(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】窓の電気的接続用の流体的にシールされた囲い
(51)【国際特許分類】
H01R 4/70 20060101AFI20220215BHJP
B60S 1/02 20060101ALI20220215BHJP
H01R 4/02 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
H01R4/70 B
H01R4/70 K
B60S1/02 300
H01R4/02 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018061363
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2018-05-09
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-29
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505265539
【氏名又は名称】エージーシー オートモーティヴ アメリカズ アールアンドディー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エー.アイムソン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム シー.シューフ
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】中村 大輔
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第2893189(FR,A1)
【文献】特開平7-14662(JP,A)
【文献】米国特許第7134201(US,B2)
【文献】欧州特許出願公開第1139697(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/70
B60S 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的接続素子と透明ペインの第1の表面上に設置された導電体との間に形成された電気的ジョイントを環境的にシールする方法であって、
前記透明ペインに機械的な保護囲いを接着し、間に内部容積を定めるステップであって、前記電気的ジョイントは、前記保護囲いから離間して、前記内部容積内に配置され、前記保護囲いは、前記透明ペインの前記第1の表面を覆い、前記透明ペインの前記第1の表面とは反対の第2の表面を覆わないように設置され、前記保護囲いは、複数の壁を有し、該複数の壁は、下方に延伸し、接着剤を介して前記透明ペインと当接される、ステップと、
前記内部容積の少なくとも一部に、シール材料を充填するステップであって、前記シール材料は、前記内部容積への液体の侵入を抑制し、前記電気的ジョイントの周囲に流体環境バリアを提供する、ステップと、
を有し、
前記透明ペインに前記保護囲いを接着するステップは、前記保護囲いの少なくとも一部に前記シール材料を充填するステップの前に生じる、方法。
【請求項2】
前記充填するステップは、前記保護囲いを貫通して延在する充填ポートを介して、前記シール材料を前記内部容積に注入するステップを有し、
さらに、前記充填ポート内における前記シール材料の存在を確認するステップにより、前記充填するステップが実施されたことを判断するステップ、
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シール材料は、充填の後、前記電気的ジョイントを被覆し、
前記シール材料は、充填の後、前記保護囲いの少なくとも一つの壁と接触する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記透明ペインは、さらに、該透明ペインに設置されたセラミックコーティングを有し、
前記保護囲いは、前記セラミックコーティングに接着される、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記導電体は、実質的に銀で構成され、および/または
前記シール材料は、電気絶縁材料である、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記内部容積は、第2の電気的接続素子を含み、
該第2の電気的接続素子は、前記内部容積の外部に延伸する第2のワイヤに取り付けられ、
前記シール材料は、充填の後、前記第2の電気的接続素子と前記透明ペインに設置された第2の導電体との間の、第2の電気的ジョイントを被覆する、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記保護囲いは、構造結合テープまたは粘着剤を用いて、前記透明ペインに接着される、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
窓組立体であって、
ガラスを有する透明ペインと、
該透明ペインの第1の表面に設置された導電体と、
前記導電体にエネルギーを供給する電気接続組立体であって、該電気接続組立体から延伸する配線ハーネスを有する電気接続組立体と、
前記電気接続組立体と前記導電体の間の電気的ジョイントと、
前記透明ペインに接着され、間に内部容積を定める機械的な保護囲いであって、前記電気的ジョイントは、前記保護囲いから離間され、前記内部容積内に配置され、前記保護囲いは、前記配線ハーネスが貫通して延伸する開口を定める、保護囲いと、
前記内部容積内に設置され、前記電気的ジョイントの周囲に流体バリアを提供するシール材料と、
を有し、
前記保護囲いは、複数の壁を有し、該複数の壁は、下方に延伸し、接着剤を介して前記透明ペインと当接され、前記保護囲いは、前記透明ペインの前記第1の表面を覆い、前記透明ペインの前記第1の表面とは反対の第2の表面を覆わないように設置され、
前記シール材料は、前記電気的ジョイントを被覆し、
前記シール材料は、前記保護囲いの少なくとも一つの壁と接触し、前記内部容積への液体の侵入を抑制する、窓組立体。
【請求項9】
前記保護囲いは、さらに、前記シール材料を受容するように構成された、少なくとも一つの充填ポートを有し、
前記開口は、前記シール材料が前記少なくとも一つの充填ポートを介して受容された際に、前記内部容積から空気が排出できるように構成され、
前記シール材料は、前記開口および前記少なくとも一つの充填ポートを占めるように構成され、これにより、前記内部容積への水分の侵入が抑制される、請求項8に記載の窓組立体。
【請求項10】
ガラスペインに設置された電気的ジョイントを環境的にシールする囲いであって、
前記ガラスペインは、相互に対向する第1の表面および第2の表面を有し、当該囲いは、前記ガラスペインの前記第1の表面を覆い、前記第2の表面を覆わないように設置され、
当該囲いは、
上部部材と、
前記上部部材から延伸し、開放孔を定める複数の壁
と、
前記開放孔内のシール材料と、
を有し、
前記複数の壁の各々は、底部に、前記ガラスペインの前記第1の表面と対向する表面を有し、
該表面は、接着剤を介して前記ガラスペインと接着するように構成され、前記複数の壁の少なくとも一つは、貫通する開口を定め、前記開口は、該開口を貫通する配線ハーネスを受容するように構成さ
れ、
前記シール材料は
、前記電気的ジョイントの周囲に流体バリアを提供するように構成される、囲い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、窓組立体の分野に関し、特に、窓の電気的接続用の流体的にシールされた囲いに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両および建物に使用されている窓組立体は、透明ペインの表面に設置された導電体を含むように構成される。導電体は、任意の所望の電気的機能、例えば、透明ペインの加熱、またはアンテナとしての機能を提供する。導電体は、例えば、印刷された銀の回路である。導電体に結合された配線ハーネスを介して、電源から導電体に電力が移送される。配線ハーネスは、導電体に結合された電気的接続素子を有する。導電体には、はんだ接合のような導電性接合を用いて、端子が結合される。
【0003】
車両および建物におけるこれらの使用のため、導電性ジョイントは、自然環境に暴露される。この暴露により、ハンダ接合に腐食、劣化、および欠陥が生じ、ハンダ接合を介した導電体への電力の伝達が難しくなる。自然環境への暴露からハンダ接合を保護するため、導電性ジョイント、導電体の一部、配線ハーネスの一部、および他の暴露素子にわたって、ポリマー封止剤が設置される。ポリマー封止剤は、非導電性材料で構成されても良い。
【0004】
ポリマー封止剤の一つの問題は、はんだ接合に機械的な応力が生じることである。例えば、ハンダ接合と、透明ペインと、ポリマー封止剤との間の熱膨張係数の差により、組立体に機械的な応力が形成される。透明ペインがガラスペインの場合、ガラスペインにクラックが生じやすくなる。また、機械的な応力により、導電体が透明ペインから剥離したり、ハンダ接合が導電体の一部との電気的接続から離れたり、またはハンダ接合にクラックが生じたりすることが生じ得る。
【0005】
ポリマー封止剤の別の問題は、ハンダ接合が自然環境に暴露されることである。水分が、ポリマー封止剤を介して定常的に侵入し、ハンダ接合の近傍の導電体と接触する。ハンダ接合の近傍の導電体と接触した水分は、ポリマー封止剤によって隔離されるため、気化が遅くなる。そのため、水分によって、導電体またはハンダ接合が腐食し、これにより導電体の特性が劣化し、または導電体が不作動となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のような問題を回避するため、部材および電気的ジョイントに対する機械的応力が低減された、窓組立体を提供することが望ましい。また、電気的ジョイントへの水分の侵入が抑制された窓組立体を提供することが望ましい。本発明のシステムおよび方法では、流体シールされた囲いが提供され、これらの問題が軽減および/または排除される。囲いは、電気的ジョイントに印加される機械的応力を実質的に抑制し、囲いにより提供された流体シールは、水分で活性化される電気的ジョイントの腐食を低減または軽減する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様では、電気的接続素子と透明ペインの上に設置された導電体との間に形成された電気的ジョイントを環境的にシールする方法が開示される。当該方法は、前記透明ペインに機械的な保護囲いを接着し、間に内部容積を定めるステップと、前記内部容積の少なくとも一部に、シール材料を充填するステップであって、前記シール材料は、前記内部容積への液体の侵入を抑制し、前記電気的ジョイントの周囲に流体環境バリアを提供する、ステップと、を有する。前記電気的ジョイントは、前記囲いから離間して、前記内部容積内に配置される。
【0008】
本発明の別の態様では、前記充填するステップは、前記囲いを貫通して延在する充填ポートを介して、前記シール材料を前記内部容積に注入するステップを有する。
【0009】
本発明の別の態様では、当該方法は、さらに、前記充填ポート内における前記シール材料の存在を確認するステップにより、前記充填するステップが実施されたことを判断するステップ、を有する。
【0010】
本発明の別の態様では、前記シール材料は、充填の後、前記電気的ジョイントを被覆し、前記シール材料は、充填の後、前記囲いの少なくとも一つの壁と接触する。
【0011】
本発明の別の態様では、前記透明ペインは、さらに、該透明ペインに設置されたセラミックコーティングを有し、前記導電体は、前記セラミックコーティングに接着される。
【0012】
本発明の別の態様では、前記導電体は、実質的に銀で構成される。
【0013】
本発明の別の態様では、前記シール材料は、電気絶縁材料である。
【0014】
本発明の別の態様では、前記内部容積は、第2の電気的接続素子を含み、該第2の電気的接続素子は、前記内部容積の外部に延伸する第2のワイヤに取り付けられ、前記シール材料は、充填の後、前記第2の電気的接続素子と前記透明ペインに設置された第2の導電体との間の、第2の電気的ジョイントを被覆する。
【0015】
本発明の別の態様では、前記囲いは、構造結合テープまたは粘着剤を用いて、前記透明ペインに接着される。
【0016】
本発明の別の態様では、前記囲いは、第1の部材および第2の部材を有し、前記第1の部材は、前記透明ペインに接着され、前記第2の部材は、前記第1の部材に取り付けられ、前記第1の部材と前記第2の部材の間の開口を、配線ハーネスが貫通する。
【0017】
本発明の別の態様では、前記第2の部材は、機械的インターロックを用いて前記第1の部材に取り付けられる。
【0018】
本発明の別の態様では、前記透明ペインに前記囲いを接着するステップは、前記囲いの少なくとも一部に前記シール材料を充填するステップの前に生じる。
【0019】
本発明の別の態様では、窓組立体は、透明ペインと、導電体と、電気接続組立体と、電気的ジョイントと、前記透明ペインに接着された機械的な保護囲いと、シール材料と、を有する。前記透明ペインは、ガラスを有する。前記導電体は、前記透明ペインに設置される。前記電気接続組立体は、前記導電体にエネルギーを供給する。また、前記電気接続組立体は、該電気接続組立体から延伸する配線ハーネスを有する。前記電気的ジョイントは、前記電気接続組立体と前記導電体の間にある。前記機械的な保護囲いは、前記透明ペインに接着され、間に内部容積を定める。前記電気的ジョイントは、前記囲いから離間され、前記内部容積内に配置され、前記囲いは、前記配線ハーネスが貫通して延伸する開口を定める。前記シール材料は、前記内部容積内に設置され、前記電気的ジョイントの周囲に流体バリアを提供する。
【0020】
本発明の別の態様では、前記シール材料は、前記電気的ジョイントを被覆し、前記シール材料は、前記囲いの少なくとも一つの壁と接触し、前記内部容積への液体の侵入を抑制する。
【0021】
本発明の別の態様では、前記囲いは、さらに、前記シール材料を受容するように構成された、少なくとも一つの充填ポートを有する。
【0022】
本発明の別の態様では、前記開口は、前記少なくとも一つの充填ポートの先端に配置される。前記開口は、前記シール材料が前記少なくとも一つの充填ポートを介して受容された際に、前記内部容積から空気が排出できるように構成され、前記シール材料は、前記開口および前記少なくとも一つの充填ポートを占めるように構成され、これにより、前記内部容積への水分の侵入が抑制される。
【0023】
本発明の別の態様では、前記囲いは、囲い組立体であり、前記透明ペインに接着された第1の部材と、前記第1の部材に機械的に取り付けられた第2の部材と、を有する。
【0024】
本発明の別の態様では、ガラスペインに設置された電気的ジョイントを環境的にシールする囲いが開示される。当該囲いは、上部部材と、複数の壁と、シール材料とを有する。前記複数の壁は、前記上部部材から延伸し、開放孔を定める。前記複数の壁は、前記上部部材と対向する表面を定める。該表面は、前記ガラスペインと接着するように構成される。前記複数の壁の少なくとも一つは、貫通する開口を定める。前記開口は、該開口を貫通する前記配線ハーネスを受容するように構成される。前記シール材料は、前記開放孔内に配置される。前記シール材料は、電気的接続素子の周囲を変形して、前記電気的ジョイントの周囲に流体バリアを提供するように構成される。
【0025】
本発明の別の態様では、当該囲いは、さらに、前記上部部材に配置されたベントを有する。前記ベントは、前記シール材料の置換量(displaced amount)を受容するように構成される。
【0026】
本発明の別の態様では、当該囲いは、さらに、第1の部材および第2の部材を有する。前記第1の部材は、前記上部部材と、前記複数の壁の一部とを有する。前記第1の部材は、前記シール材料を有する。前記第2の部材は、前記複数の壁の第2の部分を有する。前記第2の部材は、機械的インターロックを介して、前記第1の部材と結合されるように構成される。
【0027】
本発明の前述の特徴および利点、ならびに他の特徴および利点は、添付図面を参照した以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態による、窓組立体を含む車両の概略的な正面図である。
【
図2】
図1の窓組立体の一部の部分断面を示した、概略的な上面図である。
【
図3】
図1の窓組立体の一部の部分断面を示した、概略的な正面図である。
【
図4】
図1の窓組立体の一部の部分断面を示した、概略的な側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、囲い組立体の概略的な正面図である。
【
図6】本発明の実施形態による、窓の電気的接続用の流体シールされた囲いを製造する方法の概略的なフロー図である。
【
図7】本発明の実施形態による、窓の電気的接続用の流体シールされた囲いを製造する別の方法の概略的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面は、一例であって、請求項に規定の主題を限定することを意図するものではない。以下の詳細な説明では、添付図面を参照して、一実施例について説明する。
【0030】
本発明によるシステムおよび方法では、流体シールされた囲いが提供される。囲いは、電気的ジョイントに印加される機械的応力を実質的に抑制し、流体シールは、電気的ジョイントの水分活性化腐食を抑制または排除する。
【0031】
図1および2を参照すると、図には、本発明の実施形態による窓組立体12が示されている。窓組立体12は、例えば、霜取りシステム14を有する、車両10の後部窓組立体であっても良い。窓組立体12は、配線ハーネス16、透明ペイン18、透明ペイン18に取り付けられた導電体20、および導電体20の一部を覆う物理的な囲い30を有する。ある実施形態では、透明ペイン18は、全体がガラスで構成される。ある実施形態では、透明ペイン18は、ガラス、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリエチレンテレフタレート、およびこれらの組み合わせ等の1または2以上の層を有する積層体であっても良い。
【0032】
導電体20は、1または2以上の作動素子と電気的に接続され、これらは、所望の機能を実行し、または促進するように構成される。図に示された例では、作動素子は、1または2以上の抵抗加熱素子を有し、これらは、霜取りシステム14の一部であり、透明ペインの加熱により、透明ペイン18の霜取りまたは曇り除去用に作動しても良い。導電体20は、アンテナとしての機能のような、電気的接続に必要な異なる所望の機能を提供しても良いことが想定される。
【0033】
ある実施形態では、導電体20は、1または2以上の銀の層で構成される。別の実施形態では、導電体20は、銀以外の、または銀に加えて、他の導電性金属および/もしくは他の導電性材料の1または2以上の層で構成される。導電体20は、フィルム、コーティング、および/または他の任意の好適な形態であっても良い。導電体20は、多孔質、非多孔質、またはこれらの組み合わせであっても良い。ある実施形態では、導電体20は、多孔質な銀フィルムである。
【0034】
導電体20は、例えば、溶融、接着、物理的な取り込み、およびこれらの組み合わせなどを用いて、透明ペイン18に取り付けられても良い。ある実施形態では、導電体20は、透明ペイン18上に印刷されて、例えば、印刷された銀フィルムまたは印刷された銀回路が形成されても良い。ある実施形態では、導電体20は、透明ペイン18上の、透明ペイン18の周端近傍に配置される。導電体20は、しばしば、例えば霜取りシステム14、アンテナ、曇り除去等のような、回路部材である。導電体20は、回路と一体化され、または回路の延長であっても良い。導電体20は、1または2以上の母線(バスバー。図示されていない)を有しても良い。示された導電体20は、矩形状に規定されているが、導電体20は、任意の好適な形状を有し得る。
【0035】
配線ハーネス16は、導電体20と外部装置との間で通電するように構成される。ある実施形態では、外部装置は、電源であり、配線ハーネス16は、電源(図示されていない)から導電体20に電力を伝達する。配線ハーネス16は、電気的接続素子22を含み、これは、端子コネクタ24およびそこから延伸するワイヤ26を有する。端子コネクタ24は、配線ハーネス16の末端に配置され、透明ペイン18に取り付けられた導電体20を機械的に嵌合するように構成される。
【0036】
電気的接続素子22は、導電体20をワイヤ26に電気的に結合する。電気的接続素子22は、導電体20にエネルギーを供給するため、導電体20と電気的に接続される。電気的接続素子22は、銅、銅合金、銀、銀合金、およびこれらの組み合わせ等で構成され得る。また、銅、銅合金、銀、および銀合金に加えて、またはこれらの代わりに、電気的接続素子22は、鉄、モリブデン、タングステン、ニッケル、ハフニウム、タンタル、チタン、クロム、イリジウム、ニオブ、バナジウム、白金、スズ、およびこれらの組み合わせ等を含んでも良い。示された実施形態では、電気的接続素子22は、銅である。
【0037】
ある実施形態では、電気的接続素子22は、例えば、電気的ジョイント28を介して、機械的かつ電気的に導電体20に結合される。電気的ジョイント28は、伝導性接着剤、フィルム、ゴム、またはバネを用いて、導電体20の外表面と端子コネクタ24の間に、またはそれぞれの上に、形成される。ある実施形態では、電気的ジョイント28は、ハンダ接合であり、これは、鉛、インジウム、スズ、銅、銀、ビスマス、ゲルマニウム、ガリウム、金および/もしくは他の導電性金属から形成された金属および/もしくは合金、または非金属で構成される。ある実施形態では、電気的ジョイント28は、鉛フリーはんだで形成される。
【0038】
機械的/電気的接続の強度または耐久性に関わる物理的応力または衝撃から、電気的ジョイント28を保護するため、透明ペイン18には、電気的ジョイント28の周囲を取り囲む配置で、物理的な囲い30が設置される。
図2乃至4には、囲い30の部分断面を示す。図に示すように、囲い30は、電気的ジョイント28を取り囲む物理的なバリアを提供し、電気的ジョイント28と囲い30の外部の部材との間の接触が遮断される。囲い30は、電気的ジョイント28を十分に覆うことができる限り、いかなる幾何形状を有しても良く、これにより、物理的バリアが提供される。また、囲い30は、そこに配置された導電体20の一部の腐食を有意に抑制する。
【0039】
図に示したようなある実施形態では、囲い30は、上部部材32と、該上部部材32から下方に延伸し、透明ペイン18に当接する複数の壁34とを有しても良い。上部部材32および複数の壁34は、開放孔を定める。透明ペイン18との当接の際、上部部材32、複数の壁34、および透明ペイン18は、内部容積35を定める。また、複数の壁34の少なくとも一つは、開口36を定め、該開口は、配線ハーネス16の一部を受容するように構成される。ある実施形態では、開口36は、1または2以上の歪み緩和特徴部を有し、ワイヤ26の物理的な操作により、電気的ジョイント28に応力が加わることが抑制されても良い。
【0040】
囲い30は、熱可塑性ポリマ、熱硬化性ポリマ、およびこれらの組み合わせ等を含む重合材料から形成されても良い。重合材料の非限定的な例には、シリコーン、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、およびポリオキシメチレン等が含まれる。ある構成では、囲い30は、接着剤40を用いて透明ペイン18に取り付けられても良い。接着剤40は、透明ペイン18への取り付けに加えて、または透明ペイン18への取り付けの代わりに、囲い30を導電体20に取り付ける。好適な接着剤は、粘着剤、構造結合テープ、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系、およびシリコーン等のような、ガラスに対して密着力を提供する接着剤である。必要な場合、透明ペイン18に密着促進剤または下地層(プライマ)を設置して、接着剤40の結合力を高めても良い。
【0041】
物理的な囲い30は、電気的ジョイント28に対する物理的な接触に対して、効果的なバリア性を提供するものの、腐食により電気的ジョイント28を化学的に劣化させ得る液体による接触から、電気的ジョイント28を保護するにはあまり効果的ではない可能性がある。特に、ワイヤ26用の開口36のような開口、または透明ペイン18に対する不完全なシールは、後に囲い30から気化することが難しい、水分または他の液体の侵入を許してしまう。これらの取り込まれた液体は、その後、電気的ジョイント28の劣化につながり得るミクロ環境を形成するため、耐久性の問題が存在し得る。囲い30の環境バリアの質を改善するため、囲い30内には、流体シール材料38が提供され、内部容積の少なくとも一部が充填され、電気的ジョイント28がよりいっそう絶縁されても良い。
【0042】
図4に概略的に示すように、シール材料38は、端子コネクタ24、およびで導電体20の少なくとも一部を被覆し、電気的ジョイント28の腐食を抑制することが好ましい。ある実施形態では、シール材料は、例えば、開口36と、該開口を通る配線ハーネス16との間のシールにより、囲い30への水分の侵入を抑制する。部材の用途および特定の配置に応じて、シール材料38は、導電性材料であっても電気絶縁材料であっても良い。ある実施形態では、電気絶縁材料は、シリコーン、室温加硫シリコーン、可撓性エポキシ、ウレタン、ブチル、誘電体グリース、およびこれらの組み合わせ等からなる群から選定される。
【0043】
流体シール材料38は、十分な粘性を有し、組み立て後に材料38が囲い30からリークすることが抑制されることが望ましい。一方で、囲い30からの応力、または電気的ジョイント28に対する熱膨張に対する耐性のため、十分な流動性が必要である。ある実施形態では、シール材料38は、硬化性材料であり、これは、硬化後に可撓性を有しても良い。ある実施形態では、シール材料38は、誘電体グリースのような粘性流体であり、これは、長時間にわたって実質的にその配置が維持される。
【0044】
ある実施形態では、シール材料38は、囲い30が透明ペイン18に取り付けられる前に設置されても良い。例えば、シール材料38は、上部部材32および複数の壁34により形成された開放孔内に配置されても良い。シール材料38は、通常変形するように構成され、透明ペイン18への囲いの取り付けと同時に、電気的接続素子22が被覆される。
【0045】
ある実施形態では、シール材料38は、囲い30が透明ペイン18に取り付けられた後に、設置されても良い。例えば、シール材料38は、ニードルを介して囲い30に注入され、および/または開口(例えば開口36)もしくは補助充填ポート42を介して、容積35に提供されても良い。ある構成では、ニードルが使用される場合、該ニードルは、囲い30の固体部分に挿入されても良い。ニードルの除去後、囲い30は、穴を実質的に閉止し、水分の侵入が抑制される。あるいは、シール材料38は、配線ハーネス16が通る囲い30の開口36を介して注入されても良い。さらに別の実施形態では、囲い30は、少なくとも一つの充填ポート42(例えば
図2に示されている)を含んでも良い。充填ポート42は、例えばノズルまたは他の充填装置を用いたシール材料38の注入を受容する。
【0046】
充填過程の間、開口36および/または充填ポート42は、シール材料38で置換された際に空気が排出されるベントを提供することが有意である。また、ある実施形態では、開口36は、内部容積がシール材料38で十分に充填された際の、視覚的表示を提供しても良い。例えば、オペレータおよび/または組立者は、シール材料38が内部に配置されたかどうかを検査することにより、または開口36もしくは充填ポート42を介して視認することにより、内部容積が実際に充填されたことを判断しても良い。同様に、シール材料が開口36から排出される際に、シール材料38は、複数の壁34と、開口36を貫通する配線ハーネス16の一部との間に、実質的に流体気密シールを形成する。
【0047】
ある実施形態では、囲い30は、開口36に加えて、1または2以上のベント(図示されていない)を有する。ベントは、空気がシール材料38と置換された際に、内部容積35から空気が排出されるように構成される。ベントは、充填ポート42に対して配置されることが有意であり、これにより、シール材料38が内部容積35の所望の部分を占めるようになる。例えば、ベントは、開口36の先端に配置され、内部容積への空気の取り込みが抑制されるとともに、内部容積35がシール材料38で実質的に充填されたことを示す視覚的表示が提供される。
【0048】
ある実施形態では、内部容積35は、第2の電気接続素子を有しても良い。ある実施形態では、第2の電気接続素子は、内部容積35の外側に延伸する第2のワイヤに取り付けられても良い。このジュアル接続構成では、シール材料38は、第2の電気接続素子と、透明ペイン18に設置された第2の導電体との間の、第2の電気的ジョイントを追加で被覆しても良い。
【0049】
ある実施形態では、透明ペイン18は、さらにセラミックコーティングを有する。ある実施形態では、囲い30は、セラミックコーティングに接着される。必要な場合、セラミックコーティングと接着剤40の間に、密着促進剤またはプライマが配置され、囲い30との結合が改善される。
【0050】
図5には、
図2乃至4に示した囲い30と同様の方法で使用され得る、複数部品の囲い組立体30aを示す。図に示すように、囲い組立体30aは、第1の部材44および第2の部材46を有する。第1の部材44は、透明ペインに接着され、第2の部材46は、第1の部材44に取り付けられる。ある実施形態では、第1の部材44は、機械的なインターロック48を介して、第2の部材46に取り付けられる。第1の部材44と第2の部材46との間には、第2の部材46が第1の部材44に取り付けられた際に、配線ハーネス16用の開口36が定められても良い。複数部品の囲い組立体を使用することにより、囲い30と透明ペイン18との間の結合を難しくする過充填の懸念をすることがない、予備充填された囲い30の使用が可能となる。特に、第1の部材44は、予備充填された第2の部材46の取り付け前に、透明ペイン18に接着することができる。第1の部材44は、第2の部材46を取り付ける前に、透明ペインに強固に固定されるため、囲い組立体30a内に予備充填されたシール材料38のいかなる過充填および染み出しも、開口を介して排出され、第1の部材44と透明ペイン18との間の接着界面に干渉しない。
【0051】
図6および
図7を参照すると、流体シールされた囲いを有する窓組立体12を提供する方法が示されている。
図6および
図7に示す方法は、いずれも、囲いを透明ペイン18に接着するステップ602と、囲いの内部容積の少なくとも一部をシール材料で充填するステップ604と、を有する。
【0052】
図6には、流体シールされた囲いを有する窓組立体12を提供する方法600が示されている。当該方法では、透明ペインに囲いを接着するステップ602は、囲いの内部容積の少なくとも一部を充填するステップ604の前に生じる。
図7には、流体シールされた囲いを有する窓組立体12を提供する方法700を示す。透明ペインに囲いを接着するステップ602は、囲いの内部容積の少なくとも一部を充填するステップ604の後に生じる。
【0053】
透明ペインに囲いを接着するステップ602の後、囲いおよび透明ペインにより、内部容積が定められ、内部容積内に電気的接続素子22が設置される。電気的接続素子22は、内部容積の外側に延伸するワイヤ26に取り付けられる。
【0054】
透明ペインに囲いを接着するステップ602、および内部容積の少なくとも一部を充填するステップの両方の後、シール材料は、電気的接続素子22と透明ペイン上に設置された導電体との間の電気的ジョイント28を被覆する。また、透明ペインに囲いを接着するステップ602、および内部容積の少なくとも一部を充填するステップ604の両方の後、シール材料は、囲いの少なくとも一つの壁と接触する。
【0055】
本願に記載のシステムおよび方法では、電気的ジョイント28に、全くもしくは僅かの応力しか伝達されない状態で、または電気的ジョイント28の疲労が全くもしくは僅かしか生じない状態で、囲い30と窓組立体12の外部の部材との間の、機械的な直接接触が可能になると言う利点がある。
【0056】
別の実施形態、および/または本発明の技術を使用した場合、窓組立体12は、該窓組立体12を車両10上に位置合わせし、配置し、または誘導する、1もしくは2以上の機能部材(図示されていない)を有しても良い。ある実施形態では、機能部材は、窓組立体12が車両10に取り付けられた補完的なレール上をスライドできるような、レールであっても良い。ある実施形態では、機能部材は、窓組立体12を車両10にマウントするためのフレームである。機能部材は、該機能部材の一部を覆うポリマー封止剤を介して、窓組立体12に取り付けられても良い。これらの構成では、機能部材は、複数部品の囲い30aの第1の部材44を定めても良い。
【0057】
前述の窓組立体10は、車両用途に関して示されているが、本願に記載のシステムおよび方法は、建物のような、保護されていない電気的接続素子22が自然環境に暴露されたり、電気的接続素子22に直接機械的な応力が伝達することにより、電気的ジョイント28が破損するという認識されたリスクをもたらすような、他の用途に使用されても良い。
【0058】
(実施例)
(例1)
電気的ジョイントの周囲に、機械的な保護囲いまたはシール材料がないサンプルを準備した。サンプルは、ガラスの透明ペインと、実質的に銀からなる導電体とを有する。電気的ジョイントは、導電体上に形成される。サンプルは、38℃で96時間、5%の塩濃度の水に暴露される。暴露の後に、導電体は、ガラスから幾分剥離していることが観測された。導電体には、剥離サイトの近傍に腐食が認められた。
【0059】
(例2)
電気的ジョイントの周囲に、機械的な保護囲いまたはシール材料がないサンプルを準備した。サンプルは、ガラスの透明ペインと、実質的に銀からなる導電体とを有する。電気的ジョイントは、導電体上に形成される。サンプルは、50℃で720時間、水に暴露される。暴露の後に、顕著な剥離が認められ、導電体がガラスから剥離していることが観測された。導電体には、剥離サイトの近傍に腐食が認められた。
【0060】
(例3)
電気的ジョイントの周囲に機械的な保護囲いを有する窓組立体を準備した。囲いの内部容積内には、シール材料は設置していない。窓組立体は、ガラスの透明ペインと、実質的に銀からなる導電体とを有する。電気的ジョイントは、導電体上に形成される。窓組立体は、12から18ヶ月の間、フィールド条件に暴露される。暴露の後に、導電体と電気的ジョイントとの間の接触領域のみに、導電体の腐食が観測された。腐食は、接触領域の30%超を占めていた。
【0061】
(例4)
電気的ジョイントの周囲に、機械的な保護囲いを有するサンプルを準備した。機械的な保護囲いの内部容積の一部に、シール材料を充填した。シール材料は、液体の容積内への侵入を抑制する。サンプルは、ガラスの透明ペインと、実質的に銀からなる導電体とを有する。電気的ジョイントは、導電体上に形成される。サンプルは、1200時間、5%の塩濃度の水に暴露される。暴露の後に、導電体の剥離は観測されなかった。また、電気的ジョイントの周囲に、腐食は観測されなかった。
【0062】
本発明を実施する際の最良の形態について、詳しく説明したが、本願に関連する同様の技術により、添付の特許請求の範囲内で、開示を実行するための各種代替構成および実施形態が想定される。
【符号の説明】
【0063】
10 車両
16 配線ハーネス
18 ペイン
20 導電体
22 電気的接続素子
24 端子コネクタ
26 ワイヤ
28 電気的ジョイント
30 囲い
36 開口