(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】流体力学ベアリング
(51)【国際特許分類】
F16C 32/06 20060101AFI20220215BHJP
F02C 7/06 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
F16C32/06 Z
F02C7/06 D
(21)【出願番号】P 2017544644
(86)(22)【出願日】2016-02-23
(86)【国際出願番号】 FR2016050415
(87)【国際公開番号】W WO2016135413
(87)【国際公開日】2016-09-01
【審査請求日】2019-01-30
(32)【優先日】2015-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516247122
【氏名又は名称】サフラン・トランスミッション・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボードウィン,リオネル
(72)【発明者】
【氏名】ギーユモン,マクソンス
(72)【発明者】
【氏名】モレリ,ボリス
(72)【発明者】
【氏名】ビエール,ジュリアン
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-121318(JP,A)
【文献】実開昭61-086535(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/06
F16C 17/18
F02B 39/00
F16C 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体(12)と、シャフト(14)と、前記シャフト(14)を前記支持体(12)に対して画定された長手方向軸(17)を中心として回転させるようにガイドするように構成された
少なくとも1つの流体力学ベアリング(16)とを備え
た、航空機のためのターボ機械(100)であって、
当該流体力学ベアリングが、前記支持体(12)に固定された不動の外側環状ベアリング壁(18)と、前記シャフト(14)に固定され
て前記シャフトと一緒に回転される回転可能な内側環状ベアリング壁(20)とを備え、前記内側環状ベアリング壁(20)が、前記内側環状ベアリング壁(20)と外側環状ベアリング壁(18)との間に環状の空間(22)を設けるように、前記外側ベアリング壁(18)に対向して延在し、
前記外側環状ベアリング壁(18)が、加圧された潤滑剤を前記環状空間(22)に、ロードベアリング流体膜を形成するように供給する少なくとも1つの潤滑剤供給オリフィス(24)を含み、
前記流体力学ベアリング(16)が、前記内側環状ベアリング壁(20)により外側が画定され且つ2つの横断環状壁(31A,31B)により軸方向に画定されたキャビティ(30)を含み、前記2つの横断環状壁(31A,31B)が、前記シャフト(14)および前記内側環状ベアリング壁(20)に固定され、且つ、前記キャビティ(30)の両側に配置されており、
前記内側環状ベアリング壁(20)が、前記キャビティ(30)を前記環状空間(22)に流体接続させる流体接続手段(32)を含み、且つ、
前記流体力学ベアリング(16)は、前記キャビティ(30)を複数のコンパートメント(50,52,70,72,74,82)に分割するように前記内側環状ベアリング壁(20)に接続された仕切り手段(48,68,92,94)をさらに備え、当該シャフトが停止しているときに、当該仕切り手段が、前記コンパートメントの少なくとも1つに収容された潤滑剤の、重力(G)下で前記流体接続手段(32)に向う流れに対する障害物を、内側環状ベアリング壁(20)の角度位置に関係なく形成し、
前記キャビティ(30)が、過渡的な動作段階のための潤滑剤リザーブを形成することを特徴とする、
ターボ機械(100)。
【請求項2】
前記流体接続手段が、複数の潤滑剤流オリフィス(32)を含み、当該潤滑剤流オリフィス(32)が、前記内側環状ベアリング壁(20)を貫通し、且つ、前記長手方向軸(17)を中心に規則的に分布されている、請求項1に記載の
ターボ機械。
【請求項3】
前記シャフト(14)上に、前記シャフト(14)から取り外し可能に取り付けられるためのリング(40)を備え、当該リング(40)が前記内側環状ベアリング壁(20)を、前記2つの横断環状壁(31A,31B)と共に一体化している、請求項1又は2
に記載の
ターボ機械。
【請求項4】
前記仕切り手段が、環状の仕切り壁(48)を備え、当該仕切り壁が前記キャビティ(30)を、前記長手方向軸(17)に沿って前後に配置された2つのコンパートメント(50,52)に分割し、前記仕切り壁が、前記内側環状ベアリング壁(20)により画定された少なくとも1つの開口部(54)を含み、当該開口部(54)が前記流体接続手段(32)に対して周方向にオフセットされている、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のターボ機械。
【請求項5】
前記仕切り手段が、前記横断環状壁(31A,31B)の一方から他方に長手方向に延在する、仕切り壁(68)を含み、当該仕切り壁(68)が前記キャビティ(30)を、前記長手方向軸(17)を中心に分布された複数のコンパートメント(70,72,74)に分割し、前記仕切り壁(68)が前記流体接続手段(32)に対して周方向にオフセットされている、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のターボ機械。
【請求項6】
前記仕切り手段が前記キャビティ(30)を複数のコンパートメント(82)および分配チャネル(84)に分割し、前記コンパートメント(82)が、前記流体接続手段(32)に対して周方向にオフセットされ且つ前記長手方向軸(17)を中心に規則的に分布されており、前記分配チャネル(84)が、各コンパートメント(82)を流体接続手段(32)に接続し、且つ、周方向部分(86)および第1の接続部分(88)を含み、当該周方向部分(86)が、各コンパートメント(82)及び前記流体接続手段(32)に対して同じ側に軸方向にオフセットされており、前記第1接続部分(88)が、それぞれ、前記キャビティの前記コンパートメント(82)を前記分配チャネルの前記周方向部分(86)に接続し、且つ、各コンパートメントの周方向端部(90)に対して角度方向にオフセットされている、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のターボ機械。
【請求項7】
前記流体接続手段(32)が、前記分配チャネル(84)の周方向部分(86)の、前記キャビティ(30)の前記コンパートメント(82)と軸方向に同じ側に配置されている、請求項6に記載の
ターボ機械。
【請求項8】
前記シャフト(14)が前記ターボ機械のアクセサリギヤボックス(108)の一部を形成している、
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のターボ機械。
【請求項9】
シャフト(14)を、支持体(12)に対して画定された長手方向軸(17)を中心として回転させるようにガイドするための流体力学ベアリング(16)であって、
当該流体力学ベアリングが、不動の外側環状ベアリング壁(18)と、回転可能な内側環状ベアリング壁(20)とを備え、前記内側環状ベアリング壁(20)が、前記内側環状ベアリング壁(20)と外側環状ベアリング壁(18)との間に環状の空間(22)を設けるように、前記外側ベアリング壁(18)に対向して延在し、
前記外側環状ベアリング壁(18)が、加圧された潤滑剤を前記環状空間(22)に、ロードベアリング流体膜を形成するように供給する少なくとも1つの潤滑剤供給オリフィス(24)を含み、
前記流体力学ベアリング(16)が、前記内側環状ベアリング壁(20)により外側が画定され且つ2つの横断環状壁(31A,31B)により軸方向に画定されたキャビティ(30)を含み、前記2つの横断環状壁(31A,31B)が、前記内側環状ベアリング壁(20)に固定され、且つ、前記キャビティ(30)の両側に配置されており、
前記内側環状ベアリング壁(20)が、前記キャビティ(30)を前記環状空間(22)に流体接続させる流体接続手段(32)を含み、且つ、
前記流体力学ベアリング(16)は、前記キャビティ(30)を複数のコンパートメントに分割するように前記内側環状ベアリング壁(20)に接続された仕切り手段をさらに備え、当該シャフトが停止しているときに、当該仕切り手段が、前記コンパートメントの少なくとも1つに収容された潤滑剤の、重力(G)下で前記流体接続手段(32)に向う流れに対する障害物を、内側環状ベアリング壁(20)の角度位置に関係なく形成し、
前記キャビティ(30)が、過渡的な動作段階のための潤滑剤リザーブを形成し、
前記仕切り手段が、環状の仕切り壁(48)を備え、当該仕切り壁が前記キャビティ(30)を、前記長手方向軸(17)に沿って前後に配置された2つのコンパートメント(50,52)に分割し、前記仕切り壁が、前記内側環状ベアリング壁(20)により画定された少なくとも1つの開口部(54)を含み、当該開口部(54)が前記流体接続手段(32)に対して周方向にオフセットされている、流体力学ベアリング。
【請求項10】
シャフト(14)を、支持体(12)に対して画定された長手方向軸(17)を中心として回転させるようにガイドするための流体力学ベアリング(16)であって、
当該流体力学ベアリングが、不動の外側環状ベアリング壁(18)と、回転可能な内側環状ベアリング壁(20)とを備え、前記内側環状ベアリング壁(20)が、前記内側環状ベアリング壁(20)と外側環状ベアリング壁(18)との間に環状の空間(22)を設けるように、前記外側ベアリング壁(18)に対向して延在し、
前記外側環状ベアリング壁(18)が、加圧された潤滑剤を前記環状空間(22)に、ロードベアリング流体膜を形成するように供給する少なくとも1つの潤滑剤供給オリフィス(24)を含み、
前記流体力学ベアリング(16)が、前記内側環状ベアリング壁(20)により外側が画定され且つ2つの横断環状壁(31A,31B)により軸方向に画定されたキャビティ(30)を含み、前記2つの横断環状壁(31A,31B)が、前記内側環状ベアリング壁(20)に固定され、且つ、前記キャビティ(30)の両側に配置されており、
前記内側環状ベアリング壁(20)が、前記キャビティ(30)を前記環状空間(22)に流体接続させる流体接続手段(32)を含み、且つ、
前記流体力学ベアリング(16)は、前記キャビティ(30)を複数のコンパートメントに分割するように前記内側環状ベアリング壁(20)に接続された仕切り手段をさらに備え、当該シャフトが停止しているときに、当該仕切り手段が、前記コンパートメントの少なくとも1つに収容された潤滑剤の、重力(G)下で前記流体接続手段(32)に向う流れに対する障害物を、内側環状ベアリング壁(20)の角度位置に関係なく形成し、
前記キャビティ(30)が、過渡的な動作段階のための潤滑剤リザーブを形成し、
前記仕切り手段が前記キャビティ(30)を複数のコンパートメント(82)および分配チャネル(84)に分割し、前記コンパートメント(82)が、前記流体接続手段(32)に対して周方向にオフセットされ且つ前記長手方向軸(17)を中心に規則的に分布されており、前記分配チャネル(84)が、各コンパートメント(82)を流体接続手段(32)に接続し、且つ、周方向部分(86)および第1の接続部分(88)を含み、当該周方向部分(86)が、各コンパートメント(82)及び前記流体接続手段(32)に対して同じ側に軸方向にオフセットされており、前記第1接続部分(88)が、それぞれ、前記キャビティの前記コンパートメント(82)を前記分配チャネルの前記周方向部分(86)に接続し、且つ、各コンパートメントの周方向端部(90)に対して角度方向にオフセットされている、流体力学ベアリング。
【請求項11】
請求項1~
8のいずれか一項に記載のターボ機械の流体力学ベアリング(16)を潤滑させる方法であって、
-前記キャビティ(30)内に予め貯留されている潤滑剤(60)が遠心力下で前記流体接続手段(32)を通過することにより前記環状空間(22)に注入される、少なくとも1つの過渡的な動作段階と、
-加圧された潤滑剤が前記環状空間(22)に各潤滑剤供給オリフィス(24)を通して供給され、前記潤滑剤の一部が前記流体接続手段(32)を通ってキャビティ(30)内に進入する定常運転段階と、を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体力学(流体動圧)ベアリングの分野に関し、特には、航空機ターボ機械のための流体力学ベアリングに関する。
【背景技術】
【0002】
シャフトを支持体に対して回転させるようにガイドするための流体力学ベアリングは、一般的に、前記支持体に固定された外側環状ベアリング壁と、前記シャフトに固定された内側環状ベアリング壁とを備えている。当該内側環状ベアリング壁は、当該内側環状ベアリング壁と前記外側環状ベアリング壁との間に環状空間を提供するように、前記外側環状ベアリング壁に対向して延在している。また、前記外側環状ベアリング壁は、少なくとも1つの潤滑剤供給オリフィスを含み、当該潤滑剤供給オリフィスは、加圧された潤滑剤を前記環状空間に供給して、ロードベアリング流体膜を前記内側環状ベアリング壁と前記外側環状ベアリング壁との間に形成するためのものである。
【0003】
しかし、潤滑剤の不足又は供給不良の場合、ベアリングが「ドライランニング」モードに入る危険性があり、この場合、前記内側環状ベアリング壁と前記外側環状ベアリング壁とが、互いに接触してベアリングを損傷させる危険性がある。
【0004】
この種の状況は、特に、航空機に動力を供給するために使用されるターボ機械で生じる。
【0005】
実際、このようなターボ機械において、潤滑剤は、一般的に、ターボ機械のロータにより駆動されるポンプにより供給される。この目的のために、ポンプは、典型的に、アクセサリギアボックス(頭字語AGBで称され得る)に接続されている。アクセサリギアボックス自体はロータに接続されている。
【0006】
ターボ機械の始動時に、ポンプの動作モードが、内側環状ベアリング壁と外側環状ベアリング壁との間の環状空間内での良好な潤滑剤流を十分に保証しないことが判明する場合がある。
【0007】
このような状況は、具体的には、アクセサリギアボックスの一部を形成しているシャフトを支持する流体力学的ベアリングにて生じ、このタイプのシャフトが特に必要とされるのは、ターボ機械の始動時である。実際、このような始動は、アクセサリギアボックスに接続されたスタータモータにより達成され、そして、ターボ機械のロータを、前述のシャフトを介して回転駆動させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特に、この問題に対処する、簡単で、低コストで有効な解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、シャフトを、支持体に対して画定された長手方向軸を中心に回転をガイドするための流体力学ベアリングを提供する。前記流体力学ベアリングは、不動の外側環状ベアリング壁と、回転可能な内側環状ベアリング壁とを備え、当該回転可能な内側環状ベアリング壁は、前記内側環状ベアリング壁と外側環状ベアリング壁との間に環状の空間を設けるように、前記外側ベアリング壁に対向して延在している。さらに、前記外側環状ベアリング壁は、少なくとも1つの潤滑剤供給オリフィスを含み、この潤滑剤供給オリフィスは、加圧された潤滑剤を前記環状空間に、ロードベアリング流体膜を形成するように供給するためのものである。
【0010】
本発明によれば、前記組立体は、前記内側環状ベアリング壁により外側が画定されたキャビティを含む。また、当該キャビティは、前記内側環状ベアリング壁に固定され、且つ、前記キャビティの両側に配置されている2つの横断環状壁により軸方向に画定されている。また、前記内側環状ベアリング壁は、前記キャビティを前記環状空間に流体接続させる流体接続手段を含む。さらに、前記キャビティは、過渡的な動作段階のための潤滑剤リザーブを形成するように配置されている。
【0011】
定常状態動作において、前記シャフトが回転駆動されると、潤滑回路が、加圧された潤滑剤を環状空間に、各潤滑剤供給オリフィスを介して供給する。従って、潤滑剤の一部が、前記流体接続手段を通って、上述のキャビティ内に進入する。
【0012】
前記シャフトが回転を停止すると、前記キャビティは、潤滑剤のリザーブを構成する。前記キャビティ内に貯留され得る潤滑剤の量は、前記シャフトの角度位置及び傾きに応じて変化する。
【0013】
前記シャフトが回転を再開すると、潤滑剤を前記環状空間に各潤滑剤供給オリフィスを介して供給することにおいて前記潤滑回路が遅延された場合でも、前記キャビティ内に貯留されている可能性のある潤滑剤が、遠心力下で、前記流体接続手段により前記環状空間内に徐々に注入される。前記キャビティから出てきたこの潤滑剤を使用して、前記外側環状ベアリング壁と前記内側環状ベアリング壁との間に薄層を形成し、前記流体力学ベアリングが、少なくともいわゆる「境界」潤滑モードで動作することを可能にする。
【0014】
同一の現象が、加圧された潤滑剤の供給不足を特徴とする全てのタイプの過渡的動作状況において生じる。
【0015】
一般的に、流体力学ベアリングのシージングはこのようにして回避され得る。
【0016】
本発明の最も広い態様によれば、前記シャフトの幾つかの特定の位置により、潤滑剤が前記キャビティ内に保持されることを可能にしない場合がある。しかし、本発明は、多くの状況において、流体力学ベアリングが「境界」潤滑モードで動作するのに十分な量の潤滑剤をキャビティ内に貯留することを可能にする。
【0017】
前記流体接続手段は、好ましくは、複数の潤滑剤流オリフィスを含み、これらの潤滑剤流オリフィスは、前記内側環状ベアリング壁を貫通し、且つ、前記長手方向軸を中心に規則的に分布されている。
【0018】
このような構成が、前記シャフトの回転バランスを最適化している。
【0019】
さらに、前記流体力学ベアリングは、有利には、シャフトから取り外し可能なように前記シャフトに取り付けられたリングを備え、前記リングは、前記内側環状ベアリング壁を、前記横断環状壁と共に一体化している。
【0020】
さらに、前記キャビティは、その内側が、前記シャフトの中実面により画定されている。
【0021】
代替的に、前記リングは、前記キャビティの内側を画定する内側環状リング壁を含み得る。
【0022】
また代替的に、前記内側環状ベアリング壁及び前記横断環状壁は前記シャフトに一体化され得る。
【0023】
さらに、前記流体力学ベアリングは、好ましくは、前記キャビティを複数のコンパートメントに分割するように内側環状ベアリング壁に接続された仕切り手段を備えている。当該仕切り手段は、前記コンパートメントの少なくとも1つに収容されている潤滑剤の、流体接続手段に向かう重力下での流れに対する障害物を形成する。この障害物は、前記シャフトが停止しているときの前記シャフトの角度位置に関係なく形成される。
【0024】
従って、前記仕切り手段は、前記シャフトが停止しているときに、前記シャフトの角度位置に関係なく、潤滑剤が前記キャビティ内に貯留されることを保証する。
【0025】
本発明の第1の好ましい実施形態において、前記仕切り手段は、前記キャビティを前記長手方向軸に沿って前後に配置された2つのコンパートメントに分割する環状の仕切り壁を含む。さらに、前記仕切り壁が少なくとも1つの開口部を含み、当該開口部は、前記内側環状ベアリング壁により画定され、且つ、前記流体接続手段に対して周方向にオフセットされている。
【0026】
各開口部は、前記シャフトが回転駆動されたときに前記キャビティの2つのコンパートメント間に潤滑剤が流れることを可能にし、そして、前記キャビティ内に存在する潤滑剤の全量が前記流体接続手段に達することを可能にする。
【0027】
前記仕切り壁は、好ましくは、前記長手方向軸に対して横断方向に延在する。
【0028】
前記少なくとも1つの開口部は、有利には、前記長手方向軸を中心に規則的に分布された複数の開口部から成る。
【0029】
このような構成が、前記シャフトの回転バランスをさらに最適化している。
【0030】
本発明の第2の好ましい実施形態において、前記仕切り手段は仕切り壁を含み、当該仕切り壁は、前記キャビティを、前記長手方向軸を中心に分布する複数のコンパートメントに分割するように、前記横断環状壁の一方から他方へ長手方向に延在する。また、前記仕切り壁は、前記流体接続手段に対して周方向にオフセットされている。
【0031】
前記仕切り壁は、好ましくは、前記長手方向軸に対して半径方向に延在し、且つ、好ましくは、前記長手方向軸を中心に規則的に分布されている。
【0032】
このような構成が、前記シャフトの回転バランスをさらに最適化している。
【0033】
さらに、前記仕切り壁は、有利には、潤滑剤を保持する前記仕切り壁の性能を最適化するように、少なくとも1つの凹面、好ましくは2つの対向する凹面を有する。
【0034】
好ましくは、前記仕切り壁の個数は前記潤滑剤流オリフィスの個数に等しく、前記仕切り壁は、前記流体力学ベアリングを断面図で見た場合、前記潤滑剤流オリフィスに対して直径方向に対向している。
【0035】
本発明の第3の好ましい実施形態において、前記仕切り手段は前記キャビティを複数のコンパートメントに分割し、これらの複数のコンパートメントは、前記流体接続手段に対して周方向にオフセットされ、且つ、前記長手方向軸を中心に規則的に分布されている。また、前記仕切り手段は前記キャビティを、各コンパートメントを前記流体接続手段に接続する分配チャネルに分割している。前記分配チャネルは、各コンパートメント及び前記流体接続手段に対して同じ側に軸方向にオフセットされている周方向部分を、第1の接続部分と共に含む。当該第1接続部分は、それぞれ、前記キャビティの前記コンパートメントを前記分配チャネルの前記周方向部分に接続し、且つ、各コンパートメントの周方向端部に対して角度方向にオフセットされている。
【0036】
好ましくは、前記流体接続手段は、前記分配チャネルの前記周方向部分の、前記キャビティの前記コンパートメントと軸方向に同じ側に配置される。
【0037】
この特異性により、前記分配チャネルの周方向部分が低位置に配置されるように前記シャフトが水平方向に対して著しく傾けられた場合でも、潤滑剤が前記分配チャネルの周方向部分内に貯留されることが可能になる。
【0038】
本発明は、さらに、支持体と、シャフトと、流体力学ベアリングとを備えた組立体に関し、前記流体力学ベアリングは、前記シャフトが前記支持体に対して画定された長手方向軸を中心に回転することをガイドするためのものである。前記流体力学ベアリングは、前記支持体に固定された外側環状ベアリング壁と、前記シャフトに固定された内側環状ベアリング壁とを含み、当該内側環状ベアリング壁は、前記内側環状ベアリング壁と外側環状ベアリング壁との間に環状空間を設けるように、前記外側環状ベアリング壁に対向して延在している。さらに、前記外側環状ベアリング壁は、加圧された潤滑剤を前記環状空間に供給してロードベアリング流体膜を形成するための、少なくとも1つの潤滑剤供給オリフィスを含む。
【0039】
本発明によれば、前記組立体はキャビティを備え、当該キャビティは、前記内側環状ベアリング壁により外側が画定され、且つ、前記シャフトに固定され且つ前記キャビティの両側に配置された2つの横断環状壁により軸方向に画定されている。前記内側環状ベアリング壁は、前記キャビティを前記環状空間に流体接続させる流体接続手段を含む。さらに、前記キャビティは、過渡的動作段階のための潤滑剤リザーブを形成するように配置されている。
【0040】
本発明は、さらに、特には航空機のためのターボ機械に関し、このターボ機械は、支持体と、シャフトと、上述のタイプの少なくとも1つの流体力学ベアリングとを備えている。前記流体力学ベアリングが前記シャフトの回転のガイドに寄与するように、前記ベアリングの外側環状ベアリング壁が前記支持体に固定され、前記ベアリングの前記内側環状ベアリング壁が前記シャフトに固定されている。
【0041】
好ましくは、前記シャフトは、前記ターボ機械のアクセサリギアボックスの一部を形成している。
【0042】
最後に、本発明は、以上に開示したタイプの流体力学ベアリングを潤滑させる方法に関し、この方法は、
-前記キャビティ内に予め貯留されている潤滑剤が、遠心力下で前記流体接続手段を通過することにより前記環状空間に注入される、少なくとも1つの過渡的な動作段階と、
-加圧された潤滑剤が前記環状空間に各潤滑剤供給オリフィスを通して供給され、前記潤滑剤の一部が前記流体接続手段を通って前記キャビティ内に進入する定常運転段階と、を含む。
【0043】
前記定常運転段階において、各潤滑剤供給オリフィスから出てきた潤滑剤が、ロードベアリング流体膜を前記環状空間内に形成する。
【0044】
前記過渡的動作段階において、前記キャビティから出てきた潤滑剤は、少なくとも、流体力学ベアリングがいわゆる「境界」潤滑モードで動作することを可能にする潤滑剤の薄膜の形成を可能にする。
【0045】
前記過渡的動作段階は、例えば、前記シャフトが回転開始される始動段階である。
【0046】
以下の説明を読むことにより、本発明が、より良好に理解され、本発明のその他の特徴、利点及び特性が明らかになるであろう。この説明を、添付図面を参照して、非限定的な例として提供する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の第1の好ましい実施形態による流体力学ベアリングの断面の部分概略図である。
【
図2】
図1に示した流体力学ベアリングの軸方向断面の部分概略図である。
【
図3】
図1に示した流体力学ベアリングの一部を形成するシャフト及びリングの部分概略正面図である。
【
図4】
図3の面A-Aに沿った、
図3のシャフト及びリングの軸方向断面の部分概略図である。
【
図5】
図3のシャフト及びリングの部分概略側面図である。
【
図6】
図3のシャフト及びリングの、
図5の面B-Bに沿った断面の部分概略図である。
【
図8】
図6と類似の図であり、潤滑剤がリング内に、前記リングの1つの角度位置にて貯留されている様子を示す。
【
図9】
図6と類似の図であり、潤滑剤がリング内に、前記リングの、
図8とは別の角度位置で貯留されている様子を示す。
【
図10】本発明の第2の好ましい実施形態による流体力学ベアリングの一部を形成しているリングの概略斜視図である。
【
図11】
図10のリングの断面の概略図であり、潤滑剤がリング内に、前記リングの1つの角度位置にて貯留されている様子を示す。
【
図12】
図10のリングの断面の概略図であり、潤滑剤がリング内に、
図11とは別の角度位置で貯留されている様子を示す。
【
図13】本発明の第3の好ましい実施形態による流体力学ベアリングの一部を形成しているリングの、
図14の面E-Eに沿った軸方向断面の概略図である。
【
図17】本発明による流体力学ベアリングを備えたターボ機械の部分概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
これらの図の全てにおいて、同一の参照符号は、同一又は類似の要素を示し得る。
【0049】
図1~
図9は、組立体10を示す。組立体10は、支持体12、シャフト14、及び、本発明の第1の好ましい実施形態による流体力学ベアリング16を備えている。ベアリング16は、シャフトの、長手方向軸17を中心した回転をガイドするためにある。本明細書において、長手方向軸17は、実際には、シャフト14の回転軸として定義される。
【0050】
流体力学ベアリング16は、支持体12に固定されている外側環状ベアリング壁18と、シャフト14に固定され、且つ、外側環状ベアリング壁18に対向して延在している内側環状ベアリング壁20とを含む(
図1及び
図2)。従って、環状壁18と環状壁20とは、これらの壁の間に環状空間22を提供している。前記環状壁18及び環状壁20は、好ましくは、軸対称円筒の形状である。
【0051】
外側環状ベアリング壁18は、潤滑剤供給オリフィス24を含む。オリフィス24は、潤滑回路(図示せず)に接続されて環状空間22に加圧潤滑剤を供給するためのものであり、これにより、環状空間22に内にロードベアリング流体膜が公知の方法で形成される。
【0052】
示されている例において、外側環状ベアリング壁18は、支持体12に堅固に取り付けられた耐摩耗性リングから構成されている。
【0053】
本発明の1つの特徴によれば、流体力学ベアリング16は、キャビティ30(
図4,
図6,
図7)を含む。キャビティ30は、内側環状ベアリング壁20により外側が画定され、且つ、シャフト14に固定され且つキャビティ30の両側に配置されている2つの横断環状壁31A,31Bにより、軸方向に画定されている。
【0054】
さらに、内側環状ベアリング壁20は、キャビティ30を環状空間22に流体連通させる流体接続手段32を含む。キャビティ30は潤滑剤リザーブを構成するためのものである。これに関しては、以下に、より明確に説明する。
【0055】
用語「横断壁」(“transverse wall”)は、広い意味で、内側環状ベアリング壁20からシャフトの方向に延在する壁を定義するものとして理解されることに留意されたい。従って、横断環状壁31A、31Bは、半径方向に、すなわち、長手方向軸17に直交して、或いは、前記軸17に対して傾斜されて延在し得る。
【0056】
図示されている実施形態において、流体接続手段は、内側環状ベアリング壁を貫通する複数の潤滑剤流オリフィス32、例えば3つの潤滑剤流オリフィス32を含む。前記潤滑剤流オリフィス32は、好ましくは、長手方向軸17を中心に規則的に分布され、これがシャフト14の回転バランスを最適化している。潤滑剤流オリフィス32は、好ましくは、同一の横断面上に配置され(
図5のB-B参照)、これが、シャフト14の回転バランスをさらに最適化している。
【0057】
或いは、流体接続手段は、単一の潤滑剤流オリフィス32から構成されてもよく、これは本発明の範囲から逸脱しない。
【0058】
さらに、図示されている実施形態において、流体力学ベアリング16は、シャフト14に着脱可能に取り付けられたリング40を備え、前記リング40は、内側環状ベアリング壁20を、2つの横断環状壁31A,31B(
図4)と共に一体化している。
【0059】
或いは、内側環状ベアリング壁20及び横断環状壁31A,31Bをシャフト14に一体化することができ、これは本発明の範囲から逸脱しない。
【0060】
横断環状壁の一方である31Bは、1以上の空気流オリフィス44、例えば3つの空気流オリフィス44を含む。これは、キャビティ30内に収容されている潤滑剤の体積の変動を補償するために、キャビティ30内に収容されている空気の体積の変化を促進するためである。空気流オリフィス44は、好ましくは、長手方向軸17を中心に規則的に分布されている。
【0061】
さらに、
図1~
図12に示されている2つの実施形態において、キャビティ30は、内部がシャフト14の中実面46により画定されている(
図4及び
図6)。
【0062】
さらに、流体力学ベアリング16は、キャビティを複数のコンパートメントに分割するように内側環状ベアリング壁20に接続された仕切り手段を含む。前記仕切り手段は、コンパートメントの少なくとも1つに収容されている潤滑剤の流れ(シャフト14が停止しているときに、シャフトの角度位置に関係なく、重力下で流体接続手段32に向う流れ)に対する障害物を形成するように意図されている。これに関しては、以下に、より明確に説明する。
【0063】
本発明の第1の好ましい実施形態において、仕切り手段は、ほぼ環状の仕切り壁48を含み、仕切り壁48は、キャビティ30を、長手方向軸17に沿って前後に配置された2つのコンパートメント50,52に分割している(
図4、
図6及び
図7)。この説明のために、当該コンパートメントを、本文以下、「前側コンパートメント50」、及び「後側コンパートメント52」と称する。
【0064】
従って、図示されている例において、潤滑剤流オリフィス32は、仕切り壁48に対して同じ側に配置され、従って、オリフィス32の全てが、キャビティ30の前側コンパートメント50と連通している。
【0065】
潤滑剤流オリフィス32が、前側コンパートメント50を画定している横断壁31Aから離隔されていることにも留意されたい。
【0066】
また、仕切り壁48は、例えば、長手方向軸17に対して横断方向に延在する。或いは、その他の環状形状も、仕切り壁48のために可能である。
【0067】
仕切り壁48は、内側環状ベアリング壁20により画定された少なくとも1つの開口部54を含み、開口部54は、各潤滑剤流オリフィス32に対して周方向にオフセットされている。
【0068】
示されている例において、仕切り壁48は3つの開口部54を含む。これらの開口部は長手方向軸17を中心に規則的に分布され、これが、シャフト14の回転バランスを最適化している。さらに、各開口部54は、好ましくは、2つの連続した潤滑剤流オリフィス32から等しい距離に配置されている(
図6)。各開口部54は、例えば、内側環状ベアリング壁20に正接するディスクの一部の形状である。
【0069】
示されている例において、各開口部54は、仕切り壁48の半径方向内端まで延在している。或いは、各開口部54は、仕切り壁48の半径方向内側部分が長手方向軸17の周囲に連続的に延在するように、内側環状ベアリング壁20に接触する仕切り壁48の半径方向外端に形成されたノッチの形状であり得る。
【0070】
一般的に、開口部54の個数が潤滑剤流オリフィス32の個数と異なっていてもよく、これは本発明の範囲から逸脱しない。
【0071】
上述の流体力学ベアリング16は、以下のように動作する。
【0072】
定常状態動作にて、シャフト14が回転駆動されると、潤滑回路が、
図1の矢印F1で示されているように、加圧された潤滑剤を環状空間22に、潤滑剤供給オリフィス24を介して供給する。潤滑剤は、
図2の矢印F2で示されているように、圧力作用下で、環状空間22の軸方向端部を通って慣用的な方法で出ていく。
【0073】
しかし、潤滑剤の一部は、潤滑剤流オリフィス32を通ってキャビティ30内に進入する。
【0074】
この目的のために、潤滑回路は、シャフトの回転駆動の結果として潤滑剤が受ける遠心作用を、外側環状ベアリング壁18及び内側環状ベアリング壁20と接触するときの潤滑剤の粘性により補償するために、潤滑剤の圧力が十分であるように構成される。
【0075】
シャフト14が回転を停止すると、潤滑剤の一部は、
図8及び
図9に示されているように、シャフト14の(従ってリング40の)角度位置に関係なく、キャビティ30の内部に留まる。
【0076】
実際、
図8に示されているように、シャフト14が、潤滑剤流オリフィス32が低位置にあるような角度位置にある場合、キャビティ30の前側コンパートメント50内に存在し得る潤滑剤は、重力Gにより潤滑剤流オリフィス32を通って環状空間22に流入し、そして、環状空間22の軸方向端部を通って排出され得る。しかし、キャビティ30の後側コンパートメント52内に存在し得る潤滑剤60は、仕切り壁48により保持される。用語「低位置」(“low position”)は、時計の文字盤を参照していわゆる「6時」の位置(6時の位置と12時の位置との間に引かれた線は鉛直である)を含むものとして理解されるべきである。
【0077】
さらに、
図9に示されているように、シャフト14が、開口部54が低位置にあるような角度位置にある場合、キャビティ30の2つのコンパートメント50及び52内に存在する潤滑剤60が前記キャビティ内に貯留され得る。
【0078】
上述の2つの状況間の中間の状況においては、潤滑剤がキャビティ30内に貯留される方法は、潤滑剤流オリフィス32と開口部54のうち、低位置に最も近い要素により決定される。従って、低位置に最も近い要素が潤滑剤流オリフィス32である場合、潤滑剤は、後側コンパートメント52においては、低位置に最も近い開口部54の高さに対応する高さまで貯留されることができ、そして、前側コンパートメント50においては、低位置に最も近い潤滑剤流オリフィス32の高さに対応する高さまで貯留され得る。しかし、低位置に最も近い要素が開口部54である場合、潤滑剤は、2つのコンパートメント50及び52において、低位置に最も近い潤滑剤流オリフィス32の高さに対応する高さまで貯留され得る。
【0079】
従って、キャビティ30内に貯留され得る潤滑剤の量は、シャフト14の角度位置に依存する。しかし、この角度位置に関係なく、流体力学ベアリング16の構成は、少なくとも最小限量の潤滑剤がキャビティ30内に貯留され得ることを保証する。
【0080】
潤滑剤流オリフィス32が横断壁31Aから離隔されていることにより、潤滑剤のキャビティ30内での貯留は、シャフト14が水平方向に対して傾けられているとき(少なくとも、空気流オリフィス44がキャビティ30の上に配置されるような向きにシャフト14があるとき)にも可能である。
【0081】
次いで、シャフト14を回転始動させる間、潤滑回路の、潤滑剤供給オリフィス24を介した環状空間22への供給の遅延もあり得る。この場合、キャビティ30に貯留された潤滑剤は、遠心力により、各潤滑剤流オリフィス32を通って環状空間22に徐々に注入される。キャビティ30から出てきた前記潤滑剤は、外側環状ベアリング壁18と内側環状ベアリング壁20との間に潤滑剤の薄層を形成し、流体力学ベアリング16が、少なくとも、いわゆる「境界」潤滑モードで動作することを可能にする。従って、キャビティ30から出てきた潤滑剤は、以前にキャビティ30内に貯留された潤滑剤の全てが消費されるまで、流体力学ベアリングのシージングを防止する。
【0082】
従って、以下のことが観察される、
-各開口部54は、シャフト14が回転駆動されたときに、潤滑剤がキャビティ30の2つのコンパートメント50と52との間を流れることを可能にし、従って、キャビティ30内に存在する潤滑剤の全量が潤滑剤流オリフィス32に到達することを可能にする。
-シャフト14が停止しているとき、仕切り壁48は、キャビティ30内(この場合、キャビティ30の後側コンパートメント52内)に収容された潤滑剤の流れ(重力により潤滑剤流オリフィス32の任意の1つに向かう流れ)に対する障害物を形成する。
【0083】
潤滑剤流オリフィス32が、前側コンパートメント50に開口されたオリフィスと、後側コンパートメント52に開口され、且つ前側コンパートメント50に開口されたオリフィスに対して周方向にオフセットされたその他のオリフィスとを、本発明の範囲から逸脱せずに代替的に含み得ることに留意されたい。この場合、シャフト14が停止状態にあり、且つ、潤滑剤流オリフィス32のうちの1つが低位置にあるとき、潤滑剤は、少なくとも、前記オリフィスが開口されているコンパートメントではないコンパートメント内に貯留され得る。
【0084】
図10~
図12に示されている本発明の第2の好ましい実施形態において、仕切り手段は仕切り壁68を含む。仕切り壁68は、横断環状壁の一方31Aから他方31Bに長手方向に延在し、これにより、キャビティ30を、長手方向軸を中心に分布された(すなわち、周方向にて端から端に配置された)複数のコンパートメント70,72,74に分割している。仕切り壁68は、各潤滑剤流オリフィス32に対して周方向にオフセットされている。
【0085】
図示されている例において、3つの仕切り壁68と、これと同数の、前記壁が画定しているコンパートメント70,72,74、及び、同数の潤滑剤通路オリフィス32が存在している。
【0086】
潤滑剤流オリフィス32は、3つのコンパートメント70,72,74にそれぞれ開口されるように、長手方向軸17を中心に規則的に分布されている。
【0087】
仕切り壁68は、好ましくは、各潤滑剤流オリフィス32が2つの連続した仕切り壁68から角度方向に等しい距離にあるように配置されている。
【0088】
好ましい例として、各仕切り壁68は半径方向に延在している。これが、前記壁の、潤滑剤を保持する能力を最適化し、さらに、シャフト14の回転バランスを容易にしている。しかし、或いは、仕切り壁68が半径方向に対して傾けられることもでき、これは、本発明の範囲から逸脱しない。
【0089】
さらに、仕切り壁68の各々は、シャフト14から離間された半径方向内端76を有する。これは、リング40の取り外しに加えて、リング40をシャフト14上に組み付けることも容易にする。或いは、仕切り壁68の各々の半径方向内側端76をシャフト14と接触させることもでき、これは、本発明の範囲から逸脱しない。
【0090】
さらに、仕切り壁68の各々は、好ましくは、凹状の断面を有する対向する2つの面78を有し、これが、各仕切り壁が潤滑剤を収容する能力をさらに最適化する。これに関しては、以下にさらに明確に説明する。
【0091】
第2の実施形態による流体力学ベアリング16の動作は、以上に開示した第1実施形態による流体力学ベアリング16の動作と全体的に類似している。
【0092】
具体的には、
図11及び
図12に、シャフト14が回転停止したときに、シャフト14(及び、従ってリング40)の角度位置に関係なく、潤滑剤の一部がキャビティ30内にどのように残されるかが示されている。
【0093】
従って、シャフト14が、
図11に示されているような潤滑剤流オリフィス32が低位置に配置されるような角度位置にある場合、前記オリフィスが開口されているコンパートメント70内に存在し得る潤滑剤は、重力G下で前記オリフィスを通って環状空間22に流れ込み、次いで、環状空間22の軸方向端部を通って排出され得る。しかし、キャビティ30のその他の2つのコンパートメント72,74内に存在する潤滑剤60は、それぞれ前記2つのコンパートメント72及び74をコンパートメント70から分離している2つの仕切り壁68により保持される。潤滑剤の保持は、シャフト14が前記角度位置にあるときに増大される。これは、仕切り壁68の面78が、
図11に示されているように凹状の断面を有するという事実による。
【0094】
しかし、シャフト14の角度位置が、
図12に示されているように、潤滑剤流オリフィス32が全て低位置から離隔されているような位置である場合、最低位置のキャビティ30の2つのコンパートメント70,72内に存在する潤滑剤60は、前記2つのコンパートメント70及び72内に貯留され得る。
【0095】
キャビティ30内に貯留され得る潤滑剤の量も、シャフト14の角度位置に依存する。この角度位置に関係なく、流体力学ベアリング16の構成は、少なくとも最小量の潤滑剤がキャビティ30内に貯留されることを保証する。
【0096】
シャフト14が停止しているときに、各仕切り壁68が、キャビティ30内に収容された潤滑剤の流れ(重力による、潤滑剤流オリフィス32の1つに向かう流れ)に対する障害物を形成し得ることも、明確に観察される。
【0097】
図13~
図16は、本発明の第3の好ましい実施形態による流体力学ベアリングの一部を形成しているリング40を示す。前記流体力学ベアリングは、以上に開示した流体力学ベアリングと全体的に類似しているが、リング40の構成が異なる。
【0098】
前記リング40は、内側環状リング壁80を含み、リング壁80は、内側環状ベアリング壁20から離間して配置され、且つ、その内部に環状キャビティ30を画定している。
【0099】
さらに、仕切り手段が、キャビティ30を複数のコンパートメント82に分割している。コンパートメント82は、流体接続手段32に対して周方向にオフセットされ、且つ、好ましくは、長手方向軸17を中心に規則的に分布されている。また、仕切り手段は、キャビティ30を、各コンパートメント82を流体接続手段32に接続する分配チャネル84に分割している。
【0100】
分配チャネル84は、各コンパートメント82及び流体接続手段32に対して同じ側に軸方向にオフセットされている周方向部分86を、第1の接続部分88と共に含む。第1接続部分88は、それぞれ、コンパートメント82を周方向部分86に接続し、且つ、各コンパートメント82の周方向端部90に対して角度方向にオフセットされている。
【0101】
図示されている例において、第1接続部分88は、長手方向に沿って延在している。
【0102】
さらに、流体接続手段は、直径方向に互いに対向している2つの潤滑剤流オリフィス32を含む。
【0103】
さらに、例えば6つのコンパートメント82が存在する。
【0104】
そして、仕切り手段は、長手方向仕切り壁92を含む。仕切り壁92は、コンパートメント82の間に延在し、且つ、コンパートメント82の周方向端部90を画定している。また、仕切り手段は、環状の仕切り壁94を含む。仕切り壁94は、分割チャネル84の周方向部分86とコンパートメント82との間に延在し、且つ、複数の環状セクタ96に分割されている。セクタ96は、第1接続部分88により、そして、分配チャネル84の一部を形成している第2の接続部分98により、互いに離間されている。前記第2の接続部分98は、それぞれ、潤滑剤流オリフィス32を、分配チャネル84の周方向部分86に接続している。
【0105】
潤滑剤流オリフィス32の各々は、周方向に連続している2つのコンパートメント82間に配置され、従って、対応する長手方向仕切り壁92内に延在している。
【0106】
従って、潤滑剤流オリフィス32は、分配チャネル84の周方向部分86の、コンパートメント82と軸方向に同じ側に配置される。この特異性により、分配チャネル84の周方向部分86が少なくとも部分的に低位置に配置されるように、シャフト14が水平方向に対して著しく傾けられた場合も、潤滑剤が少なくとも1つの分配チャネル84の周方向部分86内に貯留されることが可能にされる。
【0107】
第3の好ましい実施形態にて提示されたリング40を、付加的な製造技術(例えば、レーザ融着又は電子ビーム溶解)を用いて製造できる。
【0108】
第3の実施形態による流体力学ベアリングの動作は、上述の第2の実施形態による流体力学ベアリングの動作と全体的に類似している。
【0109】
停止時において、シャフト14の角度位置に関係なく(水平方向に対するシャフト14の傾きが、少なくともゼロ又は低値に維持される限りにおいて)、潤滑剤がコンパートメント82の少なくとも1つ内に、また、前記コンパートメント82の各々にも貯留され得ることが、
図13~
図16に示した特定の例を参照することにより明確に観察される。シャフト14が大幅に傾けられた場合、(具体的には、分配チャネル84が低位置に配置されるようにシャフト14がほぼ鉛直方向にある場合、潤滑剤は、分配チャネル84内に(及び、可能性として、コンパートメント82に)、潤滑剤流オリフィス32の軸方向位置に対応する高さまで貯留され得る。
【0110】
図17は、航空機のためのターボ機械100(例えば、デュアルフロージェットエンジン)を示す。ターボ機械100は、一般的に、空気流を吸い込むためのファン102を備え、空気流は、ファンの下流で、ターボ機械のコア104に供給される主流と、前記コアを迂回する副流とに分割される。ターボ機械のコアは、一般的に、低圧コンプレッサ、高圧コンプレッサ、燃焼チャンバ、高圧タービン、及び、低圧タービンを含む。ターボ機械100のロータは、ターボ機械の長手方向軸106を中心に回転するように取り付けられている。
【0111】
ターボ機械100は、詳細には、アクセサリギアボックス(AGB)108を含み、アクセサリギアボックスは、ターボ機械のメインロータシャフトにパワーテイクオフ110により連結された内部シャフト(図示せず)を含む。
【0112】
内部シャフトは、例えば、アクセサリギアボックス108のケーシングに取り付けられ、この取り付けは、それぞれシャフトの軸方向端部の高さに配置されている2つのローラーベアリングと、シャフトの前記軸方向端部間に配置されている上記開示したタイプの1つの流体力学ベアリングとを用いて行われる。
【0113】
ケーシング、シャフト及び流体力学ベアリングが、以上に開示したタイプの組立体10を形成している。