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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】吸収性物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20220215BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20220215BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20220215BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
A61F13/15 352
A61F13/15 321
A61F13/15 355A
A61F13/53 100
A61F13/53 300
A61F13/533 100
A61F13/539
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019165534
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2020044330
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2019-09-24
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2018172507
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】田代 和泉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英聡
(72)【発明者】
【氏名】木村 笙子
【合議体】
【審判長】芦原 康裕
【審判官】内田 博之
【審判官】間中 耕治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-459(JP,A)
【文献】特開2017-196163(JP,A)
【文献】特開2012-179220(JP,A)
【文献】特開2017-158729(JP,A)
【文献】特開2005-152241(JP,A)
【文献】特開2005-218648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84,A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高吸収性ポリマーと弾性をもつ繊維材料を含む吸収性コアにラップシートを被覆して吸収体を得る第一工程と、
前記第一工程で得た前記吸収体の肌対向面側の表面に液透過性のトップシートを配置して積層体を得る第二工程と、
前記第二工程で得た前記積層体を一対のロール間に通して前記吸収体及び前記トップシートを厚み方向に圧搾し、前記積層体の長手方向に対して前記積層体の幅方向の一方に傾斜する直線状の第一傾斜部と前記長手方向に対して前記幅方向の他方に傾斜して前記第一傾斜部と交差する直線状の第二傾斜部とを有する凹部を、前記積層体の前記肌対向面側に溝状かつ格子状に設ける第三工程と、を備え、
前記第一工程では、前記吸収性コアの前記凹部に対応する位置において、前記高吸収性ポリマーの含有量を、75g/m2以上、300g/m2以下とするとともに、前記繊維材料の含有量を、75g/m2以上、250g/m2以下とし、
前記第三工程では、前記ロール間のクリアランスを、0.1mm以上、0.5mm以下とし、前記ロールから前記積層体に付与する圧力を、1.2MPa以上、2.0MPa以下とする、
ことを特徴とする吸収性物品の製造方法。
【請求項2】
前記第三工程では、前記クリアランスを、0.15mm以上とする、
請求項1に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項3】
前記凹部に対応する位置において、前記吸収性コアと前記ラップシートとを、ホットメルト接着剤を介して接合する第四工程を備えた、
請求項1又は2に記載の吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつや尿パッドといった吸収性物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙おむつ、尿パッドや生理用ナプキンといった吸収性物品が知られている。吸収性物品には、液透過性をもつとともに肌面と接触するトップシートと、パルプやレーヨンなどの繊維材料及び高吸収性ポリマーを有する吸収体とが設けられている。着用者から排泄される尿や経血といった液体の水分は、トップシートを透過して、吸収体によって吸収されて保持される。
【0003】
吸収性物品の着用時のフィット性、並びに排泄物の吸収及び保持性能を高めるために、様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、吸収体を厚み方向に圧縮した圧搾部(凹部)が形成された吸収性物品が開示されている。特許文献1の吸収性物品では、長手方向に直線状の凹部が2本設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-136126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件は、凹部の形状を維持する性能を高めた吸収性物品を製造することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件の発明者は、上記の課題を鋭意検討した。その結果、吸収体を得る工程で、吸収性コアの凹部に対応する位置における高吸収性ポリマー及び繊維材料の各含有量を所定の範囲内の値とし、凹部を設ける工程で、ロール間のクリアランスとロールから積層体に付与する圧力とを所定の範囲内の値とすることにより、凹部の形状維持性能を高められるとともに、高吸収性ポリマーの漏出を抑制できることを見出した。そして、以下に例示する吸収性物品の製造方法を完成するに至った。
ここで開示する吸収性物品の製造方法は、高吸収性ポリマー及び繊維材料を含む吸収性コアにラップシートを被覆して吸収体を得る第一工程と、前記第一工程で得た前記吸収体の肌対向面側の表面に液透過性のトップシートを配置して積層体を得る第二工程と、前記第二工程で得た前記積層体を一対のロール間に通して前記吸収体及び前記トップシートを厚み方向に圧搾し、前記積層体の前記肌対向面側に凹部を設ける第三工程と、を備え、前記第一工程では、前記吸収性コアの前記凹部に対応する位置において、前記高吸収性ポリマーの含有量を、75g/m2以上、300g/m2以下とするとともに、前記繊維材料の含有量を、75g/m2以上、250g/m2以下とし、前記第三工程では、前記ロール間のクリアランスを、0.1mm以上、0.5mm以下とし、前記ロールから前記積層体に付与する圧力を、1.2MPa以上、2.0MPa以下とする。
【発明の効果】
【0007】
本件によれば、凹部の形状を維持する性能を高めた吸収性物品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態及び実施例に関する紙おむつの平面視展開図である。
図2図1の紙おむつの分解斜視図である。
図3図1のIII-III矢視断面図である。
図4図1の紙おむつに設けられた凹部の横断面図である。
図5】積層体の平面図であり、定着率測定で定めた測定対象を太線で示している。
図6】ポリマー漏れ試験で用いた器具の模式図である。
図7】実施形態及び実施例に関する紙おむつの製造手順(製造方法)を示すフローチャートである。
図8】積層体に凹部を形成するロールの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本件を実施するための形態を説明する。下記の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
【0010】
実施形態で述べる吸収性物品は、着用者に装着され、着用者から排泄される尿や便等の排泄物の水分(以下、「排泄水分」という)を吸収し保持する衛生用品である。この吸収性物品には、テープ型やパンツ型の紙おむつ(いわゆる「使い捨ておむつ」)のように、着用者へ直接的に装着されるもののほか、尿パッド、生理用ナプキン、パンティーライナーのように、着用者の下着等へ装着されるものも含まれる。
【0011】
以下の実施形態では、吸収性物品としての紙おむつにおいて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と着用者の背部に対向して配置される後身頃とを、紙おむつの延在面上で結ぶ方向を長手方向とする。紙おむつの延在面において、これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、紙おむつが着用者に装着された状態(以下、「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌対向面側とし、肌対向面側の反対側(外側)を肌非対向面側とする。さらに、肌対向面側と肌非対向面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向のいずれにも直交する方向を幅方向とする。その他、厚み方向の肌対向面側から視ることを平面視とする。そして、平面視での幅方向を左右方向ともいう。
【0012】
紙おむつにおける各構成の向きについては、例えば長手方向に沿うと表現する場合に、長手方向と平行なことだけでなく、長手方向とほぼ平行なことも含むものとする。具体的には、長手方向に対する傾斜角度が45°未満で延在することを長手方向に沿うものとする。同様に、幅方向や厚み方向といった各方向に沿うと表現する場合についても、各方向に対する傾斜角度が45°未満で延在することを意味する。なお、本明細書において、例えば「1~100」との数値範囲の表記は、その下限値「1」及び上限値「100」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
【0013】
本実施形態では、吸収性物品としてテープ型の紙おむつを例示する。テープ型の紙おむつは、着用者の腰回りが周状に連続して構成されたパンツ型の紙おむつとは異なり、腰回りの前後に分離した前身頃及び後身頃をもつ。このテープ型の紙おむつは、乳幼児のほか、成人の要介護者といった様々な着用者に装着される。以下、「テープ型の紙おむつ」を単に「紙おむつ」と略称する。
【0014】
[1.吸収性物品]
[1-1.基本構成]
図1図3を参照して、吸収性物品としての紙おむつ100の基本的な構成を説明する。なお、図3の断面図では、各構成を把握しやすくするために、各シート類の厚みを誇張して示している。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る紙おむつ100は、幅方向の中心線Aを基準として対称(中心線Aについて左右対称)に形成されている。紙おむつ100は、長手方向に沿って前身頃2、股下部3、後身頃4の三つの領域に大別される。前身頃2は、着用状態で着用者の下腹部側に位置する領域である。後身頃4は、着用状態で着用者の臀部側に位置する領域である。股下部3は、前身頃2と後身頃4との間に位置し、着用状態で着用者の股下に位置する領域である。
【0016】
紙おむつ100は、前身頃2において股下部3よりも幅方向の外方に延出する左右一対の前方サイドフラップ5と、後身頃4において股下部3よりも幅方向の外方に延出する左右一対の後方サイドフラップ6とを有している。また、紙おむつ100は、紙おむつ100を装着状態に保持するためのファスニング機構を有している。本実施形態では、各後方サイドフラップ6から幅方向の外方に突出して設けられた左右一対のファスニングテープ(以下、「テープ」と略称する)60と、前身頃2に設けられてテープ60が止着されるパッチ38とで構成されたファスニング機構を例示する。なお、これに代えて、テープ60が前方サイドフラップ5から幅方向の外方に突出して設けられ、パッチ38が後身頃4に設けられてもよい。また、テープ60は、左右2対以上設けられてもよい。
以下、紙おむつ100の各構成要素について説明する。
【0017】
〔積層体〕
紙おむつ100は、少なくとも股下部3に積層体10を備える。本実施形態の積層体10は、前身頃2、股下部3、後身頃4に亘って設けられている。積層体10は、平面視でほぼ矩形状であり、その長手方向及び幅方向が、紙おむつ100の長手方向及び幅方向とそれぞれ一致する向きで設けられる。図2及び図3に示すように、本実施形態の積層体10は、吸収体20と、吸収体20の肌対向面側に積層されるトップシート31と、吸収体20の肌非対向面側に積層されるバックシート32とを備える。すなわち、積層体10は、吸収体20の両主面側にトップシート31とバックシート32とがそれぞれ配置された積層構造体である。
【0018】
積層体10は、肌対向面側からの排泄水分をトップシート31に透過させて、透過した排泄水分を吸収体20によって吸収保持するとともに、バックシート32によって肌非対向面側から外部への漏出を阻止する。なお、トップシート31及びバックシート32と吸収体20とは、ホットメルト接着剤等の公知の接着剤によって固定することができる。
【0019】
<吸収体>
吸収体20は、排泄水分を吸収して保持する吸液性をもつマット状(あるいはパッド状)の部材である。図1に示すように、本実施形態では、前身頃2と後身頃4との間に亘って設けられた砂時計形状の吸収体20を例示する。すなわち、吸収体20は、前身頃2及び後身頃4に配置された長手方向の両端部に対し、股下部3に配置された長手方向の中間部が、幅方向の寸法を絞られた形状とされている。また、吸収体20は、後身頃4側で幅方向の寸法が大きい部分の長手方向の寸法が、前身頃2側で幅方向寸法が大きい部分の長手方向の寸法よりも大きい、非対称な形状となっている。ただし、吸収体20の平面視形状は、上記したような形状に限られず、矩形(すなわち幅方向寸法が一定)であってもよいし、長手方向の両端部がいずれも円形とされたダンベル形状であってもよい。
【0020】
図3に示すように、吸収体20は、吸収性コア21とコアラップシート(以下、「ラップシート」と略称する)24とを有している。吸収体20は、吸収性コア21がラップシート24によって被包(ラップ)されることで形成されている。すなわち、吸収体20は、吸収性コア21をラップシート24に内蔵させたものである。
【0021】
(吸収性コア)
吸収性コア21は、液体を吸収して保持するマット状の部材である。吸収性コア21は、高吸収性ポリマー(SAP;Superabsorbent polymer、高吸水性高分子あるいは高吸水性樹脂とも称される)22と、繊維材料23とを含んでいる。吸収性コア21は、繊維材料23に高吸収性ポリマー22が混合されることにより形成されている。繊維材料23は、親水性を有する極細の繊維が絡まり合って形成されている。高吸収性ポリマー22は、繊維材料23に混合されることにより、通常、繊維材料23に埋没保持されている。高吸収性ポリマー22は、繊維材料23によって拡散された液体を吸収し保持することができる。
【0022】
高吸収性ポリマー22としては、使い捨ておむつや尿パッドのような吸収性物品における吸収体の材料として用いられている各種公知のものを用いることができる。例えば、デンプン-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン-アクリロニトリル共重合体のケン化物、デンプン-アクリル酸エチルグラフト共重合体のケン化物等のデンプン系;ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物等のセルロース系;ポリアクリル酸(塩)、アクリル酸で架橋されたポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール-無水マレイン酸反応物の架橋物等の合成ポリマー系のものを高吸収性ポリマー22として用いることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、ポリアクリル酸(塩)が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。高吸収性ポリマー22の形状は特に限定されないが、例えば、粒状、粉体状、ペレット状、ゾル状、フィルム状、繊維状等のものを用いることができる。
【0023】
高吸収性ポリマー22の製造は、例えば、モノマー、架橋剤、及び重合開始剤を水に溶解して重合を行う水溶液重合法と、モノマー、架橋剤、及び重合開始剤の水溶液を有機溶剤中に分散して重合する逆相懸濁重合法との重合技術を利用して行うことができる。水溶液重合法によって得られた架橋重合体は、通常、塊状で得られ、重合後に粉砕を行うことで不定形の破砕状粒子として得られる。これに対して、逆相懸濁重合法によって得られた架橋重合体は、通常、粒子状で得られるため、粉砕が不要となる。水溶液重合法を利用して得られる破砕状の高吸収性ポリマー粒子に対して、逆相懸濁重合法を利用して得られる球状の高吸収性ポリマー粒子は、凹部70の形成時にラップシート24及びトップシート31の破れを引き起こしにくい。したがって、高吸収性ポリマー22の形状は粒状のものがより好ましく、逆相懸濁重合法を利用して得られる球状のものがさらに好ましい。
【0024】
繊維材料23としては、例えば、パルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維等のセルロース系の繊維や;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施したものが挙げられる。中でも、吸収性の観点から、繊維又は合成繊維を粉砕あるいは解繊したフラッフパルプを用いることが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(ラップシート)
ラップシート24は、吸収性コア21を被覆するシート状の部材である。ラップシート24は、吸収性コア21の肌対向面側と肌非対向面側とを含めて、吸収性コア21の全体を被覆している。ラップシート24によって吸収性コア21が被包されることで、吸収性コア21の定形性が確保される。
ラップシート24は、吸収性物品に用いられている公知の材料で形成することができる。ラップシート24を構成する材料としては、例えばティッシュペーパーのような紙;スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、エアースルー不織布、SMS(Spunbond Meltblown Spunbond)不織布等を用いることができる。
【0026】
<トップシート>
トップシート31は、積層体10において最も肌対向面側に配置されるシート状の部材である。トップシート31は、吸収体20よりも幅方向寸法が大きく、肌対向面側から吸収体20の全面を被覆する。また、トップシート31は、装着状態で着用者の肌に接触し、排泄水分を透過させて吸収体20に吸収させる。このため、トップシート31は、少なくとも一部が液透過性をもつ材料で構成される。また、トップシート31は、着用者に対するフィット性を確保するために、高い柔軟性をもつ材料で構成されることが好ましい。また、装着状態での蒸れを抑えるために、通気性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。
【0027】
トップシート31を構成する材料としては、例えば、織布、不織布、多孔性フィルム等を用いることができる。または、トップシート31としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性樹脂の繊維に親水化処理を施して不織布にしたものを用いてもよい。トップシート31を構成する不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、エアースルー不織布、メルトブローン不織布、SMS不織布等を用いることができる。
【0028】
<バックシート>
バックシート32は、積層体10で最も肌非対向面側に配置されるシート状の部材である。バックシート32は、吸収体20及びトップシート31よりも幅方向寸法が大きく、肌非対向面側から吸収体20及びトップシート31の全面を被覆する。また、バックシート32は、吸収体20から肌非対向面側に排泄物が漏れるのを防ぐ。このため、バックシート32は、液不透過性をもつ材料で構成される。また、バックシート32は、装着状態での蒸れを抑えるために、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。
【0029】
バックシート32を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂シートを用いることができる。中でも、バックシート32としては、0.1~0.4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性の熱可塑性樹脂シートを用いることが好ましい。このようなシートとしては、例えば、熱可塑性樹樹脂中に無機充填剤を混練してシートを成形した後に、延伸することにより得られるシートを用いることができる。
【0030】
〔他のシート〕
紙おむつ100は、積層体10に対して積層されるサイドシート33及びカバーシート35をさらに備えている。サイドシート33及びカバーシート35と積層体10とは、ホットメルト接着剤等の公知の接着剤によって固定することができる。
【0031】
<サイドシート>
サイドシート33は、積層体10の両側部に後述する立体ギャザー42を形成するために、積層体10の幅方向の両側に設けられる左右一対の部材である。サイドシート33は、積層体10の幅方向の外方から肌対向面側に亘って配置される。図2に示すように、サイドシート33は、前身頃2において股下部3よりも幅方向外方に延出する前フラップ部34Aと、後身頃4において股下部3よりも幅方向外方に延出する後フラップ部34Bとを有している。
【0032】
図3に示すように、サイドシート33は、トップシート31及びバックシート32よりも幅方向の外方に突出して設けられている。より具体的には、サイドシート33は、トップシート31及びバックシート32の幅方向の外方から側部にかけて、肌対向面側に積層される。サイドシート33は、立体ギャザー42の収縮により、着用者の肌に当接する方向(肌対向面側)に向かって起立する。
【0033】
サイドシート33は、幅方向の外方への液漏れを防ぐために、非液透過性をもつ材料で構成されることが好ましい。サイドシート33としては、スパンボンド不織布を用いることができる。また、サイドシート33の一部は、紙おむつ100において最も肌対向面側に配置される(このことから、サイドシート33はトップシート31と同様に「トップシート」とも称される)。このように着用者に対して接触しうるサイドシート33としては、SMS不織布やSMMS(Spunbond Meltblown Meltblown Spunbond)不織布のようにメルトブローン層を含ませることにより、柔軟性を高めたスパンボンド不織布を用いることが好ましい。あるいは、スパンボンド不織布をなす繊維の繊度や目付量が抑えられることにより、柔軟性を向上させたスパンボンド不織布を用いることが好ましい。
【0034】
なお、「繊度」とは、繊維の繊維径(太さ)や断面積に対応するパラメータであり、所定の長さ当たりの重量で表される。例えば、一本の繊維について10000mあたりのグラム数(デシテックス)が「繊度」として用いられる。また、「目付量」とは、シートの厚みあるいは積層度合いに対応するパラメータであり、単位面積あたりの重量で表される。例えば、一平米あたりのグラム数が「目付量」として用いられる。
【0035】
<カバーシート>
カバーシート35は、積層体10を肌非対向面側から被覆するシート状の部材である。カバーシート35は、紙おむつ100でパッチ38を除いて最も肌非対向面側に配置されることで、バックシート32を補強し、バックシート32の手触り(触感)を良好なものとするために用いられる。カバーシート35は、吸収体20、トップシート31、バックシート32よりも幅方向寸法が大きく設定され、装着状態で着用者の股下、臀部、腰、腹等のまわりに配置される。図2に示すように、カバーシート35は、前身頃2において股下部3よりも幅方向の外方に延出する左右一対の前フラップ部36Aと、後身頃4において股下部3よりも幅方向の外方に延出する左右一対の後フラップ部36Bとを有している。
【0036】
カバーシート35を構成する材料としては、例えば、織布、不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる不織布、湿式不織布を用いることが好ましい。特には、触感(手触り)を確保するために、柔軟性の観点から、カバーシート35としてはスパンボンド不織布を好適に用いることができる。
【0037】
上述のように構成された紙おむつ100では、肌対向面側から肌非対向面側へ向けて、サイドシート33、トップシート31、吸収体20、バックシート32、カバーシート35の順に各部材が積層されている。サイドシート33とカバーシート35とは、ホットメルト接着剤等の公知の接着剤によって貼り合わされる。そして、サイドシート33及びカバーシート35の各前フラップ部34A、36Aにより前方サイドフラップ5が形成される。また、サイドシート33及びカバーシート35の各後フラップ部34B、36Bにより後方サイドフラップ6が形成される。
【0038】
〔ファスニング機構〕
ファスニング機構は、前身頃2と後身頃4との止め着け機能を実現するものである。ファスニング機構としては、例えば、フック部材(雄部材)とループ部材(雌部材)とによって機械的に結合する面状ファスナ(メカニカルファスナ)を用いることができる。ここでいうフック部材は、表面に鉤状、きのこ状、錨状等の突起が多数形成されているシート状の部材である。また、ここでいうループ部材は、表面にループ状の繊維が配置された、又は短繊維で構成された不織布からなるシート状の部材である。また、ファスニング機構としては、粘着剤や粘着テープを用いることができる。中でも、フック部材とループ部材とを強固に固着させることができるとともに、これらを剥離して繰り返しの使用ができることから、面状ファスナが好ましい。本実施形態では、テープ60がフック部材として機能し、パッチ38がループ部材として機能する場合を例示する。
【0039】
<パッチ>
本実施形態のパッチ38は、カバーシート35における前身頃2の外表面(紙おむつ100における最も肌非対向面側)に取り付けられている。パッチ38としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性樹脂の繊維からなる不織布が用いられる。
【0040】
<テープ>
テープ60は、パッチ38に貼着可能であって、股下部3を中心として前身頃2と後身頃4とが対向するようにして肌対向面側に紙おむつ100が折り曲げられた際に、幅方向の外方に引っ張られてパッチ38に止め着けられる。紙おむつ100は、このようにテープ60がパッチ38に止め着けられることで着用者に装着される。
【0041】
図1及び図2に示すように、テープ60は、後方サイドフラップ6に固定されるとともに後方サイドフラップ6から外方に突出して設けられたシート状の止着部61を有している。また、止着部61の肌対向面側に、前身頃2と後身頃4とを固定するためのフック部材である係止部材64が設けられている。止着部61は、係止部材64及びパッチ38を介して、前身頃2と後身頃4とを止め着ける。
【0042】
止着部61は、幅方向内側の基部62と、基部62から幅方向外方に突出する突出部63とを有している。基部62は、サイドシート33及びカバーシート35の後フラップ部34B、36B間に狭装されることで、後方サイドフラップ6に固定されている。突出部63は、サイドシート33及びカバーシート35よりも幅方向の外方に突出して、外部に露出した状態で設けられている。そして、突出部63の肌対向面側に、係止部材64が設けられている。
【0043】
テープ60の止着部61を構成する材料としては、例えば、織布、不織布、樹脂フィルム、紙等を用いることができる。織布、不織布、又は樹脂フィルムを構成する素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0044】
〔ギャザー〕
紙おむつ100には、装着状態における着用者への追従性を高めるために、ギャザー41~43が設けられている。ギャザー41~43は、ゴムやポリウレタンや伸縮フィルムといった伸縮性をもつ部材(伸縮性部材)を伸張状態で不織布などのシートの間に挟み、ホットメルト、ヒートシール、超音波溶着等で固定することによって伸縮性をもたせたシート複合体から構成される。このシート複合体は、伸縮性部材が伸張状態から元の状態(自然長の状態)に戻ろうとする力(復元力、弾性力)でシートに細かな皺が寄った状態となる。ここでは、伸縮性部材として糸状のゴム部材(以下、「糸ゴム」と略称する)51~53を例示する。
【0045】
本実施形態では、ギャザー41~43として、三種の糸ゴム51~53により伸縮性がそれぞれ付与された三種を例示する。一つは、バックシート32及びカバーシート35の幅方向の各端部と、サイドシート33の幅方向の外端部とが第一糸ゴム51で皺寄せされたレッグギャザー41である。他の一つは、サイドシート33の幅方向の内端部が第二糸ゴム52で皺寄せられた立体ギャザー42である。残りの一つは、トップシート31、バックシート32、サイドシート33、カバーシート35の長手方向における背側の各端部が第三糸ゴム53で皺寄せられたウェストギャザー43である。
【0046】
レッグギャザー41は、着用者の脚部に対する追従性を高める(着用者の脚部と紙おむつ100との隙間を抑える)ために設けられる。図1に示すように、レッグギャザー41は、装着状態において着用者の脚部を包囲する箇所に設けられる。なお、図2及び図3に示すように、第一糸ゴム51は、バックシート32の幅方向の端部における肌対向面側に設けられ、バックシート32とサイドシート33との間に介装される。
【0047】
立体ギャザー42は、排泄箇所の側方で着用者に対する追従性を高めるために設けられる。立体ギャザー42は、排泄物の幅方向の外方への漏れを防止する機能をもつ。図1に示すように、立体ギャザー42は、サイドシート33の幅方向の内側に配備される。なお、図2及び図3に示すように、第二糸ゴム52は、サイドシート33の幅方向の内端部に設けられ、この内端部が肌非対向面部側へ折り曲げられることで二重に重ねられた重合部33A、33B間に介装される。
【0048】
ウェストギャザー43は、着用者の臀部や下腹部に対する追従性を高めるために設けられる。図1に示すように、ウェストギャザー43は、左右の後方サイドフラップ6の間に亘って配備される。図2に示すように、本実施形態のウェストギャザー43は、幅方向に延設された伸張状態の複数の第三糸ゴム53が一組の非伸縮性の基材シートに狭装されてなる伸縮シート54により構成されている。伸縮シート54は、トップシート31とバックシート32やカバーシート35との間に介装されている。
【0049】
[1-2.詳細構成]
次に、紙おむつ100の詳細な構成を述べる。
【0050】
図1に示すように、積層体10の肌対向面側には、凹部70が設けられている。凹部70は、積層体10において、その一部が厚み方向に対して周囲よりも低く落ちこんでいる部位をいう。凹部70は、具体的には、吸収体20及びトップシート31が厚み方向に圧搾された圧搾部である。凹部70は、積層体10のうち、吸収体20の存在する領域に設けられる。本実施形態では、溝状の凹部70が格子状に設けられている場合を例示する。すなわち、本実施形態の凹部70は、積層体10の平面視で互いに交差する複数の線状に延設される。したがって、凹部70には、線状に延びる部位が互いに交差する交差部73(一部のみに符号を付す)が含まれている。
【0051】
凹部70は、互いに交差する第一傾斜部71(一部のみに符号を付す)と第二傾斜部72(一部のみに符号を付す)とを有している。すなわち、第一傾斜部71及び第二傾斜部72は、平面視で格子形状(グリッドパターン)をなす。第一傾斜部71は、長手方向に対して、幅方向の一方(例えば右方)に傾斜する直線状の部位である。これに対し、第二傾斜部72は、長手方向に対して、幅方向の他方(例えば左方)に傾斜する直線状の部位である。このように、第一傾斜部71及び第二傾斜部72はいずれも、積層体10の平面視で長手方向及び幅方向の双方に対して交差する直線状に延設されている。本実施形態の積層体10には、複数の第一傾斜部71が互いに平行に設けられているとともに、複数の第二傾斜部72も互いに平行に設けられている。
【0052】
上述した凹部70によれば、凹部70の延在箇所で吸収体20やこれに加えてトップシート31及びバックシート32、延いては紙おむつ100が折れ曲がりやすくなり、着用者に対する紙おむつ100のフィット性が確保される。また、凹部70を通じて空気が流通することで、通気性が確保される。また、凹部70に沿って排泄水分を拡散させることで、吸収体20及び吸収性コア21の吸収箇所を全体に分散させることにより、吸収体20及び吸収性コア21の吸収力及び保持力を高めることができる。
【0053】
凹部70の形状を維持するために、トップシート31、ラップシート24、吸収性コア21における凹部70の位置に、接着部が形成されてもよい。接着部では、積層体10に含まれるラップシート24、肌対向面側及び肌非対向面側のトップシート31、バックシート32から選ばれる少なくとも2以上のシートが接着される。接着部は、例えば、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波溶着等の公知の手法により形成することができる。中でも、凹部70において、吸収性コア21とラップシート24とがホットメルト接着剤を介して接合していることが好ましい。
【0054】
また、凹部70において、吸収性コア21とラップシート24とが実質的に熱融着されていないことが好ましい。ここでいう「実質的に熱融着されていない」とは、意図した熱融着を行っていないことをいう。なお、上記の説明では、凹部70が積層体10の肌対向面側に設けられている場合を例に挙げて説明したが、凹部70の構成はこれに限定されず、肌対向面側及び肌非対向面側の両面に設けられていてもよい。
【0055】
吸収性コア21の凹部70に対応する位置において、高吸収性ポリマー22の含有量は、75g/m2以上、好ましくは90g/m2以上、より好ましくは110g/m2以上、さらに好ましくは120g/m2以上であり、300g/m2以下、好ましくは250g/m2以下、より好ましくは200g/m2以下、さらに好ましくは170g/m2以下、特に好ましくは150g/m2以下、最も好ましくは130g/m2以下である。高吸収性ポリマー22の含有量が上記の下限値以上であると、高吸収性ポリマー22によって凹部70の形状が維持されやすい。すなわち、この場合、凹部70の形状を維持する性能(以下、「凹部70の形状維持性能」という)が発揮されやすい。また、高吸収性ポリマー22の含有量が上記の上限値以下であると、吸収性コア21の柔軟性が確保されやすいため、ラップシート24やトップシート31の破損が生じにくい。すなわち、この場合、高吸収性ポリマー22がラップシート24やトップシート31から漏れ出ること(以下、「ポリマー漏れ」という)が防止されやすい。なお、「g/m2」は、平面視における単位面積当たりの重量(坪量)を表す単位である。また、上述した「吸収性コア21の凹部70に対応する位置」とは、吸収性コア21のうち平面視で凹部70と重なる位置である。
【0056】
また、吸収性コア21の凹部70に対応する位置において、繊維材料23の含有量は、75g/m2以上、好ましくは90g/m2以上、より好ましくは100g/m2以上、さらに好ましくは105g/m2以上であり、250g/m2以下、好ましくは200g/m2以下、より好ましくは150g/m2以下、さらに好ましくは110g/m2以下である。繊維材料23の含有量が上記の下限値以上であると、排泄水分の吸収性が確保されるとともに、吸収性コア21の柔軟性が確保されることでポリマー漏れが防止されやすい。また、繊維材料23の含有量が上記の上限値以下であると、繊維材料23からラップシート24に作用する弾性力が抑えられることで高吸収性ポリマー22がラップシート24やトップシート31にくい込みやすくなるため、凹部70の形状維持性能が発揮されやすい。
【0057】
図4に示すように、吸収性コア21は、凹部70の設けられない部分の厚み(以下、「凸厚み」という)T1が、1.7mm以上であり、3.0mm以下であり、凹部70の設けられた部分の厚み(以下、「凹厚み」という)T2が、1.5mm以上であり、2.8mm以下であることが好ましい。すなわち、凹部70が形成される過程で、吸収性コア21の凹部70に対応する位置は、1.7mm以上、3.0mm以下の厚みから、1.5mm以上、2.8mm以下の厚みに圧搾されることが好ましい。吸収性コア21の凸厚みT1及び凹厚みT2がそれぞれ上記の範囲内の値であると、上述した高吸収性ポリマー22及び繊維材料23の各含有量の規定により得られる作用、効果が適切に発揮されやすい。
【0058】
例えば、高吸収性ポリマー22及び繊維材料23の各含有量が上記の範囲内の値であっても、凸厚みT1が上記の範囲を下回る、あるいは凹厚みT2が上記の範囲を上回る場合には、高吸収性ポリマー22がラップシート24やトップシート31にくい込みにくいため、凹部70の形状を維持できない虞がある。また、高吸収性ポリマー22及び繊維材料23の各含有量が上記の範囲内の値であっても、凸厚みT1が上記の範囲を上回る、あるいは凹厚みT2が上記の範囲を下回る場合には、高吸収性ポリマー22がラップシート24やトップシート31にくい込み過ぎることでポリマー漏れが生じる虞がある。これに対し、高吸収性ポリマー22及び繊維材料23の各含有量と、凸厚みT1及び凹厚みT2とがそれぞれ上記の範囲内であれば、凹部70の形状維持性能が高められるとともに、ポリマー漏れが防止されやすくなる。
【0059】
なお、吸収性コア21は凹部70に対応する位置以外においても同様に、高吸収性ポリマー22及び繊維材料23が上述した含有量で含まれていてもよい。すなわち、吸収性コア21に含まれる高吸収性ポリマー22が、上述した含有量で吸収性コア21の全体に均一に含まれていてもよい。
【0060】
あるいは、吸収性コア21の凹部70に対応する位置において、高吸収性ポリマー22及び繊維材料23の各含有量を、他の位置におけるそれらよりも高めてもよい。このような含有量の設定は、例えば、高吸収性ポリマー22及び繊維材料23を含む吸収性材料を堆積して吸収性コア21を作成する際に、高吸収性ポリマー22の含有量が高い吸収性材料と低い吸収性材料とを領域ごとに使い分けることで実現しうる。具体的には、まず、凹部70が形成される領域に高吸収性ポリマー22の含有量が高い吸収性材料を堆積する。続いて、凹部70が形成される領域以外の領域、又は吸収性コア21を形成する領域全体に、高吸収性ポリマー22の含有量が低い吸収性材料を堆積すればよい。この場合であっても、上述したように凹部70の形状維持性能が高められる。
【0061】
工業生産的には、吸収性コア21の全体に含まれる高吸収性ポリマー22及び繊維材料23の各含有量が、上述した含有量であることが好ましい。本実施形態では、高吸収性ポリマー22及び繊維材料23が、吸収性コア21の全体で均一な含有量で含まれている場合を例示する。
【0062】
[2.製造方法]
上述した紙おむつ100を製造する工程(製造方法)を述べる。
【0063】
図7に示すように、まず、高吸収性ポリマー22及び繊維材料23を含む吸収性材料を堆積してマット状の吸収性コア21を作成し、この吸収性コア21に上述したラップシート24を被覆して吸収体20を得る(第一工程、ステップS1)。このとき、吸収性コア21の凹部70に対応する位置(凹部70が形成される予定の位置)において、高吸収性ポリマー22の含有量と、繊維材料23の含有量とを、それぞれ上記の範囲内の値とする。具体的には、高吸収性ポリマー22の含有量を、75g/m2以上、300g/m2以下とし、繊維材料23の含有量を、75g/m2以上、250g/m2以下とする。
【0064】
次いで、この吸収体20の肌対向面側の表面に上述のトップシート31を配置して、積層体10を得る(第二工程、ステップS2)。なお、ここでいう積層体10とは、吸収体20及びトップシート31で構成された積層構造体であって、上述した紙おむつ100における積層体10からカバーシート35を除いたものに相当する。
【0065】
続いて、吸収体20及びトップシート31で構成された積層体10を一対のロール81、82(図8参照)間に通して吸収体20及びトップシート31を厚み方向(積層方向)に圧搾し、積層体10の肌対向面側に凹部70を設ける(第三工程、ステップS3)。
【0066】
本実施形態では、積層体10に対し、上述のように溝状の凹部70を格子状(互いに交差する複数の線状)に設ける。すなわち、一対のロール81、82のうち、一方(図8では上側)のプレスロール81には、溝状の凹部70を形成するための凸型81aが格子状に突設されている。なお、凹部70の形状(パターン)は、この凸型81aの形状によって、所望の位置、形状、深さの条件となるように形成することができる。
【0067】
本実施形態では、上述のプレスロール81の凸型81aとこれに対向するアンビルロール82の外周面82aとで、搬送される積層体10を挟みつつこれらのロール81、82を回転させ、プレスロール81の凸型81aで積層体10を肌対向面側からプレス(圧縮)する。このとき、積層体10のプレス箇所における含有空気が圧搾される。この結果、吸収性コア21とラップシート24とトップシート31とが噛み合って固着する。これにより、上述の凹部70が積層体10にプレス形成される。
このように一対のロール81、82を用いることで、凹部70を連続的に形成することができる。また、このように積層体10を厚み方向に圧搾することで形成された圧搾部を凹部70とすることで、凹部70を比較的容易に形成できるとともに、上述したような凹部70の各寸法の設定を精度よく実現できる。
【0068】
積層体10をロール81、82間に通すときは、ロール81、82間のクリアランスCLを、0.1mm以上、より好ましくは0.15mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上とし、0.5mm以下、より好ましくは0.45mm以下、さらに好ましくは0.4mm以下とする。ここでいうクリアランスCLとは、プレスロール81の凸型81aの先端と、アンビルロール82の外周面82aとの最短距離に相当する。
【0069】
クリアランスCLが0.1mm未満であると、積層体10の凹厚みT2が上記の範囲を下回りやすくなる。このため、高吸収性ポリマー22がラップシート24やトップシート31にくい込み過ぎることで、積層体10が凹部70で破れる(ポリマー漏れが生じる)虞があるとともに、積層体10の柔軟性が低下しやすい。一方、クリアランスCLが0.5mmよりも大きいと、積層体10の凹厚みT2が上記の範囲を上回りやすくなる。このため、高吸収性ポリマー22がラップシート24やトップシート31にくい込みにくくなり、凹部70が適切に形成されない(凹部70の形状を維持できない)虞がある。これに対し、クリアランスCLが上記の範囲内であれば、凹厚みT2が上記の範囲内になりやすい。このため、凹部70の形状維持性能が高められるとともに、ポリマー漏れが防止されやすくなるうえ、積層体10の柔軟性が確保される。
【0070】
また、積層体10をロール81、82間に通すときは、ロール81、82から積層体10に付与する圧力(プレス圧)Pを、1.2MPa以上、より好ましくは1.3MPa以上、さらに好ましくは1.4MPa以上とし、2.0MPa以下、より好ましくは1.9MPa以下、さらに好ましくは1.8MPa以下とする。このプレス圧Pは、ロール81、82間を通過する積層体10からロール81、82に作用する反力に対して、上述したクリアランスCLを維持するためのものである。
【0071】
プレス圧Pが上記の下限値以上であると、積層体10からロール81、82に反力が作用しても、ロール81、82間のクリアランスCLが上記の上限値以下に維持されやすい。このため、凹部70の形状維持性能が高められる。また、プレス圧Pが上記の上限値以下であると、ロール81、82による積層体10への過剰な加圧が防止されやすい。このため、ポリマー漏れが防止されやすくなるとともに、積層体10の柔軟性が確保されやすくなる。
【0072】
なお、各々のロール81、82の軸温度は、周囲温度(室温)の影響で上下する虞があるため、周囲温度よりも高い温度となるように設定(定常化)することが好ましい。
また、紙おむつ100を製造する工程では、上述のように、凹部70において吸収性コア21とラップシート24とを実質的に熱融着しないことが好ましい。
さらに、上述のように、積層体10における凹部70の位置に接着部を形成する工程を設けてもよい。例えば、積層体10の凹部70に対応する位置において、吸収性コア21とラップシート24とを、ホットメルト接着剤を介して接合してもよい(第四工程)。
【0073】
[3.作用及び効果]
本実施形態の紙おむつ100は、上述した製造方法で製造されるため、下記のような作用及び効果を得ることができる。
【0074】
従来、吸収体に対して厚み方向に凹部を形成することが提案されている。吸収体に凹部を設けた場合、吸収性コアに含まれる繊維材料の弾性によって、凹部が平面状に復元するように変形することがある。このため、紙おむつの搬送過程や保管過程などにおいて、凹部を形成した吸収体の形状を維持できないことがあった。そして、このように紙おむつが変形した場合には、吸収体の凹部の機能が損なわれる虞があった。
【0075】
(1)紙おむつ100では、積層体10に凹部70が設けられるとともに、吸収性コア21の凹部70に対応する位置における高吸収性ポリマー22及び繊維材料23の各含有量がそれぞれ所定範囲内の値となっている。また、紙おむつ100を製造する際、積層体10を圧搾するロール81、82間のクリアランスCLとロール81、82のプレス圧Pとがそれぞれ所定範囲内の値となっている。このため、吸収体20及びトップシート31がロール81、82で厚み方向に圧搾された場合に、吸収性コア21の凹部70に対応する位置において、高吸収性ポリマー22がラップシート24やトップシート31にくい込むことで、吸収性コア21とラップシート24やトップシート31との接着が強化される。このため、凹部70の形状維持性能が高められる。
【0076】
このように、紙おむつ100では、一部の高吸収性ポリマー22が、凹部70の成形に伴いラップシート24に突き刺さるようにして入り込むことでバインダーとして機能することから、接着性(結合性)の向上作用が得られるものと推測される。また、ラップシート24に積層されるトップシート31やバックシート32に対しても同様に、接着性の向上作用が得られるものと推測される。さらに、高吸収性ポリマー22が繊維材料23の空隙に入り込むことにより、機械的に接着力を高めるアンカー効果が生じ、このアンカー効果により高められた接着力が繊維材料23の弾性力に抗することで、吸収性コア21における凹部70の形状が維持されやすくなると考えられる。
【0077】
したがって、紙おむつ100によれば、凹部70の形状維持性能を高めることができる。そして、凹部70の形状が維持されることにより、凹部70の機能をより確実に発揮させることができる。また、紙おむつ100によれば、上述したように高吸収性ポリマー22及び繊維材料23の各含有量がそれぞれ所定範囲内の値であることにより、吸収性コア21の柔軟性が確保されるため、ポリマー漏れを防止しやすくすることができる。さらに、上述したロール81、82間のクリアランスCL及びプレス圧Pがそれぞれ所定範囲内の値であることにより、高吸収性ポリマー22がラップシート24やトップシート31にくい込み過ぎることが防止され、積層体10の凹厚みT2が確保される。これによっても、ポリマー漏れを防止しやすくすることができるとともに、吸収性コア21の柔軟性を確保できる。
【0078】
凹部70が肌対向面側の面に設けられることで、肌対向面側に紙おむつ100が折れ曲がりやすくなるため、着用者に対する紙おむつ100のフィット性を確保することができる。また、凹部70によって着用者の肌と吸収体20との間に空間が形成されるため、この空間を通じて空気を流通させることができる。よって、通気性を確保することができる。また、排泄水分をこの空間を介して拡散させることで、吸収体20の吸収箇所を分散させることができる。これにより、吸収体20の肌対向面側における吸収力及び保持力を高めることができる。
【0079】
(2)凹部70が実質的に熱融着されていないことで、熱融着に起因する積層体10のごわつきの発生を防止して、紙おむつ100の着用感を向上させることができる。また、紙おむつ100では、熱融着によらずとも凹部70の形状を維持することが可能である。さらには、熱融着を行うための作業工程が不要となり、工業的に有利となる。
【0080】
(3)凹部70に対応する位置おいて、吸収性コア21とラップシート24とがホットメルト接着剤を介して接合していることで、凹部70における接着力を高めることができる。また、ホットメルト接着剤は凹部70の形成及び形状の維持に寄与する。
【0081】
(4)凹部70が溝状に設けられていることで、連続的に形成された凹部70を介して、空気又は液体が移動することができる。よって、凹部70による装着感の改善や、液体の拡散により吸収力及び保持力を高めるといった効果を向上させることができる。
【0082】
(5)凹部70が互いに交差する複数の線状に設けられていることで、凹部70には、線状の部位が互いに交差する交差部73が含まれる。従来、この交差部73は、凹部70の他の部位と比べて、ロール81、82による圧搾時に大きな圧力がかかりやすいため、凹厚みT2が小さくなりやすく、ポリマー漏れが生じやすいという課題があった。これに対し、紙おむつ100によれば、上述したように凹部70において吸収性コア21の柔軟性が確保されるとともに、凹厚みT2が確保されるため、凹部70に交差部73が含まれていても、ポリマー漏れを防止しやすくすることができる。
【0083】
(6)凹部70が格子状に設けられていることで、格子状の凹部70に囲まれた積層体10の表面における触感が向上する。なお、凹部70が格子状に形成されて連続的な環状に設けられる場合には、凹部70が厚み方向に浮き上がりやすくなることがあるが、紙おむつ100によれば、上述したように凹部70の形状維持性能が高められているため、凹部70が格子状であってもその形状を維持しやすくすることができる。
【実施例
【0084】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0085】
〔実施例1〕
高吸収性ポリマーと繊維材料とを混合した吸収性材料を堆積して、マット状の吸収性コアを得た。ここでは、ポリアクリル酸ナトリウムを原料とする球状粒子を、高吸収性ポリマーとして用い、パルプ繊維を繊維材料として用いた。この吸収性コアでは、凹部の位置に関わらず、高吸収性ポリマー及び繊維材料を均一に分布させた。すなわち、高吸収性ポリマーと繊維材料の各含有量は、吸収性コアのいずれの領域においても一様であった。下記の表1に示すように、この吸収性コアでは、高吸収性ポリマーの含有量(SAP量)と、繊維材料の含有量(パルプ量)とが、それぞれ上述した範囲の下限値である75g/m2であった。
【0086】
次に、目付量が16gsm(g/m2)である親水性のスパンボンド不織布をラップシートとして、このラップシートで上記の吸収性コアを被覆し、吸収体を得た。この吸収体の肌対向面側の面積は、0.0284m2であった。続いて、目付量が22gsmの不織布(福助工業社製、型番:FZ2)をトップシートとして、このトップシートを上記の吸収体に積層し、積層体を得た。さらに、この積層体を一対のロール間に通して吸収体及びトップシートを厚み方向に圧搾し、この積層体の肌対向面側に図1に示す格子状の凹部を形成して、実施例1の積層体を作製した。すなわち、この凹部の形成は、格子状の凸型を有するプレスロールとこれに対向するアンビルロールとの間に、積層体を通すことにより行った。
【0087】
表1に示すように、実施例1の積層体では、凸厚みT1及び凹厚みT2がそれぞれ上記の範囲内の値であった。なお、凸厚みT1及び凹厚みT2は、積層体を通過させるロール間のクリアランスCLと、これらのロールから積層体に付与するプレス圧Pとを調節することで調整した。表1に示すように、実施例1の積層体を製造するとき、クリアランスCLとプレス圧Pとは、それぞれ上記の範囲内の値であった。また、プレスロール及びアンビルロールの軸温度は、周囲温度(室温)よりも高い60℃とした。
【0088】
〔実施例2~4〕
表1に示すように、実施例1の積層体に対し、パルプ量のみを上記の範囲内である、150g/m2、200g/m2、250g/m2に増大させたものをそれぞれ実施例2~4とした。なお、実施例2~4の積層体は、パルプ量以外は実施例1のものと同様であり、実施例2~4の積層体を製造するときは、凸厚みT1及び凹厚みT2が実施例1のものと同様になるように、クリアランスCL及びプレス圧Pを調節した。実施例2~4においても、クリアランスCLとプレス圧Pとは、それぞれ上記の範囲内の値であった。
【0089】
〔実施例5~7〕
表1に示すように、実施例2~4の積層体に対し、SAP量のみを上記の範囲内である200g/m2に増大させたものをそれぞれ実施例5~7とした。なお、実施例5~7の積層体は、SAP量以外は実施例2~4のものとそれぞれ同様であり、実施例5~7の積層体を製造するときも、凸厚みT1及び凹厚みT2が実施例1のものと同様になるように、クリアランスCL及びプレス圧Pを調節した。実施例5~7においても、クリアランスCLとプレス圧Pとは、それぞれ上記の範囲内の値であった。
【0090】
〔実施例8~10〕
表1に示すように、実施例2~4の積層体に対し、SAP量を上記の範囲の上限値である300g/m2に増大させたものをそれぞれ実施例8~10とした。なお、実施例8~10の積層体は、SAP量以外は実施例2~4のものとそれぞれ同様であり、実施例8~10の積層体を製造するときも、凸厚みT1及び凹厚みT2が実施例1のものと同様になるように、クリアランスCL及びプレス圧Pを調節した。実施例8~10においても、クリアランスCLとプレス圧Pとは、それぞれ上記の範囲内の値であった。
【0091】
〔実施例11~19〕
表1に示すように、実施例6の積層体に対し、SAP量及びパルプ量は維持しつつ、製造時のクリアランスCL及びプレス圧Pを上記の範囲内で増減させたものを実施例11~19とした。すなわち、実施例11~19の積層体は、実施例6のものに対して、製造時のクリアランスCL及びプレス圧Pが異なることで、凸厚みT1及び凹厚みT2がそれぞれ変更されたものである。なお、実施例11~19においても、凸厚みT1及び凹厚みT2は、それぞれ上記の範囲内の値であった。
【0092】
〔比較例1~13〕
表1に示すように、SAP量及びパルプ量の少なくとも一方を上記の範囲外の値にしたものを比較例1~13とした。具体的には、SAP量のみを上記の範囲よりも小さく又は大きくしたものを比較例1~4、11~13とし、パルプ量のみを上記の範囲よりも小さく又は大きくしたものを比較例5~10とした。なお、比較例1~13の積層体は、SAP量及びパルプ量以外は実施例1のものと同様であり、比較例1~13の積層体を製造するときは、凸厚みT1及び凹厚みT2が実施例1のものと同様になるように、クリアランスCL及びプレス圧Pを調節した。
【0093】
〔比較例14、15〕
表1に示すように、SAP量及びパルプ量の双方を上記の範囲外の値にしたものを比較例14、15とした。なお、比較例14、15の積層体は、SAP量及びパルプ量以外は実施例1のものと同様であり、比較例14、15の積層体を製造するときは、凸厚みT1及び凹厚みT2が実施例1のものと同様になるように、クリアランスCL及びプレス圧Pを調節した。
【0094】
〔比較例16~23〕
表1に示すように、実施例6の積層体に対し、SAP量及びパルプ量は維持しつつ、製造時のクリアランスCL及びプレス圧Pの少なくとも一方を上記の範囲外の値にしたものを比較例16~13とした。具体的には、少なくともクリアランスCLを上記の範囲よりも小さくしたものを比較例16~18とし、プレス圧Pのみを上記の範囲外としたものを比較例19、20とし、少なくともクリアランスCLを上記の範囲よりも大きくしたものを比較例21~23とした。なお、比較例16~23の積層体は、実施例6のものに対して、製造時のクリアランスCL及びプレス圧Pが異なるため、凸厚みT1及び凹厚みT2もそれぞれ異なっている。
【0095】
【表1】
【0096】
〔評価手法〕
上記の実施例1~19、比較例1~23の積層体について、下記の定着率測定及びポリマー漏れ試験を行い、形状維持性能及びポリマー漏れに関する評価を行った。
【0097】
<定着率測定>
各実施例、比較例の積層体を備える紙おむつを、積層体の肌対向面側が露出するように、平らな画板に緩やかに貼り付けて評価用サンプルとした。ここでは、各実施例、比較例の評価用サンプルを5枚ずつ用意した。続いて、図5に太線で示すように、凹部がなす格子のうち、まっすぐに連続する3個の格子を1組として、間隔をあけた5組を測定対象とした。すなわち、凹部において1個の格子をなす4つの直線状の部位のそれぞれを「辺」とすると、各評価用サンプルでは、50本の辺が測定対象となった。なお、測定対象とする辺はこれに限定されず、凹部の構成に応じて適宜変更してよい。
【0098】
次に、ペンの先端を各評価用サンプルにおける辺の付近に当てて動かし、トップシートに浮きが見られるかを確認した。より具体的には、ペンの移動に伴って凹部が消えたり、ラップシートやバックシートが動いたりした場合に、トップシートに浮きが見られると判断した。なお、判断が難しい場合は測定対象となる部分を引っ張り、辺が完全に消えた(目視できなかった)場合に、トップシートに浮きが見られると判断した。また、各辺について、トップシートに浮きが見られた部分が半分よりも大きかった場合に「NG」と判定し、トップシートに浮きが見られた部分が半分以下であった場合に「OK」と判定した。そして、各評価用サンプルにおいて、「NG」と判定した辺の本数(以下、「NG数」という)Nnを数えた。
【0099】
続いて、各実施例、比較例について、5枚の評価用サンプルから得られた5つのNG数Nnの平均値Nmを算出した。そして、この平均値Nmと、測定対象とした辺の本数Nt(ここでは50本)とを、下記の式(1)に適用して定着率を算出した。
定着率[%]=(1-Nm/Nt)×100 ・・・(1)
【0100】
式(1)で示されるように、定着率は、測定対象とした辺のうち、「OK」と判定された辺の割合である。すなわち、定着率は、凹部70の形状維持性能を表すものであり、その数値が大きいほど、凹部70がより強固に形成されており、凹部70の形状維持性能が高いことを示す。定着率は、通常89%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。
【0101】
<ポリマー漏れ試験>
図6に示すように、コ字型のアクリル板11の開放側に200メッシュの金網12を固定して、メッシュアクリル板13を作製した。次に、メッシュアクリル板13よりも大きな容器14内に、金網12が上となる向きでメッシュアクリル板13を設置した。さらに、この容器14内に生理食塩水15を注入して、金網12が生理食塩水15に浸らないようにしながら金網12の全体を濡らした。その後、生理食塩水15をディスポカップで少量すくい出し、金網12の下に入った空気を抜いた。
【0102】
続いて、各実施例、比較例の紙おむつの背側と腹側とを持ち、この紙おむつを金網12と平行に保ちながら、肌対向面側(トップシート側)を金網12に上方から接触させてパタパタと10回伸縮させた。そして、金網12の上に落ちた高吸収性ポリマーの個数(以下、「ポリマー数」という)を数えた。より具体的には、紙おむつの前身頃と股下部と後身頃とにそれぞれ対応する三つの領域について、粒径0.5~1mmの高吸収性ポリマーの個数(以下、「小ポリマー数」という)N1と、粒径1mm以上の高吸収性ポリマーの個数(以下、「大ポリマー数」という)N2とを分けて数えた。なお、金網12の上に落ちた高吸収性ポリマーを確認しやすくするために、金網12に下方からライトを当ててもよい。
【0103】
ポリマー数は、ポリマー漏れの生じやすさを表すものであり、その数値が小さいほど、高吸収性ポリマーがラップシートやトップシートを破損させにくく、ポリマー漏れが生じにくい(高吸収性ポリマーが積層体から漏れにくい)ことを示す。上記の小ポリマー数N1は、上述した三つの領域のそれぞれにおいて、通常7以下、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。また、大ポリマー数は、上述した三つの領域のそれぞれにおいて、通常5以下、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1以下である。
【0104】
〔評価結果〕
上述した評価手法による評価結果を下記の表2に示す。なお、表2に示す小ポリマー数N1及び大ポリマー数N2において、スラッシュ(/)で区切られた三つの値は、上述した三つの領域に対応する。すなわち、小ポリマー数N1及び大ポリマー数N2として記載された三つの値のうち、左側の値は前身頃に対応する領域のポリマー数を示し、中央の値は股下部に対応する領域のポリマー数を示し、右側の値は後身頃に対応する領域のポリマー数を示している。
【0105】
【表2】
【0106】
表2から明らかなように、実施例1~19の紙おむつでは、比較例1~23の紙おむつと比べて、定着率が比較的高く、かつ、小ポリマー数N1及び大ポリマー数N2が共に比較的少なかった。より具体的には、実施例1~19の全てにおいて、定着率が89%以上、かつ、小ポリマー数N1が上述した三つの領域の全てで7個以下、かつ、大ポリマー数N2が上述した三つの領域の全てで5個以下となった。
【0107】
これに対し、凸厚みT1及び凹厚みT2が共に上記の範囲内の値であるもののSAP量及びパルプ量の少なくとも一方が上記の範囲外の値である比較例1~15では、定着率が89%に満たないものがあり、定着率が89%以上のものであっても、小ポリマー数N1及び大ポリマー数N2が共に上述した三つの領域の少なくとも一つで8個以上となった。より詳細には、比較例1~15において定着率が89%以上のものは、小ポリマー数N1及び大ポリマー数N2の少なくとも一方が、上述した三つの領域の少なくとも一つで14個以上となり、かつ、小ポリマー数N1及び大ポリマー数N2が共に上述した三つの領域の全てで6個以上となった。また、比較例1~15のうち、小ポリマー数N1及び大ポリマー数N2が共に上述した三つの領域の全てで5個以下に抑えられたものは、定着率が89%に届かなかった。したがって、比較例1~15には、凹部の形状維持とポリマー漏れの抑制とを両立できるものが無かった。
【0108】
また、SAP量及びパルプ量が共に上記の範囲内の値であるもののクリアランスCL及びプレス圧Pの少なくとも一方が上記の範囲外の値である比較例16~23においても、定着率が89%に満たないものがあり、定着率が89%以上のものであっても、大ポリマー数N2が上述した三つの領域の少なくとも一つで6個以上となった。なお、比較例16~23において定着率が89%以上のものの多く(比較例16~18)は、小ポリマー数N1及び大ポリマー数N2の少なくとも一方が、上述した三つの領域の少なくとも一つで12個以上となり、かつ、小ポリマー数N1及び大ポリマー数N2が共に上述した三つの領域の全てで8個以上となった。また、比較例16~23のうち、大ポリマー数N2が上述した三つの領域の全てで5個以下に抑えられたものは、定着率が89%に届かなかった。したがって、比較例16~23にも、凹部の形状維持とポリマー漏れの抑制とを両立できるものは無かった。
この結果から、実施例1~19の紙おむつは、比較例1~23の紙おむつと比べて、凹部の形状維持性能に優れており、かつ、ポリマー漏れを抑制できるものといえる。
【符号の説明】
【0109】
2 前身頃
3 股下部
4 後身頃
5 前方サイドフラップ
6 後方サイドフラップ
10 積層体
11 アクリル板
12 金網
13 メッシュアクリル板
14 容器
15 生理食塩水
20 吸収体
21 吸収性コア
22 高吸収性ポリマー
23 繊維材料
24 ラップシート
31 トップシート
32 バックシート
33 サイドシート
35 カバーシート
38 パッチ(フロントパッチ)
41~43 ギャザー
51~53 糸ゴム(伸縮性部材)
60 テープ(ファスニングテープ)
70 凹部
71 第一傾斜部
72 第二傾斜部
73 交差部
81 プレスロール(ロール)
81a 凸部
82 アンビルロール(ロール)
82a 外周面
100 紙おむつ
CL クリアランス
N1 小ポリマー数
N2 大ポリマー数
Nm 平均値
Nn NG数
Nt 測定対象とした辺の本数
P プレス圧(圧力)
T1 凸厚み
T2 凹厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8