(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】防護構造
(51)【国際特許分類】
E04H 9/04 20060101AFI20220215BHJP
G21C 13/00 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
E04H9/04
G21C13/00 300
G21C13/00 759
(21)【出願番号】P 2018089881
(22)【出願日】2018-05-08
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 祥広
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 翔平
(72)【発明者】
【氏名】中野 欣治
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02346196(US,A)
【文献】特開2010-095884(JP,A)
【文献】実公昭15-008131(JP,Y1)
【文献】特開2015-132137(JP,A)
【文献】特表2010-526954(JP,A)
【文献】特開昭59-159091(JP,A)
【文献】特開昭60-260895(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0050014(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103850483(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00-9/16
G21C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護対象構造物と、該防護対象構造物よりも高く、かつ、前記防護対象構造物の全周を取り囲む防護構造物と、該防護構造物に形成され、前記防護対象構造物へ出入するための連絡通路とを備え、
前記連絡通路は、
前記防護構造物と直交せず、かつ、前記防護構造物の一部に貫通穴を設けて形成されると共に、前記貫通穴の延長線上に前記防護対象構造物が存在してなく、しかも、前記連絡通路に段差がないように地面と同一高さで、前記連絡通路が設けられる前記防護構造物の壁に対して、前記連絡通路の延長線上に前記防護対象構造物が存在しない角度θだけ傾けて形成され、更に、前記連絡通路には開閉可能な扉が存在していないことを特徴とする防護構造。
【請求項2】
請求項1に記載の防護構造において、
前記連絡通路は、前記防護構造物に複数形成されていることを特徴とする防護構造。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の防護構造において、
前記連絡通路の傾斜している一方の前記防護構造物の壁の厚みが、対向している他方の前記防護構造物の壁の厚みより厚く形成されていることを特徴とする防護構造。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の防護構造
において、
前記防護対象構造物は、原子炉建屋であることを特徴とする防護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防護構造に係り、例えば、原子力プラントの原子炉建屋等の防護対象構造物を航空機等の飛来物から防護するものに好適な防護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、原子力発電プラントの原子炉建屋等に、航空機等の飛来物が衝突した際の影響評価が求められている。
【0003】
原子力発電プラントの原子炉建屋等の防護対象構造物に、航空機等の飛来物が衝突したことによる影響を緩和するための先行技術文献として、特許文献1を挙げることができる。
【0004】
この特許文献1には、原子力発電プラントの原子炉建屋等の防護対象構造物の全周に沿って防護丘が設置され、この防護丘は、防護対象構造物である原子力発電プラントの原子炉建屋等よりも高く設定されると共に、航空機及びその他の飛来物や車両の衝突に耐え得る強度に構成されていることが記載されている。
【0005】
上述した特許文献1に記載されている防護構造は、原子力発電プラントの原子炉建屋等の防護対象構造物の全周に沿って設置された防護丘が、航空機及びその他飛来物や車両の進入を阻止して防護対象物への衝突を回避しているので、航空機及びその他の飛来物や車両に対し防護対象構造物の健全性が確保できている。
【0006】
なお、通常、防護丘には、原子力発電プラントの原子炉建屋等の防護対象構造物へ出入するための連絡通路が設けられており、その連絡通路には開閉可能な扉が設置され、その扉は、航空機及びその他飛来物や車両の衝突により破損しない堅牢な構造に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した特許文献1に記載されている防護構造は、防護丘及び連絡通路の扉が航空機等の飛来物の衝突に耐えうる強度を有しているため、飛来物やその破片が防護対象構造物に直接衝突しないようにすることができる。
【0009】
しかしながら、飛来物が防護対象構造物に衝突した後は、通常、防護対象構造物の点検のために防護対象構造物へ出入する必要があり、しかも、この防護対象構造物への出入りのための連絡通路の扉に飛来物が衝突した場合は、先ずは、その扉を開けるために、飛来物の残骸を撤去する必要が生じることが想定される。
【0010】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、防護対象構造物に直接航空機等の飛来物が衝突することを回避しつつ、衝突後の防護対象構造物へのアクセス性を低下させない防護構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の防護構造は、上記目的を達成するために、防護対象構造物と、該防護対象構造物よりも高く、かつ、前記防護対象構造物の全周を取り囲む防護構造物と、該防護構造物に形成され、前記防護対象構造物へ出入するための連絡通路とを備え、前記連絡通路は、前記防護構造物と直交せず、かつ、前記防護構造物の一部に貫通穴を設けて形成されると共に、前記貫通穴の延長線上に前記防護対象構造物が存在してなく、しかも、前記連絡通路に段差がないように地面と同一高さで、前記連絡通路が設けられる前記防護構造物の壁に対して、前記連絡通路の延長線上に前記防護対象構造物が存在しない角度θだけ傾けて形成され、更に、前記連絡通路には開閉可能な扉が存在していないことを特徴とする防護構造。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、防護対象構造物に直接航空機等の飛来物が衝突することを回避しつつ、衝突後の防護対象構造物へのアクセス性を低下させることのない防護構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の防護構造の実施例1を示す平面図である。
【
図4】本発明の防護構造の実施例2を示し、
図3に相当する図である。
【
図5】本発明の防護構造の実施例3を示し、
図3に相当する図である。
【
図6】本発明の防護構造の実施例4を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の防護構造を説明する。なお、各実施例において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例1】
【0015】
【0016】
該図に示す本実施例の防護構造は、防護対象構造物(例えば、原子炉建屋)1の全周が、この防護対象構造物1よりも高い防護構造物2によって取り囲まれている。
【0017】
上記防護構造物2は、航空機等の飛来物の衝突に耐えられる強度で構成されており、例えば、鉄筋コンクリートで構成されると共に、この防護構造物2に形成され、防護対象構造物1へ出入りするための連絡通路3以外の部位で開口部や切れ目なく設置されている。
【0018】
また、本実施例の連絡通路3は、防護構造物2と直交せず、防護構造物2の一部に貫通穴を設けて形成され、その延長線上に防護対象構造物1が存在してなく、しかも、地面4と同一高さ(連絡通路3に段差がないこと)で、連絡通路3が設けられる防護構造物2の壁2aに対して角度θだけ傾けて(角度θは、連絡通路3の延長線上に防護対象構造物1が存在しない角度θだけ傾斜して)形成されている。そして、防護対象構造物1への出入は、連絡通路3のみで行われる。
【0019】
このような本実施例の構造により、航空機等の飛来物は、防護対象構造物1の前に防護構造物2へ衝突するため、航空機等の飛来物の防護対象構造物1への直接衝突を避けることができる。
【0020】
ここで、本実施例の連絡通路3は閉塞していないため、航空機等の飛来物が連絡通路3の近傍に衝突した場合は、連絡通路3の方向に沿って飛来物の破片が防護構造物2で囲まれたエリアに侵入する可能性がある。
【0021】
しかし、本実施例での連絡通路3は、その延長線上に防護対象構造物1は配置されていない(存在しない)ため、飛来物の破片が防護対象構造物1と衝突することはない。例え、連絡通路3に飛来物の破片が散乱していたとしても、連絡通路3に扉などの閉塞機構が存在しないため、閉塞機構を開けるための作業をすることなく、破片の撤去後すぐに出入することが可能である。
【0022】
このように、本実施例によれば、防護対象構造物1は防護構造物2に囲まれているため、防護対象構造物1に航空機等の飛来物が直接衝突することを回避でき、万が一、連絡通路3に飛来物やその破片が侵入したとしても、連絡通路3の延長線上に防護対象構造物1が存在しないため、防護対象構造物1に衝突することはない。
【0023】
また、連絡通路3に破片があったとしても、扉のような閉塞機構がないため、衝突後、防護対象構造物1へ出入する際に、その扉を開ける対応をする必要がなく、破片の撤去が完了すると同時に防護対象構造物1へ出入することが可能となる。
【0024】
従って、本実施例では、防護対象構造物1に直接航空機等の飛来物が衝突することを回避しつつ、衝突後の防護対象構造物1へのアクセス性を低下させない防護構造を得ることができる。
【実施例2】
【0025】
【0026】
該図に示す本実施例の防護構造は、実施例1と略同様な構成であるが、実施例1と異なる点は、防護構造物2に複数(本実施例では4つ)の連絡通路3a、3b、3c、3dを形成したことである。
【0027】
このような本実施例の構成であっても、実施例1と同様な効果を得ることができることは勿論、防護構造物2に複数の連絡通路3a、3b、3c、3dを形成することで、アクセス性が更に向上する。
【実施例3】
【0028】
【0029】
該図に示す本実施例の防護構造は、実施例1と略同様な構成であるが、実施例1と異なる点は、連絡通路3の傾斜している一方の防護構造物の壁2bの厚みが、対向している他方の防護構造物の壁2cの厚みより厚く形成されていることである。
【0030】
このような本実施例の構成であっても、実施例1と同様な効果を得ることができることは勿論、連絡通路3の傾斜している一方の防護構造物の壁2bの厚みを、対向している他方の防護構造物の壁2cの厚みより厚く形成することで、連絡通路3部分における防護構造物2の壁の強度が向上する。
【実施例4】
【0031】
図6及び
図7に、本発明の防護構造の実施例3を示す。
【0032】
該図に示す本実施例の防護構造は、実施例1と類似の構成であるが、実施例1と異なるところは、連絡通路3が防護構造物2の壁で形成され、この連絡通路3の延長線上に防護対象構造物1が存在しないことである。
【0033】
具体的には、防護対象構造物1の全周を取り囲む防護構造物2の壁は不連続であり、防護構造物2の不連続部分の前面端部の壁2dと不連続部分の後面端部の壁2eが間隔を持って重なり合い、この重なり合った壁2dと2eの間隔部分が連絡通路3となるものである。
【0034】
このような本実施例によれば、防護対象構造物1に直接航空機等の飛来物が衝突することを回避しつつ、衝突後の防護対象構造物1へのアクセス性を低下させないことは勿論、防護構造物2の壁が、どの部位においても(全長に亘って)一定の幅を確保することができ(即ち、実施例1では、連絡通路3の形成部分の防護構造物2の壁が、連絡通路3が斜めに形成されることにより薄くなる部分があるが、実施例4では、防護構造物2の壁は、どの部位においても一定の幅を確保できる)、局所的な剛性低下を避けることができる。
【0035】
また、連絡通路3に散乱した飛翔体の破片をクレーン等で上部から撤去することも可能となり(即ち、実施例4の構造では、連絡通路3の上方に空間Dがあり、この空間Dを利用して飛翔体の破片をクレーン等で上部から撤去することができる)、破片を撤去するための手段を増やすことができる。
【0036】
なお、本実施例における防護構造物2は、その一部または全てを山や丘といった構造物としてもよく、連絡通路3についても直線でなく、曲線としてもよい。また、連絡通路3には航空機等の飛来物衝突時の衝撃に対して担保する必要がない扉等の閉塞機構があってもよい。
【0037】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成を置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…防護対象構造物、2…防護構造物、2a…連絡通路が設けられる防護構造物の壁、2b、2c…防護構造物の壁、2d…防護構造物の前面端部の壁、2e…防護構造物の後面端部の壁、3、3a、3b、3c、3d…連絡通路、4…地面。