少なくとも一部を透過する膜をいう。
【0028】
光源11は、例えば、紫外から赤外域(185nm~2000nm)に幅広い連続スペクトルを有するキセノンランプである。キセノンランプは、単波長画像以外のカラーレビュー画像を撮像する際に、自然な干渉色の分布が観察でき、定性的な判断をする場合に有用である。また、光源11は、例えば、水銀キセノンランプのような連続スペクトルに複数の輝線を含む白色光を生成するものでもよい。光源11は、キセノンランプに限らず、白色ダイオード、白色レーザ等でもよい。光源11は、波長が選択できることが好ましい。光源11は、光検出器19が検出できれば、可視光に制限されない。
【0029】
光源11から出射した光は、干渉フィルター12を通過し、特定の波長の光に変換されてもよい。干渉フィルター12は、例えば、特定波長の光を選択的に透過させる複数のバンドパスフィルタである。これにより、複数の単一波長の照明光を選択的に透過させる。例えば、照明光の波長として、水銀キセノンランプの輝線に対応する波長の405nm、436nm、546nm、578nm、及び水銀キセノンランプの輝線ではない486nm、514nm、633nmを選択することができる。水銀キセノンランプを用いる場合に、輝線に対応する波長以外の波長の光をフィルターで選択することも可能である。輝線の波長以外の光は強度が小さいため、干渉フィルターの半値幅を広くすることによりバランスを取ることができる。なお、波長の切替は連続的でもよいし、断続的でもよく、例えば、400nm~650nmの間で5~7波長を選択してもよい。このように、段差測定装置1は、少なくとも第1波長の照明光と第2波長の照明光とを切替可能な光源部10を備えている。
【0030】
なお、光源11として単波長のレーザ光を出射するレーザ光源を用い、波長変換素子を設けてもよい。例えば、第二高調波発生により、波長変換素子に入射する単波長の光の波長変換を行うことができる。また、光源11として、可変波長レーザを用いることも可能である。さらに、異なる波長のレーザ光を出射する複数のレーザ光源を設けて、複数のレーザ光源のうちの所望の波長の光を選択するようにしてもよい。
【0031】
共焦点光学系20は、対物レンズ17を有し、光源部10からの照明光を試料40まで導くとともに、試料40からの反射光を光検出器19まで導く。干渉フィルター12を透過した単一波長の照明光はレンズ13aを透過して、スリット14に入射する。照明光は、スリット14を通して、例えば、ライン状に整形される。そして、照明光は、ビームスプリッタ15に入射する。ビームスプリッタ15は、照明光の一部を透過する。例えば、照明光の略半分がビームスプリッタ15を透過する。
【0032】
その後、
図3中右方向に進む光は、振動ミラー16に入射する。振動ミラー16は、例えば、X方向のライン状に整形された照明光を試料40上でY方向に走査する。これにより、試料40面上をXY方向に走査することができる。振動ミラー16としては、例えばガルバノミラー、ポリゴンミラー等を用いることができる。
【0033】
振動ミラー16により、下方に反射された照明光は、対物レンズ17により集光され、試料40に照射される。対物レンズ17の光軸方向は、Z軸方向となってもよい。試料40は、ステージ18上に載置されている。そして、試料40からの反射光は、再度対物レンズ17を通過し、振動ミラー16により再び反射され、ビームスプリッタ15へ入射する。その後、入射した光の略半分がビームスプリッタ15で反射され、レンズ13cに入射する。レンズ13cは、光検出器19の受光面に合成光を結像させる。レンズ13cを透過した光は、光検出器19で受光される。
【0034】
本実施の形態では、光検出器19は、試料40のコンフォーカル画像を撮像するCCDラインセンサである。光源11からスリット14を透過した照明光が、試料40で反射して、CCDラインセンサにより検出される。振動ミラー16により、試料40上を走査することにより、スリットコンフォーカル画像が撮像される。このようにして、光検出器19は、照明光が試料40で反射した反射光を検出して、試料40の所定の領域における画像を取得する。なお、共焦点光学系の方式が用いられていれば、走査方法等は異なってもよく、スリットや光検出器は方式に適応したものを適宜用いることができる。例えば、X方向とY方向にスキャンするための振動ミラーを用いてもよく、X方向に音響光学素子であるAODを用いることも可能である。
【0035】
ステージ18は、図示しないZ軸駆動モータを有しており、試料40を
図1の上下方向に移動させることができる。このステージ18は、Z軸方向に移動することにより、試料面が焦点位置にくるように制御される。なお、ステージ18がZ方向に移動するかわりに、対物レンズ17を移動させて焦点位置調整を行うこともできる。
【0036】
共焦点光学系20において、観察波長を変えると合焦点位置が変化することが考えられ、これによる輝度の変化が予想される。これは、各波長の合焦点位置のズレ分を予め測定してPCに記憶しておき、波長切り替えの際に、ズレ分だけ自動的に試料40あるいは対物レンズ17のZ位置を微調整することでキャンセルすることができる。あるいは、それぞれの波長において、全焦点画像をZスキャンにより作製してもよい。なお、観察光学系自身の波長依存性は、シリコンや石英ガラスなどの、反射スペクトルが既知のサンプルを予め測定しておくことで、計算により補正できる。
【0037】
処理部30は、試料40に対する対物レンズ17の位置を変化させる。例えば、処理部30は、ステージ18をZ軸方向に移動させてZスキャンを行う。なお、処理部30は、対物レンズ17をZ軸方向に移動させてZスキャンさせてもよい。
【0038】
本発明では、共焦点顕微鏡を用いて、照明波長を切り替えながら、反射率を測定する。処理部30は、複数の異なる波長の照明光を照射したときのそれぞれの光検出器19で得られた画像から反射率を測定する。そして、基板に形成された薄膜の膜厚を算出する。すなわち、処理部30は、薄膜の膜厚を算出するために、ある波長(第1波長)の照明光による画像(第1画像)と、それと異なる波長(第2波長)の照明光による画像(第2画像)とに基づいて、それぞれの波長に対する反射率の測定データを求める。そして、処理部30は、波長と反射率との関係が薄膜の膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、測定データから薄膜の膜厚を近似して算出する。
【0039】
(段差測定方法)
次に、段差測定装置1を用いた段差測定方法を説明する。本実施形態の段差測定方法は、試料40の表面の段差を測定する。
図4は、実施形態に係る段差測定方法を例示したフローチャート図である。
図4に示すように、本実施形態の段差測定方法は、疑似段差の測定(ステップS11)、膜厚の測定(ステップS12)、IZ曲線及びZ依存性関数の決定(ステップS13)、Z依存フレネル係数の導入(ステップS14)、シフト量の決定(ステップS15)及び補正段差の算出(ステップS16)のステップに分けられる。以下で、順次説明する。
【0040】
(疑似段差の測定:ステップS11)
図4のステップS11に示すように、試料40の表面の疑似段差を測定する。まず、試料40を説明する。
図5は、実施形態に係る段差測定方法により表面の段差が測定される試料40を例示した断面図である。
【0041】
図5に示すように、試料40は、基板41と、透明な膜42と、不透明な膜43とを含んでいる。基板41は、例えば、ガラス基板、シリコン基板等である。なお、基板41は、ガラス基板、シリコン基板等に限らない。
【0042】
透明な膜42は、基板41上に形成されている。透明な膜42とは、所定の波長の照明光の少なくとも一部を透過する膜をいう。透明な膜42は、複数の透明な層LY1~42dが積層された多層膜でもよい。多層膜の各層LY1~42dは透明な膜42を含んでいる。
【0043】
不透明な膜43は、例えば、金属膜である。不透明な膜43は、透明な膜42上に、形成されている。不透明な膜43は、透明な膜42上に部分的に形成されている。よって、試料40の表面には、透明な膜42が露出している部分を含んでいる。このように、本実施形態の段差測定方法は、透明な膜42が露出した部分を含む試料40の表面の段差を測定する。すなわち、段差を構成する一方の膜の上面と他方の膜の上面との間の積層方向の長さを測定する。具体的には、不透明な膜43の上面と、透明な膜42の上面との積層方向の長さを測定する。
【0044】
ここで、段差測定方法の説明の便宜のために、XYZ直交座標軸系を導入する。試料40の透明な膜42の積層方向をZ軸方向とし、基板41から表面へ向かう向きを+Z軸方向、その反対方向を-Z軸方向とする。Z軸方向に直交する面内で不透明な膜43の縁に沿った方向をY軸方向とする。Z軸方向に直交する面内でY軸方向に直交する方向をX軸方向とする。対物レンズ17の光軸は、Z軸方向に沿っている。
【0045】
不透明な膜43の上面で反射した反射光は、ほとんどが不透明な膜43の上面で反射したものである。よって、対物レンズ17の光軸方向に沿って、試料40に対する対物レンズ17の位置を変化させた場合に、反射光の最大輝度を示す位置は、不透明な膜43の上面を示す位置となる。このように、不透明な膜43は、反射光のほとんどが上面での反射光であり、反射光の最大輝度を示す位置が上面を示す位置となる膜である。
【0046】
一方、透明な膜42が露出した部分において、照明光は、透明な膜42を透過する。よって、反射光は、透明な膜42の表面で反射した反射光と、透明な膜42の下面及び各層LY1~42dの界面で反射した反射光を含んでいる。したがって、透明な膜42からの反射光の最大輝度を示すZ位置は、実際の透明な膜42の上面を示す位置からずれて測定される。
【0047】
そうすると、不透明な膜43の上面と、透明な膜42の上面との段差は、実際の段差にズレを含んだものとなる。このように、実際の段差からずれて測定された段差を、疑似段差haという。実際の段差h0と疑似段差haとの間のズレをシフト量Zdという。よって、シフト量Zdは、透明な膜42の実際の最表面についてのZ方向の位置を0とした場合において、反射光の輝度のピーク位置である。
【0048】
このように、疑似段差haの測定としては、共焦点光学系20の対物レンズ17の光軸方向に沿って、試料40に対する対物レンズ17のZ位置を変化させた場合に、照明光が試料40で反射した反射光の輝度のピークを示す位置の違いから、試料40の表面における疑似段差haを測定する。具体的には、処理部30は、対物レンズ17の光軸方向に沿って、試料40に対する対物レンズ17の位置を変化させてZスキャンさせる。そして、処理部30は、照明光が試料40で反射した反射光の輝度のピークを示す位置の違いから、試料40の表面における疑似段差haを測定する。測定条件としては、比較的高いNAレンズを用いて単波長で行い、波長は、例えば、546[nm]であり、対物レンズ17のNAは、0.9である。
【0049】
(膜厚の測定:ステップS12)
次に、
図4のステップS12に示すように、試料40の透明な膜42の膜厚を測定する。透明な膜42の膜厚は、例えば、特許文献1に開示された方法であって、6波長の照明光を用いた全焦点画像より求める方法を用いる。なお、試料40の透明な膜42の膜厚を測定する方法は、特許文献1に開示された方法に限らない。
【0050】
図6は、実施形態に係る段差測定方法の膜厚測定を例示したフローチャートである。
図6のステップS21に示すように、処理部30は、透明な膜42の膜厚を測定する際に、共焦点光学系20を介して、試料40に第1波長の照明光と第2波長の照明光とを切替えて照射する。次に、ステップS22に示すように、試料40で反射した反射光を、共焦点光学系20を介して検出して、第1波長の光による第1画像と、第2波長の光による第2画像とを取得する。次に、ステップS23に示すように、透明な膜42の膜厚を算出するために、第1画像と第2画像とに基づいて、第1波長及び第2波長に対する反射率の測定データをそれぞれ求める。次に、ステップS24に示すように、波長と反射率との関係が薄膜の膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、測定データから薄膜の膜厚を近似して算出する。
【0051】
なお、試料40の透明な膜42の膜厚が既知の場合には、その膜厚の値を用いてもよい。対物レンズ17は、疑似段差haを測定する際に用いた高NAの対物レンズ17でもよいし、疑似段差haの測定に用いた対物レンズ17と異なる低NAの対物レンズを用いてもよい。
【0052】
(IZ曲線及びZ依存性関数の決定:ステップS13)
次に、
図4のステップS13に示すように、IZ曲線及びZ依存性関数の決定を行う。IZ曲線とは、試料40からの反射光の輝度Iと、光軸方向における位置と、の関係を示す曲線である。IZ曲線及びZ依存性関数の決定は、例えば、最表面で反射する部材に対して行う。例えば、IZ曲線を決定する際に、IZ曲線として、以下の(1)式に示すローレンツ関数を用いる。
【0053】
【0054】
処理部30は、(1)式におけるパラメータA、B及びCを最適化し、実測値にフィッティングすることにより、輝度Iと、位置と、の関係を示すIZ曲線を決定する。例えば、輝度と光軸方向の位置との関係を示すIZ曲線としてローレンツ関数に決定する。なお、輝度は、以下の(2)式で正規化する。また、輝度と光軸方向の位置との関係を示すIZ曲線として、ローレンツ関数の代わりに、例えば、ガウス関数を用いてもよいし、実測値を再現できる任意の関数でもよい。さらに、実測値を再現できる参照表でもよい。
【0055】
【0056】
次に、以下の(3)式に示すように、IZ曲線の平方根を、Z依存性関数と定義する。このようにして、Z依存性関数の決定を行う。
【0057】
【0058】
図7は、実施形態に係るIZ曲線及びZ依存性関数を例示したグラフであり、横軸は、Z軸方向、すなわち、対物レンズ17の光軸方向における位置を示し、縦軸は、規格化された反射光の輝度を示す。横軸において、輝度Iがピークを示す位置をZ=0としている。縦軸は反射光の輝度Iを示す。
図7において、IZ曲線を示すf(Z)は、例えば、ローレンツ関数である。F(Z)はZ依存性関数を示す。
【0059】
(Z依存フレネル係数の導入:ステップS14)
次に、
図4のステップS14に示すように、Z依存フレネル係数の導入を行う。
図8は、実施形態に係る段差測定方法のZ依存フレネル係数の導入を例示した図である。Z依存フレネル係数は、透明な膜42の膜厚及び屈折率を用いて算出した光学的な界面位置におけるZ依存性関数と、光学的な界面位置における透明な膜42のフレネル係数との積をいう。
【0060】
Z依存フレネル係数の導入の概略を、
図8を用いて説明する。まず、透明な膜42の物理的膜厚t
j(j=1~4)及び複素屈折率N
j(j=1~4)を用いて、透明な膜42の光学的膜厚d
j(j=1~4)を算出する。
図8に示すように、空気の複素屈折率N
0、透明な膜42の層LY1の複素屈折率N
1、層LY2の複素屈折率N
2、層LY3の複素屈折率N
3、層LY4の複素屈折率N
4及び基板41の複素屈折率N
Sは、以下の(4)~(9)となる。なお、n
0、n
1等は、屈折率であり、k
1、k
2等は消衰係数であり、iは虚数単位である。
【0061】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【0062】
また、層LY1~層LY4において、各層LYの物理的膜厚tj(jは1~4)を用いると、各層LYの光学的膜厚dj(jは1~4)は、以下の(10)式となる。
【0063】
【0064】
さらに、光学的膜厚djを用いて、透明な膜42の光学的界面位置pj、j+1(jは1~4)を算出する。各層LYの界面及び層LY4と基板41との界面の光学的界面位置pj、j+1(jは1~4)は、以下の(11)式となる。ここで、界面(0、1)は、透明な膜42の上面、すなわち、層LY1の上面である。界面(1、2)は、層LY1と層LY2との界面である。界面(2、3)は、層LY2と層LY3との界面である。界面(3、4)は、層LY3と層LY4との界面である。界面(4、5)は、層LY4と基板41との界面である。
【0065】
【0066】
このようにして算出した光学的界面位置pj、j+1における振幅のZ依存性関数と、光学的界面位置pj、j+1における透明な膜42のフレネル係数と、の積より、Z依存フレネル係数を導入する。
【0067】
次に、Z依存フレネル係数の導入の詳細を説明する。
図9は、実施形態に係る段差測定方法のZ依存フレネル係数の導入を例示したフローチャートである。
図10は、実施形態に係る段差測定方法のZ依存フレネル係数の導入において、光学的膜厚を例示した図である。
図11は、実施形態に係る段差測定方法のZ依存フレネル係数の導入において、光学的界面位置を例示した図である。
図12は、実施形態に係る段差測定方法のZ依存フレネル係数の導入において、フレネル係数を例示した図である。
図13は、実施形態に係る段差測定方法のZ依存フレネル係数の導入において、Z依存フレネル係数を例示した図である。
【0068】
図9のステップS31に示すように、透明な膜42の物理的膜厚及び屈折率を用いて、透明な膜42の光学的膜厚d
jを算出する。
図10に示すように、層LY1~LYLの光学的膜厚d
1~d
Lは、以下の(12)式~(15)式となる。(14)式は、一般化した式である。
【0069】
【0070】
ここで、界面(j-1、j)における入射角をθj-1、屈折角をθjとすると、入射角度因子βj、入射角度平均<βj>は、下記の(16)式及び(17)式となる。なお、入射角度因子βj及び入射角度平均<βj>は、後述するが、入射角度平均<βj>は、対物レンズ17のNAに関して、入射角0[radian]~NAまでの平均を示している。
【0071】
【0072】
次に、
図9のステップS32に示すように、光学的膜厚d
jを用いて光学的界面位置p
j、j+1を算出する。光学的界面位置p
j、j+1は、屈折による膜厚変化を考慮した界面位置である。
図11に示すように、透明な膜42の上面p
0、1、すなわち、層LY1の光学的界面位置p
0、1は、以下の(18)式のように、p
0、1=0である。よって、実際の上面と同じ面となっている。層LY1と層LY2との光学的界面位置p
1、2、層LY2と層LY3との光学的界面位置p
2、3、層LYjと層LYj+1との光学的界面位置p
j、j+1、層LYLと基板41との光学的界面位置p
L、Sは、以下の(19)~(22)式となる。
【0073】
【数18】
【数19】
【数20】
【数21】
【数22】
【0074】
次に、
図9のステップS33に示すように、フレネル係数を算出する。
図12に示すように、透明な膜42の上面p
0、1、すなわち、層LY1の上面p
0、1におけるフレネル係数r
0、1は、以下の(23)式のようになる。層LY1と層LY2との光学的界面位置p
1、2におけるフレネル係数r
1、2、層LY2と層LY3との光学的界面位置p
2、3におけるフレネル係数r
2、3、層LYjと層LYj+1との光学的界面位置p
j、j+1におけるフレネル係数r
j、j+1、層LYLと基板41との光学的界面位置p
L、Sにおけるフレネル係数r
L、Sは、以下の(24)~(27)式となる。
【0075】
【数23】
【数24】
【数25】
【数26】
【数27】
【0076】
次に、
図9のステップS34に示すように、光学的界面位置におけるフレネル係数と、光学的界面位置でのZ依存性関数との積より、Z依存フレネル係数を導入する。
図13に示すように、透明な膜42の上面p
0、1、すなわち、層LY1の光学的界面位置p
0、1におけるZ依存フレネル係数r
0、1(Z)は、以下の(28)式のようになる。層LY1と層LY2との光学的界面位置p
1、2におけるZ依存フレネル係数r
1、2(Z)、層LY2と層LY3との光学的界面位置p
2、3におけるZ依存フレネル係数r
2、3(Z)、層42jと層42j+1との光学的界面位置p
j、j+1におけるZ依存フレネル係数r
j、j+1(Z)、層LYLと基板41との光学的界面位置p
L、SにおけるZ依存フレネル係数r
L、S(Z)は、以下の(29)~(27)式となる。
【0077】
【数28】
【数29】
【数30】
【数31】
【数32】
【0078】
このように、各光学的界面位置の複素フレネル係数rを計算し、フレネル係数の絶対値|r|と、位相項e(iΦ)に一旦分離する。そして、絶対値項にZ依存性関数F(Z)を導入する。位相項はそのままとする。このようにして、従来のフレネル係数rに対して、新たなZ依存フレネル係数r(Z)を定義する。
【0079】
(シフト量の決定:ステップS15)
次に、
図4のステップS15に示すように、シフト量を決定する。処理部30は、各光学的界面位置のZ依存フレネル係数を全て合成した、全体構造の合成Z依存フレネル係数r‘
0、1(Z)の絶対値の二乗より算出された反射率が、光軸方向においてピークを示す位置からシフト量を決定する。
【0080】
図14は、実施形態に係る段差測定方法のシフト量の決定を例示したフローチャート図である。シフト量を決定するために、まず、
図14のステップS41に示すように、合成フレネル係数を算出する。
図15は、実施形態に係る段差測定方法のZ依存フレネル係数の合成を例示した図である。
図15に示すように、透明な膜42の上面p
0、1、すなわち、層LY1の光学的界面位置p
0、1におけるZ依存フレネル係数r‘
0、1(Z)は、以下の(33)式に示すように、下層の光学的界面位置p
1、2のZ依存フレネル係数r‘
1、2を用いて合成したものとなっている。層LY1と層LY2との光学的界面位置p
1、2におけるZ依存フレネル係数r‘
1、2(Z)は、以下の(34)式に示すように、下層の光学的界面位置p‘
2、3を用いて合成したものとなる。以下、層LYjと層LYj+1との光学的界面位置p
j、j+1におけるフレネル係数r‘
j、j+1(Z)は、以下の(35)式に示すように、下層のr‘
j+1、j+2を用いて合成したものとなる。層LYLと基板41との光学的界面位置p
L、SにおけるZ依存フレネル係数r‘
L、S(Z)は、以下の(36)式に示すように、r
L、S(Z)である。このように、最下層の基板41から最表面まで順番にZ依存フレネル係数を合成する。これにより、透明な膜42全体の構造のZ依存フレネル係数を算出することができる。
【0081】
【0082】
ここで、Δjは、以下の(37)式である。
【0083】
【0084】
δj及びγjは、以下の(38)式及び(39)式である。
【0085】
【0086】
<αj
n>及び<αj
k>は、以下の(40)式及び(41)式であり、位相差及び吸収係数において、入射角に依存する項を角度平均したものであるが、詳細は後述する。
【0087】
【0088】
次に、
図14のステップS42に示すように、合成フレネル係数の絶対値の二乗を算出し、絶対反射率を算出する。
図16は、実施形態に係る段差測定方法の合成された合成フレネル係数の絶対値の二乗より算出された絶対反射率を例示した図である。
図16に示すように、全層の合成フレネル係数の絶対値の自乗で絶対反射率を計算する。構造全体の反射率のZ依存性を計算することにより、IZ曲線を得ることができる。すなわち、各界面の電場振幅(フレネル係数)を合成し、合成した合成フレネル係数の絶対値の自乗から反射率を計算する。輝度Iが最大値Imaxとなる位置pmaxと、光学的界面位置p
0,1との差からシフト量Zdを得ることができる。このようにして、
図14のステップS43に示すように、シフト量Zdを決定する。
【0089】
(補正段差の算出:ステップS16)
次に、
図4のステップS16に示すように、補正段差h
0を算出する。例えば、処理部30は、疑似段差ha及びシフト量Zdより実際の段差を導出する。具体的には、(42)式に示すように、処理部30は、疑似段差haにシフト量Zdを加算する。
【0090】
【0091】
このようにして、試料40の表面における段差h0を測定することができる。
【0092】
次に、本実施形態を具体的に適用した実施例1~5を説明する。実施例1~3は、透明な膜42における各層LYの材料(屈折率)及び厚さが与えられた場合のシフト量Zdの計算例を示す。実施例4及び5では、既知の段差を与えた場合の補正段差h0との比較を示す。
【0093】
(実施例1)
まず、本実施形態の実施例1を説明する。
図17は、実施形態に係る実施例1の試料40aを例示した断面図である。
図18は、実施形態に係る実施例1のIZ曲線を例示したグラフであり、横軸は、Z方向の位置を示し、縦軸(左)は、輝度を示し、縦軸(右)は、各界面のフレネル係数の絶対値を示す。
【0094】
図17に示すように、実施例1の試料40において、ガラス基板41上に形成された透明な膜42は、上方から、窒化シリコン膜を含む層LY1、酸化シリコン膜を含む層LY2、窒化シリコン膜を含む層LY3、及び、酸化シリコン膜を含む層LY4を有している。層LY1、層LY2、層LY3及び層LY4の厚さは、それぞれ、300[nm]、300[nm]、100[nm]及び100[nm]である。透明な膜42上には、不透明な膜43として、アルミニウムを含む金属層が形成されている。
【0095】
実施例1の条件として、光学定数は、546[nm]の値を使用する。空気、酸化シリコン、窒化シリコン、及び、ガラスの屈折率は、それぞれ、1、1.4600979、2.03173239、及び、1.5187272である。消衰係数kは、いずれの材料も0である。IZ曲線としてローレンツ関数で近似し、パラメータA、B及びCは、それぞれ、1、pi、j+1及び0.55である。測定パラメータとして、対物レンズのNAは0.9であり、照明光の波長は、546[nm]である。
【0096】
図18に示すように、合成したZ依存フレネル係数の絶対値の二乗より算出された反射率が、光軸方向においてピークを示す位置は、透明な膜42の上面の位置からシフトしている。シフト量Zdは、-0.17[μm]である。
【0097】
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。
図19は、実施形態に係る実施例2の試料40bを例示した断面図である。
図20は、実施形態に係る実施例2のIZ曲線を例示したグラフであり、横軸は、Z方向の位置を示し、縦軸(左)は、輝度を示し、縦軸(右)は、各界面のフレネル係数の絶対値を示す。
【0098】
図19に示すように、実施例2の試料40において、ガラス基板41上に形成された透明な膜42は、上方から、酸化シリコン膜を含む層LY1、窒化シリコン膜を含む層LY2、酸化シリコン膜を含む層LY3、及び、窒化シリコン膜を含む層LY4を有している。層LY1、層LY2、層LY3及び層LY4の厚さは、それぞれ、300[nm]、300[nm]、100[nm]及び100[nm]である。透明な膜42上には、不透明な膜43として、アルミニウムを含む金属層が形成されている。実施例2の条件は実施例1と同じである。
図20に示すように、シフト量Zdは、-0.48[μm]である。
【0099】
(実施例3)
次に、実施例3を説明する。
図21は、実施形態に係る実施例3の試料40cを例示した断面図である。
図22は、実施形態に係る実施例3のIZ曲線を例示したグラフであり、横軸は、Z方向の位置を示し、縦軸(左)は、輝度を示し、縦軸(右)は、各界面のフレネル係数の絶対値を示す。
【0100】
図21に示すように、実施例3の試料40において、ガラス基板41上に形成された透明な膜42は、上方から、窒化シリコン膜を含む層LY1、酸化シリコン膜を含む層LY2、及び、窒化シリコン膜を含む層LY3を有している。層LY1、層LY2、及び、層LY3の厚さは、それぞれ、300[nm]、400[nm]、及び、100[nm]である。透明な膜42上には、不透明な膜43として、アルミニウムを含む金属層が形成されている。実施例3の条件は実施例1と同じである。
図22に示すように、シフト量Zdは、+0.02[μm]である。
【0101】
(実施例4)
次に、実施例4を説明する。
図23は、実施形態に係る実施例4の試料40dを例示した断面図である。
図24は、実施形態に係る実施例4のIZ曲線を例示したグラフであり、横軸は、Z方向の位置を示し、縦軸(左)は、輝度を示し、縦軸(右)は、各界面のフレネル係数の絶対値を示す。
【0102】
図23に示すように、実施例4の試料40において、シリコン基板41上に形成された透明な膜42は、酸化シリコン膜を含む層LY1を有している。層LY1の厚さ、すなわち実際の段差を別の方法で測定した結果は、395[nm]である。本実施形態の共焦点光学系20で実際に測定した疑似段差haは、0.226[μm]である。シフト量の計算結果は、-0.18[μm]である。したがって、疑似段差ha及びシフト量Zdより導出された段差は、0.406[μm]である。この値と、実際の段差の395[μm]との差は、+0.011[μm]であるので良好な一致である。この実施例では、段差の上段がZdだけシフトし、下段はシフトしないので、h0=ha-Zdとする。従って、h0=0.226-(-0.18)=0.406となる。
【0103】
(実施例5)
次に、実施例5を説明する。
図25は、実施形態に係る実施例5のIZ曲線を例示したグラフであり、横軸は、Z方向の位置を示し、縦軸(左)は、輝度を示し、縦軸(右)は、各界面のフレネル係数の絶対値を示す。
【0104】
実施例5の試料の構成は、実施例4の試料と同様に、シリコン基板41上に酸化シリコン膜を含む層LY1を有している。層LY1の厚さ、すなわち、実際の段差を別の方法で測定した結果は、実施例4と異なり、993[nm]である。本実施形態の共焦点光学系20で実際に測定した疑似段差haは、0.457[μm]である。シフト量Zdの計算結果は、-0.53[μm]である。したがって、疑似段差ha及びシフト量Zdより導出された段差は、0.987[μm]である。この値と、実際の段差の993[μm]との差は、+0.006[μm]であるので良好な一致である。上記と同様に、段差の上段がZdだけシフトし、下段はシフトしないので、h0=ha-Zdとしている。従って、h0=0.457-(-0.53)=0.987となる。
【0105】
(<β
j>の計算)
次に、前述した<β
j>の計算、<α
j
n>の計算、及び、<α
j
k>の計算を説明する。まず、β
jに関する(17)式を導く。
図26は、実施形態に係る平均入射角度因子を導くための説明図である。
図26に示すように、入射角をθ
j-1、屈折角をθ
jとする。物理的膜厚t
jを有する層の屈折率をn
jとし、その層の上方及び下方の層の屈折率をn
j-1、n
j+1とする。対物レンズの開口数をNAとする。そうすると、下記の(43)式及び(44)式が成り立つ。
【0106】
【0107】
したがって、以下のように、(17)式が導かれる。界面への入射角は、0~θj-1
mまで含まれるので、βjを、以下の(40)式に示すように角度平均<βj>にすることができる。
【0108】
【0109】
(<α
j
n>の計算)
次に、<α
j
n>の計算を説明する。
図27は、実施形態に係る平均位相差を導くための説明図である。
図27に示すように、層の上面反射の光学距離及び層の下面反射の光学距離は、以下の(46)式及び(47)式になる。
【0110】
【0111】
そうすると、入射角による膜の上面と下面の光路差による位相差は、下記の(48)式及び(49)式となる。
【0112】
【0113】
入射角依存する項を角度平均し、以下の(50)式に示すように、平均位相差とすることができる。
【0114】
【0115】
(<α
j
k>の計算)
次に、<α
j
k>の計算を説明する。
図27に示すように、以下の(51)式が成り立つ。
【0116】
【数51】
入射角による層内を通過する行路長による吸収は、以下の(52)式になる。
【数52】
【0117】
入射角依存する項を角度平均し、(53)式に示すように、平均吸収とすることができる。
【0118】
【0119】
次に、本実施形態の効果を説明する。
本実施形態では、共焦点光学系20によって測定された透明な膜42を含む試料40の表面の疑似段差haを、Z依存フレネル係数を用いて算出したシフト量Zdによって補正することができる。これにより、透明な膜42を含む試料40の表面の段差を、精度良く測定することができる。
【0120】
多層膜構造の各界面からの振幅反射にZ依存性を導入している。これにより、多層膜内部の多重反射と干渉効果を考慮し、最大輝度のZ方向における位置を予測することができる。よって、疑似段差haと実際の段差h0との間のシフト量Zdを精度良く算出することができ、段差h0を精度良く測定することができる。
【0121】
Z依存フレネル係数は、輝度とZ方向における位置との関係を示すZ依存性関数を含んでいる。よって、Z方向の位置に依存させることができ、シフト量Zdを算出することができる。
【0122】
透明な膜42の膜厚測定に、6波長の照明光を用いた全焦点画像より求める方法を用いている。これにより、精度よく膜厚を測定することができる。なお、本実施形態で用いた膜厚測定方法では、焦点深度に対して、充分に薄い膜が好ましい。そして、疑似段差を高NAの対物レンズで測定し、低NAの対物レンズで膜厚測定することが好ましい。
【0123】
IZ曲線として、ローレンツ関数を用いている。Z依存性関数として、ローレンツ関数の平方根を用いている。よって、測定されたIZ曲線を良好にフィッティングすることができる。
【0124】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例として、膜厚測定方法を説明する。
図28は、実施形態の変形例に係る段差測定方法及び膜厚測定方法と、対物レンズのNAとの関係を例示した図である。
図29は、実施形態の変形例に係る膜厚測定を例示した説明図である。
【0125】
図28に示すように、実施形態の段差測定方法は、共焦点光学系の原理に基づいており、比較的高NAの対物レンズを用いている。これにより、透明な膜が多層積層された多層膜を含む試料40の表面の疑似段差を測定する。そして、Z依存フレネル係数から算出されるシフト量を用いて段差を測定することができる。
【0126】
一方、膜厚測定は、反射分光の原理に基づいており、高NAの対物レンズを用いてもよいし、低NAの対物レンズを用いてもよい。膜厚測定は、反射率を計算し、フレネル係数、または、高NAの対物レンズの場合には、フレネル係数を改良して、膜厚を測定することができる。
【0127】
図29に示すように、膜厚を解析する第1の方法は、既知情報として、実段差、測定値として、疑似段差、参照値として、シフト量を用いる。そして、膜厚をパラメータとしてシフト量を計算し、シフト量が一致するように膜厚を決定する。このように、第1の方法は、実施形態の段差測定とは逆の手法を用い、実段差と疑似段差より膜厚を測定することができる。
【0128】
膜厚を解析する第2の方法は、測定値として、XZ断面測定により求めたIZ曲線、参照値として、IZ曲線を用いる。そして、測定したIZ曲線が、あらかじめ求められたIZ曲線と一致するように膜厚を決定する。
【0129】
共焦点顕微鏡の測定モードにXZ断面測定がある。この測定では、画面のX方向の輝度データをZスキャンし、横軸をX方向にし、縦軸をZ方向にした場合の輝度をグレースケールで画面に表現する。任意の点Xについて、Z座標と輝度Iをプロットしたものは、実測IZ曲線である。測定した実測IZ曲線に対して、シミュレーションした計算IZ曲線をフィッティングさせることで、膜厚を算出することができる。
【0130】
測定した実測IZ曲線において、Z方向の位置は、相対値であるので、フィッティング時には、Z方向のスライド量もパラメータにしてもよい。また、IZ曲線の形が相似形で合致するように、輝度Iに係数をかけてもよい。測定した実測IZ曲線と、シミュレーションした計算IZ曲線とが相似形になれば、測定した膜の構造及び膜厚は、シミュレーションで用いた膜の構造及び膜厚となっている。
【0131】
このように、第2の方法は、膜厚を測定する際に、反射光の輝度と光軸方向の位置との関係を示すIZ曲線を測定し、透明な膜について想定される複数の膜厚の場合のZ依存フレネル係数を用いてシミュレーションされた反射率の計算IZ曲線を準備し、測定されたIZ曲線に、膜厚をパラメータとして、計算IZ曲線をフィッティングし、透明な膜の膜厚を算出することができる。
【0132】
膜厚を解析する第3の方法は、測定値として、6波長の照明光による反射光の反射率を用い、参照値として、反射率を用いる。そして、膜厚をパラメータとして、Z依存フレネル係数から計算したIZ曲線のピークZに対応する最大輝度を反射率として計算することにより、カーブフィット法で膜厚を測定することができる。
【0133】
膜厚を解析する第4の方法は、測定値として、疑似段差及び6波長の照明光による反射光の反射率を用い、参照値として、反射率を用いる。そして、疑似段差と膜厚を同じ対物レンズでまとめて測定する。
【0134】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。
【符号の説明】
【0135】
1 段差測定装置
10 光源部
11 光源
12 干渉フィルター
13a、13b、13c レンズ
14 スリット
15 ビームスプリッタ
16 振動ミラー
17 対物レンズ
18 ステージ
19 光検出器
20 共焦点光学系
30 処理部
40 試料
41 基板
42 透明な膜
42a、42b、42c、42d 層
43 不透明な膜
140、140a 試料
141 基板
142 絶縁膜
142a、142b、142c、142d、142e、142f 層
143 金属膜
h0 段差
ha 疑似段差
I 輝度
Zd シフト量