(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】差し板固定具及び差し板固定方法
(51)【国際特許分類】
B62D 33/023 20060101AFI20220215BHJP
B62D 33/027 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
B62D33/023 Z
B62D33/027 G
(21)【出願番号】P 2019172991
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】519343571
【氏名又は名称】井上 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】井上 哲朗
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-200016(JP,A)
【文献】特開2005-206106(JP,A)
【文献】特開2020-142592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 33/02
B60P 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台の側板に係合可能な係合部と、同側板に沿うように一の差し板の一端側領域を支持する一端側支持部とを有し、同側板の長手方向の一端寄りに配置される第1の差し板固定体と、
前記側板に係合可能な係合部と、同側板に沿うように他の差し板の他端側領域を支持する他端側支持部とを有し、同側板の長手方向の他端寄りに配置される第2の差し板固定体と、
前記側板に係合可能な係合部と、同側板に沿うように
前記第1の差し板固定体側の端部に設けられ、他の差し板の一端部領域を支持する一端側支持部と、同側板に沿うように
前記第2の差し板固定体側の端部に設けられ、一の差し板の他端部領域を支持する他端側支持部とを有し
、前記第1の差し板固定体と前記第2の差し板固定体の間へ配置される第3の差し板固定体とを備え
、
該第3の差し板固定体の前記一端側支持部によって支持された他の差し板と前記第3の差し板固定体の前記他端側支持部によって支持された一の差し板を重ねて取付け可能な
差し板固定具。
【請求項2】
前記第3の差し板固定体の前記他端側支持部に設けられた一の差し板が挿入される一の開口部と、同第3の差し板固定体の前記一端側支持部に設けられた他の差し板が挿入される他の開口部は、互いに
略対向して開口している
請求項1に記載の差し板固定
具。
【請求項3】
前記一の開口部は、前記第3の差し板固定体の前記一端側支持部の厚み方向に、前記他の開口部の開口状態を保つように厚み方向にずらして配置される
請求項2に記載の差し板固定具。
【請求項4】
前記第3の差し板固定体の前記一端側支持部は、他の差し板の一端側領域を支持する支持受け部と、該支持受け部に他の差し板を誘導可能な誘導部とを有する
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の差し板固定具。
【請求項5】
前記第1の差し板固定体の前記一端側支持部と前記第3の差し板固定体の前記他端側支持部は、互いの開口部の開口方向が略対向する位置に配置されると共に、前記第2の差し板固定体の前記他端側支持部と前記第3の差し板固定体の前記一端側支持部は、互いの開口部の開口方向が略対向する位置に配置される
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の差し板固定具。
【請求項6】
前記第1の差し板固定体、前記第2の差し板固定体及び前記第3の差し板固定体は、荷台の側板と底板の隙間に挿入可能な差込み板を有する
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5に記載の差し板固定具。
【請求項7】
前記第1の差し板固定体の前記一端側支持部、前記第2の差し板固定体の前記他端側支持部、前記第3の差し板固定体の前記一端側支持部及び前記他端側支持部の高さは、一の差し板及び/若しくは他の差し板の高さの30~70%である
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5又は請求項6に記載の差し板固定具。
【請求項8】
荷台の側板の長手方向の一端寄りへの、一の差し板の一端側領域を支持可能な第1の差し板固定体の取付けと、前記側板の長手方向の他端寄りへの、他の差し板の他端側領域を支持可能な第2の差し板固定体の取付けと、前記側板の長手方向の前記一端
寄りの第1の差し板固定体と前記他端
寄りの第2の差し板固定体の間への
第3の差し板固定体の取付けであって、該第3の差し板固定体の取付けを、前記第3の差し板固定体の前記第1の差し板固定体側に設けられた一端側支持部に他の差し板の一端側領域
を支持し、同第3の差し板固定体の前記第2の差し板固定体側に設けられた他端側支持部に一の差し板の他端側領域を支持
して行う取付け工程と、
前記第1の差し板固定体
の前記一端側支持部に一の差し板の一端側領域を取付け、前記第3の差し板固定体
の前記他端側支持部に一の差し板の他端側領域を取付ける一の差し板の固定と、前記第2の差し板固定体
の前記他端側支持部に他の差し板の他端側領域を取付け、
一の差し板と重なるように前記第3の差し板固定体
の前記一端側支持部に他の差し板の一端側領域を取付ける他の差し板の固定とを行う固定工程とを備える
差し板固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差枠固定具及び差し板固定方法に関する。詳しくは、トラックの荷台への差し板及び差し板固定具の着脱を容易に行うことが可能な差し板固定具及び差し板固定方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
トラックは、大きさによって最大積載量(重さ)が定められているため、例えば砕石を運搬する場合と比べて、伐採木を運搬する場合は積載可能な容量(体積)が増える。このため、伐採木が荷台から落下しないように、荷台の両側に差し板を固定して運搬する。これにより、かさ張って容量が増えた伐採木を適切な積載量の範囲内で積載することができる。
【0003】
差し板を荷台に固定する際は、従来は針金などを用いて荷台の縁に固定していた。しかし、砂利や砕石を運搬する場合には一般的に差し板は不要であるため、積載物に応じて差し板の取付け、取外しを行う必要があり、手間がかかっていた。
【0004】
このため、特許文献1及び2に示すように、二枚の側面差し枠パネル、一枚の後面差し枠パネル、及びこれらを固定する上端固定具、前方下端固定具、後方下端固定具から成る「差し枠パネル固定具」が提案されている。
【0005】
この差し枠パネル固定具により、差し枠パネルを荷台の内側に内接して確実に固定することができると共に、また、差し枠パネルを取外すことも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6154564号
【文献】特許第6178955号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されている「差し枠パネル固定具」は、差し板パネルの上端部及び下端部をわずかな幅で挟持するものであり、例えば、走行時に衝撃や振動を断続的或いは継続的に受けることで差し板から固定具が離脱してしまうことが懸念される。また、ダンプトラックの荷台をダンプアップさせた場合には差し板及び差し枠パネル固定具が荷台から離脱してしまい、積載物と共に落下することも充分考えられ、非常に危険である。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みて創案されたものであり、トラックの荷台への差し板及び差し板固定具の着脱を容易に行うことが可能な差し板固定具及び差し板固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の差し板固定具は、荷台の側板に係合可能な係合部と、同側板に沿うように一の差し板の一端側領域を支持する一端側支持部とを有し、同側板の長手方向の一端寄りに配置される第1の差し板固定体と、前記側板に係合可能な係合部と、同側板に沿うように他の差し板の他端側領域を支持する他端側支持部とを有し、同側板の長手方向の他端寄りに配置される第2の差し板固定体と、前記側板に係合可能な係合部と、同側板に沿うように他の差し板の一端側領域を支持する一端側支持部と、同側板に沿うように一の差し板の他端側領域を支持する他端側支持部とを有し、同側板の前記第1の差し板固定体と前記第2の差し板固定体の間に配置される第3の差し板固定体とを備える。
【0010】
また、第1の差し板固定体の、荷台の側板に係合可能な係合部によって、第1の差し板固定体を側板に係合させるだけで、容易に第1の差し板固定体を側板に取付けることができるだけでなく、第1の差し板固定体の取外しも容易に行うことができる。
【0011】
また、荷台の側板に係合可能な係合部を有し、側板の長手方向の一端寄りに配置される第1の差し板固定体によって、第1の差し板固定体を側板の長手方向の一端寄りに取付けることができる。
【0012】
また、第2の差し板固定体の、荷台の側板に係合可能な係合部によって、第2の差し板固定体を側板に係合させるだけで、容易に第2の差し板固定体を側板に取付けることができるだけでなく、第2の差し板固定体の取外しも容易に行うことができる。
【0013】
また、側板に係合可能な係合部を有し、側板の長手方向の他端寄りに配置される第2の差し板固定体によって、第2の差し板固定体を側板の長手方向の他端寄りに取付けることができる。
【0014】
また、第3の差し板固定体の、荷台の側板に係合可能な係合部によって、第3の差し板固定体を側板に係合させるだけであるので、容易に第3の差し板固定体を側板に取付けることができるだけでなく、第3の差し板固定体の取外しも容易に行うことができる。
【0015】
ここで、荷台の側板に係合可能な係合部を有し、側板の第1の差し板固定体と第2の差し板固定体の間に配置される第3の差し板固定体によって、第3の差し板固定体を第1の差し板固定体と第2の差し板固定体の間に配置することができる。
【0016】
また、側板に沿うように一の差し板の一端側領域を支持する、第1の差し板固定体の一端側支持部と、側板に沿うように一の差し板の他端側領域を支持する、第3の差し板固定体の他端側支持部によって、一の差し板の両端を支持して固定することができる。
【0017】
また、一の差し板は、第1の差し板固定体の一端側支持部と第3の差し板固定体の他端側支持部とで支持されているだけであるので、第1の差し板固定体の一端側支持部と第3の差し板固定体の他端側支持部への、一の差し板の取付け、取外しを容易に行うことができる。
【0018】
また、側板に沿うように他の差し板の一端側領域を支持する第3の差し板固定体の一端側支持部と、側板に沿うように他の差し板の他端側領域を支持する第2の差し板固定体の他端側支持部によって、他の差し板の両端を支持して固定することができる。
【0019】
また、他の差し板は、第3の差し板固定体の一端側支持部と第2の差し板固定体の他端側支持部とで支持されているだけであるので、第3の差し板固定体の一端側支持部と第2の差し板固定体の他端側支持部への、他の差し板の取付け、取外しを容易に行うことができる。
【0020】
また、第3の差し板固定体の他端側支持部に設けられた一の差し板が挿入される一の開口部と、第3の差し板固定体の一端側支持部に設けられた他の差し板が挿入される他の開口部が、互いに反対方向に開口している場合には、一の差し板と他の差し板を反対の方向に側板に沿って支持することができる。
【0021】
また、一の開口部は、第3の差し板固定体の一端側支持部の厚み方向に、他の開口部の開口状態を保つように厚み方向にずらして配置される場合には、一端側支持部への差し板の挿入と、他端側支持部への他の差し板の挿入を互いに妨げることなく行うことができる。
【0022】
また、第3の差し板固定体の一端側支持部は、他の差し板の一端側領域を支持する支持受け部と、支持受け部に他の差し板を誘導可能な誘導部とを有する場合には、他の差し板が誘導部に差込まれる際差し板の進む方向が自ずと定められるので、支持受け部内にスムーズに挿入することができる。
【0023】
また、第1の差し板固定体の一端側支持部と第3の差し板固定体の他端側支持部は、互いの開口部の開口方向が略対向する位置に配置されると共に、第2の差し板固定体の他端側支持部と第3の差し板固定体の一端側支持部は、互いの開口部の開口方向が略対向する位置に配置される場合には、第1の差し板固定体の一端側支持部と第3の差し板固定体の他端側支持部とで一の差し板を支持して固定すると共に、第2の差し板固定体の他端側支持部と第3の差し板固定体の一端側支持部とで他の差し板を支持して固定することができるので、2枚の差し板を同時に支持して固定することができる。
【0024】
また、第1の差し板固定体、第2の差し板固定体及び第3の差し板固定体は、荷台の側板と底板の隙間に挿入可能な差込み板を有する場合には、差込み板を側板と底板の隙間に挿入することで、より確実に第1の差し板固定体、第2の差し板固定体及び第3の差し板固定体を側板に固定することができる。
【0025】
第1の差し板固定体の一端側支持部、第2の差し板固定体の他端側支持部、第3の差し板固定体の一端側支持部及び他端側支持部の高さが、一の差し板及び/若しくは他の差し板の高さの約30~70%である場合には、一の差し板及び/若しくは他の差し板を充分に支持して固定することができるので、第1の差し板固定体、第2の差し板固定体及び第3の差し板固定体から、一の差し板及び/若しくは他の差し板が離脱するのを抑制することができる。
【0026】
なお、第1の差し板固定体の一端側支持部、第2の差し板固定体の他端側支持部、第3の差し板固定体の一端側支持部及び他端側支持部の高さが、差し板の高さの約30%未満である場合には、差し板をわずかな幅で保持することになり、走行時の振動などで差し板が容易に外れてしまい、危険である。
【0027】
また、第1の差し板固定体の一端側支持部、第2の差し板固定体の他端側支持部、第3の差し板固定体の一端側支持部及び他端側支持部の高さが、差し板の高さの約70%を超える場合には、差し板の高さの半分以上が固定体で支持して固定されることになり、差し板の着脱を容易に行うことができない。
【0028】
また、上記課題を解決するために、本発明の差し板固定方法は、荷台の側板の長手方向の一端寄りへの、一の差し板の一端側領域を支持可能な第1の差し板固定体の取付けと、前記側板の長手方向の他端寄りへの、他の差し板の他端側領域を支持可能な第2の差し板固定体の取付けと、前記側板の長手方向の前記一端と前記他端の間への、他の差し板の一端側領域及び一の差し板の他端側領域を支持可能な第3の差し板固定体の取付けとを行う取付け工程と、
前記第1の差し板固定体に一の差し板の一端側領域を取付け、前記第3の差し板固定体に一の差し板の他端側領域を取付ける一の差し板の固定と、前記第2の差し板固定体に他の差し板の他端側領域を取付け、前記第3の差し板固定体に他の差し板の一端側領域を取付ける他の差し板の固定とを行う固定工程とを備える。
【0029】
ここで、荷台の側板の長手方向の一端寄りへの、一の差し板の一端側領域を支持可能な第1の差し板固定体の取付けと、側板の長手方向の他端寄りへの、他の差し板の他端側領域を支持可能な第2の差し板固定体の取付けと、側板の長手方向の前記一端と前記他端の間への、他の差し板の一端側領域及び一の差し板の他端側領域を支持可能な第3の差し板固定体の取付けとを行う取付け工程によって、第1の差し板固定体、第2の差し板固定体及び第3の差し板固定体を側板の長手方向の部に取付けることができる。
【0030】
また、第1の差し板固定体に一の差し板の一端側領域を取付け、第3の差し板固定体に一の差し板の他端側領域を取付ける一の差し板の固定と、第2の差し板固定体に他の差し板の他端側領域を取付け、第3の差し板固定体に他の差し板の一端側領域を取付ける他の差し板の固定とを行う固定工程によって、一の差し板を第1の差し板固定体と第3の差し板固定体とで支持して固定することができると共に、他の差し板を第2の差し板固定体と第3の差し板固定体とで容易に支持して固定することができる。
【0031】
また、一の差し板は、第1の差し板固定体と第3の差し板固定体とで支持されているだけであるので、第1の差し板固定体と第3の差し板固定体への、一の差し板の取付け、取り外しを容易に行うことができる。
【0032】
また、他の差し板は、第2の差し板固定体と第3の差し板固定体とで支持されているだけであるので、第2の差し板固定体と第3の差し板固定体への、他の差し板の取付け、取り外しを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る差し板固定具及び差し板固定方法は、トラックの荷台への差し板及び差し板固定具の着脱を容易に行うことが可能な差し板固定具及び差し板固定方法となっている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施の形態に係るダンプトラックDの外観説明図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るダンプトラックDの荷台Tをダンプアップした状態の説明図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る固定体A3の斜視説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る固定体A1の斜視説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る固定体A2の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の差し板固定具セットA、及び差し板固定具セットAが取付けられるダンプトラックDについて、
図1乃至
図5を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0036】
〔ダンプトラックD〕
ダンプトラックDは、
図1に示すように、後方に積載物(図示せず)を載せる荷台T及び前方に運転手が乗るキャブCを有する。荷台Tは、積載物の落下防止のため、三方を「あおり」と呼ばれる側板T1、T2及びT3によって囲われている。なお、荷台Tは、長手方向に設けられた二枚の側板T1、T2と、後方の側板T3、底板T4からなる、いわゆる「平ボディ」の荷台である。
【0037】
本実施例のダンプトラックDは3t(トン)トラックであり、荷台Tの大きさは、側板T1、T2の水平方向の長さは約305.0cm、高さ約36.5cmであり、側板T1、T2の上端縁部T1a、T2aの幅は約8.0cmである。側板T3の水平方向の長さは、約170.0cm、高さ約36.5cmであり、上端縁部T3aの幅は約8.0cmである。
【0038】
また、
図2に示すように、側板T3は、下端部T3bを中心として回動可能に設けられており、荷台Tをダンプアップ(荷台の運転席寄り側を高く持ち上げて傾斜させ、積載物を排出しやすくすること)の際、側板T3のストッパー(図示せず)を外すことで側板T3が傾倒して荷台Tを開放することができ、荷台Tの積載物を容易に排出することができる。なお、ダンプアップした時の角度は、一般に約50~60度である。
【0039】
以下、固定体A1、A2及びA3について詳述するが、取付け方法については、側板T1への取付けについて説明する。側板T2への取付けについては、固定体A1と線対称の形状を有する固定体A1´を側板T2の前部に取付け、固定体A2と線対称の形状を有する固定体A2´を側板T2の後部に取付け、固定体A3と線対称の形状を有する固定体A3´を略中央に取付ける。このように、側板T1とT2への取付けについては相違点もあるが、その他は同様であるので省略する。
【0040】
差し板固定具セットAは、第1の差し板固定体の一例である固定体A1と、第2の差し板固定体の一例である固定体A2、及び第3の差し板固定体の一例である固定体A3とからなる。
【0041】
また、
図2に示すように、側板T1に取付ける場合には、固定体A1と固定体A3で一枚の差し板Pを支持して固定し、固定体A2と固定体A3でさらにもう一枚の差し板P´を支持して固定する。なお、差し板P及びP´は、幅約180.0cm、高さ90.0cm、及び厚み約1.2cmのサイズである。
【0042】
〔固定体A3〕
固定体A3は、平板状の支持板1と、支持板1の一面10側に設けられ、差し板P´を支持可能な支持部2、荷台Tの側板T1の上端縁部T1aに係合して取付け可能な係合部3、及び側板T1と底板T4が近接して形成された隙間T5に差込み可能な差込み板4からなる。なお、固定体A3の差込み板4を含めた高さは約44.5cmで、長さは約66.0cmで、側板T1の上端縁部T1aに係合する係合部3の幅は、約8.0cmである。
【0043】
支持部2は、支持板1の一面10側に設けられた前支持部20と、前支持部20の厚み方向に、前支持部20の側開口部20a1の開口状態を保つように厚み方向にずらして配置された後支持部21からなる。これにより、前支持部20への差し板P´の挿入と、後支持部21への差し板Pの挿入を互いに妨げることなく行うことができる。
【0044】
前支持部20は、固定体A3の一端A3a側に設けられ、差し板P´を支持可能な平面視略「コ」字状の支持受け部20aと、差し板P´が支持受け部20aに支持される際、差し板P´を支持受け部20a内に誘導して差し板P´を支持する誘導部20bとからなる。これにより、差し板P´は誘導部20bに差込まれる際差し板P´の進む方向が自然と定められるので、支持受け部20a内にスムーズに挿入することができる。
【0045】
また、支持受け部20aは、一端A3aから他端A3bに向けて開口した側開口部20a1、側板T1に取付けた状態で上方に開口した上開口部20a2、側開口部20a1と対向する位置に設けられ、差し板P´の側一端部P´1が当接する側当接板20a3、及び上開口部20a2と対向する位置に設けられ、差し板Pの下端部(図示せず)が当接する底当接板20a4からなる。
【0046】
誘導部20bは他端A3b側に設けられ、支持板1の他端A3b寄りの周辺板部10a、及び支持板1と略平行に設けられた支持補助板20b1、及び周辺板部10aと支持補助板20b1をそれらの下端で連結する連結底板20b2によって囲われて形成されている。
【0047】
周辺板部10aと支持補助板20b1とは略平行に設けられ、周辺板部10a、支持補助板20b1及び連結底板20b2で囲まれた空間には、差し板P´を誘導可能な誘導路20b3が設けられており、誘導路20b3の両端には、差し板Pが挿通される挿通側開口部20b4、20b5が設けられている。また、誘導路20b3の上部は差し板Pを挿通できるように挿通上開口部20b6が設けられている。
【0048】
なお、差し板P´は、前支持部20に支持される際、挿通開口部20b4から誘導部20b内に挿通され、誘導路20b3を通って誘導されながら挿通開口部20b5から出て、支持受け部20aの側開口部20a1から上開口部20a2に沿って支持受け部20aに収容されて支持される。このとき、支持受け部20a及び誘導部20bの上部には上開口部20a2及び挿通上開口部20b6が設けられているので、収容受け部20a及び誘導部20bの高さよりも高さのある差し板P´を挿通することができる。
【0049】
また、後支持部21は、差し板Pの側他端部P2を収容可能であり、支持補助板20b1を介して誘導部20bが設けられた側とは反対側に設けられている。また、後支持部21は、支持補助板20b1を誘導部20bと共有しており、一端A3a側に開口した平面視略「コ」字状の支持受け部21aを有する。
【0050】
支持受け部21aは、他端A3bからに一端A3a側に向けて開口した側開口部21a1、側板T1に取付けた状態で上方に開口した上開口部21a2、側開口部21a1と対向する位置に設けられ、差し板Pの側他端部P2が当接する当接板21a3、及び上開口部21a2と対向する位置に設けられ、差し板Pの下端が当接する底当接板21a4からなる。
【0051】
後支持部21は、前支持部20の側開口部21a1の開口状態を保つように厚み方向にずらして配置されており、また支持受け部21aの側開口部21a1は、支持受け部20aの側開口部20a1の開口方向とは反対方向に開口している。これにより、支持部2において二枚の差し板P及びP´を一部のみ重ね合わされた状態で支持することができる。
【0052】
また、係合部3は支持板1の他面11側に設けられ、上端の略中央付近から水平に延出する水平板30と、水平板30の端部30aから垂下された鉛直板31とからなり、支持板1の他面11、水平板30及び鉛直板31で囲われた空間内に、側板T1の上端縁部T1aに嵌入させることで、固定体A3を側板T1取り付けることができる。
【0053】
また、差込み板4は、支持板1の下端の略中央から鉛直下方に約30.0cmの幅で約8.0cm延出している。この差込み板4を荷台の側板T1と底板T4が近接して形成された隙間T5に差し込むことで、より確実に固定体A3を側板T1に取り付けることができる。また、このように、固定体A3は、係合部3及び差込み板4によって荷台Tに取付けられているので、固定体A3を荷台Tから引き抜くことで容易に取り外すことができる。
【0054】
〔固定体A1〕
固定体A1は、平板状の支持板5と、支持板1の一面50側に設けられ、差し板Pを収容可能な支持部6、荷台Tの側板T1の上端縁部T1aに係合可能な係合部7、及び側板T1と底板T4が近接して形成された隙間T5に差込み可能な差込み板8からなる。
【0055】
支持部6は、支持板5の一面50側に設けられた前支持部60を有する。前支持部60は、固定体A1の一端A1a側に設けられ、差し板Pを収容可能な平面視略「コ」字状の支持受け部60aを有する。
【0056】
支持受け部60aは、一端A1aから他端A1bに向けて開口した側開口部60a1、側板T1若しくはT2に取付けた状態で上方に開口した上開口部60a2、側開口部60a1と対向する位置に設けられ、差し板Pの側端部P1が当接する側当接板60a3、及び上開口部20a2と対向する位置に設けられ、差し板Pの下端が当接する底当接板60a4からなる。
【0057】
また、係合部7は支持板5の他面51側に設けられ、上端の略中央付近から水平に演出する水平板70と、水平板70の端部70aから垂下された鉛直板71とからなり、支持板1の他面51、水平板70及び鉛直板71で囲われた空間内に、側板T1の上端縁部T1aに嵌入させることで、固定体A1を側板T1取り付けることができる。
【0058】
また、差込み板8は、支持板5の下端の略中央から鉛直下方に約8.0cm延出しており、幅は約10.0cmである。荷台の側板T1と底板T4が近接して形成された隙間T5に差込み板8を差し込むことで、より確実に固定体A1を側板T1に取り付けることができる。また、このように、固定体A1は、係合部7及び差込み板8によって荷台Tに取付けられているので、固定体A1を荷台Tから引き抜くことで容易に取り外すことができる。
【0059】
また、固定体A3の後支持部21に差し板Pの側他端部P2を挿入し、固定体A1の支持部6に差し板Pの側一端部P1を挿入するだけで、差し板Pを支持して固定することができる。そして、差し板Pは後支持部21及び支持部6に挿入されているだけであるので、引き抜くことで容易に取り外すことができる。
【0060】
〔固定体A2〕
固定体A2については、固定体A1と同一の部分については同一の符号を付すと共に、重複する部分については説明を省略する。
【0061】
固定体A2は、平板状の支持板5と、支持板5の一面50側に設けられ、差し板P´を収容可能な支持部9、荷台Tの側板T1の上端縁部T1aに係合可能な係合部7、及び側板T1と底板T4が近接して形成された隙間T5に差込み可能な差込み板8からなる。
【0062】
把持部9は、支持板5の一面50側に設けられた後支持部90を有する。後支持部90は、固定体A2の他端A2b側に設けられ、差し板P´を収容可能な平面視略「コ」字状の支持受け部90aを有する。
【0063】
支持受け部90aは、一端A2bから一端A2aに向けて開口した側開口部90a1、側板T1に取付けた状態で上方に開口した上開口部90a2、側開口部90a1と対向する位置に設けられ、差し板P´の側他端部P´2が当接する側当接板90a3、及び上開口部90a2と対向する位置に設けられ、差し板P´の下端が当接する底当接板90a4からなる。
【0064】
また、固定体A2の把持部9に差し板P´の側他端部P´2を挿入し、固定体A3の前支持部20に差し板P´の側一端部P´1を挿入するだけで、差し板P´を支持して固定することができる。そして、差し板P´は後支持部90及び前支持部20に挿入されているだけであるので、引き抜くことで容易に取り外すことができる。
【0065】
また、差し板P及びP´は固定体A3において約幅55.0cmで重なるため、差し板全体の強度が増す。
【0066】
本実施例においては、差し板固定具セットAの固定体A1、A2及びA3を、荷台Tの側板T1の上端縁部T1aに取付ける際、固定体A3を側板T1の略中央に取付け、固定体A1を側板T1のキャブC寄りの位置に取付け、固定体A2を側板T3寄りの位置に取付けて使用する。なお、側板T2に固定体A1、A2及びA3を取り付ける際は、固定体A1´を側板T2のキャブC寄りの位置に取付け、固定体A2´を側板T3寄りの位置に取付けて、固定体A3´を固定体A1´と固定体A2ダッシュの間に取付けて使用する。
【0067】
〔差し板固定具セットAの着脱方法について〕
上記の差し板固定具セットA及び差し板P、P´を荷台Tの側板T1に取付ける手順、及び取り外す手順について説明する。
【0068】
(取付け手順1)
差し板固定具セットAを、キャブC側から固定体A1、A2、A3を、荷台Tの側板T1の上端縁部T1aに取付ける。このとき、固定体A1、A2、A3を取付ける順番は特に定めず、任意の順番で取り付ける。
【0069】
具体的には、固定体A3の係合部3の鉛直板31及び固定体A1及びA2の係合部7の鉛直板71を、側板T1の上端縁部T1aの外側に出し、固定体A3の係合部3の水平板30及び固定体A1及びA2の係合部7の水平板70を、側板T1の上端縁部T1aと当接するまで押し下げて、係合部3及び7を上端縁部T1aに取付ける。そして、固定体A1、A2、A3の差込み板4及び8を側板T1と底板T4の間の隙間T5に差し込んで、固定体A1、A2、A3を側板T1に取付ける。
【0070】
(取付け手順2)
固定体A1の前支持部60の支持受け部60a内に、差し板Pの側一端部P1を側開口部60a1から挿入する。このとき、底当接板60a4上に差し板Pの下端を載せながら、上開口部60a2に沿って側当接板60a3に側一端部P1が当接するまで進ませる。これにより、差し板Pの側一端部P1が前支持部60内に支持して固定される。
【0071】
また、固定体A3の後支持部21の支持受け部21a内に、差し板Pの側他端部P2を側開口部21a1から挿入する。このとき、底当接板21a4上に差し板Pの下端を載せながら、上開口部21a2に沿って側当接板21a3に側他端部P2が当接するまで進ませる。これにより、差し板Pの側他端部P2が後把持部21内に収容されると共に、差し板Pが固定具A1、A3により側板T1に固定される。
【0072】
(取付け手順3)
固定体A2の後支持部90の支持受け部90a内に、差し板P´の側他端部P´2を側開口部90a1から挿入する。このとき、底当接板90a4上に差し板P´の下端を載せながら、上開口部90a2に沿って側当接板90a3に側他端部P´2が当接するまで進ませる。これにより、差し板P´が後支持部90内に支持して固定される。
【0073】
また、固定体A3の前支持部20の支持受け部20a内に差し板P´の側一端部P´1を挿入する。具体的には、差し板P´の側一端部P´1を、誘導部20bの挿通側開口部20b4から、挿通上開口部20b6に沿って誘導路20b3を通って、挿通側開口部20b5から誘導部20b外に出る。
【0074】
次に、差し板P´の側一端部P´1を前支持部20の側開口部20a1から挿入する。このとき、底当接板20a4上に差し板P´の下端を載せながら、上開口部20a2に沿って側当接板20a3に側他端部P´2が当接するまで進ませる。これにより、差し板P´の側一端部P´1が前把持部20内に収容されると共に、差し板P´が固定具A2、A3により側板T1に固定される。
【0075】
このようにして、差し板固定具セットAは、固定体A1、A2及びA3の3つからなり、その取付けも上端縁部T1aに係合部3及び7を係合させるだけであるので、取付け作業が容易である。また、差し板P及びP´を指し板固定具セットAに取付ける際も、固定体A3の把持部2、固定体A1の支持部6及び固定体A2の支持部9に挿入させるだけであるので、固定作業が容易である。このようにして、差し板固定具セットAを側板T1に取付けて、2枚の差し板P及びP´を荷台Tに取付けることができる。
【0076】
(取外し手順1)
固定体A1、A2及びA3から差し板P及びP´を上方へ引き抜いて、支持部2、6及び9から取り外す。このとき、差し板P及びP´は、固定体A1、A2及びA3に固定される際、針金などを用いることなく、単に固定体A1、A2及びA3に挿入されているだけであることから容易に取り外すことができる。
【0077】
(取外し手順2)
固定体A1、A2及びA3を上方へ引き抜いて、側板T1から取り外す。固定体A1、A2及びA3は、ネジなどを用いることなく、単に側板T1に係合部3及び7で係合されているだけであることから容易に取り外すことができる。また、差込み板4及び8も、隙間T5に差し込まれているだけであるので、容易に引き抜くことができる。
【0078】
以上により、差し板P及びP´及び固定体A1、A2及びA3を容易に取付けすることができるだけでなく、容易に取外すこともできる。
【0079】
また、固定板A1、A2及びA3に取付けられた差し板P及びP´の、荷台Tの底板T4からの高さは、約90cmである。また、固定板A1、A2及びA3を側板T1に取付けた際の底板T4からの高さは、約36.5cmであることから、差し板P及びP´の高さの約40%である。
【0080】
これにより、差し板P及びP´の側一端部P1、P´1及び側他端部P2、P´2の下方から40%の高さまでを支持部2、6及び9で把持しながら固定するので、ダンプアップした際に荷台Tが傾斜した場合であっても、差し板P及びP´が固定板A1、A2及びA3から離脱し落下することを抑止することができるので、非常に安全に使用することができる。
【0081】
なお、トラックの大きさによって荷台のサイズも異なる。例えば、2t車、3t車であれば、荷台の長さは、305.0cmであるが、4t車であれば、340.0cmとなる。一方、差し板は高さ90.0cm、幅180.0cmであり、固定されたサイズとなっている。このため、4t車に差し板固定具セットAを用いる場合には、固定体A1の長さを変えることで、同様に使用することができる。このとき、4トン車であれば、枚の差し板P及びP´の重なる幅が狭くなる(約20cm)が、差し板P及びP´は固定体A1、A2及びA3で固定されるので、容易に外れることはない。
【0082】
以上により、本発明に係る差し板固定具及び差し板固定方法は、トラックの荷台への差し板及び差し板固定具の着脱を容易に行うことが可能な差し板固定具及び差し板固定方法となっている。
【符号の説明】
【0083】
20 一端側支持部
21 他端側支持部
3 係合部
60 一端側支持部
7 係合部
90 他端側支持部
A1 固定体(第1の差し板固定体)
A2 固定体(第2の差し板固定体)
A3 固定体(第3の差し板固定体)
P 一の差し板
P´ 他の差し板
P1、P´1 差し板の前端部(一端側領域)
P2、P´2 差し板の後端部(他端側領域)
T 荷台
T1、T2 側板