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特許7023775経路案内プログラム、経路案内方法及び情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】経路案内プログラム、経路案内方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20220215BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20220215BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20220215BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
G01C21/26 P
G08G1/005
G09B29/00 A
G09B29/10 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018076123
(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公開番号】P2019184439
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-12-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年10月12日、平成29年12月6日及び平成30年1月17日 ウェブサイトにて、歩くべき方向を指し示すARモードを搭載した地図アプリを公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(73)【特許権者】
【識別番号】500578216
【氏名又は名称】株式会社ゼンリンデータコム
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】福間 友児
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】西岡 伸朗
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/044309(WO,A1)
【文献】特開2017-173077(JP,A)
【文献】特開2014-020863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36、23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
該コンピュータの現在地を取得する位置取得手段と、
該コンピュータが備える撮影装置が向いている方向を含む周辺画像を撮影する撮影手段と、
出発地から目的地までの地図上における案内ルートを取得する経路取得手段と、
前記案内ルート上で前記現在地を示す地点を基準として、該地点から前記案内ルートに従って所定の距離進んだ地点が存在する方向を、該コンピュータを利用するユーザが進むべき第2方向として決定する決定手段と、
前記撮影手段で撮影された前記周辺画像の上に仮想オブジェクトとして前記第2方向を示すオブジェクトを重ねて表示する表示手段と、
して実行させ
前記表示手段は、前記現在地が前記出発地から所定の範囲内である場合に、前記周辺画像の上に前記仮想オブジェクトを重ねて表示する、
経路案内プログラム。
【請求項2】
水平面において前記撮影装置が向いている方向である第1方向を検出する方向検出手段、を更に有し、
前記表示手段は、
前記第1方向を基準とした所定の範囲の方向に、前記第2方向が含まれる場合、前記仮想オブジェクトとして前記第2方向を示すオブジェクトを表示し、
前記第1方向を基準とした前記所定の範囲の方向に前記第2方向が含まれない場合、前記仮想オブジェクトとして、前記ユーザが、前記ユーザが進むべき方向を向いていないことを示すオブジェクトを表示する、
請求項1に記載の経路案内プログラム。
【請求項3】
水平面において前記撮影装置が向いている方向である第1方向を検出する方向検出手段、を更に有し、
前記表示手段は、
前記第1方向を基準とした所定の範囲の方向に、前記第2方向又は前記案内ルートに沿った方向が含まれる場合、前記仮想オブジェクトとして前記第2方向を示すオブジェクトを表示し、
前記第1方向を基準とした前記所定の範囲の方向に、前記第2方向及び前記案内ルートに沿った方向が含まれない場合、前記仮想オブジェクトとして、前記ユーザが、前記ユーザが進むべき方向を向いていないことを示すオブジェクトを表示する、
請求項1に記載の経路案内プログラム。
【請求項4】
前記表示手段は、前記案内ルート上で前記現在地に最も近い地点と前記現在地との距離が、所定の距離を超えた場合、前記仮想オブジェクトとして、前記ユーザが前記案内ルートから外れた場所にいることを示すオブジェクトを表示する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の経路案内プログラム。
【請求項5】
前記第1方向を基準とした所定の範囲の方向は、前記第1方向を基準とした左右の角度で表される、
請求項2又は3に記載の経路案内プログラム。
【請求項6】
前記位置取得手段は、測定される現在位置の精度が所定の精度よりも低いか否かを取得し、
前記表示手段は、前記現在地が前記出発地から前記所定の範囲の外に移動した場合であっても、前記精度が所定の閾値よりも低い場合には、前記周辺画像の上に前記仮想オブジェクトを重ねて表示し続ける、
請求項1~のいずれか一項に記載の経路案内プログラム。
【請求項7】
前記表示手段は、第1の領域に前記周辺画像の上に前記仮想オブジェクトを重ねて表示し、第2の領域に前記案内ルート及び地図を表示する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の経路案内プログラム。
【請求項8】
コンピュータが実行する経路案内方法であって、
該コンピュータの現在地を取得するステップと、
該コンピュータが備える撮影装置が向いている方向を含む周辺画像を撮影するステップと、
出発地から目的地までの地図上における案内ルートを取得するステップと、
前記案内ルート上で前記現在地を示す地点を基準として、該地点から前記案内ルートに従って所定の距離進んだ地点が存在する方向を、該コンピュータを利用するユーザが進むべき第2方向として決定するステップと、
撮影された前記周辺画像の上に仮想オブジェクトとして前記第2方向を示すオブジェクトを重ねて表示するステップと、
を含み、
前記表示するステップは、前記現在地が前記出発地から所定の範囲内である場合に、前記周辺画像の上に前記仮想オブジェクトを重ねて表示する、
経路案内方法。
【請求項9】
経路案内を行う情報処理装置であって、
該情報処理装置の現在地を取得する位置取得部と、
該情報処理装置が備える撮影装置が向いている方向を含む周辺画像を撮影する撮影部と、
出発地から目的地までの地図上における案内ルートを取得する経路取得部と、
前記案内ルート上で前記現在地を示す地点を基準として、該地点から前記案内ルートに従って所定の距離進んだ地点が存在する方向を、該情報処理装置を利用するユーザが進むべき第2方向として決定する決定部と、
前記撮影部で撮影された前記周辺画像の上に仮想オブジェクトとして前記第2方向を示すオブジェクトを重ねて表示する表示部と、
を有し、
前記表示部は、前記現在地が前記出発地から所定の範囲内である場合に、前記周辺画像の上に前記仮想オブジェクトを重ねて表示する、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路案内プログラム、経路案内方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、出発地から目的地までの経路を検索し、検索した案内ルートをスマートフォン等の画面に表示する、歩行者向けのナビゲーションシステムが提供されている。また、歩行者向けのナビゲーションシステムの中には、単に地図画面に案内ルートを表示するのではなく、AR(Augmented Reality)技術を適用することで、カメラで撮影された外の景色の画像に目的地までの案内ルートを重ねて表示する歩行者ナビゲーションシステムも存在する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2008/044309号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の歩行者ナビゲーションシステムでは、特にナビゲーションを開始する場合に、どの方向に歩き出せばよいのかを地図上に表示された案内ルートを見ながら自分で考える必要があり、分かりにくいという課題があった。また、AR技術を利用した歩行者ナビゲーションシステムであっても、道路の画像と案内ルートがずれて表示されるといったように視認性が悪い場合が多く、ユーザはどの方向に歩き出せばよいのか分かりにくいという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、歩行者向けナビゲーションシステムにおいて、歩行者に対してどの方向に歩き出せばよいのかを適切に示すことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る経路案内プログラムは、コンピュータを、該コンピュータの現在地を取得する位置取得手段と、該コンピュータが備える撮影装置が向いている方向を含む周辺画像を撮影する撮影手段と、水平面において撮影装置が向いている方向である第1方向を検出する方向検出手段と、出発地から目的地までの地図上における案内ルートを取得する経路取得手段と、案内ルート上で現在地を示す地点を基準として、該地点から案内ルートに従って所定の距離進んだ地点が存在する方向を、該コンピュータを利用するユーザが進むべき第2方向として決定する決定手段と、撮影手段で撮影された周辺画像の上に仮想オブジェクトとして第2方向を示すオブジェクトを重ねて表示する表示手段と、して実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、歩行者向けナビゲーションシステムにおいて、歩行者に対してどの方向に歩き出せばよいのかを適切に示すことが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】携帯端末のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2】携帯端末の機能構成の一例を示す図である。
図3】携帯端末がAR表示を行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】周辺画像の上にユーザが進むべき方向を表示する場合の判定条件(その1)を説明するための図である。
図5】周辺画像の上にユーザが進むべき方向を表示する場合の判定条件(その2)を説明するための図である。
図6】携帯端末に表示する画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0010】
<システム構成>
図1を参照して、実施形態における携帯端末(情報処理装置、コンピュータ)のハードウェア構成について説明する。本実施形態では、ユーザが利用する携帯端末10として、例えば、携帯電話機(スマートフォンを含む)、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistants)、眼鏡型ウェアラブルデバイス、ナビゲーション装置などを用いることができる。携帯端末10は、例えば、制御部11、通信部12、記憶部13、操作部14、表示部15、センサ16、スピーカ17及びカメラ18を備える。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)11aおよびメモリ11bなどをさらに備える。
【0011】
制御部11は、CPU11aが、記憶部13等に記憶されたプログラムをメモリ11bに展開して実行することにより、携帯端末10の各構成要素の動作を制御し、また、各種情報処理の実行を制御する。プログラムとして、例えば、後述する経路案内(ナビゲーション)アプリケーションソフト(以下、「経路案内アプリ」ともいう。)がある。制御部11において実行される情報処理の詳細は後述する。
【0012】
通信部12は、外部装置と通信するための通信インタフェースである。通信部12は、例えば、外部装置からデータやコマンドを受信するとともに、携帯端末10による情報処理の結果を外部へ送信する。
【0013】
記憶部13は、不揮発性の記憶装置であり、例えば、半導体メモリ等により構成される。記憶部13は、制御部11における情報処理の実行に必要な各種プログラムや各種のデータを記憶する。
【0014】
操作部14は、携帯端末10のユーザの指示を受け付け、制御部11へ出力するためのユーザインタフェースである。操作部14は、例えば、タッチパネルや操作キーなどにより構成される。
【0015】
表示部15は、携帯端末10による情報処理結果を表示するためのユーザインタフェースである。表示部15は、液晶、またはLED(Light Emitting Diode)などを用いた表示装置により構成される。
【0016】
センサ16は、各種のセンサにより構成される。センサ16として、例えば、ジャイロセンサ、加速度センサ、地磁気センサ、および気圧センサ等を用いることができる。センサ16は、3軸方向における携帯端末10の向きや加速度、3軸周りの回転角等を検知して出力する。
【0017】
スピーカ17は、制御部11による情報処理の制御に応じ、音声、音楽および効果音など、各種の音を出力する。
【0018】
カメラ18は、制御部11による情報処理の制御に応じ、携帯端末10の周辺画像(周辺の動画像を含む)を撮影する。
【0019】
図2を参照して、実施形態における携帯端末10の機能構成を説明する。携帯端末10は、機能構成として、例えば、データベース110、経路案内部111、測位部112、撮影部113、方向検出部114、進行方向決定部115及び表示制御部116を有する。これらの機能は、例えば、制御部11において、CPU11aが、記憶部13等に記憶されたプログラム(経路案内アプリ)をメモリ11bに展開して実行することにより実現される。以下に、携帯端末10が備える各機能構成の詳細について説明する。
【0020】
データベース110は、携帯端末10において実行される情報処理に必要なデータ、および当該情報処理により生成されたデータなど、各種データを記憶する。
【0021】
経路案内部111(経路取得部)は、ユーザにより入力された経路探索条件に従った出発地から目的地までの最適経路(以下、「案内ルート」と言う)の情報を取得し、当該案内ルートを表示部15を介してユーザに提示すること等により、ユーザに対し、経路案内(ナビゲーション)を行う。経路案内は、例えば、経路案内アプリを起動した後に表示されるメニューから、経路案内項目を選択し、経路探索条件を入力して探索した結果得られる案内ルートに従って行われる。
【0022】
案内ルートの探索に関し、経路案内部111は、例えば、ユーザにより入力された経路探索条件に従って、データベース110に記憶された(または通信部12を介して外部装置から取得した)地図データ等を参照し、経路探索を実行することにより、案内ルートの情報を取得する。もしくは、入力された経路探索条件に従った経路探索の処理を外部の情報処理装置側で行い、経路案内部111は、当該経路探索の処理結果(案内ルートの情報)を外部の情報処理装置から取得することとしてもよい。
【0023】
経路探索の手法としてはラベル確定法やダイクストラ法など、任意の手法を利用することができる。なお、最適な経路とは、出発地点から目的地点までのコスト情報が最小であることをいう。リンクのコスト情報は、距離、所要時間、料金、その他のパラメータ、および各種パラメータを任意に組み合わせたもの等、目的に応じて設定可能である。
【0024】
測位部112(位置取得部)は、携帯端末10(または携帯端末10のユーザ)の現在位置(例えば、緯度および経度の情報)を取得して出力する。測位部112は、例えば、携帯端末10にインストールされたOS(オペレーティングシステム)が備えるAPI(Application Programming Inteface)を利用することで、携帯端末10の現在位置を取得するようにしてもよい。
【0025】
撮影部113は、カメラ18(撮影装置)を用いて、カメラ18が向いている方向(カメラ18の光軸方向)を含む周辺画像を撮影する。携帯端末10は、筐体において表示部15が設けられている面の反対側の面(背面)にカメラ18が備えられており、カメラ18で撮影された画像が表示部15に表示される。つまり、ユーザが進行方向にカメラ18を向けると、表示部15には、進行方向の画像が表示されることになる。
【0026】
方向検出部114は、センサ16に含まれるジャイロセンサ、加速度センサ及び地磁気センサの出力値を組み合わせることで、水平面においてカメラ18が向いている方向(第1方向)を検出する。水平面においてカメラ18が向いている方向は、例えば北方向を基準方向(0度)とした角度で表現されることとしてもよい。本実施形態では、ユーザは、ユーザ自身が向いている方向にカメラ18を向けながら経路案内アプリを利用することを想定している。以下の説明では、水平面においてカメラ18が向いている方向を、便宜上「ユーザが向いている方向」と言う。
【0027】
進行方向決定部115は、案内ルート上で現在地を示す地点を基準として、該地点から案内ルートに従って所定の距離進んだ地点が存在する方向を、「ユーザが進むべき方向」(第2方向)として決定する。なお、測位部112が取得する現在位置は、実際には若干の誤差が含まれる可能性がある。従って、案内ルート上で現在地を示す地点とは、より詳細には、案内ルートにおいて携帯端末10の現在地に最も近い地点(すなわち、現在地を案内ルート上にマッチングさせた地点)であってもよい。
【0028】
表示制御部116は、表示部15に表示させる各種情報および画像の表示の制御を行う。例えば、表示制御部116は、地図画像の上に、案内ルートと携帯端末10の現在位置とを表示するように制御する。また、表示制御部116は、撮影部113で撮影された周辺画像の上に、仮想オブジェクトを重ねて表示する。仮想オブジェクトは、例えば、ユーザが進むべき方向を示すオブジェクト等である。
【0029】
また、表示制御部116は、方向検出部114で検出されたユーザが向いている方向が、進行方向決定部115で決定されたユーザが進むべき方向や案内ルートに沿った方向と概ね一致している場合に、仮想オブジェクトとして、ユーザが進むべき方向を示すオブジェクトを表示するようにしてもよい。一方、ユーザが向いている方向が、ユーザが進むべき方向や案内ルートに沿った方向と概ね一致しているとはいえない場合(例えば進むべき方向とは逆を向いているような場合)に、仮想オブジェクトとして、ユーザが進むべき方向とは異なる方向を向いていることを示すオブジェクトを表示するようにしてもよい。
【0030】
また、表示制御部116は、案内ルートにおいて携帯端末10の現在地に最も近い地点と携帯端末10の現在地との距離が、所定の距離を超えた場合、仮想オブジェクトとして、ユーザが案内ルートから外れた場所にいることを示すオブジェクトを表示するようにしてもよい。
【0031】
また、表示制御部116は、携帯端末10の現在位置が、出発地から所定の範囲(例えば半径25メートルや半径50メートル等)の内側である間、撮影部113で撮影された周辺画像の上に仮想オブジェクトを重ねて表示し続けるようにして、携帯端末10の現在位置が、出発地から所定の範囲の外側に移動した場合は、地図表示のみを行うようにしてもよい。つまり、表示制御部116は、周辺画像の上に仮想オブジェクトを重ねて表示する画面を常に表示部15に表示し続けるのではなく、携帯端末10の現在位置が、出発地から所定の範囲の外側に移動するまでの間に限って、周辺画像の上に仮想オブジェクトを重ねて表示する画面を表示部15に表示するようにしてもよい。
【0032】
また、表示制御部116は、表示部15に、周辺画像の上に仮想オブジェクトを重ねて表示する画面と、案内ルートを重畳した地図画面との両方を表示するようにしてもよい。以下の説明では、周辺画像の上に仮想オブジェクトを重ねて表示することを「AR表示」と呼び、出発地から所定の範囲内(周辺画像の上に仮想オブジェクトを表示し続ける範囲)を「AR表示エリア」と呼ぶ。
【0033】
<処理手順>
図3は、携帯端末10がAR表示を行う処理手順の一例を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートは、携帯端末10の経路案内部111が、携帯端末10の現在位置を出発地とした案内ルートの探索を終了し、実際に経路案内を開始した時点で開始される。
【0034】
ステップS101で、測位部112は、携帯端末10の現在位置を取得する。このとき、測位部112は、測定された携帯端末10の現在位置の精度が所定の精度よりも低いか否かを取得するようにしてもよい。携帯端末10の現在位置の精度(誤差)がどの程度であるのかについては、例えば、携帯端末10にインストールされたOSが備えるAPIを用いることで取得することができる。
【0035】
ステップS102で、表示制御部116は、携帯端末10の現在位置がAR表示エリア内であるか否かを確認する。現在位置がAR表示エリア外である場合はステップS103の処理手順に進む。現在位置がAR表示エリア内である場合はステップS104の処理手順に進む。なお、表示制御部116は、携帯端末10の現在地がAR表示エリア外に移動した場合であっても、携帯端末10の現在位置の精度が所定の閾値よりも低い場合には、AR表示を継続するようにしてもよい。つまり、表示制御部116は、携帯端末10の現在位置の精度が所定の閾値よりも低い場合、ステップS103の処理手順ではなく、ステップS104の処理手順に進むようにしてもよい。
【0036】
ステップS103で、表示制御部116はAR表示を終了し、表示部15に地図画面を全面表示する。
【0037】
ステップS104で、表示制御部116は、携帯端末10の現在位置が、案内ルート上であるか否かを判定する。測位部112が取得する現在位置には誤差が含まれている可能性があるため、表示制御部116は、現在位置が案内ルートから若干離れている場合であっても、現在位置は案内ルート上であると判断する。具体的には、表示制御部116は、案内ルートにおいて携帯端末10の現在地に最も近い地点と携帯端末10の現在地との距離が、所定の距離以内であるか否かを確認する。所定の距離以内である場合、現在位置は案内ルート上であると判定し、現在位置を、案内ルート上において現在位置に最も近い位置にマッチングさせてからステップS105の処理手順に進む。一方、所定の距離を超えている場合、現在位置は案内ルート上ではない(案内ルートから外れている)と判定し、ステップS108の処理手順に進む。
【0038】
ステップS105で、表示制御部116は、撮影部113で撮影された周辺画像の上に、ユーザが進むべき方向を示すオブジェクトを表示するか否かを判定する。表示する場合はステップS106の処理手順に進み、表示しない場合はステップS107の処理手順に進む。なお、表示制御部116は、周辺画像の上にユーザが進むべき方向を示すオブジェクトを表示するか否かを、所定の判定条件に基づいて判定する。当該判定条件の詳細については後述する。
【0039】
ステップS106の処理手順で、表示制御部116は、周辺画像の上に、ユーザが進むべき方向を示すオブジェクトを重ねて表示する。図6(a)に表示例を示す。携帯端末10の画面は、AR表示を行う表示エリアA200(第1の領域)と、案内ルート及び地図を表示する表示エリアA201(第2の領域)とから構成される。図6(a)の例では、表示エリアA200は画面の上半分を占めており、表示エリアA201は画面の下半分を占めているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、画面の上半分が表示エリアA201であり、画面の下半分が表示エリアA200であるようにしてもよい。
【0040】
オブジェクトX1aは、ユーザが進むべき方向を示す矢印であり、オブジェクトX1bは、ユーザに対するメッセージである。図6(a)の例では、ユーザが向いている方向とユーザが進むべき方向とがほぼ一致しているので、「このまま進んでください」のメッセージを表示している。
【0041】
ステップS107の処理手順で、表示制御部116は、周辺画像の上に、ユーザが進むべき方向とは異なる方向を向いていることを示すオブジェクトを重ねて表示する。図6(b)に表示例を示す。オブジェクトX2aは、ユーザが進むべき方向とは異なる方向を向いていることを示すマークであり、オブジェクトX2bは、ユーザに対するメッセージである。図6(b)の例では、ユーザが向いている方向が、ユーザが進むべき方向とは異なっていることから、「進む方向が違います」のメッセージを表示している。
【0042】
ステップS108の処理手順で、表示制御部116は、周辺画像の上に、ユーザが、案内ルートから外れた場所にいることを示すオブジェクトを重ねて表示する。図6(c)に表示例を示す。オブジェクトX3aは、ユーザが進むべき方向とは異なる方向を向いていることを示すマークであり、オブジェクトX3bは、ユーザに対するメッセージである。図6(c)の例では、「ルートから外れています」のメッセージを表示している。
【0043】
以上説明したステップS101乃至ステップS108の処理手順は、ステップS103の処理手順にてAR表示が終了するまで繰り返し実行される。
【0044】
続いて、図3のステップS105の処理手順において、周辺画像の上にユーザが進むべき方向を表示する場合(図6(a)に示す画面を表示する場合)の判定条件の詳細を説明する。携帯端末10は、当該判定条件として、以下に示す判定条件(その1)、判定条件(その2)及び判定条件(その3)のうちいずれか1つを実行するようにしてもよい。
【0045】
(判定条件(その1))
図4は、周辺画像の上にユーザが進むべき方向を表示する場合の判定条件(その1)を説明するための図である。図4において、地点P1は、案内ルートRにおいて現在地を示す地点である。地点P2は地点P1から案内ルートRに従って所定の距離進んだ地点である。所定の距離はどのような距離であってもよいが、例えば、数メートル程度(1m先、2m先、3m先、4m先など)であってもよい。方向D1は、水平面においてカメラ18が向いている方向(すなわち、ユーザが向いている方向)を示す。方向D2は、地点P1を基準として、地点P1から案内ルートRに従って所定の距離進んだ地点P2が存在する方向(すなわち、ユーザが進むべき方向)を示す。
【0046】
判定条件(その1)では、ユーザが向いている方向D1を基準とした所定の範囲の方向に、ユーザが進むべき方向D2が含まれている場合、周辺画像の上にユーザが進むべき方向を表示する。所定の範囲の方向は、図4の例では、方向D1を基準として左右30度である前提とする。一方、ユーザが向いている方向D1を基準とした所定の範囲の方向に、ユーザが進むべき方向D2が含まれていない場合、ユーザは進むべき方向とは異なる方向を向いていることを表示する。
【0047】
図4(a)のケース、図4(b)のケース及び図4(e)のケースでは、方向D1を基準とした左右30度の方向に、方向D2が含まれている。従って、表示制御部116は、図6(a)に示すように、周辺画像の上にユーザが進むべき方向を示すオブジェクトを重ねて表示する。
【0048】
図4(c)のケース及び図4(d)のケースでは、方向D1を基準とした左右30度の方向に、方向D2が含まれていない。従って、表示制御部116は、図6(b)に示すように、周辺画像の上にユーザが進むべき方向とは異なる方向を向いていることを示すオブジェクトを重ねて表示する。
【0049】
(判定条件(その2))
判定条件(その2)では、判定条件(その1)に示す条件に加えて、ユーザが向いている方向D1を基準とした所定の範囲の方向に、案内ルートに沿った方向D3が含まれている場合であっても、周辺画像の上にユーザが進むべき方向を表示する。すなわち、判定部条件(その2)では、ユーザが向いている方向D1を基準とした所定の範囲の方向に、ユーザが進むべき方向D2又は案内ルートに沿った方向D3のいずれかが含まれている場合に、周辺画像の上にユーザが進むべき方向を表示する。一方、ユーザが向いている方向D1を基準とした所定の範囲の方向に、ユーザが進むべき方向D2及び案内ルートに沿った方向D3の両方が含まれていない場合、ユーザは進むべき方向とは異なる方向を向いていることを表示する。
【0050】
図5は、周辺画像の上にユーザが進むべき方向を表示する場合の判定条件(その2)を説明するための図である。図5において、方向D3は、案内ルートに沿った方向を示している。地点P1、地点P2、方向D1及び方向D2はそれぞれ図4と同一であるため説明は省略する。
【0051】
図5(a)のケース、図5(b)のケース、図5(d)のケース及び図5(e)のケースでは、方向D1を基準とした左右30度の方向に、方向D2及び方向D3のうち少なくとも一方が含まれている。従って、表示制御部116は、図6(a)に示すように、周辺画像の上にユーザが進むべき方向を示すオブジェクトを重ねて表示する。
【0052】
一方、図5(c)のケースでは、方向D1を基準とした左右30度の方向に、方向D2及び方向D3が含まれていない。従って、表示制御部116は、図6(b)に示すように、周辺画像の上にユーザが進むべき方向とは異なる方向を向いていることを示すオブジェクトを重ねて表示する。
【0053】
以上、実施形態について説明した。本実施形態によれば、出発地を基準としたAR表示エリア内において携帯端末10のカメラ18で撮影された周辺画像にユーザが進むべき方向を示すオブジェクトが重ねて表示されることから、ユーザは、ナビゲーションを開始する際に、どの方向に向かって歩き始めればよいのかを直感的かつ確実に把握することが可能になる。これにより、例えば、地下から地上に出たタイミングや自動車から降りたタイミング等でナビゲーションを開始する場合など、どの方向を向いているのか判断がつきにくい場合であっても、自身の周囲をカメラ18で撮影するだけで、歩き始めるべき方向を直感的かつ確実に把握することが可能になる。また、地図を見るのが苦手なユーザであっても、歩き始めるべき方向を直感的かつ確実に把握することが可能になる。
【0054】
また、本実施形態によれば、周辺画像に案内ルートを重ねて表示するのではなく、ユーザが進むべき方向を示すオブジェクトを表示するようにした。これにより、周辺画像に案内ルートを重ねて表示するよりも表示内容を簡素化することができ、携帯端末10の処理負荷を軽減することが可能になる。また、ユーザの視点から見ても、周辺画像に案内ルートが重畳されることに伴う視認性の劣化を防止することができる。
【0055】
<変形例>
表示制御部116は、図3のステップS105の処理手順において、所定の判定条件を満たさない状態が所定の時間継続した場合に、ステップS107の処理手順に進むようにしてもよい。例えば、ユーザが向いている方向が図4(a)の状態から図4(c)の状態に変化した場合、表示制御部116は、図4(c)の状態に変化したタイミングで図6(a)の画面から図6(b)の画面に切り替えるのではなく、図4(c)の状態が所定の時間(例えば3秒等)継続した場合に、図6(a)の画面から図6(b)の画面に切り替えるようにしてもよい。これにより、方向検出部114の検出結果が不安定であるような場合に、図6(a)の画面と図6(b)の画面とが頻繁に切り替わってしまい、ユーザの視認性が劣化してしまうことを防止することができる。
【0056】
判定条件(その1)~判定条件(その3)における、ユーザが向いている方向を基準とした所定の範囲の方向は、案内ルートの形状に従って変化するようにしてもよい。例えば、現在位置が、案内ルートに存在する曲がり角から所定の距離以内(例えば1m以内でもよいし10m以内でもよい)である場合、所定の範囲を拡大(例えば左右60度等に拡大)又は縮小(例えば左右20度等に縮小)するようにしてもよい。若しくは、案内ルート上の各地点(例えば1mごとの地点など)に、判定条件(その1)~判定条件(その3)の判定に用いるべき所定の範囲が予め設定されていてもよい。これにより、案内ルートの形状に応じて、ユーザが進むべき方向を示すオブジェクトが表示され易くするのか否かを、案内ルートの形状に応じて柔軟に制御することが可能になる。
【0057】
表示制御部116は、図3のステップS103の処理手順においてAR表示を終了した場合、周辺画像の上に案内ルートを重ねて表示するようにしてもよい。例えば、図6(c)に示す画面の表示エリアA200において、オブジェクトX3a及びオブジェクトX3bを消去した後、案内ルートを周辺画像に重ねて表示するようにしてもよい。
【0058】
表示制御部116は、画面全体にAR表示を行うようにしてもよい。例えば図6(a)~図6(c)に示す画面において、表示エリアA201を表示せずに、表示エリアA200を画面全体に表示するようにしてもよい。
【0059】
表示制御部116は、AR表示を行っている間、AR表示の内容に応じた音声案内を行うようにしてもよい。例えば、図6(a)に示す画面を表示している間、スピーカ17から「このままお進みください」との音声案内を出力し、図6(b)に示す画面を表示している間、スピーカ17から「進む方向が違います」との音声案内を出力し、図6(c)に示す画面を表示している間、スピーカ17から「ルートから外れています」との音声案内を出力するようにしてもよい。この場合、表示制御部116を「制御部」と称してもよい。
【0060】
表示制御部116は、携帯端末10が縦向きである場合に、図6(a)~図6(c)に示すAR表示を行うようにして、携帯端末10が横向きである場合はAR表示を行わずに、案内ルート及び地図を画面全体に表示するようにしてもよい。
【0061】
表示制御部116は、必ずしも、ユーザが進むべき方向とは異なる方向を向いていることを示すオブジェクトX2a、及び/又は、案内ルートから外れた場所にいることを示すオブジェクトX3aを表示しなくてもよい。例えば、表示制御部116は、ユーザが向いている方向に関わらず、ユーザが進むべき方向を示すオブジェクトX1aを表示するようにしてもよい。
【0062】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0063】
なお、本実施形態において、「部」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」や装置が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の「部」や装置の機能が1つの物理的手段や装置により実現されてもよい。また、「部」を「手段」に置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0064】
10…携帯端末、11…制御部、11a…CPU、11b…メモリ、12…通信部、13…記憶部、14…操作部、15…表示部、16…センサ、17…スピーカ、18…カメラ、110…データベース、111…経路案内部、112…測位部、113…撮影部、114…方向検出部、115…進行方向決定部、116…表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6