(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】固定構造
(51)【国際特許分類】
F16B 5/02 20060101AFI20220215BHJP
【FI】
F16B5/02 T
F16B5/02 D
(21)【出願番号】P 2019224987
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】大沼 健二
(72)【発明者】
【氏名】小泉 篤史
(72)【発明者】
【氏名】山口 淳史
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-049218(JP,A)
【文献】特開平10-203251(JP,A)
【文献】特開2000-192923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00- 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材を第2部材に締結固定するために、雄ねじ部材が前記第1部材のねじ挿通孔に挿通された状態で前記第2部材に立設された筒状のボス部に嵌められてなる固定構造において、
前記第1部材は、前記ボス部の先端に対向する面において同ボス部の中心線と交差する方向に延びる溝状の案内凹部を有し、
前記案内凹部は、前記ボス部の先端が前記案内凹部の内部に進入した状態で同ボス部が前記案内凹部の延設方向に移動可能な形状をなし、
前記案内凹部の前記延設方向の一端は、前記ねじ挿通孔が開口する形状をなすとともに、前記ボス部の先端の外周面が突き当たる形状をなし、
前記案内凹部の前記延設方向の他端は、前記ボス部の前記延設方向への移動を通じて同ボス部の先端を前記案内凹部の内部に進入させることの可能な形状をな
し、
前記案内凹部は、前記延設方向における延設幅が前記一端に向かうに連れて狭くなるテーパ形状をなしている
ことを特徴とする固定構造。
【請求項2】
第1部材を第2部材に締結固定するために、雄ねじ部材が前記第1部材のねじ挿通孔に挿通された状態で前記第2部材に立設された筒状のボス部に嵌められてなる固定構造において、
前記第1部材は、前記ボス部の先端に対向する面において同ボス部の中心線と交差する方向に延びる溝状の案内凹部を有し、
前記案内凹部は、前記ボス部の先端が前記案内凹部の内部に進入した状態で同ボス部が前記案内凹部の延設方向に移動可能な形状をなし、
前記案内凹部の前記延設方向の一端は、前記ねじ挿通孔が開口する形状をなすとともに、前記ボス部の先端の外周面が突き当たる形状をなし、
前記案内凹部の前記延設方向の他端は、前記ボス部の前記延設方向への移動を通じて同ボス部の先端を前記案内凹部の内部に進入させることの可能な形状をなし、
前記ねじ挿通孔の内面には、前記延設方向における前記他端側の部分において突出する凸部が設けられている
ことを特徴とする固定構造。
【請求項3】
前記案内凹部は、前記延設方向における延設幅が前記一端に向かうに連れて狭くなるテーパ形状をなしている
請求項2に記載の固定構造。
【請求項4】
前記案内凹部の前記一端は、前記ボス部の先端の外周面が嵌まる形状をなしている
請求項1~3のいずれか一項に記載の固定構造。
【請求項5】
前記ボス部の先端は円筒状をなし、
前記案内凹部の前記一端の内面は、前記ボス部の先端の外周面に沿って延びる断面円弧状をなす
請求
項4に記載の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材をねじ部材によって締結固定する固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
第1部材がねじ挿通孔を有するとともに、第2部材が円筒状のボス部を有する固定構造が知られている(特許文献1参照)。この固定構造では、雄ねじ部材が、第1部材のねじ挿通孔に挿通された状態で第2部材のボス部に嵌められる。これにより、第1部材が第2部材に締結固定される。
【0003】
また、特許文献1に記載の固定構造では、第1部材における上記第2部材から遠い側の面に、ねじ挿通孔の内周壁が上方に延伸されて筒状をなす筒状部が立設されている。この固定構造では、第1部材を第2部材に締結固定する際には、第2部材のボス部の先端が第1部材の筒状部に挿入される。これにより、第1部材と第2部材との位置決めがなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記固定構造では、雄ねじ部材による第1部材の第2部材への締結固定に先立ち、第1部材の筒状部に第2部材のボス部の先端を挿入しておく必要がある。このことから、第1部材の第2部材への締結固定のためには、第1部材の筒状部に第2部材のボス部の先端を挿入するためのスペース、詳しくは筒状部やボス部の延伸方向、すなわち雄ねじ部材の締結方向において第1部材と第2部材とを相対移動させるためのスペースが必要になると云える。こうした組み付けのためのスペースによる制約は、第1部材や第2部材の形状設定についての自由度、ひいては第2部材に対する第1部材の締結固定についての自由度を低下させる一因になる。
【0006】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い自由度での2つの部材の締結固定を実現することのできる固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための固定構造は、第1部材を第2部材に締結固定するために、雄ねじ部材が前記第1部材のねじ挿通孔に挿通された状態で前記第2部材に立設された筒状のボス部に嵌められてなる固定構造において、前記第1部材は、前記ボス部の先端に対向する面において同ボス部の中心線と交差する方向に延びる溝状の案内凹部を有し、前記案内凹部は、前記ボス部の先端が前記案内凹部の内部に進入した状態で同ボス部が前記案内凹部の延設方向に移動可能な形状をなし、前記案内凹部の前記延設方向の一端は、前記ねじ挿通孔が開口する形状をなすとともに、前記ボス部の先端の外周面が突き当たる形状をなし、前記案内凹部の前記延設方向の他端は、前記ボス部の前記延設方向への移動を通じて同ボス部の先端を前記案内凹部の内部に進入させることの可能な形状をなす。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態の固定構造が適用される樹脂部品の側断面図。
【
図6】組み付け過程におけるベース部材と装飾部材との位置関係を示す側断面図。
【
図7】組み付け過程におけるベース部材と装飾部材との位置関係を示す底断面図。
【
図8】締結固定前における樹脂部品の一例を示す側断面図。
【
図9】締結固定状態の樹脂部品の案内凹部およびその周辺の側断面図。
【
図10】締結固定状態の樹脂部品の案内凹部およびその周辺の底断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、固定構造の一実施形態について説明する。
図1~
図3に示すように、本実施形態の固定構造が適用される樹脂部品20は、長尺状をなすベース部材21と、同ベース部材21に沿って延びる長尺状をなす装飾部材22とを有している。ベース部材21には円筒形状のボス部30が立設されている。装飾部材22における上記ボス部30に対応する位置には貫通孔であるねじ挿通孔40が形成されている。この樹脂部品20では、タッピングねじである雄ねじ部材23が、装飾部材22のねじ挿通孔40に挿通された状態で、ベース部材21のボス部30に嵌められている。これにより、ベース部材21に装飾部材22が締結固定されている。本実施形態では、ベース部材21が第2部材に相当し、装飾部材22が第1部材に相当する。
【0010】
以下、樹脂部品20を構成するベース部材21および装飾部材22の具体構造について説明する。なお以下の説明では、雄ねじ部材23の締結方向を「上下方向」とし、ベース部材21および装飾部材22の長尺方向を「左右方向」とし、上下方向および左右方向に直交する方向を「奥行き方向」とする。
【0011】
ベース部材21は、左右方向に断面略J字状で延びるベース壁部31を有している。ベース壁部31は、詳しくは、左右方向および奥行き方向に延びる底壁部32と、底壁部32の奥行き方向における一端(
図1の右端)から斜め上方に向けて延びる長立壁部33と、底壁部32の奥行き方向における他端(
図1の左端)から斜め上方に向けて延びる短立壁部34とを有している。長立壁部33は短立壁部34よりも上下方向における長さが短くなっている。また長立壁部33および短立壁部34は、上方に向かうほど間隔が広くなる先開き形状をなしている。ベース壁部31は、硬質の合成樹脂材料によって一体に形成されている。
【0012】
ベース壁部31の底壁部32の上面には、上下方向に延びる円筒状のボス部30が立設されている。
また、断面略J字状をなすベース壁部31の内部には、上下方向において延びる板状のリブ35,36,37が一体形成されている。リブ35,36は、ベース壁部31の底壁部32、長立壁部33、および短立壁部34を連結する態様で延設されて、同ベース壁部31を補強するものである。リブ36はボス部30を左右方向において間に挟むように一対配置されている。また、リブ37は、各リブ36の側面と底壁部32の上面とを連結する態様で上下方向および左右方向に延設されている。
【0013】
本実施形態では、ベース部材21に装飾部材22が締結固定されると、上記リブ36,37の上端面に装飾部材22(詳しくは、後に詳述する固定部41)の下面が当接する構造になっている。そして、ベース部材21への装飾部材22の組み付けに際して、リブ36,37の上端面に同装飾部材22の固定部41の下面が当接することにより、ベース部材21に対する装飾部材22の上下方向における位置が規制されるようになっている。すなわち、ベース部材21のリブ36,37の上端面と装飾部材22の固定部41の下面とが、ベース部材21への装飾部材22の取り付けにおける上下方向の相対位置を定める基準面になっている。
【0014】
ベース部材21は、左右方向に断面略J字状で延びて上記ベース壁部31の外面を覆う形状の表層部38を有している。この表層部38は、軟質の樹脂材料によって形成されている。
【0015】
前記装飾部材22は、左右方向に延設されて、ベース部材21の短立壁部34における上記長立壁部33から遠い側(
図1の左側)の外面を覆う形状の装飾部43を有している。この装飾部43の下方部分43Aはベース部材21の短立壁部34の外面に沿って斜め上方に延びており、装飾部43の上方部分43Bは下方部分43Aの上端を始点に上方に延びている。装飾部材22は全体が硬質の樹脂材料によって一体形成されている。装飾部材22の装飾部43には部分的にメッキ加工が施されている。
【0016】
装飾部材22は、ベース部材21への締結固定に利用される前記固定部41を有している。この固定部41は、上記装飾部43におけるベース部材21側(
図1の右側)の面に立設されて、左右方向および奥行き方向において延びる板状をなしている。
【0017】
固定部41の突端側の部分は、雄ねじ部材23の中心軸Lと略直交する方向に延びており、同雄ねじ部材23によって上記ベース部材21に締結固定される締結部44を構成している。また、固定部41の基端側の部分は、上記装飾部43の内面から斜め上方に向けて延びて、同装飾部43と上記固定部41とを一体に連結している。そして、ベース部材21への装飾部材22の組み付けに際しては、同装飾部材22の固定部41の下面が上記ベース部材21のリブ36,37の上端面に当接することにより、ベース部材21と装飾部材22との上下方向における相対位置が規制される。
【0018】
締結部44は、断面円形状で上下方向に貫通する貫通孔であるねじ挿通孔40を有している。このねじ挿通孔40には、ベース部材21への装飾部材22の取り付けに際して雄ねじ部材23が挿通される。
【0019】
また
図3~
図5に示すように、締結部44は、ねじ挿通孔40の内面に突設された凸部45を有している。凸部45は、ねじ挿通孔40の内面における締結部44の先端側(
図5の右側)に設けられている。凸部45は、下方に向かうに連れて突出量が大きくなるスロープ状をなしている。本実施形態では、
図1に示すように、ねじ挿通孔40の中心線(詳しくは、雄ねじ部材30の中心軸L)と凸部45の突端との距離DDが雄ねじ部材23の外径DSの半分(=DS/2)と略同一になるように、凸部45の形状が定められている。
【0020】
図3~
図5に示すように、締結部44の下面、すなわち上記ベース部材21のボス部30の先端に対向する面には、奥行き方向において延びる溝である案内凹部46が形成されている。案内凹部46の延設方向における延設幅(左右方向の長さ)は、上記ボス部30の外径よりも大きくなっている。これにより、上記ボス部30の先端が案内凹部46の内部に進入した状態で同案内凹部46の延設方向、すなわち奥行き方向に移動可能になっている。
【0021】
案内凹部46は、ねじ挿通孔40の形成位置から締結部44の先端まで延びている。案内凹部46のねじ挿通孔40側の端部46Aの内面は、ねじ挿通孔40の内面が下方に延伸された形状、詳しくは断面半円形状をなしている。本実施形態では、上記案内凹部46の一方の端部46Aの内側面とボス部30の先端の外周面とは略同一の断面円弧形状をなしている。
【0022】
案内凹部46の一方の端部46Aを上記形状にすることにより、ベース部材21に装飾部材22を取り付ける際には、ベース部材21のボス部30の先端を装飾部材22の案内凹部46の一方の端部46Aに突き当たる位置まで移動させると、断面円弧状の案内凹部46の端部46Aに円筒状のボス部30の先端が嵌まるようになる。これにより、ねじ挿通孔40の中心とボス部30の中心線とが略一致するようになる。このように本実施形態では、ボス部30の先端を案内凹部46の端部46Aまで移動させるといった単純な作業を通じて、ベース部材21および装飾部材22についての左右方向における相対位置を調整する作業と、奥行き方向における相対位置を調整する作業とを合わせて行うことができる。このように本実施形態では、案内凹部46の端部46Aの内面とボス部30の外周面とが、ベース部材21と装飾部材22との左右方向における相対位置や奥行き方向における相対位置を定める基準面になっている。
【0023】
また、案内凹部46は、締結部44の先端に向かうほど延設幅が広くなるテーパ形状をなしている。そして、案内凹部46の上記締結部44の先端側の端部46Bは、同締結部44の外側面において開口している。
【0024】
本実施形態では、案内凹部46が上記形状で延設されているため、装飾部材22をベース部材21に近づける態様で奥行き方向に移動させることにより、ベース部材21のボス部30の先端を上記締結部44の外側面において開口している部分から案内凹部46の内部に進入させることが可能になっている。しかも、この移動に際して、ベース部材21のボス部30の先端が、テーパ形状で延設される案内凹部46の内側面との接触を通じて、同案内凹部46のねじ挿通孔40側の端部46Aまでスムーズに案内されるようになる。
【0025】
以下、本実施形態にかかる樹脂部品20の組み立て手順について説明する。
図6および
図7に示すように、樹脂部品20の組み立てに際しては先ず、ベース部材21のボス部30の先端と装飾部材22の固定部41の案内凹部46との相対位置が、上下方向と左右方向とにおいて大まかに合わせられる。そして、その状態で、
図6および
図7に白抜きの矢印で示すように、ベース部材21に近づけるように装飾部材22が奥行き方向に移動される。
【0026】
本実施形態では、装飾部材22の固定部41の先端の外側面において案内凹部46が開口している。そのため、装飾部材22をベース部材21に近づけるように移動させると、ベース部材21のボス部30の先端が上記固定部41の外側面において開口している部分から案内凹部46の内部に進入するようになる。
【0027】
その後においては、さらにベース部材21に近づけるように装飾部材22が奥行き方向に移動される。このとき、ベース部材21のボス部30の先端が、装飾部材22の案内凹部46の内部に進入した状態を保ちつつ案内凹部46の内部を奥行き方向に移動するようになる。本実施形態では、案内凹部46が、ねじ挿通孔40側の端部46Aに向かうに連れて延設幅が狭くなるテーパ形状をなしている。そのため、装飾部材22をベース部材21に近づけるように移動させる際には、ベース部材21のボス部30の先端が、装飾部材22の案内凹部46の内側面との接触を通じて、同案内凹部46の端部46Aまでスムーズに案内されるようになる。
【0028】
そして、ベース部材21のボス部30の先端を装飾部材22の案内凹部46の端部46Aまで移動させることにより、断面円弧状の案内凹部46の端部46Aに円筒状のボス部30の先端が嵌まるようになる。これにより、ねじ挿通孔40の中心とボス部30の中心線とが一致するようになる。上述したように本実施形態では、案内凹部46の端部46Aの内面とボス部30の外周面とが、ベース部材21と装飾部材22との左右方向における相対位置や奥行き方向における相対位置を定める基準面をなしている。したがって、案内凹部46の端部46Aの内面にボス部30の外周面が嵌まることにより、ベース部材21および装飾部材22の上下方向における相対位置や奥行き方向における相対位置が正規の位置になる。
【0029】
本実施形態では、
図1に示すように、この状態で、雄ねじ部材23が装飾部材22のねじ挿通孔40に挿通されるとともにベース部材21のボス部30に嵌められる。これにより、ベース部材21に装飾部材22が締結固定される。こうした雄ねじ部材23による締結固定によって、ベース部材21のリブ36,37の上端面に装飾部材22の固定部41(詳しくは、締結部44)の下面が当接して密着するようになる。上述したように本実施形態では、リブ36,37の上端面および締結部44の下面が共に、組み付けにかかる上下方向の基準面をなしている。したがって、リブ36,37の上端面と締結部44の下面とが当接することにより、ベース部材21および装飾部材22の上下方向における相対位置が正規の位置になる。
【0030】
本実施形態の樹脂部品20では、雄ねじ部材23の中心軸Lと直交する方向にベース部材21と装飾部材22とを相対移動させることにより、ボス部30の先端を、案内凹部46の延設方向における一方の端部46Bから同案内凹部46の内部に進入させるとともに、案内凹部46の延設方向における他方の端部46Aまで移動させることができる。これにより、ベース部材21と装飾部材22との相対位置を、装飾部材22のねじ挿通孔40とベース部材21のボス部30とが連通するようになる位置、すなわち雄ねじ部材23、装飾部材22のねじ挿通孔40、およびベース部材21のボス部30を利用した締結固定が可能になる位置にすることができる。
【0031】
ここで、本実施形態の樹脂部品20では、ベース部材21の短立壁部34が上方に向かうに連れて雄ねじ部材23の中心軸Lから離間する態様で斜め上方に延びており、装飾部材22の装飾部43が上記ベース部材21の短立壁部34の外面に沿って斜め上方に延びている。そのため、ベース部材21のボス部30の先端を装飾部材22の固定部41の下面の案内凹部46に進入させるべく、ベース部材21に装飾部材22を近づける態様で同装飾部材22を下方に移動させると、装飾部材22の装飾部43の下端がベース部材21の短立壁部34の上端に突き当たってしまう。このことから本実施形態の樹脂部品20では、ベース部材21への装飾部材22の組み付けを、上下方向、すなわち雄ねじ部材23の締結方向においてベース部材21と装飾部材22とを相対移動させることによって行うことができない。
【0032】
この点をふまえて、本実施形態の樹脂部品20では、装飾部材22の固定部41の下面に案内凹部46が設けられている。そして、この案内凹部46を利用して、雄ねじ部材23による締結固定に先立ち行われるベース部材21と装飾部材22との位置決めを、雄ねじ部材23による締結方向(上下方向)と異なる方向、すなわち上記ボス部30の中心線と直交する方向(奥行き方向)におけるベース部材21および装飾部材22の相対移動を通じて行うことができる。これにより、ベース部材21と装飾部材22との位置決めを行う際に、雄ねじ部材23の締結方向においてベース部材21と装飾部材22とを相対移動させるためのスペースが小さくなる、あるいは不要になるため、ベース部材21と装飾部材22との締結固定を高い自由度で行うことができるようになる。
【0033】
図8に示すように、ベース部材21と装飾部材22とを奥行き方向に相対移動させる際には、ベース部材21のボス部30の先端が装飾部材22の案内凹部46の一方の端部46Aに到達する前に、それらベース部材21および装飾部材22の相対移動が停止されてしまう場合がある。
【0034】
本実施形態の樹脂部品20では、ねじ挿通孔40の内面における上記固定部41の先端側の部分に凸部45が形成されている。そして、この凸部45の外面は下方に向かうに連れて突出量が大きくなるスロープ状をなしている。
【0035】
そのため、ベース部材21と装飾部材22との相対位置が
図8に示す位置になった場合には、雄ねじ部材23を装飾部材22のねじ挿通孔40に挿通しつつベース部材21のボス部30に嵌める際に、雄ねじ部材23の外面に上記凸部45の外面が接触して、同凸部45、ひいては装飾部材22が雄ねじ部材23の外周側に押し退けられるようになる。
【0036】
このときには、
図9および
図10に示すように、スロープ状をなす凸部45の外面を雄ねじ部材23の外面によって外周側に押し退けつつ、同雄ねじ部材23をねじ挿通孔40にスムーズに進入させることができる。しかも、ねじ挿通孔40への雄ねじ部材23の進入に伴って、スロープ状をなす凸部45を雄ねじ部材23の外周側に徐々に押し退けることができる。これにより、ベース部材21のボス部30の先端が装飾部材22の案内凹部46の端部46Aに押し込まれるようになる。
【0037】
本実施形態では、雄ねじ部材23の中心軸Lと凸部45の突端との距離DD(
図1参照)が同雄ねじ部材23の外径DSの半分と略同一になっている。そのため、雄ねじ部材23がねじ挿通孔40に挿通された状態でボス部30に嵌められると、ボス部30の中心と雄ねじ部材23の中心軸Lとが略一致して、同ボス部30の先端の外周面が案内凹部46の端部46Aの内面に嵌まるようになる。これによって、ベース部材21および装飾部材22の奥行き方向における相対位置が正規の位置になる。
【0038】
このように本実施形態によれば、ベース部材21と装飾部材22との奥行き方向における相対位置が、正規の位置から若干離れた位置、詳しくはボス部30の先端が案内凹部46の端部46Aから若干離れた位置になっている場合であっても、雄ねじ部材23をボス部30に嵌める作業を通じて、上記相対位置を正規の位置にずらすことができる。したがって、装飾部材22とベース部材21との締結固定を容易に行うことができるようになる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)装飾部材22の締結部44の下面、すなわち上記ベース部材21のボス部30の先端に対向する面に、奥行き方向において延びる案内凹部46を形成した。そのため、雄ねじ部材23の中心軸Lと直交する方向にベース部材21と装飾部材22とを相対移動させることにより、ベース部材21と装飾部材22との相対位置を、雄ねじ部材23、装飾部材22のねじ挿通孔40、およびベース部材21のボス部30を利用した締結固定が可能になる正規の位置にすることができる。したがって、装飾部材22とベース部材21との締結固定を高い自由度で行うことができるようになる。
【0040】
(2)案内凹部46のねじ挿通孔40側の端部46Aは、ボス部30の先端の外周面が嵌まる形状をなしている。そのため、ベース部材21のボス部30の先端を装飾部材22の案内凹部46の端部46Aまで移動させるといった単純な作業を通じて、ベース部材21および装飾部材22についての左右方向における相対位置を調整する作業と、奥行き方向における相対位置を調整する作業とを合わせて行うことができる。
【0041】
(3)ベース部材21のボス部30を円筒状にするとともに、装飾部材22の案内凹部46の一方の端部46Aの内面を上記ボス部30の先端の外周面に沿って延びる断面円弧状にした。そのため、ボス部30の先端を案内凹部46の一方の端部46Aまで移動させることにより、ボス部30の先端を案内凹部46の端部46Aに嵌めることができる。
【0042】
(4)案内凹部46を、延設方向における延設幅がねじ挿通孔40側の端部46Aに向かうに連れて狭くなるテーパ形状にした。そのため、ベース部材21のボス部30の先端を、これが進入する装飾部材22の案内凹部46によって、同ボス部30と装飾部材22のねじ挿通孔40とが連通するようになる位置まで案内することができる。
【0043】
(5)装飾部材22におけるねじ挿通孔40の内面に凸部45を設けた。そのため、ベース部材21に対する装飾部材22の相対位置が、正規の位置から若干離れた位置になっている場合であっても、雄ねじ部材23をボス部30に嵌める作業を通じて、上記相対位置を正規の位置にずらすことができる。したがって、装飾部材22とベース部材21との締結固定を容易に行うことができるようになる。
【0044】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0045】
・ねじ挿通孔40の内面の凸部45を省略することができる。
・ボス部30の形状は、円筒形状に限らず、多角筒状や楕円筒状など、任意の筒状に変更することができる。要は、ボス部30の形状は、その先端が案内凹部46に進入可能な形状であって、且つ同案内凹部46の内部を延設方向に相対移動可能な形状であればよい。
【0046】
・案内凹部46のねじ挿通孔40側の端部46Aの内面形状は、断面V字状や断面I字状など、任意に変更することができる。
・例えばボス部30を円筒状に形成するとともに案内凹部46の端部46Aの内面を断面V字状に形成するといったように、ボス部30の先端の外周面と案内凹部46の端部46Aの内面とを異なる形状に形成することができる。
【0047】
・例えば位置決め用の治具を用いて位置調整を行うなど、ベース部材21と装飾部材22との相対位置を正規の位置にすることができるのであれば、ベース部材21に装飾部材22が締結固定された状態において、ボス部30の先端の外面と案内凹部46の端部46Aの内面とが非接触になる固定構造を採用してもよい。
【0048】
・案内凹部46を、装飾部材22の固定部41の下面に形成される溝によって構成することに限らず、固定部41の下面に立設される立壁部によって囲まれるスペースによって構成するようにしてもよい。
【0049】
・案内凹部46の延設形状は、各部の延設幅が等しい形状にするなど、任意に変更することができる。
【符号の説明】
【0050】
20…樹脂部品
21…ベース部材
22…装飾部材
23…雄ねじ部材
30…ボス部
31…ベース壁部
32…底壁部
33…長立壁部
34…短立壁部
35~37…リブ
38…表層部
40…ねじ挿通孔
41…固定部
43…装飾部
43A…下方部分
43B…上方部分
44…締結部
45…凸部
46…案内凹部
46A,46B…端部