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特許7023858多層膜を製造するための方法、紡糸口金およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】多層膜を製造するための方法、紡糸口金およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/12 20060101AFI20220215BHJP
   D01D 5/24 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
B01D69/12
D01D5/24 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018549503
(86)(22)【出願日】2017-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2017056500
(87)【国際公開番号】W WO2017162554
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-03-17
(31)【優先権主張番号】16161384.9
(32)【優先日】2016-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521153205
【氏名又は名称】デュポン セイフティー アンド コンストラクション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】メノ ボス
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヘイネン
(72)【発明者】
【氏名】ナタリア ウィジョジョ
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0256214(US,A1)
【文献】特開平06-339617(JP,A)
【文献】国際公開第2007/007051(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/032808(WO,A1)
【文献】特開昭56-009424(JP,A)
【文献】特開昭62-102801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
B01D 53/22
C02F 1/44
D01D 1/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
限外ろ過用途のための多層マルチボア膜(20)を製造する方法であって、
(a)基材(12)の少なくとも1つの材料、機能層(14)の材料、前記機能層の材料とは異なる追加の機能層(15)の材料およびボア流体(36)を紡糸口金(30)に同時に供給する工程と、
(b)膜(10、20)を、前記紡糸口金(30)で管状ストリング(54)として一段階のプロセスで形成する工程と、
(c)それによって前記機能層(14)及び前記追加の機能層(15)に機能性を割り当てる工程と、
を含み、
前記基材(12)の内面(13)に前記機能層(14)が適用され、前記基材(12)の外面(17)に前記追加の機能層(15)が適用され、その結果、前記機能層(14)が、液体を処理またはろ過するためのいくつかのボア(16)を取り囲んでいる、方法。
【請求項2】
前記管状ストリング(54)は、沈殿浴(38)および/または凝固浴(52)を通って案内される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記管状ストリング(54)は、前記沈殿浴(38)および/または前記凝固浴(52)の下流に配置された水スプレー(64)に供給される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記基材(12)にはいくつかの孔が配列されており、
前記基材(12)の前記内面(13)は、前記孔の中心を向いた該孔の側面における面積の合計である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記基材(12)の前記材料は第1のポリマーを含み、前記機能層(14)の前記材料は第2のポリマーを含み、前記第1および第2のポリマーは互いに異なっている、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記機能層(14)の機能性及び前記追加の機能層(15)の機能性は、防汚機能および/またはイソポーラス機能である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
多層マルチボア膜(20)を製造するための紡糸口金(30)であって、該紡糸口金(30)は、
ボア流体(36)のための中央供給部(80)を含む中央部分(70)と、
機能層(14)の材料のための第2の供給部(78)を含む円錐形部分(72)と、
基材(12)の材料のための第1の供給部(76)を含む下側部分(74)と、
を有し、前記紡糸口金(30)の前記部分(70、72、74)の各々は、個別の供給部(76、78、80)を含み、
前記紡糸口金(30)は、前記機能層(14)の材料とは異なる、追加の機能層(15)の材料のための第3の供給部を含む周囲部分を有し、
前記中央部分(70)、前記円錐形部分(72)、前記下側部分(74)および前記周囲部分は、前記ボア流体(36)のための管部(86)を形成し、
前記機能層(14)の材料を供給することができる内側漏斗部(82)が前記中央部分(70)と前記円錐形部分(72)との間に画成され、
前記基材(12)の材料を供給することができる外側漏斗部(84)が前記円錐形部分(72)と前記下側部分(74)との間に画成され、
前記追加の機能層(15)の材料を供給することができる周囲漏斗部が前記下側部分(74)と前記周囲部分との間に画成され、
前記管部(86)は、各々前記中央供給部(80)の下側から延び、前記下側部分(74)の下側で終わる複数の単一管(87)を含む、紡糸口金(30)。
【請求項8】
前記円錐形部分(72)は、前記第1の供給部(76)の反対側に配置された第1の環状チャネル(88)を含む、請求項7記載の紡糸口金(30)。
【請求項9】
前記中央部分(70)は、前記第2の供給部(78)の反対側に配置された第2の環状チャネル(90)を含む、請求項7または8記載の紡糸口金(30)。
【請求項10】
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法を用いて、多層マルチボア膜(20)を製造するためのシステムであって、
第1の材料分配ステーション(42)と、
第2の材料分配ステーション(44)と、
第3の材料分配ステーション(46)と、
請求項7から9までのいずれか1項記載の紡糸口金(30)と、
沈殿浴(38)および/または凝固浴(52)と、
水スプレー(64)と、
を含むシステム。
【請求項11】
前記凝固浴(52)は、前記管状ストリング(54)の搬送方向(58)で前記紡糸口金(30)の下流に配置された偏向要素(56)を含む、請求項10記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、限外ろ過用途、特に水処理用途のための多層シングルボア膜または多層マルチボア膜を製造するための方法、紡糸口金およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,141,642号明細書は、芳香族ポリイミド二重層中空糸膜およびその製造方法に関する。中空フィラメント状微孔質内層は、無機溶媒に可溶な第1の芳香族イミドポリマーから実質的に構成されており、その長手軸に沿って形成された厚さ10μm~500μmのフィラメント状の空洞を備えている。また、管状フィラメント状非対称外層は、有機溶媒に可溶な第2の芳香族イミドポリマーから実質的に構成されており、かつ中空フィラメント状微孔質内層の外面を被覆してこれと一体化された厚さ2μm~200μmの管状フィラメント状微孔質中間層と、管状フィラメント状微孔質中間層を被覆してこれと一体化された厚さ1μm以下の緻密な外面層とを有する。
【0003】
米国特許第5,141,642号明細書によれば、以下の工程を含む芳香族ポリイミド二重中空フィラメント状膜を製造する方法が開示されている。
(1)有機溶媒に可溶な第1の芳香族イミドポリマーの第1の紡糸原液を、有機溶剤中に5質量%~35質量%の濃度で中空フィラメント紡糸ノズルの内側環状押出口に供給する工程。
(2)有機溶媒に可溶な第2の芳香族イミドポリマーの第2の紡糸原液を、有機溶媒中1質量%~25質量%の濃度で内側環状押出開口部の周囲に同心円状に形成された外側環状押出開口部に供給する工程。ここで、第1の紡糸原液中の第1の芳香族イミドポリマーの濃度は、第2の紡糸型溶液中の第2の芳香族イミドポリマーの濃度を上回る0.5質量%~10質量%である。
(3)第1および第2の紡糸原液を、それぞれ、内側および外側の環状押出開口部を通して同時に押出しながら、第1および第2の紡糸原液の押出された第1および第2の中空フィラメント流を同時にドラフトして、第1および第2の中空フィラメント流を互いに同心円状に一体化させて、二重層の中空フィラメント流にする工程。
(4)二重層中空フィラメント流を凝固液に接触させて、二重層流を固化し、芳香族ポリイミド二重層中空フィラメント膜を形成する工程。ここで、芳香族ポリイミド二重中空膜は10μm~500μmの厚さの内層を有し、中間層は2μm~200μmの厚さを有し、かつ緻密な外面層は1μm以下の厚さを有する。
【0004】
米国特許第4,713,292号明細書は、多層複合中空糸およびその製造方法に関する。多層複合中空糸は、分離機能を果たす少なくとも1つの非多孔質分離膜層(A)と補強機能を果たす2つ以上の多孔質層(B)とを含み、層(A)と層(B)とを交互に積層することにより、多孔質層(B)によって形成される内面および外面を有する構造が得られる。
【0005】
特開昭62-019205号公報は、限外ろ過膜の製造に関する。層間剥離耐性および十分な防汚性を有する複合膜タイプの限外ろ過膜を、表面の必要な部分に製造するために、少なくとも2種類の原液が同時に押し出される。原液は、乾式法/湿式法によってゲルへと変えられる。
【0006】
高分子多孔質膜は、非極性基を有する高分子ポリマーと極性基を有する高分子ポリマーとの組み合わせから形成され、好ましくはポリスルホンとスルホン化ポリスルホンとの組み合わせから形成される。適切なスルホン化ポリスルホンは、ポリマー1反復単位あたり0.5W1のスルホン化度を有するものである。適切な溶媒は、使用される双方のポリマーを溶解可能であり、かつゲル化浴で使用される水と相溶性のものである。原液の適切な濃度は、15質量%~25質量%である。流延は、下端の高さが互いに異なるノズル壁で区切られた互いに隣接するノズルから原液AおよびBを移動させることにより行われる。
【0007】
米国特許第4,802,942号明細書は、多層複合中空糸の製造方法に関するものである。開示された方法によれば、多層複合中空糸は、(a)分離機能を果たす少なくとも1つの非多孔質分離膜層および(b)補強機能を果たす少なくとも2つの多孔質層を含み、層(A)および層(B)は、交互に積層されて、層(B)によって形成された内面および外面を有する構造体をもたらし、以下の工程、すなわち
(i)(a)非結晶性ポリマー、(b)ポリマー(B’)よりも低い融点を有する結晶性ポリマー、(c)ポリマー(B’)のメルトインデックスよりも高いメルトインデックスを有する結晶性ポリマーおよび(d)分離膜層を形成する溶媒または可塑剤と、紡糸ポリマー(B’)の2層間に紡糸ポリマー(A’)を挟む多重管構造の紡糸ノズルを通して多孔質層を形成する結晶性ポリマー(B’)とを含有する結晶性ポリマーからなる群から選択されるポリマー(A’)を共紡糸し、それによって複合中空糸を形成する工程と、
(ii)得られた中空糸を延伸し、それによって層(A)を非多孔質にしながら、層(B)に多孔性を付与する工程と、
を含む。
【0008】
特開2002-251232号公報は、2層ポリイミド中空糸膜およびその製造方法に関する。耐圧性およびガス透過速度を高めるために、中空糸膜は、均一な外面層と、微細な多孔質層が外面層と一体的にかつ連続して形成された芳香族ポリイミドの非対称外層と、芳香族ポリイミドの微細な多孔質内層とで構成されている。
【0009】
糸スピンノズル、外側円形開口部と内側円形開口部とコア開口部とで構成された同心円状の開口部を有する糸紡績装置を用いることによって、1質量%~25質量%の可溶性芳香族ポリイミドAを含有する有機極性溶媒の均一な溶液が、外側円形開口部に供給される。その間に、5質量%~35質量%の可溶性芳香族ポリイミドBを含有する有機極性溶媒溶液が、内側円形開口部に供給され、これらの2つのポリイミド溶液は、同時に2層構造の中空糸に押し出される。この中空糸を凝固液と接触させることにより、2層構造の中空糸膜が得られる。
【0010】
米国特許第5,620,790号明細書は、一体化された予備ろ過層を有する多層精密ろ過膜およびその製造方法に関する。米国特許第5,620,790号明細書に開示された方法によれば、多層の支持されていない一体型精密ろ過膜を製造する方法は、ポリマー材料の溶液の第1の層を基材上に注ぎ、続いて直前の層の濁りが生じる前に、ポリマー材料の溶液の1つ以上のさらなる層を、第1の層の上に連続的に注ぎ、ここで、ポリマー材料の溶液の各連続層の粘度は前の層と同一またはそれより低く、最後にこうして製造された膜を洗浄し、続いて膜を乾燥させる工程を含む。
【0011】
国際公開第01/89673号は、多層構造を形成する方法に関する。開示された方法によれば、一体型多層多孔質膜は、複数のポリマー溶液を支持体上に同時に共流延して多層液状シートを形成し、このシートを液体凝固浴に浸漬して相分離を生じさせて多孔質膜を形成することにより製造される。支持体は、一時的な支持体であってもよいし、膜の一体型支持体を形成してもよい。複数の層が、同じまたは異なるポリマーであってよく、同じまたは異なる濃度または粘度であってよいか、あるいは同じまたは異なる加工条件に付されて固有の構造を形成してもよい。
【0012】
現在の生産シナリオによれば、コーティングまたはグラフトによって新しい機能性が膜表面に組み込まれるという点で、膜製造後に追加の工程が必要とされる。他の方法によれば、バルク膜材料は、膜自体が製造される前に親水性が向上するように改変される。このような手法の欠点は、親水性が高められた膜は機械的強度が低い傾向にあり、したがって全体的なバルク改質によって膜強度が大幅に低下することになるという事実である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題の1つは、膜、特にシングルボア膜またはマルチボア膜などの水処理用の膜の耐久性、耐塩素性および堅牢性を高めることである。
【0014】
本発明のさらなる課題は、シングルボア膜またはマルチボア膜が寿命にわたり層間剥離を起こさないようにすることである。本発明のさらなる課題は、バルク材料の改質を回避することである。
【0015】
本発明のさらなる課題は、防汚性を膜表面に付与し、イソポーラス(isoporous)層を作り出し、かつ高性能であるが高価な材料を薄層上で少量しか使用せずに済むようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、
(a)基材の少なくとも1つの材料、機能層の少なくとも1つの材料およびボア流体を紡糸口金に同時に供給する工程と、
(b)膜を紡糸口金内で一段階の押出プロセスで管状ストリングとして形成する工程と、
(c)それによって基材の少なくとも1つの表面に適用された機能層に機能性を割り当てる工程と、
を含む、限外ろ過用途のための多層シングルボア膜または多層マルチボア膜の製造方法が開示される。
【0017】
この方法によれば、一段階の押出プロセスが確立される。機能層の少なくとも1つの材料は、薄膜にのみ集中しており、この薄膜が、基材の少なくとも1つの表面に適用される機能層を形成し、このようにしてより高い効率が得られる。機能性を有する材料が薄層にのみ集中しているため、結果として有利には材料コストが削減される。本発明による方法によって、限外ろ過適用プロセスなどの各用途に必要な目的に応じて機能層を調整できるような融通性がもたらされる。
【0018】
本発明の有利な実施形態によれば、機能層が基材の内面に適用され、追加の機能層が基材の外面に適用される。このように、形成された膜は、3つの層、すなわち、基材およびこの基材の両面に適用された2つの機能層を含む。
【0019】
さらに、1つ以上の機能層を、基材の表面に直接適用される別の機能層に適用することができる。したがって、形成された膜は、少なくとも2つの層、すなわち基材および機能層を含むが、任意の数の層を含んでもよいので、任意の数は2以上である。
【0020】
さらに、本発明は、バルク材料特性の変更、すなわち、本発明に従って基材が製造される材料の特性の改変を回避する。防汚対策の現行の手法にはいくつかの欠点がある。すなわち、防汚添加剤がバルク材料中に一定時間残留するか、またはバルク材料の改質が全体的な機械的強度の低下および材料費の増加につながり、表面改質は、コーティングおよび調整プロセス後の孔径の望ましくない減少につながる。そのため、本発明は、防汚目的のための現行の手法に伴う上記の欠点を排除する製造プロセスを、例を挙げて提供する。
【0021】
本発明の方法のさらなる態様によれば、紡糸口金内に形成された管状ストリングは、沈殿浴および/または凝固浴に供給または誘導される。それに加えて、あるいはこれに代えて、管状ストリングは、凝固浴または沈殿浴の下流に配置された水スプレーに供給される。
【0022】
本発明によれば、基材の材料は第1のポリマーを含むのに対して、機能層の材料は第2のポリマーを含み、第1のポリマーおよび第2のポリマーは互いに異なっている。
【0023】
防汚機能を実現するための現行の手法は、防汚添加剤、すなわちPESU-b-PEGMA、例えば親水性添加剤を添加することであった。これらの添加剤は、表面に移行し、PESU材料のバルク性を同一に維持し得る。一方、一定量の親水性添加剤がバルク材料に残るため、この親水性添加剤は効果がない。
【0024】
さらなる手法は、バルク材料の改変、すなわちPESUのスルホン化である。これはドロップイン溶液またはワンステップ紡糸のいずれかで確立することができ、かつ親水性基の充填密度を高める。一方、バルク材料の改質は、全体的な機械的強度の低下および材料費の高騰を伴う。
【0025】
防汚機能を実現するためのさらなる手法は、表面改質、例えば、PESU材料のポリドーパミンコーティングまたはポリドーパミンコンディショニングである。これは膜表面でしか行われないので、かなり効果的であると考えられる。一方で、材料の孔径は、しばしばコーティング後に減少し、調整を必要とするが、これはかなり煩雑であり、他方では、コーティングは、深い浸透を避けるために最適化されるべきである。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、機能層の機能性は、上記のような防汚機能である。この機能を機能層に割り当てることにより、汚れは大幅に減少する。汚れは、ろ過の高エネルギー消費要因となる。膜の汚れは、ろ過ケーキの一部が膜の細孔に移行する過程で発生する。汚れのプロセスは、通常、特に限外ろ過用途にとって非常に不利な孔径の減少を伴うので、本発明は、この問題に対する解決策を本明細書で提供する。
【0027】
本方法の一実施形態では、防汚機能に関する機能層は、PESU-b-PEGMAを含む。
【0028】
さらに別の実施形態は、sPPSUの機能性を含むことである。
【0029】
機能層のさらに別の実施形態は、PS-b-PEGMAを含む。
【0030】
別の実施形態では、本発明による機能層の機能性は、イソポーラス機能である。このイソポーラス機能の一例は、S/DPE-b-4-Vpyである。
【0031】
本発明の別の態様によれば、少なくとも
中央部分と、
円錐形部分と、
下側部分と、
を有する、本発明による方法を用いて多層シングルボア膜または多層マルチボア膜を製造するための紡糸口金であって、紡糸口金の部分の各々が個別の供給部を含む、紡糸口金が開示される。マルチボア紡糸口金の場合、この紡糸口金は、現行のマルチボア膜のバルク特性を変えることなく、一段階の押出プロセスを介して追加の機能層を製造する。基材上の追加の機能層には、防汚性の付与および孔径の制御の利点がある。マルチボア紡糸口金の場合、マルチボア膜上に機能層を追加するさらなる工程は、簡素化されて、わずか一段階のプロセスに削減される。さらに、マルチボア紡糸口金は、膜表面上に機能層の機能性を集中させることができる。
【0032】
特に、多層膜の各層ごとに個別の供給部が準備される。
【0033】
本発明による紡糸口金の有利な実施形態によれば、中央部分は、ボア流体のための中央供給部を含む。本発明による紡糸口金の円錐形部分は、機能層の材料、例えば第2のポリマーのための第2の供給部を含む。さらに、本発明による紡糸口金の下側部分は、基材、例えば第1のポリマーの材料のための第1の供給部を含む。紡糸口金は、周囲部分を有してよく、周囲部分は、追加の機能層の材料のための第3の供給部を含む。
【0034】
取り付けた状態、すなわち、本発明による紡糸口金を組み立てた状態では、紡糸口金の内側漏斗部は、中央部分と円錐形部分との間に画成されている。内側漏斗部に、機能層の材料、例えば第2のポリマーを供給することができる。
【0035】
一方、本発明による紡糸口金は、円錐形部分と下側部分との間に画成される外側漏斗部を含み、これに基材の材料を供給することができる。
【0036】
本発明による紡糸口金は、下側部分と周囲部分との間に画成された周囲漏斗部を含んでよく、これに追加の機能層の材料を供給することができる。
【0037】
紡糸口金を組み立てた状態では、外側部分、円錐形部分、下側部分、および存在する場合は周囲部分が、ボア流体のための管部を形成する。
【0038】
関連材料の供給部の最適化を行うために、本発明による紡糸口金の円錐形部分は、特に第1のポリマーのための、第1の供給部の反対側に配置された第1の環状チャネルを含む。さらに、紡糸口金の中央部分は、特に第2のポリマーのための、第2の供給部の反対側に配置された第2の環状チャネルを含む。この実施形態によって、第1および第2のポリマーの流動特性がそれぞれ考慮され、それにより材料の均一な分配、すなわち、第1のポリマーおよび第2のポリマーの均一な分配が、それぞれ内側および外側漏斗部に対して確実になされる。
【0039】
本発明のさらなる態様によれば、本発明による方法を用いる多層シングルボア膜または多層マルチボア膜を製造するためのシステムであって、
第1の材料分配ステーションと、
第2の材料分配ステーションと、
第3の材料分配ステーションと、
本発明による紡糸口金と、
沈殿浴および/または凝固浴と、
水スプレーと、
を含むシステムが開示される。
【0040】
その構成要素が上記されている本発明によるシステムは、多層シングルボア膜または多層マルチボア膜を管状ストリング形状の無限のコードとして製造することを可能にし、その紡糸口金の出口の下流は、沈殿浴または凝固浴のいずれかに供給され、その双方の浴は紡糸口金の出口の下流に配置されている。
【0041】
凝固浴には、有利には多数の偏向要素が配置されており、これらは、管状ストリングの搬送方向で紡糸口金の下流に位置する。
【0042】
本発明の主題は、添付の図面に関連してより詳細に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、多層シングルボア膜を示す。
図2図2は、多層マルチボア膜を示す。
図3図3は、多層シングルボア膜を製造する大まかなプロセスを示す。
図4図4は、多層シングルボア膜または多層マルチボア膜を製造するためのシステムの構成要素を示す。
図5図5は、本発明による紡糸口金の断面図を示す。
図6図6は、図5による紡糸口金の側面図を示す。
図7図7は、図5による紡糸口金の下側の図を示す。
図8図8は、図7による紡糸口金の下側の出口開口部の詳細を示す。
図9図9は、内側および外側漏斗部をより詳細に示す紡糸口金の断面図を示す。
図10図10は、互いに隔てられた際の紡糸口金の構成要素の分解図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、多層シングルボア膜10を示す。
【0045】
図1による多層シングルボア膜10は、内面13と外面17とを有する環形状の基材12を含む。ここで、内面13は、環形状の基材12の中心を向き、外面17は、環形状の基材12の外側を向いている。内面13には、機能層14の材料が適用されている。機能層14は、液体を処理または濾過するためのボア16を取り囲んでいる。
【0046】
ここで挙げたシングルボア膜10は、ちょうど2つの層、すなわち基材12および機能層14を含む。しかしながら、基材12の外面17に別の機能層14を適用してもよい。さらに、基材12の内面13または外面17に直接適用された機能層14に、1つ以上の機能層14を適用することができる。したがって、シングルボア膜10は、例えば3つ、4つ以上の層を含み得る。
【0047】
基材12の材料は、機械的支持を与えかつバルク材料であるPESU材料などの第1のポリマーである。機能層14の材料は、防汚機能および/またはイソポーラス機能を取り入れている。本発明によれば、機能層14の材料は、比較的薄い層厚に集中しているので、一方では高効率であり、他方ではより低い材料コストを実現することができる。機能層の特性に応じて機能性が付与されるように選択可能な材料によって、想定される用途、例えば限外ろ過用途に応じて機能層14の材料を調整できるような高い融通性がもたらされる。機能性を有する材料、すなわち機能層14は、基材12の材料とは無関係に選択できるので、バルク材料の特性の変化はない、すなわち、基材12の材料の変更は不要である。
【0048】
図2には、2種類の多層マルチボア膜20が示されている。
【0049】
図2aによれば、多層マルチボア膜20は、基材12、すなわち円形の断面を有する第1のポリマーを含み、そこにいくつか(本発明では7つ)の孔が配列されている。基材12の内面13は、孔の中心を向いた孔の側面における面積の合計である。基材12の外面17は、基材12の外側を向いている。多層マルチボア膜20はまた、基材12の材料のそれぞれの内面13上に機能層14を形成する材料を含む。機能層14は、液体を処理または濾過するためのいくつかのボア16を取り囲んでいる。
【0050】
図2aに示したマルチボア膜20は、ちょうど2つの層、すなわち基材12および機能層14を含む。さらに、基材12の内面13に直接適用された機能層14に、1つ以上の機能層14を適用することができる。したがって、図2aによるマルチボア膜20は、例えば、3つ、4つ、5つ以上の層を含み得る。
【0051】
図2bによれば、多層マルチボア膜20はまた、基材12、すなわち円形の断面を有する第1のポリマーを含み、そこにいくつか(本発明では7つ)の孔が配列されている。基材12の内面13は、孔の中心を向いた孔の側面における面積の合計である。基材12の外面17は、基材12の外側を向いている。多層マルチボア膜20はまた、基材12の材料のそれぞれの内面13上に機能層14を形成する材料を含む。機能層14は、液体を処理または濾過するためのいくつかのボア16を取り囲んでいる。追加の機能層15が、基材12の外面17に適用される。
【0052】
図2bに示したマルチボア膜20は、ちょうど3つの層、すなわち基材12、機能層14および追加の機能層15を含む。さらに、基材12の内面13に直接適用された機能層14か、または基材12の外面17に直接適用された追加の機能層15に、1つ以上の機能層14、15を適用することができる。したがって、図2bによるマルチボア膜20は、例えば、3つ、4つ、5つ以上の層を含み得る。
【0053】
図2bには、紡糸口金30を出る際の、紡糸口金30内で製造された直後のマルチボア膜20が示されている。
【0054】
図2aおよび2bでは、参照番号18は、処理されるべき液体の流れ方向を示している。処理されるべき液体は、例として、海水または排水のいずれであってもよい。
【0055】
基材12の材料はバルク材料と考えられるが、通常、これは例えばPESU材料などの機械的支持をもたらす第1のポリマーである。
【0056】
機能層14を形成する材料は、防汚機能またはイソポーラス機能またはその両方を実現し得る第2のポリマーである。追加の機能層15を形成する材料は、防汚機能またはイソポーラス機能またはその両方を同様に実現し得る別のポリマーである。追加の機能層15のポリマーは、機能層14の第2のポリマーと同じ材料であってもよい。
【0057】
防汚機能の一実施形態は、PESU-b-PEGMAによって与えられる。
【0058】
別の実施形態は、sPPSUによって与えることができる。
【0059】
防汚機能のさらに別の実施形態は、PS-b-PEGMAによって与えられる。
【0060】
一方、イソポーラス機能に伴う機能は、S/DPE-b-4-Vpyによって実現される。
【0061】
図3によれば、図1に示すような多層シングルボア膜10は、ここでは模式的にしか示されていない紡糸口金30内で製造される。図3の概略図によれば、紡糸口金30は、第1のポリマーの流れ32、第2のポリマーの流れ34、およびボア流体の流れ36を含む。第1のポリマー、第2のポリマーおよびボア流体は、紡糸口金30に実質的に同時に供給される。紡糸口金30の出口側の下側には、多層シングルボア膜10の管状ストリングが形成される。管状ストリングは、沈殿浴38に供給される。沈殿浴38の領域では、機能層14の材料が、基材12の材料の厚さに比べて薄い厚さを有することが図3から導き出される。図3の概略図に従って紡糸口金30の中央部分に供給されるボア流体36によって、中空の多層シングルボア膜10内のボア16が維持される。
【0062】
図3にはさらに、多層シングルボア膜10の上面図が示されている。機能層14の比較的薄い材料が、基材12を形成するための管形状の材料、すなわち第1のポリマーの表面13上に配置されていることが図3から導き出される。ボア16は、本発明による多層シングルボア膜10によって液体の流れを処理することを可能にする。
【0063】
図4は、本発明による多層シングルボア膜10または多層マルチボア膜20の大規模製造システムを示す。
【0064】
図4によれば、システムは、多数の構成要素を含む。まず、システムは、基材12の材料のための第1の材料分配ステーション42を含む。基材の材料12は、図3に関連して概略的に示されるように、第1のポリマーの流れ32として紡糸口金30、特に2層形成紡糸口金30に供給される。
【0065】
図4によるシステムは、機能層14を形成するための材料を貯蔵する第2の材料分配ステーション44をさらに含む。第2のポリマーの流れ34は、第2の材料分配ステーション44から、紡糸口金30、すなわち、特に図4によるシステムに同様に含まれる2層の紡糸口金30まで確保されている。
【0066】
なお、図4によるシステムは、ボア流体用の第3の材料分配ステーション46を含む。
【0067】
ボア流体36の流れは、参照番号36によって図4の本発明によるシステムの概略図に示されている。3つの材料はすべて、図4によるシステムの中心に配置された紡糸口金30に同時に供給される。
【0068】
図4から導き出される通り、第1のポリマーの流れ32の経路には、第1の投与弁48および第2の投与弁50が配置されている。
【0069】
図4に示すシステムの紡糸口金30の出口部分には、多層シングルボア膜10の管状ストリング54が形成される。搬送方向58でのこの管状ストリング54のさらなる搬送経路内には、多数の偏向要素56が配置されている。偏向要素56は、凝固浴52内に配置される。偏向要素56によって、凝固浴52を通る多層シングルボア膜10の管状ストリング54の経路が長くなる。
【0070】
多層シングルボア膜10の管状ストリング54の搬送方向58で見て凝固浴52の下流には、水スプレー64が配置されている。水スプレー64は、ローラー60を含む。ローラーの表面62上に、例えば図4に示す通り、垂直方向に水スプレー64が適用される。
【0071】
水スプレー64の下流には、フラッシング浴66が配置されており、その中に無限の管状ストリング、すなわち生成された多層シングルボア膜10が集められる。
【0072】
図5図6図7および図8は、それぞれ、図2に概略的に示したような、多層マルチボア膜20を製造するための紡糸口金30の詳細を示す。
【0073】
図5は、紡糸口金30、特に2層の紡糸口金30を開示する。図5に示した断面図による紡糸口金30は、それぞれ、中央部分70、円錐形部分72および下側部分74を含む。図5は、紡糸口金30を組み立てた状態の部分70、72、74を示す。中央部分70は、ボア流体36のための中央供給部80を含む。中央供給部70の下端には、先端ノズルが配置されている。紡糸口金30の中央部分70は、紡糸口金70の円錐形部分72内に取り付けられている。紡糸口金30の円錐形部分72は、第2のポリマーのための横に配置された第2の供給部78を含む。図5に示すアセンブリから導き出される通り、第2のポリマーの第2の供給部78の反対側には、中央部分70の対応する部分に第2の環状チャネル90が配置されており、これによって、第2のポリマーを紡糸口金30の内側漏斗部82に搬送することができる。
【0074】
さらに、図5によれば、紡糸口金30の円錐形部分72は、紡糸口金30の下側部分74内に取り付けられている。下側部分74は、図5による断面図に示される紡糸口金30の中心軸に対して横方向に同様に延びる第1の供給部76を含む。第1のポリマー用の第1の供給部76の反対側に、紡糸口金30の円錐形部分72は第1の環状チャネル88を含み、これによって、紡糸口金30の外側漏斗部84への第1のポリマーの搬送が可能となる。
【0075】
本明細書で示された紡糸口金30により、2つの層、すなわち基材12と機能層14とを有する膜10、20を製造することができる。2つを上回る層を有する膜10、20を製造するための紡糸口金30も適している。2つを上回る層を有する膜10、20を製造するためのこのような紡糸口金30は、形成される多層膜の各層ごとに個別の供給部を有する。
【0076】
図5による断面図によれば、内側漏斗部82は、一方では紡糸口金30の中央部分70の外側輪郭と他方では紡糸口金30の円錐形部分72の内側輪郭との間に画成されている。内側漏斗部82は、第2のポリマーの第2の供給部78と接続している、第2の環状チャネル90から供給される。こうして、紡糸口金30内で第2の供給部78から内側漏斗部82への第2のポリマーの流れが確保される。
【0077】
円錐形部分72の外側輪郭と紡糸口金30の下側部分74の内側輪郭との間には、外側漏斗部84が画成されている。外側漏斗部84は、第1のポリマーの第1の供給部76と接続している、第1の環状チャネル88から供給される。このようにして、外側漏斗部84に、第1のポリマー、すなわち、基材12の材料が供給される。
【0078】
図9による拡大図により良く示されているが、図5から導き出される通り、図5に示した紡糸口金30は、管部86を含む。管部86は、図9による拡大図に最もよく示されるように、多数の単一管87を含む。単一管87は、ボア16、すなわち、処理される液体、例えば海水または排水が、紡糸口金30(その断面図を図5に示す)を用いて製造された多層マルチボア膜20(図2参照)を流れる中空空間を形成する。
【0079】
図6は、紡糸口金30を側面図で示す。
【0080】
図6に示す側面図によれば、紡糸口金30は、機能層14を形成する材料である第2のポリマーの第2の供給部78を有する円錐形部分72に取り付けられた中央部分70と、下側部分74とを含む。図5に示す断面図は、図6による側面図にV-V交差線で示されている。
【0081】
図7は、図5による紡糸口金30の下端を示す。
【0082】
下側部分74の中央部では、図2による多層マルチボア膜20のマルチボア配置のパターンが見られる。この詳細は、図8による拡大図に示されており、管部86が、紡糸口金30の下側部分74の下側で終わる多数の単一管87を有することを示している。
【0083】
図9は、紡糸口金30(その断面図は図5に示される)の下側部分を拡大して示す。
【0084】
図9に示す断面図によれば、内側漏斗部82には、第2の供給部78によって誘導された第2のポリマーが供給されることが開示されている。
【0085】
管部86を形成する単一管87は、紡糸口金30の中央部分70および円錐形部分72との間に画成された内側漏斗部82まで延びている。
【0086】
紡糸口金30の図5による断面図に最もよく示されているように、紡糸口金30の円錐形部分72と紡糸口金30の下側部分74の内側輪郭との間に確立された外側漏斗部84には、第1の供給部76から垂直に延びる間隙を通って供給される。同様に、管部86の単一管87もまた外側漏斗部84まで延びている。
【0087】
このように、外側漏斗部84の下流では、第1のポリマーを第1の供給部76に、第2のポリマーを第2の供給部78に、かつボア流体36を、紡糸口金30の中央部分70に配置された中央供給部80に連続的に供給することにより、多層マルチボア膜20の管状ストリング54が無限に形成される。
【0088】
図8の拡大図から導き出される通り、この管87のパターンは、多層マルチボア膜20を示している図2で与えられており、図5による断面図で概略的に示されかつ図9による断面図でより詳細に示された二重層マルチボアの紡糸口金30によって製造される。ボア16のパターンに対応している。
【0089】
図9から導き出される通り、二重層マルチボアの紡糸口金30内に製造された管状ストリング54は、機能層14の材料によって封じられた多数のボア16を含み、機能層14は基材12の材料によって囲まれている。
【0090】
図10は、紡糸口金(この場合、二重層の紡糸口金)の構成要素の分解図を示す。
【0091】
図10による分解図に最もよく示されるように、紡糸口金30は、下側部分74、円錐形部分72ならびに中央部分70を含む。円錐形部分72と下側部分74との間には、リング状のシール要素92が配置されている。図10の分解図によれば、円錐形部分72と紡糸口金30の中央部分70との間にさらなるシール要素92が配置されている。部分70、72、74は、少なくとも1つのセンタリングロッド94によって互いに中心合わせされている。ここでは図示されていないが、固定要素96は、中央部分70および円錐形部分72の貫通口98をそれぞれ通って延びており、下側部分74で対応するねじと協働している。
【0092】
円錐形部分72が、図5に示した断面図に従って第2の供給部78と協働する第2の環状チャネル90を含むのに対して、下側部分74の第1の環状チャネル88は、第1のポリマーの第1の供給部76に対応することが、図10から導き出される。
【符号の説明】
【0093】
10 多層シングルボア膜
12 基材(支持体)(ポリマー1)
13 内面(12の)
14 機能層(ポリマー2)
15 追加の機能層
16 ボア(自由断面)
17 外面(12の)
18 流れ方向
20 多層マルチボア膜
30 紡糸口金(二重層)
32 ポリマー1の流れ
34 ポリマー2の流れ
36 ボア流体(第3の材料)
38 沈殿浴
40 機能性材料(親水性、イソポーラス性)
42 第1の材料分配ステーション(基材12)
44 第2の材料分配ステーション(機能層14)
46 第3の材料分配ステーション(ボア流体36)
48 第1の投与弁
50 第2の投与弁
52 凝固浴
54 管状ストリング
56 偏向要素
58 搬送方向
60 ローラー
62 ローラー表面
64 水スプレー
66 フラッシング浴
70 中央部(紡糸口金の)
72 円錐形部分(紡糸口金の)
74 下側部分(紡糸口金の)
76 第1の供給部(12/ポリマー1の場合74の)
78 第2の供給部(14/ポリマー2の場合72の)
80 中央供給部(第3の材料のボア流体36の場合70の)
82 内側漏斗部(14の場合)
84 外側漏斗部(12の場合)
86 管部(36の場合)
87 単一管
88 第1の環状チャネル(72の)
90 第2の環状チャネル(70の)
92 シール要素
94 センタリングロッド
96 固定要素
98 貫通口
V 交差線
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10