(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】粒子線治療装置および粒子線治療装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20220215BHJP
【FI】
A61N5/10 M
(21)【出願番号】P 2018023795
(22)【出願日】2018-02-14
【審査請求日】2020-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100118474
【氏名又は名称】寺脇 秀▲徳▼
(74)【代理人】
【識別番号】100141911
【氏名又は名称】栗原 譲
(72)【発明者】
【氏名】石山 洋
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 裕司
(72)【発明者】
【氏名】松井 健太郎
【審査官】安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-531289(JP,A)
【文献】特開2016-077763(JP,A)
【文献】特開2004-000520(JP,A)
【文献】特開2016-031553(JP,A)
【文献】特開2015-112495(JP,A)
【文献】特開2014-113419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に設けられた放射線治療室に荷電粒子線を照射する照射ポートを周回変位させる回転ガントリーを有する粒子線治療装置において、
この回転ガントリーを構成するガントリー胴部と、
このガントリー胴部に設けられた前記照射ポートと
患者が載る治療台の相対位置を計測する位置計測機構を有し、この計測機構で計測された少なくとも1自由度以上の変位を縮小する方向に前記治療台の位置を移動させて制御する移動制御部とを有したことを特徴とする粒子線治療装置。
【請求項2】
前記位置計測機構は、前記照射ポートまたは前記治療台にレーザ変位計及びターゲットを配置することを特徴とする請求項1に記載の粒子線治療装置。
【請求項3】
前記位置計測機構は、前記放射線治療室または壁にレーザ変位計を設け、前記照射ポートおよび/または前記治療台にターゲットを配置することを特徴とする請求項1に記載の粒子線治療装置。
【請求項4】
前記移動制御部は、前記照射ポートと前記治療台の相対位置を基に前記回転ガントリーの回転角度毎にガントリー胴部に設置された偏向磁石により荷電粒子線の照射方向をフィードバック制御する構成を追加することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の粒子線治療装置。
【請求項5】
前記移動制御部は、照射装置と患者が載る前記治療台の相対位置が予め定めた制限値を超えた場合に異常信号を発することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の粒子線治療装置。
【請求項6】
内部に設けられた放射線治療室に荷電粒子線を照射する照射ポートを周回変位させる回転ガントリーを有し、
この回転ガントリーを構成するガントリー胴部と、
このガントリー胴部に設けられた前記照射ポートと
患者が載る治療台を有する粒子線治療装置の制御方法において、
前記照射ポートと前記治療台の相対位置を位置計測機構で計測し、
前記位置計測機構で計測された少なくとも1自由度以上の変位を縮小する方向に前記治療台の位置を移動させて制御することを特徴とする粒子線治療装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、患者の患部に荷電粒子線を照射して治療を行う粒子線治療装置および粒子線治療装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌などの患者の患部に照射目標中心(アイソセンタ)を設定して陽子、炭素イオン等のイオンビーム(荷電粒子線)を照射する粒子線治療技術が広く知られている。
【0003】
例えば、この治療に用いる粒子線治療装置は、イオンビーム発生装置、ビーム輸送系、および回転ガントリーに設置された照射装置を備えている。
【0004】
イオンビーム発生装置で加速されたイオンビームは、ビーム輸送系を経て照射装置に達し、照射装置から患者の患部に照射される。この際、照射装置は回転ガントリーの回転に伴って患者の周りを回転し、治療計画で定められた照射角度に基づいて患部にイオンビームを照射することが可能である。このイオンビームによる患部近傍の正常な組織の障害を少なくするために、イオンビームを患部に正確に照射する必要がある。このためには、粒子線照射部の位置決め、及び、この粒子線照射部に対する患者患部の位置合わせを正確に実施することが重要となる。
【0005】
一般に、回転ガントリーは回転に伴い、回転軸と平行の方向に移動する挙動が知られており、照射位置の三次元的な振れ回り精度の悪化要因の1つとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-113419号公報
【文献】特開2016-031553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術の回転ガントリーでは、回転軸と平行の挙動の抑制が充分でないと照射装置から照射目標中心に照射する際の照射位置の三次元的な振れ回り精度(照射目標中心精度)が、回転ガントリーの回転に伴い、数mm程度のばらつきを持つ可能性があった。その結果、治療照射の際に照射角度によっては患者の位置決めに多大な時間を要するという課題があった。
【0008】
本発明の目的は、照射目標中心精度を高くすることができる粒子線治療装置および粒子線治療装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本実施形態に係る粒子線治療装置は、内部に設けられた放射線治療室に荷電粒子線を照射する照射ポートを周回変位させる回転ガントリーを有する粒子線治療装置において、この回転ガントリーを構成するガントリー胴部と、このガントリー胴部に設けられた前記照射ポートと患者が載る治療台の相対位置を計測する位置計測機構を有し、この計測機構で計測された少なくとも1自由度以上の変位を縮小する方向に前記治療台の位置を移動させて制御する移動制御部とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本実施形態に係る粒子線治療装置の制御方法は、内部に設けられた放射線治療室に荷電粒子線を照射する照射ポートを周回変位させる回転ガントリーを有し、この回転ガントリーを構成するガントリー胴部と、このガントリー胴部に設けられた前記照射ポートと患者が載る治療台を有する粒子線治療装置の制御方法において、前記照射ポートと前記治療台の相対位置を位置計測機構で計測し、前記位置計測機構で計測された少なくとも1自由度以上の変位を縮小する方向に前記治療台の位置を移動させて制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態は、照射目標中心精度を高くすることができる粒子線治療装置および粒子線治療装置の制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る粒子線治療装置および粒子線治療装置の制御方法の実施形態を示す斜視図。
【
図2】
図1に示した回転ガントリーの回転軸A-A軸方向で切断した概略縦断面図。
【
図3】
図1に示した粒子線治療装置の実施形態を示す要部拡大縦断面図。
【
図4】本発明に係る粒子線治療装置の第2実施形態を示す要部拡大縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施形態を
図1から
図3を参照して説明する。
【0014】
図1は、粒子線治療装置14の斜視図を示し、
図2に
図1に示した回転ガントリー11の回転軸A-A軸方向で切断した概略縦断面図を示す。
【0015】
図1において粒子線治療装置14は、放射線治療室15に荷電粒子線(重粒子線、陽子線等)を照射する照射ポート4を周回変位させ加速粒子線を任意の位置から照射させる回転ガントリー11と、この放射線治療室15において治療台5を移動させその位置及び方向を設定する移動制御部17と、照射ポート4の側方に基端が支持されるアーム6を、備えている。
【0016】
そして、この粒子線治療装置14は、本体胴(ガントリー胴部)1、搭載磁石(偏向磁石)2、磁石サポート3、照射ポート4、治療台5、エンドリング8、カウンターウェイト9、ターニングローラ10を有している。
【0017】
前記本体胴1は、内部が放射線治療室15であり、照射ポート4を収容し、外部に偏向磁石を含む搭載磁石2、磁石サポート3、カウンターウェイト9が設置されている。また、前記本体胴1と接続されているエンドリング8が架台12に設置されたターニングローラ10と接触回転し、荷電粒子線が任意の角度位置から治療台5上の患者13(
図3参照)に照射される構成となっている。
【0018】
搭載磁石(偏向磁石)2は磁石サポート3により前記本体胴1と接続されており、荷電粒子線を照射ポート4まで導く機能を有している。
【0019】
カウンターウェイト9は本体胴1の回転体としての重量バランスを保つために搭載磁石2の回転軸(A―A軸)方向として対象の位置すなわち回転軸方向で逆側に配置される重りである。
【0020】
図2の回転ガントリー11の回転軸方向で切断した概略縦断面図で示すように、回転軸A―Aと平行に回転ガントリー11の回転に伴い回転ガントリー11が移動する挙動が知られている。
【0021】
図3の回転ガントリー11の回転軸方向で切断した放射線治療室15の縦断面図で示すように、レーザ変位計7およびターゲット16が計測される自由度および場所に応じて1つまたは複数個、照射ポート4と治療台5に設けられている。
【0022】
このレーザ変位計7は授受されるレーザ18によって照射ポート4と治療台5の1自由度以上の相対変位を計測し、計測された相対変位を基に移動制御部17が照射目標とのずれを縮小する方向に治療台5の位置をフィードバック制御する。また、照射目標とのずれを縮小する方向に、相対位置を基に回転ガントリー11の回転角度毎に偏向磁石2により照射ポート4から照射される荷電粒子線の照射方向をフィードバック制御するようにしても良く、この治療台5の位置と荷電粒子線の照射方向の双方をフィードバック制御するようにしても良い。
【0023】
また、この移動制御部17は照射ポート4と患者が載る前記治療台5の相対位置が予め定められた制限値を超えた場合に異常信号を発信して操作者がその異常をスピーカ等によって確認できるようにしても良い。
【0024】
よって本実施形態によれば、レーザ変位計7によって照射ポート4と治療台5の1自由度以上の相対変位を求め、移動制御部17によって、この計測された1自由度以上の変位を縮小する方向に治療台5の位置および/または照射ポート4から照射される荷電粒子線を移動させて制御するので、照射目標中心精度を高くすることができる。
【0025】
(第2実施例)
以下、本発明の第2実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、
図1および
図2の構成は同一であるので構成の説明を省略し、
図4を参照して以下説明する。なお、
図4において、
図3と同一部分には同一符号を付してその部分の構成の説明は省略する。
【0026】
図4は、本発明の第2実施形態を回転ガントリー11の回転軸方向で切断した放射線治療室15の要部拡大縦断面図である。
【0027】
図4で示すように、壁または治療室等の固定部に設置されたレーザ発信器19から照射されたレーザ18を、照射ポート4または治療台5に、計測される自由度および場所に応じて1つまたは複数個設けられたターゲット16により受光し、レーザ発信器19とターゲット16の計測位置から照射ポート4と治療台5の1自由度以上の相対変位を計測する。そして、計測された相対変位を基に移動制御部17によって、照射目標とのずれを縮小する方向に照射ポート4から照射される粒子線および/または治療台5の位置をフィードバック制御する。
【0028】
よって本実施形態によれば、レーザ発信器19とターゲット16の計測位置から照射ポート4と治療台5の1自由度以上の相対変位を計測し、移動制御部17によって、この計測された1自由度以上の変位を縮小する方向に治療台5の位置および/または照射ポート4から照射される荷電粒子線を移動させて制御するので、照射目標中心精度を高くすることができる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0030】
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
【0031】
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0032】
1…本体胴(ガントリー胴部)、2…搭載磁石(偏向磁石)、3…磁石サポート、4…照射ポート、5…治療台、6…アーム、7…レーザ変位計、8…エンドリング、9…カウンターウェイト、10…ターニングローラ、11…回転ガントリー、12…架台、13…患者、14…粒子線治療装置、15…放射線治療室、16…ターゲット、17…移動制御部、18…レーザ、19…レーザ発信器、A…回転軸。