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特許7023894サーバ、通信端末装置、移動体、通信システム、情報を提供する方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】サーバ、通信端末装置、移動体、通信システム、情報を提供する方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20220215BHJP
   H04W 4/029 20180101ALI20220215BHJP
   G08G 1/16 20060101ALN20220215BHJP
【FI】
G08G1/09 F
H04W4/029
G08G1/09 H
G08G1/16 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019128456
(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公開番号】P2021015354
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2019-12-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】海老沢 憲一
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 慶介
(72)【発明者】
【氏名】河村 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】小椋 直
(72)【発明者】
【氏名】笠浪 潤
(72)【発明者】
【氏名】大竹 博
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/030385(WO,A1)
【文献】特開2010-183268(JP,A)
【文献】特開2006-174179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を提供するサーバであって、
対象エリアを移動している複数の移動体に搭載された複数の通信端末装置それぞれの位置情報及び速度情報を取得する情報取得手段と、
前記取得した複数の通信端末装置それぞれの位置情報及び速度情報に基づいて、前記対象エリアの複数の通信端末装置それぞれについて、該通信端末装置の端末識別情報と、該通信端末装置の現在位置と、該通信端末装置に割り当てられた直接無線通信方式の通信宛先として用いられるデータリンク層のデータ処理単位のフレームを識別するフレーム識別子である通信識別子と、前記直接無線通信方式の通信により送受信されるデータの暗号化及び復号化に用いられる共通鍵と、前記データリンク層の前記フレーム識別子である通信識別子の有効期限とを対応付けた地図情報を記憶する情報記憶手段と、
前記地図情報に基づいて、前記対象エリアに位置する第1の通信端末装置の周辺の通信対象領域を設定し、前記通信対象領域に位置する一又は複数の第2の通信端末装置の位置情報と前記データリンク層の前記フレーム識別子である通信識別子と前記共通鍵と前記通信識別子の有効期限とを含む通信宛先マップの情報を作成し、前記通信宛先マップの情報を前記第1の通信端末装置に送信する情報送信手段と、を備え
前記第1の通信端末装置を基準にして前記第1の通信端末装置及び前記第2の通信端末装置それぞれの速度情報に基づいて、前記移動体で利用するサービスに応じて前記通信対象領域を設定することを特徴とするサーバ
【請求項2】
求項のサーバにおいて、
前記第2の通信端末装置の位置情報は、前記通信対象領域に定義された複数区画からなるメッシュ状の地図における前記第1の通信端末装置から相対位置情報であることを特徴とするサーバ。
【請求項3】
請求項1又は2のサーバにおいて、
前記通信端末装置の端末認証を行って前記通信識別子の有効期限を更新することを特徴とするサーバ。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかのサーバにおいて、
前記通信端末装置から前記位置情報及び速度情報を取得するタイミングは、前回の情報取得から所定時間以上経過し、且つ、前記通信端末装置が動いたタイミングであることを特徴とするサーバ。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかのサーバにおいて、
前記通信対象領域に位置する一又は複数の第2の通信端末装置の位置情報と前記データリンク層の通信識別子と前記共通鍵と前記通信識別子の有効期限とを含む通信宛先マップ情報を要求する情報要求を前記第1の通信端末装置から受信する情報要求受信手段を更に備え、
前記情報送信手段は、前記第1の通信端末装置から受信した前記情報要求に応じて、前記一又は複数の第2の通信端末装置の位置情報と前記データリンク層の通信識別子と前記共通鍵と前記通信識別子の有効期限とを含む通信宛先マップ情報を前記第1の通信端末装置に送信することを特徴とするサーバ。
【請求項6】
請求項のサーバにおいて、
前記情報要求は、前記情報要求を送信してきた前記第1の通信端末装置の現在位置の情報を含むことを特徴とするサーバ。
【請求項7】
移動体に搭載され直接無線通信方式により通信可能な通信端末装置であって、
当該通信端末装置自体の位置情報及び速度情報をサーバに送信する情報送信手段と、
当該通信端末装置自体の周辺の通信対象領域に位置する一又は複数の他の通信端末装置の位置情報と、前記他の通信端末装置に割り当てられた直接無線通信方式の通信宛先として用いられるデータリンク層のデータ処理単位のフレームを識別するフレーム識別子である通信識別子と、前記直接無線通信方式の通信により送受信されるデータの暗号化及び復号化に用いられる共通鍵と、前記データリンク層の通信識別子の有効期限とを含む、当該通信端末装置自体に対応する通信宛先マップ情報を、前記サーバから取得する情報取得手段と、
前記サーバから取得した当該通信端末装置自体に対応する通信宛先マップ情報に基づいて、当該通信端末装置自体の周辺の通信対象領域に位置する一又は複数の他の通信端末装置との間で前記直接無線通信方式の通信によりデータの送受信を行う通信手段と、
を備え
前記通信対象領域は、当該通信端末装置自体を基準にして当該通信端末装置自体及び前記他の通信端末装置それぞれの速度情報に基づいて、前記移動体で利用するサービスに応じて設定されていることを特徴とする通信端末装置。
【請求項8】
請求項の通信端末装置において、
前記他の通信端末装置の位置情報は、前記通信対象領域に定義された複数区画からなるメッシュ状の地図における当該通信端末装置自体から相対位置情報であることを特徴とする通信端末装置。
【請求項9】
請求項又はの通信端末装置において、
前記サーバに前記位置情報及び速度情報を送信するタイミングは、前回の情報取得から所定時間以上経過し、且つ、当該通信端末装置自体が動いたタイミングであることを特徴とする通信端末装置。
【請求項10】
請求項乃至のいずれかの通信端末装置において、
前記通信対象領域に位置する一又は複数の他の通信端末装置の位置情報と前記データリンク層の通信識別子と前記共通鍵と前記通信識別子の有効期限とを含む通信宛先マップ情報を要求する情報要求を前記サーバに送信する情報要求送信手段を更に備えることを特徴とする通信端末装置。
【請求項11】
請求項10の通信端末装置において、
前記情報要求は、当該通信端末装置自体の現在位置の情報を含むことを特徴とする通信端末装置。
【請求項12】
請求項乃至11のいずれか通信端末装置において、
地上、水上又は空中を移動する移動体に搭載されていることを特徴とする通信端末装置。
【請求項13】
請求項乃至11のいずれかの通信端末装置を備える移動体。
【請求項14】
請求項1乃至のいずれかのサーバと、請求項乃至12のいずれかの通信端末装置と、を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項15】
情報を提供する方法であって、
対象エリアを移動している複数の移動体に搭載された複数の通信端末装置それぞれの位置情報及び速度情報を取得することと、
前記取得した複数の通信端末装置それぞれの位置情報及び速度情報に基づいて、前記対象エリアの複数の通信端末装置それぞれについて、該通信端末装置の端末識別情報と、該通信端末装置の現在位置と、該通信端末装置に割り当てられた直接無線通信方式の通信先として用いられるデータリンク層のデータ処理単位のフレームを識別するフレーム識別子である通信識別子と、前記直接無線通信方式の通信により送受信されるデータの暗号化及び復号化に用いられる共通鍵と、前記データリンク層の通信識別子の有効期限とを対応付けた地図情報を記憶することと、
前記地図情報に基づいて、前記対象エリアに位置する第1の通信端末装置の周辺の通信対象領域を設定し、前記通信対象領域に位置する一又は複数の第2の通信端末装置の位置情報と前記データリンク層の通信識別子と前記共通鍵と前記通信識別子の有効期限とを含む通信宛先マップの情報を作成し、前記通信宛先マップの情報を前記第1の通信端末装置に送信することと、
前記第1の通信端末装置を基準にして前記第1の通信端末装置及び前記第2の通信端末装置それぞれの速度情報に基づいて、前記移動体で利用するサービスに応じて前記通信対象領域を設定することと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
情報を提供するサーバに備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
対象エリアを移動している複数の移動体に搭載された複数の通信端末装置それぞれの位置情報及び速度情報を取得するためのプログラムコードと、
前記取得した複数の通信端末装置それぞれの位置情報及び速度情報に基づいて、前記対象エリアの複数の通信端末装置それぞれについて、該通信端末装置の端末識別情報と、該通信端末装置の現在位置と、該通信端末装置に割り当てられた直接無線通信方式の通信宛先として用いられるデータリンク層のデータ処理単位のフレームを識別するフレーム識別子である通信識別子と、前記直接無線通信方式の通信により送受信されるデータの暗号化及び復号化に用いられる共通鍵と、前記データリンク層の通信識別子の有効期限とを対応付けた地図情報を記憶するためのプログラムコードと、
前記地図情報に基づいて、前記対象エリアに位置する第1の通信端末装置の周辺の通信対象領域を設定し、前記通信対象領域に位置する一又は複数の第2の通信端末装置の位置情報と前記データリンク層の通信識別子と前記共通鍵と前記通信識別子の有効期限とを含む通信宛先マップの情報を作成し、前記通信宛先マップの情報を前記第1の通信端末装置に送信するためのプログラムコードと、
前記第1の通信端末装置を基準にして前記第1の通信端末装置及び前記第2の通信端末装置それぞれの速度情報に基づいて、前記移動体で利用するサービスに応じて前記通信対象領域を設定するためのプログラムコードと、を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項17】
移動体に搭載され直接無線通信方式により通信可能な通信端末装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
当該通信端末装置自体の位置情報及び速度情報をサーバに送信するためのプログラムコードと、
当該通信端末装置自体の周辺の通信対象領域に位置する一又は複数の他の通信端末装置の位置情報と、前記他の通信端末装置に割り当てられた直接無線通信方式の通信宛先として用いられるデータリンク層のデータ処理単位のフレームを識別するフレーム識別子である通信識別子と、前記直接無線通信方式の通信により送受信されるデータの暗号化及び復号化に用いられる共通鍵と、前記データリンク層の通信識別子の有効期限とを含む、当該通信端末装置自体に対応する通信宛先マップ情報を、前記サーバから取得するためのプログラムコードと、
前記サーバから取得した当該通信端末装置自体に対応する通信宛先マップ情報に基づいて、当該通信端末装置自体の周辺の通信対象領域に位置する一又は複数の他の通信端末装置との間で前記直接無線通信方式の通信によりデータの送受信を行うためのプログラムコードと、を含み、
前記通信対象領域は、当該通信端末装置自体を基準にして当該通信端末装置自体及び前記他の通信端末装置それぞれの速度情報に基づいて、前記移動体で利用するサービスに応じて設定されている、ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離装置間の通信に用いる通信端末装置、その通信端末装置を備えた移動体及び通信システム、並びに、その通信端末装置に情報を提供するサーバ、方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、V2V(Vehicle-to-Vehicle)、V2I(Vehicle-to-Infrastructure)、V2P(Vehicle-to-Pedestrian)、V2X(Vehicle-to-Everything)などの近距離装置間(D2D:Device-to-Device)で直接無線通信する通信方式が知られている。
【0003】
例えば、3GPP(3rd Generation Partnership Project)のLTE(Long Term Evolution)や次世代(NR)の仕様では、移動通信網(コアネットワーク)を介さずに、V2V、V2I、V2P、V2Xなどの近距離装置間(D2D)でPC5と呼ばれるインターフェースを用いて直接無線通信するSidelink通信方式(以下「PC5通信方式」という。)の標準仕様が策定されている(非特許文献1、2、3、4、5参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】3GPP TS 23.285 V16.0.0 (2019-03), 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; Architecture enhancements for V2X services (Release 16)
【文献】3GPP TS 23.303 V15.1.0 (2018-06), 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; Proximity-based services (ProSe); Stage 2 (Release 15)
【文献】3GPP TS 24.386 V15.2.0 (2018-12), 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Core Network and Terminals; User Equipment (UE) to V2X control function; protocol aspects; Stage 3 (Release 15)
【文献】3GPP TR 38.885 V16.0.0 (2019-03),3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; NR; Study on NR Vehicle-to-Everything (V2X) (Release 16)
【文献】3GPP TR 23.287 V1.0.0 (2019-05),3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; Architecture enhancements for 5G System (5GS) to support Vehicle-to-Everything (V2X) services (Release 16)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のPC5通信方式などの近距離装置間の直接無線通信方式では、送信側の通信端末装置がその周辺に位置する通信対象の通信端末装置をリアルタイムに特定して通信することが難しい、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るサーバは、情報を提供するサーバである。このサーバは、対象エリアを移動可能な複数の通信端末装置それぞれの位置情報及び速度情報を取得する情報取得手段と、前記取得した複数の通信端末装置それぞれの位置情報及び速度情報に基づいて、前記対象エリアの複数の通信端末装置それぞれの現在位置と該通信端末装置に割り当てられた直接無線通信方式の通信識別子とを対応付けた地図情報を記憶する情報記憶手段と、前記地図情報に基づいて、前記対象エリアに位置する第1の通信端末装置の周辺の通信対象領域を設定し、前記通信対象領域に位置する一又は複数の第2の通信端末装置の位置情報及び通信識別子の情報を前記第1の通信端末装置に送信する情報送信手段と、を備える。
前記サーバにおいて、前記第1の通信端末装置及び前記第2の通信端末装置それぞれの速度情報に基づいて、前記通信対象領域を設定してもよい。
前記サーバにおいて、前記第2の通信端末装置の位置情報は、前記通信対象領域に定義された複数区画からなるメッシュ状の地図における前記第1の通信端末装置から相対位置情報であってもよい。
前記サーバにおいて、前記地図情報は、前記通信端末装置ごとに異なる共通鍵の情報を含み、前記第1の通信端末装置に送信する情報は、前記第2の通信端末装置に対応する共通鍵の情報を含んでもよい。
前記サーバにおいて、前記通信端末装置に割り当てられる前記通信識別子は有効期限を有し、前記通信端末装置の端末認証を行って前記通信識別子の有効期限を更新してもよい。
前記サーバにおいて、前記通信端末装置から前記位置情報及び速度情報を取得するタイミングは、前回の情報取得から所定時間以上経過し、且つ、前記通信端末装置が動いたタイミングであってもよい。
前記サーバにおいて、前記通信対象領域に位置する一又は複数の第2の通信端末装置の位置情報及び通信識別子を要求する情報要求を前記第1の通信端末装置から受信する情報要求受信手段を更に備え、前記情報送信手段は、前記第1の通信端末装置から受信した前記情報要求に応じて、前記一又は複数の第2の通信端末装置の位置情報及び通信識別子を前記第1の通信端末装置に送信してもよい。前記情報要求は、前記情報要求を送信してきた前記第1の通信端末装置の現在位置の情報を含んでもよい。
前記通信端末装置は、地上、水上又は空中を移動する移動体に搭載されていてもよい。
【0007】
本発明の他の態様に係る通信端末装置は、直接無線通信方式により通信可能な通信端末装置である。この通信端末装置は、当該通信端末装置自体の位置情報及び速度情報をサーバに送信する情報送信手段と、当該通信端末装置自体の周辺の通信対象領域に位置する一又は複数の他の通信端末装置の位置情報及び通信識別子の情報を、前記サーバから取得する情報取得手段と、前記サーバから取得した前記他の通信端末装置の位置情報及び通信識別子の情報に基づいて、前記直接無線通信方式により前記他の通信端末装置と通信する通信手段と、を備える。
前記通信端末装置において、前記他の通信端末装置の位置情報は、前記通信対象領域に定義された複数区画からなるメッシュ状の地図における当該通信端末装置自体から相対位置情報であってもよい。
前記通信端末装置において、前記サーバから受信する情報は、前記他の通信端末装置に対応する共通鍵の情報を含んでもよい。
前記通信端末装置において、前記通信端末装置に割り当てられる前記通信識別子は有効期限を有してもよい。
前記通信端末装置において、前記サーバに前記位置情報及び速度情報を送信するタイミングは、前回の情報取得から所定時間以上経過し、且つ、当該通信端末装置自体が動いたタイミングであってもよい。
前記通信端末装置において、前記通信対象領域に位置する一又は複数の他の通信端末装置の位置情報及び通信識別子を要求する情報要求を前記サーバに送信する情報要求送信手段を更に備えてもよい。前記情報要求は、当該通信端末装置自体の現在位置の情報を含んでもよい。
【0008】
本発明の更に他の態様に係る移動体は、前記いずれかの通信端末装置を備える。
【0009】
本発明の更に他の態様に係る通信システムは、前記いずれかのサーバと前記いずれかの通信端末装置とを備える。
【0010】
本発明の更に他の態様に係る方法は、情報を提供する方法である。この方法は、対象エリアを移動可能な複数の通信端末装置それぞれの位置情報及び速度情報を取得することと、前記取得した複数の通信端末装置それぞれの位置情報及び速度情報に基づいて、前記対象エリアの複数の通信端末装置それぞれの現在位置と該通信端末装置に割り当てられた直接無線通信方式の通信識別子とを対応付けた地図情報を記憶することと、前記地図情報に基づいて、前記対象エリアに位置する第1の通信端末装置の周辺の通信対象領域を設定し、前記通信対象領域に位置する一又は複数の第2の通信端末装置の位置情報及び通信識別子の情報を前記第1の通信端末装置に送信することと、を含む。
【0011】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、情報を提供するサーバに備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、対象エリアを移動可能な複数の通信端末装置それぞれの位置情報及び速度情報を取得するためのプログラムコードと、前記取得した複数の通信端末装置それぞれの位置情報及び速度情報に基づいて、前記対象エリアの複数の通信端末装置それぞれの現在位置と該通信端末装置に割り当てられた直接無線通信方式の通信識別子とを対応付けた地図情報を記憶するためのプログラムコードと、前記地図情報に基づいて、前記対象エリアに位置する第1の通信端末装置の周辺の通信対象領域を設定し、前記通信対象領域に位置する一又は複数の第2の通信端末装置の位置情報及び通信識別子の情報を前記第1の通信端末装置に送信するためのプログラムコードと、を含む。
【0012】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、直接無線通信方式により通信可能な通信端末装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、当該通信端末装置自体の位置情報及び速度情報をサーバに送信するためのプログラムコードと、当該通信端末装置自体の周辺の通信対象領域に位置する一又は複数の他の通信端末装置の位置情報及び通信識別子の情報を、前記サーバから取得するためのプログラムコードと、前記サーバから取得した前記他の通信端末装置の位置情報及び通信識別子の情報に基づいて、前記直接無線通信方式により前記他の通信端末装置と通信するためのプログラムコードと、を含む。
【0013】
前記サーバ、前記通信端末装置、前記移動体、前記通信システム、前記方法及び前記において、前記直接無線通信方式は、3GPPの標準仕様に含まれるPC5インターフェースを用いた直接無線通信方式であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、近距離装置間の直接無線通信方式において周辺に位置する移動可能な通信端末装置をリアルタイムに特定して通信できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る通信システムの全体構成の一例を示す説明図。
図2】実施形態に係るPC5通信方式による車両間のデータ通信の一例を示す説明図。
図3】(a)及び(b)は参考例に係る通信システムにおける課題を示す説明図。
図4】参考例に係る通信システムにおける他の課題を示す説明図。
図5】実施形態に係るサーバで管理されている地図情報に基づいて設定した通信対象領域における車両(UE)とL2IDとのを対応付けの一例を示す説明図。
図6】実施形態に係る車両のUEの要部構成の一例を示すブロック図。
図7】実施形態に係るサーバの要部構成の一例を示すブロック図。
図8】実施形態に係る車両のUEからサーバへの情報アップロード手順の一例を示すフローチャート。
図9】実施形態に係るサーバにおける通信宛先マップの処理の一例を示すフローチャート。
図10】実施形態に係るサーバで生成する通信宛先マップのメッシュ構造の一例を示す説明図。
図11】実施形態に係る車両のUEにおけるLayer-2 ID(L2ID)の更新処理の一例を示す説明図。
図12】実施形態に係る車両のUEにおけるPC5通信方式によるデータ通信手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る通信システムの全体構成の一例を示す説明図である。本実施形態の通信システムは、例えば、車両移動経路としての道路90を走行している複数の移動体としての車両30の通信端末装置31が、移動通信網(セルラーネットワーク)を介さずにPC5通信方式によりV2V(Vehicle-to-Vehicle)等の直接無線通信を行うことができる通信システムに適する。なお、本実施形態における車両30は、例えば乗用車、トラック、バスなどの自動車であり、本発明は車両の種類及び数に制限されない。また、本発明は、移動体が上空や水上などに設定された移動経路を移動する飛行体、船舶などの車両以外の移動体である場合にも適用することができる。
【0017】
図1において、本実施形態の通信システムは、複数の車両30の通信端末装置31それぞれと通信可能なサーバ10を備えている。サーバ10は、各車両30の通信端末装置31が移動可能な対象エリアについて、PC5通信方式による車両30間の直接無線通信に用いる地図情報を記憶・管理し、この情報を各車両30の通信端末装置31に送信して提供することができる。サーバ10は、各車両30の通信端末装置31への情報の送信を、通信端末装置31から受信した情報要求に応答して行ってもよいし、情報要求によらずに定期的に又は不定期のタイミングで自律的に配信するように行ってもよい。
【0018】
通信端末装置31からサーバ10に送信する情報要求は、その通信端末装置31の現在位置の情報を含んでもよい。この場合、サーバ10は、通信端末装置31の現在位置の情報を別途取得する必要がない。
【0019】
サーバ10は、例えば、移動通信網15の基地局16に設けられたMEC(Multi-access Edge Computing)装置である。MEC装置からなるサーバ10は、基地局16と移動通信網15のコアネットワークとの間のノード又はコアネットワークの外側に設けてもよい。
【0020】
サーバ10は、車両30の通信端末装置31が移動可能な対象エリア(ユーザへのサービス提供エリア)について、通信端末装置31のPC5通信方式による通信宛先の指定に用いる通信識別子(例えば後述のLayer-2 ID)と車両30の通信端末装置31の現在位置の情報とが対応付けられた地図情報を記憶し、通信端末装置31からの要求に応じて地図情報及びその地図情報に基づいて生成した通信宛先マップ情報を提供する各種のデータ処理を行うことができる。サーバ10で管理される地図情報は、通信端末装置31ごとに異なる共通鍵の情報を含んでもよい。また、地図情報は、道路90の位置、形状、幅W、車線91R,91L、信号機設置位置、横断歩道の位置中央分離帯の有無、路側のガードレールの有無などの道路に関する情報を含んでもよい。
【0021】
基地局16は、一つ又は複数のセル(セクタ、セクタセルとも呼ばれる。)を形成する。セルは地上又は海上に2次元的に形成してもよいし、上空から地上又は海上に向けて3次元的に形成してもよい。セルは、マクロセル、スモールセル、フェムトセル、ピコセル、大セル等であってもよい。複数のセルは、複二次元的に又は三次元的に隣り合うように分布するセルラー構造を構成してもよいし、階層的に一部又は全部が重なり合った階層セル構造を構成してもよい。基地局16は、マクロセル基地局、スモールセル基地局、フェムトセル基地局、ピコセル基地局、大セル基地局、地上等に固定設置された固定基地局、地上、海上、上空などを移動可能な移動型の基地局等であってもよい。基地局16は、eNodeB(evolved Node B:eNB)、gNodeB(gNB)、en-gNodeB(en-gNB)、アクセスポイント等と呼ばれる無線通信装置であってもよい。
【0022】
車両30の通信端末装置31は、移動通信サービスの加入者として使用可能なユーザ装置(以下「UE」という。)である。UE31は、ユーザ端末、端末、端末装置、移動局、移動機等と呼ばれる無線通信装置であってもよい。車両30のUE31は、車両30の中で利用者が携帯した状態で使用する装置でもよいし、車両30に組み込んで設置された装置(例えばナビゲーション装置の一部として組み込まれた装置)であってもよい。
【0023】
車両30のUE31は、第1の通信方式であるネットワーク通信方式(例えば、3G、LTE、又は次世代のNRの方式)により移動通信網(セルラーネットワーク)の基地局16を介してサーバ10と通信可能である。UE31は、基地局16との無線区間がアイドル状態から第1通信方式による接続状態に遷移した後、サーバ10に対して各種情報を定期的に(例えば周期的に)又は不定期に送受信することができる。
【0024】
UE31がサーバ10から受信する情報は、例えば、対象エリア(サービス提供エリア)の一部に設定した後述の通信対象領域について車両30(UE31)の位置情報とL2IDとを対応付けた(紐付けた)周辺地図情報(以下「通信宛先マップ」という。)を含む。サーバ10から送信側の車両30(UE31)が受信する通信宛先マップの情報は、通信対象領域に在圏する車両30(UE31)ごとに異なる共通鍵の情報を含んでもよい。この場合、車両間のデータ通信におけるデータ漏れを回避し、車両間のデータ通信のセキュリティを高めることができる。なお、共通鍵には有効期限を設定してもよい。
【0025】
UE31からサーバ10に送信される情報は、例えば、車両30(UE31)の現在位置を示す位置情報と速度情報とを含む。車両30(UE31)の現在位置を示す位置情報は、例えば、UE31に設けた現在位置取得手段としてのGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機の出力(測位結果)に基づいて算出することができる。また、UE31は、現在位置取得手段として、GNSS受信機、ジャイロスコープ、加速度センサ、速度センサ及び磁気センサの少なくとも一つを備え、その出力に基づいて、車両30のGNSS受信機による現在位置の測定精度が低い場合でも車両30(UE31)の移動経路を算出して車両30(UE31)の現在位置を精度よく推定したり、車両30の姿勢や向いている方位を推定したりしてもよい。この推定結果は、サーバ10に送信する情報に含めてもよい。
【0026】
UE31からサーバ10に送信される情報は、車両30(UE31)の速度V3を含み、更に車両識別情報(車両ID)を含んでもよい。車両30の速度V3は、例えば、車両30の駆動制御装置から取得することができる。車両30(UE31)の速度V3は、UE31に記録されている移動履歴情報における位置情報の時間変化(移動距離及び移動時間)に基づいて算出してもよい。ここで、車両30の「速度」は、車両30の移動の方向と速さ(=速度の絶対値、大きさ)で表されるベクトル量である。
【0027】
また、車両30のUE31は、第1の通信方式であるネットワーク通信方式(例えば、3G、LTE、又は次世代のNRの方式)により移動通信網(セルラーネットワーク)の基地局16を介して他のUEとの間でUu通信を行うことができる。UE31は、基地局16との無線区間がアイドル状態から第1通信方式による接続状態に遷移した後、他のUEとの間のUu通信を行うことができる。
【0028】
また、車両30のUE31は、移動通信網(セルラーネットワーク)の基地局を介さない第2通信方式により、他の車両との無線通信(以下「車車間通信」ともいう。)を行うことができる。第2通信方式は、例えば、PC-5(以下「PC5」ともいう。)インターフェースを用いるSidelink方式(以下、「PC5通信方式」又は「PC-5 Sidelink方式」ともいう。)である。PC-5インターフェースは、UE同士、UEと他の装置(例えば車両)、車両同士、又は、車両と他の装置が、基地局を介さないで直接通信を行うD2D(Device to Device)のインターフェースであり、3GPPリリース12以降で標準化されている。PC5通信方式(Sidelink方式)は、PC-5インターフェース等を用いて、UE同士、UEと他の装置(例えば車両)、車両同士、又は、車両と他の装置が、基地局を介さないで比較的狭いエリアで直接通信を行う近距離の無線通信方式である。
【0029】
また、車両30のUE31は、PC5通信方式(Sidelink方式)による移動通信網(セルラーネットワーク)の基地局を介さない第2通信方式による通信は、データ送信先の車両のUEとの間で、他の車両のUEを介さない単一の直接無線通信(以下「シングルホップ通信」という。)を行ってもよいし、一又は複数の他の車両のUEを介した複数の直接無線通信を伴うマルチホップ通信を行ってもよい。
【0030】
PC5通信方式では、階層化通信モデルのデータリンク層(Layer-2)におけるデータの処理単位であるフレーム(「MACパケット」とも呼ばれる。)を識別する通信識別子(フレーム識別子)であるLayer-2 ID(以下、適宜「L2ID」と略す。)が定義されている。図1中の車両30の後方に枠で囲んで例示した3桁の数字は、車両30(UE31)に割り当てられた通信識別子としてのL2IDの値である(後述の図2参照)。
【0031】
図2は、本実施形態に係るPC5通信方式による車両間のデータ通信の一例を示す説明図である。図2の複数の車両30(1)~30(3)それぞれの下方には、各車両のUE31(1)~31(3)における階層化通信モデル310(1)~310(3)の一例を示している。各階層化通信モデル310(1)~310(3)では、最下位から上位に向かって、物理層からなるレイヤ1(L1)、MAC(メディアアクセス制御)層とRLC(無線リンク制御)層とPDCP(パケットデータ収束)層とによりデータをフレーム単位で処理するレイヤ2(L2)、各種プロトコル(例えば、IP,Non-IP,ARP)を用いてデータをパケット単位で処理するネットワーク層、アプリケーション層などで構成されている。アプリケーション層におけるデータは「メッセージ」とも呼ばれる。
【0032】
図2において、第1通信端末装置(送信側の通信端末装置)である車両30(1)のUE31(1)は、例えば、移動通信の上りリンクの無線リソースの一部を用い、レイヤ2(L2)における送信先(通信宛先)の通信識別子としてのフレーム識別子であるDestination L2ID(以下、適宜「Dst.L2ID」と略す。)を指定してデータ(メッセージ)をフレーム単位で送信する。図2の例では、Dst.L2IDとして「yyy」を指定している。第2通信端末装置(受信側の通信端末装置)である受信側の車両30(2),30(3)のUE31(2),31(3)は、受信したフレームのヘッダに含まれる送信先のフレーム識別子(Dst.L2ID)が、自装置に割り当てられたフレーム識別子(L2ID)に一致しているか否かを判断する。
【0033】
また、図2において、車両30(2)のUE31(2)は、受信したフレームのヘッダに含まれる送信先のフレーム識別子(Dst.L2ID):yyyが、自装置に割り当てられたフレーム識別子(L2ID):yyyに一致していると判断し、受信したフレームのデータ(メッセージ)を含むパケットを上位層に上げるようにデータ処理することにより、当該データをアプリケーションに使用できるようにする。一方、車両30(3)のUE31(3)は、受信したフレームのヘッダに含まれる送信先のフレーム識別子(Dst.L2ID):yyyが、自装置に割り当てられたフレーム識別子(L2ID):zzzに一致していないと判断し、受信したフレームのデータ(メッセージ)を含むパケットを上位層に上げないようにデータ処理することにより、当該データをアプリケーションに使用できないようにする。
【0034】
しかしながら、図3(a)に示すように、送信側の車両30(1)のUE31(1)は、周辺に位置する送信先(通信宛先)である車両30(2)のUE31(2)のDst.L2ID(yyy)の情報がわからず、Dst.L2IDを指定したデータ送信を行うことができない場合がある。この場合、図3(b)に示すように、Dst.L2IDを指定せずにブロードキャストとしてデータを送信することにより、当該データを車両30(2)のUE31(2)が受信して使用できるようにすることが考えられる。しかし、ブロードキャストとして送信したデータは、UE31(2)以外の他の周辺のUE31(3)~31(6)でも受信して使用できることになるために、周辺に位置する特定の車両のUEのみにデータを送信する用途としては使いづらい。また、ブロードキャストの車車間通信の場合、通信宛先の車両(UE)が不特定であり、通信方向が片道になるため、通信路の秘匿化が難しい。
【0035】
また、図4に示すように、送信側の車両30(1)のUE31(1)に割り当てられるL21DであるSrc.L2ID(図中の例ではwww)は、送信元の匿名性を高めるために短時間で変化する。例えばメッセージ(データ)の送信ごとに変化する。そのため、ユニキャストの車車間通信を形成しにくい。
【0036】
そこで、本実施形態では、対象エリア(サービス提供エリア)に在圏している複数の車両30のUE31それぞれについて現在位置と通信識別子としてのL2IDとを対応付けた(紐付けた)地図情報をサーバ10で管理している。送信側の車両30のUE31は、そのUE31の現在位置の周辺の通信対象領域に位置している一又は複数の他の車両30のUE31の現在位置と通信識別子(L2ID)とを対応付けた(紐付けた)通信宛先マップをサーバ10から取得(ダウンロード)する。送信側の車両30のUE31は、その通信宛先マップを用いて、通信対象領域内の所望の車両30のUE31の通信識別子(L2ID)を送信先の通信識別子(Dst.L2ID)として付加したデータをPC5通信方式によって送信する。また、受信側の車両30のUE31は、PC5通信方式によって受信したデータに付加されている送信先の通信識別子が、自UEの現在位置を含む管理エリアに対応するL2IDに一致しているか否かを判断し、一致している場合に受信したデータを上位層に上げてアプリケーションで使用できるようにデータ処理を行う。このように通信宛先マップに含まれるL2IDを、PC5通信方式の通信識別子(Dst.L2ID)として指定することにより、送信側の車両30のUE31がPC5通信方式により受信側の車両30のUE31を指定してデータをユニキャスト送信することができる。そして、当該エリア内に位置する受信側の車両30のUE31のみ、当該データを受信してアプリケーションに使用することができる。
【0037】
更に、送信元の車両30のUE31の通信識別子(Dst.L2ID)はサーバ10で管理されて短時間で変化することがないため、受信側の車両30のUE31は、受信したデータ(メッセージ)に含まれるSrc.L2IDを用いて、又は、サーバ10から取得(ダウンロード)した通信宛先マップを用いて、上記送信側の車両30のUE31を特定してデータをユニキャスト送信することができる。
【0038】
本実施形態において、対象エリア(サービス提供エリア)に在圏する複数の車両30(UE31)の位置情報と通信識別子(L2ID)とを対応付けた(紐付けた)地図情報は、サーバ10に記憶されて管理されている。サーバ10は、地図情報のデータベース(DB)として機能し、各車両30のUE31から受信した位置情報及び速度情報に基づいて車両30(UE31)の位置情報と通信識別子(L2ID)との対応付けを新規設定したり更新したりする。各車両30のUE31は、任意のタイミングで通信宛先マップ(周辺地図情報)の要求をサーバ10に送信することにより、自UEが位置する現在位置を基準にして設定された通信対象領域に在圏する車両30(UE31)の位置情報と通信識別子(L2ID)とが対応付けられた(紐付けられた)通信宛先マップをダウンロードしてUE内に記憶することができる。
【0039】
上記L2IDとの対応付けは、例えば、PC5通信方式によって所定の受信強度で通信可能なPC-5通信可能範囲(無線通信可能範囲)内でL2IDが互いに重複しないように行い、充分に離れたエリア間ではL2IDの重複を許容するように行ってもよい。これにより、PC5通信方式によるデータ送信先の車両30のUE31の指定を確実に行うことができるとともに、そのデータ送信に使用するL2IDの個数を最小限に抑えることができる。
【0040】
図5は、本実施形態に係るサーバ10で管理されている地図情報に基づいて設定した通信対象領域における車両30(UE31)とL2IDとのを対応付けの一例を示す説明図である。図5の例は、対象エリア(サービス提供エリア)が車両30の移動可能な移動経路としての道路90である場合の例である。図5中の破線で示したエリアは、送信元の車両30のUE31(L2ID=003)を基準にし、各車両(UE)の速度(方向及び大きさ)に基づいて設定した通信対象領域95である。通信対象領域95には、車両30のUE31(L2ID=003)からデータを送信する通信宛先の候補として5台の車両30のUE31(L2ID=001,002,004,005,104)が含まれている。また、通信対象領域95は、例えば、周辺の車両への危険通知、周辺の車両と連携した隊列走行など、車両30で利用するサービスに応じて設定することができる。
【0041】
図6は、本実施形態に係る車両30のUE31の要部構成の一例を示すブロック図である。図6において、UE31は、情報取得部(情報取得手段)311と、位置情報取得部(位置情報取得手段)312と、情報記憶部(情報記憶手段)313とを備える。
【0042】
情報取得部311は、前述の通信宛先マップの情報をサーバ10から受信して取得する。例えば、情報取得部311は、ネットワーク通信方式(例えば、3G方式、LTE方式、5G等の次世代のNR方式など)を用いて、UE31に割り当てられた無線リソースを使って移動通信網(セルラーネットワーク)15の基地局16と無線通信することにより、サーバ10にアクセスして通信宛先マップの情報をダウンロードする。
【0043】
車両情報取得部312は、前述のGNSS受信機や車両30の駆動制御装置などにより、自車両30のUE31の現在位置の位置情報及び速度情報を取得する。
【0044】
情報記憶部313は、情報取得部311によってサーバ10から取得した通信宛先マップの情報と、車両情報取得部312によって取得した自車両30のUE31の現在位置の位置情報及び速度情報とを記憶する。
【0045】
更に、UE31は、識別子取得部(識別子取得手段)314と、識別子選択部(識別子選択手段)315と、データ送信部(データ送信手段)316とを備える。
【0046】
また、識別子取得部314は、周囲の車両のUE等にデータを送信する場合、情報記憶部313に格納されている通信宛先マップを参照し、自車両30のUE31の現在位置の周辺における他の車両のUEに対応する複数の通信識別子(L2ID)を取得する。また、識別子取得部314は、周囲の車両のUE等からデータを受信する場合、情報記憶部313に格納されている通信宛先マップを参照し、自車両30のUE31の現在位置の周辺における他の車両のUEに対応する複数の通信識別子(L2ID)を取得する。
【0047】
識別子選択部315は、周囲の車両のUE等にデータを送信する場合、識別子取得部314で取得した複数の通信識別子(L2ID)から所望の車両(UE)に対応するL2IDを、Dst.L2IDとして選択する。なお、識別子選択部315は、PC5通信方式によるデータ送信を伴う通信のサービスの種類及び通信の用途の少なくとも一方に応じて、特定の車両(UE)に対応するL2IDを、Dst.L2IDとして選択してもよい。この場合は、PC5通信方式によるデータ送信を伴う通信のサービスの種類ごとに、その通信の用途ごとに、又は、その種類及び用途の組み合わせごとに、異なる車両(UE)を指定してデータを送信することができる。
【0048】
データ送信部316は、データ送信対象の特定の車両(UE)に対応するL2IDをDst.L2ID(送信先の通信識別子)として付加したデータを含むフレームを、PC5通信方式のシングルホップ通信(以下「PC5シングルホップ通信」ともいう。)、PC5通信方式のマルチホップ通信(以下「PC5マルチホップ通信」ともいう。)、又は、移動通信網(セルラーネットワーク)の基地局を介したネットワーク通信方式のUu通信によって、周辺エリアに送信する。
【0049】
また、UE31は、データ受信部(データ受信手段)317と、データ処理部(データ処理手段)318とを備える。データ受信部317は、PC5シングルホップ通信、PC5マルチホップ通信、又は、移動通信網(セルラーネットワーク)の基地局を介したネットワーク通信方式のUu通信によって、周辺の車両のUEからデータを含むフレームを受信する。
【0050】
データ処理部318は、データ受信部317によって受信したデータにDst.L2IDとして付加されている送信先のL2IDが、自車両30(UE31)の現在位置を含む管理エリアに対応するL2IDに一致している場合に、前記受信したデータをアプリケーションで使用可能にするデータ処理を行う。
【0051】
また、UE31は、サーバ10に各種情報を送信する情報送信部(情報送信手段)319を備える。情報送信部319は、定期的に又は不定期のタイミングに、自車両30(UE31)の現在位置及び速度情報を含む情報をサーバ10に送信する。例えば、情報送信部319は、前回の情報送信時から所定の時間が経過し且つ自車両が移動したときに、自車両30(UE31)の現在位置及び速度情報を含む情報をサーバ10に送信する。なお、情報送信部319は、自車両30(UE31)の現在位置及び速度情報とともに、送信電力、受信データに含まれる送信側の通信識別子等の通信関連情報をサーバ10に送信してもよい。
【0052】
また、UE31は、他のUEとの間のデータ通信やサーバ10との通信を制御する通信制御部(通信制御手段)320を備える。例えば、通信制御部320は、サーバ10から受信した情報に基づいて、PC5通信方式によるデータ送信先のUEとのシングルホップ通信を、PC5通信方式による一又は複数の他のUEを介したマルチホップ通信及び移動体通信網を介したUu通信の少なくとも一方の通信に切り替えるように制御してもよい。また、通信制御部320は、サーバ10から受信した情報に基づいて、PC5通信方式による送信電力を抑制するように制御してもよい。
【0053】
図7は、本実施形態に係るサーバ10の要部構成の一例を示すブロック図である。図7において、サーバ10は、情報記憶部(記憶手段)101と、要求受信部(要求受信手段)102と、情報送信部(情報送信手段)103と、車両(UE)情報受信部(情報受信手段)104と、情報処理部(情報処理手段)105とを備える。
【0054】
情報記憶部101は、車両30のUE31が移動可能な対象エリア(ユーザへのサービス提供エリア)について、UE31のPC5通信方式による通信宛先の指定に用いるL2IDが車両30のUE31ごとに対応付けられた地図情報を記憶する。なお、本実施形態の地図情報の対象エリアは2次元的なエリアであるが、UEが搭載される移動体が3次元空間を移動する場合は地図情報の対象エリアは3次元空間であってもよい。
【0055】
表1は、本実施形態のサーバ10に記憶されて管理される地図情報の一例を示している。表1の例では、車両30に搭載されたUE31の端末識別情報と、UE31ごとに割り当てられた通信識別子としてのLayer-2 ID(L2ID)と、PC5通信方式によるデータ通信時にデータの暗号化及び復号化に用いられる共通鍵と、Layer-2 ID(L2ID)の有効期限とが互いに対応付けられている(紐付けられている)。
【表1】
【0056】
Layer-2 ID(L2ID)は、車両間のデータ通信時にデータ送信先の車両30(UE31)の通信識別子(Dst. Layer-2 ID)や、データ送信元の車両30(UE31)の通信識別子(Src. Layer-2 ID)として、送信対象のデータ(メッセージ)に含めることができる。端末識別情報は、通信端末装置(UE)を一意に識別可能な情報であり、例えば移動通信システムにおける移動局に一意に割り当てられるIMSI(International Mobile Subscriber Identity)である。端末識別情報は、UEに一意に割り当てられる電話番号(MSISDN:Mobile Subscriber Integrated Services Digital Network Number)や、ネットワーク機器に割り当てられるMACアドレス等の情報であってもよい。なお、本実施形態の通信識別子としては、Layer-2 ID(L2ID)の代わりに、IMSIなどの端末識別情報を用いてもよい。
【0057】
また、情報記憶部101は、前記地図情報に基づいて設定した送信側の車両のUE(第1の通信端末装置)の周辺の通信対象領域に位置する他の一又は複数の受信側の車両のUE(第2の通信端末装置)の位置情報及び通信識別子の情報を含む通信宛先マップの情報を記憶する。
【0058】
表2は、通信宛先マップの情報の一例を示す。表2の例では、周辺の通信対象領域に位置する受信側の車両のUEの通信識別子としてのLayer-2 ID(L2ID)と、その車両(UE)の位置情報(相対位置)と、PC5通信方式によるデータ通信時にデータの暗号化及び復号化に用いられる共通鍵と、Layer-2 ID(L2ID)の有効期限とが互いに対応付けられている(紐付けられている)。
【表2】
【0059】
表2における車両(UE)の位置情報は、後述の通信対象領域に定義された複数の区画(タイル)からなるメッシュ状の地図における送信側の車両(UE)を基準にした2次元的な相対位置である。例えば、送信側の車両(UE)を原点として前方向の2つ目で且つ右方向に2つめの区画(タイル)の相対位置を(2,2)で表し、後方向の2つ目で且つ右方向に1つめの区画(タイル)の相対位置を(1,-2)で表す。位置情報としては、複数組の相対位置の情報を対応付けて記憶してもよい。また、本実施形態の地図情報の対象エリアは2次元的なエリアであるが、UEが搭載される移動体が3次元空間を移動する場合、通信宛先マップは3次元空間について生成してもよい。また、車両(UE)の位置情報は、絶対位置情報(例えば、緯度、経度、高度)であってもよい。
【0060】
要求受信部102は、UE31(車両30)の現在位置の位置情報を含む情報要求(通信宛先マップ要求)をUE31から受信する。なお、サーバ10がUE31(車両30)の現在位置の位置情報を別途取得できる場合は、前記情報要求にUE31(車両30)の現在位置の位置情報を含めなくてもよい。
【0061】
情報送信部103は、車両30のUE31から受信した情報要求(通信宛先マップ要求)に基づいて、当該UE31(車両30)の周辺の通信対象領域に位置する他の一又は複数の車両(UE)の位置情報及びL2ID(通信識別子)の情報を含む通信宛先マップの情報を、当該車両30のUE31に送信する。
【0062】
車両(UE)情報受信部104は、対象エリア(サービス提供エリア)に位置する複数の車両30のUE31それぞれから、そのUE31(車両30)の現在位置と速度とを含む情報を受信する。受信情報は、UE31(車両30)の識別情報を含んでもよい。
【0063】
情報処理部105は、複数の車両30のUE31から受信した情報に基づいて、対象エリア(サービス提供エリア)について、車両30(UE31)のL2IDと現在位置の情報とが対応付けられた地図情報を新規に作成したり、既存の地図情報を更新したりする。また、情報処理部105は、前記地図情報に基づいて、UE31の現在位置の周辺の通信対象領域を設定し、その通信対象領域に位置している一又は複数の他の車両30のUE31の現在位置とL2IDとを対応付けた(紐付けた)通信宛先マップを生成する。
【0064】
図8は、本実施形態に係る車両30のUE31からサーバ10への情報アップロード手順の一例を示すフローチャートである。
図8において、対象エリアに在圏する車両30のUE31は、所定のタイミングで定期的に(例えば周期的に)又は不定期に、基地局16を介してサーバ10に車両情報(現在位置及び速度)をアップロードする。例えば、車両30のUE31は、前回の情報アップロードタイミングから所定時間(X秒)待った(S101)後、自車両30が動いたか否かを判断し(S102)、自車両30が動いた場合(S102でYES)のみ自車両の測位等を行って車両情報を取得し(S103)、サーバ10にアップロードする(S104)。一方、自車両30が動いていない場合(S102でNO)は、自車両30の位置情報及び速度に変化がないので、車両情報の取得及びサーバ10へのアップロードを行わない。これにより、各UE31での処理の負荷を抑制できるとともに、基地局16を介した通信の負荷及びサーバ10の負荷を抑制することができる。特に、対象エリアに多数の車両30のUE31が在圏する場合に効果的である。
【0065】
図9は、実施形態に係るサーバ10における通信宛先マップの処理の一例を示すフローチャートである。
図9において、サーバ10は、対象エリアの複数の車両30のUE31から車両情報(位置情報及び速度情報)を受信する(S201)と、その受信した車両情報に基づいて、対象エリアについて、車両30(UE31)のL2IDと現在位置の情報とが対応付けられた地図情報を新規に作成したり、既存の地図情報を更新したりする(S202)。
【0066】
サーバ10は、任意のタイミングで、データ送信を行おうとしている送信側の車両30(UE31)から通信宛先マップを要求する通信宛先マップ要求を受信する(S203)と、前記地図情報に基づいて、車両30(UE31)の現在位置の周辺の通信対象領域を設定し(S204)、その通信対象領域に位置している一又は複数の他の車両30のUE31の現在位置とL2IDとを対応付けた(紐付けた)通信宛先マップを生成する(S205)。サーバ10は、通信宛先マップ要求を送信してきた車両30(UE31)に、上記生成した通信宛先マップを送信する(S206)。
【0067】
なお、図9の例では、通信宛先マップ要求の受信に基づいて通信対象領域の設定、通信宛先マップの生成及び送信を行っているが、通信宛先マップ要求を受信しないで、対象エリア内のすべて又は一部の車両30(UE31)のそれぞれについて通信対象領域の設定及び通信宛先マップの生成を行い、前記すべて又は一部の車両30(UE31)のそれぞれに通信宛先マップを配信してもよい。
【0068】
図10は、実施形態に係るサーバ10で生成する通信宛先マップのメッシュ構造の一例を示す説明図である。図中の車両の黒丸の位置がUEの位置であり、その黒丸に接する矢印が車両の速度(方向、大きさ)である。
図10において、通信対象領域(図中の破線領域)95を含むエリアに、複数区画(タイル)96Tからなるメッシュ状の地図96が定義されている。区画(タイル)96Tの形状は例えば正方形(3次元の通信宛先マップの場合は例えば立方体)であり、その一辺のサイズ(例えば5m又は10m)は車両の長さや道路幅を考慮して設定される。メッシュ状の地図96における各車両の相対位置は、送信側車両が位置する区画(タイル)96Tを原点(0,0)とした受信側車両が位置する区画(タイル)96Tの相対座標(x,y)で表現される。図示の例では、L2ID=003の車両が送信側車両であり、その送信側車両の移動方向の前方(後方)を+y方向(-y方向)とし、当該移動方向に向かって右方向(左方向)を+x方向(-x方向)として、受信側車両が位置する区画(タイル)96Tの相対座標(x,y)で表現している。例えば送信側車両(L2ID=003)の前方を走行している車両(L2ID=005)の相対位置の座標は(0,4)で表現される。
【0069】
メッシュ状の地図96で表現された通信宛先マップにおける周辺の車両(UE)の相対位置のマッピングは、その周辺の車両(UE)の図中矢印で示す速度(方向、大きさ)に基づいて、当該通信宛先マップのダウンロード後から次の通信宛先マップのダウンロード(更新)までの時間を予測して行う。例えば、次の通信宛先マップのダウンロード(更新)までの時間内に複数の区画(タイル)96Tを通過すると予測される場合は、その複数の区画(タイル)96Tの座標を、通信宛先マップにおける当該車両(UE)の相対位置情報とする。すなわち、通信宛先マップでは1台の周辺車両を複数の区画(タイル)96Tにマッピングしてもよい。
【0070】
このようにメッシュ状の地図96上で自車両の周辺に位置する周辺車両(UE)の位置を表現された通信宛先マップをサーバ10からダウンロードすることにより、通信宛先マップのデータ量が少なくて済み、また、データを送信する対象の車両の特定が容易になる。
【0071】
図11は、実施形態に係る車両30のUE31におけるLayer-2 ID(L2ID)の更新処理の一例を示す説明図である。
図11において、車両30が起動(例えばエンジンスタート)されると、車両30のUE31は、自車両のUE31に対応するL2ID(通信識別子)を有するか否か(情報記憶部に記憶されている否か)を確認し(S302)、L2IDを有しない場合(S302でNO)は、サーバ10にアクセスして自車両のUE31に対応するL2IDを取得して記憶する(S303)。
【0072】
次に、車両30のUE31は、記憶されているL2IDの有効期限を確認し(S304)、所定時間(Y秒)後に失効するか否かを確認する(S305)。ここで、L2IDが失効するまでの猶予時間(Y秒)は、例えば、L2IDの失効による車車間のデータ通信の中断又は停止が発生しないように当該車両の連続使用時間(起動停止までの時間)よりも充分長い時間に設定される。
【0073】
L2IDが所定時間(Y秒)後に失効する場合(S305でYES)、車両30のUE31は、UE31が不正に使用されていないことを確認するためにパスワード入力や、IMSIなどを用いたモバイル認証基盤などによってUE31の端末認証処理を行い(S306)、認証処理に成功したら、当該L2IDの有効期限の更新をサーバ10に要求する(S307)。更新の要求を受信したサーバ10は、当該UE31の有効期限を所定期間だけ延ばすように更新する。
【0074】
このように各車両のUEに割り当てるL2IDに有効期限を設定するとともに、その有効期限の更新に当該UEにおける端末認証を要求することにより、車両間のデータ通信に用いるL2IDが不正使用される可能性を低めることができ、車両間のデータ通信のセキュリティを高めることができる。
【0075】
図12は、本実施形態に係る送信側の車両30のUE31におけるPC5通信方式によるデータ通信手順の一例を示すフローチャートである。
図12において、送信側の車両30のUE31は、所定のタイミングで定期的に(例えば周期的に)又は不定期に、測位処理を実行して自UE31の現在位置を取得し(S401)、自UE31の現在位置の周辺エリアの通信宛先マップを要求する(S402)。
【0076】
次に、送信側のUE31は、サーバ10から、周辺エリアに位置する他の車両のL2ID,相対位置及び共通鍵を含む通信宛先マップの情報を受信し(S403)、その通信宛先マップの情報に基づき、PC5通信方式によって周囲の車両(UE)にデータを送信するサービスの種類に応じて、データを送信したい周辺の対象車両を選定する(S404)。
【0077】
次に、送信側のUE31は、上記選定した周辺の対象車両に対応するL2IDをDst.L2ID(送信先の通信識別子)として付加して指定し、そのDst.L2IDを指定したデータを含むフレームを、PC5通信方式によって周辺に送信する(S405)。
【0078】
以上、本実施形態によれば、対象エリアに位置する複数の車両30のUE31について、PC5通信方式による通信に用いる通信識別子と現在位置と速度の情報をサーバ10で一括管理し、通信宛先マップとして各UE31に提供できるので、PC5通信方式を用いて車両30のUE31から送信する際、そのUE31から通信可能な車両(UE)をリアルタイムに特定することができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、LTE又は第5世代(NR)等の次世代の3GPP標準仕様の階層化通信モデルにおけるデータリンク層(Layer-2)のみを使って(アプリケーション層は意識せずに),PC-5通信方式の宛先のエリアを限定することができる。
また、アプリケーション層における不要なデータの処理を減らすことができ、アプリケーションの要件を緩和することができる。
また、PC5通信方式のアンテナ指向性ビームの要件を緩和することができ、PC5通信のアンテナの小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0080】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに通信端末装置(UE)、基地局、サーバ、MEC装置及び通信システムの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0081】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、eNode B、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0082】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0083】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であれよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0084】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0085】
10 :サーバ
15 :移動通信網
16 :基地局
30 :車両
31 :通信端末装置(UE)
90 :道路
95 :通信対象領域
96 :地図
101 :情報記憶部
102 :要求受信部
103 :情報送信部
104 :情報受信部
105 :情報処理部
311 :情報取得部
312 :車両情報取得部
313 :情報記憶部
314 :識別子取得部
315 :識別子選択部
316 :データ送信部
317 :データ受信部
318 :データ処理部
319 :情報送信部
320 :通信制御部
図1
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図3
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図10
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図12