(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】航空機の高揚力システムのモータを制動する方法及び航空機の高揚力システム
(51)【国際特許分類】
B64C 13/50 20060101AFI20220215BHJP
B64C 9/16 20060101ALI20220215BHJP
B64C 9/22 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
B64C13/50
B64C9/16
B64C9/22
(21)【出願番号】P 2018156919
(22)【出願日】2018-08-24
【審査請求日】2021-02-25
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500107762
【氏名又は名称】ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】エリック ハリントン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター バーガー
(72)【発明者】
【氏名】アダム エム.フィニー
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー マイケル メイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ユニヤ エス.ビショップ
(72)【発明者】
【氏名】アダム クランドル
(72)【発明者】
【氏名】ダレル イー.アンクニー
(72)【発明者】
【氏名】ユージーン ダブリュー.ドルフィ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル シー.ハーク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ミラー
(72)【発明者】
【氏名】アルテミオ ペレス
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-519158(JP,A)
【文献】特開2001-095272(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0261852(US,A1)
【文献】米国特許第06824099(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0138751(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0312931(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 9/00- 9/38
B64C 13/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の高揚力システムのモータを制動する方法であって、前記高揚力システムが、高揚力面に動作可能に結合された複数の駆動ステーションに、伝動シャフトを用いて回転動力を供給することによって、翼に配置された前記高揚力面を動かす中央動力駆動装置を備えており、前記
中央動力駆動装置が、制御
ユニットに作動的に結合され、前記制御
ユニットに結合された少なくとも1つの電気モータを備えており、
前記少なくとも1つの電気モータについての制動要求を判断すること、
前記
電気モータへのカレントコマンドと、前記少なくとも1つの電気モータの現在速度及び向きとの少なくとも1つを測定すること、
前記制動要求に基づいて、前記カレントコマンドと実質的に同等の大きさで反対向きのコマンド、前記カレントコマンドと実質的に同等の速度で反対向きのコマンド、及び前記カレントコマンドと実質的に同等のトルクで反対向きのコマンドの少なくとも1つを含む制動コマンドを、前記少なくとも1つの電気モータに与えること、ならびに
前記少なくとも1つの電気モータが停止するとき、前記制動コマンドを減らすことを含む
、方法。
【請求項2】
選択条件の下で、DCバスを分岐させることによって、前記少なくとも1つの
電気モータから回生されたエネルギを散逸させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分岐させることが、回生バス監視装置に動作可能に接続された制御装置によって制御される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択条件が、前記少なくとも1つの
電気モータについての前記制動要求を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記選択条件が、前記高揚力システムの1つ以上の高揚力面の停止動作を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
パワーオフブレーキに制動コマンドを与えることをさらに含み、前記パワーオフブレーキが、前記少なくとも1つの電気モータ及び前記制御ユニットのうちの少なくとも1つに動作可能に結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記パワーオフブレーキが、前記高揚力システムの前記高揚力面を定位置に保持する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
航空機の高揚力システムであって、
翼に可動式に配置された複数の高揚力面と、
前記高揚力面に結合された複数の駆動ステーションと、
前記複数の駆動ステーションに結合された伝動シャフトと、
前記高揚力面を動かすために前記伝動シャフトに結合された動力駆動装置であって、少なくとも1つの電気モータを動作可能に備える前記動力駆動装置と、
前記動力駆動装置に動作可能に結合された制御ユニットであって、前記少なくとも1つの電気モータの回生制動の方法を実行するように構成された前記制御ユニットとを備え、前記方法が、前記
電気モータへのカレントコマンドと、前記少なくとも1つの電気モータの現在速度及び向きとの少なくとも1つを測定すること、前記
少なくとも1つの電気モータについての制動要求に基づいて、前記カレントコマンドと実質的に同等の大きさで反対向きのコマンド、前記カレントコマンドと実質的に同等の速度で反対向きのコマンド、及び前記カレントコマンドと実質的に同等のトルクで反対向きのコマンドの少なくとも1つを含む制動コマンドを、前記少なくとも1つの電気モータに与えること、ならびに前記少なくとも1つの電気モータが停止するとき、前記制動コマンドを減らすことを含む
、システム。
【請求項9】
前記制御ユニットに動作可能に接続された回生バス監視装置と、前記少なくとも1つの
電気モータにエネルギを供給するように構成されたDCバスとをさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記回生バス監視装置が、選択条件の下で前記DCバスを分岐させ、それによって前記少なくとも1つの
電気モータから回生されたエネルギを散逸させるように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記選択条件が、前記少なくとも1つの
電気モータについての前記制動要求を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記選択条件が、前記高揚力システムの1つ以上の高揚力面の停止動作を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
パワーオフブレーキをさらに備え、前記パワーオフブレーキが、前記少なくとも1つの電気モータ及び前記制御ユニットのうちの少なくとも1つに動作可能に結合されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
パワーオフブレーキをさらに備え、前記パワーオフブレーキが、前記高揚力システムの前記高揚力面を定位置に保持する、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
前記高揚力面が、後縁フラップ及び前縁スラットの少なくとも1つである、請求項8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、航空機のアクチュエータを制御し制動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、民間航空機及び軍用航空機の高揚力システムは、動力駆動装置(PDU)の別名でも知られる中央駆動部によって動力が供給される。そのような駆動装置は、胴体の中央部に搭載され、コンピュータ制御システムまたは電子ユニットによって制御可能である。PDUは、伝動シャフトの別名でも知られるトルクシャフトシステムと相まって、機械的動力を、翼の後縁または前縁に沿って分布した、フラップまたはスラットのパネル駆動ステーションにおける歯車付きアクチュエータに伝達する。PDUの制御は、スラットフラップ電子制御コンピュータ/ユニット(SFECU)などの制御コンピュータによって通常は行われ、一般に、高揚力システムの動作を制御できるだけでなく、動作を監視することも可能な、少なくとも2つの独立したSFECUの冗長構成として実現される。
【0003】
PDUは、一般に油圧式または電気式であり得る2つの独立したモータを備え、速度加算差動歯車によって出力シャフトと結合され得る。モータのそれぞれには、命令位置にモータを停止させるためのパワーオフブレーキ(POB)(通常は電気機械式ブレーキ)が一般に備わっている。システムによっては、2つのモータのうち少なくとも1つは一般に油圧モータであるが、もう1つのモータは電気モータとして実現される場合があり、ハイブリッドPDUをもたらす。伝動シャフトに結合され、伝動シャフトの外側領域及び/またはそれぞれの翼の先端領域に個別に配置される翼端ブレーキは、伝動シャフトを停止させて保持することもできる。翼端ブレーキのそれぞれは、システムを既存の位置に停止させるパワーオフブレーキ(POB)である。
【0004】
さらに、高揚力システムは、伝導システムに導入されるトルクを制限するのに適合したトルクリミッタを通常は備える。トルクリミッタは、機械式または電子式のトルクリミッタであってよく、後者は、導入されるトルクを常に監視することに依拠し、PDUのモータに対して影響力を及ぼし、一旦トルクが所定の閾値を超えると、制限及び/または逆転を開始する。トルクリミッタは、別個の素子であるか、またはPDUに統合される場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高揚力システムは、非命令動作、非対称性及びフラップ/スラットパネルのゆがみなどの障害シナリオを緩和するために、特定のブレーキ係合応答時間に依存することが多い。このような障害シナリオでは、システムの監視されたパラメータが許容範囲外であることが判明した場合、高揚力システムは、障害状態を報知し、システムブレーキにさらなる動きを防止するように命令する。閾値、障害監視、障害持続性、ブレーキ電気制御回路、及びブレーキ自体などのシステムパラメータ及び機能の全ては、システムを停止させるブレーキの全体的な応答時間に寄与する。さらに、ブレーキシステムは、電気的変動、機械的摩耗及び環境曝露に起因して、性能が低下した状態を、寿命を超えて進展させる可能性があり、その全てがブレーキの係合応答時間を増加させる。ブレーキ応答時間の劣化は、高揚力システムが所与の障害シナリオを緩和することを妨げ、または弱めて、航空機に危険をもたらし得る。したがって、動きを停止させるためのアクチュエータのブレーキ応答時間を改善する必要性は、地上試験設備を必要としないシステムとして、特定の障害モードを緩和するのに有用な手段となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、高揚力システム用の改良された制動システム及び制動方法が本明細書に記載される。本システムは、翼に可動式に配置された複数の高揚力面と、伝動シャフトを介して高揚力面に結合された複数の駆動ステーションと、回生制動を組み込んだ電気モータを備え、電気機械式ブレーキに任意選択的に結合される伝動シャフトに結合された動力駆動装置と、動力駆動装置に動作可能に結合された制御ユニットとを備える。制御ユニットは、電気モータを回生制御し、モータの作動中に、結合されたセンサのセンサ出力を取得して、モータの動きを判断し、選択条件の下で動きを停止させるように必要に応じて回生制動機能を作動させる方法を実行する。
【0007】
また、一実施形態において、高揚力面に動作可能に結合された複数の駆動ステーションに、伝動シャフトを用いて回転動力を供給することによって、翼に配置された高揚力面を動かす中央動力駆動装置を備えて、動力駆動装置が、制御装置に作動的に結合され、制御装置に結合された少なくとも1つの電気モータを備える、航空機の高揚力システムのモータを制動する方法が、本明細書に記載される。本方法は、少なくとも1つの電気モータについての制動要求を判断すること、モータへのカレントコマンドと、少なくとも1つの電気モータの現在速度及び向きとの少なくとも1つを測定すること、制動要求に基づいて、制動コマンドを、少なくとも1つの電気モータに与えること、少なくとも1つの電気モータが停止するとき、制動コマンドを減らすことを含む。
【0008】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、カレントコマンドと実質的に同等の大きさで反対の向きまたはトルクのコマンド、及びカレントコマンドと実質的に同等の速度で反対向きのコマンドの少なくとも1つを含む制動コマンドを含み得る。
【0009】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、選択条件の下で、DCバスを分岐させることによって、少なくとも1つのモータから回生されたエネルギを散逸させることを含み得る。
【0010】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、分岐させることが、回生バス監視装置に動作可能に接続された制御装置によって制御されることを含み得る。
【0011】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、選択条件が、少なくとも1つのモータについての制動要求を含むことを含み得る。
【0012】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、選択条件が、高揚力システムの1つ以上の高揚力面の停止動作を含むことを含み得る。
【0013】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、パワーオフブレーキに制動コマンドを与えることをさらに含み、パワーオフブレーキが、少なくとも1つの電気モータ及び制御ユニットのうちの少なくとも1つに動作可能に結合され得る。
【0014】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、パワーオフブレーキが、高揚力システムの高揚力面を定位置に保持することを含み得る。
【0015】
また、一実施形態において、航空機の高揚力システムが本明細書に記載される。本高揚力システムは、翼に可動式に配置された複数の高揚力面と、高揚力面に結合された複数の駆動ステーションと、複数の駆動ステーションに結合された伝動シャフトと、高揚力面を動かすために伝動シャフトに結合された動力駆動装置であって、少なくとも1つの電気モータを備える動力駆動装置とを備える。本高揚力システムは、動力駆動装置に動作可能に結合された制御ユニットであって、少なくとも1つの電気モータの回生制動の方法を実行するように構成された制御ユニットも備える。方法は、モータへのカレントコマンドと、少なくとも1つの電気モータの現在速度及び向きとの少なくとも1つを測定すること、制動要求に基づいて、カレントコマンドと実質的に同等の大きさで反対向きのコマンド、カレントコマンドと実質的に同等の速度で反対向きのコマンド、及びカレントコマンドと実質的に同等のトルクで反対向きのコマンドの少なくとも1つを含む制動コマンドを、少なくとも1つの電気モータに与えること、ならびに少なくとも1つの電気モータが停止するとき、制動コマンドを減らすことを含む。
【0016】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、制御ユニットに動作可能に接続された回生バス監視装置と、少なくとも1つのモータにエネルギを供給するように構成されたDCバスとをさらに備え得る。
【0017】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、回生バス監視装置が、選択条件の下でDCバスを分岐させ、それによって少なくとも1つのモータから回生されたエネルギを散逸させるように構成されることを含み得る。
【0018】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、選択条件が、少なくとも1つのモータについての制動要求を含むことを含み得る。
【0019】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、選択条件が、高揚力システムの1つ以上の高揚力面の停止動作を含むことを含み得る。
【0020】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、パワーオフブレーキをさらに備え、パワーオフブレーキが、少なくとも1つの電気モータ及び制御ユニットのうちの少なくとも1つに動作可能に結合され得る。
【0021】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、パワーオフブレーキが、高揚力システムの高揚力面を定位置に保持することを含み得る。
【0022】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、高揚力面が、後縁フラップ及び前縁スラットの少なくとも1つであることを含み得る。
【0023】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、少なくとも1つの電気モータが、ブラシレスDCモータであることを含み得る。
【0024】
また、翼に可動式に配置された複数の高揚力面と、高揚力面に結合された複数の駆動ステーションと、複数の駆動ステーションに結合された伝動シャフトと、高揚力面を動かすために伝動シャフトに結合された動力駆動装置であって、少なくとも1つの電気モータを備える動力駆動装置と、少なくとも1つの電気モータに作動的に結合されたモータ駆動システムであって、モータ駆動システムのDCバスを分岐させるように構成された回生監視装置を備えるモータ駆動システムとを備える、航空機の高揚力システムが本明細書に記載される。本システムは、モータ駆動装置に動作可能に結合された制御ユニットであって、選択条件の下で、少なくとも1つの電気モータを制動するように回生監視装置を動作可能に制御する制御ユニットも備える。
【0025】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、回生バス監視装置が、選択条件の下でDCバスを分岐させ、それによって少なくとも1つのモータから回生されたエネルギを散逸させるように構成されることを含み得る。
【0026】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、選択条件が、少なくとも1つのモータについての制動要求と、高揚力システムの1つ以上の高揚力面の動きを停止することとのうちの少なくとも1つを含むことを含み得る。
【0027】
上述の特徴の1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態は、パワーオフブレーキをさらに備え、パワーオフブレーキが、少なくとも1つの電気モータ及び制御ユニットのうちの少なくとも1つに動作可能に結合され得る。
【0028】
さらなる特徴及び利点は、本開示の技法によって実現される。本開示の他の実施形態及び態様は、本明細書に詳細に記載される。本開示の利点及び特徴をより良く理解するために、明細書及び図面が参照される。
【0029】
本発明と見なされる主題は、本明細書の終わりの請求項において、特に指摘され、明瞭に請求される。本発明の前記及び他の特徴、ならびに利点は、添付の図面と併用される以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施形態で用いられる航空機の高揚力システムの簡略化されたシステム概略図である。
【
図2】一実施形態による回生制御システムの簡略化されたブロック図である。
【
図3】一実施形態による高揚力ブレーキ応答時間を測定する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示の原理の理解を促す目的で、次に、図面に示される実施形態を参照し、具体的な用語を用いてこれを説明する。しかし、それによってこの開示の範囲が限定されるものではないことが理解されよう。以下の説明は、本質的に単なる例示に過ぎず、本開示、その用途または効用を限定することを意図するものではない。図面全体を通して、一致する参照番号は、同様のまたは類似の部分及び特徴を示すことが理解されるべきである。本明細書で使用する制御装置という用語は、特定用途向け集積回路(ASIC)、電子回路、1つ以上のソフトウェアプログラムもしくはファームウェアプログラムを実行する電子プロセッサ(共用、専用、またはグループ)及びメモリ、組合せ論理回路、ならびに/または記載される機能性を与える他の適切なインタフェース及びコンポーネントを含み得る処理回路を指す。
【0032】
さらに、「例示的」という用語は、本明細書では、「例、具体例または例証として機能する」を意味するために使用される。本明細書で「例示的」と記載される実施形態または設計は、必ずしも他の実施形態または設計よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」という用語は、1以上すなわち1、2、3、4などの任意の整数を含むものと理解される。「複数の」という用語は、2以上すなわち2、3、4、5などの任意の整数を含むものと理解される。「接続」という用語には、間接的な「接続」と直接的な「接続」が含まれ得る。
【0033】
本明細書に示して説明するように、本開示の様々な特徴が提示される。様々な実施形態は、同一または類似の特徴を有する場合があり、したがって同一または類似の特徴には同じ参照番号でラベルが付けられ得るが、その特徴が示されている図を知らせる異なった第一位の番号が前に置かれ得る。よって、例えば、
図Xに示される要素「a」は「Xa」とラベル付けされ、
図Zの同様の特徴は「Za」とラベル付けされ得る。同様の参照番号が総称的な意味で使用され得るが、様々な実施形態が説明され、様々な特徴は、当業者にとって明示的に記載されているか否かにかかわらず、当業者には理解されるように、変更、改変、修正などを含み得る。
【0034】
全般に、本明細書の実施形態は、概して、高揚力システムにおけるアクチュエータ及びアクチュエータ制動の制御に対するシステムレベルのアプローチに関する。本開示は、限定されるものではなく、水平安定板、多目的アクチュエータなどを含む他のシステムに適用することもでき、これらはその動作性能の臨界の機能としてブレーキ応答時間に依存する。
【0035】
現在の高揚力飛行制御システムの速度制御及び位置制御には依然として非常にむらがあり、正確さのためにかなり大きなマージンを必要とする。設計がより厳しい公差を推進し、システムがよりコンパクトになるにつれて、所望の制御システム応答を確保するために正確さのマージンはそれに応じて厳しくなってゆく。結果として、この傾向は、正確なシステム制御及びブレーキングにおいて同等のより卓越した能力を要求する。このことは、飛行制御システムの即時停止、及びそのために操縦翼面の即時停止が理想的である緊急機能停止状況の間に特に重要である。
【0036】
図1では、高揚力システム100の一般的な構成が、例示的な前縁スラットシステム20及び後縁フラップシステム120において示される。本明細書が提供し、
図1に示す記述は、例示的な前縁スラットシステムに向けられているが、少しの一般性を失うことなく、後縁フラップシステム120に等しく適用できることは容易に理解されるべきである。記載された実施形態をより良く理解するためと、図及び説明の簡略化のために、後縁フラップシステム120に関するさらなる詳細は、繰返しを避けるために省略される。
【0037】
動力駆動装置(PDU)22は、複数のモータ24、25を備える。モータ24/25は、電気モータまたは油圧モータであり得る。一実施形態において、2つの電気モータ24、25が各PDU22に用いられているが、用途のニーズに応じて様々な数のモータを用いることができる。さらに、電気モータが説明されているが、本明細書で提供される説明は、少しの一般性を失うことなく、油圧モータに対して等しく適用できることも理解されたい。慣例的に、パワーオフブレーキ26、27は、PDU出力を停止して維持する手段として、各電気モータ(複数可)24、25とそれぞれ結合している。本明細書で説明する1つ以上の実施形態において、各モータ24、25は、パワーオフブレーキ26、27を含み得る。しかしながら、一実施形態において、パワーオフブレーキ26、27の制動機能は、本明細書でさらに詳細に説明するように、PDUのモータ24、25の回生制動機能性に組み込まれる。PDU出力は、PDUを通って、各翼の前縁に沿って延びる伝動シャフトシステム30、32に結合される。各伝動シャフト30、32の各々は、それぞれの翼半分に沿って分布した複数の駆動ステーション34に結合され、複数の可動式に支持された高揚力面36の各々は、2つ以上の個別の駆動ステーション34によって駆動される。任意の数を使用することができるが、図には、各翼半分に4つの高揚力面36(例えばスラット)が示されている。
【0038】
伝動シャフト30、32の各々は、各翼の外端にあり得る、シャフト30、32の各々の外端の周囲領域に、翼端ブレーキ40、42をも備える。一般に、翼端ブレーキ40、42の位置は、動力伝達系統の端部にある。しかしながら、いくつかの用途では、翼の端部における外被、構造等の制約のため、翼端ブレーキ40、42が最も機翼の先端に近いアクチュエータの内側に据え付けられる必要があり得る。また、各伝動シャフト30、32は、それぞれのシャフト30、32の最外端に配置された位置センサ44、46に結合されている。センサは、システムの位置フィードバックを提供する。例えば、このフィードバックは、伝動シャフト30と翼半分の駆動ステーション34との間の非対称状態の検出、及び伝動シャフト32と翼半分の駆動ステーション34との間の非対称状態の検出を可能にし得る。
【0039】
システム100は、PDU22の出力部でまたはその近くで伝動シャフト30、32の監視を可能にするフィードバック位置センサまたはピックオフユニット52、54をさらに備え得る。伝動シャフト30、32にまたはPDU22の内部に配置されたトルクセンサユニット56、58は、伝動シャフト30、32に導入されるトルクを監視する。位置ピックオフユニット44、46、フィードバック位置ピックオフユニット52、54、及びトルクセンサユニット56、58の全ては、2つの制御ユニット60、62に結合されている。制御ユニット60、62は、例示的には、第1のスラットフラップ電子制御ユニット(SFECU)60及び第2のSFECU62として具現化される。PDU22及びSFECU60、62は、本明細書の実施形態の説明のために別々に識別されるが、統合されていても、またはそれらの機能が分配し直されてもよいことが理解される。
【0040】
例示的には、各翼の伝動シャフト30、32におけるトルクは、トルクセンサユニット54、56が導入トルクを検出するトルクリミッタ(TL)の機能性によって制限される。伝動シャフト30、32のうちの1つにおけるトルクが特定のトルク閾値を超える場合に、PDU22は停止されるか、または実施形態によっては、PDUモータ24、26の急速な減速または逆転が行われ、トルクを非臨界レベルに制御する。最終的に、システム100は、モータ24、25のそれぞれに伴う回生制動機能を係合することによって停止され得る。電気モータ24、25は、SFECU60、62と結合されたデジタル駆動制御によって制御されるブラシレス直流(BLDC)モータであり得る。任意選択的に、システム100は、モータ24、25のそれぞれ及び/または非対称性または翼端ブレーキ40、42に伴うオプションのパワーオフブレーキ26、27を係合させることによって停止させてもよい。
【0041】
標準高揚力動作モードでは、オプションの翼端ブレーキ40、42及びモータブレーキ26、27が解放され、SFECU60、62によって制御されるモータ24、25がPDU22に動力を供給する。PDU22は、高揚力システム100を、命令された速度で任意の命令位置に動作させるのに十分な機械的動力を供給する。命令された位置に近づくと、SFECU60、62はモータ24、25を減速してPDU22の出力を減らし、高揚力システム100を減速させる。命令された位置に至ると、SFECU60、62の回生制動機能は、高揚力システム100の位置を停止させて保持するようにモータ24、25に命令を与える。任意選択的に、一実施形態では、命令位置でオプションのパワーオフブレーキ26、27が係合されて、高揚力システム100の位置を停止して保持する。選択条件の下で、高揚力システム100、特にSFECU60、62は、モータ24、25の運動をできるだけ迅速に停止させる必要がある。これらの条件下では、SFECU60、62は回生制動制御機能を使用して、モータ24、25への命令を反転させ、できるだけ速やかにその動作を停止させる。
【0042】
図2は、SFECU60、62の簡略化されたブロック図を示す。一実施形態において、SFECU60、62は、電力システム100及び1つ以上のモータ制御装置の両方を備える。例示的な実施形態において、電力システム100は、電気主線などのAC電源102を備える(例えば、115ボルトAC、440ボルトAC、1相または3相、図中に航空機温度CBとラベル付けされた主要航空機バス)。AC電源102は、モータ駆動システム20に供給される。本明細書でさらに詳細に説明するように、駆動システム120は、ATRU(自動変圧器整流器ユニット)としてラベル付けされて以下で識別され、バス102からのAC電力をDCバス1上のDC電圧に変換する整流器またはコンバータ130を含む。一実施形態において、整流器/ATRU132は、AC電圧102をより高い電圧に昇圧する電圧レベルシフト機能も備える。より高い電圧は、AC電力102のピークAC電圧よりも高い電圧にDCバス電圧を確立することを可能にする。レベルシフト機能は、レベルシフト用の変圧器または従来の有効な技法によって実装することができる。ATRU130は、レベルシフトされたAC電力をDC電圧に変換する整流機能を備えることもできる。一実施形態において、ATRU130は能動整流を使用する。ATRU130は、アクティブまたはパッシブ構成とすることができ、能動整流、電磁干渉(EMI)用のアクティブまたはパッシブフィルタなどの他の機能及び特性を備え得る。駆動システム120は、ATRU130によって定式化されたDC電圧を、多相の、モータ24、25を駆動するためのAC駆動信号144a、144b、144cに変換するインバータ140も備える。駆動システム120からの駆動信号144a、144b、144cがモータ24、25に供給されて、例えばスラット、フラップなどの高揚力制御面36上の空力負荷などの負荷を操作する。例示的な実施形態において、モータ24、25は、多相の、永久磁石モータ、より具体的にはブラシレスDCモータ(BLDC)を備える。
【0043】
図2に示すように、駆動システム120は、モータ24、25に駆動信号144a、144b、144cを供給するように接続されたATRU132及びインバータ140を備える。一実施形態において、ATRU130とインバータ140の両方が制御装置160によって制御される。代替の実施形態において、ATRU130及びインバータ140は、別々の駆動制御装置160及び160’によってそれぞれ制御される。駆動制御装置160(及び160’)は、ATRU130へ制御信号132を供給して、ATRU130の動作及びDCバス134の生成を制御する。ATRU130は、制御装置160、160’にいくつかのセンサ信号133を供給して、AC電源102からのAC電圧のレベルシフトと同様に、DCバス134上のDC電圧の整流及び生成を促進し得る。センサ信号には、ATRU内の能動整流の情報と、整流を容易にするために使用されるスイッチング装置の情報とが含まれ得る。センサ信号133には、スイッチング装置の状態、スイッチング装置の動作、スイッチング装置の温度などが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0044】
同様に、制御装置160(及び160’)は、制御信号142をインバータ140に供給して、モータ24、25への駆動信号144a、144b、144cの生成を制御する。インバータ140は、制御装置160、160’にいくつかのセンサ信号143を供給して、インバータ140への制御信号142の生成を促進し、最終的にはモータ駆動信号144a、144b、144cの生成を促進し得る。インバータ140からのセンサ信号は、モータ駆動信号144a、144b、144cのパルス幅変調(PWM)生成を促進するために使用されるスイッチング装置の動作の情報を含み得る。センサ信号143には、スイッチング装置の状態、スイッチング装置の動作、スイッチング装置の温度などが含まれ得るが、これらに限定されない。駆動制御装置160、160’は、本明細書で説明する動作を行うように記憶媒体に記憶させたコンピュータプログラムを実行する汎用マイクロプロセッサを用いて実装され得る。あるいは、駆動制御装置160、160’は、ハードウェア(例えば、ASIC、FPGA)またはハードウェア/ソフトウェアの組合せに実装されてもよい。
【0045】
駆動装置120は、航空機AC電源102からの入力AC電圧を測定し監視するAC電圧監視装置104をさらに含み得る。電圧監視装置104は、制御装置160、160’に動作可能に接続された任意の種類のセンサか、または線106によって示されるさらなる処理のための制御装置160、160’への単なる直接入力であり得る。一実施形態において、AC電圧監視装置104は、AC電源102の欠相と、AC電源102の過電圧/不足電圧とを検出することを促進する。同様に、駆動装置120は、DCバス134のDC電圧を測定し監視するDC電圧監視装置108をさらに備え得る。電DC圧監視装置108は、制御装置160、160’に動作可能に接続された任意の種類のセンサか、または線110によって示されるさらなる処理のための制御装置160、160’への単なる直接入力であり得る。一実施形態において、DC電圧監視装置108は、DCバス134の過電圧/不足電圧を検出することを促進する。
【0046】
加えて、駆動装置120は、DCバス134の総DC電流を測定し監視するDC電流監視装置112をさらに含み得る。DC電流監視装置112は、任意の種類のセンサか、もしくは制御装置160、160’に動作可能に接続された任意の種類のセンサ、または線114によって示されるさらなる処理のための制御装置160、160’への単なる直接入力であり得る。一実施形態において、DC電流監視装置112は、DCバス134を循環する過電流/不足電流を検出することを促進する。最後に、駆動装置120は、モータ24、25の個々の相電流を測定し監視する出力監視装置または相電流監視装置116をさらに含み得る。出力電流監視装置は、任意の種類のセンサか、もしくは制御装置160、160’に動作可能に接続された任意の種類のセンサ、または線118によって示されるさらなる処理のための制御装置160、160’への単なる直接入力であり得る。一実施形態において、出力電流監視装置116は、モータ24、25に供給される過電流または不平衡電流を検出することを促進する。
【0047】
次に、引き続き
図2を参照して、モータ駆動装置120の動作について説明する。モータ用途において、モータ速度、トルクなどのモータ24、25の動作特性が測定され、制御装置160に提供され得る。バス監視センサ104、108、及び112のうちの1つ以上は、ACバス102及び/またはDC主電源バス134上の電圧レベルを監視し、それぞれの電圧レベルを表す線106または110上の対応する電圧フィードバック信号を生成する。通常通りにDCモータ駆動装置120を用いて、電力網またはAC電源102からのAC電力をDC電力に変換し、その後、再び、モータ24、25の動作用に、異なる周波数及び異なる電圧レベルのAC電力に反転することもできる。
【0048】
一実施形態において、モータ24、25を制御して駆動するために、制御装置160は、主電源電圧基準信号を受信し、それを主電源電圧フィードバック信号と比較して、それらの差を表す電圧差信号を生成する。電圧フィードバック比例積分(PI)制御機能が使用され、電圧差信号を受信し、それを安定制御電流基準に変換する。同様に、制御装置160内の電流比較器機能は、制御電流基準と制御電流フィードバック信号とを比較して、電流差を生成する。制御電流フィードバックPI制御装置機能は、電流差を受信して、それを安定制御電流に変換する。
【0049】
パルス幅変調器(PWM)機能は、制御電流調整信号を受信し、対応するPWM制御信号をインバータ140へのPWM制御信号142上に生成する。制御装置は、電圧フィードバック及び制御電流フィードバック機能に応答して、DC電流監視装置112によって測定される制御電流のレベルを生成するように、PWM制御信号142を調整する。
【0050】
例示的な実施形態において、制御装置160は、高揚力制御面36を所望の位置に維持するために、必要に応じて、モータ24、25の位置または速度を制御する方法を実行する。選択条件の下では、アクチュエータを制御し、それによって非常に迅速に高リフト制御面36の動きを制御するか、またはそれを停止させることが望ましい。例えば、障害条件の下で、高揚力制御面36(
図1)の動きを阻止し、さらなる動きを防止する。通常の動作の下では、インバータ140は、PWM制御信号に基づいて、モータ24、25に与えられる相励磁制御信号を生成する。モータ24、25が停止するように命令されると、通常は励磁信号が解除される。しかしながら、モータ24、25内の電磁エネルギ及び運動エネルギのために、モータ24、25は、駆動装置120及びDCバス134に電磁エネルギを惰性で押し戻し続ける(パワーオフブレーキTBDがモータ24、25の動きを止めるか、またはモータ24、25内の全ての電磁エネルギが、インバータ140及びDCバス134、同様に駆動装置120の任意の他のコンポーネントを介して散逸されるまで)。この散逸には時間がかかり、パワーオフブレーキの作動によって制御面の動きを止めることも時間がかかる。さらに、閾値、障害監視、障害持続性、ブレーキ電気制御回路、及びブレーキ自体などのシステムパラメータ及び機能の全ては、システムを停止させるブレーキの全体的な応答時間に寄与する。ブレーキ応答時間の劣化は、高揚力システムが所与の障害シナリオを緩和することを妨げ、または弱めて、航空機に危険をもたらし得る。
【0051】
その目的に向けて、一実施形態において、制御装置160は、モータ制御機能性の一部として回生制動の方法を実行して、モータ24、25の位置決め及び制動を、それによって高揚力制御面36を正確に制御する。例示的な実施形態において、選択条件下で回生監視装置制御部150がDCバス134間に使用される、回生制動方式が使用される。回生監視装置制御部150は、制御装置160に動作可能に接続され、選択条件下でDCバス134内のエネルギを分岐させるように命令される。エネルギを分岐させることは、制動中に発生し、DCバス134に押し戻されたエネルギをDCバス134が散逸させるのを促進することに等しい。エネルギを分岐させる1つの条件は、モータ24、25の制動及び停止である。別の条件には、緊急または急停止の条件が含まれ得る。
【0052】
別の実施形態において、制御装置160は、モータ制御機能性の一部として回生制動の方法200を実行して、モータ24、25の位置決め及び制動を、それによって高揚力制御面36を正確に制御する。この実施形態において、上述のように、選択条件下で回生監視装置制御部150がDCバス134間に使用される、回生制動方式が使用され、インバータ140がモータ24、25にそれ以上命令しないのではなく、モータ減速をさらに改善させるために相互の命令がなされる。動作中、選択条件下で、モータ24、25を制動する要求が起動された際に制御装置160は、カレントコマンド142をインバータ140に記録する。一実施形態において、インバータ140へのコマンド信号142は、モータ24、26に、反対向きにモータ24、25を駆動する同じ(大きさの)モータコマンド信号144a~144cを供給するように定式化される。結果的に、反対コマンドは、モータ24、25内のエネルギを相殺するのに効果的であり、モータ24、25の減速を向上させる。モータへの同等で反対のコマンド信号144a~144cは持続され、モータ24、25が減速して停止するとき、ゼロまで減らされる。回生監視装置制御部150は依然としてDCバス134内のエネルギを分岐させるように命令され、それによってモータ24、25を減速する。エネルギを分岐させることは、制動中に発生し、DCバス134に押し戻されたエネルギをDCバス134が散逸させるのを促進することになる。
【0053】
同様に、別の実施形態において、選択条件下で、モータ24、25を制動する要求が起動された際に制御装置160は、カレントコマンド及びまたはトルクコマンド142をインバータ140に記録する。一実施形態において、インバータ140へのコマンド信号142は、モータ24、26に、反対のトルクでモータ24、25を駆動する同じ(大きさの)モータコマンド信号144a~144cを供給するように定式化される。結果的に、反対コマンドは、モータ24、25内のエネルギを相殺するのに効果的であり、モータ24、25の減速を向上させる。モータへの同等で反対のコマンド信号144a~144cは持続され、モータ24、25が減速して停止するとき、ゼロまで減らされる。回生監視装置制御部150は依然としてDCバス134内のエネルギを分岐させるように命令され、それによってモータ24、25を減速する。エネルギを分岐させることは、制動中に発生し、DCバス134に押し戻されたエネルギをDCバス134が散逸させるのを促進することになる。
【0054】
次に、一実施形態によるブレーキ応答時間を短縮するための航空機高揚力制御システムにおけるモータ24、25の回生減速の方法200を示す
図3を参照する。方法200の回生制動を行うために、本方法は、制動要求を判断する処理ステップ205で開始される。制動要求は、モータ24、25を停止させるための通常の動作の結果であり得るか、または可能な限り迅速にモータ24、25の動作を停止させることが望ましい異常な状態の結果であり得る。例えば、航空機高揚力システム制御面36のさらなる動きを回避するためである。方法ステップ210を続けると、制動が必要な場合または望まれる場合、制御装置160は、モータコマンド信号144a~144cの現在の大きさ及び向きを測定する。次に、制御装置160は、方法ステップ215に示すように、同等の大きさで反対向きのモータコマンド信号144a~144cを生成することにあたる励磁信号142を与える。方法ステップ220を継続し、任意選択的に及び/または代替的に、制御装置160は、上述のようにDCバス134内のエネルギを分岐させるのを支援するために、回生監視装置と連動し得る。最終的に、方法ステップ225に示すように、モータ24、25が停止して、モータ24、25にさらに命令しないようにするとき、制御装置がモータコマンド信号を減らして、方法200が継続される。別の実施形態において、制動が必要な場合または望まれる場合、制御装置160は、モータ24、25の現在のトルク、速度及び向きを判断する。次に、制御装置160は、現在の速度及びトルクに打ち勝つのに十分な大きさで反対向きのモータコマンド信号144a~144cを生成することにあたる励磁信号142を与える。前と同じように、任意選択的に及び/または代替的に、制御装置160は、上述のようにDCバス134内のエネルギを分岐させるのを支援するために、回生監視装置と連動し得る。最終的に、方法ステップ225に示すように、モータ24、25が停止して、モータ24、25にさらに命令しないようにするとき、制御装置160がモータコマンド信号144a~144cを減らして、方法200が継続される。
【0055】
モータ24、25の命令は、例えば1秒未満の、ほんの一瞬の短時間の間行われ得る。これにより、制御装置160及び駆動システム120は、モータ24、25内のエネルギを確実に散逸させ、システムを非常に迅速に休止させる上記の時間を可能とする。一実施形態において、閾値は、システム100の構成、モータ24、25、アクチュエータの慣性及びその構成などによるが、用途に特有のものである。種々のシステム及び航空機の構成は、様々な閾値及び時間を必要とし得る。最終的に望まれることは、高揚力制御表面36例えば、フラップまたはスラットの好ましくない量に先立って、システムの動きを停止させることである。好ましくない量の1つの尺度は、操縦翼面が航空機の取扱いまたは飛行品質に影響を及ぼすほど十分に動いた場合になるであろう。
【0056】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書では、単数形「a」、「an」及び「the」は、別様に文脈が明らかに指示しない限り、同様に複数形を含むことを意図する。本明細書で使用される際に、用語「含む」及び/または「含んでいる」は、記述された特徴、整数、ステップ、操作、素子、及び/またはコンポーネントの存在を指定するものであって、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、素子コンポーネント、及び/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことがさらに理解されるであろう。
【0057】
以下の特許請求の範囲における全てのミーンズまたはステッププラスファンクションの要素の対応する構造、材料、動作、及び均等物は、具体的に請求される他の特許請求された要素と組み合わせてファンクションを実施する任意の構造、材料、または動作を含むことを意図する。本発明の記述は、例示及び説明のために提示されているが、網羅的であること、または開示された形態の本発明に限定することを意図するものではない。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、多くの変更及び変形が当業者には明らかとなるであろう。本発明の原理及び実際の応用例を最も良く説明するために、かつ企図される具体的な使用に適するような様々な変更を伴う様々な実施形態について、他の当業者が本発明を理解することを可能にするために、実施形態を選び、説明した。