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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】インクジェットプリンター
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20220215BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
B41J2/165 303
B41J2/01 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018076086
(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公開番号】P2019181817
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【弁理士】
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】前野 尚子
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-166139(JP,A)
【文献】米国特許第06454388(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルが複数形成されたノズル面を備えるインクジェットヘッドと、
前記ノズル面をワイピングするためのブレードを備え、前記ノズル面に対して前記ブレードを移動させることによって前記ブレードによって前記ノズル面をワイピングするワイピング装置と
を備え、
前記インクジェットヘッドは、前記ノズルによる前記インクの吐出の方向に突き出た状態で前記ノズル面を囲む凸状壁部を備え、
前記ワイピング装置によるワイピングの方向は、前記ノズル面に形成された複数の前記ノズルのうち前記凸状壁部に最も近い特定のノズルと、前記凸状壁部のうち前記特定のノズルに最も近い部分とを結ぶ直線の延在方向と略同一であり、
前記ブレードは、可撓性を有し、且つ前記ノズルに対向する先端縁が前記ノズル面と略平行の直線状の形状を有し、
前記ワイピングの方向と直交する方向における前記ブレードの長さは、前記凸状壁部のうち前記ワイピングの方向と直交する方向において互いに対向する2つの対向部の、前記インクの吐出の方向における先端部に、前記ワイピング装置によるワイピングの際に同時に接触可能な長さであり、
前記ワイピング装置は、前記2つの対向部の前記先端部に前記ブレードを同時に接触させて前記ブレードを変形させることによって前記ブレードを前記ノズル面に接触させながら、前記ブレードによって前記ノズル面をワイピングすることを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項2】
前記ノズル面は、撥液性を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンター。
【請求項3】
複数の前記ノズルは、一方向に並べられてノズル列を形成しており、
前記ノズル列が延在する方向と直交する方向に前記ブレードによって前記ノズル面をワイピングすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェットプリンター。
【請求項4】
前記ワイピング装置は、前記ブレードによって前記ノズル面をワイピングする場合に、前記ノズル面のうち前記対向部の近傍の特定の範囲の部分に前記ブレードを接触させないことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のインクジェットプリンター。
【請求項5】
前記特定の範囲の部分は、前記ノズルが形成されていないことを特徴とする請求項4に記載のインクジェットプリンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に対してインクを吐出することによって印刷を実行するインクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェットプリンターとして、インクを吐出するノズルが複数形成されたノズル面を備えるインクジェットヘッドと、ノズル面をワイピングするためのブレードを備え、ノズル面に対してブレードを移動させることによってブレードによってノズル面をワイピングするワイピング装置とを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-166374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のインクジェットプリンターにおいては、ブレードによってノズル面をワイピングした直後にノズル面にインクが残っている場合があり、ワイピング後にノズル面に残ったインクによってインクジェットヘッドによるインクの吐出不良が発生するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、インクジェットヘッドによるインクの吐出不良の発生を低減することができるインクジェットプリンターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインクジェットプリンターは、インクを吐出するノズルが複数形成されたノズル面を備えるインクジェットヘッドと、前記ノズル面をワイピングするためのブレードを備え、前記ノズル面に対して前記ブレードを移動させることによって前記ブレードによって前記ノズル面をワイピングするワイピング装置とを備え、前記インクジェットヘッドは、前記ノズルによる前記インクの吐出の方向に突き出た状態で前記ノズル面を囲む凸状壁部を備え、前記ワイピング装置によるワイピングの方向は、前記ノズル面に形成された複数の前記ノズルのうち前記凸状壁部に最も近い特定のノズルと、前記凸状壁部のうち前記特定のノズルに最も近い部分とを結ぶ直線の延在方向と略同一であることを特徴とする。
【0007】
本願の発明者は、研究の結果、「ブレードによってノズル面をワイピングした後に、ノズル面のうちワイピングの方向における凸状壁部の端の近傍の部分と比較して、ノズル面のうちワイピングの方向と直交する方向における凸状壁部の端の近傍の部分に、インクが残り易く、インクの残り量が多い。」という知見を得た。
ここで、インクジェットヘッドによるインクの吐出不良は、ワイピング後にノズル面に残ったインクがノズルの近傍に存在することによって発生するリスクが高まる。ノズルの近傍に残ったインクがノズル上に移動してノズルを塞ぐ等の不具合の原因になるからである。したがって、ノズルは、ブレードによってノズル面をワイピングした後にインクが残り易い部分の近傍に配置されていない方が良い。
本発明のインクジェットプリンターは、ノズル面に形成された複数のノズルのうち凸状壁部に最も近い特定のノズルと、凸状壁部のうちこのノズルに最も近い部分とを結ぶ直線の延在方向と略同一の方向にワイピングするので、この方向と直交する方向にワイピングする構成と比較して、凸状壁部の端の近傍の部分にインクが残り難く、インクの残り量が少ない。
したがって、本発明のインクジェットプリンターは、ワイピング後にノズル面に残ったインクがノズルの近傍に存在することを抑えることができ、その結果、インクジェットヘッドによるインクの吐出不良の発生を低減することができる。
【0008】
本発明のインクジェットプリンターにおいて、前記ノズル面は、撥液性を有しても良い。
【0009】
ノズル面が撥液性を有している場合にブレードによってノズル面がワイピングされるとき、ノズル面に存在するインクは、ノズル面の撥液性によってはじかれて纏まった状態でブレードによって除去される。一方、ノズル面のノズルの孔には、当然インクが満たされていて撥液性を有していないので、ブレードによってワイピングされた後に、ノズルの孔を中心にしたその近傍において、ノズルの孔の近傍以外の箇所と比較して、インクが残り易い。
ノズルの孔から凸状壁部までの距離が短い場合、ブレードによってノズル面がワイピングされた後に凸状壁部の端の近傍の部分にインクの残り量が多いと、凸状壁部の端の近傍の部分に残ったインクがノズル上に移動してノズルを塞ぐ等の不具合の原因になるリスクが高まる。
本形態によれば、ノズル面に形成された複数のノズルのうち凸状壁部に最も近いノズルと、凸状壁部のうちこのノズルに最も近い部分とを結ぶ直線の延在方向と略同一の方向にブレードによってノズル面がワイピングされることによって、この方向と直交する方向にブレードによってノズル面がワイピングされた場合と比較して、ノズル面のうち凸状壁部の近傍のノズルの近傍の部分にインクが残り難く、インクの残り量を少なくすることができる。
それ故、ノズルの孔から凸状壁部までの距離が短く、ノズル面が撥液性を有している場合であっても、ブレードによってノズル面がワイピングされた後に凸状壁部の端の近傍の部分にインクの残り量を少なくできるので、凸状壁部の端の近傍の部分に残ったインクがノズル上に移動してノズルを塞ぐ等の不具合を抑制することができる。
【0010】
本発明のインクジェットプリンターにおいて、前記ブレードは、可撓性を有し、前記ワイピングの方向と直交する方向における前記ブレードの長さは、前記凸状壁部のうち前記ワイピングの方向と直交する方向において互いに対向する2つの対向部の、前記インクの吐出の方向における先端部に、前記ワイピング装置によるワイピングの際に同時に接触可能な長さであり、前記ワイピング装置は、前記2つの対向部の前記先端部に前記ブレードを同時に接触させながら、前記ブレードによって前記ノズル面をワイピングしても良い。
【0011】
ワイピングの方向と直交する方向におけるブレードの端がノズル面を摺動した後には、ノズル面のうちブレードが摺動しなかった部分にブレードの端の軌跡に応じた形状でインクが残る場合がある。しかしながら、本発明のインクジェットプリンターは、ブレードによってノズル面をワイピングする場合に凸状壁部の2つの対向部の先端部にブレードを同時に接触させるので、ワイピングの方向と直交する方向におけるブレードの端がノズル面を摺動しない。したがって、本発明のインクジェットプリンターは、ワイピングされたノズル面に残るインクの量を低減することができ、その結果、インクジェットヘッドによるインクの吐出不良の発生を低減することができる。
【0012】
本発明のインクジェットプリンターにおいて、前記ワイピング装置は、前記ブレードによって前記ノズル面をワイピングする場合に、前記ノズル面のうち前記対向部の近傍の特定の範囲の部分に前記ブレードを接触させなくても良い。
【0013】
この構成により、本発明のインクジェットプリンターは、ブレードによってノズル面をワイピングする場合にノズル面のうち対向部の近傍の特定の範囲の部分にブレードを接触させないので、ブレードによってノズル面をワイピングする場合にノズル面のうち対向部の近傍の特定の範囲の部分にブレードを接触させる構成と比較して、可撓性の低いブレードを採用することができ、その結果、ブレードの耐久性を向上させることができる。
【0014】
本発明のインクジェットプリンターにおいて、前記特定の範囲の部分は、前記ノズルが形成されていなくても良い。
【0015】
ノズル面のうちノズルが形成されている部分には、ブレードによってノズル面がワイピングされた直後にインクが残り易い。しかしながら、本発明のインクジェットプリンターは、ノズル面のうちワイピング時にブレードを接触させない部分にノズルが形成されていないので、ワイピングされたノズル面のうち凸状壁部の近傍のノズルの近傍の部分に残るインクの量を低減することができ、その結果、インクジェットヘッドによるインクの吐出不良の発生を低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のインクジェットプリンターは、インクジェットヘッドによるインクの吐出不良の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンターの概略正面図である。
図2】(a)図1に示すインクジェットプリンターに搭載されている状態でのインクジェットヘッドのノズル面の近傍の正面図である。 (b)図2(a)に示す状態でのインクジェットヘッドのノズル面の近傍の側面図である。
図3図1に示すインクジェットプリンターに搭載されている状態でのインクジェットヘッドの一部の底面図である。
図4図1に示すインクジェットプリンターに搭載されている状態で底面側から観察された場合のインクジェットヘッド20の一部の外観斜視図である。
図5】(a)ワイピング装置によってノズル面がワイピングされている状態での図2に示すインクジェットヘッドのノズル面の近傍の正面断面図である。 (b)図5(a)に示す状態でのインクジェットヘッドのノズル面の近傍の側面断面図である。
図6図1に示すインクジェットプリンターのブロック図である。
図7】(a)ワイピング装置の構成が図5に示す構成とは異なる場合に、ワイピング装置によってノズル面がワイピングされている状態でのインクジェットヘッドのノズル面の近傍の正面断面図である。 (b)図7(a)に示す状態でのインクジェットヘッドのノズル面の近傍の側面断面図である。
図8】ワイピング装置の構成が図7に示す構成である場合に、ワイピング装置によってワイピングされた直後のインクジェットヘッドの一部の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0019】
まず、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成について説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター10の概略正面図である。
【0021】
図1に示すように、インクジェットプリンター10は、矢印10aで示す鉛直方向における下側から媒体90を支持するプラテン11と、矢印10aで示す方向に直交する矢印10bで示す左右方向に延在しているレール12と、レール12によって矢印10bで示す方向に移動可能に支持されているキャリッジ13と、キャリッジ13に搭載されていて媒体90に向けてインク20aを吐出するインクジェットヘッド20とを備えている。インクジェットプリンター10は、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインク20aをそれぞれ吐出可能な4つのインクジェットヘッド20を備えている。インク20aとしては、様々な種類のインクが採用され得る。インク20aは、例えば、水性のインクでも良いし、溶剤インクでも良いし、UVインクでも良い。
【0022】
図2(a)は、インクジェットプリンター10に搭載されている状態でのインクジェットヘッド20のノズル面21の近傍の正面図である。図2(b)は、図2(a)に示す状態でのインクジェットヘッド20のノズル面21の近傍の側面図である。図3は、インクジェットプリンター10に搭載されている状態でのインクジェットヘッド20の一部の底面図である。図4は、インクジェットプリンター10に搭載されている状態で底面側から観察された場合のインクジェットヘッド20の一部の外観斜視図である。
【0023】
図2および図4においては、ノズル面21をワイピングするためのブレード31が参考として描かれている。ブレード31は、インクジェットヘッド20の構成要素ではない。図3および図4において、ノズル21aの列の列数と、1列当たりのノズル21aの数とは、一例である。
【0024】
図2図4に示すように、インクジェットヘッド20は、インク20a(図1参照。)を吐出するノズル21aが複数形成されたノズル面21と、矢印20bで示すノズル21aによるインク20aの吐出の方向に突き出た状態でノズル面21を囲む凸状壁部22とを備えている。
【0025】
ノズル面21は、撥液性、すなわち、インク20aをはじく性質が強い物質によってコーティングされることによって、高い撥液性を有している。ただし、ノズル面21は、ノズル21aの部分に撥液性を有していないので、ノズル21aの近傍において、ノズル21aの近傍以外の箇所と比較して、インク20aが溜まり易い。矢印10aで示す方向と、矢印10bで示す方向との両方に直交する矢印10cで示す方向における一方の端のノズル21aと、凸状壁部22との距離23aは、矢印10cで示す方向における他方の端のノズル21aと、凸状壁部22との距離23bより短い。矢印10bで示す方向の端のノズル21aと、凸状壁部22との距離23cは、距離23aより長く、距離23bより短い。
【0026】
凸状壁部22が存在しない場合、ブレード31は、後述のワイピング時にノズル面21の端の角21bに接触する度に、角21bによって削られる。凸状壁部22は、ワイピング時にノズル面21の端の角21bにブレード31が接触することを防止することによって、ブレード31の摩耗を抑えるものである。
【0027】
図1に示すように、インクジェットプリンター10は、ノズル面21(図2参照。)に対してブレード31(図2参照。)を移動させることによってブレード31によってノズル面21をワイピングするワイピング装置30を、矢印10bで示す方向におけるインクジェットヘッド20の移動範囲の端の近傍に備えている。
【0028】
ワイピング装置30は、可撓性を有するブレード31と、ノズル面21に対してブレード31を移動させるための図示していないブレード駆動装置とを備えている。
【0029】
図5(a)は、ワイピング装置30によってノズル面21がワイピングされている状態でのインクジェットヘッド20のノズル面21の近傍の正面断面図である。図5(b)は、図5(a)に示す状態でのインクジェットヘッド20のノズル面21の近傍の側面断面図である。
【0030】
図5に示すように、ワイピング装置30によるワイピングの方向である矢印30aで示す方向は、ノズル面21に形成された複数のノズル21a(図3参照。)のうち凸状壁部22に最も近いノズル21aと、凸状壁部22のうちこのノズル21aに最も近い部分とを結ぶ直線の延在方向と略同一である。すなわち、矢印30aで示す方向は、ノズル21aの列の矢印10cで示す延在方向と略同一である。ここで、ノズル面21に形成された複数のノズル21aのうち凸状壁部22に最も近いノズル21aとは、凸状壁部22との距離が距離23a(図3参照。)であるノズル21aのことである。
【0031】
図5(a)に示すように、凸状壁部22は、矢印30aで示す方向と直交する矢印30bで示す方向において互いに対向する2つの対向部22aを備えている。矢印30bで示す方向におけるブレード31の長さは、凸状壁部22の2つの対向部22aの矢印20bで示す方向における先端部22bにワイピング装置30によるワイピングの際にブレード31が同時に接触可能な長さである。ワイピング装置30は、2つの対向部22aの先端部22bにブレード31を同時に接触させながら、ブレード31によってノズル面21をワイピングする。
【0032】
図5(a)に示すように、ワイピング装置30は、ブレード31によってノズル面21をワイピングする場合に、ノズル面21に対する矢印10aで示す方向におけるブレード31の位置を、ノズル面21のうち対向部22aの近傍の特定の範囲21cの部分にブレード31を接触させない程度の位置に維持する。したがって、ブレード31によってノズル面21がワイピングされた場合、ノズル面21のうち範囲21cの部分には、インク20aが残る可能性がある。なお、ノズル面21のうち範囲21cの部分には、ノズル21aが形成されていない。
【0033】
図6は、インクジェットプリンター10のブロック図である。
【0034】
図6に示すように、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド20およびワイピング装置30と、媒体90(図1参照。)を矢印10c(図2参照。)で示す方向に搬送する媒体搬送装置41と、矢印10b(図1参照。)で示す方向にキャリッジ13(図1参照。)を移動させるキャリッジ駆動装置42と、種々の操作が入力される例えばボタンなどの入力デバイスである操作部43と、種々の情報を表示するLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである表示部44と、ネットワーク経由で、または、ネットワークを介さずに有線または無線によって直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部45と、各種の情報を記憶する半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶デバイスである記憶部46と、インクジェットプリンター10全体を制御する制御部47とを備えている。
【0035】
制御部47は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMまたは記憶部46に記憶されているプログラムを実行する。
【0036】
次に、インクジェットプリンター10の動作について説明する。
【0037】
通信部45を介して印刷データを受信すると、制御部47は、通信部45を介して受信した印刷データに基づいて、媒体90に対して印刷を実行する。すなわち、制御部47は、キャリッジ駆動装置42によって矢印10bで示す方向にキャリッジ13を移動させてインクジェットヘッド20によって媒体90に向けてインク20aを吐出することによって、矢印10bで示す方向における媒体90に対する印刷を実行する。また、制御部47は、矢印10bで示す方向における媒体90に対する印刷を実行する度に、媒体搬送装置41によって矢印10cで示す方向に媒体90を搬送することによって、矢印10cで示す方向における媒体90に対する印刷の位置を変更する。
【0038】
制御部47は、ブレード31によってノズル面21をワイピングするために、特定のタイミングで、キャリッジ駆動装置42によって矢印10bで示す方向にキャリッジ13を移動させることによって、インクジェットヘッド20をワイピング装置30に対応する位置に配置する。そして、制御部47は、ワイピング装置30によってブレード31を矢印30aで示す方向に移動させることによって、ブレード31によってノズル面21をワイピングする。
【0039】
なお、本願の発明者は、ワイピング装置30によるノズル面21のワイピングの方向として、矢印30aで示す方向を採用する前に、図7に示すように矢印30bで示す方向についても検討を行った。
【0040】
図7(a)は、ワイピング装置30の構成が図5に示す構成とは異なる場合に、ワイピング装置30によってノズル面21がワイピングされている状態でのインクジェットヘッド20のノズル面21の近傍の正面断面図である。図7(b)は、図7(a)に示す状態でのインクジェットヘッド20のノズル面21の近傍の側面断面図である。
【0041】
図7に示すように、ワイピング装置30は、ブレード31に代えて、ブレード32を備えている。図7に示すワイピング装置30によるワイピングの方向である矢印30bで示す方向は、ノズル面21に形成された複数のノズル21a(図3参照。)のうち凸状壁部22に最も近いノズル21aと、凸状壁部22のうちこのノズル21aに最も近い部分とを結ぶ直線の延在方向と直交する方向と略同一である。すなわち、矢印30bで示す方向は、ノズル21aの列の矢印10cで示す延在方向に直交する矢印10bで示す方向と略同一である。
【0042】
図7(a)に示すように、凸状壁部22は、矢印30aで示す方向において互いに対向する2つの対向部22cを備えている。矢印30aで示す方向におけるブレード32の長さは、凸状壁部22の2つの対向部22cの矢印20bで示す方向における先端部22dにワイピング装置30によるワイピングの際にブレード32が同時に接触可能な長さである。ワイピング装置30は、2つの対向部22cの先端部22dにブレード32を同時に接触させながら、ブレード32によってノズル面21をワイピングする。
【0043】
図7(b)に示すように、ワイピング装置30は、ブレード32によってノズル面21をワイピングする場合に、ノズル面21に対する矢印10aで示す方向におけるブレード32の位置を、ノズル面21のうち対向部22cの近傍の特定の範囲21dの部分にブレード32を接触させない程度の位置に維持する。したがって、ブレード32によってノズル面21がワイピングされた場合、ノズル面21のうち範囲21dの部分には、インク20aが残る可能性がある。
【0044】
図8は、ワイピング装置30の構成が図7に示す構成である場合に、ワイピング装置30によってワイピングされた直後のインクジェットヘッド20の一部の底面図である。
【0045】
ワイピング装置30によって図7に示すように矢印30bで示す方向にノズル面21がワイピングされた場合、ワイピング装置30によってワイピングされた直後のノズル面21には、図8に示すように、凸状壁部22との距離が距離23aであるノズル21aの近傍にインク20aが残った。凸状壁部22との距離が距離23aであるノズル21aの近傍にインク20aが残った理由は、ブレード32が接触しないノズル面21の範囲21dに存在したインク20aが、ノズル面21の撥液性によってはじかれて纏まった状態でブレード32によって除去される際に、距離23aが短過ぎるので、インク20aが、ブレード32によって完全には除去されることなく、凸状壁部22との距離が距離23aであるノズル21aの近傍に溜まったためであると考えられる。一方、凸状壁部22との距離が距離23bであるノズル21aの近傍にインク20aが残らなかった理由は、ブレード32が接触しないノズル面21の範囲21dに存在したインク20aが、ノズル面21の撥液性によってはじかれて纏まった状態でブレード32によって除去される際に、距離23bが十分に長いので、インク20aが、凸状壁部22との距離が距離23bであるノズル21aの近傍に溜まることなく、ブレード32によって完全に除去されたためであると考えられる。
【0046】
なお、ワイピング装置30によって図5に示すように矢印30aで示す方向にノズル面21がワイピングされた場合、ワイピング装置30によってワイピングされた直後のノズル面21には、図3に示すように、インク20aが残らなかった。凸状壁部22との距離が距離23cであるノズル21aの近傍にインク20aが残らなかった理由は、ブレード31が接触しないノズル面21の範囲21cに存在したインク20aが、ノズル面21の撥液性によってはじかれて纏まった状態でブレード31によって除去される際に、距離23cが十分に長いので、インク20aが、凸状壁部22との距離が距離23cであるノズル21aの近傍に溜まることなく、ブレード31によって完全に除去されたためであると考えられる。
【0047】
本願の発明者は、研究の結果、「ブレードによってノズル面21をワイピングした後に、ノズル面21のうちワイピングの方向における凸状壁部22の端の近傍の部分と比較して、ノズル面21のうちワイピングの方向と直交する方向における凸状壁部22の端の近傍の部分に、インク20aが残り易く、インクの残り量が多い。」という知見を得た。
【0048】
ここで、インクジェットヘッド20によるインク20aの吐出不良は、ワイピング後にノズル面21に残ったインク20aがノズル21aの近傍に存在することによって発生するリスクが高まる。ノズル21aの近傍に残ったインク20aがノズル21a上に移動してノズル20aを塞ぐ等の不具合の原因になるからである。したがって、ノズル21aは、ブレードによってノズル面21をワイピングした後にインク20aが残り易い部分の近傍に配置されていない方が良い。
【0049】
インクジェットプリンター10は、ノズル面21に形成された複数のノズル21aのうち凸状壁部22に最も近い特定のノズル21aと、凸状壁部22のうちこのノズル21aに最も近い部分とを結ぶ直線の延在方向と略同一の方向、すなわち、矢印30aで示す方向にワイピングするので、この方向と直交する方向、すなわち、矢印30bで示す方向にワイピングする構成と比較して、凸状壁部22の端の近傍の部分にインク20aが残り難く、インク20aの残り量が少ない。
【0050】
したがって、インクジェットプリンター10は、ワイピング後にノズル面21に残ったインク20aがノズル21aの近傍に存在することを抑えることができ、その結果、インクジェットヘッド20によるインク20aの吐出不良の発生を低減することができる。
【0051】
ノズル面21が撥液性を有している場合にブレードによってノズル面21がワイピングされるとき、ノズル面21に存在するインク20aは、ノズル面21の撥液性によってはじかれて纏まった状態でブレードによって除去される。一方、ノズル面21のノズル21aの孔には、当然インク20aが満たされていて撥液性を有していないので、ブレードによってワイピングされた後に、ノズル21aの孔を中心にしたその近傍において、ノズル21aの孔の近傍以外の箇所と比較して、インク20aが残り易い。
【0052】
ノズル21aの孔から凸状壁部22までの距離が短い場合、ブレードによってノズル面21がワイピングされた後に凸状壁部22の端の近傍の部分にインク20aの残り量が多いと、凸状壁部22の端の近傍の部分に残ったインク20aがノズル21a上に移動してノズル21aを塞ぐ等の不具合の原因になるリスクが高まる。
【0053】
本形態によれば、ノズル面21に形成された複数のノズル21aのうち凸状壁部22に最も近いノズル21aと、凸状壁部22のうちこのノズル21aに最も近い部分とを結ぶ直線の延在方向と略同一の方向、すなわち、矢印30aで示す方向にブレード31によってノズル面21がワイピングされることによって、矢印30aで示す方向と直交する矢印30bで示す方向にブレード32によってノズル面21がワイピングされた場合と比較して、ノズル面21のうち凸状壁部22の近傍のノズル21aの近傍の部分にインク20aが残り難く、インクの残り量を少なくすることができる。
【0054】
それ故、ノズル21aの孔から凸状壁部22までの距離が短く、ノズル面21が撥液性を有している場合であっても、ブレード31によってノズル面21がワイピングされた後に凸状壁部22の端の近傍の部分にインク20aの残り量を少なくできるので、凸状壁部22の端の近傍の部分に残ったインク20aがノズル21a上に移動してノズル21aを塞ぐ等の不具合を抑制することができる。
【0055】
矢印30aで示すワイピングの方向と直交する方向におけるブレード31の端がノズル面21を摺動した後には、ノズル面21のうちブレード31が摺動しなかった部分にブレード31の端の軌跡に応じた形状でインク20aが残る場合がある。しかしながら、インクジェットプリンター10は、ブレード31によってノズル面21をワイピングする場合に凸状壁部22の2つの対向部22aの先端部22bにブレード31を同時に接触させるので、矢印30aで示すワイピングの方向と直交する方向におけるブレード31の端がノズル面21を摺動しない。したがって、インクジェットプリンター10は、ワイピングされたノズル面21に残るインク20aの量を低減することができ、その結果、インクジェットヘッド20によるインク20aの吐出不良の発生を低減することができる。
【0056】
インクジェットプリンター10は、ブレード31によってノズル面21をワイピングする場合にノズル面21のうち対向部22aの近傍の範囲21cの部分にブレード31を接触させないので、ブレード31によってノズル面21をワイピングする場合にノズル面21のうち対向部22aの近傍の範囲21cの部分にブレード31を接触させる構成と比較して、可撓性の低いブレード31を採用することができ、その結果、ブレード31の耐久性を向上させることができる。
【0057】
ノズル面21のうちノズル21aが形成されている部分には、ブレード31によってノズル面21がワイピングされた直後にインク20aが残り易い。しかしながら、インクジェットプリンター10は、ノズル面21のうちワイピング時にブレード31を接触させない範囲21cの部分にノズル21aが形成されていないので、ワイピングされたノズル面21のうち凸状壁部22の近傍のノズル21aの近傍の部分に残るインク20aの量を低減することができ、その結果、インクジェットヘッド20によるインク20aの吐出不良の発生を低減することができる。
【0058】
なお、インクジェットヘッド20は、本実施の形態において、ノズル面21に形成された複数のノズル21aのうち凸状壁部22に最も近い特定のノズル21aと、凸状壁部22のうちこのノズル21aに最も近い部分とを結ぶ直線の延在方向が、ノズル21aの列の矢印10cで示す延在方向と略同一である。しかしながら、インクジェットヘッド20は、ノズル面21に形成された複数のノズル21aのうち凸状壁部22に最も近い特定のノズル21aと、凸状壁部22のうちこのノズル21aに最も近い部分とを結ぶ直線の延在方向が、ノズル21aの列の矢印10cで示す延在方向に直交する矢印10bで示す方向と略同一でも良い。
【符号の説明】
【0059】
10 インクジェットプリンター
20 インクジェットヘッド
20a インク
20b 矢印(インクの吐出の方向を示す矢印)
21 ノズル面
21a ノズル
21c 範囲(対向部の近傍の特定の範囲)
22 凸状壁部
22a 対向部
22b 先端部
30 ワイピング装置
30a 矢印(ワイピングの方向を示す矢印)
30b 矢印(ワイピングの方向と直交する方向を示す矢印)
31 ブレード
図1
図2
図3
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図8