(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法、並びにゲートシール
(51)【国際特許分類】
B32B 15/082 20060101AFI20220215BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20220215BHJP
C25D 11/16 20060101ALN20220215BHJP
【FI】
B32B15/082 B
C09K3/10 R
C25D11/16 301
(21)【出願番号】P 2018052314
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2017066654
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 勝通
(72)【発明者】
【氏名】木下 ひろみ
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-532808(JP,A)
【文献】特開平04-331150(JP,A)
【文献】特開平06-100716(JP,A)
【文献】特開平08-118561(JP,A)
【文献】特開平05-124168(JP,A)
【文献】特開2010-155443(JP,A)
【文献】特開平05-177765(JP,A)
【文献】特開2008-119894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケミカルエッチング表面を有する金属基材と、
前記ケミカルエッチング表面に接して積層されるフッ素樹脂層の表面に接して積層されるフルオロエラストマー層と、を含む、積層体。
【請求項2】
ケミカルエッチング表面に対して陽極酸化処理を施すことにより多孔性を有する陽極酸化皮膜が形成された表面を有する金属基材と、
前記陽極酸化皮膜に接して積層されるフッ素樹脂層の表面に接して積層されるフルオロエラストマー層と、
を含む、積層体。
【請求項3】
前記フルオロエラストマー層は、架橋性パーフルオロエラストマーの架橋物を含む、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記金属基材は、アルミニウムを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体を含む、ゲートシール。
【請求項6】
ケミカルエッチング表面を有する金属基材を用意する工程と、
前記ケミカルエッチング表面に接して積層されるフッ素樹脂層の表面に架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する工程と、
前記架橋性フルオロエラストマーを含む層を架橋させてフルオロエラストマー層を形成する工程と、
を含む、積層体の製造方法。
【請求項7】
前記架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する工程は、
溶融されたフッ素樹脂を前記ケミカルエッチング表面に配置した後、圧縮成形して前記フッ素樹脂層を形成する工程と、
前記フッ素樹脂層における前記金属基材とは反対側の表面に前記架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する工程と、
を含む、請求項6に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
ケミカルエッチング表面に対して陽極酸化処理を施すことにより多孔性を有する陽極酸化皮膜が形成された表面を有する金属基材を用意する工程と、
前記陽極酸化皮膜の表面に接して積層されるフッ素樹脂層の表面に架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する工程と、
前記架橋性フルオロエラストマーを含む層を架橋させてフルオロエラストマー層を形成する工程と、
を含む、積層体の製造方法。
【請求項9】
前記架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する工程は、
溶融されたフッ素樹脂を前記陽極酸化皮膜の表面に配置した後、圧縮成形して前記フッ素樹脂層を形成する工程と、
前記フッ素樹脂層における前記金属基材とは反対側の表面に前記架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する工程と、
を含む、請求項8に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記架橋性フルオロエラストマーは、架橋性パーフルオロエラストマーである、請求項6~9のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
前記金属基材は、アルミニウムを含む、請求項6~10のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基材とフルオロエラストマー層とを備える積層体及びその製造方法、並びに該積層体を含むゲートシールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体製造装置の真空チャンバには、ウエハ等の被処理物を出し入れするためのゲートが設けられており、このゲートには、ゲートの開閉を行うためのゲートシールが備えられている。ゲートシールは通常、金属基材と、その表面に密着して配置されるシール材とで構成されており、このシール材のシール性によってチャンバ内外の差圧を保持することができる。
【0003】
特開平06-157686号公報(特許文献1)には、金属と含フッ素エラストマー組成物の硬化物とを接着剤を介して積層してなる積層体をオイルシール、クランクシャフトシール等に適用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接着剤を用いたゲートシールは、少なくとも次の点で改善の余地があった。
(a)過酷な使用環境下(例えば、高温環境、腐食性環境、UV環境、プラズマ環境下等)において、金属基材とシール材との間で剥離を生じることがある。これは、過酷な使用環境下において、接着剤が分解することによるものと考えられる。
(b)シール材に使用するフルオロエラストマーの種類を変えるたびに、適切な接着剤を開発・選定する必要があり、開発コストの面で不利である。
【0006】
本発明の目的は、金属基材とフルオロエラストマー層との間の剥離強度が改善された積層体、及びそれを含むゲートシールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に示す積層体及びその製造方法、並びにゲートシールを提供する。
[1] ケミカルエッチング表面を有する金属基材と、
前記ケミカルエッチング表面に接して積層されるか、又は前記ケミカルエッチング表面に接して積層されるフッ素樹脂層の表面に接して積層されるフルオロエラストマー層と、を含む、積層体。
[2] ケミカルエッチング表面に対して陽極酸化処理を施すことにより多孔性を有する陽極酸化皮膜が形成された表面を有する金属基材と、
前記陽極酸化皮膜に接して積層されるか、又は前記陽極酸化皮膜に接して積層されるフッ素樹脂層の表面に接して積層されるフルオロエラストマー層と、
を含む、積層体。
[3] 前記フルオロエラストマー層は、架橋性パーフルオロエラストマーの架橋物を含む、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4] 前記金属基材は、アルミニウムを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の積層体を含む、ゲートシール。
[6] ケミカルエッチング表面を有する金属基材を用意する工程と、
前記ケミカルエッチング表面、又は前記ケミカルエッチング表面に接して積層されるフッ素樹脂層の表面に架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する工程と、
前記架橋性フルオロエラストマーを含む層を架橋させてフルオロエラストマー層を形成する工程と、
を含む、積層体の製造方法。
[7] 前記架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する工程は、
溶融されたフッ素樹脂を前記ケミカルエッチング表面に配置した後、圧縮成形して前記フッ素樹脂層を形成する工程と、
前記フッ素樹脂層における前記金属基材とは反対側の表面に前記架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する工程と、
を含む、[6]に記載の積層体の製造方法。
[8] ケミカルエッチング表面に対して陽極酸化処理を施すことにより多孔性を有する陽極酸化皮膜が形成された表面を有する金属基材を用意する工程と、
前記陽極酸化皮膜の表面、又は前記陽極酸化皮膜の表面に接して積層されるフッ素樹脂層の表面に架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する工程と、
前記架橋性フルオロエラストマーを含む層を架橋させてフルオロエラストマー層を形成する工程と、
を含む、積層体の製造方法。
[9] 前記架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する工程は、
溶融されたフッ素樹脂を前記陽極酸化皮膜の表面に配置した後、圧縮成形して前記フッ素樹脂層を形成する工程と、
前記フッ素樹脂層における前記金属基材とは反対側の表面に前記架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する工程と、
を含む、[8]に記載の積層体の製造方法。
[10] 前記架橋性フルオロエラストマーは、架橋性パーフルオロエラストマーである、[6]~[9]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[11] 前記金属基材は、アルミニウムを含む、[6]~[10]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
金属基材とフルオロエラストマー層との間の剥離強度(以下、単に「剥離強度」ということがある。)が改善された積層体、及びそれを含むゲートシールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る積層体の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明に係る積層体の他の一例を示す概略断面図である。
【
図3】本発明に係る積層体の他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<積層体>
以下、実施の形態を示して本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る積層体の一例を示す概略断面図である。
図2は、本発明に係る積層体の他の一例を示す概略断面図である。
図1及び
図2に示されるように、本発明に係る積層体は、金属基材10と、金属基材10の一方の主面上に積層されるフルオロエラストマー層30とを含む。
本発明に係る積層体においてフルオロエラストマー層30は、金属基材10の一方の主面上に直接積層されてもよいし(
図1)、金属基材10の一方の主面に接して積層されるフッ素樹脂層20の表面(金属基材10とは反対側の表面)に接して積層されてもよい(
図2)。
フッ素樹脂層20又はフルオロエラストマー層30が積層される金属基材10の表面は、ケミカルエッチング表面であるか、又はケミカルエッチング表面に対して陽極酸化処理を施すことにより形成された陽極酸化皮膜11である。陽極酸化皮膜11の表面に接してフルオロエラストマー層30が積層された積層体の例を
図3に示している。
【0011】
(1)金属基材
金属基材10を構成する金属は、ケミカルエッチング可能な金属、好ましくはさらに陽極酸化可能な金属であり、例えばアルミニウム;マグネシウム;チタン;アルミニウム、マグネシウム又はチタンを含む合金;ステンレス鋼等が挙げられる。金属基材10を構成する金属は、好ましくはアルミニウム;チタン;アルミニウム又はチタンを含む合金(例えばアルミニウムを主成分とするアルミニウム合金)であり、より好ましくはアルミニウムを含む金属材料、すなわち、アルミニウム;アルミニウムを含む合金(例えばアルミニウムを主成分とするアルミニウム合金)である。
金属基材10の形状は、ゲートシールとして使用される際に所望される形状等、適宜の形状とすることができる。金属基材10の厚みは、例えば1~30mm程度である。
【0012】
金属基材10は、その少なくとも1つの表面(例えば一方の主面)にケミカルエッチング表面(ケミカルエッチング処理された表面)を有する。ケミカルエッチング表面にフルオロエラストマー層30を積層する、あるいはケミカルエッチング表面にフッ素樹脂層20を介してフルオロエラストマー層30を積層することにより剥離強度を改善することができる。
【0013】
ケミカルエッチング処理は、金属基材を酸やアルカリ液等のエッチング液に浸漬する処理であることができる。エッチング液としては、例えば、水酸化カリウムや水酸化テトラメチルアンモニウム、硝酸、塩酸等を挙げることができる。金属基材10がアルミニウムを含む金属材料から構成される場合、エッチング液としては、水酸化ナトリウムや硫酸等を用いることが好ましい。
【0014】
ケミカルエッチング処理の条件は特に制限されず、処理温度(エッチング液の温度)は、例えば10~100℃(より典型的には20~80℃)の範囲から選択することができる。またエッチング深さは、例えば0.1~50μm、好ましくは0.3~20μmである。ケミカルエッチング処理は、後述する多孔領域や表面形状が得られるようにエッチング深さを調整するために、エッチングの処理時間、温度、処理回数等を調整することが好ましい。
【0015】
ケミカルエッチング処理された金属基材10の表面は通常、ある深さを有する凹凸形状となっている。ケミカルエッチング表面に接してフッ素樹脂層20又はフルオロエラストマー層30が積層される場合、上記凹凸形状の少なくとも一部には、その上に積層されるフッ素樹脂層20又はフルオロエラストマー層30を構成するフッ素樹脂又はフルオロエラストマーが入り込んでいることが好ましい。このことは、剥離強度向上の点で有利である。
【0016】
ケミカルエッチング処理による上記凹凸形状は、JIS B 0601:1994に規定される算術平均粗さRaが、例えば0.1~50μmであり、剥離強度向上の観点から、好ましくは0.3~30μm、より好ましくは0.5~10μmである。
算術平均粗さRaは、レーザー顕微鏡や三次元形状測定機等を用いて測定することができる。
【0017】
ケミカルエッチング表面(フッ素樹脂層20又はフルオロエラストマー層30が積層される表面)の上記凹凸形状は、剥離強度向上の観点から、JIS B 0601:1994に規定される算術平均粗さRaが、好ましくは0.1~50μmであり、より好ましくは0.3~30μm、さらに好ましくは0.5~10μm又は0.8~10μmである。同様の観点から、JIS B 0601:1994に規定される上記凹凸形状の最大高さ粗さRyは、好ましくは0.1~100μmであり、より好ましくは0.5~50μmである。また同様の観点から、JIS B 0601:1994に規定される上記凹凸形状の十点平均粗さRzは、好ましくは0.3~100μmであり、より好ましくは0.5~50μmであり、さらに好ましくは5~50μmである。
これらの表面粗さパラメータは、レーザー顕微鏡やSEM等を用いて測定することができる。
【0018】
フッ素樹脂層20又はフルオロエラストマー層30が積層される金属基材10の表面は、上記のようにして形成されるケミカルエッチング表面に対して陽極酸化処理を施すことにより形成された多孔性を有する陽極酸化皮膜11の表面であってもよい。
陽極酸化皮膜11の表面にフルオロエラストマー層30を積層する、あるいは陽極酸化皮膜11の表面にフッ素樹脂層20を介してフルオロエラストマー層30を積層することにより剥離強度を改善することができる。また、陽極酸化皮膜11を形成することによって金属基材10の表面硬度を高めることができるので、ケミカルエッチング処理及び陽極酸化処理によって形成された表面形状や孔形状の保持性を高めることができる。
【0019】
陽極酸化皮膜11とは、金属基材10を陽極とする電解処理によって金属基材10のケミカルエッチング表面に形成される酸化皮膜(金属酸化物の皮膜)である。電解処理に用いる電解液は特に制限されず、硫酸、シュウ酸、リン酸、クロム酸、ホウ酸等の水溶液を用いることができる。
【0020】
ケミカルエッチング表面に対して陽極酸化処理を施して得られる陽極酸化皮膜11は通常、多孔膜である。陽極酸化皮膜11の開孔径は、例えば0.05~100μmであり、剥離強度向上の観点から、好ましくは0.1~50μm、より好ましくは2~30μmである。陽極酸化皮膜11の開孔径は、SEM又はTEM観察によって測定することができる。
陽極酸化皮膜11の開孔径は、印加電圧等によって制御することができる。
陽極酸化皮膜11の孔の少なくとも一部には、その上に積層されるフッ素樹脂層20又はフルオロエラストマー層30を構成するフッ素樹脂又はフルオロエラストマーが入り込んでいることが好ましい。このことは、剥離強度向上の点で有利である。
【0021】
陽極酸化皮膜11の厚みは、陽極酸化処理時の電気量(電流量や電解処理時間)等によって制御可能である。陽極酸化皮膜11の厚みは、例えば0.1~100μmであり、剥離強度向上の観点から、好ましくは0.1~50μm、より好ましくは2~40μm、さらに好ましくは5~30μmである。陽極酸化皮膜11の厚みは、株式会社フィッシャー・インスツルメント社製のフィッシャースコープ「XDL210」等の膜厚計を用いて測定することができる。
【0022】
陽極酸化皮膜11の表面(フッ素樹脂層20又はフルオロエラストマー層30が積層される表面)は通常、凹凸形状を有している。剥離強度向上の観点から、JIS B 0601:1994に規定される陽極酸化皮膜11の算術平均粗さRaは、好ましくは0.05~100μmであり、より好ましくは0.1~50μmであり、さらに好ましくは0.3~30μm、特に好ましくは0.5~10μm又は0.8~10μmである。。同様の観点から、JIS B 0601:1994に規定される陽極酸化皮膜11の最大高さ粗さRyは、好ましくは0.1~100μmであり、より好ましくは0.1~50μmである。また同様の観点から、JIS B 0601:1994に規定される陽極酸化皮膜11の十点平均粗さRzは、好ましくは0.1~100μmであり、より好ましくは0.1~50μmであり、さらに好ましくは0.5~50μmであり、特に好ましくは5~50μmである。
これらの表面粗さパラメータは、レーザー顕微鏡やSEM等を用いて測定することができる。
【0023】
(2)フッ素樹脂層
積層体は、金属基材10とフルオロエラストマー層30との間に配置されるフッ素樹脂層20を含むことができる。この場合、金属基材10のケミカルエッチング表面又は陽極酸化皮膜11の表面に接してフッ素樹脂層20が積層され、フッ素樹脂層20の表面に接してフルオロエラストマー層30が積層される。
フッ素樹脂層20を介在させることにより、剥離強度を改善できることがある。
【0024】
フッ素樹脂層20は、フッ素樹脂から構成される層である。フッ素樹脂とは、分子内にフッ素原子を有する熱可塑性樹脂であるが、エラストマーは除かれる。フッ素樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VDF-HFP共重合体)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体(VDF-HFP-TFE共重合体)等を挙げることができる。
中でも、剥離強度向上の観点から、PFA、FEP、ETFE、PVDFが好ましく用いられる。
ケミカルエッチング表面又は陽極酸化皮膜11の表面への溶融接着によるフッ素樹脂層20の形成が容易であることから、フッ素樹脂の融点は310℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましい。
【0025】
フッ素樹脂層20の厚みは、例えば0.05μm~10mmであり、剥離強度向上及び積層体の薄膜化の観点から、好ましくは0.1μm~5mmであり、より好ましくは10μm~2mmであり、さらに好ましくは20μm~1mmであり、なおさらに好ましくは40μm~1mmであり、特に好ましくは50~500μmである。
【0026】
フッ素樹脂層20は、フッ素樹脂以外の成分を含むことができる。フッ素樹脂以外の成分としては、フルオロエラストマー層30について後述する添加剤が挙げられる。ただし、剥離強度向上の観点から、添加剤の量が少ないことが好ましく、具体的には、フッ素樹脂層20におけるフッ素樹脂の含有率は、好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上であり、さらに好ましくは95重量%以上(例えば100重量%)である。
【0027】
本発明に係る積層体によれば、金属基材10とフルオロエラストマー層30との間の剥離強度に優れたものとなり得る一方で、金属基材10とフルオロエラストマー層30との接合に接着剤を使用しないため、金属基材10とフルオロエラストマー層30とを意図的に剥離した場合においても接着剤が金属基材10に残るおそれがない。したがって、例えば、使用によりフルオロエラストマー層30が劣化した場合においても、積層体全体を取り換えるのではなく、劣化したフルオロエラストマー層30を金属基材10から分離し、金属基材10を再利用することが可能である。
とりわけ、金属基材10/フッ素樹脂層20/フルオロエラストマー層30の層構成を有する積層体によれば、金属基材10とフルオロエラストマー層30との間に介在するフッ素樹脂層20を加熱によって溶融させることができるため、フルオロエラストマー層30を金属基材10から容易に分離して、金属基材10を回収・再利用することができる。
【0028】
(3)フルオロエラストマー層
フルオロエラストマー層30は、架橋性フルオロエラストマーの架橋物を含む。フルオロエラストマー層30は、架橋性フルオロエラストマーの架橋物からなっていてもよい。
フルオロエラストマー層30は、架橋性フルオロエラストマーを含む架橋性フルオロエラストマー組成物を架橋させることによって形成できる。
架橋性フルオロエラストマーは、好ましくは分子鎖間の架橋反応によって架橋構造を形成することができ、これによりゴム弾性を発現するエラストマー(架橋ゴム)を形成できるものであることが好ましい。架橋性フルオロエラストマーは、熱可塑性エラストマーを含まないことが好ましい。
【0029】
架橋性フルオロエラストマーとしては、架橋性パーフルオロエラストマー(FFKM)、及びこれ以外のフルオロエラストマー(FKM)を挙げることができる。
FFKMとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体や、TFE-パーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)系共重合体等を挙げることができる。これらの共重合体は、他のパーフルオロモノマー由来の構成単位をさらに含んでいてもよい。
FFKMは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
テトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体を形成するパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)は、アルキル基の炭素数が1~10であることができ、例えばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等であることができる。好ましくは、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)である。
【0031】
TFE-パーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)系共重合体を形成するパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)は、ビニルエーテル基(CF2=CFO-)に結合する基の炭素数が3~15であることができ、例えば
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCnF2n+1、
CF2=CFO(CF2)3OCnF2n+1、
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)mCnF2n+1、又は
CF2=CFO(CF2)2OCnF2n+1
であることができる。
上記式中、nは例えば1~5であり、mは例えば1~3である。
【0032】
架橋部位モノマーを共重合させる(架橋部位モノマー由来の構成単位を含ませる)ことによってFFKMに架橋性を付与することができる。架橋部位とは、架橋反応可能な部位を意味する。架橋部位としては、例えば、ニトリル基、ハロゲン基(例えば、I基、Br基等)、パーフルオロフェニル基等を挙げることができる。
【0033】
架橋部位としてニトリル基を有する架橋部位モノマーの一例は、ニトリル基含有パーフルオロビニルエーテルである。ニトリル基含有パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、
CF2=CFO(CF2)nOCF(CF3)CN(nは例えば2~4)、
CF2=CFO(CF2)nCN(nは例えば2~12)、
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]m(CF2)nCN(nは例えば2、mは例えば1~5)、
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]m(CF2)nCN(nは例えば1~4、mは例えば1~2)、
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]nCF2CF(CF3)CN(nは例えば0~4)
等を挙げることができる。
【0034】
架橋部位としてハロゲン基を有する架橋部位モノマーの一例は、ハロゲン基含有パーフルオロビニルエーテルである。ハロゲン基含有パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上述のニトリル基含有パーフルオロビニルエーテルの具体例において、ニトリル基をハロゲン基に置き換えたものを挙げることができる。
FFKMは、2つの主鎖間を架橋する架橋構造を有していてもよい。
【0035】
FFKMにおけるTFE由来の構成単位/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)又はパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)由来の構成単位/架橋部位モノマー由来の構成単位の比は、モル比で、通常53.0~79.9%/20.0~46.9%/0.4~1.5%である。
上記構成単位の比が異なる2種以上のFFKMを用いることもできる。
【0036】
FFKM以外のフルオロエラストマーであるFKMは、水素原子とフッ素原子とを有するフルオロエラストマーである。
FKMとしては、フッ化ビニリデン(VDF)-ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系重合体;フッ化ビニリデン(VDF)-ヘキサフルオロプロピレン(HFP)-テトラフルオロエチレン(TFE)系重合体;テトラフルオロエチレン(TFE)-プロピレン(Pr)系重合体;フッ化ビニリデン(VDF)-プロピレン(Pr)-テトラフルオロエチレン(TFE)系重合体;エチレン(E)-テトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)系重合体;フッ化ビニリデン(VDF)-テトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)系重合体、フッ化ビニリデン(VDF)-パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)系重合体を挙げることができる。
【0037】
FKMにおいても、架橋部位モノマーを共重合させる(架橋部位モノマー由来の構成単位を含ませる)ことによって架橋性を付与することができる。架橋部位モノマーの例は、FFKMと同様である。
【0038】
架橋性フルオロエラストマーの架橋系は特に制限されず、例えば、FFKMであればパーオキサイド架橋系、ビスフェノール架橋系、トリアジン架橋系、オキサゾル架橋系、イミダゾル架橋系、チアゾール架橋系が挙げられ、FKMであればパーオキサイド架橋系、ポリアミン架橋系、ポリオール架橋系が挙げられる。
架橋性フルオロエラストマーは、いずれか1種の架橋系で架橋されてもよいし、2種以上の架橋系で架橋されてもよい。
【0039】
架橋性フルオロエラストマー組成物は、架橋性フルオロエラストマーの架橋系に応じた架橋剤を含むことができる。
パーオキサイド架橋系で用いるパーオキサイド架橋剤(ラジカル重合開始剤)としては、例えば、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(市販品の例:日油製「パーヘキサ25B」);ジクミルペルオキシド(市販品の例:日油製「パークミルD」);2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド;ジ-t-ブチルパーオキサイド;t-ブチルジクミルパーオキサイド;ベンゾイルペルオキシド(市販品の例:日油製「ナイパーB」);2,5-ジメチル-2,5-(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3(市販品の例:日油製「パーヘキシン25B」);2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン;α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン(市販品の例:日油製「パーブチルP」);t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート;パラクロロベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。
パーオキサイド架橋剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
パーオキサイド架橋系においては、パーオキサイド架橋剤とともに共架橋剤を併用することができる。共架橋剤としては、トリアリルイソシアヌレート(市販品の例:日本化成社製「TAIC」);トリアリルシアヌレート;トリアリルホルマール;トリアリルトリメリテート;N,N’-m-フェニレンビスマレイミド;ジプロパギルテレフタレート;ジアリルフタレート;テトラアリルテレフタルアミド等のラジカルによる共架橋が可能な化合物(不飽和多官能性化合物)を挙げることができる。
共架橋剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、反応性や、高温環境下での圧縮永久歪特性(高温環境下で使用される際の寿命の指標である。)を向上させる観点から、共架橋剤は、トリアリルイソシアヌレートを含むことが好ましい。
【0041】
共架橋剤の他の好ましい例は、下記式:
CH2=CH-(CF2)n-CH=CH2
で表されるジオレフィン化合物である。式中のnは、好ましくは4~12の整数であり、より好ましくは4~8の整数である。
上記トリアリルイソシアヌレート等とジオレフィン化合物とを併用してもよい。
【0042】
オキサゾル架橋系で用いる架橋剤としては、例えば、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BOAP);4,4’-スルホニルビス(2-アミノフェノール)〔ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン〕、3,3’-ジアミノベンジジン、3,3’,4,4’-テトラアミノベンゾフェノンが挙げられる。好ましくは、BOAPが用いられる。
【0043】
トリアジン架橋系においては、有機スズ化合物、4級ホスホニウム塩や4級アンモニウム塩等のオニウム塩、尿素、窒化ケイ素等の架橋触媒が用いられる。
【0044】
イミダゾル架橋系、チアゾール架橋系で用いる架橋剤としては、従来公知のものを用いることができる。イミダゾル架橋系で用いる架橋剤としては、3,3’,4,4’-テトラアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンジジン等を挙げることができる。
【0045】
架橋剤(2種以上を用いる場合はその合計量)の使用量は、架橋性フルオロエラストマー100重量部あたり、例えば0.01~20重量部であり、高温環境下における圧縮永久歪特性の向上の観点から、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは5重量部以下である。
共架橋剤(2種以上を用いる場合はその合計量)の使用量は、架橋性フルオロエラストマー100重量部あたり、例えば0.1~40重量部であり、高温環境下における圧縮永久歪特性の向上の観点から、好ましくは0.2~10重量部である。
【0046】
架橋性フルオロエラストマー組成物は、加工性改善や物性調整等を目的として、必要に応じて、老化防止剤、酸化防止剤、加硫促進剤、加工助剤(ステアリン酸等)、安定剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、離型剤、ワックス類、滑剤等の添加剤を含むことができる。添加剤の他の例は、フッ素系オイル(例えば、パーフルオロエーテル等)のような粘着性低減(防止)剤である。
添加剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
ただし、積層体を高温環境下で使用する場合などにおいては、揮発、溶出又は析出を生じるおそれがあることから、添加剤の量はできるだけ少ないことが好ましく(例えば、架橋性フルオロエラストマー100重量部あたり10重量部以下、好ましくは5重量部以下、より好ましくは2重量部以下、さらに好ましくは1重量部以下)、添加剤を含有しないことが望ましい。
【0048】
架橋性フルオロエラストマー組成物は、必要に応じて、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、クレー、タルク、珪藻土、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ハイドロタルサイト、金属粉、ガラス粉、セラミックス粉のような無機充填剤を含むことができる。
【0049】
ただし、無機充填剤は、その含有量が多くなると、過酷な環境下で飛散する問題が顕在化するおそれがあることから、無機充填剤の量はできるだけ少ないことが好ましく(例えば、架橋性フルオロエラストマー100重量部あたり10重量部以下、好ましくは5重量部以下、より好ましくは2重量部以下、さらに好ましくは1重量部以下)、無機充填剤を配合しないことが望ましい。なお、無機充填剤とは、金属元素(Ba、Ti、Zn、Al、Mg、Ca、Si等)を含有する充填剤をいう。
【0050】
フルオロエラストマー層30の厚みは、通常0.5~10mmであり、シール性及び耐熱性等の観点から、好ましくは1~5mmである。
【0051】
(4)積層体の用途
本発明に係る積層体は、シール材として好適に用いることができ、より具体的には、真空チャンバのゲートに設けられるゲートシール等として好適に用いることができる。とりわけ、本発明に係る積層体は、接着剤を用いた従来の積層体では金属基材とフルオロエラストマー層との間で剥離が生じやすい環境下(例えば、高温環境、腐食性環境、UV環境、プラズマ環境下等)で使用されるゲートシール、例えば、半導体製造装置用のゲートシールとして好適に用いることができる。
【0052】
<積層体の製造方法>
金属基材10のケミカルエッチング表面に、必要に応じてフッ素樹脂層20を介して、フルオロエラストマー層30を積層してなる積層体は、例えば次の工程を含む方法によって好適に製造することができる。
ケミカルエッチング表面を有する金属基材10を用意する工程(第1-1工程)、
ケミカルエッチング表面、又はケミカルエッチング表面に接して積層されるフッ素樹脂層20の表面に架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する工程(第1-2工程)、
架橋性フルオロエラストマーを含む層を架橋させてフルオロエラストマー層を形成する工程(第1-3工程)。
【0053】
ケミカルエッチング表面に対して陽極酸化処理を施すことにより形成される多孔性を有する金属基材10の陽極酸化皮膜11の表面に、必要に応じてフッ素樹脂層20を介して、フルオロエラストマー層30を積層してなる積層体は、例えば次の工程を含む方法によって好適に製造することができる。
ケミカルエッチング表面に対して陽極酸化処理を施すことにより多孔性を有する陽極酸化皮膜11が形成された表面を有する金属基材10を用意する工程(第2-1工程)、
陽極酸化皮膜11の表面、又は陽極酸化皮膜11の表面に接して積層されるフッ素樹脂層20の表面に架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する工程(第2-2工程)、
架橋性フルオロエラストマーを含む層を架橋させてフルオロエラストマー層を形成する工程(第2-3工程)。
上記製造方法によって得られる積層体はいずれも、金属基材とフルオロエラストマー層との間の剥離強度に優れたものとなり得る。
【0054】
(1)第1-1工程及び第2-1工程
第1-1工程におけるケミカルエッチング表面を有する金属基材10は、金属基材のケミカルエッチング処理によって得ることができる。
第2-1工程における陽極酸化皮膜11が形成された表面を有する金属基材10は、上記ケミカルエッチング処理を施した金属基材の該ケミカルエッチング表面に対して陽極酸化処理(金属基材を陽極とする電解処理)を施すことによって得ることができる。ケミカルエッチング処理及び陽極酸化処理についてのより詳細な説明は、上記<積層体>の項における記載が引用される。
【0055】
(2)第1-2工程及び第2-2工程
第1-2工程及び第2-2工程が金属基材10の表面(ケミカルエッチング表面又は陽極酸化皮膜11の表面)に架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する工程を含む場合、架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する方法としては、架橋性フルオロエラストマーを含む上述の架橋性フルオロエラストマー組成物を所定の形状(サイズ、厚み)に成形してシート状物とし、これを金属基材10の上記表面に配置する方法が挙げられる。
成形方法は従来公知の方法であって良く、成形温度は、例えば130~260℃程度である。
【0056】
第1-2工程及び第2-2工程が金属基材10の表面(ケミカルエッチング表面又は陽極酸化皮膜11の表面)に接して積層されるフッ素樹脂層20の表面に架橋性フルオロエラストマーを含む層を形成する工程を含む場合、金属基材10の上記表面にフッ素樹脂層20を形成する方法としては、金属基材10の上記表面にフッ素樹脂を溶融接着する方法であることが好ましい。溶融接着とは、フッ素樹脂を溶融させ、その溶融樹脂を上記表面に適用(配置)する方法である。この方法によれば、溶融樹脂をケミカルエッチングにより形成された孔又は陽極酸化皮膜11の孔に入り込ませることができるので、剥離強度の向上に有利となり得る。
フッ素樹脂の代わりに、フッ素樹脂とそれ以外の成分(例えば、上述の添加剤)と含むフッ素樹脂組成物を上記表面に適用してもよい。
【0057】
溶融樹脂(又はこれを含む樹脂組成物)を上記表面に適用する際の樹脂温度は、樹脂が溶融している温度であれば良く、例えば、フッ素樹脂の融点以上であって、150~310℃であり、好ましくは180~250℃である。樹脂温度があまりに高いと、取扱性が低下するとともに樹脂の劣化が懸念される。
溶融樹脂を上記表面に適用後、例えば、圧縮成形することでフッ素樹脂層20が形成される。
【0058】
(3)第1-3工程及び第2-3工程
金属基材10又はフッ素樹脂層20上に形成された架橋性フルオロエラストマーを含む層を、高温加圧下で架橋させることにより積層体が得られる。架橋温度は、通常150~280℃程度である。
必要に応じて、例えば積層体の耐熱性を高めるために、150~320℃程度の温度で二次架橋を行ってもよい。電離性放射線の照射によって二次架橋を行ってもよい。電離性放射線としては、電子線やγ線を好ましく用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
<実施例1>
次の手順に従って、積層体を作製した。
板状のアルミニウム基材(アルミニウム合金からなる。厚み1mm)を用意した。このアルミニウム基材の一方の主面に対してケミカルエッチング処理を施した。ケミカルエッチングの条件は次のとおりである。
・ケミカルエッチング液:NaOH溶液
・ケミカルエッチング液への浸漬時間:2分
・ケミカルエッチング液の温度:60℃
【0061】
ケミカルエッチング表面の表面粗さパラメータの測定結果を表1に示す。ケミカルエッチング表面の表面粗さパラメータ(JIS B 0601:1994に規定される算術平均粗さRa、最大高さ粗さRy及び十点平均粗さRz)は、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製「VK-8510」)を用いて測定した。いずれも、任意の5箇所について測定し、その平均値をRa、Ry、Rzとした。他の実施例においても同様である。
【0062】
以下の成分をオープンロールにより混練して、フルオロエラストマー組成物を調製した。
FKM 100重量部
有機過酸化物 1重量部
共架橋剤 2重量部
FKMには、ソルベイ社製のフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体(VDF-HFP-TFE共重合体)「テクノフロンP459」(表1ではFKMと称している。)を用いた。
有機過酸化物には、日油株式会社製のパーオキサイド「パーヘキサ25B」(化学名:2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン)を用いた。
共架橋剤には、日本化成社製のトリアリルイソシアヌレート「TAIC」を用いた。
【0063】
上記フルオロエラストマー組成物をオープンロールでシート状に成形して、架橋性のフルオロエラストマーシートを作製した。
上記フルオロエラストマーシートを、アルミニウム基材のケミカルエッチング表面に配置した後、180℃、20分の条件で熱処理を施してフルオロエラストマーシートを架橋させ、さらに200℃、48時間の条件で二次架橋を行うことにより、アルミニウム基材/フルオロエラストマー層の構成を有する積層体を得た。ノギスで測定したフルオロエラストマー層の厚みは2mmであった(任意の5箇所について測定し、その平均値を厚みとした)。
【0064】
<実施例2>
ケミカルエッチング表面の表面粗さパラメータが表1に示されるとおりであること、及び、フルオロエラストマー層を形成する架橋性フルオロエラストマーとして、「テクノフロンP459」の代わりに、ソルベイ社製のテトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体「テクノフロンPFR94」(表1ではFFKMと称している。)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、アルミニウム基材/フルオロエラストマー層の構成を有する積層体を作製した。
なお、ケミカルエッチングの条件は実施例1と同じとした。ケミカルエッチング表面の表面粗さパラメータの測定結果を表1に示す。
【0065】
<実施例3>
次の手順に従って、積層体を作製した。
板状のアルミニウム基材(アルミニウム合金からなる。厚み1mm)を用意した。このアルミニウム基材の一方の主面に対してケミカルエッチング処理を施した。ケミカルエッチングの条件は実施例1と同じとした。ケミカルエッチング表面の表面粗さパラメータの測定結果を表1に示す。
【0066】
フッ素樹脂としてFEP樹脂(ダイキン社製「ネオフロン」、融点270℃、架橋部位モノマー由来の構成単位を含有しない。)を用意した。このFEP樹脂を280℃まで加熱溶融させ、アルミニウム基材のケミカルエッチング表面に圧縮成形(圧着)させた。ノギスで測定したフッ素樹脂層の厚みは50μmであった(任意の5箇所について測定し、その平均値を厚みとした)。
【0067】
実施例1で使用したものと同じフルオロエラストマー組成物をオープンロールでシート状に成形して、架橋性のフルオロエラストマーシートを作製した。このフルオロエラストマーシートを、フッ素樹脂層におけるアルミニウム基材とは反対側の表面上に配置し、これ以降は実施例1と同様にして、アルミニウム基材/フッ素樹脂層/フルオロエラストマー層の構成を有する積層体を得た。ノギスで測定したフルオロエラストマー層の厚みは2mmであった(任意の5箇所について測定し、その平均値を厚みとした)。
【0068】
<実施例4>
次の手順に従って、積層体を作製した。
実施例1と同様にして、ケミカルエッチング表面を有する板状のアルミニウム基材を作製した。
次に、ケミカルエッチング表面に対して陽極酸化処理を施すことにより陽極酸化皮膜を形成した。陽極酸化処理の条件は次のとおりである。
・処理液:硫酸水溶液
・電圧値:15V
・浸漬時間:10分
・処理液の温度:25℃
【0069】
陽極酸化皮膜の厚み及び表面粗さパラメータの測定結果を表1に示す。
陽極酸化皮膜の厚みは、株式会社フィッシャー・インスツルメント社製の膜厚計フィッシャースコープ「XDL210」を用いて測定した。任意の5箇所について測定し、その平均値を厚みとした。他の実施例においても同様である。
株式会社日立ハイテクフィールディング社製のSEM「SN-3400N」で測定した陽極酸化皮膜の開孔径は1.7~2.3μmであった。
【0070】
実施例1で使用したものと同じフルオロエラストマー組成物をオープンロールでシート状に成形して、架橋性のフルオロエラストマーシートを作製した。このフルオロエラストマーシートを、アルミニウム基材の陽極酸化皮膜表面に配置し、これ以降は実施例1と同様にして、アルミニウム基材/フルオロエラストマー層の構成を有する積層体を得た。ノギスで測定したフルオロエラストマー層の厚みは2mmであった(任意の5箇所について測定し、その平均値を厚みとした)。
【0071】
<実施例5>
フルオロエラストマー層を形成する架橋性フルオロエラストマーとして、「テクノフロンP459」の代わりに、ソルベイ社製のテトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体「テクノフロンPFR94」(表1ではFFKMと称している。)を用いたこと以外は実施例4と同様にして、アルミニウム基材/フルオロエラストマー層の構成を有する積層体を作製した。
陽極酸化皮膜の厚み及び表面粗さパラメータの測定結果を表1に示す。
株式会社日立ハイテクフィールディング社製のSEM「SN-3400N」で測定した陽極酸化皮膜の開孔径は0.8~1.5μmであった。
【0072】
<実施例6>
次の手順に従って、積層体を作製した。
実施例4と同様にして、ケミカルエッチング表面に陽極酸化皮膜を形成した板状のアルミニウム基材を作製した。陽極酸化皮膜の厚み及び表面粗さパラメータの測定結果を表1に示す。
株式会社日立ハイテクフィールディング社製のSEM「SN-3400N」で測定した陽極酸化皮膜の開孔径は0.9~1.3μmであった。
【0073】
フッ素樹脂としてFEP樹脂(ダイキン社製「ネオフロン」、融点270℃、架橋部位モノマー由来の構成単位を含有しない。)を用意した。このFEP樹脂を280℃まで加熱溶融させ、アルミニウム基材の陽極酸化皮膜表面に圧縮成形(圧着)させた。ノギスで測定したフッ素樹脂層の厚みは50μmであった(任意の5箇所について測定し、その平均値を厚みとした)。
【0074】
実施例1で使用したものと同じフルオロエラストマー組成物をオープンロールでシート状に成形して、架橋性のフルオロエラストマーシートを作製した。このフルオロエラストマーシートを、フッ素樹脂層におけるアルミニウム基材とは反対側の表面上に配置し、これ以降は実施例1と同様にして、アルミニウム基材/フッ素樹脂層/フルオロエラストマー層の構成を有する積層体を得た。ノギスで測定したフルオロエラストマー層の厚みは2mmであった(任意の5箇所について測定し、その平均値を厚みとした)。
【0075】
<実施例7>
次の手順に従って、積層体を作製した。
実施例4と同様にして、ケミカルエッチング表面に陽極酸化皮膜を形成した板状のアルミニウム基材を作製した。陽極酸化皮膜の厚み及び表面粗さパラメータの測定結果を表1に示す。
実施例2で使用したものと同じフルオロエラストマー組成物をオープンロールでシート状に成形して、架橋性のフルオロエラストマーシートを作製した。このフルオロエラストマーシートを、アルミニウム基材の陽極酸化皮膜表面に配置し、これ以降は実施例1と同様にして、アルミニウム基材/フルオロエラストマー層の構成を有する積層体を得た。ノギスで測定したフルオロエラストマー層の厚みは2mmであった(任意の5箇所について測定し、その平均値を厚みとした)。
なお、ケミカルエッチングの条件は実施例2と同じとした。ケミカルエッチング表面の表面粗さパラメータの測定結果を表1に示す。
【0076】
<実施例8>
次の手順に従って、積層体を作製した。
実施例7と同様にして、ケミカルエッチング表面を有する板状のアルミニウム基材を作製した。ケミカルエッチング表面の表面粗さパラメータの測定結果を表1に示す。
【0077】
フッ素樹脂としてFEP樹脂(ダイキン社製「ネオフロン」、融点270℃、架橋部位モノマー由来の構成単位を含有しない。)を用意した。このFEP樹脂を280℃まで加熱溶融させ、アルミニウム基材のケミカルエッチング表面に圧縮成形(圧着)させた。ノギスで測定したフッ素樹脂層の厚みは50μmであった(任意の5箇所について測定し、その平均値を厚みとした)。
【0078】
実施例7で使用したものと同じフルオロエラストマー組成物をオープンロールでシート状に成形して、架橋性のフルオロエラストマーシートを作製した。このフルオロエラストマーシートを、フッ素樹脂層におけるアルミニウム基材とは反対側の表面上に配置し、これ以降は実施例1と同様にして、アルミニウム基材/フッ素樹脂層/フルオロエラストマー層の構成を有する積層体を得た。ノギスで測定したフルオロエラストマー層の厚みは2mmであった(任意の5箇所について測定し、その平均値を厚みとした)。
【0079】
<実施例9>
次の手順に従って、積層体を作製した。
板状のアルミニウム基材(アルミニウム合金からなる。厚み1mm)を用意した。このアルミニウム基材の一方の主面に対してケミカルエッチング処理を施した。ケミカルエッチングの条件は次のとおりである。
・ケミカルエッチング液:NaOH溶液
・ケミカルエッチング液への浸漬時間:2分
・ケミカルエッチング液の温度:60℃
【0080】
次に、ケミカルエッチング表面に対して陽極酸化処理を施すことにより陽極酸化皮膜を形成した。陽極酸化処理の条件は次のとおりである。
・処理液:硫酸水溶液
・電圧値:15V
・浸漬時間:10分
・処理液の温度:25℃
【0081】
陽極酸化皮膜の厚み及び表面粗さパラメータの測定結果を表1に示す。
株式会社日立ハイテクフィールディング社製のSEM「SN-3400N」で測定した陽極酸化皮膜の開孔径は0.7~1.2μmであった。
【0082】
以下の成分をオープンロールにより混練して、フルオロエラストマー組成物を調製した。
FFKM(パーフルオロエラストマー) 100重量部
有機過酸化物 1重量部
共架橋剤 2重量部
FFKMには、ソルベイ社製のテトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体「テクノフロンPFR94」(表1ではFFKMと称している。)を用いた。
有機過酸化物には、日油株式会社製のパーオキサイド「パーヘキサ25B」(化学名:2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン)を用いた。
共架橋剤には、日本化成社製のトリアリルイソシアヌレート「TAIC」を用いた。
【0083】
上記フルオロエラストマー組成物をオープンロールでシート状に成形して、架橋性のフルオロエラストマーシートを作製した。このフルオロエラストマーシートを、アルミニウム基材の陽極酸化皮膜表面に配置し、これ以降は実施例1と同様にして、アルミニウム基材/フルオロエラストマー層の構成を有する積層体を得た。ノギスで測定したフルオロエラストマー層の厚みは2mmであった(任意の5箇所について測定し、その平均値を厚みとした)。
【0084】
<実施例10>
次の手順に従って、積層体を作製した。
板状のアルミニウム基材(アルミニウム合金からなる。厚み1mm)を用意した。このアルミニウム基材の一方の主面に対してケミカルエッチング処理を施した。ケミカルエッチングの条件は次のとおりである。
・ケミカルエッチング液:NaOH溶液
・ケミカルエッチング液への浸漬時間:5分
・ケミカルエッチング液の温度:60℃
【0085】
次に、ケミカルエッチング表面に対して陽極酸化処理を施すことにより陽極酸化皮膜を形成した。陽極酸化処理の条件は次のとおりである。
・処理液:硫酸水溶液
・電圧値:15V
・浸漬時間:10分
・処理液の温度:25℃
【0086】
陽極酸化皮膜の厚み及び表面粗さパラメータの測定結果を表1に示す。
株式会社日立ハイテクフィールディング社製のSEM「SN-3400N」で測定した陽極酸化皮膜の開孔径は7.2~8.1μmであった。
【0087】
以下の成分をオープンロールにより混練して、フルオロエラストマー組成物を調製した。
FFKM(パーフルオロエラストマー) 100重量部
有機過酸化物 1重量部
共架橋剤 2重量部
FFKMには、ソルベイ社製のテトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体「テクノフロンPFR94」(表1ではFFKMと称している。)を用いた。
有機過酸化物には、日油株式会社製のパーオキサイド「パーヘキサ25B」(化学名:2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン)を用いた。
共架橋剤には、日本化成社製のトリアリルイソシアヌレート「TAIC」を用いた。
【0088】
上記フルオロエラストマー組成物をオープンロールでシート状に成形して、架橋性のフルオロエラストマーシートを作製した。このフルオロエラストマーシートを、アルミニウム基材の陽極酸化皮膜表面に配置し、これ以降は実施例1と同様にして、アルミニウム基材/フルオロエラストマー層の構成を有する積層体を得た。ノギスで測定したフルオロエラストマー層の厚みは2mmであった(任意の5箇所について測定し、その平均値を厚みとした)。
【0089】
<比較例1>
次の手順に従って、積層体を作製した。
ケミカルエッチング処理及び陽極酸化処理(アルマイト処理)を施していない板状のアルミニウム基材(アルミニウム合金からなる。厚み1mm)を用意した。
【0090】
フッ素樹脂としてFEP樹脂(ダイキン社製「ネオフロン」、融点270℃、架橋部位モノマー由来の構成単位を含有しない。)を用意した。このFEP樹脂を280℃まで加熱溶融させ、アルミニウム基材の表面に圧縮成形(圧着)させた。ノギスで測定したフッ素樹脂層の厚みは50μmであった(任意の5箇所について測定し、その平均値を厚みとした)。
【0091】
以下の成分をオープンロールにより混練して、フルオロエラストマー組成物を調製した。
FFKM(パーフルオロエラストマー) 100重量部
有機過酸化物 1重量部
共架橋剤 2重量部
FFKMには、ソルベイ社製のテトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体「テクノフロンPFR94」(表1ではFFKMと称している。)を用いた。
有機過酸化物には、日油株式会社製のパーオキサイド「パーヘキサ25B」(化学名:2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン)を用いた。
共架橋剤には、日本化成社製のトリアリルイソシアヌレート「TAIC」を用いた。
【0092】
上記フルオロエラストマー組成物をオープンロールでシート状に成形して、架橋性のフルオロエラストマーシートを作製した。このフルオロエラストマーシートを、フッ素樹脂層におけるアルミニウム基材とは反対側の表面上に配置し、これ以降は実施例1と同様にして、アルミニウム基材/フッ素樹脂層/フルオロエラストマー層の構成を有する積層体を得た。ノギスで測定したフルオロエラストマー層の厚みは2mmであった(任意の5箇所について測定し、その平均値を厚みとした)。
【0093】
<比較例2>
次の手順に従って、積層体を作製した。
ケミカルエッチング処理及び陽極酸化処理(アルマイト処理)を施していない板状のアルミニウム基材(アルミニウム合金からなる。厚み1mm)を用意した。
【0094】
以下の成分をオープンロールにより混練して、フルオロエラストマー組成物を調製した。
FFKM(パーフルオロエラストマー) 100重量部
有機過酸化物 1重量部
共架橋剤 2重量部
FFKMには、ソルベイ社製のテトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体「テクノフロンPFR94」(表1ではFFKMと称している。)を用いた。
有機過酸化物には、日油株式会社製のパーオキサイド「パーヘキサ25B」(化学名:2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン)を用いた。
共架橋剤には、日本化成社製のトリアリルイソシアヌレート「TAIC」を用いた。
【0095】
アルミニウム基材の一方の主面に、シランカップリング剤系の接着剤である東洋化学研究所社製「メタロックS-10A」を、架橋処理後に得られる積層体における厚みが1μmとなるように塗布し、その接着剤層の上に上記フルオロエラストマーシートを配置した。その後、180℃、20分の条件で熱処理を施してフルオロエラストマーシートを架橋させ、さらに200℃、48時間の条件で二次架橋を行うことにより、アルミニウム基材/接着剤層/フルオロエラストマー層の構成を有する積層体を得た。ノギスで測定したフルオロエラストマー層の厚みは2mmであった(任意の5箇所について測定し、その平均値を厚みとした)。
【0096】
(剥離強度の評価)
引張試験機(ミネベア社製「TG-50kN」)を用いてJIS K 6256-2:2013に規定される90°剥離試験を行い、アルミニウム基材とフルオロエラストマー層との間の23℃における剥離強度を測定した。結果を表1に示す。試験片のサイズは、上記JIS規格に従い、長さ125mm、幅25mmとした。
【0097】
【0098】
実施例1、3、4及び6のそれぞれにおいて、フルオロエラストマー層の形成に用いるフルオロエラストマー組成物として、以下の成分をオープンロールにより混練してなるフルオロエラストマー組成物を使用したこと以外は、それぞれ実施例1、3、4及び6と同様にして積層体を作製し、剥離強度の評価したところ、それぞれ実施例1、3、4及び6と同じ値が得られた。
FKM(ポリフッ化ビニリデン、ダイキン工業株式会社製 G-755)
100重量部
MTカーボンブラック(Cancarb社製 Thermax N-990)
20重量部
酸化マグネシウム(協和化学工業株式会社製 キョーワマグ30) 15重量部
加硫剤(ダイキン工業株式会社製 V-3) 3重量部
このフルオロエラストマー組成物を用いた場合は、プレス成形条件を160℃、20分、次いで310℃、10分とし、二次架橋条件を150℃、48時間とした。
【0099】
また、実施例1、3、4及び6のそれぞれにおいて、フルオロエラストマー層の形成に用いるフルオロエラストマー組成物として、以下の成分をオープンロールにより混練してなるフルオロエラストマー組成物を使用したこと以外は、それぞれ実施例1、3、4及び6と同様にして積層体を作製し、剥離強度の評価したところ、それぞれ実施例1、3、4及び6と同じ値が得られた。
FKM(ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ダイキン工業株式会社製 G-755) 100重量部
SRFカーボンブラック(東海カーボン株式会社 シーストS) 13重量部
水酸化カルシウム(近江化学工業株式会社製 カルディック♯2000)
6重量部
酸化マグネシウム(協和化学工業株式会社製 キョーワマグ150) 3重量部
このフルオロエラストマー組成物を用いた場合は、プレス成形条件を160℃、45分、次いで275℃、10分とし、二次架橋条件を150℃、48時間とした。
【符号の説明】
【0100】
10 金属基材、11 陽極酸化皮膜、20 フッ素樹脂層、30 フルオロエラストマー層。