(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】拡張可能かつ角度調節可能な関節運動式の椎間ケージ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/44 20060101AFI20220215BHJP
【FI】
A61F2/44
(21)【出願番号】P 2018569063
(86)(22)【出願日】2017-06-28
(86)【国際出願番号】 IB2017000939
(87)【国際公開番号】W WO2018002715
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-04-09
(32)【優先日】2016-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518462112
【氏名又は名称】イーアイティー・エマージング・インプラント・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】EIT EMERGING IMPLANT TECHNOLOGIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】エイフ・マルクス
(72)【発明者】
【氏名】アイゼン・グントマー
(72)【発明者】
【氏名】ガンター・デトレフ
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500707(JP,A)
【文献】特表2013-508031(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第03026294(FR,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0172774(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張可能な脊椎移植片であって、
第1の椎体の終板に対して配置されるように構成された上部プレート構成要素、及び隣接する第2の椎体の終板に対して配置されるように構成された下部プレート構成要素と、
前記上部プレート構成要素と前記下部プレート構成要素とを互いに連結する関節運動式機構であって、アクチュエータピンを受容するための内部キャビティを有する中間案内構成要素を備える、関節運動式機構と、
シャフトと拡大ヘッド部分とを備えるアクチュエータピンであって、前記拡張可能な脊椎移植片の角度調節を実現するために前記中間案内構成要素内で移動するように構成されている、アクチュエータピンと、を備え
ており、
前記アクチュエータピンは、前記拡張可能な脊椎移植片の前記上部及び下部プレート構成要素並びに中間案内構成要素の内側に存在するように製造されている、拡張可能な脊椎移植片。
【請求項2】
前記アクチュエータピンを含む前記脊椎移植片は、付加生産技法によって製造されている、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項3】
拡張可能な脊椎移植片であって、
第1の椎体の終板に対して配置されるように構成された上部プレート構成要素、及び隣接する第2の椎体の終板に対して配置されるように構成された下部プレート構成要素と、
前記上部プレート構成要素と前記下部プレート構成要素とを互いに連結する関節運動式機構であって、アクチュエータピンを受容するための内部キャビティを有する中間案内構成要素を備える、関節運動式機構と、
シャフトと拡大ヘッド部分とを備えるアクチュエータピンであって、前記拡張可能な脊椎移植片の角度調節を実現するために前記中間案内構成要素内で移動するように構成されている、アクチュエータピンと、を備えており、
前記上部プレート構成要素及び前記下部プレート構成要素の各々は一対の延長された側壁を備え、各側壁は、内部表面上に案内表面を備える肉厚部分を有する
、拡張可能な脊椎移植片。
【請求項4】
前記上部及び下部プレート構成要素の前記案内表面は、前記中間案内構成要素上の案内キャビティに対して移動するように構成されている、請求項
3に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項5】
前記肉厚部分の各々は、その一部分に1つ又は2つ以上の歯を含む、請求項
3に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項6】
前記上部及び下部プレート構成要素の前記歯は、互いに噛み合うように構成されている、請求項
5に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項7】
拡張可能な脊椎移植片であって、
第1の椎体の終板に対して配置されるように構成された上部プレート構成要素、及び隣接する第2の椎体の終板に対して配置されるように構成された下部プレート構成要素と、
前記上部プレート構成要素と前記下部プレート構成要素とを互いに連結する関節運動式機構であって、アクチュエータピンを受容するための内部キャビティを有する中間案内構成要素を備える、関節運動式機構と、
シャフトと拡大ヘッド部分とを備えるアクチュエータピンであって、前記拡張可能な脊椎移植片の角度調節を実現するために前記中間案内構成要素内で移動するように構成されている、アクチュエータピンと、を備えており、
前記上部プレート構成要素及び前記下部プレート構成要素の各々は内部に一連の歯を含み、
前記歯は、互いに噛み合うように、または、前記中間案内構成要素の歯と噛み合うように構成されている、拡張可能な脊椎移植片。
【請求項8】
前記関節運動式機構は、前記上部及び下部プレート構成要素の互いに対する転動移動を可能にする、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項9】
前記上部プレート構成要素及び前記下部プレート構成要素の各々は内部に転動表面を含み、前記転動表面は、前記中間案内構成要素の頂部又は底部表面の上
で滑動するように構成されている、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項10】
拡張可能な脊椎移植片であって、
第1の椎体の終板に対して配置されるように構成された上部プレート構成要素、及び隣接する第2の椎体の終板に対して配置されるように構成された下部プレート構成要素と、
前記上部プレート構成要素と前記下部プレート構成要素とを互いに連結する関節運動式機構であって、アクチュエータピンを受容するための内部キャビティを有する中間案内構成要素を備える、関節運動式機構と、
シャフトと拡大ヘッド部分とを備えるアクチュエータピンであって、前記拡張可能な脊椎移植片の角度調節を実現するために前記中間案内構成要素内で移動するように構成されている、アクチュエータピンと、を備えており、
前記上部プレート構成要素及び前記下部プレート構成要素の各々は内部に一連の歯を含み、前記歯は、前記中間案内構成要素
の頂部又は底部表面の上の一連の歯の上をラチェットで動くように構成されている
、拡張可能な脊椎移植片。
【請求項11】
前記アクチュエータピンは、前記上部及び下部プレート構成要素を最前方の位置で互いにロックする、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項12】
拡張可能な脊椎移植片であって、
第1の椎体の終板に対して配置されるように構成された上部プレート構成要素、及び隣接する第2の椎体の終板に対して配置されるように構成された下部プレート構成要素と、
前記上部プレート構成要素と前記下部プレート構成要素とを互いに連結する関節運動式機構であって、アクチュエータピンを受容するための内部キャビティを有する中間案内構成要素を備える、関節運動式機構と、
シャフトと拡大ヘッド部分とを備えるアクチュエータピンであって、前記拡張可能な脊椎移植片の角度調節を実現するために前記中間案内構成要素内で移動するように構成されている、アクチュエータピンと、を備えており、
前記上部及び下部プレート構成要素は、それらの自由端部の一方において先細になっている
、拡張可能な脊椎移植片。
【請求項13】
ケージの後方端部は、器具インターフェースを備えて構成されている、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項14】
拡張可能な脊椎移植片であって、
第1の椎体の終板に対して配置されるように構成された上部プレート構成要素、及び隣接する第2の椎体の終板に対して配置されるように構成された下部プレート構成要素と、
前記上部プレート構成要素と前記下部プレート構成要素とを互いに連結する関節運動式機構であって、アクチュエータピンを受容するための内部キャビティを有する中間案内構成要素を備える、関節運動式機構と、
シャフトと拡大ヘッド部分とを備えるアクチュエータピンであって、前記拡張可能な脊椎移植片の角度調節を実現するために前記中間案内構成要素内で移動するように構成されている、アクチュエータピンと、を備えており、
前記中間案内構成要素は、前記上部及び下部プレート構成要素上の細長スロットに対してスライドするように構成されている
、拡張可能な脊椎移植片。
【請求項15】
拡張可能な脊椎移植片であって、
第1の椎体の終板に対して配置されるように構成された上部プレート構成要素、及び隣接する第2の椎体の終板に対して配置されるように構成された下部プレート構成要素と、
前記上部プレート構成要素と前記下部プレート構成要素とを互いに連結する関節運動式機構であって、アクチュエータピンを受容するための内部キャビティを有する中間案内構成要素を備える、関節運動式機構と、
シャフトと拡大ヘッド部分とを備えるアクチュエータピンであって、前記拡張可能な脊椎移植片の角度調節を実現するために前記中間案内構成要素内で移動するように構成されている、アクチュエータピンと、を備えており、
前記中間案内構成要素は、前記上部及び下部プレート構成要素内のキャビティとスナップ嵌め係合するように構成されている隆起突出部を含む
、拡張可能な脊椎移植片。
【請求項16】
PLIFケージとして更に構成されている、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項17】
拡張可能な脊椎移植片であって、
第1の椎体の終板に対して配置されるように構成された上部プレート構成要素、及び隣接する第2の椎体の終板に対して配置されるように構成された下部プレート構成要素と、
前記上部プレート構成要素と前記下部プレート構成要素とを互いに連結する関節運動式機構であって、アクチュエータピンを受容するための内部キャビティを有する中間案内構成要素を備える、関節運動式機構と、
シャフトと拡大ヘッド部分とを備えるアクチュエータピンであって、前記拡張可能な脊椎移植片の角度調節を実現するために前記中間案内構成要素内で移動するように構成されている、アクチュエータピンと、を備えており、
拡張可能な脊椎移植片が、前記
上部プレート構成要素
と前記下部プレート構成要素が前記脊椎移植片の前方部分において互いに向かって角度をなしている、第1の構成を更に有する
、拡張可能な脊椎移植片。
【請求項18】
前記
上部プレート構成要素
と前記下部プレート構成要素が互いに対して平行である、中間構成を更に有する、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項19】
前記
上部プレート
構成要素と前記下部プレート構成要素が互いにロックされかつ前記脊椎移植片の後方部分において互いに向かって角度をなしている、第2の構成を更に有する、請求項14に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項20】
前記第2の構成において、前記
脊椎移植片は、前弯の角度を調節する、請求項19に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項21】
前記第2の構成において
、脊椎の矢状面バランス及びアライメントが回復されている、請求項19に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、本明細書において参照により援用されている2016年6月28日出願の米国特許仮出願第62/355,619号の利益を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、整形外科用の埋込み型デバイスに関し、より具体的には、脊椎を安定化させるための埋込み型デバイスに関する。更に具体的に言えば、本開示は、縮小されたサイズを有する第1の挿入構成から、拡張されたサイズを有する第2の埋込み構成への拡張を可能にする関節運動式機構を備える、拡張可能かつ角度調節可能な椎間ケージに関する。椎間ケージは、脊椎の矢状面バランス及びアライメントを復元させながら、前弯角度、特により大きな前弯角度を調節し適合させるように構成されている。
【背景技術】
【0003】
しばしばケージ又はスペーサとも呼ばれる、固定を促進する椎体間植込み型デバイスの使用は、特定の脊椎の障害又は疾患の治療に対する標準治療として周知である。例えば、ある種類の脊椎障害では、急性の傷害又は外傷、椎間板疾患又は単純に自然な老化過程が原因で、椎間板が劣化しているか又は損傷を受けている。健常な椎間板は、脊椎を安定させ、脊椎間に力を分散させると共に、椎体の衝撃を緩和するように働く。弱化した又は損傷を受けた椎間板は、したがって、力の不均衡及び脊椎の不安定性を生じ、結果として不快感及び苦痛をもたらす。典型的な治療は、それぞれ部分椎間板切除術又は全椎間板切除術として知られているプロセスにおいて、疾患のある又は損傷を受けた椎間板の一部分又は全部を外科的に除去することを伴い得る。椎間板切除術では多くの場合、その弱化した又は損傷を受けた脊椎部を安定化させるために、ケージ又はスペーサが後に挿入される。このケージ又はスペーサは、損傷が更に進行するのを回避するため、及び/又は損傷若しくは外傷によって引き起こされる疼痛を低減若しくは緩和するために、治療領域における可動性を低減又は抑制するように働く。更に、これらのタイプのケージ又はスペーサは、健常な椎間板高さを回復又は維持するために、機械的又は構造的スキャフォールドとして働き、また場合によっては、隣接する椎骨の間の骨融合を促進し得る。
【0004】
しかしながら、これらのタイプの手技の現状の問題の1つは、治療される椎骨領域へとケージを操作又は挿入するために外科医に与えられる作業空間が非常に限られていることである。椎間腔へのアクセスは、アクセスのために非常に狭い通路を残しながら、大動脈、大静脈、硬膜、及び神経根など、後退される隣接する血管及び組織の周りでナビゲーションすることを必要とする。椎間板の空間自体への開口もまた、比較的小さいものである。したがって、周囲の組織又は椎体自体を相当に損なうことなく挿入され得るケージの実際のサイズには物理的な限界が存在する。
【0005】
問題を更に複雑にしているのは、椎体は健常な脊椎において互いに対して平行に配置されていないという事実である。椎体の互いに対する角度関係が原因で、脊椎には自然な湾曲が存在する。理想的なケージは、椎体のこの角度関係に適応することができなければならず、さもなければ、ケージは、椎間腔の内側にあるときにも適切に収まらないことになる。不適切に適合されたケージは、定位置から追い出されるか又は移動し、時間を経て有効性を失い、悪くすると、既に弱化している領域に更なる損傷を与えることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、椎間板高さ又は治療される脊椎分節への脊椎骨のアライメントを回復させる機械的強度又は構造的完全性を有するだけでなく、狭いアクセス通路を通じて椎間腔へと容易に進み、次いで、特により大きな前弯角度に対して、この空間の角度の制約にも対処するように構成された、椎間ケージ又はスペーサを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、上述の問題に対処しかつ所望の目的を満たす脊椎植込み型デバイスについて記述するものである。これらの脊椎植込み型デバイス、より具体的に言えば、椎間ケージ又はスペーサは、拡張可能であるだけでなく角度調節可能となるように構成されている。このケージは、関節運動式の拡張又は調節機構によって連結された上部及び下部プレート構成要素を備え得るが、この調節機構は、少ない労力でケージがサイズ及び角度を必要に応じて変更することを可能にするものである。いくつかの実施形態では、ケージは、幅狭のアクセス通路を通じて椎間腔の中に挿入することを容易にするために挿入端部においてサイズが低減されていることを特徴とする、第1の挿入構成を有してもよい。ケージは、第1の縮小サイズで挿入され、次いで、植え込まれた後に第2の拡張サイズに拡張されてもよい。その第2の構成では、ケージは、適切な椎間板高さを維持し、矢状面バランス及びアライメントを回復させることによって脊椎を安定化させることが可能である。いくつかの実施形態では、椎間ケージは、ケージが自在に選択可能な(若しくは無段式の)方式で拡張してその第2の拡張構成に達することが可能となるように設計されてもよい。椎間ケージは、前弯の角度を調節することが可能となるように構成されており、第2の拡張構成において、より大きな前弯角度に適応し得る。更に、これらのケージは、隣接する椎体を不動化することによって脊椎安定性を更に向上させるように、固定を促進し得る。
【0008】
加えて、植込み可能なデバイスは、付加製造法の一形態である選択的レーザー溶融(SLM)を用いて製造されてもよい。これらのデバイスはまた、例えば、3D印刷、電子ビーム溶融(EBM)、層堆積、及びラピッドマニュファクチャリングなどの他の類似の技法によって製造されてもよい。これらの生産技法を用いると、構成要素を一体に保つために外部の固定又は取付け要素を更に必要とすることなく、相互連結されかつ移動可能な部品を有し得る一体型の多要素デバイスを創成することが可能である。したがって、本開示の椎間ケージは、互いに一体に保つために付加的な外部固定要素を必要としない、複数の相互連結された部品から形成される。
【0009】
更に関連することとして、この方式で製造されるデバイスは連結シームを有さないが、従来法で製造されるデバイスは、ある構成要素を別の構成要素に連結するための接合シームを有することになる。これらの連結シームは多くの場合、これらのシームの接合が反復的な使用によって若しくは応力を受けて時間と共に摩耗又は破損するときは特に、植込み型デバイスの弱化されたエリアを表し得る。付加製造法を用いて、開示される植込み型デバイスを製造することにより、利点の1つとして、連結シームは完全に回避され、したがってその問題も回避される。
【0010】
本デバイスの別の利点は、付加製造プロセスを用いてこれらのデバイスを製造することにより、デバイスの構成要素のすべて(すなわち、椎間ケージと拡張及びブロックのためのピンの両方)が、挿入プロセス及び拡張プロセスの両方の間に、完全な構造を維持するということである。すなわち、複数の構成要素が集合的な単一のユニットとして同時に提供され、そのため、この集合的な単一のユニットは、患者の体内に挿入され、拡張が可能となるように作動され、次いで原位置でも依然として集合的な単一のユニットであることが可能になる。拡張のために外部のねじ又は楔の挿入を必要とする他のケージとは対照的に、本実施形態では、拡張及びブロック構成要素は、プロセスのいかなる段階においてもケージに挿入される必要も、ケージから取り外される必要もない。これは、これらの構成要素が、ケージの内部に捕捉されるように製造されており、またケージ内で自在に移動可能でありながらも、ケージ内に既に収容されており、そのため、付加的な挿入も取り外しも必要でないからである。
【0011】
いくつかの実施形態では、ケージは、骨接合を促進するために、孔、微細構造、及びナノ構造のネットワークを含む工学的セル構造を一部分が、あるいは全体が伴って作製され得る。例えば、工学的セル構造は、孔と、メッシュに似た外観を備えた他のマイクロ及びナノサイズ構造の相互連結ネットワークを備え得る。これらの工学的セル構造は、デバイスの表面をナノレベルで変化させるようにエッチング又はブラスチングすることによって設けられ得る。ある種類のエッチングプロセスでは、例えば、HF酸処理が利用され得る。加えて、これらのケージはまた内部の撮像用マーカーを含み得るが、そのマーカーは、ユーザーがデバイスを適切に位置合わせすることを可能にし、また一般に、ナビゲーション中に視覚化によって挿入を容易にするものである。撮像用マーカーは、例えば、X線、蛍光透視又はCTスキャンの下で、網目の中の中実体として現れる。
【0012】
本開示の植込み型デバイスによってもたらされる別の利点として、本植込み型デバイスは、患者のニーズに合わせて特別にカスタマイズされ得る。植込み型デバイスのカスタマイズは、植込み型デバイスと、例えば、各々が構造破壊に至る圧縮率の独特の様々なデータを有する皮質骨対海綿質、骨端対中心骨、及び強膜骨対骨減少性骨などの治療される様々な質及び種類の骨との間で弾性率を好ましく適合させることに関連する。同様に、例えば、多孔性対中実性、柱状対非柱状など、様々な移植片設計に関して、類似のデータがまた生成され得る。そのようなデータは、死体から生成されても、コンピュータ有限要素で生成されてもよい。例えば、DEXAデータとの臨床上の相関性はまた、強膜骨、正常骨、又は骨減少性骨に対して使用するために、植込み型デバイスを特別に設計することを可能にする。したがって、本明細書で示されるようなカスタマイズされた植込み型デバイスを提供する能力は、複雑体構造の弾性係数(EMOCS)の整合を可能にするが、このことは、不整合を最小限にし、沈下を緩和し、かつ治癒を最適化するように植込み型デバイスを設計し、それによってより良好な臨床成果をもたらすことを可能にする。
【0013】
例示的な一実施形態では、拡張可能な脊椎移植片が提供される。この拡張可能な脊椎移植片は、第1の椎体の終板に対して配置されるように構成された上部プレート構成要素、及び隣接する第2の椎体の終板に対して配置されるように構成された下部プレート構成要素と、上部プレート構成要素と下部プレート構成要素とを互いに連結する関節運動式機構であって、アクチュエータピンを受容するための内部キャビティを有する中間案内構成要素を備える、関節運動式機構と、シャフトと拡大ヘッド部分とを備えるアクチュエータピンであって、拡張可能な脊椎移植片を角度調節するために、上部及び下部プレート構成要素の互いに対する関節運動を実現するように構成されている、アクチュエータピンと、を備えてもよい。関節運動式機構は、上部及び下部プレート構成要素の互いに対する転動移動を可能にするように構成されてもよい。
【0014】
ブロックピンを含む脊椎移植片は付加生産技法によって製造され、ブロックピンは、内側に存在するが依然としてケージ内で移動可能となるように、別の構成要素として製造されてもよい。いくつかの実施形態では、拡張可能な脊椎移植片はPLIF(腰部後方椎間固定)ケージであってもよい。拡張可能な脊椎移植片は、プレート構成要素が、前方部分において互いに向かって角度をなし、次いで、中間の構成において互いに対して平行である、第1の構成と、プレート構成要素が互いにロックされかつ後方部分において互いに対して角度をなしている、第2の構成とを有してもよい。第2の構成では、移植片は前弯の角度を調節し、脊椎の矢状面バランス及びアライメントを回復させる。
【0015】
以下の議論は、脊椎移植片に焦点を当てたものであるが、それらの原理の多くは、膝、肩、足首又は指関節などの他の関節を含めて、ヒト又は動物の体内における骨修復又は骨固定を必要とする他の構造的身体部にも等しく適用され得ることが理解されよう。
【0016】
上述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はどちらも具体例であって、例示だけを目的としており、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本開示の更なる特徴は、この後に続く説明において部分的に記載されており、あるいは本開示の実践を通じて習得され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本明細書に組み込まれ本明細書の一部となる添付の図面は、本開示のいくつかの実施形態を例示するものであり、また、説明と共に、本開示の原理を説明するのに役立つものである。
【
図1】本開示による椎間ケージの例示的な実施形態の斜視図を示す。
【
図2C】
図1の椎間ケージ及びブロックピンの後面図を示す。
【
図3】
図1の椎間ケージ及びそれに関連するブロックピンの分解図を示す。
【
図4A】製造位置における
図1の椎間ケージ及びそれに関連するブロックピンの側面図を示す。
【
図4B】
図4Aの椎間ケージ及びブロックピンの断面図を示す。
【
図5A】
図1の椎間ケージの上部プレート構成要素の様々な図を示しており、
図5Aは側面図を示す。
【
図5B】
図1の椎間ケージの上部プレート構成要素の様々な図を示しており、
図5Bは部分破断図を示す。
【
図5C】
図1の椎間ケージの上部プレート構成要素の様々な図を示しており、
図5Cは斜視図を示す。
【
図6A】
図1の椎間ケージの中間関節運動式構成要素の様々な図を示しており、
図6Aは側面図を示す。
【
図6B】
図1の椎間ケージの中間関節運動式構成要素の様々な図を示しており、
図6Bは斜視図を示す。
【
図6C】
図1の椎間ケージの中間関節運動式構成要素の様々な図を示しており、
図6Cは拡大図を示す。
【
図7A】
図1の椎間ケージの下部プレート構成要素の様々な図を示しており、
図7Aは側面図を示す。
【
図7B】
図1の椎間ケージの下部プレート構成要素の様々な図を示しており、
図7Bは部分破断図を示す。
【
図7C】
図1の椎間ケージの下部プレート構成要素の様々な図を示しており、
図7Cは斜視図を示す。
【
図9A】
図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、
図9Aは、拡張の過程にわたるケージの側面図を示す。
【
図9B】
図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、
図9Bは、拡張の過程にわたるケージの断面図を示す。
【
図9C】
図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、
図9Cは、拡張の過程にわたるケージの側面図を示す。
【
図9D】
図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、
図9Dは、拡張の過程にわたるケージの断面図を示す。
【
図9E】
図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、
図9Eは、拡張の過程にわたるケージの側面図を示す。
【
図9F】
図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、
図9Fは、拡張の過程にわたるケージの断面図を示す。
【
図9G】
図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、
図9Gは、拡張の過程にわたるケージの側面図を示す。
【
図9H】
図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、
図9Hは、拡張の過程にわたるケージの断面図を示す。
【
図9I】
図9C及び9Dの椎間ケージの部分破断後面図を示す。
【
図9J】
図9C及び9Dの椎間ケージの部分破断前面図を示す。
【
図10】本開示による椎間ケージ及び関連するブロックピンの別の例示的な実施形態の斜視図を示す。
【
図12】
図10の椎間ケージ及び関連するブロックピンの分解図を示す。
【
図13A】製造位置にある
図10の椎間ケージ及び関連するブロックピンの側面図を示す。
【
図17A】
図10の椎間ケージを拡張する方法を示しており、
図17Aは、拡張の過程にわたるケージの側面図を示す。
【
図17B】
図10の椎間ケージを拡張する方法を示しており、
図17Bは、拡張の過程にわたるケージの断面図を示す。
【
図17D】
図10の椎間ケージを拡張する方法を示しており、
図17Dは、拡張の過程にわたるケージの側面図を示す。
【
図17E】
図10の椎間ケージを拡張する方法を示しており、
図17Eは、拡張の過程にわたるケージの断面図を示す。
【
図17F】
図10の椎間ケージを拡張する方法を示しており、
図17Fは、拡張の過程にわたるケージの側面図を示す。
【
図17G】
図10の椎間ケージを拡張する方法を示しており、
図17Gは、拡張の過程にわたるケージの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、隣接する椎骨の間に挿入するための、椎体間固定スペーサ又はケージなどの様々な脊椎植込みデバイスを提供する。本デバイスは、脊椎の頚部又は腰部のいずれかにおいて使用されるように構成され得る。いくつかの実施形態では、これらのデバイスは、PLIFケージ、すなわち腰部後方椎間固定(posterior lumbar interbody fusion)ケージとして構成される。これらのケージは、治療される脊椎分節の椎間高さを回復及び維持し、矢状面バランス及びアライメントを回復させることによって脊椎を安定化させ得る。いくつかの実施形態では、ケージは、拡張及び角度調節を可能にするために関節運動式機構を具備してもよい。この関節運動式機構は、上部及び下部プレート構成要素が互いに対してスムーズに滑動することを可能にする。ケージは、幅狭のアクセス通路を通じて椎間腔の中に挿入することを容易にするために挿入端部の各々においてサイズが低減されていることを特徴とする、第1の挿入構成を有してもよい。ケージは、第1の縮小サイズで挿入され、次いで、植え込まれた後に第2の拡張サイズに拡張されてもよい。その第2の構成では、ケージは、適切な椎間板高さを維持し、矢状面バランス及びアライメントを回復させることによって脊椎を安定化させることが可能である。いくつかの実施形態では、椎間ケージは、ケージが自在に選択可能な(若しくは無段式の)方式で拡張してその第2の拡張構成に達することが可能となるように設計されてもよい。椎間ケージは、前弯の角度を調節することが可能となるように構成されており、第2の拡張構成において、より大きな前弯角度に適応し得る。更に、これらのケージは、隣接する椎体を不動化することによって脊椎安定性を更に向上させるように、固定を促進し得る。
【0019】
加えて、植込み可能なデバイスは、付加製造法の一形態である選択的レーザー溶融(SLM)を用いて製造されてもよい。これらのデバイスはまた、例えば、3D印刷、電子ビーム溶融(EBM)、層堆積、及びラピッドマニュファクチャリングなどの他の類似の技法によって製造されてもよい。これらの生産技法を用いると、構成要素を一体に保つために外部の固定又は取付け要素を更に必要とすることなく、相互連結されかつ移動可能な部品を有し得る一体型の多要素デバイスを創成することが可能である。したがって、本開示の椎間ケージは、互いに一体に保つために付加的な外部固定要素を必要としない、複数の相互連結された部品から形成される。
【0020】
更に関連することとして、この方式で製造されるデバイスは連結シームを有さないが、従来法で製造されるデバイスは、ある構成要素を別の構成要素に連結するための接合シームを有することになる。これらの連結シームは多くの場合、これらのシームの接合が反復的な使用によって若しくは応力を受けて時間と共に摩耗又は破損するときは特に、植込み型デバイスの弱化されたエリアを表し得る。付加製造法を用いて、開示される植込み型デバイスを製造することにより、連結シームは完全に回避され、したがって問題も回避される。
【0021】
それに加えて、付加製造プロセスを用いてこれらのデバイスを製造することにより、デバイスの構成要素のすべて(すなわち、椎間ケージと拡張及びブロックのためのピンの両方)が、挿入プロセス及び拡張プロセスの両方間に、完全な構造を維持するということである。すなわち、複数の構成要素が集合的な単一のユニットとして同時に提供され、そのため、この集合的な単一のユニットは、患者の体内に挿入され、拡張が可能となるように作動され、次いで原位置でも依然として集合的な単一のユニットであることが可能になる。拡張のために外部のねじ又は楔の挿入を必要とする他のケージとは対照的に、本実施形態では、拡張及びブロック構成要素は、プロセスのいかなる段階においてもケージに挿入される必要も、ケージから取り外される必要もない。これは、これらの構成要素が、ケージの内部に捕捉されるように製造されており、またケージ内で自在に移動可能でありながらも、ケージ内に既に収容されており、そのため、付加的な挿入も取り外しも必要でないからである。
【0022】
いくつかの実施形態では、ケージは、骨接合を促進するために、孔、微細構造、及びナノ構造のネットワークを含む工学的セル構造を一部分が、あるいは全体が伴って作製され得る。例えば、工学的セル構造は、孔と、メッシュに似た外観を備えた他のマイクロ及びナノサイズ構造の相互連結ネットワークを備え得る。これらの工学的セル構造は、デバイスの表面をナノレベルで変化させるようにエッチング又はブラスチングすることによって設けられ得る。ある種類のエッチングプロセスでは、例えば、HF酸処理が利用され得る。加えて、これらのケージはまた内部の撮像用マーカーを含み得るが、そのマーカーは、ユーザーがケージを適切に位置合わせすることを可能にし、また一般に、ナビゲーション中に視覚化によって挿入を容易にするものである。撮像用マーカーは、例えば、X線、蛍光透視又はCTスキャンの下で、網目の中の中実体として現れる。
【0023】
本開示の植込み型デバイスによってもたらされる別の利点として、本植込み型デバイスは、患者のニーズに合わせて特別にカスタマイズされ得る。植込み型デバイスのカスタマイズは、植込み型デバイスと、例えば、各々が構造破壊に至る圧縮率の独特の様々なデータを有する皮質骨対海綿質、骨端対中心骨、及び強膜骨対骨減少性骨などの治療される様々な質及び種類の骨との間で弾性率を好ましく適合させることに関連する。同様に、例えば、多孔性対中実性、柱状対非柱状など、様々な移植片設計に関して、類似のデータがまた生成され得る。そのようなデータは、死体から生成されても、コンピュータ有限要素で生成されてもよい。例えば、DEXAデータとの臨床上の相関性はまた、強膜骨、正常骨、又は骨減少性骨に対して使用するために、植込み型デバイスを特別に設計することを可能にする。したがって、本明細書で示されるようなカスタマイズされた植込み型デバイスを提供する能力は、複雑体構造の弾性係数(EMOCS)の整合を可能にするが、このことは、不整合を最小限にし、沈下を緩和し、かつ治癒を最適化するように植込み型デバイスを設計し、それによってより良好な臨床成果をもたらすことを可能にする。
【0024】
ここで図面を参照すると、
図1は、本開示の拡張可能かつ角度調節可能な関節運動式の椎間ケージ10の例示的な実施形態を示している。椎間ケージ10は、一対の隣接する椎体の終板に対して配置されるように構成された、一対の関節運動式のシェル又はプレート構成要素20、40を備えてもよい。一実施形態では、関節運動式のプレート構成要素は、終板に対して配置するための平坦支持表面を含んでもよい。以下で説明するように、関節運動式プレート構成要素20、40の互いに対する移動を、より具体的にはスムーズな滑動モーションを促進する中間案内構成要素100が、プレート構成要素20、40の間に存在し、それらと協働するように構成されている。
【0025】
図2A~2Eにより詳細に示すように、
図2Aはケージ10の前面図を示し、
図2Bはケージ10の側部又は側面図を示し、
図2Cはケージ10の後面図を示し、
図2Dはケージ10の頭尾図を示し、
図2Eはケージ10の等角図を示しているが、ケージ10は、互いに対して関節運動するように構成された上部シェル又はプレート構成要素20と下部シェル又はプレート構成要素40とを備えてもよい。本実施形態では、プレート構成要素20、40の移動は、プレート構成要素20、40内にかつそれらの間に存在する関節運動式ジョイント機構によって実現され得、この機構は、構成要素20、40が互いに対して転動することを可能にする中間案内構成要素100を備える。換言すれば、下部プレート構成要素40は基部として働き、上部プレート構成要素20は基部40に対して転動して、それら2つの構成要素の間におけるスムーズな滑動モーションを可能にする。
【0026】
図3は、本実施形態の椎間ケージ10及び関連するブロックピン60のアセンブリの分解図を示している。上部プレート構成要素20は、一対の延長アーム又は側壁24を備えてもよい。側壁24の各々は、その一部分に沿って1つ又は2つ以上の隆起部又は歯28を有してもよい。側壁24の間に、中間案内構成要素100を受容するための内部キャビティ26(
図5Cに示す)が設けられてもよい。
【0027】
同様に、基部又は下部プレート構成要素40は、一対の延長された側壁46を備えてもよい。これらの延長された側壁46は、それらの間に中間案内構成要素100を受容するためのスロット又は内部キャビティ48を画定してもよい。延長された側壁46の頂部に、1つ又は2つ以上の隆起部又は歯52がその一部分に沿って存在する。
図4Aに示すように、下部プレート構成要素40の歯52は、上部プレート構成要素20の歯28と嵌合し、またそれに対して関節運動するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、上部プレート構成要素20及び下部プレート構成要素40は、そのように望まれる場合には、ケージ10の第1の前端部12において、自由端部において先細にされてもよい。
【0028】
図2A~2E及び
図3に示すように、上部プレート構成要素20と下部プレート構成要素40との間に、またそれらの中に、上部及び下部プレート構成要素20、40の互いに対する揺動モーションを促進する中間案内構成要素100がある。
図6A及び6Bに示すように、中間案内構成要素100は、上部プレート構成要素20と対向する滑動又は転動表面106を備えてもよい。中間案内構成要素100の外側部は、関節運動のための案内キャビティとして働き得るカットアウト部分又は溝120を含んでもよい。中間案内構成要素100は、同様にブロックピン60を受容するための内部キャビティ110を更に含んでもよい。
【0029】
図3並びに
図8A及び8Bに更に示すように、ブロックピン60は、拡大されたピンヘッド68を取り付けられた細長シャフト64を備えてもよい。ピンヘッド68は、ロック表面72と、案内表面74と、調節表面76とを有してもよい。使用の際、ピン60は、上部プレート構成要素20を下部プレート構成要素又は基部40に対して傾斜又は旋回させるように働き、また、最終的な構成が達成されると構成要素20、40の移動を阻止するが、それにより、プレート構成要素20、40の互いに対する位置がロックされ得ると共に、更なる移動が生じないようになる。
【0030】
上述のように、本開示の植込み型デバイスは、最終的な組み立てられたデバイスへのすべての構成要素の加工が生成的/付加的生産技法(例えば、選択的レーザー溶融(SLM)又は上述した他の同様の技法)によって一段階で達成されるような方式で製造され得る。
図4A及び4Bは、ケージ10及びブロックピン60がそのような技法の下でどのようにして互いに入れ子にして製造され得るかを示す、例示的な製造構成を示している。これらの副構成要素を無傷にかつ互いに相互作用するように維持するためにいかなる付加的な外部固定要素も必要としない対話型構成要素を備えた多要素アセンブリを提供するために、どのようにして生成的/付加的生産技法の利点が利用され得るかに留意されたい。図で分かるように、ケージ10にブロックピン60を加えた全体的なアセンブリは、可動内部部品を有する1つのユニットとして同時に生産されてもよい。
【0031】
先述のように、この方式で製造されるデバイスは連結シームを有さないが、従来法で製造されるデバイスは、ある構成要素を別の構成要素に連結するための接合シームを有することになる。これらの連結シームは多くの場合、これらのシームの接合が反復的な使用によって若しくは応力を受けて時間と共に摩耗又は破損するときは特に、植込み型デバイスの弱化されたエリアを表し得る。付加製造法を用いて、開示される植込み型デバイスを製造することにより、これらのデバイスに伴う利点の1つとして、連結シームは完全に回避され、したがってその問題も回避される。
【0032】
図5A~5Cは、本開示の椎間ケージ10の上部プレート構成要素20をより詳細に示している。図示のように、上部プレート構成要素20は、中間案内構成要素100を受容するように構成されたキャビティ又はスロット26が間に画定される、一対の延長アーム又は側壁24を備えてもよい。延長された側壁24の各々は、その一部分に沿って1つ又は2つ以上の歯又は隆起部28を含んでもよい。歯28は、前述したように、下部プレート構成要素40の歯52と嵌合及び協働するように構成されてもよい。図示のように、上部プレート構成要素20は、下部基部プレート構成要素40上に着座するように構成されてもよい。キャビティ26は、傾斜表面34及びブロック表面36を更に含んでもよく、それらの特徴については、以下で更に詳細に説明することにする。加えて、図示のように、歯28は、プレート24のうちの肉厚部分の一部として形成されており、肉厚部分の内部は、プレート構成要素20、40及び中間案内構成要素100の関節運動のための案内表面30を形成している。図示のように、
図5Bの断面図では、キャビティ26は滑動又は転動表面32を含み得る。加えて、下部プレート構成要素40と同様に、本実施形態における上部プレート構成要素20はまた、傾斜表面34とブロック表面36とを含み得る。実際に、上部プレート構成要素20は、いくつかの実施形態では、下部プレート構成要素40の鏡像として構成されてもよい。
【0033】
図6A~6Cは、本開示の椎間ケージ10の中間案内構成要素100をより詳細に示している。図示のように、中間案内構成要素100は、上部プレート構成要素20と対向する滑動又は転動表面106を備えてもよい。中間案内構成要素100の外側部は、関節運動のための案内キャビティとして働き得る溝120を含んでもよい。中間案内構成要素100は、
図3に示すように、ブロックピン60を受容するための内部キャビティを更に含んでもよい。
【0034】
加えて、中間案内構成要素100の後部は、ブロックピン60にアクセスするための開口部118を有するポート又はチャネル116を含んでもよい。チャネル116を器具インターフェース130が囲繞しており、この器具インターフェースは、バヨネット型の取付け具を通じて器具をデバイス10又はピン60に取り付けることを可能にするものである。この器具インターフェース130は、
図6Cの拡大詳細図において確認され得る。器具インターフェース130は、例えば、デバイス10又はブロックピン60に送達器具を取り付けることを可能にするために、バヨネット型の連結に適合するように構成されてもよい。器具インターフェース130は、外側接触表面132と、バヨネット継手134と、器具挿入のためのチャネル又はポート116を囲繞する凹部136と、チャネル116によって設けられた円筒状案内表面138と、を含んでもよい。総じて、器具インターフェース130は、植込み型デバイス10を挿入するための送達器具及び/又はブロックピン60を前進させるためのツールを含めた他の器具への取付けのための必要な構造を設けている。
【0035】
図7A~7Cは、本開示の椎間ケージ10の下部プレート構成要素又は基部40をより詳細に示している。図示のように、また前述のように、下部プレート構成要素40は、キャビティ又はスロット48を中に画定する、一対の延長された側壁46を備えてもよい。このキャビティ48は、中間案内構成要素100を受容するように構成されてもよい。上部プレート構成要素20と同様に、下部プレート構成要素40の歯52は、側壁46の肉厚部分に設けられており、この肉厚部分は、構成要素を互いに関節運動させるための案内表面50を内部に有している。キャビティ48は、上部プレート構成要素20と同様に、傾斜表面34及びブロック表面36を更に含んでもよい。図示のように、
図7Bの断面図では、キャビティ48は滑動又は転動表面58を含み得る。
【0036】
図8A及び8Bは、本開示の椎間ケージ10と共に使用され得るブロックピン60の細部を示している。ブロックピン60は、拡大されたピンヘッド68へと延びる細長シャフト64を備えてもよい。ピンヘッド68は、ロック表面72と、案内表面74と、調節表面76とを有してもよい。
【0037】
図9A~9Jは、本開示の椎間ケージ10を拡張しかつ角度調節するプロセスを示している。初期の挿入段階又は構成では、拡張可能なケージ10は、圧縮され低減されたサイズを有し得るが、それによって、上部プレート構成要素20及び下部プレート構成要素40は、
図9A及び9Bに示すように、ケージ10の第1の前端部12において又は互いに向かって角度をなす。これにより、挿入を容易にするために、先細ノーズ又は先端チップ、及び最も薄い輪郭(すなわち、最小の前方高さ)が形成されるが、このことは、植込み部位への最も狭いアクセス通路を横切るのに特に有利である。いくつかの実施形態では、プレート構成要素20、40の端部はまた、所望により、傾斜又は勾配を含み得る。プレート構成要素20、40はそれぞれ、椎体の終板と接触し、その終板を押圧するための平坦な外部支持表面を含んでもよい。
【0038】
上部及び下部プレート構成要素20、40それぞれの噛合い歯28、52の利点のうちの1つは、構成要素20、40の移動が一様でスムーズなモーションで達成されることである。換言すれば、プレート構成要素20、40の移動は、2つのプレート構成要素20、40の互いに対するラチェットモーションによって同期される。本構成では、能動的な調節は実施されない。
【0039】
ブロックピン60は、第1の挿入構成において中間案内構成要素100自体の中に存在するように付加製造され得るものであり、プレート構成要素20、40の旋回と干渉することはなく、この時点では非活動状態にあると見なされ得る。図示のように、ブロックピン60は中間案内構成要素100のキャビティ110内に位置するが、この構成では、プレート構成要素20、40の傾斜表面34、54又はブロック表面36、56と当接していない。
【0040】
図9C及び9Dは、中間位置又は構成にあるケージ10を示している。この構成では、上部プレート構成要素20と下部プレート要素40は互いに平行であり、椎間ケージ10の取り得る最小の挿入高さを規定する。ブロックピン60は、この中間構成では、ケージ10の第2の後端部14から第1の前端部12に向かって前方に前進されており、また拡大されたヘッド68が上部及び下部プレート構成要素20、140を圧迫していることに留意されたい。
図9E及び9Fに示すように、ケージ10が狭いアクセス通路を通じて椎間/椎間板の空間の中へと進むと、ブロックピン60は、引き続き前進され得る。ブロックピン60が前方に又は第1の前端部12に向かって前進する結果として、噛合い歯28、52の転動機構によって、上部プレート構成要素20が下部プレート構成要素40に対して同時に展開されることになる。この転動移動は、中間案内構成要素100に対するプレート構成要素20、40のスムーズな滑動又は案内表面32、58によって促進される。プレート構成要素20、40は、図示のように、第1の前端部12における前方高さが第2の後端部14における後方高さよりも高い状態で、角度をなすか又は部分的に開放される。
【0041】
図9G及び9Hは、引き続き能動的調節段階にあるケージ10及びケージ10の後端部における負荷移動を示している。ブロックピン60が前方に送られるとき、プレート構成要素20、40は継続的に、第2の後端部14において後方に向かって角度をなし、第1の前端部12において前方に向かって漸進的に開放される。図示のように、ケージ10はここで、完全に調節されると、最大の前方高さを有し得るが、このときに、ブロックピン60は中間案内構成要素100内で最前方の位置にある。この構成では、負荷はケージ10の後方に伝達され、ケージ10は完全に拡張又は調節され、ブロック又はロック位置にある。この最終的な拡張位置では、ケージ10は、脊椎分節の前弯角度に適応する上で効果的であり、矢状面バランス及び脊椎へのアライメントを回復し得る。プレート構成要素20、40は、椎体の終板を押圧するように構成されており、ここでこの領域を不動化及び安定化させ得る。
【0042】
図9I及び9Jは、完全に拡張されたケージ10の様々な部分破断図を示している。これらの図は、中間案内構成要素100の案内キャビティ又は溝120内における上部及び下部基部構成要素20、40の肉厚部分の案内表面32、50の協働を示している。この特徴により、複合的な構造が関節運動プロセス中も依然として無傷となることが確実となる。すなわち、歯28、52は互いにインターロックするが、案内表面32、50もまた、動作が生じている間に互いに適合した状態を維持するように、案内キャビティ120内でインターロックする。その間、これらの機構によって達成される転動モーションはスムーズでかつ同期的である。
【0043】
図10は、本開示の拡張可能かつ角度調節可能な関節運動式の椎間ケージ210の別の例示的な実施形態を示している。椎間ケージ210は、一対の隣接する椎体の終板に対して配置されるように構成された一対の関節運動式のシェル又はプレート構成要素220、240を有することを含め、前述した椎間ケージ10の多数の同様の特徴及び利点を共有している。一実施形態では、関節運動式のプレート構成要素220、240は、終板に対して配置するための平坦支持表面を含んでもよい。関節運動式プレート構成要素220、240の互いに対する移動を、より具体的にはスムーズな滑動モーションを促進する中間案内構成要素300が、プレート構成要素220、240の間に存在し、それらと協働するように構成されている。この中間案内構成要素300は、アクチュエータピン260を受容するように構成されており、アクチュエータピンは、前方に送られるとき、上部及び下部プレート構成要素220、240が互いに対してスムーズに転動し、椎間ケージ210の前方端部又は第1の前端部212の角度を調節する。
【0044】
図11A~11Eでより詳細に示すように、
図11Aはケージ210の後面図を示し、
図11Bはケージ210の側部又は側面図を示し、
図11Cはケージ210の前面図を示し、
図2Dはケージ210の頭尾図を示し、
図2Eはケージ210の等角図を示しているが、ケージ210は、互いに対して関節運動するように構成された上部プレート構成要素220と下部プレート構成要素240とを備えてもよい。本実施形態では、プレート構成要素220、240の移動は、この中間案内構成要素300によって実現され得るが、この中間案内構成要素は、これらのプレート構成要素220、240と協働する関節運動式ジョイント機構として働いて、プレート構成要素220、240が互いに対して転動することを可能にしている。換言すれば、下部プレート構成要素240は基部として働き、上部プレート構成要素220は基部240に対して転動して、それら2つの構成要素220、240の間におけるスムーズな滑動モーションを可能にする。プレート構成要素220、240の移動を阻止するように働くアクチュエータピン260が設けられており、中間案内構成要素300内に移動可能に位置するように構成されている。
【0045】
図12は、本実施形態の椎間ケージ210及び関連するアクチュエータピン60のアセンブリの分解図を示している。上部プレート構成要素220は、一対の延長アーム又は側壁224を備えてもよい。側壁224の間に、中間案内構成要素300を収容するための内部キャビティ226が設けられてもよい。同様に、基部又は下部プレート構成要素240は、一対の延長された側壁246を備えてもよい。これらの延長された側壁142は、中間案内構成要素300を収容するためのスロット又は内部キャビティ248を画定してもよい。上部プレート構成要素220及び下部プレート構成要素240は、望まれる場合、ケージ210の第1の前端部212における自由端部において先細であってもよい。
【0046】
上部プレート構成要素220と下部プレート構成要素240との間に、またそれらの内側に、上部及び下部プレート構成要素220、240の互いに対する転動モーションを促進する中間案内構成要素300がある。中間案内構成要素300は、上部及び下部プレート構成要素220、240に面した一対の対向するラチェット表面306を備えてもよい。これらのラチェット表面306は、その一部分に、一連の歯308を有している。中間案内構成要素300の外側部は、上述したものと同様の、関節運動のための案内キャビティとして働き得る溝320を含んでもよい。中間案内構成要素300は、アクチュエータピン260にアクセスするための開口部318を有するポート316を含んでもよい。
【0047】
図16A及び16Bに更に示すように、アクチュエータピン260は、拡大されたピンヘッド268の中へと延びる細長シャフト264を備えてもよい。ピンヘッド268は、ブロック表面272と、調節表面276とを有してもよい。加えて、ピンヘッド268は、その側部にラチェット溝270を含んでもよく、これについては以下で詳細に説明することにする。図示のように、シャフト264の周りにフランジ266が設けられ得る。ブロックピン60と同様に、アクチュエータピン260は、下部プレート構成要素又は基部240に対して上部プレート構成要素220を傾斜又は旋回させるのを助けるように働き、また、最終的な構成が達成されると、構成要素220、240の移動を阻止し、それによって、上部及び下部プレート構成要素220、240の相対位置がロックされ得、更なる移動が不可能となる。
【0048】
上述のように、本開示の植込み型デバイスは、最終的な組み立てられたデバイスへのすべての構成要素の加工が生成的/付加的生産技法(例えば、選択的レーザー溶融(SLM)又は上述した他の同様の技法)によって一段階で達成されるような方式で製造され得る。
図13A及び13Bは、ケージ210及びアクチュエータピン260がそのような技法の下でどのようにして互いに入れ子にして製造され得るかを示す、例示的な製造構成を示している。これらの副構成要素を無傷にかつ互いに相互作用するように維持するためにいかなる付加的な外部固定要素も必要としない対話型構成要素を備えた多要素アセンブリを提供するために、どのようにして生成的/付加的生産技法の利点が利用され得るかに留意されたい。図で分かるように、ケージ210にアクチュエータピン260を加えた全体的なアセンブリは、可動内部部品を有する1つのユニットとして同時に生産されてもよい。
【0049】
図14A~14Cは、本開示の椎間ケージ210の上部プレート構成要素220をより詳細に示している。図示のように、上部プレート構成要素220は、ピン260を受容すると共に中間案内構成要素300と協働するように構成されたキャビティ又はスロット226が間に画定される、一対の延長アーム又は側壁224を備えてもよい。以下でより詳細に説明するように、側壁224の内側部に、中間案内構成要素300の指状突出部302と協働する細長スロット252がある。
【0050】
上部プレート構成要素220の内部に、1つ又は2つ以上の歯又は隆起部228がある。歯228は、中間案内構成要素300の歯308と嵌合及び協働するように構成されてもよい。図示のように、上部プレート構成要素220は、下部基部プレート構成要素240上に着座するように構成されてもよい。キャビティ226は、傾斜表面234及びブロック表面236を更に含んでもよく、それらの特徴については、以下で更に詳細に説明することにする。
図14Bの断面図で示すように、内部キャビティ226は滑動又は転動表面232を含み得る。上部プレート構成要素220の下側はまた、プレートの側方安定化のために、中間案内構成要素300の隆起ガイド322をスナップ嵌め連結で受容するように構成されたキャビティ又は凹部222と、中間案内構成要素300の指状突出部302のノブ304のスナップ嵌め取付けを可能にするキャビティ238と、を含む。
【0051】
理解されたいこととして、下部プレート構成要素240の内部はここでは図示されていないが、下部プレート構成要素240は上部プレート構成要素220の鏡像と見なされ得る。したがって、上部プレート構成要素220のために設けられたすべての機構は、下部プレート構成要素240のためにも同様に設けられる。
【0052】
図15A~15Dは、本開示の椎間ケージ210の中間案内構成要素300をより詳細に示している。図示のように、中間案内構成要素300は、上部プレート構成要素220及び下部プレート構成要素240と対向する一対の滑動又は転動表面306を備えてもよい。中間案内構成要素300の外側部は、関節運動のための案内キャビティとして働き得る溝320を含んでもよい。内部キャビティ310がアクチュエータピン260を受容するように構成されている。
図15Cに示すように、過度な延出を防止するために、アクチュエータピン260のシャフト264のフランジ266と当接するように延出リップ324が設けられてもよい。中間案内構成要素300の前方部分に、スナップアーム312があり、このスナップアームは、ロックを促進するために、内部表面上の末端部にノッチ314を有している。指状突出部302がスナップアーム312に隣接しかつスナップアームから離間しており、指状突出部は、上部及び下部プレート構成要素220、240の凹部238とスナップ嵌め係合するためのノブ304を、外部表面上の末端部に有している。
【0053】
加えて、中間案内構成要素300の後方部分に、アクチュエータピン260にアクセスするための開口部318を有するポート又はチャネル316がある。チャネル316を器具インターフェース330が囲繞しており、この器具インターフェースは、バヨネット型の取付け具を通じて器具をピン260に取り付けることを可能にするものである。この器具インターフェース230は、
図15Dの拡大詳細図において確認され得る。器具インターフェース330は、例えば、ケージ210又はアクチュエータピン260に送達器具を取り付けることを可能にするために、バヨネット型の連結に適合するように構成されてもよい。器具インターフェース330は、外側接触表面332と、バヨネット継手334と、器具挿入のためのチャネル又はポート316を囲繞する凹部336とを含んでもよく、チャネル316は、器具取付のために、チャネル316の開口部318を囲繞する円筒状案内表面を設けている。総じて、器具インターフェース330は、ケージ210の送達又はアクチュエータピン260の作動などのために、他の器具への取付けに必要な構造を備えている。隆起ガイド322が、
図15Dに示すように、後方部分の近くの中間案内構成要素300の転動表面306上に設けられており、このガイド322は、上部プレート構成要素220の凹部222内に受容され得る。
【0054】
図16A及び16Bは、本開示の椎間ケージ210と共に使用され得るアクチュエータピン260の細部を示している。アクチュエータピン260は、拡大されたピンヘッド268へと延びる細長シャフト264を備えてもよい。ピンヘッド268は、ブロック表面272と、調節表面276とを有してもよい。加えて、拡大されたピンヘッド268の側部は、アクチュエータ機構のロック係合のための溝270を含んでもよい。シャフト264の自由端部に、中間案内構成要素300の延出リップ324と協働するフランジ266がある。
【0055】
図17A~17Jは、本開示の椎間ケージ210を拡張しかつ角度調節するプロセスを示している。初期の挿入段階又は構成では、拡張可能なケージ210は、圧縮され低減されたサイズを有し得るが、それによって、上部プレート構成要素220及び下部プレート構成要素240は、
図17A~17Cに示すように、ケージ210の第1の前端部212において互いに向かって又は前方に向かって角度をなす。これにより、挿入を容易にするために、先細ノーズ又は先端チップ、及び最も薄い輪郭(すなわち、最小の前方高さ)が形成されるが、このことは、植込み部位への最も狭いアクセス通路を横切るのに特に有利である。いくつかの実施形態では、プレート構成要素220、240の端部はまた、所望により、傾斜又は勾配を含み得る。プレート構成要素220、240はそれぞれ、椎体の終板と接触し、その終板を押圧するための平坦な外部支持表面を含んでもよい。
【0056】
プレート構成要素220、240の内部の歯228が中間案内構成要素300の転動表面306上の歯308と噛み合う利点の1つは、構成要素220、240の移動が均一でスムーズなモーションで達成されることである。換言すれば、プレート構成要素220、240の移動は同期される。本構成では、能動的な調節は実施されない。
図17Cに更に示すように、初期の挿入構成では、指状突出部302のノブ304は、構成要素220の内部に設けられた凹部238にスナップ嵌めされることによって、上部プレート構成要素220に対して定位置に保持される。
【0057】
アクチュエータピン260が前方に又は第1の前端部212に向かって送られるとき、ケージ210は中間位置又は構成へと遷移する。この中間構成では、上部及び下部プレート構成要素220、240は互いに対して平行であり、椎間ケージ210に対して可能となる最小の挿入高さを規定している。この構成は
図13A及び13Bにおいて確認され得る。遷移の間、拡大されたヘッド268は、上部及び下部プレート構成要素220、240を圧迫する。
図17D~17Eに示すように、ケージ210が狭いアクセス経路を通じて椎間腔/椎間板の空間の中へと送られると、アクチュエータピン260は引き続き前進され得る。アクチュエータピン260が第2の後端部214から前方に又は第1の前端部212に向かって前進する結果として、上部プレート構成要素220は、歯228、308の互いとのラチェットでの動き、並びに、中間案内構成要素300に対するプレート構成要素220、240の案内表面232のスムーズな滑動又は移動、及び、上部プレート構成要素220の細長スロット252と下部プレート構成要素240の対応するスロット内における指状突出部302のレールに似た形式での滑動の組合せによって達成される転動機構によって、下部プレート構成要素240に対して同期的に展開されることになる。プレート構成要素220、240は、図示のように、第1の前端部212における前方高さが第2の後端部214における後方高さよりも高い状態で、角度をなすか又は部分的に開放される。
【0058】
図17D及び17Eは、引き続き能動的調節段階にあるケージ210及びケージ210の後方端部又は第2の後端部214における負荷移動を示している。アクチュエータピン260が前方に送られるとき、プレート構成要素220、240は継続的に、後方に向かって角度をなし、また前方に向かって漸進的に開放される。
図17F~17Jに示すように、ケージ210はここで、完全に調節されると、最大の前方高さを有し得るが、このときに、アクチュエータピン260は最前方の位置にある。この構成では、負荷はケージ210の後方又は第2の後端部214に伝達され、ケージ210は完全に拡張又は角度調節され、ブロック又はロック位置にある。
図17Hに示すように、アクチュエータピン260上の溝270と協働するスナップアーム312上のレール又はノッチ314はここで、アクチュエータピン260の拡大されたヘッド268上の溝270とインターロックされ、それによって、中間案内構成要素300内におけるアクチュエータピン260の前方への更なる移動が防止される。この最終的な拡張位置では、ケージ210は、脊椎分節の前弯角度に適応する上で効果的であり、矢状面バランス及び脊椎へのアライメントを回復し得る。プレート構成要素220、240は、椎体の終板を押圧するように構成されており、ここでこの領域を不動化及び安定化させ得る。
【0059】
図17I及び17Jは、完全に拡張されたケージ310の様々な部分破断図を示している。これらの図は、ラチェット機構における歯の協働、細長スロット内における指状突出部の滑動、中間案内構成要素の溝内の案内表面、及びアクチュエータピンの溝内のスナップアーム上のノッチを示している。総じて、これらの機構は、角度調節及び移動が生じている間も互いに適合された状態を保つように、複合的な構造が関節運動プロセスの間も依然として無傷となることを確実にする。更に、本明細書に示した機構は、ケージ210が調節され、更なる角度移動又は拡張を阻止されている間も、スムーズな滑動を可能にするものである。
【0060】
上述のように、本開示の椎間ケージ10、210は、狭いアクセス通路を通じて挿入されることが可能となるように構成されているが、拡張及び角度調節されることが可能であり、そのため、ケージは、脊椎分節の前弯の角度を調節することが可能となっている。関節運動式ジョイントにおいてスムーズに転動し得ることにより、上部プレート構成要素20、220は、基部又は下部プレート構成要素40、240に対して効果的に上下動して、挿入のための非常に狭い前方部及び植込み後のより大きな前方部が、より大きな前弯角度に適応及び適合することを可能にし得る。加えて、ケージ10、210は、脊椎の矢状面バランス及びアライメントを効果的に回復させることができ、また脊椎分節を不動化及び安定化させるために固定を促進し得る。
【0061】
拡張可能なケージ10、210が固定を促進する能力に関して言えば、骨の治癒及び固定に関する多数の生体外及び生体内研究が示すこととして、多孔性は血管新生を可能にするために必要であり、また、新たな骨成長を促進するための所望の下部構造は、細胞付着、細胞移動、細胞増殖及び細胞分化に関して最適化された表面特性を備えた、多孔性の連続した孔ネットワークを有するべきである。同時に、新たな細胞活動のために適当な構造的支持又は機械的完全性をもたらす移植片の能力は臨床的成功を達成するための主要因であると考える人が多数いる一方で、重要な特徴としての多孔性の役割を協調する人もいる。
【0062】
他の態様と比較した一態様の相対的な重要性に関わらず、明らかなことは、安定化させるための構造的完全性、及び細胞成長を支援するための多孔性構造の両方が、適切でかつ持続可能な骨の再成長のための重要な要素である。
【0063】
したがって、これらのケージ10、210は、中実性と多孔性の特徴両方を同時に有し得る一体的な本体を形成することによってデバイスをより良好にカスタマイズすることを可能にする、現在の付加製造技法を利用し得る。いくつかの実施形態では、ケージ10、210は多孔性の構造を有し、骨接合を促進するために、孔、微細構造、及びナノ構造のネットワークを含む工学的セル構造を伴って作製され得る。例えば、工学的セル構造は、孔と、メッシュに似た外観を備えた他のマイクロ及びナノサイズ構造の相互連結ネットワークを備え得る。これらの工学的セル構造は、デバイスの表面をナノレベルで変化させるようにエッチング又はブラスチングすることによって設けられ得る。ある種類のエッチングプロセスでは、例えば、HF酸処理が利用され得る。これらの同じ製造技法が、これらのケージに内部の撮像用マーカーを設けるために用いられ得る。例えば、これらのケージはまた内部の撮像用マーカーを含み得るが、そのマーカーは、ユーザーがケージを適切に位置合わせすることを可能にし、また一般に、ナビゲーション中に視覚化によって挿入を容易にするものである。撮像用マーカーは、例えば、X線、蛍光透視又はCTスキャンの下で、網目の中の中実体として現れる。ケージは、単一のマーカーを備えても、複数のマーカーを備えてもよい。ナビゲーション及び植込みの間の視覚化を改善するために1つ又は2つ以上のマーカーを内部に埋め込まれたケージを製造することが可能であるため、これらの内部の撮像用マーカーは、ケージを植え込む容易性及び精度を大いに促進する。
【0064】
本開示の植込み型デバイスによってもたらされる別の利点として、本植込み型デバイスは、患者のニーズに合わせて特別にカスタマイズされ得る。植込み型デバイスのカスタマイズは、植込み型デバイスと、例えば、各々が構造破壊に至る圧縮率の独特の様々なデータを有する皮質骨対海綿質、骨端対中心骨、及び強膜骨対骨減少性骨などの治療される様々な質及び種類の骨との間で弾性率を好ましく適合させることに関連する。同様に、例えば、多孔性対中実性、柱状対非柱状など、様々な移植片設計に関して、類似のデータがまた生成され得る。そのようなデータは、死体から生成されても、コンピュータ有限要素で生成されてもよい。例えば、DEXAデータとの臨床上の相関性はまた、強膜骨、正常骨、又は骨減少性骨に対して使用するために、植込み型デバイスを特別に設計することを可能にする。したがって、本明細書で示されるようなカスタマイズされた植込み型デバイスを提供する能力は、複雑体構造の弾性係数(EMOCS)の整合を可能にするが、このことは、不整合を最小限にし、沈下を緩和し、かつ治癒を最適化するように植込み型デバイスを設計し、それによってより良好な臨床成果をもたらすことを可能にする。
【0065】
脊椎の頚部又は腰部のいずれかにおいて使用するための椎体間固定ケージを含めて、様々な脊椎移植片が本開示によって提供され得る。腰部後方椎間固定(PLIF)デバイスのみが示されているが、頚部椎間固定(CIF)デバイス、経大後頭孔腰部椎間固定(TLIF)デバイス、腰部前方椎間固定(ALIF)ケージ、腰部外側椎間固定(LLIF)ケージ、及び腰部斜方椎間固定(OLIF)ケージにおいても同じ原理が利用され得ると考えられる。
【0066】
本開示の他の実施形態は、本明細書に開示される本開示の仕様又は実施を考慮すれば当業者には自明であろう。仕様及び実施例は例示としてのみ考慮されることが意図されている。
【0067】
〔実施の態様〕
(1) 拡張可能な脊椎移植片であって、
第1の椎体の終板に対して配置されるように構成された上部プレート構成要素、及び隣接する第2の椎体の終板に対して配置されるように構成された下部プレート構成要素と、
前記上部プレート構成要素と前記下部プレート構成要素とを互いに連結する関節運動式機構であって、アクチュエータピンを受容するための内部キャビティを有する中間案内構成要素を備える、関節運動式機構と、
シャフトと拡大ヘッド部分とを備えるアクチュエータピンであって、前記拡張可能な脊椎移植片の角度調節を実現するために前記中間案内構成要素内で移動するように構成されている、アクチュエータピンと、を備える、拡張可能な脊椎移植片。
(2) 前記アクチュエータピンを含む前記脊椎移植片は、付加生産技法によって製造されている、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(3) 前記アクチュエータピンは、前記拡張可能な脊椎移植片の前記上部及び下部プレート構成要素並びに中間案内構成要素の内側に存在するように製造されている、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(4) 前記上部プレート構成要素及び前記下部プレート構成要素の各々は一対の延長された側壁を備え、各側壁は、内部表面上に案内表面を備える肉厚部分を有する、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(5) 前記上部及び下部プレート構成要素の前記案内表面は、前記中間案内構成要素上の案内キャビティに対して移動するように構成されている、実施態様4に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【0068】
(6) 前記肉厚部分の各々は、その一部分に1つ又は2つ以上の歯を含む、実施態様4に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(7) 前記上部及び下部プレート構成要素の前記歯は、互いに噛み合うように構成されている、実施態様6に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(8) 前記関節運動式機構は、前記上部及び下部プレート構成要素の互いに対する転動移動を可能にする、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(9) 前記上部プレート構成要素及び前記下部プレート構成要素の各々は内部に転動表面を含み、前記転動表面は、前記中間案内構成要素の頂部又は底部表面の上でスムーズに滑動するように構成されている、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(10) 前記上部プレート構成要素及び前記下部プレート構成要素の各々は内部に一連の歯を含み、前記歯は、前記中間案内構成要素の前記頂部又は底部表面の上の一連の歯の上をラチェットで動くように構成されている、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【0069】
(11) 前記アクチュエータピンは、前記上部及び下部プレート構成要素を最前方の位置で互いにロックする、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(12) 前記上部及び下部プレート構成要素は、それらの自由端部の一方において先細になっている、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(13) ケージの後方端部は、器具インターフェースを備えて構成されている、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(14) 前記中間案内構成要素は、前記上部及び下部プレート構成要素上の細長スロットに対してスライドするように構成されている、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(15) 前記中間案内構成要素は、前記上部及び下部プレート構成要素内のキャビティとスナップ嵌め係合するように構成されている隆起突出部を含む、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【0070】
(16) PLIFケージとして更に構成されている、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(17) 前記プレート構成要素が前記脊椎移植片の前方部分において互いに向かって角度をなしている、第1の構成を更に有する、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(18) 前記プレート構成要素が互いに対して平行である、中間構成を更に有する、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(19) 前記プレートが互いにロックされかつ前記脊椎移植片の後方部分において互いに向かって角度をなしている、第2の構成を更に有する、実施態様14に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(20) 前記第2の構成において、前記移植片は、前弯の角度を調節する、実施態様19に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【0071】
(21) 前記第2の構成において、前記脊椎の矢状面バランス及びアライメントが回復されている、実施態様19に記載の拡張可能な脊椎移植片。