(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】洗濯物洗浄工程で使用するための殺生物性組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 37/02 20060101AFI20220215BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20220215BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20220215BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20220215BHJP
C11D 1/62 20060101ALI20220215BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
A01N37/02
A01N25/02
A01N33/12 101
A01P3/00
C11D1/62
C11D7/26
(21)【出願番号】P 2019524439
(86)(22)【出願日】2017-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2017079945
(87)【国際公開番号】W WO2018108466
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-09-18
(32)【優先日】2016-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590003065
【氏名又は名称】ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】メトカフ,ケニス
(72)【発明者】
【氏名】カールス,マーク・アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】スミス,エミリー・グレイス
(72)【発明者】
【氏名】ストット,イアン,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】オキーフ,ジョアン・クレア
(72)【発明者】
【氏名】コーンメル,ロバート・ジョセフ
【審査官】二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102876525(CN,A)
【文献】特表2000-514482(JP,A)
【文献】特開2009-051756(JP,A)
【文献】国際公開第2009/125305(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/040230(WO,A1)
【文献】特表平10-512015(JP,A)
【文献】国際公開第2013/156371(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/02 -37/02
A01P 3/00
C11D 1/62 - 7/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動洗濯機のすすぎ補助ディスペンサーに、任意選択的に同じ分配区画内の液体布地コンディショナーの用量と共に、4~40mlの使用量の液体組成物を添加する工程を含み、
前記組成物が、1種以上の水溶性第4級アンモニウム化合物と、1種以上の水溶性有機ヒドロキシ酸とを含み、
前記水溶性有機ヒドロキシ酸対前記第4級アンモニウム化合物の重量比は、95:5~52:48の範囲内にあり、
前記組成物中の
前記水溶性有機ヒドロキシ酸がL-乳酸を含み、
前記組成物中に2種の水溶性第4級アンモニウム化合物が存在し、
一方がADEBAC(アルキルジメチルエチルベンズアルコニウムクロリド)であり、
他方がADBAC(アルキルジメチルベンザルコニウムクロリド)である、殺生物性組成物を洗濯物洗浄工程において添加する方法。
【請求項2】
前記組成物中の水溶性有機ヒドロキシ酸対水溶性第4級アンモニウム化合物の重量比が75:25~54:46の範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物がDDAC(ジデシルジメチルアンモニウムクロリド)をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、キャリア溶媒と、下記:
(i)a)(ADBAC)アルキルジメチルベンザルコニウムクロリドと、
b)(DDAC)ジデシルジメチルアンモニウムクロリドと、
c)(ADEBAC)アルキルジメチルエチルベンザルコニウムクロリドと
からなる3種の第4級アンモニウム化合物、
および
(ii)L-乳酸
の混合物と
を含み、
L-乳酸(ii)対第4級アンモニウム化合物(i)の重量比は、95:5~52:48の範囲内にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記使用量が5~25mlである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば衣服などの洗濯物を、特に洗濯機内で処理するために、洗濯物洗浄工程で添加するための殺生物性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯物洗浄工程がエネルギーと水に関して、より効率的になるにつれて、洗浄時間、洗浄温度およびすすぎのための水量はすべて減少している。また、その工程で使用するための化学組成物は、環境への影響を軽減するために改良されている。
【0003】
部分的にこれらの変化の結果として、消費者は、きれいな洗濯物が、洗濯工程では十分に除去または死滅していない、望ましくない日和見病原菌を依然として抱えている可能性があることをますます懸念している。消費者は、汚れが取り除かれたのを見ることができる。消費者は、悪臭が克服または除去されたことを嗅ぐことができるが、どんな病原体も除去または死滅したかを確かめることは難しいことが分かる。消費者は、より低い温度で洗濯し、エネルギーと水の効率を良くし、洗濯工程においてより刺激が少なくより少量の化学薬品を使用したいと望むが、洗濯した物に病原菌が存在する危険性が高まるのではないかと心配している。感染が発生した場合、耐性菌株は治療が困難であるという恐れと相まって、毎回洗濯するか、少なくとも消費者が必要とするときはいつでも洗濯するという、十分な衛生状態を提供するための、消費者の未充足の要求につながる。
【0004】
洗濯機を洗浄するための製品が存在する。それらは、洗濯物がない状態で使用されるように設計および推奨され、洗濯機から衣服を取り出す時点で洗濯物の衛生状態を必ずしも改善するわけではない。場所によっては、すすぎに使用される給水が細菌やウイルスによってひどく汚染されている。その場合、以前に消毒された洗濯機を有することと、得られる洗濯物の衛生状態とは、ほとんど無関係である。さらに、実験室での殺菌試験に合格した製品は、実際の洗濯条件ではそれほど効果的ではない可能性がある。時折洗濯機を掃除するだけでは、潜在的に、病原性細菌の数を低く抑えることはできない。さらに、最近のデータによれば、古くて頻繁に使用された洗濯機を新しい洗濯機と交換すると、消費者と一緒に置かれたタオルで測定した細菌のレベルは、107から104cfu/gtowelに低下した。その後のデータでは、数週間の洗濯機使用後に、107cfu/gtowelに戻ることが示された。
【0005】
我々の研究は、シュードモナス属種が、先進国と発展途上国の両方で、洗濯した綿によく見られる属であることを示した。シュードモナス属種による皮膚または軟組織の感染は、これらの細菌が侵襲性で毒素産生性であるため、深刻で複雑になる傾向がある。これらの日和見病原菌は、免疫不全の人々が増加する世界人口の間で、病気を引き起こす可能性が高い。シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)(P.エルギノーザ)は、一般に、例えば土、水、その他湿った場所などの環境中に見られるグラム陰性菌である。P.エルギノーザは日和見病原菌である。P.エルギノーザは、感染症を引き起こすために、個人の弱まった免疫系を利用する。この生物は、組織に有害な毒素を産生し、特に重度のやけどを患っている患者ならびに免疫抑制されている癌およびエイズ患者に、尿路感染症、呼吸器系感染症、皮膚炎、軟組織感染症、菌血症、骨・関節感染症、胃腸感染症および様々な全身感染症を引き起こす可能性がある。この細菌は、緑膿菌性肺感染症に非常に罹りやすい、嚢胞性線維症の個人に特に懸念されている。P.エルギノーザに感染したそのような個人の致死率は、50%に達する。それはまた、より健康な個人には、耳の感染症を引き起こす可能性がある。
【0006】
様々な生物に対して殺生物剤系の有効性を試験するのは、通常のことである。低温洗濯添加剤は通常、BS EN 1276:1997に従って、グラム陰性菌とグラム陽性菌の両方に対して、以下の生物のすべてを用いて試験される。
【0007】
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(S.アウレウス)ATCC 6538
シュードモナス・エルギノーザ(P.エルギノーザ)ATCC 15442
エンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)(E.ヒラエ)(ATCC 10541
エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)(E.コリ)ATCC 10536
洗濯物中によく見られる細菌の我々自身の分析に基づいて、P.エルギノーザなどのシュードモナス属種への対処が非常に重要であると考えている。
【0008】
洗濯製品を使用するときに経験する高い希釈率、および例えば洗浄工程の各工程での汚染水の導入を介して、微生物の再汚染があらゆる段階で起こり得るという事実は、最終のすすぎサイクルで殺生物剤を添加することが有用であり得ることを意味する。しかし、効果的であるためには、この供給点は、周囲温度、通常のすすぎ濃度およびすすぎ時間に見合った時間尺度で作用する、迅速に作用し重量効率の良い抗菌システムを必要とする。現代の自動洗濯機では、これらの時間尺度は、5分程度である。
【0009】
洗濯衛生製品は、2つの主要なクラスに分類することができる。漂白剤を含むものおよび他の殺生物剤を含むものである。その他の点では優れた漂白剤をベースとした製品の主な欠点は、それらが着色された布地を漂白することもあるということである。また、それらは典型的には粉末ベースであり、消費者は、使用する液体洗濯洗剤および/または液体布地コンディショナーに合う液体添加剤を好む。
【0010】
非漂白性殺生物剤を含有する1つの市販の液体製品は、ジメチルジデシルアンモニウムクロリド(DDAC)およびアルキルジメチルベンザルコニウムクロリド(ADBAC)を含有すると言われている。リンスコンディショナーの引き出しを介して供給される推奨用量120gは、第4級アンモニウム塩殺生物剤系を混合した2.88gの60:40 DDAC:ADBACを供給する。EN1276プロトコルで定義されているように、20℃で5分間の接触時間、「汚れた」条件下での懸濁試験におけるP.エルギノーザに対する性能は、要求される衛生状態を得るには不十分であり、時には最後のすすぎに入る衣服の状態を表すことを述べている「清潔な」条件下でさえ不十分で、要求を支持するために必要とされるlog5の減少をもたらすわけではないことを決定した。いくつかの機械では、高い使用量(2×60mLのキャップ)は、リンスコンディショナー区画を十分に利用することができ、布地コンディショナーを加える余地がない。
【0011】
国際公開第2013/156371号(ユニリーバ社)は、0.5~35重量%の布地柔軟化活性剤を含む水性布地コンディショナー組成物を開示し、ここで布地柔軟化活性剤は、エステル結合トリエタノールアミン第4級アンモニウム化合物ならびに0.001%~2重量%の非イオン性抗菌物質、および0.01~10重量%の香料を含む。選択された非イオン性抗菌物質は、試験された他の抗菌物質に対して組成安定性の利点を与え、布地コンディショナー中でエステル結合トリエタノールアミン第4級アンモニウム化合物と組み合わせて相乗的な着用中の抗菌活性を示す。この文献はまた、非イオン性抗菌物質に加えて他の抗菌剤もまた存在し得ることを開示し、ただし、これらは製剤を不安定にするレベルでは存在しない。そのような有用なさらなる抗菌剤の中には、硬水中のグラム陰性菌の耐性を低下させるのに特に有用なるキレート剤がある。酸性殺生物剤も存在し得る。
【0012】
Boomsmaら、SOFW Journal(2015)Vol 141(10)p2~6は、界面活性剤の非存在下では、乳酸はグラム陰性菌に対して特に効果的であり、グラム陽性菌は乳酸と界面活性剤との組み合わせで対処することができることを開示する。
【0013】
この相乗効果は、界面活性剤と乳酸との組み合わせが洗浄剤製品において広範囲の抗菌活性を与える。比較的低い界面活性剤レベルを有する製品においては、乳酸との相乗効果は機能的であるだけでなく経済的でもある。そのような相乗効果の主な例は、低レベルのアニオン性界面活性剤および乳酸が非常に費用対効果の高い抗菌効果および抗ウイルス効果をもたらすことができる抗菌性硬質表面洗浄製剤であると言われている。この発表はまた、より敏感な製剤について、抗菌性の要求または保存のために製剤が乳酸に頼ることを可能にしながら、それらが無香料であるという事実を促進することを可能にする、超高純度のL-乳酸を入手できることを開示する。この記事はまた、防腐剤、キレート剤およびアルコールなどの他の二次成分が乳酸の殺菌作用を高めることができることにも注目している。
【0014】
“safe and efficient bacterial disinfection with bio-based Lactic Acid”という題名のJungbunzlauerの発表は、洗濯洗剤におけるその可能な使用について言及している。この開示は、乳酸とSLESとの混合物を、P.エルギノーザ(DSM939)、S.アウレウス(ATCC 6538)、E.コリ(ATCC 10536)およびE.ヒラエ(ATCC 10541)に対する20℃で5分間(希釈中和により終了)の相乗効果について試験し、修正DIN EN 1040プロトコルに従って99.999%またはlog5の減少を探索した。広範囲の濃度にわたって2つの成分間に顕著な相乗効果を見出した。界面活性剤が、乳酸が細菌の細胞壁を乗り越えて浸透するのを助けると述べている。結果として、乳酸はその全殺菌力を満たすことができ、細胞はその後死滅する。単一の物質(乳酸、界面活性剤)は限られた範囲でしか抗菌作用を発揮しないが、両者の組み合わせは、殺菌性能の劇的な向上をもたらすと結論付けている。この相乗効果により、乳酸濃度が1%以下の場合でも、包括的な消毒の要求(全細菌の99.999%減少、log5減少)が維持される。言い換えると、これは最終製剤がそれほど厳密ではない標識を付けて開発され得ることを意味する。
【0015】
以下の特許公報は、少なくとも1つの第4級アンモニウム化合物と乳酸との組み合わせを示唆している。
【0016】
国際公開第2001/00777号(コルゲート社)は、消毒剤、消毒剤のためのブースター剤、アニオン性界面活性剤および炭化水素成分、水溶性共界面活性剤および水を含有する表面消毒組成物を開示している。
【0017】
消毒剤は、0.05~10重量%の量で使用される。ブースター剤は、乳酸またはクエン酸などの有機酸を含むキレート剤から選択され、0~6重量%の量で使用される。実施例はすべて、2.5重量%のBardac 2170(DDAC)および0~2重量%の乳酸またはクエン酸を使用する。Bardac 114は、第4級アンモニウム化合物殺生物剤の代替混合物として教示されている。したがって、一般的な教示および実施例は両方とも、乳酸に対して過剰の第4級アンモニウム化合物殺生物剤の使用を指摘している。ブースター剤は、消毒剤の細菌活性を改善し、それによって細菌の死滅を増加させると教示されている。
【0018】
国際公開第2001/81519号(コルゲート社)は、非イオン性界面活性剤、消毒剤、ポリマー粘度調整剤および水を含有する便器洗浄剤を開示している。消毒剤は、0.05~2.5重量%の濃度で存在し、Bardac 114を含む様々な第4級アンモニウム化合物から選択される。組成物は、乳酸を含む多くの有機酸から選択される0~2.5重量%のプロトン供与剤をさらに含んでもよい。これらは、1つの例では使用されていない。
【0019】
米国特許第3932655号(ファーマコン社)は、n-アルキル化ベンザルコニウムハライドの混合物、好ましくは、それぞれアルキル部分にC8~18、好ましくはC12~18を有するn-アルキル化ベンジルアンモニウムクロリドまたはベンザルコニウムクロリド、ならびにそれらの混合物を含む毒濃縮物を開示する。濃縮物はさらに防腐剤および水を含む。濃縮物から調製された使用溶液は、有効であるために、より少量を含有する。好ましくは、濃縮物は、99.5~99.9重量%の不活性成分と、ならびにキレート剤と、n-アルキル化ベンジルアルキルアンモニウムハライドまたはn-アルキル化ベンジルアルキルアンモニウムハライドまたはn-アルキルベンザルコニウムハライドの混合物からなる0.1~0.5重量%の活性成分とからなる。キレート剤は、好ましくはエチレンジアミン四酢酸またはそのアルカリ金属塩、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムである。他の有用な化合物には、グルコン酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸ナトリウムまたはカリウム、ラクテート、シトレートなどの糖酸またはそのアルカリ金属塩が含まれる。
【0020】
活性成分は、約50~75重量%の第4級アンモニウムクロリドの混合物および約25~50重量%のキレート剤を含有する。好ましくは、活性成分は、約50~60重量%の第4級アンモニウムクロリドの混合物および約40~50重量%のキレート剤を含有する。消毒組成物の一例があり、それはキレート剤として好ましいエチレンジアミン四酢酸の二ナトリウム塩と2種の主な種類の第4級アンモニウム消毒剤(ADBACおよびADEBAC)を使用した。活性成分中のこれらの第4級アンモニウム化合物対キレート剤の重量比は、0.125:0.090という、キレート剤に対する過剰の第4級アンモニウム化合物を表す。
【0021】
米国特許第5861371号(ヘンケル-エコラボ社)は、洗濯した洗濯物を後処理するために、0.1~30重量%の水不溶性第4級アンモニウム化合物、0.1~50重量%の水溶性第4級アンモニウム化合物、0~5重量%のテルペン化合物、0.1~20重量%の水溶性酸および0.1~20重量%の乳化剤を含有する水性組成物を開示する。上記組成物は、布地の衛生性および脱臭性を改善するためのものである。テルペンの添加は、不安定化させる量の水溶性第4級アンモニウム化合物殺生物剤を使用せずにこの利益をもたらす。水溶性酸の添加は、組成物のpHを1~5の範囲内に調整することを意図しているように思われる。酸性組成物は布地上のアルカリ性洗剤残留物を中和すると言われている。実施例ではギ酸を使用したが、乳酸を含む他の水溶性酸も適切な代替物として開示されている。pH1で配合された実施例を除いて、すべての実施例は、ギ酸よりも、過剰の第4級アンモニウム化合物を使用した。好ましい組成範囲であると考えることができる請求項7は、その範囲からすべてのpH1の例を除外する。例はすべてDDACを使用する。しかし、請求項は、一般的にADBACをカバーしているが、それを使用していない。
【0022】
国際公開第2010/027863号(Stepan社)は、殺生物剤および増強剤系を含有する殺生物性組成物を開示しており、その混合物は相乗的な殺生物活性を有する。相乗効果指数は、段落048に定義されている。殺生物剤は、少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物を含み、増強剤系は、少なくとも1種の界面活性剤、溶媒、キレート剤および/または緩衝剤を含む。キレート剤は、希釈剤が高いミネラル含有量を有することができる、希釈可能な殺生物性組成物に特に適していると言われている。乳酸は、適切なキレート剤として言及されていない。乳酸は、適切な緩衝剤として言及されている。緩衝剤は、0~6重量%、最低0.3~0.5重量%の量で教示されており、教示されている第4級アンモニウム化合物の活性量は、6~25重量%、最低10~12重量%である。したがって、乳酸などの緩衝剤に対して過剰の第4級アンモニウム化合物が開示されている。これは、実施例にも反映されている。
【0023】
欧州特許第1454638号(Bode Chemie社)は、第4級アンモニウム化合物をベースとする濃縮消毒組成物および器具を化学的-熱的ケアするためのそれらの使用を開示する。実施例1および3は、乳酸および2種類のQACを使用する。乳酸に対して過剰の総QACがある。
【0024】
国際公開第2013/067150号(コロンビア大学)は、1種以上のカチオン性抗菌剤と、抗刺激剤としての任意の有機酸および/または亜鉛塩とを含む、持続的な抗菌活性を有する組成物を記載している。QACの量は、有機酸の量を超えるように思われる。
【0025】
国際公開第2013/098547号(バイオトロール社)は、少なくとも1種の抗菌第4級アンモニウム化合物と、親水性ポリマーと、極性溶媒と、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤およびキレート剤を含む抗菌組成物を開示する。本発明は、選択された特定の種類のポリマーに属する。実施例はすべて、キレート剤/乳酸に対して大過剰の第4級アンモニウム化合物を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【文献】国際公開第2013/156371号
【文献】国際公開第2001/00777号
【文献】国際公開第2001/81519号
【文献】米国特許第3932655号
【文献】米国特許第5861371号
【文献】国際公開第2010/027863号
【文献】欧州特許第1454638号
【文献】国際公開第2013/067150号
【文献】国際公開第2013/098547号
【非特許文献】
【0027】
【文献】Boomsmaら、SOFW Journal(2015)Vol 141(10)p2~6
【文献】“safe and efficient bacterial disinfection with bio-based Lactic Acid”という題名のJungbunzlauerの発表
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明に従って、1種以上の水溶性第4級アンモニウム化合物と、1種以上の水溶性有機ヒドロキシ酸とを含む殺生物性組成物が提供され、ここで、水溶性有機ヒドロキシ酸対第4級アンモニウム化合物の重量比は、95:5~52:48の範囲にある。
【0029】
好ましくは、上記組成物は、少なくとも2種の異なる水溶性第4級アンモニウム化合物を含む。
【0030】
水溶性有機ヒドロキシ酸対水溶性第4級アンモニウム化合物の重量比は、好ましくは、75:25~54:46の範囲にある。
【0031】
水溶性有機ヒドロキシ酸は、好ましくは、乳酸、またはクエン酸とマロン酸の混合物を含む。L-乳酸が特に適している。
【0032】
一実施形態では、組成物中に2種の水溶性第4級アンモニウム化合物があり、一方はADEBACであり、他方はADBACである。組成物はさらにDDACを含み得る。
【0033】
殺生物性組成物は、キャリア溶媒および下記:
(i)a)(ADBAC)アルキルジメチルベンザルコニウムクロリドと、
b)(DDAC)ジデシルジメチルアンモニウムクロリドと、
c)(ADEBAC)アルキルジメチルエチルベンザルコニウムクロリドと
からなる3種の第4級アンモニウム化合物、
および
(ii)L-乳酸
の混合物
を含み、
L-乳酸(ii)対第4級アンモニウム化合物(i)の重量比は、95:5~52:48の範囲にある。
【0034】
偶数個の炭素原子を有するC8~18アルキル鎖を含むADBACが好ましい。これらの鎖長が最も殺菌性であると考えられるので、高含有量のC12~14が最も好ましい。
【0035】
ADEBACは、好ましくは、C8~12アルキル鎖を有する液体である。好ましくは、90%超のアルキル鎖は、C10であるべきである。
【0036】
また、本発明の第2の態様によれば、第1の態様による液体殺生物性組成物を洗濯物洗浄工程に添加する方法が提供され、任意選択的に同じ分配区画内の液体布地コンディショナーの投与と共に、自動洗濯機のすすぎ補助ディスペンサーに2~100mlの液体組成物を添加する工程を含む。
【0037】
使用量は、4~40mlが好ましく、5~25mlがより好ましい。
【0038】
好ましくは、組成物は液体として製剤化される。
【0039】
過剰の乳酸を有するこの混合物の使用は、先行技術の教示に反するが、それでもなおP.エルギノーザに対して優れたレベルの性能を提供するように思われる。高い性能は、殺菌活性の相乗的な増加で使用される殺生物剤の総容量を相当減少させることができる。例えば、洗濯物中に存在することが知られているP.エルギノーザ細菌に対して、要求される衛生状態を与えることを期待して、10g使用量の濃縮物は、清潔な(すすぎ)条件下で洗濯物に添加するのに十分であり得る。この低レベルへの体積の減少は、混合物を自動洗濯機の布地コンディショナー区画に加えること、ならびに通常の使用量の布地コンディショナーを加えることの選択肢を与える。殺生物剤をこのようにすすぎ液に添加することは、(i)主洗剤を含有するアニオン性界面活性剤との不適合性、および(ii)新鮮な微生物がすすぎ水と共に導入される可能性があり、それらもまた洗浄およびすすぎをされた洗濯物の衛生を確保するために殺生物剤で処理する必要があるので、初期の洗浄液に添加することが好ましい。
【0040】
好ましくはすすぎ段階中に、洗濯工程に添加するための別個の濃縮物として混合殺生物剤系を提供することは、それらが布地コンディショナーと一緒に製剤化され、長期間ボトルと接触して貯蔵される場合、布地コンディショナーを不安定にする第4級アンモニウム化合物殺生物剤の問題も回避できる。
【0041】
本発明による組成物の使用は、細菌負荷が大幅に減少した、特にP.エルギノーザの負荷が減少した衛生的に清潔な衣服を提供する。組成物の使用はさらに、衣服の清潔さを改善し、衣服および機械自体からの残留悪臭の発生率を少なくすることができる。組成物の使用はまた、自動洗濯機の布地コンディショナーの引き出しに見られることが多い黒カビの発生を減らすことができる。
【0042】
組成物は、2を超えるpH、好ましくは2.2以上のpHで適切に製剤化される。これは消費者にとっての製剤の安全性を向上させる。使用時には、組成物は通常、希釈され、pHは中性により近いものに上昇する。一般的に、より酸性の組成物は、より多くの細菌を死滅させる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
多くの消費者は、布地の柔軟化や長持ちする香りなどの効果を提供するために、洗濯物洗浄工程の最後のすすぎに布地コンディショナーを使用する。本発明は、単回投与形態または複数投与形態のいずれかで提供され得る、濃縮組成物を介した効果的な抗菌剤混合物の供給を可能にする。単独で使用すると効果的であり、布地コンディショナーと組み合わせても効果的である。これにより、消費者は、自動洗濯機のすすぎ区画を介して組成物を布地コンディショナーと一緒に使用すること、またはそれを独立型のすすぎ処理剤として使用することができるようになる。
【0044】
あるいは、安定性の問題のためにあまり好ましくはないが、そのような組み合わせ製品からさらなる利益を提供するために、この技術を布地コンディショナー組成物に配合することができる。
【0045】
スマートインウォッシュデリバリー装置は、有益な薬剤の継続的な放出を可能にするように構成されてもよく、本発明の濃縮抗菌組成物は、そのような装置から、特にすすぎ中に、都合よく放出され得る。
【0046】
本発明の組成物は主にすすぎ液中での供給を意図しているが、あるいは、それらは、予備洗浄、主洗浄、浸漬、蒸気、紫外線照射または任意のすすぎ工程を含む洗浄サイクルの任意の工程に抗菌作用をもたらすように適合させることができる。本発明は、機械洗浄に限定されず、手洗い洗濯工程で使用される際に、衛生上の利益も提供する。
【0047】
組成物は、2~100ml、好ましくは約4~40ml、より好ましくは5~25mlの組成物が自動洗濯機のすすぎサイクルに供給される際に、必要なレベルの衛生を提供するために、十分に濃縮されるように設計される。L-乳酸単独では、10mL使用量として供給された場合、EN1276規制試験に合格するのに十分な細菌を死滅させることができない。実際に、100mlの使用量でさえ、それ自身で使用した場合、死滅は不十分である。
【0048】
有機ヒドロキシ酸
L-乳酸は、有機酸であり、同様のサイズの酸といくつかの特徴を共有している。低い酸解離定数(pKa)と低い疎水性の組み合わせは、L-乳酸を容易に水と混和性にする。L-乳酸は、主にエマルジョンの水相にある。これにより、水相が細菌も存在する場所であるため、より疎水性の有機酸よりも優れている。細胞膜を横切ってプロトン、または酸性度を「往復させる」のが特に良好である。細胞内に入ると、細菌細胞を阻害する4つの広範な作用機序がある。これら4つの機序は、2013年にDesriacらによって概説された。
【0049】
・酸ストレスは、一般的なレベルで細胞の調節を乱す。
【0050】
・細菌は、酸を送り出すことによって、エネルギーを使用してpHを維持する。
【0051】
・細菌は、代謝を変更し、アルカリ代謝物を生成する。
【0052】
・酸ストレスは、フリーラジカルを発生させ、それがすべての細胞機序を損傷する。
【0053】
細菌の不活化を直接的にもたらす短期間の曝露の間、これらの機序のいくつかは他のものより関連性ある。洗浄剤製品の抗菌品質の標準化された試験では、曝露は30秒程度の短時間になることがある。この時間枠では、細菌は、生存のために構造または代謝を適応させることによって、応答することができない。突然の激しい酸ストレスは、酸化ストレスの軽減されないショックをもたらすが、生存メカニズムは、細胞内の低いpHによって抑制される。この点で、乳酸は、細菌を死滅させるために特異な機序に頼ることができるいくつかの合成抗菌剤とは非常に異なっている。1回の適応で細菌を耐性にすることができなかった。電子伝達系の機能不全のために、酸化ストレスの発生が細胞膜で生じる。洗浄剤製品に曝露される際に、細菌膜はすでに不安定化している。細胞膜は、界面活性剤の存在によってより流動性になり、より効果的な不活性化がもたらされる。乳酸は、界面活性剤の非存在下で、グラム陰性菌に対して効果的である。グラム陽性菌は一般的に、乳酸に対する感受性が低い。防腐剤、キレート剤、アルコールなどの二次成分は、乳酸の殺菌作用を高めることができる。これらの相乗効果は、一般的に微生物の生命現象にさらなる妨害行為を追加するものとして最もよく理解されており、製剤の主要な抗菌剤の作用に対して、微生物の生命現象をより脆弱にする。
【0054】
Luら、J.Food Protection(2011)Vol 74(6)p893~8は、嫌気性条件下でのL-乳酸とD-乳酸との間の大腸菌減少におけるわずかな違いを開示しているが、L-乳酸が非常に良好な結果を提供する好気性環境における初期の研究に言及している。洗濯機での撹拌下で行われる洗濯操作は主として好気的工程であるので、その使用にはL-乳酸が好ましいと我々は考えた。
【0055】
他のカルボン酸を、単独で、あるいは互いにまたは乳酸との混合物で使用することができる。1つの有用な混合物は、クエン酸とマロン酸の50:50重量%の混合物である。液体形態(例えば、乳酸)であり、したがって液体形態でもある第4級アンモニウム化合物と容易に混合することができる酸は、加工上の理由から好ましい。L-乳酸は、登録された殺生物剤であり、したがって殺生物活性の要求を支持するためにより容易に使用できるので、ラセミ混合物よりも好ましい。
【0056】
第4級アンモニウム化合物殺生物剤
本発明での使用に適した例示的な第4級アンモニウム化合物(QAC)殺生物剤および殺生物剤混合物を表1に示す。
【表1】
【0057】
ADEBAC=C12~14-アルキル[(エチルフェニル)メチル]ジメチルクロリドCAS番号85409-23-0
ADBAC=ベンジルC12~16アルキルジメチルクロリドCAS番号68424-85-1
DDAC=塩化ジデシルジメチルアンモニウムCAS番号7173-51-5
L-乳酸=2-ヒドロキシプロパン酸(C3H6O3)
好ましい材料は、プロパン-2-オール(7%)中および水中に、3種の抗菌性第4級アンモニウム化合物(QAC)を同程度に(ADEBAC、ADBACおよびDDAC)含む、Bardac 114である。これは、相乗的混合物として市販されており、ADBAC(すなわちBKC)よりも約3倍効率的であると言われている。Bardac 114の活性内容物は:
ADBAC:QACベンジルC12~16アルキルジメチル、クロリド(16%)
DDAC:ジデシルジメチルアンモニウムクロリド(16%)
ADEBAC:QAC C12~14-アルキル[(エチルフェニル)メチル]ジメチルクロリド(16%)
混合殺生物剤系
L-乳酸をBardac 114と組み合わせることにより、周囲温度および短い接触時間でP.エルギノーザに対して良好な殺生物活性を与え、またフロントローディング方式の自動洗濯機からのすすぎ用のEN1276パスを確保するのに必要なBardac 114の量を減少させ(希釈係数×1400)、また製品への可燃性の表示も避けることを見出した。我々はまた、ラセミ乳酸を試験し、そしてそれがBardac 114と混合したときに同様の結果を与えることを見出した。
【0058】
EN1276は通常、4種の細菌に対する試験を必要とする。それらは:
S.アウレウス:グラム陽性菌
E.ヒラエ:2番目のグラム陽性菌
E.コリ:グラム陰性菌
P.エルギノーザ:2番目のグラム陰性菌である。
【0059】
EN1276負荷試験で使用されている種の1つはP.エルギノーザであり、濃縮組成物はこれに対して非常に効果的である。我々は、シュードモナス属種が多くの市場で洗濯された衣服に関連するマイクロバイオームへの主要な寄与体であることを確立した。QACベースのシステムでは、P.エルギノーザがEN 1276試験で死滅させるのが最も難しい種であることが知られている。
【0060】
追加の殺生物剤
ジクロサン、二ハロゲン化化合物において、いくつかの実施形態では、4-4’ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテルを組成物に添加して、重量効率の良い殺生物剤混合物を得ることができる。
【0061】
組成物の粘度、色、香りおよびpHは、増粘剤、着色剤、香料およびpH調整剤を添加することによって調整することができる。
【0062】
適切な増粘剤としては、前述の任意の材料との組み合わせで、ジェランガム、ジウタンガム、キサンタンガム、グアーガム、アクリレート/アクリル酸コポリマー、アクリレート/アミノアクリレートコポリマー、アルギネート、アラビノガラクタン、カラギーナン、ペクチン、水膨潤性粘土、フュームドシリカ、相溶性非イオン剤およびグリセロールが挙げられる。
【0063】
適切なpH調整剤は、安価で、無臭で、無毒であり、そしてpHの調整時に透明な溶液を生成するべきである。それらには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化リチウムが含まれる。
【0064】
それらが濃縮物として供給される場合、組成物は単回投与として、または複数回投与を供給することが可能な包装として包装することができる。10mlという低い用量の寸法を補助する適切なパックは、当業者によく知られている。
【0065】
以下の非限定的な実施例および図面を参照しながら本発明をさらに説明し、これは、3分系についての利得が2.6より大きい場合を示す、相乗的利得対殺生物性組成物のプロットである。
【0066】
[実施例]
相乗効果
式1は、抗菌成分の3成分混合物の相乗効果を計算する(Sabc)
【数1】
【0067】
式中:
MBCaは、特定の生物に対して決定された成分の最小殺菌濃度である。(適切な懸濁試験プロトコルに関して、この場合は5分間の接触時間、汚れた条件、20℃で標準硬度の水に関して、微生物数のLog5減少をもたらす成分の濃度として定義される)。ここに示す例は、EN 1276の縮小版であるMTP懸濁試験に従って生成されたものである。
【0068】
[a]MBCabcは、混合物のMBCにおける混合物abc、すなわちMBCabc中の成分aの濃度である。
【0069】
別々の相乗効果を試験した各種の細菌について、(Sabc)が計算される。
【0070】
その細菌に対する混合物のSabcは、<1の場合は相乗的であり、=1の場合は相加的であり、>1の場合は拮抗的である。
【0071】
【0072】
として定義され、したがって>1の場合は相乗的である。
【0073】
二成分系殺生物剤混合物については、式は次のようになる。
【数3】
【0074】
[実施例1]
組成物は、シンプルなオーバーヘッドミキサーを使用して原材料を混合して、表2の組成物を形成することによって製造された。添加する順序で問題は発生しなかった。
【表2】
【表3】
【0075】
これらの混合物中に存在する活性成分の分別組成、すなわちQAC(ADBAC;ADEBAC;DDAC)および有機酸を表4および5に示す。
【0076】
試験プロトコル
マイクロタイタープレート(MTP)中で行われ、BS EN 1276:1997に包含される古典的懸濁試験の縮小版に基づいて行われるハイスループット定量的懸濁試験が、混合殺生物剤系の殺菌活性を評価するために使用される。この方法は任意の細菌で使用することができるが、この例では菌種P.エルギノーザATCC 15442が独占的に使用されている。
【0077】
フルEN 1276アッセイの縮小版は、96ウェルヘッドを備えたハミルトンロボット自動液体処理システムを用いて実施される。2つのプロトコル間の実際的な違いを表3に要約する。
【表4】
【0078】
MTP懸濁試験では、以下の試薬を使用する:
中和剤:Tween 80、60g/L;レシチン、6g/L;L-ヒスチジン、2g/L;チオ硫酸ナトリウム、10g/L;オートクレーブ滅菌。
【0079】
培地の回収:オートクレーブ滅菌したTryptone Soya Broth 30g/L。
【0080】
細菌懸濁液培地:オートクレーブ滅菌した細菌学的トリプトン粉末、1g/L;塩化ナトリウム8.5g/L。
【0081】
使用した菌種:緑膿菌ATCC 15442
接触時間:5分±10秒
試験温度:20℃±1℃
妨害物質:汚れた状態:試験中0.3%w/vウシ血清アルブミン
妨害物質を滅菌蒸留水で3%に調製し、0.2μmセルロースフィルターユニットを通過させることにより濾過滅菌した。
【0082】
インキュベーションの温度と継続時間:37℃±1℃で20時間
表1に示した製剤のストック濃度は、60mlのステリリン中で調製し、希釈液は96ウェルディープウェルプレート中で調製し、すべてのストック液および希釈液は24°FHの硬水を用いて調製した。典型的には、試験方法は、成分混合物の濃度の全合計範囲が1000ppmから50ppmの間で変動するようなものであった。試験プレートは、製剤プレートがプレートの11列にまたがる11の製剤希釈を有するように設定された。組成例BおよびMのような殺生物性の低い系では、MBCを探索し、最終的に見出すために、濃度を上昇させること、およびより大きい希釈段階を用いることが必要であった。
【0083】
細菌懸濁液を、トリプトンソイ寒天培地の新鮮なプレート培養物から調製し、37℃で18時間インキュベートした。懸濁液をトリプトン希釈剤中で1.7マクファーランド単位(1~1.5×108cfu/ml)の密度に調製した。
【0084】
製剤を上記のように調製し、すべての希釈について24°FHの水を使用して2.2mlのディープウェルプレートで希釈した。試験希釈率が1.25になるように濃度を調整した。1%Virkon溶液および24°FHの水の陽性および陰性対照を使用した。
【0085】
製剤を試験プレートに移した後、妨害土壌100μlおよび細菌懸濁液100μlを、空の96ウェルMTPに移し、混合し、2分間接触させた。次いで、土壌/細菌60μl容量を、試験プレートに移し、混合し、5分間接触させた。試験プレートから、すべてのウェルについて30μlを吸引し、中和プレートに分注して5分間の接触時間を置いた。中和プレートから、すべてのウェルについて30μlを、最初の6つの希釈プレートに移し、ここから、すべてウェルにわたって30μlの1:10連続希釈を、トリプシンソイブロス270μlを含有する
残りの6つの希釈プレートに作成した。
【0086】
プレートを、0時点で620nmにおける光学密度を読み取り、次いで、プレートを37℃で20時間インキュベートし、620nmでのエンドポイント光学密度読み取りを行った。0時間後および20時間後のOD値を用いて、各製剤および濃度についてのΔOD値を計算した。対数減少は、再増殖を示す0.2OD単位の光学濃度閾値を有する最確数(MPN)を用いて決定した。この閾値を超える前の濃度は、所与の濃度の殺生物剤混合物が各対数希釈で死滅させることができる細菌のMPNを示す。
【0087】
殺生物剤混合物の用量反応が確立されたので、殺生物剤混合物のMBCを予測するためにカーブフィッティング法が採用される。
【0088】
この領域の境界を得るためのカーブフィットは、P.エルギノーザに対する測定された対数死滅対組成物の濃度についてのデータを以下の形のシグモイド関数に当てはめることによって作成された:
y=a1+(a2-a1)/{1+10^[a4*(a3-X)]}。[式1]
式中:
y=P.エルギノーザに対する測定された対数死滅
x=ppmでの組成物の濃度
a1=最小対数死滅、
a2=最大対数死滅
a3=ppmでのシグモイド曲線の変曲点
a4は、変曲点での曲線の急峻さに関係している。
【0089】
試験したすべての組成物について、死滅の程度は0~6Logの範囲であり、したがって、a1を0に設定し、そしてa2を6に設定した。試験した組成物についての実験データをシグモイド関数に当てはめて、パラメータa3およびa4を得た。これは、誤差=sum((y_measured(i)-y(i))^2)[式2]から得られる誤差を最小にすることによって達成された
式中、シグモイド関数;式1によって計算されるように、y_measured(i)は、組成物のi番目の実験点の測定MBCであり、y(i)は、組成物のi番目の実験点のMBCである。
【0090】
誤差は、組成物についてのすべての実験データ点にわたる誤差の二乗の合計を合計することによって得られる。
【0091】
a3およびa4の値を変えることによる誤差の最小化は、任意の適切な最適化戦略、例えば、Excel内で「ソルバー」を使用することによって得られる。
【0092】
式2からの誤差を最小にすることによってa3およびa4の値が得られると、予測対数死滅=5を与える組成物濃度を見つけることによってMBCが見出された。
【0093】
例えば、MBCは以下から見出すことができる。
【0094】
MBC=a3-(1/a4)*LOG10((a2-a1)/(5-a1)-1)
LOG10(x)は、10を底としたxの対数である。
【0095】
各組み合わせについて得られたMBCおよび計算された相乗的利得を表4に示す。文字で示された例は、特許請求の範囲の範囲外の比較例である。番号1~4の実施例はすべて本発明によるものである。
【0096】
図1は、相乗的利得が2.7以上である、本発明による組成物面積を示す表4のデータのプロットであり、2.6は、50重量%のL-乳酸、25重量%のADEBACおよび25%のADBACの混合物に対する相乗的利得である。2.6は、67%ADEBAC:ADBACを33%DDACとブレンドして、相乗的Bardac 114ブレンドと同等のQAC組成の混合物を作成した際に得られる相乗的利得である。
【表5】
【0097】
[実施例2]
他のカルボン酸を、単独で、あるいは互いにまたは乳酸との混合物で使用することができる。1つの有用な混合物は、クエン酸とマロン酸の50:50重量%の混合物である。
【表6】
【図面の簡単な説明】
【0098】
【
図1】本発明による組成物面積を示す表4のデータのプロットである。