(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】配索部材の保持体
(51)【国際特許分類】
F16B 2/10 20060101AFI20220215BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
F16B2/10 E
B60R16/02 623C
(21)【出願番号】P 2018239499
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2020-04-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本多 亨
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-092971(JP,A)
【文献】実開平05-001084(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00- 2/26
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配索部材の保持体であって、
開口を開閉可能にヒンジを介して結合され、開いた前記開口から内部に前記配索部材を入れ込み可能な一対のクランプ部を備えており、
前記一対のクランプ部には、ロック機構と、撓み片と、を備えており、
前記ロック機構は、前記内部に前記配索部材を入れ込んだ状態で前記一対のクランプ部をロック可能に構成されており、
前記撓み片は、前記内部に前記配索部材を入れ込む前の状態である前記一対のクランプ部の自由状態において、前記ロック機構のロック動作を阻害するように、先端が前記一対のクランプ部の前記開口の前記開閉の軌跡より突出するように形成されており、かつ、前記配索部材の前記内部への入れ込みにともなって前記ロック動作の阻害を解消するように、先端が前記一対のクランプ部の前記開口の前記開閉の前記軌跡より前記突出した状態から前記内部へ向けて撓んで退行するように形成されており、
前記一対のクランプ部の前記自由状態から、前記内部に前記配索部材を入れ込むことなく、前記ロック機構が前記ロック動作するように前記一対のクランプ部の前記開口を閉じていくと、前記ロック機構の前記ロック動作を阻害するように、前記一対のクランプ部のうちの一方のクランプ部と前記撓み片とが干渉
し、
前記一対のクランプ部のうちの一方のクランプ部の先端には、前記開口から前記内部の反対の外部に向けて突出する引掛片が形成されており、
前記撓み片の先端には、前記一方のクランプ部の前記引掛片に向けて突出する突起が形成されている配索部材の保持体。
【請求項2】
請求項1に記載の配索部材の保持体であって、
前記撓み片は、前記内部に受け入れた前記配索部材のガタツキを抑え可能に形成されている配索部材の保持体。
【請求項3】
請求項1~2のいずれかに記載の配索部材の保持体であって、
前記撓み片は、前記配索部材の入れ込み方向に沿って凹みを成す凹状に形成されている配索部材の保持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配索部材の保持体に関し、詳しくは、開口を開閉可能にヒンジを介して結合され、開いた開口から内部に配索部材を入れ込み可能な一対のクランプ部を備えている配策部材の保持体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の内部に配線される配索部材(例えば、「ワイヤーハーネス」であり、以下、この「ワイヤーハーネス」を例に説明する)を車体パネルに留める留め具として、例えば、クランプが既に知られている。このクランプ401は、例えば、
図13に示すように、開いた開口402aから内部402bにワイヤーハーネス450を入れ込んだ状態で保持可能な一対のクランプ部420、430を有するクランプ部材402と、車体パネルの取付孔(いずれも図示しない)に取り付け可能なアンカー部材403とから一体的に構成されている。この一対のクランプ部420、430は、ロック機構404と、撓み片426とを備えている。
【0003】
このロック機構404は、一対のクランプ部420、430の内部402bにワイヤーハーネス450を入れ込んだ状態で一対のクランプ部420、430をロック可能に構成されている(
図14参照)。そのため、この入れ込んだ状態でロック機構404が一対のクランプ部420、430をロックすると(ロック機構404をロックすると)、この入れ込んだワイヤーハーネス450を保持できる。このようなロックの状態がロック機構404の正嵌合となる。また、この撓み片426は、この保持したワイヤーハーネス450のガタツキを抑え可能に可撓性を有するように形成されている。したがって、ガタツキを生じさせることなく一対のクランプ部420、430の内部402bにワイヤーハーネス450を保持できる。結果として、ワイヤーハーネス450を安定して車体パネルに留めることができる。なお、上述したワイヤーハーネス450の保持は、予め、車体パネルの取付孔にクランプ401のアンカー部材403が取り付けられた状態で行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、ロック機構404は、内部402bにワイヤーハーネス450を入れ込む前の状態において、ロック機構404が一対のクランプ部420、430をロックできるといったロック機構404の誤嵌合が可能な構造となっている(
図15参照)。そのため、この内部402bにワイヤーハーネス450を入れ込む作業と、このワイヤーハーネス450を入れ込んだ状態でロック機構404が一対のクランプ部420、430をロックする作業とを作業者が手元を目視していない状態または目視できない状態で行うと、ロック機構404の誤嵌合が生じてしまうことがあった。したがって、ワイヤーハーネス450が車体パネルに留められていない状態のまま、自動車が製品として市場に流れてしまい、不具合に繋がる恐れがあった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、一対のクランプ部の内部にワイヤーハーネスを入れ込む前の状態において、一対のクランプ部をロックできるといったロック機構の誤嵌合を防止できる配索部材の保持体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。請求項1に記載の発明は、配索部材の保持体であって、開口を開閉可能にヒンジを介して結合され、開いた開口から内部に配索部材を入れ込み可能な一対のクランプ部を備えている。一対のクランプ部には、ロック機構と、撓み片とを備えている。ロック機構は、内部に配索部材を入れ込んだ状態で一対のクランプ部をロック可能に構成されている。撓み片は、内部に配索部材を入れ込む前の状態である一対のクランプ部の自由状態において、ロック機構のロック動作を阻害するように、先端が一対のクランプ部の開口の開閉の軌跡より突出するように形成されている。また、撓み片は、配索部材の内部への入れ込みにともなってロック動作の阻害を解消するように、先端が一対のクランプ部の開口の開閉の軌跡より突出した状態から内部へ向けて撓んで退行するように形成されている。一対のクランプ部の自由状態から、内部に配索部材を入れ込むことなく、ロック機構がロック動作するように一対のクランプ部の開口を閉じていくと、ロック機構のロック動作を阻害するように、一対のクランプ部のうちの一方のクランプ部と撓み片とが干渉する。一対のクランプ部のうちの一方のクランプ部の先端には、開口から内部の反対の外部に向けて突出する引掛片が形成されている。撓み片の先端には、一方のクランプ部の引掛片に向けて突出する突起が形成されている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、内部に配索部材を入れ込む前の状態において、開いた開口から内部に配索部材を入れ込む作業を行うと、撓み片は、ロック機構のロック動作を阻害した状態から阻害を解消した状態に切り替わる。したがって、一対のクランプ部の内部に配索部材を入れ込んだ状態でロック機構が一対のクランプ部をロックできるため、この内部に入れ込んだ配索部材を保持できる。一方、内部に配索部材を入れ込む前の状態(一対のクランプ部の自由状態)において、ロック機構のロック動作を試みると、一方のクランプ部と撓み片とが干渉すると共に、この他方のクランプ部と撓み片とが干渉する。そのため、ロック機構の誤嵌合が成立することがない。したがって、ロック機構の誤嵌合を防止できる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の配索部材の保持体であって、撓み片は、内部に受け入れた配索部材のガタツキを抑え可能に形成されている。
【0012】
請求項2の発明によれば、内部に配索部材を入れ込む前の状態において、開いた開口から内部に配索部材を入れ込む作業を行うと、この入れ込まれた配索部材からの押し当てによって撓み片が内部へ向けて撓んでいく。そのため、この内部へ向けて撓んだ撓み片からの反力が配索部材に作用する。したがって、この配索部材が他方のクランプ部の内面に押し当てられる。結果として、この内部に入れ込んで保持した配索部材のガタツキを抑えることができる。すなわち、配索部材を安定して、パネル(例えば、車体パネル)に留めることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1~2のいずれかに記載の配索部材の保持体であって、撓み片は、配索部材の入れ込み方向に沿って凹みを成す凹状に形成されている。
【0014】
請求項3の発明によれば、作業者に対して配索部材の入れ込み方向が凹みの凹み方向であることを示唆できる。したがって、作業者が入れ込み方向を迷うことがないため、この入れ込みの作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るクランプを上から見た斜視図である。
【
図6】
図1のクランプのロック機構のロック動作の模式図である。
【
図7】
図6の次のロック動作(ロック機構の正嵌合状態へ向けた途中状態)を示している。
【
図8】
図7の次のロック動作(ロック機構の正嵌合状態)を示している。
【
図9】
図6の次のロック動作(ロック機構の誤嵌合状態)を示している。
【
図13】従来技術のクランプのロック機構のロック動作の模式図である。
【
図14】
図13の次のロック動作(ロック機構の正嵌合状態)を示している。
【
図15】
図13の次のロック動作(ロック機構の誤嵌合状態)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1~9を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、「保持体」と「配索部材」との例として、「クランプ1」と「ワイヤーハーネス50」とを説明する。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0017】
まず、
図1~6を参照して、実施形態に係るクランプ1を説明する。
図1~5に示すように、クランプ1は、PP等の剛性を有する合成樹脂材による一体成形品であって、その構成は、主として、第1クランプ部20、第2クランプ部30を有するクランプ部材2と、車体パネルの取付孔(いずれも図示しない)に取り付け可能なアンカー部材3とから構成されている。このクランプ部材2における第1クランプ部20、第2クランプ部30は、上下に対を成すように形成されており第1ヒンジ40を介して結合されている。
【0018】
この第1クランプ部20は、内面が略C字状を成す湾曲した入込面20aを有するように形成されている。また、この第1クランプ部20の外面には、長手方向に沿ってリブ24が左右方向の中央に位置するように形成されている。これにより、第1クランプ部20の強度を高めることができる。また、この第1クランプ部20の前端(先端)には、略コ字状を成す挟持部21が形成されている。この挟持部21は、第1クランプ部20の右側が延長するように形成された内片22と、この内片22の外側に対向する外片23とを有するように形成されている。この内片22と外片23とは、互いが遠ざかったり近づいたり撓み可能に形成されている。
【0019】
この内片22の前端(先端)には、第2ヒンジ25を介して撓み片26が形成されている。この撓み片26は、内部2bにワイヤーハーネス50を入れ込む前の状態(
図1~6に示す状態であり、以下、「一対のクランプ部20、30の自由状態」と記す)において、後述するロック機構4のロック動作を阻害しつつ、ワイヤーハーネス50の内部2bへの入れ込みにともなってロック機構4のロック動作の阻害を解消するように撓み可能に形成されている。
【0020】
このように撓み可能に形成されているため、後述するように一対のクランプ部20、30の内部2bに保持したワイヤーハーネス50を第2クランプ部30の入込面30aに押し当てることができる。したがって、この内部2bに保持したワイヤーハーネス50のガタツキを抑えることができる。また、この撓み片26は、
図4からも明らかなように、凹み26aを有するように略J字状に形成されている。
【0021】
この凹み26aの凹み方向は、一対のクランプ部20、30の内部2bにワイヤーハーネス50を入れ込む方向(
図6において、矢印方向)に沿うように形成されている。また、この撓み片26の前端(先端)には、上側に向けて突出する突起26bが形成されている。これにより、クランプ1を射出成形するとき、冷却固化されたクランプ1を成形金型から取り出すためのエジェクターピンを押し当てることができる。したがって、成形金型からのクランプ1の取り出しを簡便に実施できる。
【0022】
一方、外片23の内面には、第1係合爪23aが形成されている。また、この外片23の前端(先端)には、前側に向けて上がり傾斜する方向に延びる引掛片23bが形成されている。これにより、第1クランプ部20と第2クランプ部30とを2本の指で摘むとき、この第1クランプ部20を摘む指を引っ掛け易い、といった作用効果を得ることができる。また、この外片23と引掛片23bとの右側面には、左側に向けて傾斜する案内面23cが形成されている。
【0023】
なお、上述した撓み片26は、前端(先端)が一対のクランプ部20、30の開口2aの開閉の軌跡Rより突出するように形成されている(
図4参照)。そのため、一対のクランプ部20、30の自由状態において、ロック機構4が一対のクランプ部20、30のロックを試みると(ロック機構4のロック動作を試みると)、この第1クランプ部20の引掛片23bと撓み片26とが干渉すると共に、この第2クランプ部30の前端と撓み片26とが干渉する。したがって、この一対のクランプ部20、30の自由状態において、撓み片26は、ロック機構4のロック動作を阻害した状態(ロック機構4が一対のクランプ部20、30をロックできない状態)となっている。
【0024】
一方、第2クランプ部30は、前後方向に沿って延在する第1壁30bと、この第1壁30bに直交するように上下方向に沿って延在する第2壁30cとから内面が略L字状を成す入込面30aを有するように形成されている。この第1壁30bの上端(先端)には、上述した第1係合爪23aと係合可能な第2係合爪31が形成されている。この係合により、一対のクランプ部20、30の開口2aを閉じた状態にロックできる。これら第1係合爪23aと第2係合爪31とが、ロック機構4に相当する。
【0025】
また、この第1壁30bの右端には、前側に向けて延びるガイド32が形成されている。このガイド32は、上述した外片23の案内面23cを案内可能に形成されている。これにより、一対のクランプ部20、30の各前端が近づくように第1ヒンジ40を介して一対のクランプ部20、30を撓ませると、すなわち、一対のクランプ部20、30の開口2aを閉ざすと、左右方向に横ズレすることなく一対のクランプ部20、30の各前端を近づけることができる。クランプ1は、上述したように構成されている。
【0026】
続いて、
図6~9を参照して、上述したクランプ1の動作を説明する。この実施形態においても、従来技術と同様に、予め、車体パネルの取付孔にクランプ1のアンカー部材3が取り付けられている。一対のクランプ部20、30の自由状態(
図6参照)において、開いた開口2aから内部2bにワイヤーハーネス50を入れ込む作業を行う。すると、この入れ込まれたワイヤーハーネス50からの押し当てによって撓み片26が第2ヒンジ25を介して内部2bへ向けて撓んでいく(
図7参照)。これにより、撓み片26の先端が開口2aの開閉の軌跡Rより突出した状態から内部2bへ向けて退行する。
【0027】
そのため、撓み片26は、ロック機構4のロック動作を阻害した状態から阻害を解消した状態に切り替わる。次に、この一対のクランプ部20、30を2本の指で摘み、この2本の指で摘んだ一対のクランプ部20、30の各前端が近づくように第1ヒンジ40を介して一対のクランプ部20、30を撓ませる作業を行う。すなわち、一対のクランプ部20、30の開口2aを閉ざす作業を行う。
【0028】
すると、この第1クランプ部20の第1係合爪23aと第2クランプ部30の第2係合爪31とが干渉する。これにより、この第1クランプ部20の挟持部21の内片22と外片23とが互いに遠ざかるように撓むため、この干渉した第1係合爪23aと第2係合爪31とが互いを乗り越えた状態となる。そのため、これら第1係合爪23aと第2係合爪31とが係合する(
図8参照)。したがって、この内部2bにワイヤーハーネス50を入れ込んだ状態でロック機構4が一対のクランプ部20、30をロックできる。
【0029】
このようにロックできると、従来技術と同様に、この内部2bに入れ込んだワイヤーハーネス50を保持できる。このようなロックの状態がロック機構4の正嵌合となる。このとき、この内部2bへ向けて撓んだ撓み片26からの反力がワイヤーハーネス50に作用する。そのため、このワイヤーハーネス50が第2クランプ部30の入込面30aに押し当てられる。したがって、この内部2bに入れ込んで保持したワイヤーハーネス50のガタツキを抑えることができる。結果として、ワイヤーハーネス50を安定して車体パネルに留めることができる。
【0030】
一方、一対のクランプ部20、30の自由状態において、ロック機構4のロック動作を試みる。すると、既に説明したように、この第1クランプ部20の引掛片23bと撓み片26とが干渉すると共に、この第2クランプ部30の前端と撓み片26とが干渉する(
図9参照)。そのため、この撓み片26は、ロック機構4のロック動作を阻害したままの状態(ロック機構4が一対のクランプ部20、30をロックできない状態)となっている。したがって、従来技術で説明したような、ロック機構4の誤嵌合が成立することがない。結果として、ロック機構4の誤嵌合を防止できる。
【0031】
本発明の実施形態に係るワイヤーハーネス50のクランプ1は、上述したように構成されている。この構成によれば、一対のクランプ部20、30の自由状態において、撓み片26は、ロック機構4のロック動作を阻害しつつ、ワイヤーハーネス50の一対のクランプ部20、30の内部2bへの入れ込みにともなってロック機構4のロック動作の阻害を解消するように撓み可能に形成されている。そのため、この一対のクランプ部20、30の自由状態において、開いた開口2aから内部2bにワイヤーハーネス50を入れ込む作業を行うと、撓み片26は、ロック機構4のロック動作を阻害した状態から阻害を解消した状態に切り替わる。したがって、この一対のクランプ部20、30の内部2bにワイヤーハーネス50を入れ込んだ状態でロック機構4が一対のクランプ部20、30をロックできるため、この内部2bに入れ込んだワイヤーハーネス50を保持できる。一方、この一対のクランプ部20、30の自由状態において、ロック機構4のロック動作を試みると、既に説明したように、この第1クランプ部20の引掛片23bと撓み片26とが干渉すると共に、この第2クランプ部30の前端と撓み片26とが干渉する(
図9参照)。そのため、ロック機構4の誤嵌合が成立することがない。したがって、ロック機構4の誤嵌合を防止できる。
【0032】
また、この構成によれば、撓み片26は、前端(先端)が一対のクランプ部20、30の開口2aの開閉の軌跡Rより突出するように形成されている。そのため、一対のクランプ部20、30の自由状態において、ロック機構4のロック動作を試みると、第1クランプ部20の引掛片23bと撓み片26とを確実に干渉させることができつつ、第2クランプ部30の前端と撓み片26とを確実に干渉させることができる。したがって、ロック機構4の誤嵌合が確実に成立することがない。結果として、ロック機構4の誤嵌合を確実に防止できる。
【0033】
また、この構成によれば、内片22の前端(先端)には、第2ヒンジ25を介して撓み片26が形成されている。このように形成されていると、一対のクランプ部20、30の自由状態において、開いた開口2aから内部2bにワイヤーハーネス50を入れ込む作業を行うと、この入れ込まれたワイヤーハーネス50からの押し当てによって撓み片26が第2ヒンジ25を介して内部2bへ向けて撓んでいく。そのため、この内部2bへ向けて撓んだ撓み片26からの反力がワイヤーハーネス50に作用する。したがって、このワイヤーハーネス50が第2クランプ部30の入込面30aに押し当てられる。結果として、この内部2bに入れ込んで保持したワイヤーハーネス50のガタツキを抑えることができる。すなわち、ワイヤーハーネス50を安定して車体パネルに留めることができる。
【0034】
また、この構成によれば、撓み片26は、凹み26aを有するように略J字状に形成されている。この凹み26aの凹み方向は、一対のクランプ部20、30の内部2bにワイヤーハーネス50を入れ込む方向に沿うように形成されている。そのため、作業者に対してワイヤーハーネス50の入れ込み方向が凹み26aの凹み方向であることを示唆できる。したがって、作業者が入れ込み方向を迷うことがないため、この入れ込みの作業性を高めることができる。
【0035】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
【0036】
実施形態では、「保持体」の例として、「クランプ1」を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、「プロテクタ」等であっても構わない。すなわち、「保持体」は、クランプ部材2のみを備えており、アンカー部材3を備えていないものでも構わない。また、実施形態では、「配索部材」の例として、「ワイヤーハーネス50」を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、「各種のケーブル」、「各種のホース」、「各種の配管」等であっても構わない。
【0037】
また、
図10に示すように、撓み片26が、第1クランプ部20の内片22の前端(先端)からではなく、第1クランプ部20の内片22の後端(基端)から形成されているクランプ101でも構わない(変形例1)。もちろん、この形態に限定されるものでなく、撓み片26は第1クランプ部20から形成されていれば、どこから形成されていても構わない。例えば、撓み片26は、
図10の想像線(A)で示す個所または
図10の想像線(B)で示す個所等から形成されていても構わない。
【0038】
また、
図11に示すように、撓み片26が、第1クランプ部20からではなく、第2クランプ部30から形成されているクランプ201でも構わない(変形例2)。もちろん、この形態に限定されるものでなく、撓み片26は第2クランプ部30から形成されていれば、どこから形成されていても構わない。例えば、撓み片26は、
図11の想像線(A)で示す個所または
図11の想像線(B)で示す個所等から形成されていても構わない。
【0039】
なお、この変形例2のクランプ201の場合、撓み片26は、アンカー部材3を基準点にすると2つのヒンジ(第1ヒンジ40、第2ヒンジ25)を介して設けられることとなる。そのため、この変形例2のクランプ201では、実施形態のクランプ1と同様に、開いた開口2aから内部2bにワイヤーハーネス50を入れ込む作業を行うと、撓み片26が第2ヒンジ25を介して内部2bへ向けて撓む前に、一対のクランプ部20、30の各前端が遠ざかるように第1ヒンジ40を介して第2クランプ部30が撓む現象が現れる。
【0040】
すなわち、この内部2bへのワイヤーハーネス50の受け入れは、第2ヒンジ25の撓みに起因することなく、第1ヒンジ40の撓みに起因することによって行われる。この現象は、特に、この内部2bに入れ込むワイヤーハーネス50の径が細い場合に顕著に表れる。この現象が現れると、この内部2bにワイヤーハーネス50を入れ込んでも、撓み片26は、ロック機構4のロック動作を阻害したままの状態となる。
【0041】
そのため、この現象が現れた状態では、この内部2bにワイヤーハーネス50を入れ込んだ状態でもロック機構4が一対のクランプ部20、30をロックできない。したがって、ロック機構4の動作不良を招く恐れがある。これに対し、実施形態のクランプ1では、この現象が現れることがない。そのため、ロック機構4の動作不良を招く恐れがない。結果として、この変形例2のクランプ201より、実施形態のクランプ1の方が好ましい。
【0042】
また、
図12に示すように、軌跡R1が、軌跡Rより前側に位置するクランプ301でも構わない(変形例3)。また、このクランプ301において、軌跡R2が、軌跡Rより後側に位置しても構わない。もちろん、このクランプ301において、軌跡Rが、これら軌跡R1と軌跡R2との間に位置しても構わない。
【符号の説明】
【0043】
1 クランプ(保持体)
2a 開口
2b 内部
4 ロック機構
20 第1クランプ部(一対のクランプ部)
26 撓み片
30 第2クランプ部(一対のクランプ部)
40 第1ヒンジ(ヒンジ)
50 ワイヤーハーネス(配索部材)