IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イフォム・フォンダツィオーネ・インスティトゥオ・フィルチ・ディ・オンコロジア・モレコラーレの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】治療用オリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220215BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61P31/22
A61P35/00
A61P25/00
A61P17/00
A61P7/06
A61P1/16
A61P43/00 105
A61P7/00
A61P11/00
A61P25/28
A61P19/10
A61P21/04
A61P9/10 101
A61P9/00
A61P3/10
A61P15/00
A61P17/02
A61P19/02
A61P27/12
A61P27/02
A61P43/00 107
A61K31/711
A61K48/00
A61P43/00 121
A61K31/712
A61K31/7125
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018504223
(86)(22)【出願日】2016-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2016068162
(87)【国際公開番号】W WO2017017253
(87)【国際公開日】2017-02-02
【審査請求日】2019-07-16
(31)【優先権主張番号】15178809.8
(32)【優先日】2015-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507101761
【氏名又は名称】イフォム・フォンダツィオーネ・イスティトゥート・フィルチ・ディ・オンコロジア・モレコラーレ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ファブリツィオ・ダッダ・ディ・ファガーニャ
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスカ・ロッシエッロ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリオ・アグアド
(72)【発明者】
【氏名】コーリー・ジョーンズ-ウェイナート
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】Oral Oncology,2005年,Vol. 41,p. 909-915
【文献】Nucleic Acids Res.,2014年,Vol. 42,p. 1733-1746
【文献】Trends in Cell Biology,2014年,Vol. 24,p. 171-178
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テロメラーゼ非依存性のテロメア伸長を特徴とする疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造における、以下の配列:
(TTAGGG)配列番号1、(TAGGGT)配列番号2、(AGGGTT)配列番号3、(GGGTTA)配列番号4、(GGTTAG)配列番号5、若しくは(GTTAGG)配列番号6の1つ、又はその変異体若しくは混合物を含むオリゴヌクレオチドであって、変異体が、以下の配列:TCAGGG、TTCGGG、GTAGGG、TGAGGG、TTGGGG、TAAGGG、ATAGGG、CTAGGG、TTTGGG、又はTTAAGGGの1つを含む、オリゴヌクレオチドの使用であって、
前記オリゴヌクレオチドが、特異的な機能障害テロメアDNAを転写のための鋳型として使用して合成されたRNA転写産物又は前記RNA転写産物の断片であるRNAの配列に相補的であり、前記断片(DDRNA)が、Dicer及び/又はDroshaによるプロセシングによって生成される、使用
【請求項2】
以下の配列:(TTAGGG)n、(TAGGGT)n、(AGGGTT)n、(GGGTTA)n、(GGTTAG)n、又は(GTTAGG)nの1つを含み、式中、1<n<1000、好ましくは1<n<500、好ましくは1<n<200、好ましくは1<n<100、好ましくは1<n<50、好ましくは1<n<20、好ましくは1<n<10、好ましくは1<n<5である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
疾患ががん又はエプスタイン・バーウイルス感染である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
疾患がALT陽性のがんである、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
がんが、軟部組織肉腫、好ましくは軟骨肉腫、悪性線維性組織肉腫を含む未分化多形肉腫、平滑筋肉腫、類上皮肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫及び変異体、血管肉腫及び神経線維腫、中枢神経系がん、好ましくは悪性度2のびまん性星細胞腫、悪性度3の退形成性星細胞腫、悪性度4の小児多形性膠芽腫、乏突起膠腫、退形成性髄芽腫、悪性度1の毛様細胞性星細胞腫、非退形成性髄芽腫、髄膜腫、神経鞘腫、膀胱がん、特に小細胞癌及び侵襲性尿路上皮癌、副腎又は末梢神経系がん、特に神経節芽細胞腫、神経芽細胞腫及び褐色細胞腫、神経内分泌新生物、例えば傍神経節腫及びカルチノイド腫瘍、腎臓がん、特に色素嫌性癌腫、肉腫様癌及び淡明細胞癌及び乳頭癌、肺及び胸膜がん、特に悪性中皮腫、大細胞癌及び小細胞癌、皮膚がん、例えば悪性黒色腫、肝臓がん、例えば肝細胞癌、精巣がん、例えば非セミノーマ胚細胞腫瘍、乳がん、特に小葉癌、乳管癌及び髄様癌、子宮がん、例えば漿液性子宮内膜癌、子宮頚の扁平上皮癌、卵巣がん、特に淡明細胞癌腫、類内膜癌、胆嚢がん、例えば腺癌、食道がんからなる群から選択される、請求項3又は4に記載の使用。
【請求項6】
テロメア機能障害に関連する非がん状態の治療及び/又は予防のための医薬の製造における、以下の配列:
(TTAGGG)配列番号1、(TAGGGT)配列番号2、(AGGGTT)配列番号3、(GGGTTA)配列番号4、(GGTTAG)配列番号5、又は(GTTAGG)配列番号6の1つ、或いはその相補配列、又はその変異体若しくは混合物を含むオリゴヌクレオチドであって、変異体が、以下の配列:TCAGGG、TTCGGG、GTAGGG、TGAGGG、TTGGGG、TAAGGG、ATAGGG、CTAGGG、TTTGGG、又はTTAAGGGの1つを含む、オリゴヌクレオチドの使用であって、
前記オリゴヌクレオチドが、特異的な機能障害テロメアDNAを転写のための鋳型として使用して合成されたRNA転写産物又は前記RNA転写産物の断片であるRNAの配列に相補的であり、前記断片(DDRNA)が、Dicer及び/又はDroshaによるプロセシングによって生成される、使用
【請求項7】
以下の配列:(TTAGGG)n、(TAGGGT)n、(AGGGTT)n、(GGGTTA)n、(GGTTAG)n、又は(GTTAGG)nの1つを含み、式中、1<n<1000、好ましくは1<n<500、好ましくは1<n<200、好ましくは1<n<100、好ましくは1<n<50、好ましくは1<n<20、好ましくは1<n<10、好ましくは1<n<5である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
テロメア機能障害に関連する非がん状態が、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)、ウェルナー症候群、ブルーム症候群、毛細血管拡張性運動失調症、家族性IPF、孤発性IPF、再生不良性貧血、常染色体優性先天性角化異常症、家族性MDS-AML、de novo先天性角化異常症、X染色体連鎖劣性先天性角化異常症、Hoyeraal-Hreiderasson症候群、Revesz症候群、常染色体劣性先天性角化異常症、コーツプラス症候群、TRF1、POT1、TPP1、TINF2、RAP1、又はTRF2のいずれか1つの突然変異又は不活化によって生じる状態、部分的肝切除の際に損なわれた再生、肝線維症、肝臓慢性炎症、肝硬変、肺線維症、骨髄前駆細胞分化の変化、骨髄不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アルツハイマー病を含む神経障害、骨粗しょう症、アテローム性動脈硬化症、心疾患、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、2型糖尿病、生殖障害、創傷治癒障害、関節炎、白内障、老化性黄斑変性、老化からなる群から選択される、請求項6又は7に記載の使用。
【請求項9】
ロックド核酸(LNA)修飾型オリゴヌクレオチド、2'-O-メチル修飾型オリゴヌクレオチド、ホスホロチオエート修飾型オリゴヌクレオチド、ホスホロチオエート修飾型ロックド核酸、2'-O-メトキシエチル修飾型オリゴヌクレオチド、2O-[2-(N-メチルカルバモイル)エチル]リボヌクレオシド、メチルホスホネート、モルフォリノオリゴヌクレオチド、LNA-DNA-LNAギャップマーオリゴヌクレオチド、ミックスマー、キメラ2'-O-メチルRNA-DNAギャップマー、N3'-P5'ホスホロアミデート、2'-フルオロ-アラビノ核酸、ホスホロアミデートモルフォリノ、シクロヘキセン核酸、トリシクロ-DNA、ペプチド核酸、アンロックド核酸、ヘキシトール核酸、ボラノリン酸オリゴヌクレオチド、ホスホロアミデートオリゴヌクレオチドであり、好ましくは前記修飾型オリゴヌクレオチドがホスホロチオエート化されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
テロメラーゼ非依存性のテロメア伸長を特徴とする疾患の治療及び/若しくは予防において使用するための、又はテロメア機能障害に関連する非がん状態の治療及び/若しくは予防において使用するための、請求項1から9のいずれか一項に規定された少なくとも1つのオリゴヌクレオチド及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項11】
少なくとも別の治療物質を更に含む医薬組成物であって、好ましくは、他の治療物質が、抗腫瘍剤、鎮痛剤、又は鎮吐剤である、請求項10に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
他の治療物質が、ATR阻害剤、DDR阻害剤、HR阻害剤、テロメアを特異的に標的化する分子、好ましくはG-四重鎖相互作用分子、テロメアでDNA損傷を生じさせる分子からなる群から選択される、請求項11に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テロメラーゼ非依存性のテロメア伸長(alternative lengthening of telomere)を特徴とする疾患又はテロメア機能障害に関連する非がん状態の治療及び/若しくは予防において使用するための、以下の配列:(TTAGGG)配列番号1、(TAGGGT)配列番号2、(AGGGTT)配列番号3、(GGGTTA)配列番号4、(GGTTAG)配列番号5、又は(GTTAGG)配列番号6の1つ、或いはその相補配列、又はその断片若しくは変異体若しくは混合物を含む、オリゴヌクレオチド、並びに関連する医薬組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAは、細胞における、損傷を受けた場合に差し替えることができないという点で固有のタイプの分子である。いわゆる「DNA損傷応答」(DDR)は、DNA損傷の検出によって引き起こされると、細胞周期を停止し(DNA損傷チェックポイント機能)、DNA修復を協調させる、協調した一組の進化的に保存された事象である(Jackson及びBartek、2009)。DNA損傷は生理学的事象である。老化及びがんは、恐らく、DNA損傷蓄積、DDR活性化、及びその結果の関連性を強調する、哺乳動物における2つの最良の例である。老化及びがんの両方におけるDDRの関与を理解するための著しい貢献がなされてきている(d'Adda di Fagagna、2008;Jackson及びBartek、2009)。
【0003】
より最近、本発明者らは、RNA分子に依存する完全なDDR活性化を明らかにし、報告した。本発明者らは、DNA二本鎖切断(DSB)が、損傷部位を囲む配列を有するDNA損傷部位での非コードRNAの局所的生成を引き起こすことを観察した。本発明者らはまた、これらのRNA(著者はこれらをDDRNAと名付けた)がDDR活性化に必須であることも示した。実際、RNase A処理によるDDRNAの除去はDDR活性化を阻害し、DDRは、損傷部位を囲む配列を有する化学合成されたDDRNAの添加によって完全に回復し得るが、他の配列では回復しない(Franciaら、2012)。
【0004】
いくつかの研究が、標的RNAとの対合によって作用する阻害性アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の使用によってRNA機能が阻害され得、これによってその機能を損なうということを示している。それらの使用は、成功裏に、臨床段階まで達している(Janssenら、2013;Li及びRana、2014;Monteleoneら、2015;Stenvangら、2012)。がん細胞は、テロメアの長さを保ち、天然のテロメア短縮に逆らって無限の増殖能を保持しなくてはならない。ほとんどのがん細胞は、短いテロメアを伸長する酵素であるテロメラーゼの発現を再活性化することによって、これを達成する。しかし、排他的ではないが、骨肉腫、軟部組織肉腫、原発性脳腫瘍、多形性膠芽腫(GBM)、及び神経芽細胞腫においてより多く発生する全てのヒト腫瘍の10~15%は、テロメア間での相同組換え(HR)に基づくいわゆるテロメラーゼ非依存性のテロメア伸長(ALT)メカニズムによってテロメアの長さを維持する(Cesare及びReddel、2010;Durant、2012;Henson及びReddel、2010)。
【0005】
ALT腫瘍は、それらの形質転換した悪性の状態が原因である異なる遺伝子突然変異を有し得るが、ほとんどのALTがん細胞はDAXX及びATRX遺伝子における突然変異を示し、これにより、一般的な遺伝子分析によって腫瘍をALTに分類することが可能となる(Heaphyら、2011)。
【0006】
ALTメカニズムは、健康/正常細胞では報告されていない(Cesare及びReddel、2010)。しかし、がんに加えて、ALTメカニズムは、EBV感染細胞においても報告されており(Kamranvarら、2013)、他のウイルス感染がこのようなメカニズムを引き起こし得る可能性を強調している。
【0007】
がん治療におけるテロメラーゼ阻害剤の使用は広く調査されている(Ruden及びPuri、2013)。しかし、このアプローチの固有の限定は、(Huら、2012)において報告されているように、腫瘍におけるテロメラーゼ活性の欠如がALT陽性クローンの選択をもたらし得るということである。逆に、これまで、テロメア維持のALTからテロメラーゼメカニズムへの逆転は報告されていない。
【0008】
ALT細胞はテロメアでの慢性的DDR活性化を示し、このことは、このような細胞におけるテロメアの機能障害性質を示す。著しく短い/機能障害テロメアは、次いで、HR経路が関与するDDRメカニズムによって伸長される/「修復される」。ALT関連PML体(aLT-associated PML body)(APB)はテロメアDNA及びDDR因子を含有し、ALT細胞の公知のバイオマーカーである(Cesare及びReddel、2010;Yeagerら、1999)。HRはDDRのDNA修復メカニズム部分であり、ALT細胞におけるテロメアの維持に必要であることが示されている。MRN(MRE11/RAD50/NBS1)複合体は、HR経路に関与する、鍵となるDDR因子である。実際、阻害性タンパク質SP100の過剰発現又は短いヘアピン介在性ノックダウンによるその不活化は、特異的にALT陽性細胞におけるテロメア維持の阻害を決定する(Jiangら、2005;Jiangら、2007;Zhongら、2007)。DSBのHR介在性の修復を促進する、SMC5/6複合体のRNA干渉介在性の枯渇は、ALT細胞におけるテロメアの短縮及び細胞老化をもたらす(Potts及びYu、2007)。RPAは、HRの初期段階の間に一本鎖DNAに結合し、RNA干渉を介するその下方調節は、ALT活性の損傷を生じさせる(Jiangら、2007)。より最近、ATR低分子阻害剤は、特異的にALT陽性細胞の成長を予防することが示されているが(Flynnら、2015)、この特異性は、非ALTがん細胞を含み、CHK1阻害剤と組み合わせた場合にのみ、より広くなると考えられる(Sanjivら、2016)。それと一致して、別の最近の報告は、ATR阻害剤の細胞型特異性がテロメア維持のメカニズムよりも細胞コンフルエンシーにより関連することを示唆した(http://biorxiv.org/content/early/2016/06/04/053280)。
【0009】
DDRの阻害及びその後のALT細胞内でのテロメアでの組換え事象が、抗がん治療のための新規な潜在的治療手段を考え出すために利用され得た。それと一致して、上記のように、ALT細胞は、HRによるDNA修復の背景でDDRシグナル伝達に関与するタンパク質であるATRキナーゼの阻害に対する感受性が高いことが提案されているが(Flynnら、2015)、その特異性については最近疑問視されている(Sanjivら、2016)及び(http://biorxiv.org/content/early/2016/06/04/053280)。
【0010】
同様に、プロジェリア表現型(早期老化)をもたらすことが多いテロメアDNA損傷を特徴とする状態は、テロメア配列を有するDDRNAの生成に関連することが予想される。
【0011】
WO2013/167744は、DNA損傷部位で生産され、損傷した遺伝子座の特異的配列を有する、低RNA分子(DDRNA)に関する。ALTがん細胞等のALTを示す細胞内の、又はEBV感染ALT細胞内の、又は早期老化状態の人の細胞内の、DDRNAの存在及びテロメアからの生成は記載されておらず、また、DDRNA阻害が治療根拠として示唆されてもいない。
【0012】
WO2014092609は、ヒトテロメアDNAの特異的G鎖オリゴヌクレオチド配列を使用して細胞の増殖状態に影響する方法に関する。
【0013】
US2013065950は、脂質部分に共有結合によって連結したオリゴヌクレオチド部分を含む化合物を開示している。オリゴヌクレオチド部分は、ヒトテロメラーゼのRNA成分に相補的な配列を含む。この化合物は、細胞におけるテロメラーゼ活性を阻害する。
【0014】
WO97/38013は、テロメラーゼ非依存性のテロメア伸長(ALT)を特徴とする疾患(特にがん)にも、機能障害テロメアを特徴とする非がん状態にも具体的に言及していない。更に、当該文献は、テロメラーゼの阻害に関する。対照的に、本発明のオリゴヌクレオチドは、テロメラーゼ陽性がん細胞に対して活性ではない。
【0015】
WO2006/107949は、酸化ストレス障害を治療する方法に関する。本発明は、ALTがん細胞及び機能障害テロメアを特徴とする非がん状態の特異的治療に関する。
【0016】
CN1936011は、ポリカチオンリポソーム及びアンチセンスオリゴヌクレオチドから作られるポリカチオンリポソームテロメア酵素アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物に関する。
【0017】
WO2006028160は、ヒト白血病細胞抽出物に含有されるテロメラーゼに対する高い阻害活性を有し、相補的DNAとの安定な二本鎖ハイブリッドを生じさせる、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドコンジュゲートに関する。
【0018】
US2006183704は、有効量の、pTTを含む組成物、又はヒトテロメアオーバーハングリピートと少なくとも50%のヌクレオチド配列同一性を共有する1つ若しくは複数のオリゴヌクレオチドを含む組成物を罹患哺乳動物に投与することによる、がんを含む過剰増殖性障害を治療する方法に関する。
【0019】
WO01/74342は、上皮細胞を冒す過剰増殖性疾患又は前がん状態、例えば、乾癬、白斑、アトピー性皮膚炎、又は過剰増殖性の若しくはUV応答性の皮膚疾患、他の上皮の過剰増殖性の又はアレルギー介在性の疾患を治療又は予防する方法、及び、光老化若しくは酸化ストレスを低減させる方法、又は皮膚癌の発症を予防する若しくは皮膚がんの発症の可能性を低減させる方法に関する。
【0020】
WO96/23508は、がんの増殖及び他の不死型細胞疾患の状態を阻害する方法を開示している。この方法には、テロメアモチーフを模倣する合成オリゴヌクレオチドの導入が含まれる。
【0021】
Sandra Samplら(Proceedings:AACR Annual Meeting 2014、2014年4月5~9日、Abstract 2743、San Diego、CA)は、TERRAと呼ばれるテロメアからのRNA転写産物がTERCへの直接的な結合を介してテロメラーゼ活性(TA)を潜在的に遮断すると同定されたことを示している。
【0022】
TERRAは、約100塩基から少なくとも9キロベース長までの構成的一本鎖非コードRNAである(Azzalinら、2007)。これらは、サブテロメア領域内に位置するプロモーターから転写され始め、こうして、サブテロメア配列及びGに富んだテロメア配列の両方を有する。逆に、DDRNAは、二本鎖RNAを形成する可能性があり得る短いRNA(少なくとも6若しくは 8ヌクレオチド長、又は10から50の間のヌクレオチド長、約22ヌクレオチド長)である。これらは、両方のテロメア鎖から転写され、テロメアの最も末端で又はテロメアリピート内で開始する、Gに富みCに富んだテロメアリピートを含有するRNA分子を生成する、前駆体転写産物のプロセシングによって生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】WO2013/167744
【文献】WO2014092609
【文献】US2013065950
【文献】WO97/38013
【文献】WO2006/107949
【文献】CN1936011
【文献】WO2006028160
【文献】US2006183704
【文献】WO01/74342
【文献】WO96/23508
【文献】米国特許第5,077,211号
【文献】米国特許第4,621,023号
【文献】米国特許第4,508,703号
【文献】米国特許第6,537,973号
【文献】米国特許第6,506,735号
【非特許文献】
【0024】
【文献】http://biorxiv.org/content/early/2016/06/04/053280
【文献】Sandra Samplら(Proceedings:AACR Annual Meeting 2014年、2014年4月5~9日、Abstract 2743、San Diego、CA
【文献】http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2762901/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
したがって、テロメラーゼ非依存性のテロメア伸長を特徴とする疾患及びテロメア機能障害に関連する非がん状態の治療が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、テロメアDNAの損傷又は機能障害の際に非コードRNA(tDDRNAと呼ばれる)が蓄積するという発見に基づく。これらは、長いRNA前駆体の転写のための鋳型として機能障害テロメアを使用して合成されるRNA転写産物であり、次いで、Dicer及び/又はDroshaによって、より短い非コードRNA(tDDRNA)にプロセシングされ得る。
【0027】
本発明では、驚くべきことに、tDDRNAの生成及び/又は合成及び/又は機能の阻害剤並びにそれらの前駆体はDDR活性化も阻害し、そのため、ALTに関連する状態及びテロメアDNA損傷又は機能障害に関連する状態の治療に適用され得ることが見出された。
【0028】
例えば、tDDRNAに相補的なロックド核酸(LNA)及び/又はそれらの前駆体の形態のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を、陰性対照としての関連のない配列を有するLNAと一緒に合成した。テロメアのASOがDDR活性化を特異的に阻害し、シグナル伝達とその後のDNA修復と両方を阻害し得ることが観察された。
【0029】
配列特異的ASOでは、特異的にALT細胞において細胞増殖の減少を示す結果が得られた。
【0030】
ALT腫瘍におけるテロメアDDR活性化は、配列特異的ASOによって標的化され得、その結果、テロメア維持が損なわれ、増殖が低減する。本発明者らは、テロメアDNAの損傷又は機能障害の際に生じたテロメアRNAに相補的な配列を有するLNA ASOを合成した。本発明者らは、特異的テロメア配列を有するASOオリゴヌクレオチドのトランスフェクションがALT陽性細胞株(すなわち、骨肉腫U-2 OS及びG292細胞株、膠芽腫GBM14細胞株、線維芽細胞WI38 VA13及びSW26)の増殖を強力に抑制し得たが、テロメアRNAを標的化せずあらゆるヒト配列も標的化しない異なる配列を有する同量のASOは有意な効果を有さなかったことを観察した。重要なことに、これらのASOのいずれも、同時に試験すると、(間葉性由来様の骨肉腫の)正常ヒト線維芽細胞の増殖又はテロメラーゼ陽性がん細胞の増殖に対して影響を有さず、このことは、このアプローチがALT腫瘍に特異的であることを示唆し、この治療が生きた動物及びヒト患者において毒性とならないことを示す。この段階で、本発明者らは、
1)新規な潜在的治療物質を同定し、
2)この作用物質での治療の利益を受け得る腫瘍の特異的サブセットを規定した。
【0031】
更に、老化は、特にテロメアでのDDR活性化に関連する(d'Adda di Fagagnaら、2003;Fumagalliら、2012;Herbigら、2006;Herbigら、2004;Hewittら、2012)。ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)(Pollex及びHegele、2004)は、プロジェリンとも呼ばれるラミンAの突然変異形態によって生じるプロジェリア症候群の一例である。プロジェリアは早期老化を意味する。HGPSプロジェリア表現型は、テロメラーゼの発現によって、プロジェリン誘発型のDNA損傷シグナル伝達を減少させることによって、抑制され得る(Kudlowら、2008)。このことは、HGPS細胞の(及び拡張してHGPS患者の)プロジェリア表現型が、機能障害テロメアが生じさせるDDRによって生じることを示す。実際、DDRは、HGPS細胞においてテロメアで見られる(Bensonら、2010;Chojnowskiら、2015)。ゼブラフィッシュ(Danio rerio)(zebrafish)という魚は単純な脊椎動物モデルであり、老化の研究に適している。実際、テロメラーゼ突然変異が、テロメア短縮並びにその結果として生じるテロメア機能障害及びDDR活性化を速めることによって生理学的老化を加速させることが示されている(Henriquesら、2013)。具体的には、テロメラーゼ突然変異体を有する魚は、より短い寿命、組織の萎縮、及び繁殖力の低下を特徴とする。これらは、テロメア機能障害に関連する非がん状態のモデルを表す。
【0032】
テロメアDNAの損傷又は機能障害の際に生じたtDDRNA及びそれらの前駆体に相補的な配列を有するLNA ASOを使用することによって、本発明者らは、プロジェリン発現細胞における細胞老化を予防した。更に、これらはHGPSのマウスモデル及びテロメラーゼ突然変異体ゼブラフィッシュの寿命を延ばし、このことは、これが老化に関連する表現型を抑制し得たことを示唆する。
【0033】
本発明では、DDRNA及び/又はそれらの前駆体の阻害を介するDDRの阻害は、配列特異的となるための大きな利点を有し、こうして、例えばテロメアから離れたDDR阻害によって、正常細胞における有害な副作用の可能性を最小にする。
【0034】
更に、がん治療の背景では、これらの阻害剤は、ALTメカニズムのテロメア維持を使用しそのためテロメラーゼ阻害に対して耐性である、がん細胞クローンの出現可能性を予防するために、テロメラーゼ阻害剤と相乗作用し得る。
【0035】
実際、既存の抗がん治療は、がん細胞のDNAを損傷させるか又はDDRを阻害することによって作用する、有効な抗がん治療である。しかし、ほとんどの当該治療のDNA損傷活性又はDDR阻害は、配列特異的ではない。本発明のオリゴヌクレオチドは配列特異的な様式でDDRを損ない、こうして、既存のDNA損傷治療に配列特異性も付与して、有効性を増強させ得る。
【0036】
したがって、本発明は、テロメラーゼ非依存性のテロメア伸長を特徴とする疾患の治療及び/又は予防において使用するための、以下の配列:
(TTAGGG)配列番号1、(TAGGGT)配列番号2、(AGGGTT)配列番号3、(GGGTTA)配列番号4、(GGTTAG)配列番号5、又は(GTTAGG)配列番号6.の1つ、或いはその相補配列、又はその断片若しくは変異体若しくは混合物を含む、オリゴヌクレオチドを提供する。
【0037】
好ましくは、オリゴヌクレオチド又はその断片若しくは変異体は、以下の配列:(TTAGGG)n、(TAGGGT)n、(AGGGTT)n、(GGGTTA)n、(GGTTAG)n、又は(GTTAGG)nの1つを含み、式中、1<n<1000、好ましくは1<n<500、好ましくは1<n<200、好ましくは1<n<100、好ましくは1<n<50、好ましくは1<n<20、好ましくは1<n<10、好ましくは1<n<5である。
【0038】
好ましくは、前記オリゴヌクレオチドは、特異的な機能障害テロメアDNAを転写のための鋳型として使用して合成されたRNA転写産物又は前記RNA転写産物の断片であるRNAの配列に相補的であり、前記断片(DDRNA)は、Dicer及び/又はDroshaによるプロセシングによって生成される。
【0039】
好ましくは、疾患は、がん又はエプスタイン・バーウイルス感染である。更に好ましくは、疾患はALT陽性がんである。
【0040】
更に好ましくは、がんは、軟部組織肉腫、好ましくは軟骨肉腫、悪性線維性組織肉腫を含む未分化多形肉腫、平滑筋肉腫、類上皮肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫及び変異体、血管肉腫及び神経線維腫、中枢神経系がん、好ましくは悪性度2のびまん性星細胞腫、悪性度3の退形成性星細胞腫、悪性度4の小児多形性膠芽腫、乏突起膠腫、退形成性髄芽腫、悪性度1の毛様細胞性星細胞腫、非退形成性(nonanaplastic)髄芽腫、髄膜腫、神経鞘腫、膀胱がん、特に小細胞癌及び侵襲性尿路上皮癌、副腎又は末梢神経系がん、特に神経節芽細胞腫、神経芽細胞腫及び褐色細胞腫、神経内分泌新生物、例えば傍神経節腫及びカルチノイド腫瘍、腎臓がん、特に色素嫌性癌腫、肉腫様癌及び淡明細胞癌及び乳頭癌、肺及び胸膜がん、特に悪性中皮腫、大細胞癌及び小細胞癌、皮膚がん、例えば悪性黒色腫、肝臓がん、例えば肝細胞癌、精巣がん、例えば非セミノーマ胚細胞腫瘍、乳がん、特に小葉癌、乳管癌及び髄様癌、子宮がん、例えば漿液性子宮内膜癌、子宮頚の扁平上皮癌、卵巣がん、特に淡明細胞癌腫、類内膜癌、胆嚢がん、例えば腺癌、食道がんからなる群から選択される。
【0041】
更なる態様では、本発明は、テロメア機能障害に関連する非がん状態の治療及び/又は予防に使用するための、以下の配列:
(TTAGGG)配列番号1、(TAGGGT)配列番号2、(AGGGTT)配列番号3、(GGGTTA)配列番号4、(GGTTAG)配列番号5、又は(GTTAGG)配列番号6の1つ、或いはその相補配列、又はその断片若しくは変異体若しくは混合物を含む、オリゴヌクレオチドを提供する。
【0042】
好ましくは、テロメア機能障害に関連する非がん状態は、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)、ウェルナー症候群、ブルーム症候群、毛細血管拡張性運動失調症、家族性IPF、孤発性IPF、再生不良性貧血、常染色体優性先天性角化異常症、家族性MDS-AML、de novo先天性角化異常症、X染色体連鎖劣性先天性角化異常症、Hoyeraal-Hreiderasson症候群、Revesz症候群、常染色体劣性先天性角化異常症、コーツプラス症候群、TRF1、POT1、TPP1、TINF2、RAP1、又はTRF2のいずれか1つの突然変異又は不活化によって生じる状態、部分的肝切除の際に損なわれた再生、肝線維症、肝臓慢性炎症、肝硬変、肺線維症、骨髄前駆細胞分化の変化、骨髄不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アルツハイマー病を含む神経障害、骨粗しょう症、アテローム性動脈硬化症、心疾患、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、2型糖尿病、生殖障害、創傷治癒障害、関節炎、白内障、老化性黄斑変性、老化からなる群から選択される。
【0043】
好ましくは、オリゴヌクレオチドは、ロックド核酸(LNA)修飾型オリゴヌクレオチド又は2'-O-メチル修飾型オリゴヌクレオチドである。
【0044】
LNAは、一般に、リボース糖部分が、LNAモノマーをN型糖パッカリングに立体構造的に制限するC(2')原子及びC(4')原子を接続するオキシメチレン架橋によってロックされている、RNA模倣体と考えられる(Veedu Rら、2010)。LNAは、LNA修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含有する分子である。好ましくは、LNAは、LNA修飾を有する少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20のヌクレオチドを含有する。
【0045】
2'-O-メチル修飾型オリゴヌクレオチドは、2'-O-メチル修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含有する分子である。好ましくは、2'-O-メチル修飾型オリゴヌクレオチドは、2'-O-メチル修飾を有する少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20のヌクレオチドを含有する。
【0046】
更なる態様では、本発明は、テロメラーゼ非依存性のテロメア伸長を特徴とする疾患の治療及び/若しくは予防において使用するための、又はテロメア機能障害に関連する非がん状態の治療及び/若しくは予防において使用するための、上記に定義した少なくとも1つのオリゴヌクレオチド及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0047】
好ましくは、医薬組成物は少なくとも別の治療物質を更に含み、好ましくは、他の治療物質は、抗腫瘍剤、鎮痛剤、鎮吐剤(例えば、アプレピタント、ホスアプレピタント、ドラセトロン、グラニセトロン、オンダンセトロン、パロノセトロン、トロピセトロン、又はラモセトロン、デキサメタゾン)の群から選択される。
【0048】
好ましくは、他の治療物質は、ATR阻害剤、DDR阻害剤、HR阻害剤、テロメアを特異的に標的化する分子、好ましくはG-四重鎖相互作用分子、特異的にテロメアでDNA損傷を生じさせる分子からなる群から選択される。
【0049】
更なる態様では、本発明は、RNAの存在を検出すること及び/又はRNA量を測定することを含む、上記に定義したオリゴヌクレオチド又は上記に定義した医薬組成物で治療されるべき対象を同定する方法であって、前記RNAが、特異的な機能障害テロメアDNAを転写のための鋳型として使用して合成されたRNA転写産物又は前記RNA転写産物の断片であり、前記断片(DDRNA)が、Dicer及び/又はDroshaによるプロセシングによって生成され、前記対象が、テロメラーゼ非依存性のテロメア伸長を特徴とする疾患に罹患しているか、又はテロメア機能障害に関連する非がん状態に罹患している方法を提供する。
【0050】
本発明では、DDRNAは非コードRNAである。これらは、特異的な損傷した及び/又は機能障害テロメアDNAを長いRNA前駆体の転写のための鋳型として使用して合成されたRNA転写産物であり、これは次いで、Dicer及び/又はDroshaによって、より短い非コードRNA(DDRNA又はtDDRNA)にプロセシングされ得る。
【0051】
DDRNAは遺伝子座から始まり、損傷した遺伝子座の配列を有する。化学合成されると、又は遺伝子座全体にわたる転写産物のDICER及び/若しくはDROSHA切断によってインビトロで生成されると、DDRNAは、他の哺乳動物のRNAの不存在下であっても、RNase A処理細胞内のDNA損傷部位でのDDR活性化を促進する。
【0052】
DDRNAは、(Franciaら、2012)において示されているように、以下の理由から、microRNA及び正準的(canonical)RNAiメカニズムと異なって作用する。
- DDRNAは、あらゆる他の細胞のRNAを必要とすることなく作用する(RNase A処理細胞実験におけるゲル抽出されたRNA及び合成RNAで得られた結果を参照されたい)。
- DDRNAは、内因性細胞転写産物のマッチを有さず依然として生物学的に活性な配列 (LAC又はTETリピート)を有し得る。
- DDRNAは、転写及び翻訳が阻害された細胞において、室温で速く(数分で)作用し得る(RNAse A処理細胞実験で得られた結果を参照されたい)。
- GWタンパク質(正準的miRNAのエフェクター)の不活化はDDRフォーカスに影響しない。
【0053】
DDRNAは、二本鎖対を形成する能力を有する低分子RNAであり、これらは、損傷したDNA遺伝子座の転写の際に合成された配列特異的なRNA転写産物をDICER及び/又はDROSHAによってプロセシングすることによって生じる。DDRNAは、10から50の間のヌクレオチド長の低分子RNAである。例えば、17から32の間のヌクレオチド長である。例えば、20から25の間のヌクレオチド長である。例えば、21から23の間のヌクレオチド長である。
【0054】
前記DDRNAは、DNA損傷の特異的部位でのDDR因子の配列特異的な蓄積に好都合であることによって機能し、DDR活性化(すなわち、限定はしないが、タンパク質リン酸化事象を介するもの等のDNA損傷シグナル伝達、及び相同組換え等のDNA損傷修復を含む)を促進する。
【0055】
DDRNA前駆体は、損傷したDNAを鋳型として使用してDNA損傷の際に転写される、DDRNAより長い(少なくとも25塩基長、好ましくは少なくとも30塩基長、好ましくは少なくとも50塩基長、好ましくは少なくとも100塩基長、好ましくは少なくとも150塩基長、好ましくは少なくとも200塩基長、好ましくは少なくとも250塩基長、好ましくは少なくとも300塩基長)RNA分子である。これらは、DROSHA及び/又はDICERによってプロセシングされてDDRNAを生じる。テロメアDDRNA前駆体は、複数のテロメアDDRNAである。
【0056】
本発明では、配列番号1から配列番号6の断片は、前記配列と同一の治療活性を有する機能的断片である。この断片は、トランケートされていないオリゴヌクレオチドの少なくとも2つの連続するヌクレオチドが残る限り、5'末端、3'末端、又は5'末端及び3'末端の両方の1つ又は複数のヌクレオチドによってトランケートされている本発明のオリゴヌクレオチドに対応する。好ましくは、トランケートされたオリゴヌクレオチドは、トランケートされていないオリゴヌクレオチドで見られる2、3、4、又は5つの連続するヌクレオチドを有する。
【0057】
本発明に含まれるものはまた、1回又は複数回反復される上記の配列(配列番号1から6)を含むオリゴヌクレオチド、例えば、以下の配列:(TTAGGG)n、(TAGGGT)n、(AGGGTT)n、(GGGTTA)n、(GGTTAG)n、又は(GTTAGG)n(式中、1<n<1000、好ましくは1<n<500、好ましくは1<n<200、好ましくは1<n<100、好ましくは1<n<50、好ましくは1<n<20、好ましくは1<n<10、好ましくは1<n<5である)の1つを含むオリゴヌクレオチドである。
【0058】
オリゴヌクレオチドはまた、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25等のヌクレオチド長であり得る。オリゴヌクレオチドは、必ずしも6ヌクレオチドの倍数でなくてもよい。
【0059】
本発明では、配列番号1から6の変異体は、1、2、3、4、又は5つのヌクレオチドが異なるヌクレオチドで置換されているオリゴヌクレオチドである。変異体は、配列番号1から6と少なくとも50%の同一性、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の同一性を有する。変異体は、オリゴヌクレオチドと同一の治療活性を有する。
【0060】
好ましいテロメアヘキサヌクレオチド変異体には、TCAGGG、TTCGGG、GTAGGG、TGAGGG、TTGGGG、TAAGGG、ATAGGG、CTAGGG、TTTGGG、TTAAGGG、及びそれらの相補配列が含まれる((Leeら、2014)の図5)。
【0061】
本発明のオリゴヌクレオチド、その断片、又はその変異体は、DDRNA及び/又はそれらの前駆体の配列に相補的であり、それによって、DDRNA及び/又はそれらの前駆体の機能を阻害する。
【0062】
好ましくは、オリゴヌクレオチドは、LNA分子又は2'-O-メチル修飾型オリゴヌクレオチドである。
【0063】
これらのオリゴヌクレオチドは、限定はしないが、ロックド核酸(LNA)、ホスホロチオエート修飾型オリゴヌクレオチド、ホスホロチオエート修飾型ロックド核酸、2'-O-メトキシエチル修飾型オリゴヌクレオチド、2'O-メチル修飾型オリゴヌクレオチド、2O-[2-(N-メチルカルバモイル)エチル]リボヌクレオシド、メチルホスホネート、モルフォリノオリゴヌクレオチド、LNA-DNA-LNAギャップマー(gapmer)オリゴヌクレオチド、ミックスマー(mixmer)、キメラ2'-O-メチルRNA-DNAギャップマー、N3'-P5'ホスホロアミデート、2'-フルオロ-アラビノ核酸、ホスホロアミデートモルフォリノ、シクロヘキセン核酸、トリシクロ-DNA、ペプチド核酸、アンロックド核酸、ヘキシトール核酸、ボラノリン酸オリゴヌクレオチド、ホスホロアミデートオリゴヌクレオチドを含み、好ましくは、前記修飾型オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート化されており、及び/又は、異なる手段(限定はしないが、プラスミドトランスフェクション、ウイルス感染を含む)によって送達される、プラスミドによってコードされる遺伝子によって発現されるオリゴヌクレオチドである。
【0064】
本発明では、テロメラーゼ非依存性のテロメア伸長を特徴とする疾患は、テロメラーゼ活性が欠如しているにもかかわらず、及び/又は1つ若しくは複数の以下に列挙する特徴を示しているにもかかわらずテロメアを維持している細胞の存在を特徴とする疾患である。
【0065】
特に、テロメラーゼ非依存性のテロメア伸長は、以下の特徴の少なくとも1つによって同定/測定され得る。
- テロメラーゼ活性の欠如(例えば、酵素アッセイによって測定される)
- テロメア制限断片及びサザンブロット分析、又はin situハイブリダイゼーションに基づく他の手段によって測定される、テロメラーゼ陽性細胞と比較してより長い及びより多くの異種テロメアの存在。
- 免疫蛍光によって検出される、テロメアクロマチンと共局在化するPMLタンパク質のフォーカスであるALT関連PML体(APB)の存在。
- 免疫蛍光又は他の手段によって検出される、テロメアで共局在化する(γH2AX、RPA、HRタンパク質)等のDDRマーカーの存在。
- ATRX及び/若しくはDAXX遺伝子における突然変異、又は改変したその発現若しくは機能の存在(Heaphyら、2011)。
- 一本鎖のCに富んだ染色体外テロメアDNAであるc-サークルの存在。
- 染色体外の二本鎖テロメアDNAであるt-サークルの存在。
- テロメア間の組換えのマーカーであるテロメア姉妹染色分体交換。
- MS32ミニサテライト遺伝子座でのタンデムリピートの不安定性の増大。
【0066】
これらの特徴は、例えば(Henson及びReddel、2010)(参照によって本明細書に組み込まれる)において報告されているような、当技術分野における公知の方法によって測定/同定され得る。
【0067】
本発明では、テロメア機能障害に関連する非がん状態は、DDR機構の構成要素に関与するテロメアを特徴とする疾患又は状態又は症候群である。本発明では、「テロメア機能障害」又は「機能障害テロメア」は、損傷したテロメアDNA、及び/又は非常に短いテロメアDNA、及び/又はキャップされていないテロメアDNA、及び/又は脱保護されたテロメアDNA、及び/又は加速したテロメア短縮、及び/又はDDRシグナルがテロメアで活性であるあらゆる状況を有するテロメアである。
【0068】
テロメア機能障害は、多くの変性障害の原因となる役割を有する。それらの兆候は、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)、ウェルナー症候群、ブルーム症候群、毛細血管拡張性運動失調症、家族性IPF、孤発性IPF、再生不良性貧血、常染色体優性先天性角化異常症、家族性MDS-AML、de novo先天性角化異常症、X染色体連鎖劣性先天性角化異常症、Hoyeraal-Hreiderasson症候群、Revesz症候群、常染色体劣性先天性角化異常症、コーツプラス症候群、TRF1、POT1、TPP1、TINF2、RAP1、又はTRF2のいずれか1つの突然変異又は不活化によって生じる状態、部分的肝切除の際に損なわれた再生、肝線維症、肝臓慢性炎症、肝硬変、肺線維症、骨髄前駆細胞分化の変化、骨髄不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アルツハイマー病を含む神経障害、骨粗しょう症、アテローム性動脈硬化症、心疾患、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、2型糖尿病、生殖障害、創傷治癒障害、関節炎、白内障、老化性黄斑変性、老化等の一般的な病状を包含する。例えば、加速したテロメア短縮、すなわちテロメア機能障害は、肝硬変等の細胞交替が速い慢性疾患において末期の臓器不全をもたらす因子であることが提案されている(Rudolphら、2000)。
【0069】
これらの障害は臨床的に多様であると思われるが、全体として、これらは、短い又は損傷した及びより広く機能障害であるテロメアを特徴とする様々な症候群を含み、テロメア機能障害はまた、老化及び老化性疾患の鍵となる特徴である((Armanios及びBlackburn、2012;Grayら、2015;Opresko及びShay、2016;Wangら、2015;Xiら、2013;Satyanarayanaら、2003;Rudolphら、2000)を参照されたい)。
【0070】
更なるテロメア機能障害は、特にTRF1(正式名称TERF1、遺伝子ID 7013)、POT1(遺伝子ID 25913)、TPP1(正式名称ACD、遺伝子ID 65057)、TINF2(遺伝子ID 26277)、RAP1(正式名称TERF2IP、遺伝子ID 54386)、又はTRF2(正式名称TERF2、遺伝子ID 7014)の突然変異又は不活化によって生じ得る。
【0071】
更に、TRF2KOモデルはテロメア機能障害の原因となり、テロメア機能障害に関連する非がん状態を再現する。
【0072】
テロメア機能障害は、以下の特徴又は方法:間接免疫蛍光、免疫組織化学、クロマチン免疫沈降、tDDRNA検出の少なくとも1つによって同定/測定され得る。
【0073】
更に具体的には、本発明は、細胞増殖の阻害又はDNA修復の阻害のための、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ジヌクレオチド、若しくはジヌクレオチド二量体、又は類似の化合物の使用に関する。本明細書において使用される場合、細胞増殖の阻害には、当技術分野における標準的試験によって、及び実施例において記載されているように測定される、細胞分裂の完全な抑止、細胞分裂の部分的阻害、及び細胞分裂の一時的阻害、細胞死、アポトーシス、壊死、細胞老化、細胞分化、有糸分裂の破滅が含まれる。本発明はまた、限定はしないががん及び前がん状態を含む、ALTを特徴とする疾患であって、あらゆる器官及びあらゆる胚由来の細胞が罹患する疾患の予防及び/又は治療に関する。治療後に再成長又は再発した転移性ALT腫瘍及びがん、並びに原発性の腫瘍を、本発明の方法によって治療することができる。
【0074】
一実施形態では、本発明の組成物は、適切な媒体内で哺乳動物(例えばヒト)に投与され得る、およそ2~200塩基長のオリゴヌクレオチドを含む。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、約5から約100ヌクレオチド長である。更に別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、約5から約50ヌクレオチド長である。更に別の実施形態では、DNAオリゴヌクレオチドは、約8~30ヌクレオチド長である。好ましくは、これらは、8~21ヌクレオチド長、更に好ましくは8~16ヌクレオチド長である。
【0075】
オリゴヌクレオチドが目的の細胞又は組織に接触する及び/又は入るようにするための、本発明のオリゴヌクレオチドを生物に投与するあらゆる適切な方法は、有効であると当然予想される。効果は、通常の最適化プロトコールを使用して最適化され得る。
【0076】
本発明のオリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオチドは、あらゆる適切な源から得ることができるか、又は合成によって生産することができる。
【0077】
DNA断片、オリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ジヌクレオチド、又はジヌクレオチド二量体は、皮膚に塗布され得、及び、単独で、或いは、医学用途又は化粧品用途のための溶媒、香料若しくは着色剤、安定剤、遮光剤、又は他の成分を含む生理学的に許容される担体と組み合わせて、投与され得る。これらは、水、生理食塩水、又は別の適切な送達媒体等の媒体内で投与され得る。送達媒体は、オリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ジヌクレオチド、又はジヌクレオチド二量体を送達するあらゆる適切な媒体であり得る。一実施形態では、オリゴヌクレオチドの濃度範囲は0.1nMから500μMであり得、好ましくは、インビトロ範囲は0.2nMから300μMの間であり、好ましくは、インビトロ範囲は0.5nMから200μMの間である。好ましいインビボ範囲は0.1~500mg/kgであり、好ましくは、インビボ範囲は1~50mg/kgである。
【0078】
組成物の活性成分をより深部の皮膚細胞に届けるために、皮膚の外層、例えば角質層を介する浸透を向上させる媒体が有用である。この目的の媒体構成物には、限定はしないが、エタノール、イソプロパノール、ジエチレングリコールエーテル、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル、アゾン(1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン)、オレイン酸、リノレン酸、プロピレングリコール、高張濃度のグリセロール、乳酸、グリコール酸、クエン酸、及びリンゴ酸が含まれる。一実施形態では、プロピレングリコールが送達媒体として使用される。好ましい実施形態では、3%ベンゼンスルホン酸及び5%オレイルアルコールを含有する、プロピレングリコール:エタノール:ミリスチン酸イソプロピル(1:2.7:1)の混合物が使用される。
【0079】
別の実施形態では、リポソーム調製物が使用され得る。リポソーム調製物は、目的の細胞又は角質層に侵入し、細胞膜と融合して、結果リポソームの内容物を細胞に送達する、リポソームを含み得る。例えば、Yaroshの米国特許第5,077,211号、Redziniakらの米国特許第4,621,023号、又はRedziniakらの米国特許第4,508,703号において記載されているもの等のリポソームが使用され得る。皮膚状態を標的化するための本発明の組成物は、哺乳動物の皮膚がUV又は酸化的損傷を生じさせる物質に曝露される前、間、又は後に投与され得る。他の適切な製剤は、ニオソームを利用し得る。ニオソームは、主に非イオン性脂質からなる膜を有する、リポソームに類似の脂質小胞であり、その一部の形態は、角質層を通って化合物を輸送するのに有効である。
【0080】
主に皮膚のための他の適切な送達方法には、オリゴヌクレオチドに加えて水性培地又は水性アルコール培地及びゲル化剤を含むヒドロゲル製剤の使用が含まれる。適切なゲル化剤には、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー(カーボポール)、hypan、ポリアクリル酸塩、及びポリアクリル酸グリセロールが含まれる。
【0081】
一実施形態では、オリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ジヌクレオチド、ジヌクレオチド二量体、又は前述のものの1つ若しくは複数を含む組成物は、皮膚表面に局所的に塗布される。他の実施形態では、オリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ジヌクレオチド、ジヌクレオチド二量体、又は前述のものの1つ若しくは複数を含む組成物は、上皮細胞等の身体の他の細胞又は組織に送達される。皮膚よりもこのような物質の侵入に対する障壁が少ないと認識される組織の細胞は、例えば、口腔に経口的に、呼吸器上皮へのエアロゾルによって、膀胱上皮への点滴によって、腸(上皮)への点滴若しくは坐剤によって、又は、身体内の他の細胞若しくは組織への、例えば目薬、点鼻薬、及び血管形成術を使用する適用を含む他の局所的若しくは表面適用手段によって、治療され得る。更に、本発明のオリゴヌクレオチドは、静脈内に投与され得るか、又は目的の組織内に直接、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、若しくは腹腔内注射され得る。更に、血球の治療では、本発明の化合物は、静脈内に、又は細胞の体外循環の間に例えば光泳動装置等を介して投与され得る。本明細書において実証されるように、目的の細胞と本発明のオリゴヌクレオチド組成物との接触があれば十分である。
【0082】
オリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ジヌクレオチド、ジヌクレオチド二量体、分化促進剤、又は前述のものの1つ若しくは複数を含む組成物は、適切な様式で目的の細胞に投与される(導入される又は接触させられる)。
【0083】
本明細書において使用される「目的の細胞」は、ALT又は機能障害テロメアを特徴とする疾患に罹患し得るか又は罹患している細胞である。
【0084】
オリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ジヌクレオチド、ジヌクレオチド二量体、分化促進剤、又は前述のものの1つ若しくは複数を含む組成物は、適切な時期に、有効量で適用される。「適切な時期」は、利用されるオリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ジヌクレオチド、ジヌクレオチド二量体、又は他の作用物質のタイプ及び分子量、治療又は予防される状態、求める結果、並びに個々の患者に応じて変化する。
【0085】
本明細書において使用される「有効量」は、測定可能な所望の結果を達成するのに十分な量又は濃度である。有効量は、利用されるオリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ジヌクレオチド、ジヌクレオチド二量体、又は作用物質のタイプ及び分子量、治療又は予防される状態、求める結果、並びに個々の患者に応じる。例えば、ALT過剰増殖性の疾患、がん状態、又は前がん状態の治療又は予防では、有効量は、疾患の症候のいずれか1つを低減若しくは軽減するため、疾患に罹患している細胞の容積、区域、若しくは数を低減するため、罹患区域の形成を予防するため、又は過剰増殖性障害に罹患している細胞の成長速度を低減するために必要な量である。
【0086】
本明細書において実証されるように、本発明の阻害剤は、それらの未修飾形態で、例えば、ホスホジエステル結合によって連結した未修飾オリゴヌクレオチド配列で、インビトロ及びインビボで活性である。本明細書において使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」、「ジヌクレオチド」等は、異なる連結又は骨格が特定されない限り、リボース及び/又はデオキシリボースを糖として有し、ホスホジエステル連結(「リン酸骨格」)を天然に有する分子を指す。
【0087】
オリゴヌクレオチドは、比較的短いポリヌクレオチドである。ポリヌクレオチドは、ヌクレオチドが1つのヌクレオチドの3'位と隣接するヌクレオチドの5'位との間のホスホジエステル結合によって連結している、ヌクレオチドモノマーの直鎖状ポリマーである。別段の指示がない限り、本明細書において記載される本発明の「オリゴヌクレオチド」は、ホスホジエステル骨格を有する。
【0088】
皮膚を介する送達を増強するために、本発明のオリゴヌクレオチドは、その負の電荷を隠す若しくは低減させるため、又はそうでなければその化学的特徴を改変するために修飾され得る。これは、例えば、入手が容易な試薬及び当技術分野において周知の方法を使用してオリゴヌクレオチドのアンモニウム塩を調製することによって、達成することができる。オリゴヌクレオチドの好ましいアンモニウム塩には、トリメチル-、トリエチル-、トリブチル-、テトラメチル-、テトラエチル-、及びテトラブチル-アンモニウム塩が含まれる。アンモニウム及び他の正に荷電した基は、表皮の生存層の細胞内に到達するとオリゴヌクレオチドを放出する酵素分解性の連結を使用して、角質層を介するその輸送を容易にするために、オリゴヌクレオチドに共有結合され得る。
【0089】
オリゴヌクレオチドの負の電荷を低減させる又は隠すための別の方法には、当技術分野において周知の方法及び試薬を使用する、オリゴヌクレオチドの5'リン酸基及び/又はオリゴヌクレオチドの内部リン酸へのポリオキシエチレンスペーサーの付加が含まれる。これは、実際には、正味の負の電荷を+1低減させオリゴヌクレオチドをあまり親水性ではなくする、6-又は12-炭素修飾因子(リンカー)をリン酸に付加する。
【0090】
更なる負の電荷の低減は、ホスホロアミダイトをポリオキシエチレンリンカーの末端に付加し、それによって更なる中和性の正の電荷を提供することによって実現する。本発明のオリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格はまた、負の電荷を低減させるために修飾又は合成され得る。好ましい方法は、メチルホスホン酸(又はキラル-メチルホスホン酸塩)の使用を伴い、これによって、リン酸中の負に荷電した酸素原子の1つがメチル基に置き換えられる。これらのオリゴヌクレオチドは、これも本発明の範囲内である、メチル基の代わりに硫酸を含むホスホロチオエート連結を有するオリゴヌクレオチドに類似している。
【0091】
本発明のオリゴヌクレオチドはまた、ヌクレオチドの塩基がペプチド骨格を介して互いに接続している、ペプチド核酸(PNA)の形態を取り得る。
【0092】
例えば米国特許第6,537,973号及び米国特許第6,506,735号、並びに(Stenvangら、2012)(これらの全ては、その中で記載されているオリゴヌクレオチド修飾の全てについて、参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されているもの等のようなオリゴヌクレオチドの他の修飾は、当業者に容易に明らかとなろう。
【0093】
オリゴヌクレオチドはまた、一方がホスホジエステルである2つ以上の化学的に異なる骨格連結の組合せを有するように合成される「キメラ」オリゴヌクレオチドであり得る。一実施形態では、キメラオリゴヌクレオチドは、3'末端で1つ又は複数のホスホジエステル連結を有する。一実施形態では、キメラオリゴヌクレオチドは、5'末端で1つ又は複数のホスホジエステル連結を有する。別の実施形態では、キメラオリゴヌクレオチドは、3'及び5'末端で1つ又は複数のホスホジエステル連結を有する。
【0094】
テロメラーゼ非依存性のテロメア伸長を特徴とする疾患、例えばがん若しくはエプスタイン・バーウイルス感染、特に、軟部組織肉腫、好ましくは軟骨肉腫、悪性線維性組織肉腫を含む未分化多形肉腫、平滑筋肉腫、類上皮肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫及び変異体、血管肉腫及び神経線維腫、中枢神経系がん、好ましくは悪性度2のびまん性星細胞腫、悪性度3の退形成性星細胞腫、悪性度4の小児多形性膠芽腫、乏突起膠腫、退形成性髄芽腫、悪性度1の毛様細胞性星細胞腫、非退形成性髄芽腫、髄膜腫、神経鞘腫、膀胱がん、特に小細胞癌及び侵襲性尿路上皮癌、副腎若しくは末梢神経系がん、特に神経節芽細胞腫、神経芽細胞腫及び褐色細胞腫、神経内分泌新生物、例えば傍神経節腫及びカルチノイド腫瘍、腎臓がん、特に色素嫌性癌腫、肉腫様癌及び淡明細胞癌及び乳頭癌、肺及び胸膜がん、特に悪性中皮腫、大細胞癌及び小細胞癌、皮膚がん、例えば悪性黒色腫、肝臓がん、例えば肝細胞癌、精巣がん、例えば非セミノーマ胚細胞腫瘍、乳がん、特に小葉癌、乳管癌及び髄様癌、子宮がん、例えば漿液性子宮内膜癌、子宮頚の扁平上皮癌、卵巣がん、特に淡明細胞癌腫、類内膜癌、胆嚢がん、例えば腺癌、食道がんを治療及び/若しくは予防するため、又は、テロメア機能障害に関連する非がん状態、特に、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)、ウェルナー症候群、ブルーム症候群、毛細血管拡張性運動失調症、家族性IPF、孤発性IPF、再生不良性貧血、常染色体優性先天性角化異常症、家族性MDS-AML、de novo先天性角化異常症、X染色体連鎖劣性先天性角化異常症、Hoyeraal-Hreiderasson症候群、Revesz症候群、常染色体劣性先天性角化異常症、コーツプラス症候群、TRF1、POT1、TPP1、TINF2、RAP1、若しくはTRF2のいずれか1つの突然変異若しくは不活化によって生じる状態、部分的肝切除の際に損なわれた再生、肝線維症、肝臓慢性炎症、肝硬変、肺線維症、骨髄前駆細胞分化の変化、骨髄不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アルツハイマー病を含む神経障害、骨粗しょう症、アテローム性動脈硬化症、心疾患、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、2型糖尿病、生殖障害、創傷治癒障害、関節炎、白内障、老化性黄斑変性、老化を治療及び/若しくは予防するために使用するための、1つ
又は複数のオリゴヌクレオチド。
【0095】
例えば、このような疾患は、(Durant、2012)(参照によって本明細書に包含される)において記載されている。
【0096】
オリゴヌクレオチドは、薬学的に又は生理学的に許容される担体と組み合わせて組成物中で使用され得る。このような組成物はまた、更に、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、及び当技術分野において周知の他の材料を含有し得る。DOTAP[N-(2,3-ジオレオイロキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウム塩等の陽イオン性脂質を、安定性を増強させるためにオリゴヌクレオチドと共に使用することができる。オリゴヌクレオチドは、生物学的利用能を向上させるために、PLGA/PLAコポリマー、キトサン、又はフマル酸/セバシン酸コポリマーと複合され得る{ここで、PLGAは[ポリ(ラクチドコグリコリド)]であり、PLAはポリ(L-ラクチド)である}。用語「薬学的に許容される」及び「生理学的に許容される」は、活性成分の生物学的活性の有効性に干渉しない無毒の材料を意味する。担体の特徴は、投与経路に応じる。
【0097】
ALT疾患のための抗増殖剤として使用される組成物は、更に、オリゴヌクレオチドの活性を増強させるか又は治療におけるその活性若しくは使用を補完する他の作用物質、例えば化学療法剤又は放射性物質を含有し得る。このような更なる因子及び/又は作用物質は、オリゴヌクレオチドとの相乗効果を生じさせるため、又は副作用を最小化するために、組成物に含まれ得る。更に、本発明の組成物の投与は、他の治療法と同時に投与され得、例えば、化学療法又は放射線照射療法レジメンと組み合わせて投与され得る。本明細書において記載されるオリゴヌクレオチドは、疾患の治療のための他の組成物及び手順と組み合わせて使用され得る。例えば、腫瘍は、オリゴヌクレオチド療法と合わせた、従来通りの外科手術、放射線照射、化学療法、又は免疫療法で治療され得、次いで、微小転移の休止を延長し、あらゆる残りの原発性腫瘍の成長を安定化及び阻害するために、オリゴヌクレオチドがその後に患者に投与され得る。オリゴヌクレオチドは、テロメラーゼ陰性のALT陽性クローンの増殖を予防するために、テロメラーゼ阻害剤と組み合わせて使用され得る。
【0098】
好ましくは、他の治療物質は、ATR阻害剤、DDR阻害剤、HR阻害剤、特異的にテロメアでのDNA損傷の生成を特異的に標的化する及び/又は生じさせる分子、好ましくはG-四重鎖相互作用分子からなる群から選択される。
【0099】
本発明では、ATR阻害剤は、(Flynnら、2015;Weber及びRyan、2015)において記載されているように(全ての参考文献は参照により組み込まれる)、限定はしないが、VE-821(Vertex Pharmaceuticals社)、VE-822(Vertex Pharmaceuticals社)、AZ20(AstraZeneca社)、AZD6738(AstraZeneca社)を含む、ATRのキナーゼ活性を阻害し得る低分子化合物である。
【0100】
DDR阻害剤は、限定はしないが、カフェイン、ウォルトマンニン、KU-55933、KU-60019、KU-559403、Schisandrin B、NU6027、NVP-BEZ235を含む、DNA損傷応答(DDR)として知られている細胞プロセスを損ない得るか又は阻害し得るあらゆる化合物又は実験的アプローチである(全ての参考文献が参照により組み込まれる(Beggら、2011;Kelleyら、2014;Weber及びRyan、2015)において記載されているように)。
【0101】
HR阻害剤は、限定はしないが、イニパリブ(SAR240550、BSI-201;Sanofi-Aventis社)、オラパリブ(AZD2281、KU-0069436;AstraZeneca社)、ニラパリブ(Tesaro社)、ルカパリブ(CO-338、AG-014699、PF-O1367338;Pfizer社)、ベリパリブ(ABT-888;Abbott社)、AZD2461(AstraZeneca社)、BMN673(BioMarin Pharmaceutical社)、CEP-9722(Cephalon社)、E7016(エーザイ株式会社)、INO-1001(Inotek Pharmaceuticals社)、MK-4827(Merck社)、メトキシアミン(Sigma Aldrich社)、RI-1、IBR2、B02、ハレナキノンを含む、相同組換え(HR)によるDNA修復として知られている細胞プロセスを損なわせ得るか又は阻害し得る、あらゆる化合物又は実験的アプローチである(全ての参考文献が参照により組み込まれる、(Fengら、2015;Kelleyら、2014;Wardら、2015)において記載されている)。
【0102】
テロメアでのDNA損傷の生成を特異的に標的化する及び/又は生じさせる分子は、限定はしないが、G-四重鎖結合リガンド(例えば、BRACO-19、テロメスタチン、RHPS4、クァルフロキシン、TMPyP4、AS1410)、トポイソメラーゼ阻害剤、シスプラチン、ヒドロキシウレアを含む、テロメアDNA内でのDNA損傷並びに/又はDDRシグナル伝達及び/若しくはDNA修復の活性化若しくは阻害を誘発する、テロメアと特異的に又は優先的に相互作用するあらゆる化合物又は実験的アプローチである(全ての参考文献が参照により組み込まれる、(Luら、2013;Muller及びRodriguez、2014;Neidle、2010;Salvatiら、2015;Sissi及びPalumbo、2014)において記載されているように)。
【0103】
オリゴヌクレオチドと組み合わせて使用され得る他の分子は、Abitrexate(メトトレキサート注射液)、Abraxane(パクリタキセル注射液)、Adcetris(ブレンツキシマブベドチン注射液)、Adriamycin(ドキソルビシン)、Adrucil Injection(5-FU(フルオロウラシル))、Afinitor(エベロリムス)、Afinitor Disperz(エベロリムス)、Alimta(ペメトレキセド)、Alkeran Injection(メルファラン注射液)、Alkeran Tablets(メルファラン)、Aredia(パミドロネート)、Arimidex(アナストロゾール)、Aromasin(エキセメスタン)、Arranon(ネララビン)、Arzerra(オファツムマブ注射液)、Avastin(ベバシズマブ)、Bexxar(トシツモマブ)、BiCNU(カルムスチン)、Blenoxane(ブレオマイシン)、Bosulif(ボスチニブ)、Busulfex Injection(ブスルファン注射液)、Campath(アレムツズマブ)、Camptosar(イリノテカン)、Caprelsa(バンデタニブ)、Casodex(ビカルタミド)、CeeNU(ロムスチン)、CeeNU Dose Pack(ロムスチン)、Cerubidine(ダウノルビシン)、Clolar(クロファラビン注射液)、Cometriq(カボザンチニブ)、Cosmegen(ダクチノマイシン)、CytosarU(シタラビン)、Cytoxan(サイトキサン)、Cytoxan Injection(シクロホスファミド注射液)、Dacogen(デシタビン)、DaunoXome(ダウノルビシン脂質複合体注射液)、Decadron(デキサメタゾン)、DepoCyt(シタラビン脂質複合体注射液)、Dexamethasone Intensol(デキサメタゾン)、Dexpak Taperpak(デキサメタゾン)、Docefrez(ドセタキセル)、Doxil(ドキソルビシン脂質複合体注射液)、Droxia(ヒドロキシウレア)、DTIC(デカルバジン)、Eligard(ロイプロリド)、Ellence(Ellence(エピルビシン))、Eloxatin(エロキサチン(オキサリプラチン))、Elspar(アスパラギナーゼ)、Emcyt(エストラムスチン)、Erbitux(セツキシマブ)、Erivedge(ビスモデギブ)、Erwinaze(アスパラギナーゼエルウィニアクリサンチミー)、Ethyol(アミホスチン)、Etopophos(エトポシド注射液)、Eulexin(フルタミド)、Fareston(トレミフェン)、Faslodex(フルベストラント)、Femara(レトロゾール)、Firmagon(デガレリクス注射液)、Fludara(フルダラビン)、Folex(メトトレキサート注射液)、Folotyn(プララトレキサート注射液)、FUDR(FUDR(フロキシウリジン))、Gemzar(ゲムシタビン)、Gilotrif(アファチニブ)、Gleevec(メシル酸イマチニブ)、Gliadel Wafer(カルムスチンウェハー)、Halaven(エリブリン注射液)、Herceptin(トラスツズマブ)、Hexalen(アルトレタミン)、Hycamtin(トポテカン)、Hycamtin(トポテカン)、Hydrea(ヒドロキシウレア)、Iclusig(ポナチニブ)、Idamycin PFS(イダルビシン)、Ifex(イホスファミド)、Inlyta(アキシチニブ)、Intron A alfab(インターフェロンアルファ-2a)、Iressa(ゲフィチニブ)、Istodax(ロミデプシン注射液)、Ixempra(イキサベピロン注射液)、Jakafi(ルキソリチニブ)、Jevtana(カバジタキセル注射液)、Kadcyla(アドトラスツズマブエムタンシン)、Kyprolis(カルフィルゾミブ)、Leukeran(クロラムブシル)、Leukine(サルグラモスチム)、Leustatin(クラドリビン)、Lupron(ロイプロリド)、Lupron Depot(ロイプロリド)、Lupron DepotPED(ロイプロリド)、Lysodren(ミトタン)、Marqibo Kit(ビンクリスチン脂質複合体注射液)、Matulane(プロカルバジン)、Megace(メゲストロール)、Mekinist(トラメチニブ)、Mesnex(メスナ)、Mesnex(メスナ注射液)、Metastron(塩化ストロンチウム-89)、Mexate(メトトレキサート注射液)、Mustargen(メクロレタミン)、Mutamycin(マイトマイシン)、Myleran(ブスルファン)、Mylotarg(ゲムツズマブオゾガマイシン)、Navelbine(ビノレルビン)、Neosar Injection(シクロホスファミド注射液)、Neulasta(フィルグラスチム)、Neulasta(ペグフィルグラスチム)、Neupogen(フィルグラスチム)、Nexavar(ソラフェニブ)、Nilandron(ニランドロン(ニルタミド))、Nipent(ペントスタチン)、Nolvadex(タモキシフェン)、Novantrone(ミトキサントロン)、Oncaspar(ペガスパルガーゼ)、Oncovin(ビンクリスチン)、Ontak(デニロイキンジフチトクス)、Onxol(パクリタキセル注射液)、Panretin(アリトレチノイン)、Paraplatin(カルボプラチン)、Perjeta(ペルツズマブ注射液)、Platinol(シスプラチン)、Platinol(シスプラチン注射液)、Platinol AQ(シスプラチン)、Platinol AQ(シスプラチン注射液)、Pomalyst(ポマリドミド)、Prednisone Intensol(プレドニゾン)、Proleukin(アルデスロイキン)、Purinethol(メルカプトプリン)、Reclast(ゾレドロン酸)、Revlimid(レナリドミド)、Rheumatrex(メトトレキサート)、Rituxan(リツキシマブ)、RoferonA alfaa(インターフェロンアルファ-2a)、Rubex(ドキソルビシン)、Sandostatin(オクトレオチド)、Sandostatin LAR Depot(オクトレオチド)、Soltamox(タモキシフェン)、Sprycel(ダサチニブ)、Sterapred(プレドニゾン)、Sterapred DS(プレドニゾン)、Stivarga(レゴラフェニブ)、Supprelin LA(ヒストレリンインプラント)、Sutent(スニチニブ)、Sylatron(ペグインターフェロンアルファ-2b注射液(シラトロン))、Synribo(オマセタキシン注射液)、Tabloid(チオグアニン)、Taflinar(ダブラフェニブ)、Tarceva(エルロチニブ)、Targretin Capsules(ベキサロテン)、Tasigna(デカルバジン)、Taxol(パクリタキセル注射液)、Taxotere(ドセタキセル)、Temodar(テモゾロミド)、Temodar(テモゾロミド注射液)、Tepadina(チオテパ)、Thalomid(サリドマイド)、TheraCys BCG(BCG)、Thioplex(チオテパ)、TICE BCG(BCG)、Toposar(エトポシド注射液)、Torisel(テムシロリムス)、Treanda(ベンダムスチン塩酸塩)、Trelstar(トリプトレリン注射液)、Trexall(メトトレキサート)、Trisenox(三酸化ヒ素)、Tykerb(ラパチニブ)、Valstar(膀胱内バルルビシン)、Vantas(ヒストレリンインプラント)、Vectibix(パニツムマブ)、Velban(ビンブラスチン)、Velcade(ボルテゾミブ)、Vepesid(エトポシド)、Vepesid(エトポシド注射液)、Vesanoid(トレチノイン)、Vidaza(アザシチジン)、Vincasar PFS(ビンクリスチン)、Vincrex(ビンクリスチン)、Votrient(パゾパニブ)、Vumon(テニポシド)、Wellcovorin IV(ロイコボリン注射液)、Xalkori(クリゾチニブ)、Xeloda(カペシタビン)、Xtandi(エンザルタミド)、Yervoy(イピリムマブ注射液)、Zaltrap(Ziv-アフリベルセプト注射液)、Zanosar(ストレプトゾシン)、Zelboraf(ベムラフェニブ)、Zevalin(イブリツモマブチウキセタン)、Zoladex(ゴセレリン)、Zolinza(ボリノスタット)、Zometa(ゾレドロン酸)、Zortress(エベロリムス)、Zytiga(アビラテロン)、ニモツズマブ、並びに免疫チェックポイント阻害剤、例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ/MK-3475、ピジリズマブ、並びにPD-1を標的化するAMP-224、並びにPD-L1を標的化するBMS-935559、MEDI4736、MPDL3280A、及びMSB0010718C、及びCTLA-4を標的化するもの、例えばイピリムマブである。
【0104】
放射線療法は、病気を治療するための放射線照射、通常はX線の使用を意味する。X線は1895年に発見され、それから、放射線照射は診断及び研究(X線)並びに治療(放射線療法)のために医薬において使用されている。放射線療法は、X線、コバルト放射線照射、電子、及び更に稀に陽子等の他の粒子を使用して、外部放射線療法として体の外部からなされ得る。放射線療法はまた、がんを治療するために放射性金属又は液体(同位体)を使用する内部放射線療法として体の内部からなされ得る。
【0105】
なお更なる態様には、相乗的又は付加的な利益のために、本明細書において記載されるオリゴヌクレオチドと他の抗がん治療法とを組み合わせることが含まれる。
【0106】
既存の抗がん治療法は、がん細胞のDNAを損傷させるか又はDDRを阻害することによって作用する、有効な抗がん治療である。しかし、ほとんどの当該治療のDNA損傷活性は、配列特異的ではない。本発明のオリゴヌクレオチドは配列特異的な様式でDDRを損ない、こうして、既存のDNA損傷治療に配列特異性も付与し、有効性を増強させ得る。
【0107】
組合せを用いる治療のスケジュールでは、オリゴヌクレオチドが上記で同定した「パートナー」治療物質のいずれかと併用して、前に、及び/又は後に投与されることを見越すことができる。
【0108】
組合せ療法は、進行期の疾患だけではなく、将来を見越して、補助療法及び術前補助療法においても利用され得る。
【0109】
本発明では、「機能障害テロメアDNA」は、損傷したテロメアDNA、及び/又は著しく短いテロメアDNA、及び/又はキャップされていないテロメアDNA、及び/又は脱保護されたテロメアDNA、及び/又はDDRシグナルがテロメアで活性であるあらゆる状況である。
【0110】
本発明の組成物は、本発明のオリゴヌクレオチドが、他の薬学的に許容される担体に加えて、両親媒性作用物質、例えば、ミセルとして凝集形態で存在する脂質、不溶性単層、液体結晶、又は水溶液中のラメラ層と組み合わされている、リポソームの形態であり得る。リポソーム製剤のための適切な脂質には、限定はしないが、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸等が含まれる。抗増殖療法において使用するための、オリゴヌクレオチドを含有する医薬組成物が作製され得る。このような医薬組成物の投与は、当業者に知られている様々な従来の方法で、例えば、口腔摂取、例えばエアロゾルの吸入、局所的若しくは経皮塗布、又は頭蓋内経路、脳室内経路、脳内経路、膣内経路、子宮内経路、口腔経路、直腸経路、若しくは非経口経路(例えば、静脈内経路、髄腔内経路、皮下経路、又は筋肉内経路)、又は皮膚注射、皮下注射、腹腔内注射、非経口注射、若しくは静脈内注射で行われ得る。投与経路は、腫瘍の部位、成長、又は標的化される病変に従って決定され得る。有効量の1つ又は複数のオリゴヌクレオチドを含む組成物を成長又は腫瘍の部位に送達するために、その部位への直接的な注射が使用され得る。或いは、アクセス可能な粘膜部位では、オリゴヌクレオチドをマイクロメートル直径のビーズに被覆することによる、又は口腔内ジェット注射装置による、弾道的な(ballistic)送達が使用され得る。遺伝子療法におけるDNAの送達のためのウイルスベクターは、長年にわたり研究の対象となっている。レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、及び植物特異的ウイルスを、がん又は他の成長の治療のためにオリゴヌクレオチドをパッケージし、送達するための系として使用することができる。複製はできないが細胞に感染する能力を保持しているアデノ随伴ウイルスベクターが開発されている。利点は、免疫原性が低く、投与を反復することが可能であることである。送達系は、例えば、(Page及びCudmore、2001)において概説されている。それらの標的核酸機能の阻害の理論に基づいてオリゴヌクレオチド(アンチセンスオリゴヌクレオチド)を使用して行われた研究では、これらの研究のほとんどはホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを用いて行われているが、標的細胞への有効な送達方法が見出されている。臨床試験におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、特別な送達媒体を使用せずに、生理食塩水中で投与されている((Hogrefe、1999)において概説されている)。非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び目的のレシピエントの体液と製剤を等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性滅菌注射溶液、並びに、懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液が含まれる。製剤は、単回投与容器又は複数回投与容器、例えば密封されたアンプル及びバイアル内にあり得、また、使用の直前に滅菌液体担体、例えば注射のための水を加えるだけでよい、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管され得る。即時調製した注射溶液及び懸濁液は、先に記載されている種類の滅菌粉末剤、顆粒剤、及び錠剤から調製され得る。静脈内、皮膚、又は皮下注射のための好ましい医薬組成物は、本発明のオリゴヌクレオチドに加えて、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、乳酸リンゲル注射液等の等張媒体、又は当技術分野で公知の他の媒体を含有する。本発明の医薬組成物はまた、安定剤、保存料、緩衝液、抗酸化剤、又は当業者に公知の他の添加物を含有し得る。
【0111】
徐放又は持続放出送達系の使用もまた、本発明に含まれる。このような系は、外科手術が困難又は不可能である場合、例えば、年齢若しくは疾患経過自体によって患者が衰弱している場合、又はリスク-便益分析が治癒よりも制御の優先を示す場合に、非常に望ましい。1つの方法は、測定された用量の製剤を一定期間にわたり、例えば腫瘍の部位に送達するための、移植可能なポンプの使用である。持続放出マトリクスは、特に成長又は腫瘍の局所的治療のための、オリゴヌクレオチドを含む医薬組成物の送達方法として使用され得る。これは、酵素若しくは酸/塩基加水分解によって、又は溶解によって分解可能な、通常はポリマーである材料で作製されるマトリクスである。一度体内に入れられると、マトリクスは、酵素及び体液の作用を受ける。持続放出マトリクスは、望ましくは、生体適合性材料、例えば、リポソーム、ポリラクチド(ポリ乳酸)、ポリグリコリド(グリコール酸のポリマー)、ポリラクチドコグリコリド(乳酸及びグリコール酸のコポリマー)ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリプロテイン、ヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、多糖、核酸、ポリアミン酸、アミノ酸、例えば、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシン、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドン、及びシリコーンから選択される。好ましい生分解性マトリクスは、ポリラクチド、ポリグリコリド、又はポリラクチドコグリコリド(乳酸及びグリコール酸のコポリマー)のいずれか1つのマトリクスである。本発明の医薬組成物における本発明のオリゴヌクレオチドの量は、治療される状態の性質及び重症度、並びに患者が受けた前治療の性質に応じる。ヒト患者では、主治医が各々の患者を治療するために使用する本発明のオリゴヌクレオチドの用量を決定する。最初は、主治医は低用量を投与し、患者の応答を観察することができる。より多い用量が、最適な治療効果が患者に得られるまで投与され得、その時点で、投薬量はそれ以上増やされない。本発明の医薬組成物を使用する治療法の期間は、治療される疾患の重症度、並びに各々の患者の状態及び特異体質応答の可能性に応じて変化する。
【0112】
本発明はまた、上記に定義した少なくとも1つのオリゴヌクレオチド又はそれを含む医薬組成物を含むキットを提供する。キットは、文書による指示を含有し得る。オリゴヌクレオチドは、分離した容器内にあり得る。
【0113】
本発明において、上記に定義したオリゴヌクレオチド又は上記に定義した医薬組成物で治療されるべき対象を同定する方法は、測定された量のDDRNA又はtDDRNAを対照量と比較することを更に含み得る。対照量は、健康な対象で測定された量であり得、対照量は、ALT疾患に罹患していない又はテロメア機能障害に関連する非がん状態に罹患していない対象で測定された量であり得、対照量は、治療的介入の前又は後に同一の対象で測定された量であり得る。
【0114】
本発明を、以下の図面を参照して、非限定的な例によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0115】
図1】テロメアで生じたDDRNA分子及びLNAオリゴヌクレオチドの略図である。TeloG及びTeloC DDRNAは機能障害テロメアから生じ、DDR活性化に必要である。アンチセンスオリゴヌクレオチド(抗TeloG及び抗TeloC)はDDRNAに結合してその機能を阻害し得、それによって治療活性を有する。示される配列は、本発明の非限定的な例である。報告される配列は、考えられるASO配列の一例である。
図2】テロメアDDRNAがテロメアの脱キャッピングで上方調節されることを示す図である。サイズ選択された(40ヌクレオチドより短い)RNA種を、RT-qPCRによって分析した。MicroRNAmir29bを正規化群(normalizer)として使用した(n=4つの独立した実験)。TRF2+/-及びTRF2-/-は、TRF2のヘテロ接合性又はホモ接合性の欠失を有する細胞を指し、TeloG及びTeloCは、図1に記載するようないずれかのテロメア鎖配列を有するDDRNAである。
図3】テロメアDDRNAがALT細胞株において上方調節されることを示す図である。サイズ選択された(40ヌクレオチドより短い)RNAをRT-qPCRによって分析して、DDRNAレベルを検出した。WI-38 VA-13 ALT細胞株を、その親である非ALT(又はALT陰性)細胞株WI-38と比較し(n=3つの独立した実験)、テロメラーゼ陽性(非ALT又はALT陰性)細胞株SW39を、ALT陽性細胞株SW26と比較した(n=2つの独立した実験)。人工のスパイクインRNAオリゴヌクレオチドを正規化群として使用した。TeloG及びTeloCは、図1に記載するようないずれかのテロメア鎖配列を有するDDRNAである。
図4】テロメア配列を有するLNAオリゴヌクレオチドが特異的にU-2 OS細胞において細胞成長を低減させることを示す図である。U-2 OS(ALT又はALT陽性)、BJ ELR(非ALT又はALT陰性)、及びBJ hTERT(非ALT又はALT陰性)細胞に、0、3、及び7日目に、濃度200nMの示したLNA(モック、対照、抗TeloG、又は抗TeloC)をトランスフェクトした。グラフは、0日目に対して正規化された相対的細胞数を示す(n=3つの独立した実験、*=p値<0.05、**=p値<0.01)。
図5】テロメア配列を有するLNAオリゴヌクレオチドが、U-2 OSにおけるALT関連PML体(APB)の数を低減させることを示す図である。U-2 OS細胞に、最終濃度200nMの示したLNAをトランスフェクトし、トランスフェクション後3日目にAPBについて染色した(n=3つの独立した実験、**=p値<0.001)。
図6】テロメア配列を有するLNAオリゴヌクレオチドが、異なるALT細胞株において細胞成長を低減させることを示す図である。U-2 OS、Saos-2、及びWI-38 VA-13細胞に、0、3、及び7日目に、最終濃度200nMの示したLNAをトランスフェクトした。グラフは、0日目に対して正規化された10日目の相対的細胞数を示す。
図7】テロメア配列を有するホスホロチオエート骨格LNAオリゴヌクレオチド(PSLNA)が細胞成長の阻害において10倍有効であり、ALT細胞に対する特異性を保持していることを示す図である。U-2 OS及びBJ hTERT細胞に、0、3、及び7日目に、示した濃度の示したPS LNAをトランスフェクトした。グラフは、0日目に対して正規化された10日目の相対的細胞数を示す。
図8】テロメア配列を有するホスホロチオエート骨格LNAオリゴヌクレオチド(PSLNA)が、特異的にU-2 OS細胞における細胞成長の阻害において有効であることを示す図である。U-2 OS及びBJ hTERT細胞に、0、3、及び7日目に、濃度20nMの示したPS LNAをトランスフェクトした。グラフは、0日目に対して正規化された10日目の相対的細胞数を示す。
図9】テロメアで生じたDDRNA分子及びtiny LNAオリゴヌクレオチドの略図である。Tiny LNA分子は、TeloG及びTeloC DDRNAを結合及び阻害し得、それによって、治療活性を有する。示される配列は、本発明の非限定的な例である。
図10】Tiny抗TeloC LNAオリゴヌクレオチドが、U-2 OS細胞における細胞成長の阻害において有効であることを示す図である。U-2 OS細胞に、0、3、及び7日目に、最終濃度20nMの示したホスホロチオエートLNAをトランスフェクトした。グラフは、0日目に対して正規化された、レサズリン法(材料及び方法を参照されたい)によって測定した相対的細胞成長を示す(n=3つの独立した実験、***=p値<0.001)。
図11】Tiny抗TeloC LNAオリゴヌクレオチドが、特異的にU-2 OS細胞における細胞成長の阻害において有効であることを示す図である。U-2 OS及びBJ細胞に、0、3、及び7日目に、濃度20nMの示したLNAをトランスフェクトした。グラフは、0日目に対して正規化された、レサズリン法によって測定した相対的細胞成長を示す。
図12】3倍高い濃度で使用すると、Tiny抗TeloC LNAオリゴヌクレオチドが、U-2 OS細胞における細胞成長の阻害においてPS抗TeloC LNAオリゴヌクレオチドと類似の有効性を示すことを示す図である。U-2 OS細胞に、0日目に、濃度20nM(PS抗TeloC)又は60nM(Tiny対照、Tiny抗TeloG、Tiny抗TeloC)の示したホスホロチオエートLNAをトランスフェクトした。グラフは、0日目に対して正規化された、レサズリン法によって測定した6日目の相対的細胞成長を示す。
図13】3倍高い濃度で、Tiny抗TeloC LNAオリゴヌクレオチドがU-2 OS細胞に特異的であることを示す図である。U-2 OS及びBJ細胞に、0日目に、濃度60nM(Tiny対照、Tiny抗TeloG、Tiny抗TeloC)又は20nM(PS抗TeloC)の示したホスホロチオエートLNAをトランスフェクトした。グラフは、0日目に対して正規化された、レサズリン法によって測定した相対的細胞成長を示す。
図14】GBM14細胞が、裸で送達されたPS抗TeloC LNAオリゴヌクレオチドに濃度依存性の様式で感受性であることを示す図である。GBM14を、細胞培養培地中で、10又は40μMの示したPS LNAとインキュベートした。グラフは、0日目に対して正規化された、レサズリン法によって測定した相対的細胞成長を示す。
図15】GBM14細胞が、裸で送達されたtiny抗TeloC LNAオリゴヌクレオチドに感受性であることを示す。GBM14を、細胞培養培地中で、120μMの示したtiny LNAとインキュベートした。グラフは、0日目に対して正規化された、レサズリン法によって測定した相対的細胞成長を示す。
図16】G292腫瘍のインビボでの成長が、PS抗TeloC及びtiny抗TeloCでの処理で低減することを示す図である。G292腫瘍を有するマウスを、示したオリゴヌクレオチド又はコントロールとしてのPBSの腹腔内注射で処理した(群当たりn=7頭のマウス、**=p値<0.01)。
図17】PS抗TeloCで処理すると、G292腫瘍が1cm3のサイズに達するまでの時間が延びたことを示す図である(群当たりn=7頭のマウス、**=p値<0.01、***=p値<0.001)。
図18】PS抗TeloC又は抗TeloGで処理した第2世代のテロメラーゼ突然変異体ゼブラフィッシュが、重篤度の低い表現型を示すことを示す図である。テロメラーゼ突然変異体ゼブラフィッシュにPS LNAを注射し、交配して第2世代を得た。グラフは、テロメラーゼ突然変異に関連する形態学的欠陥の異なる程度の重症度を示す第2世代魚のパーセンテージを示す(試料当たり少なくとも200の魚を分析した)。
図19】PS抗TeloC又は抗TeloGで処理した第2世代のテロメラーゼ突然変異体ゼブラフィッシュがより長く生存することを示す図である。グラフは、第2世代のテロメラーゼ突然変異体ゼブラフィッシュの生存率を示す(試料当たり少なくとも200匹の魚を分析した)。
図20】PS抗TeloG及び抗TeloCがプロジェリン発現細胞において細胞成長を予防することを示す図である。ラミンA又はプロジェリンを発現する、レトロウイルスに感染したBJ細胞に、示したPS LNA(20nM)をトランスフェクトした。細胞を固定し、8時間のBrdUパルス後に免疫蛍光について染色した。BrdU及びKI67に対する抗体を定量化に使用した。
図21】プロジェリンがPS LNA処理された試料において類似のレベルで発現することを示す図である。ラミンA又はプロジェリンを発現する、レトロウイルスに感染したBJ細胞を、ラミン(これはアイソフォームA及びCの両方を検出する)、プロジェリン、及びローディング対照としてのビンキュリンの発現についてプローブした。
図22】PS抗TeloGが、皮膚におけるプロジェリン発現のマウスモデルにおける生存率を増大させることを示す図である。グラフは、未処理マウスと比較した、PS抗TeloG LNAオリゴヌクレオチドで処理したHGPS(プロジェリン発現)マウス及び野生型マウスの生存率を示す(nは、各群当たりの分析したマウスの数を表す)。
図23】テロメア前駆体の転写産物の検出を示す図である。(a)全細胞RNAを、示した遺伝子型のMEF(マウス胚線維芽細胞)から単離し、鎖特異的なRT-qPCRに使用して、テロメア前駆体の転写産物を検出した。(b)(a)と同一のRT-qPCRを使用して、ヒト線維芽細胞からテロメア前駆体の転写産物を検出した。右側のパネルでは、全細胞RNAをSW39(非ALT)及びSW26(ALT)から単離した。
図24-1】抗TeloC処理の際のALT細胞におけるアポトーシス経路の活性化を示す図である。U-2 OS細胞を、示したLNAで処理した。PS LNAは20nMでトランスフェクトし、一方、Tiny LNAは60nMでトランスフェクトした。細胞には、0、3、及び7日目にトランスフェクトした。試料を、示した日に、アポトーシスマーカーであるカスパーゼ3及びParp-1切断のタンパク質検出のために、又はFACS分析(Sub G1画分及びカスパーゼ3切断)のために採取した。
図24-2】抗TeloC処理の際のALT細胞におけるアポトーシス経路の活性化を示す図である。U-2 OS細胞を、示したLNAで処理した。PS LNAは20nMでトランスフェクトし、一方、Tiny LNAは60nMでトランスフェクトした。細胞には、0、3、及び7日目にトランスフェクトした。試料を、示した日に、アポトーシスマーカーであるカスパーゼ3及びParp-1切断のタンパク質検出のために、又はFACS分析(Sub G1画分及びカスパーゼ3切断)のために採取した。
図25】抗TeloC LNAがALT細胞におけるS期の延長を誘発することを示す図である。U-2 OS細胞に、0、3、及び7日目に、20nMの示したLNA、PS LNA、及び60nMでTiny LNAをトランスフェクトした。細胞を、2、6、及び9日目に、細胞周期のFACS分析のために採取した。
図26】抗TeloC LNAがALT特異的な阻害剤であることを示す図である。細胞株に、0、3、及び7日目に、20nMの示したLNA、PS LNA、及び60nMのTiny LNAをトランスフェクトした。グラフは、0日目に対して正規化された、レサズリン値によって測定された相対的細胞数を示す。
図27】LNAの裸の送達がU-2 OS細胞の成長の阻害に十分であることを示す図である。(A)U-2 OS細胞を、0日目に、示した濃度のLNAで処理した。グラフは、0日目に対して正規化された、レサズリン値によって測定された7日目の相対的細胞数を示す。(B)U-2 OS細胞を(A)のように処理し、細胞数は6日目に測定した。
図28】G-292の成長が抗TeloC LNAによって阻害されることを示す図である。G-292に、0及び3日目に、200nMの示したLNAをトランスフェクトした。グラフは、0日目に対して正規化された、レサズリン値によって測定された相対的細胞数を示す。
図29】LNAの裸の送達がG-292細胞の成長の阻害に十分であることを示す図である。G-292細胞を、0日目に、示した濃度のLNAで処理した。グラフは、0日目に対して正規化された、レサズリン値によって測定された7日目の相対的細胞数を示す。
図30】2'-O-メチル(2'-O-Me)ASO抗TeloC ASOが、特異的にU-2 OS細胞における細胞成長の阻害において有効であることを示す図である。U-2 OS及びBJ細胞に、0日目に、濃度20nMの示した2'-O-Me ASO又はPS抗TeloCをトランスフェクトした。グラフは、0日目に対して正規化された、レサズリン値によって測定された相対的細胞数を示す。
図31】2'-O-Me ASOが100nMまで無毒であることを示す図である。U-2 OS細胞に、0日目に、示した濃度の示したASOをトランスフェクトした。グラフは、0日目に対して正規化された、レサズリン値によって測定された相対的細胞数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0116】
材料及び方法
培養した細胞:MEF CRE-ER TRF2fl/fl及びMEF CRE-ER TRF2fl/+(Celli及びde Lange、2005)を、10%ウシ胎児血清及び1%グルタミンを添加したDMEM中で成長させ、CREの活性化及びTRF2ノックアウトの誘発のために、細胞を600nMの4ヒドロキシタモキシフェンで24時間処理し、24時間後に分析した。U-2 OS細胞(ATCC)を、10%ウシ胎児血清及び1%グルタミンを添加したDMEM中で成長させた。Saos-2細胞(ATCC)を、15%ウシ胎児血清を添加したMcCoy's 5A+Glutamax中で成長させた。WI-38及びWI-38 VA-13(ATCC)を、10%ウシ胎児血清、10mMの非必須アミノ酸、及び1mMのピルビン酸ナトリウムを添加したMEM+Glutamax中で成長させた。テロメラーゼ陽性細胞株SW39(ALT陰性)及びALT陽性細胞株SW26(Bechterら、2003)を、10%既定成分添加(defined supplemented)仔ウシ血清を添加した、ダルベッコ変法イーグル培地及び培地199の4:1混合物中で成長させた。BJ hTERTを、ヒトテロメラーゼ発現プラスミドでのBJ細胞(ATCC)のレトロウイルス感染によって得、10%ウシ胎児血清、10mMの非必須アミノ酸、及び1mMのピルビン酸ナトリウムを添加したMEM+Glutamax中で成長させた。BJ ELR(Hahnら、1999)を、10%ウシ胎児血清、1%グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、及び25mMのHEPESを添加した4:1のDMEM:M199中で成長させた。GBM14(ALT陽性)を、2%のB27、5μg/mlのヘパリン、20ng/mlのbFGF、及び20ng/mlのEGFを添加した、DMEM/F12+GlutaMAX中で成長させた。G-292(ATCC)を、10%ウシ胎児血清及び1%グルタミンを添加したMcCoy's 5A+Glutamax中で成長させた。
【0117】
トランスフェクション:LNAを、90℃で5分煮沸し、氷中で5分冷蔵し、その後、示した最終濃度で製造者の指示に従ってLipofectamine RNAiMAX(Invitrogen社)と共にトランスフェクトした。モックをトランスフェクトした細胞は、RNAiMAXのみで処理した。
【0118】
増殖曲線:それぞれの示した時点で、細胞を、製造者の指示に従って、生存細胞の代謝活性の分光光度的測定を可能にするCoulter Counter(Beckman社)又はレサズリンに基づいたIn Vitro Toxicology Assay Kit(Sigma社)で、3重に計数した。
【0119】
免疫蛍光:細胞を1:1のメタノール/アセトン溶液で2分間、室温で固定した。ブロック後、細胞を抗PML(Santa Cruz社)一次抗体で1時間、室温で染色し、洗浄し、そして、コンジュゲート型抗マウス二次抗体と40分間、室温でインキュベートした。核をDAPI(1μg/ml)で染色した。共焦点断面を、Leica TCS SP2 AOBS共焦点レーザー顕微鏡で、光学軸に沿って異なるレベルで光学的z断面を獲得することによって得、細胞当たりのAPB数をCellProfilerソフトウェアによって計数した。
【0120】
RNA単離:全細胞RNAを、製造者の指示に従って、mirVana(商標)miRNA Isolation Kit(Life Technologies社)を使用して抽出した。
【0121】
低分子RNAのqPCR:cDNA合成及びRT-PCRを、miScript PCR系(Qiagen社)を使用して行った。RNAを、5μgの全RNAをポリアクリルアミド変性ゲル上で泳動させることによって分画した。40ヌクレオチドより短いRNA種をゲル抽出し、cDNAを、miScript II RTキットをHiSpec緩衝液と共に使用して合成した。反応物を37℃で60分間インキュベートし、その後、熱不活化ステップを5分間、95℃で行った。cDNAを、miScript SYBR Green PCR Master Mix、miScript Universal Primer、mir29bプライマー(TAGCACCATTTGAAATCAGTGTT)配列番号7、ゲルからのRNA抽出の効率をモニタリングするためのSpike-Inプライマー(CGAATTCCACAAATTGTTATCC)配列番号8、及びテロメア配列含有プライマー(TAGGGTTAGGGTTAGGGT、配列番号9、CCCTAACCCTAACCCTAA、配列番号10)を使用して分析した。
【0122】
鎖特異的なqPCR:mirVana(商標)miRNA Isolation Kitの全RNAを使用した。試料をDNase I(Thermo Scientific社)で処理して、あらゆる潜在的な残留ゲノムDNA汚染を除去した。1000ngの全RNAを、Superscript First Strand cDNA合成キット(Invitrogen社)を鎖特異的なプライマーと共に使用して逆転写した。逆転写に使用したプライマー:ハウスキーピングRplp0 mRNAの検出のためのRPP0rev、Gに富んだ鎖のテロメア前駆体の検出のためのteloCrev、Cに富んだ鎖のテロメア前駆体の検出のためのteloGrev。
【0123】
RT-qPCRを、Roche SYBRグリーンを使用して行った。各RT-qPCR反応で、50ngのcDNAを使用した。テロメアリピートを増幅させるために、本発明者らは、一定の長さの増幅産物の生成を可能にする、(Cawthon、2002)において記載されている技術を利用した。qPCRに使用したプライマー:ハウスキーピングRplp0 mRNAの検出のためのRPP0fwd及びRPP0rev、テロメア前駆体の検出のためのteloF及びteloRであった。
【0124】
以下は、鎖特異的なRT-qPCRに使用したプライマー(5'-3'の方向)のリスト:
RPP0fwd:TTCATTGTGGGAGCAGAC(配列番号11)
RPP0rev:CAGCAGTTTCTCCAGAGC(配列番号12)
teloCrev:CCCTAACCCTAACCCTAA(配列番号13)
teloGrev:TAGGGTTAGGGTTAGGGT(配列番号14)
teloF:CGGTTTGTTTGGGTTTGGGTTTGGGTTTGGGTTTGGGTT(配列番号15)
teloR:GGCTTGCCTTACCCTTACCCTTACCCTTACCCTTACCCT(配列番号16)
【0125】
低分子RNAの標的化された配列決定。2つのリンカーを、分析対象試料中のRNA分子の2つの末端にライゲーションした。出発RNAの3'末端を、25℃で1時間インキュベートしたT4 RNAリガーゼ2トランケート型酵素(NEB)によって、モノアデニル化したDNAリンカーにライゲーションした。次いで、5'RNAリンカーを、タバコ酸性ピロホスファターゼ(Epicentre社)によって5'キャップ構造を除去した後に、T4 RNAリガーゼ1(NEB)によって標的RNAに20℃で1時間ライゲーションし、37℃で1時間インキュベートした。リンカーは、PrimeScript RT-PCR Kit(Takara社)を使用するcDNA合成を可能にした。逆転写反応物を、44℃で1時間インキュベートした。Phusion(登録商標)High-Fidelity DNA Polymerase(NEB)を使用するその後のPCR増幅を、以下のように行った:98℃で2分間;98℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間を22サイクル;72℃で5分間;4℃で保持。増幅したcDNA標的を捕捉するために、ビオチン標識されたヌクレオチドを含有する相補的RNAベイトを使用した。これらのRNAベイトは、AMbion MAXIscript T7 In Vitro Transcriptionキット(Life Technologies社)及びBiotin RNAラベリングMix(Roche社)を使用して作製した。T7プロモーター含有dsDNAを37℃で1時間インキュベートして、インビトロでの転写をさせた。RNAベイト及びcDNA標的を37℃で48時間、SUPERase阻害剤(Life Technologies社)及びブロッキング剤:ヒトCot-1(Life Technologies社)、UltraPure(商標)サケ精子DNA溶液(Thermo Scientific社)、及び200uMのカスタマイズブロックの存在下でインキュベートした。ハイブリッドRNA-cDNA分子を、Dynabeads(登録商標)MyOne(商標)ストレプトアビジンC1(Life Technologies社)ビーズによって捕捉し、一方、標的化されていないcDNAは洗い流した。次いで、捕捉されたcDNAをScript Index PCRプライマー(Illumina社)でPCRによってバーコード付けし、MiSeq(Illumina社)シーケンサーによって配列決定した。オリゴヌクレオチド配列(5'-3'の方向)は、
3'DNAリンカー AGATCGGAAGAGCACACGTCTGAACTCCAGTCAC-アミン(配列番号17)
5'RNAリンカー ACACUCUUUCCCUACACGACGCUCUUCCGAUCU(配列番号18)
RTプライマー GTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCT(配列番号29)
PCR Fw
AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT(配列番号30)
PCR Rv
CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATCGGTCTCGGCATTCCTGCTGAACCGCTCTTCCGATCT(配列番号31)
Block Fw
AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT(配列番号32)
Block Rv
CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATCGTGATGTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCT(配列番号33)
であった。
【0126】
ウェスタンブロット:細胞を溶解緩衝液TEB150(50mM Hepes、150mM NaCl、2mM MgCl2、5mM EGTA、0.5%Triton、10%グリセリン)中に回収し、ウェスタンブロットのための試料調製まで、液体窒素内で急速冷凍した。溶解では、細胞を氷上で解凍し、15分間、+4℃及び13200RPMで回転させた。タンパク質を含有する上清を取り出し、細胞残屑を廃棄した。タンパク質を、ブラッドフォードアッセイを使用して定量した。転移後、膜を抗カスパーゼ-3抗体(Cell Signaling社 9661)、抗PARP抗体(Serotec社)、及び抗チューブリン抗体(Millipore社)でプローブした。ラミンA/C、プロジェリン、及びチューブリンについて、細胞をLaemmli 1×緩衝液中に回収し、-80℃で保存した。溶解するために、細胞をシリンジに通し、95℃で5分間煮沸した。タンパク質を、Lowryアッセイを使用して定量した。転移後、膜をラミンアイソフォームA及びCの両方を認識する抗ラミン抗体(Santa Cruz Biotech社 sc-6215)、並びにプロジェリン及び抗チューブリン抗体(Millipore社)でプローブした。
【0127】
FACS分析:細胞周期分析のために、培地上清を取り出し、トリプシン処理細胞で遠沈させ、75%エタノール中で固定し、1×PBS中のPropidium Iodine(PI、Sigma社、50μg/ml)及びRNase A(Sigma社、250μg/ml)溶液で染色した。FACSによるカスパーゼ-3切断分析のために、培地上清を取り出し、トリプシン処理細胞で遠沈させ、氷上の1%ホルムアミド中で20分間固定し、75%エタノール中に保存し、カスパーゼ-3抗体(Cell Signaling社 9661)で染色し、次いでフルオロフォアFITC(抗ウサギFITC、ImmunoJackson社)にコンジュゲートし、PI/RNase A溶液で染色した。試料を、FITCについては488nmレーザー及び530/30フィルターを、PIについては670nmレーザー及び585/42フィルターを使用して、BD Facs CantoIIで分析した。獲得はソフトウェアBDFacsDIVA v6.1.1で行い、分析はソフトウェアModfitLT3.0を使用して行った。Sub G-1及びカスパーゼ陽性細胞については、試料当たり少なくとも500の事象を分析した。細胞周期については、試料当たり少なくとも8000の事象を分析した。
【0128】
裸の送達:PBS中のオリゴヌクレオチドを、播種された細胞に直接添加し、一方、モック処理細胞にはPBSのみを添加した。各実験において、条件当たり一定量のPBSを使用した。
【0129】
レトロウイルス感染:BJ細胞に、野生型ラミンA又は突然変異体プロジェリン遺伝子を発現するレトロウイルスベクターを形質導入し、ピューロマイシンで選択した。
【0130】
G292異種移植片のインビボでの処理:Charles River社 Italyから入手したオスのCD-1ヌードマウスを、スチームオートクレーブにかけた(無菌の)床敷き、γ線照射した飼料、及び酸性化したミネラルウォーターを使用してケージ内で維持した。
【0131】
10x106のG-292細胞を、0日目に、オスのヌードマウスの左脇腹に皮下注射した。動物を、腫瘍の出現について定期的に調べた。腫瘍が90から220mm3の容積に達したら、マウスをランダム化し、群当たり7頭のマウスを目標にして、処理群に割り当てた。処理を開始する時点で、平均腫瘍容積は約0.14cm3であった。処理は、15mg/kgの用量で、13、17、21、25日目にPBS及びTiny抗TeloCを、13及び17日目にPS抗TeloCを腹腔内投与して行った。
【0132】
動物の飼育及び取り扱いに用いた全ての手順は、実験動物福祉についてのイタリア及び欧州のガイドラインを厳格に順守したものであった。腫瘍移植日の体重:25~38g。
【0133】
Tert突然変異体ゼブラフィッシュのインビボでの処理:ヘテロ接合性のテロメラーゼ突然変異体ゼブラフィッシュ(Tert +/-、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2762901/)を近交系間交配し、単細胞期に、卵の卵黄内に、0.5ng/μlのPS LNAを注射した。注射した魚を養魚場で成体まで成長させ、次いで、fin clip法によって遺伝子型決定して、ホモ接合性の突然変異体魚(第1世代tert -/-)を同定し、これを近交系間交配し、その子孫(第2世代)を生存率及び表現型について分析した。
【0134】
HGPSマウスのインビボでの処理:表皮ケラチン生成細胞内でプロジェリンを発現するHGPSマウス(McKennaら、Aging cell 2014)に、15mg/Kgの濃度のPS LNAオリゴヌクレオチドを、胎生期17.5日目から開始して3~4日毎に腹腔内注射した。
【0135】
アンチセンスオリゴヌクレオチド:
LNA配列:LNAオリゴヌクレオチドはExiqon社によって作製された。
【0136】
リン酸骨格を有するLNA(図4図5図6):
対照 ACTGATAGGGAGTGGTAAACT(配列番号19)
抗TeloG CCCTAACCCTAACCCTAACCC(配列番号20)
抗TeloC GGGTTAGGGTTAGGGTTAGGG(配列番号21)
【0137】
完全ホスホロチオエート骨格を有するLNA(LNA-PS)(図7図8図10図11図12図13図14図16図17図18図19図20図21図22図24図25図26図27図28図29図30図31):
(*は、ホスホロチオエート修飾を意味する)
PS対照 A*C*T*G*A*T*A*G*G*G*A*G*T*G*G*T*A*A*A*C*T(配列番号19)
PS抗TeloG C*C*C*T*A*A*C*C*C*T*A*A*C*C*C*T*A*A*C*C*C(配列番号20)
PS抗TeloC G*G*G*T*T*A*G*G*G*T*T*A*G*G*G*T*T*A*G*G*G(配列番号21)
【0138】
完全ホスホロチオエート骨格を有するTiny(8-mer)LNA(図10図11図12図13図15図16図17図24図25図26図27図28図29):
Tiny対照 C*G*T*C*A*T*A*C(配列番号22)
Tiny抗TeloG C*C*C*T*A*A*C*C(配列番号20のヌクレオチド1から8)
Tiny抗TeloC G*G*G*T*T*A*G*G(配列番号21のヌクレオチド1から8)
【0139】
2'-O-メチルオリゴヌクレオチド(図30図31):2'-O-メチルオリゴヌクレオチドはIntegrated DNA Technologies社によって作製された。
(*はホスホロチオエート修飾を意味し、mは2'位でのメチル基修飾を意味する)
2'-O-Me対照:
mU*mU*mA*mU*mC*mC*mG*mC*mU*mC*mA*mC*mA*mA*mU*mU*mC*mC*mA*mC*mA*mU(配列番号34)
2'-O-Me抗TeloG:
mC*mC*mC*mT*mA*mA*mC*mC*mC*mT*mA*mA*mC*mC*mC*mT*mA*mA*mC*mC*mC(配列番号20)
2'-O-Me抗TeloC:
mG*mG*mG*mT*mT*mA*mG*mG*mG*mT*mT*mA*mG*mG*mG*mT*mT*mA*mG*mG*mG(配列番号21)
【0140】
統計分析:結果を、平均プラス又はマイナス平均の標準偏差又は標準誤差として示す。P値を、必要に応じて、ステューデント両側t検定、カイ二乗検定、マンホイットニー検定、又はマンテルコックス検定によって計算した。
【0141】
結果
本発明者らは、qPCRによって、損傷したテロメアで生じたDDRNAのレベルを測定した。そのために、本発明者らは、テロメア結合タンパク質TRF2をノックアウトすることによってテロメアが脱保護され得るマウス胚線維芽細胞(MEF)を使用した(Celli及びde Lange、2005)。これは、事実上全てのテロメアでDDRの活性化をもたらす。これは、テロメア機能障害の認められたモデルである。DNAが損傷するとDDRNAと呼ばれる低分子RNA分子が特異的損傷遺伝子座で生じること、及びこれが損傷DNAの同一配列を有することが、既に示されている(Franciaら、2012)。したがって、本発明者らは、Gに富んだテロメアDNA鎖の転写に由来するセット(TeloC DDRNA)及びCに富んだテロメアDNA鎖の転写に由来するセット(TeloG DDRNA、図1)という2つの異なるDDRNA分子セットが、テロメアの脱保護の際に生じ得ると推論した。RT-qPCR、及び低分子RNAの標的化された配列決定によって、本発明者らは、正常なテロメアを有する対照細胞と比較した、脱保護されたテロメアを有する細胞におけるTeloC DDRNA及びTeloG DDRNAの両方の再現可能な2倍から3倍の増大を検出することができた(図2)。
【0142】
脱保護されたテロメアを有する細胞において、TeloG DDRNA及びTeloC DDRNAの両方の前駆体転写産物は対照細胞と比較して強力に誘発され(図23a)、このことは、テロメアの脱保護がテロメアでの転写を誘発することを示す。
【0143】
ALT陽性細胞は、テロメアでの強力な慢性的DDR活性化を示す(Cesare及びReddel、2010)。本発明者らは、このことが、それらの親細胞株であるWI-38ヒト線維芽細胞と比較してALT陽性WI-38 VA-13において、また、同一の線維芽細胞株であるIMR90を不死化して得られ、その結果、異なるテロメア維持メカニズムをもたらす細胞株であるテロメラーゼ陽性SW39胎児肺線維芽細胞(Bechterら、2003)と比較してALT陽性SW26において、RT-qPCRによって検出されるtDDRNAのレベルがより高いことと相関することを発見した(図3)。更に、TeloG DDRNA及びTeloC DDRNAの両方の前駆体転写産物はまた、対照SW39細胞と比較してSW26 ALT陽性細胞において強力に上方調節された(図23b)。
【0144】
ALT陽性細胞は、そのテロメアを維持するために、相同組換えメカニズムに依存する(Cesare及びReddel、2010)。したがって、本発明者らは、ALT陽性細胞がDDRNA阻害に対して過敏であるかどうかを試験した。
【0145】
本発明者らは、ALT細胞株U-2 OSヒト骨肉腫細胞に、G若しくはCに富んだテロメア転写産物を標的化するロックド核酸(LNA)(Veedu及びWengel、2010)分子(それぞれ、抗TeloG及び抗TeloC)、又は対照LNAをトランスフェクトし、本発明者らは、10日間にわたり、細胞成長をモニタリングした。対照及び抗TeloG LNAをトランスフェクトした細胞の成長はモック処理細胞と差がなく、逆に、抗TeloC LNAは、U-2 OSの成長を有意に損なった(図4)。
【0146】
効果はALT細胞に特異的であり、それは、形質転換されていても(BJ ELR)正常であっても(BJ hTERT)、抗TeloC LNAが、テロメラーゼ発現ヒト線維芽細胞の成長速度に顕著な影響を与えなかったためである(図4)。
【0147】
ALTバイオマーカーに対するLNA処理の影響をモニタリングするために、本発明者らは、ALT関連PML体(APB)、組換え因子を含有する核構造、及びALT細胞に特異的なテロメアDNAの存在を評価した(Henson及びReddel、2010)。PMLタンパク質に対する間接的な免疫染色によって、本発明者らは、対照又は抗TeloG LNAと比較した、抗TeloC LNAで処理したU-2 OS細胞におけるAPBの減少を観察した(図5)。
【0148】
本発明者らの所見を拡張するために、本発明者らは、ALT陽性細胞株U-2 OS、Saos-2、及びWI-38 VA-13に抗TeloG及び抗TeloC LNAをトランスフェクトした。抗TeloC LNAは、試験した3つの細胞株全てで細胞成長を有意に阻害した(図6)。
【0149】
ホスホロチオエート骨格(「PS」)は、オリゴヌクレオチドをヌクレアーゼ分解に対してより耐性にし、特にインビボでのオリゴヌクレオチドの活性を増強するために一般的に使用される、修飾である。本発明者らは、同一配列のホスホジエステルLNAを有するが完全ホスホロチオエート骨格を有するLNA分子を設計した(PS LNA、材料及び方法を参照されたい)。PS抗TeloC LNAは、ホスホジエステルLNAに使用される濃度より10倍低い20nMの濃度でU-2 OS細胞の成長を予防し(図7及び図8)、その一方で、対照として使用されるBJ hTERT細胞に対する効果はより小さかった。
【0150】
少なくとも6ヌクレオチド、好ましくは少なくとも8ヌクレオチド長の完全LNAオリゴヌクレオチドである、いわゆる「tiny/短いLNAオリゴヌクレオチド」は、インビトロでもインビボでも、それらの相補的RNA標的を特異的に標的化することが示されている(Obadら、2011)。本発明者らは、8ヌクレオチド長でありテロメア転写産物を標的化する、「tiny抗TeloC」及び「tiny抗TeloG」と呼ばれる、ホスホロチオエート骨格を有するtiny/短いLNAオリゴヌクレオチドを設計した(図9)。
【0151】
tiny抗TeloCオリゴヌクレオチドをトランスフェクトしたU-2 OS細胞は、モックをトランスフェクトした細胞又は対照若しくはtiny抗TeloGオリゴヌクレオチドをトランスフェクトした細胞よりも成長が有意に悪かった(図10)。効果はALT細胞に特異的であり、それは、抗TeloC LNAが正常なヒト線維芽細胞(BJ細胞)においては細胞成長を損なわなかったためである(図11)。しかし、細胞成長に対するtiny抗TeloCオリゴヌクレオチドの影響は、同一のモル濃度で使用したPS抗TeloC LNAほどに明らかではなかった(図10)。
【0152】
それらの短さ、ひいてはテロメアリピートRNAにマッチするそれらの能力に比例して、3倍多い量のtiny LNAオリゴ(60nM)を使用することによって、本発明者らは、20nM濃度のPS抗TeloC LNAに類似した、tiny抗TeloC LNAのALT細胞増殖に対する阻害効果を観察した(図12)。また、このより高い濃度で、tiny/短い抗TeloC LNAの効果はALT細胞に特異的であった(図13)。
【0153】
PS LNA及びTiny LNAの両方による抗TeloC LNA介在性の成長機能障害は、アポトーシスの誘発を伴うものであり、これは、カスパーゼ-3切断、並びにFACS分析によって示される細胞死の指標であるsub G-1細胞の増大、並びにウェスタンブロット分析によって示されるカスパーゼ-3及びPARP-1切断によって証明された(図24)。更に、抗TeloC LNAをトランスフェクトしたU-2 OS細胞は、ALTメカニズムに関連していると考えられる(O'Sullivan及びKarlseder、2010)、複製ストレスの悪化の指標であるS期の延長を示した(図25)。
【0154】
抗TeloC LNAの特異性を更に証明するために、本発明者らは、先に記載したように、対にした細胞株SW26(ALT)及びSW39(テロメラーゼ陽性)に対するLNAトランスフェクションの効果を試験した。抗TeloC LNAは、マッチした非ALT対照よりもはるかにALT細胞の成長を阻害した(図26)。
【0155】
細胞のトランスフェクションはインビトロでは行うことができるがインビボでは行うことができないため、トランスフェクション剤を使用せずに「裸の」LNAを取り込む細胞の能力を試験することが重要である。このプロセスは「ジムノティック(gymnotic)送達」と呼ばれ、インビボでの処理の有効性のより良好な予測因子であると考えられている(Steinら、2010)。したがって、本発明者らは、複数のALT細胞株におけるLNAの裸の送達の有効性の判定を試みた。
【0156】
LNAの裸の送達はU-2 OS細胞で有効であり、PS抗TeloC LNA及びTiny抗TeloC LNAの両方が細胞成長を阻害した(図27A図27B)。一方、対照で処理した細胞及び抗TeloG処理した細胞は比較的影響を受けなかった。
【0157】
ホスホロチオエート骨格オリゴヌクレオチドの有効性が骨肉腫細胞株に制限されなかったことを実証するために、本発明者らは、ホスホロチオエート骨格オリゴヌクレオチドを、裸の送達によって、別の細胞型であるALT陽性膠芽腫細胞株GBM14(Heaphyら、2011)に対して試験した。PS抗TeloC及びtiny抗TeloC LNAのみが、未処理細胞と比較して、細胞成長を有意に低減させた(図14図15)。
【0158】
別のALT陽性細胞株であるG-292は、マウスにおいて異種移植片として成長し得る(Lauvrakら、2013)。本発明者らはまず、この細胞株も抗TeloC LNAのみに影響され、対照には影響されないことを判定した(図28)。次いで、本発明者らは裸の送達の有効性を判定し、PS抗TeloC及びTiny抗TeloCが成長を阻害し得るが、それぞれの対照PS抗TeloG、Tiny対照、及びTiny抗TeloGは効果を有さないことを見出した(図29)。
【0159】
インビボでのALT陽性腫瘍の成長に対するASO処理の有効性を試験するために、G-292細胞を、検出可能な腫瘍容積が形成されるまで、ヌードマウスの脇腹に注射した。腫瘍を有するマウスをASOで腹腔内処理した。PS抗TeloC及びtiny抗TeloCの両方が、媒体(PBS)を注射したマウスと比較して、腫瘍の成長を低減させた(図16)。本発明者らは最大耐用量研究を行っておらず、したがって、より高い用量は腫瘍の成長に対してより強い阻害効果を有する可能性がある。更に、PS抗TeloC及びtiny抗TeloCは、腫瘍が1cm3のサイズに達するのに必要な時間を増大させた(図17)。
【0160】
本発明者らは、別のクラスのASOである、ホスホロチオエート骨格を有する2'-O-メチル(2'-O-Me)ASOの有効性及び特異性を試験した。2'-O-Me抗TeloCをトランスフェクトしたU-2 OSのみが、モックをトランスフェクトした細胞よりも有意に成長が悪く、一方、対照及び抗TeloG ASOは細胞成長に影響しなかった(図30)。重要なことに、同一濃度(20nM)で使用すると、細胞成長に対する2'-O-Me抗TeloCの効果はPS抗TeloCより大きかった。逆に、2'-O-Me抗TeloCは、BJ細胞の成長を損なわなかった。更に、2'-O-Me ASOは、100nMまで無毒であった(図31)。
【0161】
テロメア機能障害に関連する非がん状態
ゼブラフィッシュ(zebrafish)におけるテロメラーゼ機能の遺伝的不活化は、テロメア機能障害、及び加速した形態の老化を再現する多くの病理学的事象を誘発する(Anchelinら、2013;Carneiroら、2016)。したがって、これは、テロメア機能障害、特に生理学的老化の、確立された忠実な脊椎動物モデルである。第1生成のゼブラフィッシュと比較して表現型が強いため、第2世代のテロメラーゼ突然変異体ゼブラフィッシュ動物を研究した。この動物は、形態学的欠陥及びより短い寿命を特徴とし、誕生の数日後に死亡する。PS LNAを、第1世代のテロメラーゼ突然変異体魚から得た単細胞胚に注射し、これを交配して第2世代を得た。抗TeloC又は抗TeloGで処理した個体から産まれた魚は、早期老化に関連する形態学的欠陥が有意に低減しており(図18)、より長く生存した(図19)。
【0162】
本発明者らは、正常なヒト線維芽細胞に、プロジェリンとしても知られている突然変異形態のラミンA遺伝子(Gonzaloら、2016)、又は対照としての野生型ラミンA遺伝子を発現するベクターを感染させた。この遺伝子はHGPS患者において突然変異しており、その発現によって細胞成長が遅くなり、老化が早まって、HGPS患者等のテロメア症候群において見られる早期老化表現型を再現する。プロジェリンの発現はテロメア機能障害を生じさせることが示されている(Chojnowskiら、2015)。本発明者らは、PS LNAのトランスフェクションの際のこれらの細胞の細胞成長をモニタリングした。PS抗TeloC又はPS抗TeloGの存在下で、プロジェリン発現細胞は、BrdUの組み込み及び増殖マーカーKI67の発現によってモニタリングすると(図20)、プロジェリン発現のレベルが類似していたにもかかわらず、モックをトランスフェクトした細胞又はPS対照LNAをトランスフェクトした細胞よりも成長した(図21)。これらの結果は、tDDRNAを標的化するASOが、プロジェリンによって誘発される老化の確立を予防し得ることを示唆している。
【0163】
表皮ケラチン生成細胞においてプロジェリンを発現するHGPSマウスモデルは、表皮過形成、重篤な皮膚異常、毛髪菲薄化、顕著な過角化症、中等度の真皮線維症、炎症細胞による湿潤を示し、出生後第2週以内に死亡する(McKennaら、2014)。本発明者らは、プロジェリン発現マウス及び野生型マウスをPS抗TeloG LNAで妊娠中に1回、妊娠中のメスに注射して、及び生後3日毎に処理した。抗TeloGでの処理はプロジェリアマウスの寿命を、未処理動物と比較して有意に延ばした(図22)。
(参考文献)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24-1】
図24-2】
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
【配列表】
0007023834000001.app