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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】工業用テキスタイル及びその使用
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/37 20210101AFI20220215BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20220215BHJP
   D21F 7/08 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
D03D15/37
D03D1/00 Z
D21F7/08 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018542184
(86)(22)【出願日】2017-02-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-21
(86)【国際出願番号】 FI2017050103
(87)【国際公開番号】W WO2017144773
(87)【国際公開日】2017-08-31
【審査請求日】2018-08-10
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】20165149
(32)【優先日】2016-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】515183610
【氏名又は名称】バルメット テクノロジーズ オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】エンクヴィスト ラウノ
(72)【発明者】
【氏名】パーヴォライネン ユハ
【合議体】
【審判長】藤原 直欣
【審判官】平野 崇
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-246834号公報(JP,A)
【文献】特開平4-504740号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D15/37
D03D1/00
D21F7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理機械において繊維ウェブを支持する工業用テキスタイルであって、前記テキスタイル(1)は、
前記工業用テキスタイルの使用中に処理されるべき前記繊維ウェブの方へ向いているウェブ側表面(P)を有し、
前記使用中、前記処理機械の方へ向いているロール側表面(R)を有し、
数本の縦方向(MD)ヤーン(2)を有し、これらの機械方向ヤーン(2)のうちの少なくとも何本かは、扁平な断面を有し、
数本の横方向(CMD)ヤーン(3)を有する、工業用テキスタイルにおいて、
前記テキスタイル(1)は、織布であり、前記テキスタイル(1)は、数本の扁平な縦方向ヤーン(2,2a,2b)を有し、
前記縦方向ヤーン(2,2a,2b)は、これらの長手方向軸線に対して撚られ、それにより、前記撚られた状態の扁平な縦方向ヤーン(2,2a,2b)のそれぞれは、少なくとも前記ウェブ側表面(P)上に傾斜した表面(4)として露出している、テキスタイル。
【請求項2】
前記縦方向ヤーン(2)の全ては、撚られている、請求項1記載のテキスタイル。
【請求項3】
前記撚られた状態の扁平な縦方向ヤーン(2)で形成された前記傾斜面(4)の各々は、前記ウェブ側表面(P)から見たときに少なくとも前記テキスタイル(1)の前記ウェブ側表面(P)のところに切頭円錐形のセグメント(6)の外面の形を有する部分として現れる、請求項1又は2記載のテキスタイル。
【請求項4】
前記テキスタイル(1)は、第1の長手方向縁と、第2の長手方向縁と、前記第1の長手方向縁と前記第2の長手方向縁との間において前記テキスタイル(1)の横方向(CMD)に延びる横方向ヤーン(3)と、を有し、
さらに、数本の隣り合う第1の縦方向ヤーン(2a)と第2の縦方向ヤーン(2b)を有し、前記第1の縦方向ヤーン(2a)及び前記第2の縦方向ヤーン(2b)は、互いに逆の横方向(CMD)の方へ撚られ、前記ウェブ側表面(P)上の扁平な前記第1の縦方向ヤーン(2a)の第1の表面(4)は、前記テキスタイル(1)の第1の長手方向縁に向かって傾けられ、扁平な前記第2の縦方向ヤーン(2b)の第2の表面(4)は、前記テキスタイル(1)の前記第2の長手方向縁に向かって傾けられている、請求項1~3のうちいずれか一に記載のテキスタイル。
【請求項5】
少なくとも前記テキスタイル(1)の前記ウェブ側表面(P)は、前記横方向(CMD)に溝(5)を有し、前記溝(5)は、前記横方向ヤーン(3)のところで露出している前記撚られた状態の扁平な縦方向ヤーン(2a,2b)で形成された隣り合う傾斜面(4)相互間に位置している、請求項1~4のうちいずれか一に記載のテキスタイル。
【請求項6】
前記テキスタイル(1)は、織布であり、前記テキスタイル(1)は、前記テキスタイル(1)が単一の層をなしているに過ぎない横方向ヤーン(3)を有するよう単一層構造を有し、
前記縦方向ヤーン(2,2a,2b)は、ツーシェッド(two-shed)織り構造を有する、請求項1~5のうちいずれか一に記載のテキスタイル。
【請求項7】
前記テキスタイル(1)は、抄紙機のドライヤ区分のためのドライヤファブリックである、請求項1~6のうちいずれか一に記載のテキスタイル。
【請求項8】
前記テキスタイル(1)は、パルプマシン用のパルプ支持ファブリックである、請求項1~6のうちいずれか一に記載のテキスタイル。
【請求項9】
工業用テキスタイルの使用であって、
請求項1~8のうちいずれか一に記載のテキスタイル(1)は、抄紙機、パルプマシン又は濾過機械に用いられ、
高圧流体スプレーが前記テキスタイル構造を洗浄するために前記テキスタイル(1)の前記ウェブ側表面(P)に差し向けられ、前記撚り状態の縦方向ヤーン(2,2a,2b)に当たった流体スプレーは、更に、前記傾斜面(4)から前記テキスタイル(1)の構造体中へ差し向けられる、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理機械において繊維ウェブを支持するようになった工業用テキスタイルに関する。工業用テキスタイルは、数本の縦方向ヤーン及び数本の横方向ヤーンから成る。
【0002】
本発明はまた、工業用テキスタイルの使用に関する。
【0003】
本発明の分野は、特に、独立形式の請求項の前提部に記載されている。
【背景技術】
【0004】
工業用テキスタイルは、ウェブ処理機械で用いられる。使用中、汚れや繊維が工業用テキスタイルの表面上に付着する場合があり、それにより工業用テキスタイルの特性が低下する。かくして、工業用テキスタイルは、定期的に又は連続的に洗浄される必要がある。しかしながら、公知の工業用テキスタイルの表面及び構造体の清浄化は、幾つかの問題をはらんでいることが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新規かつ改良型の工業用テキスタイル及びその使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の工業用テキスタイルは、第1の独立形式の装置クレームの特徴記載部分の特徴によって特徴付けられる。
【0007】
本発明の使用は、第2の独立形式の装置クレームの特徴記載部分の特徴によって特徴付けられる。
【0008】
開示された解決策の技術的思想は、工業用テキスタイルが数本の縦方向ヤーンを有し、これら縦方向ヤーンがこれらの長手方向軸線に対して撚られていることを特徴とする。撚られた状態の扁平な縦方向ヤーンは、少なくともウェブ側表面上に傾斜した表面として露出する。
【0009】
開示する解決策の利点は、テキスタイルの洗浄が向上することにより、その理由は、撚り状態の縦方向ヤーンに当たる流体スプレーが更にテキスタイルの傾斜面からテキスタイルの構造中に差し向けられるからである。テキスタイルのウェブ側表面は、流体スプレーの方向に垂直な表面を備えておらず、その代わりに、流体スプレーをテキスタイル中に効果的に差し向ける傾斜面を有する。また、この構造により、傾斜した状態の縦方向ヤーンは、横方向ヤーンに対して動くことができ、それにより汚れが機械的にほぐされる。開示する解決策はまた、本願において後で開示するように、流体スプレー切断実施形態で利用されたときに利益を有することができる。
【0010】
傾斜は、テキスタイルに過剰の本数のMD‐ヤーンを提供することによって達成でき、MD‐ヤーンは、CMD‐方向に十分な空間を有しておらず、それゆえに、MD‐ヤーンは、傾斜するよう強いられる。この作用効果は、余剰のヤーンを構造体に含ませることによって意図的に達成される。代替的に又は追加的に、テキスタイルは、CMD‐方向に縮められる場合があり、それにより平坦なMD‐ヤーンには横方向空間がなくなり、すると、MD‐ヤーンが傾斜する。
【0011】
一実施形態によれば、テキスタイルの縦方向ヤーンの全てが撚られる。
【0012】
一実施形態によれば、横方向に見て撚り状態の扁平な縦方向ヤーンを備えた少なくとも1つの区分を有する。かくして、一方又は両方の横方向縁部分に撚り状態のMD‐ヤーンを提供し又は変形例として中央横方向部分に撚り状態のヤーンを提供することが可能である。
【0013】
一実施形態によれば、撚られた状態の扁平な縦方向ヤーンで形成された傾斜面の各々は、ウェブ側表面から見たときに少なくともテキスタイルのウェブ側表面のところに切頭円錐形のセグメントの外面の形を有する部分として現れる。
【0014】
一実施形態によれば、テキスタイルは、数本の隣り合う第1の縦方向ヤーンと第2の縦方向ヤーンを有し、ヤーンは、互いに逆の横方向の方へ撚られる。次にウェブ側表面上の扁平な第1の縦方向ヤーンの第1の表面は、テキスタイルの第1の長手方向縁に向かって傾けられ、扁平な第2の縦方向ヤーンの第2の表面は、テキスタイルの反対側の第2の長手方向縁に向かって傾けられている。
【0015】
一実施形態によれば、隣り合う横方向ヤーンを比較すると、隣り合う撚り状態の扁平な縦方向ヤーンは、互いに逆の方向に撚られている。すると、隣り合うMD‐ヤーンは、テキスタイルのウェブ側表面上に傾斜面を露出させ、かかる傾斜面は、横方向に見て互いに逆の方向に向かって傾けられている。
【0016】
一実施形態によれば、隣り合う横方向ヤーンを比較すると、隣り合う撚り状態の扁平な縦方向ヤーンは、同一方向に撚られる。すると、隣り合うMD‐ヤーンは、テキスタイルのウェブ側表面上に傾斜面を露出させ、かかる傾斜面は、横方向に見て同一方向に向かって傾けられている。
【0017】
一実施形態によれば、少なくともテキスタイルのウェブ側表面は、横方向に数本の溝を有する。これらの溝は、横方向ヤーンのところで露出している撚られた状態の扁平な縦方向ヤーンで形成された隣り合う傾斜面相互間に位置する。横方向溝は、ウェブ側表面に方向性のある開放空間を提供し、それにより、洗浄液が溝内を流れることができる。それにより、テキスタイル中への洗浄液の浸入度を増大させることができる。溝はまた、空気乾燥装置の作用効果を向上させ、テキスタイルのより効率的な乾燥を洗浄作業後に達成することができる。これらの溝は、テキスタイルの縁から縁へ横方向に延びても良く、又はこれらの溝は、短い長さを有しても良い。しかしながら、溝の長さは、好ましくは、少なくとも洗浄装置の吹き付けユニットの幅又は空気乾燥装置のブロワユニットの幅に一致すべきである。
【0018】
一実施形態によれば、テキスタイルは、織布である。
【0019】
一実施形態によれば、テキスタイルは、巻き構造体である。
【0020】
一実施形態によれば、テキスタイルは、織布であり、テキスタイルは、テキスタイルが単一の層をなしているに過ぎない横方向ヤーンを有するよう単一層構造を有する。さらに、縦方向ヤーンは、ツーシェッド(two-shed)織り構造を有する。
【0021】
一実施形態によれば、工業用テキスタイルは、抄紙機のドライヤ区分のためのドライヤファブリックである。
【0022】
一実施形態によれば、工業用テキスタイルは、抄紙機のフォーミング区分用のフォーミングファブリックである。
【0023】
一実施形態によれば、工業用テキスタイルは、濾過装置用のフィルタファブリック又は濾過材である。濾過機械は、ベルト型フィルタであるのが良く、ベルト型濾過材は、本願に開示するように数本の撚り縦方向ヤーンから成る。
【0024】
一実施形態によれば、工業用テキスタイルは、パルプマシン用のパルプ支持ファブリック又はテキスタイルである。
【0025】
一実施形態によれば、工業用テキスタイルは、パルプマシン用のパルプ支持ファブリック又はテキスタイルであり、支持ファブリックは、支持ファブリック上に支持された繊維ウェブの表面への印付けを意図的に生じさせるよう構成されている。かくして、支持ファブリックは、摩擦を増大させるために繊維ウェブの底面に対して付与されるトポロジーを生じさせることができる。摩擦の増大には、走行性を向上させるとともに支持ファブリックの制御性を高めることができる。
【0026】
一実施形態によれば、テキスタイルは、対称の構造を有する。
【0027】
一実施形態によれば、テキスタイルのウェブ側表面とロール側表面は、同一であり、これら表面は、同一の表面特性を有する。
【0028】
一実施形態によれば、テキスタイルは、多くの接触点を有するとともに極めて小さい表面接触領域を有する。同一テキスタイル中におけるこれら2つの特徴の組み合わせにより、このテキスタイルは、独特のものとなっている。テキスタイルは、1平方センチメートル当たり少なくとも60個の接触点、好ましくは1平方センチメートル当たり少なくとも64個の接触点を有する。多数の接触点は、熱伝達を向上させるとともに印付けを回避し、というのは、ウェブは、良好に支持されているからである。注目されたこととして、小さい表面接触面積を有するテキスタイルは、洗浄するのが容易である。したがって、テキスタイルの表面接触面積は、10~20%であるのが良い。さらに、テキスタイルのウェブ側表面は、表面接触面積が初期値から増大するよう処理され又は仕上げられるのが良い。ウェブ側表面は、例えば研磨され又はプレス加工されるのが良い。かかる処理は、接触点の数に影響を及ぼさない。
【0029】
一実施形態によれば、テキスタイルは、多数の接触点を有するとともに比較的大きな表面接触面積を有する。この種のテキスタイルは、従来方式で特別な用途に使用可能である。この実施形態では、多数の接触点は、上述の実施形態に開示されているものであるのが良く、テキスタイルの表面接触面積は、50%以上であるのが良い。
【0030】
一実施形態によれば、テキスタイルの厚さは、1.4mm未満、好ましくは1.3mm未満である。工業用テキスタイルの有効キャリパが小さい場合、テキスタイルの洗浄及び乾燥は、容易である。
【0031】
一実施形態によれば、縦方向ヤーンは、モノフィラメントヤーンである。さらに、縦方向ヤーンの断面は、長方形又は実質的に長方形であるのが良い。縦方向ヤーンの幅は、0.6mm以上であるのが良く、その高さは、0.4mm以下であるのが良い。
【0032】
一実施形態によれば、横方向ヤーンの断面は、丸形である。丸形CMD‐ヤーンは、テキスタイル内の洗浄流体の流れが丸形ヤーンの湾曲した表面によって効果的に差し向けられるので、有利である。それにより、丸形ヤーンは、テキスタイルの洗浄に対して積極的な影響を及ぼすことができる。さらに、丸形CMD‐ヤーンにより、扁平なMD‐ヤーンは、CMD‐ヤーンに対して僅かに動くことができ、それにより機械的な汚れ除去もまた起こることが可能である。
【0033】
一実施形態によれば、隣り合う横方向ヤーンの寸法は、互いに実質的にほぼ同じである。
【0034】
一実施形態によれば、隣り合う横方向ヤーンの寸法は、互いに異なる。このように、テキスタイルのウェブ側表面は、比較的粗い構造を有するのが良い。粗い表面は、自由空所を有する場合があり、それによりテキスタイルの洗浄が容易である。
【0035】
一実施形態によれば、横方向ヤーンは、強度に縮むヤーンであり、それにより、テキスタイルの表面処理は、テキスタイルの横方向収縮を生じさせるよう構成され、その結果、隣り合う縦方向ヤーンは、互いに対して密接して動かされるようになる。収縮は、MD‐ヤーンの撚りを生じさせることができる。
【0036】
一実施形態によれば、縦方向ヤーン密度は、220~230・1/10cmである。さらに、ワープ(warp)カバーは、180%にも及ぶのが良く、これは、少なくともテキスタイルの単一の層については極めて高い値である。テキスタイルは、たった1つの単一層を有するのが良いが、研究例として、テキスタイルは、撚りMD‐ヤーンが巻き付けられた支持基部を有しても良い。
【0037】
一実施形態によれば、横方向ヤーン密度は、60・1/10cmである。
【0038】
一実施形態によれば、上記において開示した工業用テキスタイルは、テキスタイル上に支持されたウェブの1つ又は2つ以上の縁部分を切断するための少なくとも1つの水又は流体切断装置を有する処理機械で利用されるのが良い。テキスタイルは、上記において開示した原理に従って撚りMD‐ヤーンを含む。少なくとも高い切断流体スプレーを受ける縁部分のところには、撚りMD‐ヤーンが設けられ、又は変形例として、MD‐ヤーンの全てが撚られても良い。撚りMD‐ヤーンは、切断スプレーの方へ向いた傾斜面を有するので、撚りヤーンは、高い流体スプレーのために分割されることはなく又は違ったやり方で損傷を受けることはない。さらに、切断水は、ウェブ中に浸透された後、傾斜ヤーン及び十分な数の開いた空所を有する支持テキスタイル中に流動中に差し向けられる。したがって、切断水は、跳ねかけられることはない。この実施形態により、スプレー切断は、効果的に実施でき、切断縁は、良好な品質を有する。
【0039】
必要な特徴を備えた適当な解決策を得るために上記において開示した実施形態を組み合わせることができる。
【0040】
添付の図面には幾つかの実施形態が詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】シームを備え、それにより無端ループの形状を有する工業用テキスタイルの概略斜視図である。
図2】工業用テキスタイルの幾つかの特徴を提供する略図である。
図3】工業用テキスタイルのウェブ側表面の略図である。
図4】縦方向に見た工業用テキスタイルの概略断面図である。
図5】工業用テキスタイルの2本の隣り合う縦方向ヤーンを示す概略平面図である。
図6】工業用テキスタイルの縦方向ヤーンの概略側面図である。
図7】1枚の工業用テキスタイルのウェブ側表面の表面トポグラフィの概略平面図である。
図8】別の1枚の工業用テキスタイルのウェブ側表面の表面トポグラフィの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
分かりやすくするために、図は、開示する解決策である幾つかの実施形態を概略的に示している。図中、同一の参照符号は、同一の要素を示している。
【0043】
図1は、実現可能な工業用テキスタイル1の幾つかの基本的な特徴を示している。工業用テキスタイル1は、縦方向ヤーン2及び横方向ヤーン3から成る織り構造体であるのが良く、これらヤーン2,3は互いに交差している。工業用テキスタイルは、平織りされたファブリックであるのが良く、そのシームの端部SE1,SE2は、ウェブ処理機械上に取り付けられたときにシームSを形成するために互いに連結されるのが良い。工業用テキスタイル1は、縦方向MDに延びるよう構成されている。工業用テキスタイル1は、ウェブ側表面Pを有し、処理されるべきウェブは、このウェブ側表面Pに当てて処理機械上に配置される。反対側の面は、ロール側表面であり、このロール側表面は、処理機械のロール及び他の機械要素に当てられる。
【0044】
図2は、工業用テキスタイルが織成によって形成されるのが良いことを示す略図であり、あるいは、変形例として、工業用テキスタイルは、不織技術、例えば巻回を利用することによって形成されても良い。図2はまた、工業用テキスタイルが種々のウェブ処理機械、例えば抄紙機、濾過機械及びパルプマシンで使用されることを示している。
【0045】
図3は、工業用テキスタイル1のウェブ側表面Pを示している。テキスタイル1は、数本の扁平な縦方向ヤーン2及び数本の横方向ヤーン3から成る。縦方向ヤーン2の断面は、実質的に長方形であるのが良く、横方向ヤーン3の断面は、丸形であるのが良い。縦方向ヤーン2は、これらの長手方向軸線に対して撚られ、それにより、これら縦方向ヤーンは、ウェブ側表面P上に傾斜面4として露出している。注目できるように、隣り合う第1のMD‐ヤーン2aと第2のMD‐ヤーン2bは、互いに逆の横方向に向かって撚られている。それにより、ウェブ側表面は、扁平な第1の縦方向ヤーン2aの傾斜した第1の表面及び扁平な第2の縦方向ヤーン2bの傾斜した第2の表面を有する。互いに逆方向に差し向けられた傾斜面4相互間には、横方向溝5が設けられ、これらの溝5は、破線で図3に示されている。
【0046】
CMD‐ヤーンの全ては、ほぼ同じヤーンであるのが良く、しかも同一の断面積を有するのが良い。変形例として、互いに異なる断面積及び/又は互いに異なる断面形状を有する2種類のCMD‐ヤーンを用いることが可能であり、その目的は、テキスタイル1の表面に更に一層開いた構造を提供することにある。図3には、破線3aによって、太いCMD‐ヤーンが示され、かかる太いCMD‐ヤーンは、細いCMD‐ヤーン3と交互に位置している。変形例として、丸形断面を有するCMD‐ヤーンと扁平な断面を有するCMD‐ヤーンが表面上の自由空所を増加させるためにテキスタイル構造中に交互に位置しても良い。
【0047】
さらに、上記において開示した課題がMD‐ヤーンにも適応されても良く、それにより、扁平なMD‐ヤーンの断面積及び/又は断面形状は、テキスタイルの開放表面を増加させるために様々であるのが良い。かくして、隣り合う扁平でありかつ撚られたMD‐ヤーンの寸法は、特定の場合に互いに異なっていても良くかつ断面形状は様々であって良い。
【0048】
図3は、工業用テキスタイルが織成パターンを有するのが良いことを更に開示しており、MD‐ヤーン2は、1本のCMD‐ヤーン3の上方を通り、1本の隣接のCMD‐ヤーンの下を通り、そしてこのツーシェッド(two-shed)又は平織りパターンを更に繰り返す。このように、開示した工業用テキスタイル1は、対称の一層構造を有するのが良く、この場合、撚りMD‐ヤーン2は、テキスタイルの両方の表面上に傾斜面4として露出する。それにより、ロール側表面Rもまた、横方向溝5を有するのが良い。両方の表面が溝を備える場合、テキスタイル構造体を通る洗浄液の流れを増大させることができ、洗浄結果が向上する。
【0049】
図4は、工業用ファブリックがウェブ側表面P上に並びにロール側表面R上に傾斜表面4を有することを示している。縦方向ヤーン2は、図4で明確に理解できるようにこれらの長手方向軸線に対して撚られている。この構造体は、第1のMD‐ヤーン2a及び撚り状態の第2のMD‐ヤーン2bを含み、これらのヤーンの撚り方向は、互いに逆である。かくして、MD‐ヤーン2a,2bの別々の傾斜面4は、テキスタイル1のP,R上で交互に位置する。洗浄液流れ又はフラッシング流れFFが高圧でテキスタイルのウェブ側表面に当てられる場合、この流れは、MD‐ヤーン2a,2bの傾斜面4からテキスタイルの内側構造体の方へ差し向けられ、そしてかかる流れは、表面Pから遠ざかってランダムには跳ねかけられない。液体洗浄段階後、ドライヤ空気流をウェブ側表面Pに当てることによってテキスタイルを乾燥させるのが良い。傾斜面4もまた、空気流をテキスタイル構造体中に差し向ける。傾斜面4により、液体及び空気の流れ中に含まれている洗浄エネルギーは、蓄積した汚れ及び繊維をテキスタイル構造体から除去するようより効果的に利用される。かくして、工業用テキスタイルの特性を回復させることができ、テキスタイルの動作寿命は、公知の解決策の場合よりも長くなることが可能である。さらに、洗浄エネルギーがテキスタイル中に効果的に差し向けられるので、洗浄液スプレーに低い圧力を利用することができる。低い圧力(300bar)を利用する洗浄ユニットは、極めて高い圧力(500~600bar)を発生させる洗浄ユニットと比較して、信頼性が高く、しかもより安価である。追加の利点は、低い圧力を有する洗浄水ジェットがテキスタイル1のヤーン2,3の構造を損傷させないことである。
【0050】
図5は、工業用テキスタイル1の2本の隣り合う縦方向ヤーン2a,2bを示している。MD‐ヤーン2a,2bは、互いに逆方向に撚られ、それにより、ウェブ側表面P上のこれらの傾斜面4もまた、互いに異なる方向に差し向けられている。さらに、扁平な撚り縦方向ヤーンで形成された傾斜面4は、切頭円錐形のセグメント6の外面の形状を有する部分として現れ、かかる形状は、破線で示されている。
【0051】
図6は、縦方向ヤーン2の側面図である。MD‐ヤーン2は、テキスタイルの織成力又は他の製造上の力によって、また場合によっては、CMD‐ヤーンの強い収縮によって生じる横方向力によっても永続的に変形している。
【0052】
図7及び図8は、2枚の工業用テキスタイル1のウェブ側表面Pの表面トポロジーの概略平面図である。潜在的な表面接触点及び表面領域が明るい色を用いることによって図7及び図8に示され、暗い色は、非接触領域、すなわち、表面上の空所容積部8を示している。図7から注目できることとして、接触領域は、工業用テキスタイル1の全表面の約50%を占める。図8では、工業用ファブリック1は、約10%の表面接触領域を有する。両方の実施形態において、接触点の数は、極めて多く、そして依然として、表面接触領域は、少ない。
【0053】
図面及び図面と関連した明細書は、本発明の技術的思想を説明するに過ぎない。本発明の細部は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で様々であって良い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8