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特許7023955永久分極ハイドロキシアパタイト、その製造方法および使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】永久分極ハイドロキシアパタイト、その製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/32 20060101AFI20220215BHJP
   B01J 27/18 20060101ALI20220215BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20220215BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 6/75 20200101ALI20220215BHJP
   A61L 27/12 20060101ALI20220215BHJP
   A61L 31/02 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 33/42 20060101ALI20220215BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20220215BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
C01B25/32 P
B01J27/18 Z
C08K3/32
C08L101/00
A61K6/75
A61L27/12
A61L31/02
A61K47/02
A61P19/08
A61P19/10
A61P35/00
A61K33/42
H01M10/0562
H01B1/06 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019527955
(86)(22)【出願日】2017-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2017069437
(87)【国際公開番号】W WO2018024727
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-01-16
(31)【優先権主張番号】16382381.8
(32)【優先日】2016-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16382524.3
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519038596
【氏名又は名称】ビー.ブラウン、サージカル、ソシエダッド、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】B.BRAUN SURGICAL, S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】519038600
【氏名又は名称】ウニベルシタート、ポリテクニカ、デ、カタルーニャ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAT POLITECNICA DE CATALUNYA
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】パウ、トゥロン、ドルス
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、ハビエル、デル、バジェ、メンドーサ
(72)【発明者】
【氏名】ホルディ、プイガリ、ベリャルタ
(72)【発明者】
【氏名】カルロス、エンリケ、アレマン、リャンソ
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/142296(WO,A1)
【文献】特表2011-506619(JP,A)
【文献】国際公開第2014/119663(WO,A1)
【文献】特開2005-239873(JP,A)
【文献】特開2006-306728(JP,A)
【文献】特開2001-187133(JP,A)
【文献】特開2016-018935(JP,A)
【文献】Solid State Ionics,2002年,Vol. 151,pp. 29-34
【文献】Journal of Biomedical Materials Research,2001年,Vol. 57,pp. 477-484
【文献】Materials Science and Engineering C,2009年,Vol. 29,pp. 2411-2416
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/00
B01J 27/00
C08K
C08L
A61K 6/00
A61L 27/12
H01M 10/00
H01B 1/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶度が65%超であり、
リファレンスとしてHPOを使用して固体ハイドロキシアパタイトについて400MHzの周波数で測定される、対応する31P NMRスペクトルが、ハイドロキシアパタイトのリン酸基に対応する2.572~2.604ppmに特有のピークを示す、永久分極ハイドロキシアパタイトであって、
「永久分極ハイドロキシアパタイト」が、3か月後の表面静電容量の低下が8%未満であるハイドロキシアパタイトを意味する、永久分極ハイドロキシアパタイト。
【請求項2】
前記ピークが2.589ppmに位置する、請求項1に記載の永久分極ハイドロキシアパタイト。
【請求項3】
以下の工程:
(a)700℃~1200℃の温度でハイドロキシアパタイトおよび/または非晶質リン酸カルシウムの焼結サンプルを得る工程;
(b)900℃~1200℃の温度で少なくとも1分間、250V~2500Vの一定もしくは可変の直流電圧、または1.49kV/cm~15kV/cmの等価な電場を印加する工程;
(d)前記一定もしくは可変の直流電圧、または前記等価な電場を印加している間に前記サンプルを冷却する工程
を含んでなる、請求項1に記載の永久分極ハイドロキシアパタイトを得るための方法。
【請求項4】
工程a)で得られた前記ハイドロキシアパタイトの焼結サンプルが、結晶性ハイドロキシアパタイトの焼結サンプル、非晶質ハイドロキシアパタイトの焼結サンプルおよび前記焼結サンプルの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程a)で得られた前記焼結サンプルが、結晶性ハイドロキシアパタイトおよび非晶質リン酸カルシウムの焼結サンプルである、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の永久分極ハイドロキシアパタイトを含んでなる組成物または材料。
【請求項7】
シリケート;ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸コグリコール酸(PGLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、多糖類、およびタンパク質から選択される生体適合性ポリマー;ならびに金属イオンのうち少なくとも1種をさらに含んでなる、請求項6に記載の組成物または材料。
【請求項8】
生物医学用途における、請求項6または7に記載の組成物または材料あるいは請求項1に記載の永久分極ハイドロキシアパタイトの使用。
【請求項9】
電極としての、請求項6または7に記載の組成物または材料あるいは請求項1に記載の永久分極ハイドロキシアパタイトの使用。
【請求項10】
ポリマーをドープするための、請求項6または7に記載の組成物または材料あるいは請求項1に記載の永久分極ハイドロキシアパタイトの使用。
【請求項11】
触媒としての、請求項6または7に記載の組成物または材料あるいは請求項1に記載の永久分極ハイドロキシアパタイトの使用。
【請求項12】
前記触媒が、光電気触媒または電気触媒である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記触媒としての使用が、有機分子の合成のための反応におけるものである、請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
有機分子を吸着させるための、請求項6または7に記載の組成物または材料あるいは請求項1に記載の永久分極ハイドロキシアパタイトの使用。
【請求項15】
固体状バッテリー中の構成成分としての、請求項6または7に記載の組成物または材料あるいは請求項1に記載の永久分極ハイドロキシアパタイトの使用。
【請求項16】
エネルギーハーベスティングチップ内の構成成分としての、請求項6または7に記載の組成物または材料あるいは請求項1に記載の永久分極ハイドロキシアパタイトの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久分極ハイドロキシアパタイト(permanently polarized hydroxyapatite)、該永久分極ハイドロキシアパタイトの製造方法および該永久分極ハイドロキシアパタイトの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロキシアパタイト(HAp)、すなわち、Ca10(PO(OH)は、骨および歯などの生物学的硬組織の主要な無機成分である(参考文献1,2)。合成HApは、生物系との相互作用に優れた能力を示し、生物医学的用途、例えば、薬物および遺伝子の送達、組織工学および骨修復に関して研究されてきた(参考文献3~8)。
【0003】
非晶質リン酸カルシウム(ACP)と結晶性合成HAp(cHAp)との間の重要な違いは、後者におけるc軸に沿ったOHイオンの配置である。OH欠損がない化学量論的cHApの結晶構造は、室温で単斜晶系である(参考文献9,10)。単斜晶系cHApは、約210℃で六方晶系の相に変化し、それはc軸に沿ったOHイオンの秩序立った配置から無秩序な配置への変化を意味する。熱相転移に加え、OH欠損は相転移も引き起こす(参考文献9,10)。この場合、六方晶系の相は、4~12のpH範囲内のcHApの最も安定した形態となるが、その理由としては、OH基のカラム中の酸素ラジカルの存在および空孔(vacancy)の存在によって引き起こされた無秩序のためである。cHApの電気的および誘電的な特性は、熱により引き起こされたOHイオンの位置の変化によって変更されることが見いだされたものの(参考文献11~13)、観察された分極効果は室温で安定していなかった(即ち、OHの再再配向(re-reorientation)の緩和時間(relaxation time)は短い)。
【0004】
山下および共同研究者(co-workers)(参考文献14,15)は、事前に1250℃で2時間焼結したサンプルに、1.0~4.0kV/cmの一定のDC電場を印加することにより、多結晶性HApサンプルにおける疑似的な永久分極効果を引き起こした。この取組みは、<700℃の温度で、一定の電場に基づくものである。熱により刺激された脱分極電流(TSDC)測定によって決定された最大電流密度(~10-9A/cm)は、分極工程での温度が400℃に固定された際に得られた。実際、電流密度は、分極温度が450℃を超えた際に急速に低下することが観察された。結果では、分極が、結晶粒の内部での欠損の生成、および粒子境界内に発生した空間電荷分極(space charge polarization)の生成に関連した電気双極子による帰結であることが示された。熱的に刺激された分極プロセスは、HAp表面の性質に異なる影響を与えることが見いだされた(参考文献16,17)。分極の影響は、cHApの表面の粗さ、結晶度および構成要素に対する影響を示さなかったが、湿潤性(参考文献16)および骨芽細胞の接着性は、調製されたものに対してよりも、分極サンプルに対しての方が高かった(参考文献17)。後者の現象は、非極性cHAp表面と比較して表面自由エネルギーが増加したことに起因する。
【0005】
この点で、文書ES2323628では、調製した粉末を1200℃で1~5時間、所与の方法にて焼結させることにより、固溶体中にカルシウムハイドロキシアパタイトを得ることが開示されている。セラミック材料は、1000℃以上の温度(T)、または100.000V/cmを超える一定の電場で分極することができる。しかしながら、そのような条件でエネルギーは保存されないので、1000℃未満または10~100.000V/cmの間の電圧下で行うほうがよい。
【0006】
Fu, Congらは、「Hydroxyapatite thin films with giant electrical polarization」, Chemistry of Materials (2015) 27 (4), 1164-1171において、チタンおよびステンレススチールの電極上に形成された炭酸ハイドロキシアパタイト、および0.3Mの尿素を含有する溶液を使用した200℃での追加の熱水結晶化(hydrothermal crystallization)が、1平方センチメートル当たりに66.000マイクロクーロン超の蓄積電荷で分極を示すことが見いだされた。さらに、この炭酸ハイドロキシアパタイト上に示された分極は温度に依存し、永久ではない。対照的に、本発明は炭酸ハイドロキシアパタイトを開示せず、目的は永久分極を得ることである。
【0007】
最近、本発明者らは、調製したACPおよびcHApの、異なるホスフェートおよびバイオホスホネート(BP)と相互に作用するための能力を検証したが(参考文献18)、これは生物医学的用途のためのバイオマテリアルの分野に非常に関係がある題材である。したがって、哺乳類で見つかったオルトホスフェートポリマーであるポリホスフェート(polyP)(参考文献19)は、HApに吸収された際に骨再生を促進する(参考文献20~24)。具体的には、polyPは、基本的な細胞増殖および分化を安定させて骨再生を増強する(参考文献25~27)。さらに、他の研究では、polyPおよびピロホスフェート(P 4-)がHAp結晶の成長を阻害すると報告された(参考文献28,19)。より最近では、Grynpasおよび共同研究者(参考文献30)は、polyPの生産が、軟骨石灰化および骨形成に重要な役割を果たし、それが、強固な複合体の形成を介したホスフェート(PO 3-)およびカルシウム(Ca2+)の局所蓄積に起因することを提案した。この仮説は、HApへのpolyPの吸着、および、Ca2+-polyP複合体におけるpolyPの加水分解相関関係と、PO 3-およびCa2+の濃度の増大との間の相関関係の両方によって支持されている。他方、BPでは、ピロホスフェートのリン酸基を連結する酸素原子が炭素原子によって置換され、その結果、加水分解的および酵素的分解の両方の抑制が生じる(参考文献31)。2つの種の間の強い水素結合の形成に関連する第三級炭素原子にアミノ基を組込むことにより、HApへのBPの親和性は増加する(参考文献32,33)。更に、BPは様々な骨疾患(例えば、骨粗鬆症、骨のページェット病、および骨に転移した悪性腫瘍)に対する現在の薬学的な戦略(arsenal)における主要な薬剤である(参考文献34)。
【0008】
最近の研究では、調製されたACPおよびcHApへのpolyPおよびP 4-の吸着が、異なる吸着質濃度を使用して得られた結果を比較して会合過程における制限がいくつか見いだされたものの、塩基性のpH9に対してpH7で有利であることが証明された(参考文献18)。アミノ-トリス(メチレンホスホン酸)(以下ATMPと表示)の吸着に関する研究は、ACPおよびcHApのこのBPへの親和性がpolyPおよびP 4-への親和性よりも低いことを示唆した。
【0009】
M. Ueshima、S. Nakamura、M.Oghaki、K. Yamashita、Solid State Ionics 2002、151, 29-34(参考文献63)では、沈殿反応を通じてHAp粉末を調製し、次に粉末を単軸でプレスしてペレット剤にし、水蒸気流下で1250℃で2時間それらを焼結させることによる、生物活性(HAp)材料の分極が開示されている。得られた試験片は、Pt電極の間にはさまれ、空気中でそれぞれ室温、300℃および800℃に加熱され、1時間、1および10kV/cmのDC電場で電気的分極処理に供され、その後、分極下で室温に冷却される。
【0010】
M.Nakamura、Y.Sekijima、S.Nakamura、T.Kobayashi、K. Niwa、K. Yamashita、J.Biomed. Mater. Res. 2006、79A、627-634(参考文献62)では、材料および方法の章で示されるように、分極したHApサンプルの調製であって、特に、焼成が1250℃で2時間、飽和水蒸気の大気中で行われ、サンプルが、300℃で1時間、空気中の一対の白金電極を用いて1.0kVcm-1のDC電場で電気的に分極される調製が開示されている。前記分極されたHApは、ラットの脛骨へ移植され、移植されたHApと血液凝固成分との間の相互作用が検出された。電気的な分極によって引き起こされた、増強された骨誘導性の機序も論述されている。
【0011】
このような状況の下、上記を考慮して、本発明者らは、驚くべきことに、下記に示されるような広範囲の使用可能性に関連する特定の電気化学的かつ電気的な特性を有する永久分極ハイドロキシアパタイトを得ることが可能であることを見出した。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第一の態様は、永久分極ハイドロキシアパタイトおよびそれを含む組成物または材料に関する。
【0013】
本発明の第二の態様は、永久分極ハイドロキシアパタイトを得るための方法に関する。
【0014】
本発明の第三の態様は、永久分極ハイドロキシアパタイトを得るための別の方法に関する。
【0015】
本発明の第四の態様は、本発明の第二または第三の態様による方法によって得たまたは得られる永久分極ハイドロキシアパタイトに関する。
【0016】
本発明の第五の態様は、永久分極ハイドロキシアパタイトの異なる使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、(a)cHApおよび(b)ACPのFTIRスペクトルを示す図である。
図2図2は、本実施例で研究されたcHAp粒子およびACP粒子のX線回折パターン:(a)cHAp/pおよびcHAp/tsp;ならびに(b)ACP/pおよびACP/tspを示す図である。cHApおよびACPのサンプルは、2θ=32°~34°でのピークによって同定された。
図3図3は、(a)cHAp/p、(b)cHAp/sおよび(c)cHAp/tspサンプル:P2p、Ca2pおよびO1s領域についての高解像度XPSスペクトルを示す図である。
図4図4は、cHAp/p、c/HAp/sおよびcHAp/tsp粒子のSEM顕微鏡写真を示す図である。
図5図5は、cHAp/p、c/HAp/sおよびcHAp/tspについて:(a)コントロールボルタンモグラム(control voltammogram)ならびにPBS中での連続する酸化還元サイクルの数に伴う(b)電気活性(electroactivity)の損失(方程式(Eqn)2中のLEA)、および(c)特定の静電容量(方程式3中のC)の両方の変化を示す図である。
図6図6は、cHAp/p、cHAp/sおよびcHAp/tspの(a)ナイキストおよび(b)ボードのプロット、ならびに、(c)cHAp/sおよびcHAp/tspについて記録された実験データに適合するために使用した等価的電気回路(EEC:electrical equivalent circuit)を示す図であり、Rsは電解質抵抗、CPE およびR は、それぞれバルク定位相要素およびバルク抵抗であり、CPE di は二重層静電容量の寄与である。白塗りの記号は位相角の値に対応するが、実線(solid)の記号はLog|Z|に対応し、黒線は適合させたプロファイルに対応する。図a)中の挿入図は高周波でのナイキスト挙動を表す。
図7図7は、P 4-、polyPおよびATMPの存在下でのインキュベーション前後のcHAp/sおよびcHAp/tspサンプルの第一および第二のFBS滴状物の接触角(黒および灰色でそれぞれθFBSおよびθ'FBS)を示す図である。
図8図8は、pH7で(a)polyP(200mM)、(b)P 4-(100mM)、および(c)ATMP(200mM)の存在下でインキュベーションを行ったcHAp/p、cHAp/sおよびcHAp/tspのFTIRスペクトルを示す図である。矢印は異なる吸着質の吸着を同定するために使用されるバンドおよびショルダーの位置を示す。
図9図9は、(aおよびc)cHAp/sならびに(bおよびd)cHAp/tspについて:インキュベーションされていないサンプルならびにP 4- 、polyPおよびATMPの存在下でインキュベーションされたサンプルに対する(aおよびb)コントロールボルタンモグラムならびに(cおよびd)PBS中での連続する酸化還元サイクルの数に伴う電気活性の損失(方程式2中のLEA)の変化を示す図である。
図10図10は、2θ=32°~34°でのピークによって同定されたcHAp/pおよびcHAp/sサンプルのX線回折パターンを示す図である。
図11図11は、ACP/p、ACP/sおよびACP/tsp粒子のSEM顕微鏡写真を示す図である。ACP/p中に見いだされたナノスフェア的な形態は、ACP/tspにおいて紡錘状のナノロッドへ変形する一方、2つの形態は、ACP/s中に共存するようである。
図12図12は、ATMP、P 4-およびpolyPの存在下でのインキュベーション前後の(a)cHAp/sおよび(b)cHAp/tspのサンプルのためのNa1s領域の高解像度XPSスペクトルを示す図である。
図13図13は、ATMPの存在下でのインキュベーション前後の(a)cHAp/sおよび(b)cHAp/tspのサンプルのためのN1s領域の高解像度XPSスペクトルを示す図である。
図14図14は、cHAp/pについて:インキュベーションされていないサンプルおよびP 4- 、polyPおよびATMPの存在下でインキュベーションされたサンプルについて、(a)コントロールボルタンモグラムならびに(b)PBS中での連続する酸化還元サイクルの数に伴う電気活性の損失(方程式2中のLEA)の変化を示す図である。
図15図15は、単独のcHAp/sならびにpH7でpolyP(200mM)、P 4- (100mM)およびATMP(200mM)の存在下でインキュベーションを行ったcHAp/sの(a)ナイキスト(nyquist)、(b)log|Z|、および(c)位相角のプロットを示す図である。
図16図16は、単独のcHAp/tspならびにpH7でpolyP(200mM)、P 4- (100mM)およびATMP(200mM)の存在下でインキュベーションを行ったcHAp/tspの(a)ナイキスト、(b)log|Z|、および(c)位相角のプロットを示す図である。
図17図17は、PBS中のcHAp/p、c/HAp/sおよびcHAp/tspのコントロールボルタンモグラムを示す図である。ボルタンモグラムの陽極および陰極領域によって定義される電気化学活性は、HAp/sおよびHAp/pおよびコントロール(ステンレススチール、AISI 304、電極)よりもHAp/tspで顕著に高い。
図18A図18Aは、結晶性の無秩序な相(非晶質リン酸カルシウム)の共存が存在する場合の、合成によって得られるようなHApサンプル(cHAp/p)31Pスペクトルを示す図である。結晶度は43%である。弱いシグナルは恐らく水素ホスフェートおよび二水素ホスフェートによるものである。
図18B図18Bは、再組織化が観察される場合の、焼結したHApサンプル(cHAp/s)の31Pスペクトルを示す図である。いくつかの結晶および無秩序な相(非晶質リン酸カルシウム)の共存も存在する。結晶度は65%である。弱いシグナルは恐らく水素ホスフェートおよび二水素ホスフェートによるものである。
図18C図18Cは、結晶度が76%である場合の、本発明による永久分極後のHApサンプル(cHAp/tsp)31Pスペクトルを示す図である。弱いシグナルはもはや存在しない。
図18D図18Dは、図18A~Cからの重複するスペクトルを示す。
図19図1995℃で24時間反応させた後に得られたセット1サンプル(表4)のH(a)、13C(b)および31P NMR(c)スペクトルを示す図であり、層システムを調製するために5mM ZrOCl溶液を使用した。
図20図20は、Gly/Phos(○)、Ala/Phos(□)、(Gly+Ala)/Phos(◆)、およびGly/Ala(▲)の、(a)5mM ZrOCl溶液から調製したセット1サンプル(表4)を使用して95℃で行った反応時間、(b)同一のサンプルを使用して24時間行った反応の温度、および(c)95℃で24時間のセット1サンプルを使用した反応について酸化ジルコニウム溶液の濃度、に対する比の変化を示す図である。
図21図21は、(a)p-cHAP、(b)p-cHAP+Phos-Zr-Phos、(c)陰性反応後のp-cHAP+Phos-Zr-Phos(例えば、紫外線への曝露なし)、および(d)陽性反応(95℃で24時間)後のp-CHAP+Phos-Zr-PhosN1sおよびZr3d領域についての高分解能XPSスペクトルを示す図である。
図22図22は、95℃で24時間の反応の(a)前および(b)後のセット1サンプルのSEM顕微鏡写真(micrograp)を示す図であり、層システムの調製には5mM ZrOCl溶液が使用されている。
図23図23は、a)95℃で24時間の反応の後のセット1サンプルのFTIRスペクトルを示す図であり、層システムの調製には5mM ZrOCl溶液が使用されている。挿入図では反応の(b)後および(d)前の上記サンプル、反応後(c)のセット2サンプル、および(e)グリシンとアラニン(2:1重量比)の混合物について1700~1500cm-1領域を比較している。
図24図24は、分極cHAp(a)およびセット1サンプルの95℃で24時間の反応の(b)前および(c)後に対応するX線回折パターンを示す図であり、層システムの調製には5mM ZrOCl溶液が使用されている。灰色の×印は反応後に消滅する触媒の特徴的なX線回折の反射を指摘する一方で赤色の×印は反応後に観察することができる新たな反射を指摘する。丸で囲まれた記号は反応の間により劇的に変化した反射を指示する。
図25図25は、cHAp/tsp(我々の条件で調製)ならびにNakamuraらおよびUeshimaらの条件に従い調製した分極鉱物についての20回の連続した酸化還元サイクル後のボルタンモグラムを示す図である。Nakamuraらの条件(J. Biomed. Mater. Res. 2006, 79A, 627-634):i)室温での析出による合成;ii)2時間850℃での乾燥iii)2時間の飽和水雰囲気中における1250℃でのか焼(calcination)iv)300または800℃での1時間の1kV/cmでの分極Ueshimaらの条件(Solid State Ionics 2002, 151, 29-34):i)室温での析出による合成;ii)2時間850℃での乾燥iii)2時間飽和水雰囲気中における1250℃のか焼iv)300または850℃での1時間の10kV/cmの分極
図26図26は、cHAp/tsp(我々の条件で調製)ならびにNakamuraらおよびUeshimaらの条件に従い調製した分極鉱物についての酸化還元サイクルの数に対する電気化学活性の損失を示す図である。Nakamuraらの条件(J. Biomed. Mater. Res. 2006, 79A, 627-634):i)室温での析出による合成;ii)2時間850℃での乾燥;iii)2時間の飽和水雰囲気中における1250℃でのか焼;iv)300または800℃での1時間の1kV/cmでの分極。Ueshimaらの条件(Solid State Ionics 2002, 151, 29-34):i)室温での析出による合成;ii)2時間850℃での乾燥;iii)2時間飽和水雰囲気中における1250℃でのか焼;iv)300または850℃での1時間の10kV/cmでの分極。
図27図27は、本発明のシステムと、以下の条件:Nakamuraらの条件(J. Biomed. Mater. Res. 2006, 79A, 627-634):i)室温での析出による合成;ii)2時間850℃での乾燥;iii)2時間の飽和水雰囲気中における1250℃でのか焼iv)300または800℃での1時間の1kV/cmでの分極、およびUeshimaらの条件(Solid State Ionics 2002, 151, 29-34):i)室温での析出による合成;ii)2時間850℃での乾燥;iii)2時間飽和水雰囲気中における1250℃でのか焼;iv)300または850℃での1時間の10kV/cmでの分極で調製されたサンプルである従来技術のシステムとの、電気抵抗および表面の静電容量についての比較表である。
図28図28は、3か月後の図25のサンプルの再評価を示す図である。
図29図29は、3か月後の図27のサンプルの再評価を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
第一の態様において本発明は、永久分極ハイドロキシアパタイトであって、その結晶度が65%超、好ましくは70%超、より好ましくは75%超であって、かつその対応するRMN31Pスペクトルが図18Cに示されるものである永久分極ハイドロキシアパタイトに関する。
【0019】
本発明において、用語「永久分極」は、ハイドロキシアパタイトが高い結晶度でほぼ完璧な、完全な構造的再分布(即ち、特に少ない量の非晶質リン酸カルシウム、ならびに増加した電気化学活性によって検出された空白の存在、および単位質量と表面あたりの蓄積電荷を伴って)を経たことを意味する。それには消滅しない電気化学活性およびイオン移動性がある。永久分極ハイドロキシアパタイトと対応する合成焼結させられたハイドロキシアパタイトとの間の化学的な差異は、図18A~CによるRMN31Pスペクトルに示される。
【0020】
図18A~CはcHAp/p、cHAp/sおよびcHAp/tspサンプル(本発明による)の固体 31P NMRスペクトルを表す。2.9ppmでcHAp/p、cHAp/sおよびcHAp/tspに存在する主要な共鳴のピークは、ハイドロキシアパタイトのバルクリン酸基PO 3-に対応する(参考文献56)。cHAp/pと比較すると、cHAp/sおよびHAp/tspサンプル両方の線の幅はより狭く、これは上述のχの増大と一致している。cHAp/pおよびcHAp/sにおいて存在するおよそ[-1,0]ppmでの広範囲の信号および[0,1]ppmでのショルダーは、通常近接する無秩序の表層(disordered near surface layer)から発生するプロトン化された表面の孤立したリン酸基に割り当てられる(参考文献57)。確かに、ハイドロキシアパタイト粒子は、典型的には無秩序の非アパタイト性(non-apatitic)な表層に囲まれた秩序立ったハイドロキシアパタイトコアと説明される(参考文献58)。cHAp/s中に存在する4~6ppmのショルダーも、その表層中の量が一定の閾値より大きい場合に表面HPO 2-イオンに起因する(参考文献59)。このcHAp/s中の表面HPO 2-イオンの増加はcHAp/s粒子処理で適用された熱プロセスに起因するより無秩序な表層によってもたらされる。より際立った部分は、cHAp/tsp中に存在する、典型的なハイドロキシアパタイトのバルクのリン酸基PO 3-のたった一つのピークである。したがって、そのような粒子は、500Vの一定のDC電場と同時に1000℃で2時間の加熱からなる処理を受ける。この熱と電気の刺激プロセス(TSP)プロセスは、ハイドロキシアパタイト表面特性に異なる影響を与えることが見いだされた(参考文献60)。ハイドロキシアパタイトのように、表面はOHの位置の変化により変化(variation)を被る(参考文献61)。従ってp-cHApにおける熱的および電気的に刺激された分極プロセスに起因してカラムから離れる表面OHイオンの特徴(fingerprint)は、表面HPO 2-イオンの消失、および対応する電荷の中和のための価電子バンドのホール(hole)の形成である。
【0021】
本発明は、さらに本明細書に定義されるような永久分極ハイドロキシアパタイトを含む組成物または材料に関する。
【0022】
さらなる実施態様では、前記の組成物または材料は医療の、特に医薬の組成物または材料である。
【0023】
別のさらなる実施態様では、前記の組成物または材料は、さらに次のうち少なくとも1種を含む:シリケート;生体適合性ポリマー、これに限定することなく、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸コグリコール酸(PGLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、多糖類およびコラーゲンなどのタンパク質;好ましくはMg、Sr、Fe、Mn、Zr、Au、およびTi、より好ましくはZrから選択された有機金属化合物および金属イオン。
【0024】
第二の態様では、本発明は好ましくは:
(a)700℃~1200℃の温度でハイドロキシアパタイトおよび/または非晶質リン酸カルシウムの焼結サンプルを得る工程;
(b)900℃~1200℃の温度で少なくとも1分間、250V~2500Vの一定または可変の直流電圧を印加する工程、あるいは、
900℃~1200℃の温度で少なくとも1分間、1.49kV/cm~15kV/cmの等価な電場を印加する工程、あるいは、
900℃~1200℃の温度で10分未満の間、2500V~1500000Vの静電放電を印加する工程、あるいは、
900℃~1200℃の温度で10分未満の間、148.9kV/cm~8928kV/cmの等価な電場を印加する工程;
(c)一定もしくは可変の直流電圧または等価な電場を印加している間に前記サンプルを冷却する、好ましくは室温に冷却する工程、あるいは、
静電放電または等価な電場を印加している間に前記サンプルを冷却する、好ましくは室温に冷却する工程
を含んでなる第一の態様の実施態様のうちのいずれかに定義される、永久分極ハイドロキシアパタイトを得るための方法に関する。
【0025】
方法およびその方法によって得られたまたは得られる永久分極ハイドロキシアパタイトは、特に次の利点を有する:
工程(a)において定義された焼結温度はYamashitaおよび共同研究者ら(参考文献14)のものより低く、有利的にいくつかの望ましくない相転移を回避する。
【0026】
工程(b)において定義された温度(いわゆる分極温度である)を使用して得られた永久分極ハイドロキシアパタイトの電流密度は、350℃~400℃の分極温度を使用するYamashitaおよび共同研究者ら14によって達成されたもの(それぞれ~10-5A/cmおよび~10-9A/cm)より数ケタ分高く、これは本発明者らの処置の成功を証明する。これは、Yamashitaおよび共同研究者ら(参考文献14)が、電流密度が450~700℃の間において減少することを見出したので予期しない結果であったことは注目に値する。発明者らの処置の成功は、焼結温度と非常に高い分極温度(900℃~1200℃の間)の組み合わせに起因していた。
【0027】
好ましい実施態様において、工程a)で得られたハイドロキシアパタイトの焼結サンプルは、結晶性ハイドロキシアパタイトの焼結サンプル、非晶質ハイドロキシアパタイトの焼結サンプルおよび前記焼結サンプルの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、工程a)において得られたハイドロキシアパタイトの焼結サンプルは結晶性ハイドロキシアパタイトの焼結サンプルである。
【0028】
さらなる実施態様において、工程a)で得られた焼結サンプルはハイドロキシアパタイトの焼結サンプルである。ハイドロキシアパタイトの焼結サンプルは、結晶性ハイドロキシアパタイトの焼結サンプル、非晶質ハイドロキシアパタイトの焼結サンプルおよび前記焼結サンプルの混合物からなる群から選択されることが好ましい。より好ましくは、工程a)で得られた焼結サンプルは結晶性ハイドロキシアパタイトの焼結サンプルである。
【0029】
別のさらなる実施態様では、工程a)で得られた焼結サンプルはハイドロキシアパタイトと非晶質リン酸カルシウムの焼結サンプルである。ハイドロキシアパタイトの焼結サンプルは、結晶性ハイドロキシアパタイトの焼結サンプル、非晶質ハイドロキシアパタイトの焼結サンプルおよび前記焼結サンプルの混合物からなる群から選択されることが好ましい。より好ましくは、工程a)で得られた焼結サンプルは結晶性ハイドロキシアパタイトおよび非晶質リン酸カルシウムの焼結サンプルである。
【0030】
さらに別の実施態様において、工程a)で得られた焼結サンプルは非晶質リン酸カルシウムの焼結サンプルである。
【0031】
焼結工程(a)はセラミックのその融点より低い温度での熱処理である。本件において、焼結工程は、700℃~1200℃の間、好ましくは700℃~1150℃の間、より好ましくは800℃~1100℃の間、最も好ましくは約1000℃で行われる。
【0032】
また重要なことは、本発明の第二の態様による方法は、当技術分野で開示されているように、一定の直流電圧(工程(b)を参照)および/または一定の電場をかける。一定の直流電圧がかけられた場合、対応する電場は0である。
【0033】
さらなる実施態様では、一定または可変の直流電圧あるいは等価な電場は、0.5時間~1.5時間の間、工程(b)中に適用する。別の実施態様では、一定または可変の直流電圧あるいは等価な電場は、約1時間、工程(b)中に適用する。
【0034】
別のさらなる実施態様では、工程(b)中に適用した直流電圧は約500Vである。そのような直流電圧は3.0kV/cmの一定の電場と等しいであろう。
【0035】
さらに別の実施態様では、工程(b)における温度は少なくとも1000℃である。
【0036】
第三の態様では、本発明は次の:
(a)ハイドロキシアパタイトおよび/または非晶質リン酸カルシウムの焼結サンプルを得る工程;
(b)(a)で得られたサンプルを900℃~1200℃で加熱する工程;
(c)少なくとも1分間、250V~2500Vの一定または可変の直流電圧を印加する工程、または
少なくとも1分間、1.49kV/cm~15kV/cmの等価な電場を印加する工程、または
10分未満の間、2500V~1500000Vの静電放電を印加する工程、または
10分未満の間、148.9kV/cm~8928kV/cmの等価な電場を印加する工程;
(d)直流電圧または等価な電場を維持しているサンプルを冷却する、好ましくは室温に冷却する工程、または
静電放電または等価な電場を維持しているサンプルを冷却する、好ましくは室温に冷却する工程
を含む、好ましくは第一の態様のいずれかの実施態様で定義された永久分極ハイドロキシアパタイトを得る方法に関する。
【0037】
好ましい実施態様では、工程a)で得られたハイドロキシアパタイトの焼結サンプルは、結晶性ハイドロキシアパタイトの焼結サンプル、非晶質ハイドロキシアパタイトの焼結サンプル、および前記の焼結サンプルの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、工程a)で得られたハイドロキシアパタイトの焼結サンプルは結晶性ハイドロキシアパタイトの焼結サンプルである。
【0038】
さらなる実施態様において、工程a)で得られた焼結サンプルはハイドロキシアパタイトの焼結サンプルである。ハイドロキシアパタイトの焼結サンプルは、結晶性ハイドロキシアパタイトの焼結サンプル、非晶質ハイドロキシアパタイトの焼結サンプルおよび前記焼結サンプルの混合物からなる群から選択されることが好ましい。より好ましくは、工程a)で得られた焼結サンプルは結晶性ハイドロキシアパタイトの焼結サンプルである。
【0039】
別のさらなる実施態様において、工程a)で得られた焼結サンプルはハイドロキシアパタイトおよび非晶質リン酸カルシウムの焼結サンプルである。ハイドロキシアパタイトの焼結サンプルは、結晶性ハイドロキシアパタイトの焼結サンプル、非晶質ハイドロキシアパタイトの焼結サンプル、および前記焼結サンプルの混合物からなる群から選択されることが好ましい。より好ましくは、工程a)で得られた焼結サンプルは結晶性ハイドロキシアパタイトおよび非晶質リン酸カルシウムの焼結サンプルである。
【0040】
さらに別の実施態様において、工程a)で得られた焼結サンプルは非晶質リン酸カルシウムの焼結サンプルである。
【0041】
焼結工程(a)はセラミックのその融点より低い温度での熱処理である。本件の場合において、焼結工程は、好ましくは700℃~1200℃の間、より好ましくは700℃~1150℃の間、一層より好ましくは800℃~1100℃の間、最も好ましくは約1000℃の温度で行われる。
【0042】
また重要なことには、本発明の第三の態様による方法は、当技術分野で開示されている一定の直流電圧(工程(c)を参照)および/または一定の電場をかける。一定の直流電圧がかけられる場合、対応する電場は0である。
【0043】
さらなる実施態様では、一定または可変の直流電圧あるいは等価な電場は、0.5時間~1.5時間、工程(c)中にかけられる。別の実施態様では、一定または可変の直流電圧あるいは等価な電場は、約1時間、工程(c)中にかけられる。
【0044】
別のさらなる実施態様において、工程(c)中にかけられた直流電圧は約500Vである。
【0045】
さらに別の実施態様において、工程(b)中の温度は少なくとも1000℃である。
【0046】
本発明の第二の態様による方法の文脈において言及された利点は、本発明の第三の態様による方法に同様に当てはまる。
【0047】
第四の態様において本発明は本発明の第二の態様または第三の態様による方法によって得られる、永久分極ハイドロキシアパタイトに関する。永久分極ハイドロキシアパタイトおよび方法のさらなる特徴および利点については、本発明の第一および第二の態様に記載された実施態様が参照される。
【0048】
第五の態様において本発明は永久分極ハイドロキシアパタイトの以下の使用に関する。
【0049】
さらに本発明は、生物医学的用途における本明細書に定義されるような永久分極ハイドロキシアパタイトまたは本明細書に定義されるような当該永久分極ハイドロキシアパタイトを含む組成物もしくは材料の使用に関する。好ましくは、当該生物医学的用途は歯のセメント質、骨、人工器官、医療機器、薬物送達、遺伝子療法および組織再生から選択される。
【0050】
さらに本発明は、電極としての本明細書に定義されるような永久分極ハイドロキシアパタイトまたは本明細書に定義されるような前記永久分極ハイドロキシアパタイトを含む組成物または材料の使用に関する。
【0051】
さらに本発明は、ポリマーをドーピングするための、本明細書に定義されるような永久分極ハイドロキシアパタイトまたは本明細書に定義されるような当該永久分極ハイドロキシアパタイトを含む組成物もしくは材料の使用に関する。
【0052】
さらに本発明は、触媒としての、好ましくは光電気触媒(photoelectrocatalyst)または電気触媒としての本明細書に定義されるような永久分極ハイドロキシアパタイトまたは本明細書に定義されるような当該永久分極ハイドロキシアパタイトを含む組成物もしくは材料の使用に関する。好ましくは、触媒としての使用は有機分子、特にアミノ酸、好ましくは天然アミノ酸を合成するための反応においてである。有利的には、永久分極ハイドロキシアパタイトは以下にさらに説明されるように優れた触媒的性能および高い吸着容量を示すかもしれない。
【0053】
本発明者らは、本明細書に定義されるような永久分極ハイドロキシアパタイトまたは本明細書に定義されるような前記永久分極ハイドロキシアパタイトを含む組成物もしくは材料が(ジルコニウム)アミノトリス(メチレンホスホン酸)に基づく、層状の、特に三層状の触媒系における成分として使用することができ、これはグリシンおよびアラニンなどの天然アミノ酸の合成に触媒作用を及ぼすことを可能にする。この合成は固形状で有意な収率で行われ、NMR分光法によって実証されるような顕著な副産物をもたらすことなく行われる。反応は比較的低温(75~105℃)、短時間(例えば24時間未満)および低圧(例えば50bar未満)で行うことができるものの、紫外線への曝露は不可欠である。触媒は、窒素源としての役割を果たす分子としての窒素を固着し、COを吸着することができる。二酸化炭素およびメタンは、カルボン酸基およびメチレン基およびメチル基の両方の生産それぞれに関係している。その誘電性挙動を修正し、イオン移動性に寄与する触媒に水も影響を及ぼす。以前のプレバイオティクス合成において提案されるような大容量の水中における反応物の溶解を回避して、固形状に進行することができるアミノ酸などの有機分子の新しく清潔な合成方法が提供されるので、これらの結果は非常に興味深い。また分子窒素を固定する能力および穏やかな還元雰囲気(N、CO、HOおよびCH)の使用は、新しい触媒系は顕著な点である。この驚くべき使用は、可能性の低い還元雰囲気(HO、CH、NHおよびH)の代わりに穏やかな還元雰囲気(即ち、HO、CH、NおよびCOを含む)からアミノ酸を得るためにこの触媒族を使用する可能性を開くものである。さらに、COの吸着によるこの触媒の使用は、大気中のCOの量を低減させながら有機化合物を得ることを可能にし、これは大気中の多量のCO濃度に起因する既存の環境問題(グリーンハウス効果)に対して明確な寄与を示すことである。
【0054】
この触媒は、以降Phos-Zr-Phosと省略される、効率的なオキシ塩化ジルコニウムおよびアミノトリス(メチレンホスホン酸)の三層状システムに基づくものである。しかしながら、三層状システムを支える化合物は、第一のホスホネート層を適切に支える決定的なルールの役割を果たすべきである。またこの特徴は層状のシリケート(例えばナトリウムモンモリロナイト)、層状のアルミノシリケート(例えば雲母)およびそのカルシウムイオンと配置されたホスホネート層との間の強いイオン相互作用を確立することができるリン酸カルシウム系化合物(HAp、Ca10(PO(OH)))からの結果を比較して評価されるだろう。熱により刺激された分極HApへの適用は、ホスフェートおよびホスホネート(特にアミノトリス(メチレンホスホン酸)、ATMP)の処理を行っていない(合成された状態の)HAp粒子に対する吸着を著しく増加させた一方で、電気化学的な活性および安定性、ならびに導電率を増強させた(この方法に関する詳細については実施例の章を参照)。
【0055】
さらに本発明は、有機分子を支える、好ましくは吸着するための、本明細書に定義されるような永久分極ハイドロキシアパタイトまたは本明細書に定義されるような当該永久分極ハイドロキシアパタイトを含む組成物もしくは材料の使用に関する。好ましくは、当該分子は、炭水化物、アミノ酸、脂質、DNA、RNA、生体高分子およびATPから選択される。より好ましくは、前記生体高分子はポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸コ-グリコール酸(PGLA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリジオキサノン(PDO)、多糖類、およびタンパク質および有機金属化合物から選択される。
【0056】
さらに本発明は、ピロホスフェート、トリホスフェート、トリホスホネート、および/またはポリホスフェートなどのリンを含む化合物を支える、好ましくは吸着するための、本明細書に定義されるような永久分極ハイドロキシアパタイトまたは本明細書に定義されるような当該永久分極ハイドロキシアパタイトを含む組成物もしくは材料の使用に関する。ポリホスフェートは、1~50,000のモノマー単位を有する任意のポリホスフェートまたはそれらの任意の組み合わせから選択されることが好ましい。
【0057】
さらに本発明は、有機金属化合物、好ましくは金属ホスホネートを支える、好ましくは吸着するための、本明細書に定義されるような永久分極ハイドロキシアパタイトまたは本明細書に定義されるような当該永久分極ハイドロキシアパタイトを含む組成物もしくは材料の使用に関する。有機金属化合物は、好ましくは金属イオンを含む化合物であって、この金属イオンは遷移金属、ランタニドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものである。より好ましくは、有機金属化合物は金属イオンを含んでいる化合物であって、この金属イオンはSr、Mg、Fe、Mn、Zr、Au、Tiおよび少なくとも2種の前記化合物の混合物からなる群から選択される。
【0058】
さらに本発明は、分子認識、好ましくはラセミ分割のための、本明細書に定義されるような永久分極ハイドロキシアパタイトまたは本明細書に定義されるような当該永久分極ハイドロキシアパタイトを含む組成物もしくは材料の使用に関する。さらに本発明は、骨粗鬆症などの骨分解および/または骨悪性腫瘍の治療に使用するための、本明細書に定義されるような永久分極ハイドロキシアパタイトまたは本明細書に定義されるような当該永久分極ハイドロキシアパタイトを含む組成物もしくは材料の使用に関する。また本発明は、対象、好ましくはヒトの対象において、前記対象に治療上有効量の本明細書に定義されるような永久分極ハイドロキシアパタイトまたは本明細書に定義されるような当該永久分極ハイドロキシアパタイトを含む組成物もしくは材料を投与することを含む、骨粗鬆症などの骨分解および/または骨悪性腫瘍を治療する方法に関する。用語「治療上有効量」とは、任意の治療に適用可能な合理的な有益性/危険性の比で多少の所望の局所的または全身的な効果をもたらすような物質の量を意味する。そのような物質の治療上有効量は対象および治療する病態、対象の体重および年齢、病態の重篤度、投与の方法等に依存して変化し得、これらは当業者であればすぐに決定することができる。たとえば、本開示の特定の組成物は十分な量で投与することによってそのような治療に適用可能な合理的な有益性/危険性の比をもたらすことができる。
【0059】
さらに本発明は疾患の治療で使用するDNA/RNAであって、DNA/RNAが、本明細書に定義されるような永久分極ハイドロキシアパタイトまたは本明細書に定義されるような当該永久分極ハイドロキシアパタイトを含む組成物もしくは材料を用いて投与されるDNA/RNAに関する。また本発明は、対象、好ましくはヒトの対象において、前記対象に治療上有効量のDNA/RNAを投与することを含む疾患の治療方法であって、DNA/RNAが、本明細書に定義されるような永久分極ハイドロキシアパタイトまたは本明細書に定義されるような当該永久分極ハイドロキシアパタイトを含む組成物もしくは材料を用いて投与される方法に関する。DNA/RNAは疾患(即ち、癌、神経細胞の疾患または組織石灰沈着に関係する疾患)に関係する配列を含む二本鎖または一本鎖のDNAまたはRNA、および前記DNA/RNAの少なくとも2種の混合物からなる群から選択されることが好ましい。疾患は、限定することなく、軟骨形成不全、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、抗リン脂質抗体症候群、自閉症、常染色体優性多発性嚢胞腎、乳癌、シャルコー=マリー歯、結腸癌、猫鳴き症候群、クローン病、嚢胞性繊維症、ダーカム病、ダウン症候群、デュアン(Duane)症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、第V因子ライデン変異血栓形成(Factor V Leiden Thrombophilia)、家族性高コレステロール血症、家族性地中海熱、脆弱X症候群、ゴーシェ病、ヘモクロマトーシス、血友病、全前脳胞症、ハンチントン病、クラインフェルター症候群、マルファン症候群、筋緊張性ジストロフィー、神経線維腫症、ヌーナン症候群、骨形成不全症、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、ポーランド症候群、ポルフィリン症、早期老化症、前立腺癌、色素性網膜炎、重症複合免疫不全症(SCID)、鎌型赤血球症、皮膚癌、脊髄性筋萎縮症、テイ-サックス病、サラセミア、トリメチルアミン尿症、ターナー症候群、Velocardiofacial症候群、WAGR症候群、ウィルソン病を含む遺伝子障害、ならびに限定することなく、小動脈および大動脈、心臓弁、脳(この場合頭蓋石灰化として知られている)、ひざ関節、回旋腱板腱などの関節および腱に関係する疾患、胸、筋肉および脂肪、腎臓、膀胱、胆嚢などの軟組織に関係する疾患を含む、組織石灰化に関係する疾患からなる群から選択されることが好ましい。
【0060】
さらに本発明は、固形状電池としての、本明細書に定義されるような永久分極ハイドロキシアパタイトまたは本明細書に定義されるような当該永久分極ハイドロキシアパタイトを含む組成物もしくは材料の使用に関する。本明細書に使用されているように、固形状電池は固体電極と固体電解質の両方を有する電池である。グループとして、これらの物質はイオンの非常に良好な導体であり、良好な電解質および電極性能に必要であり、電子に対して本質的に絶縁であり、これは電解質において望ましいことであり、電極において望ましくない。高いイオン伝導性は、高い電子抵抗性がその自己放電率を最小化する一方で、電池の内部抵抗を最小化するので高出力密度が可能になり、それによりその電荷保持率が向上する。
【0061】
さらに本発明は、自らのエネルギーを生成することができるチップであるエネルギーハーベスティング(energy harvesting)チップ内の構成成分としての本明細書に定義されるような永久分極ハイドロキシアパタイトまたは本明細書に定義されるような当該永久分極ハイドロキシアパタイトを含む組成物もしくは材料の使用に関する。エネルギーハーベスティングは周囲エネルギーの使用可能な電気エネルギーへの転化として定義される。電池等の一般的な保存要素内に保管されたエネルギーと比較した場合、環境は比較的枯渇し得ないエネルギー源を表す。従って、エネルギーハーベスティング(即ち捕捉(scavenging))法はエネルギー密度ではなく、それらの出力密度によって特徴づけられなければならない。
【0062】
ここで本発明の範囲を制限することを意図していない以下の例を参照することによって本発明をさらに説明する。
【実施例
【0063】
永久分極HApおよびACPを得る方法
材料
リン酸二アンモニウム[(NHHPO;純度99.0%]、30%水酸化アンモニウム溶液(NHOH;純度:28~30%)、ピロリン酸四ナトリウム(Na)、三リン酸ナトリウム(polyP)およびATMPは、Sigma-Aldrichから購入した。硝酸カルシウム[Ca(NO;純度99.0%]をPanreac(バルセロナ、スペイン)から購入した。エタノール(COH;純度99.5%)をScharlab(バルセロナ、スペイン)から購入した。接触角測定のためのウシ胎児血清(FBS)をGibcoから購入した。
【0064】
HApとACPの合成
ACPとcHApのサンプルを調製するために単純な手順を使用し、唯一の違いは反応液に適用した熱の後処理であった(参考文献35)。試薬条件は1.67のCa/P比を得るために調節した。ACPとcHApの両方に、15mLの0.5M (NH HPO の脱イオン化水溶液(30w/w%のアンモニア溶液を用いてpH11に調節)を、撹拌(400rpm)下、25mLの0.5M Ca(NO エタノール溶液に滴下(2mL・分-1の速度)して添加した。その後、反応混合物を室温で撹拌(400rpm)して1時間混合させた。ACPの場合、結果生じた懸濁液を37℃で24時間熟成させた一方でcHApについては24時間の間、熱水条件を適用した。熱水合成において、結晶成長は「オートクレーブ」と呼ばれるスチール圧力容器からなる装置(ニュートリエント(nutrient)は水と共にその中に仕込まれる)内で行われる。本件の場合、温度は150℃であり、圧力は200barであった。
【0065】
両方の場合において沈殿物は遠心分離によって分離し、脱イオン化水および60/40v/vエタノール-水の混合物で連続して洗浄した(2回)。凍結乾燥の後に白色粉体を回収した。この手順を使用して得られたACPおよびcHApは「調製された」サンプルと表し、以降それぞれACP/pおよびcHAp/pと省略する。
【0066】
焼結プロセスおよび熱により刺激された分極プロセス
焼結したcHApおよびACPサンプルは、以降それぞれcHAp/sおよびACP/sと表すが、空気中で2時間1000℃にて前に合成した紛体を加熱することにより調製した。この温度はYamashitaと共同研究者によって使用された温度より低い(参考文献14,15)。この後に10分間620MPaで紛体を単軸にてプレスし、特徴化に適した密度の高いディスク体を得た。これらの試験片の寸法は10mmの直径×1.68mmの厚さであった。
【0067】
熱により刺激された分極ACPおよびcHAp(それぞれACP/tspおよびcHAp/tsp)を得るためには、焼結サンプルのディスク体をステンレススチールプレート(AISI 304)の間に挟み、空気中で1000℃に加熱し、同時に、一定の直流電圧(V)の適用下で1時間分極させた。本明細書に開示されるようなこの分極温度は、Yamashitaおよび共同研究者が使用した温度値(即ち<700℃)の範囲外であり(参考文献14,15)、彼らは450℃より高い温度は分極プロセスに悪影響があり、分極サンプルの電流強度の低下につながると示した。続いて、直流電圧を維持して、サンプルを室温に冷却した。250~2000V(即ち1.49~11.9kV/cmの一定の電場)の範囲のV値を使用して事前アッセイを行い、最良の結果は500V(即ち2.98kV/cm)で得られた。従って、この作業に記載されたすべての実験は、V=500Vを使用し分極させたACP/tspおよびcHAP/tspサンプルに相当する。
【0068】
永久分極HApおよびACPの特徴化
X線回折
結晶度と構造を広角X線回折(WAXD)によって研究した。Cu Kα放射(λ=0.1542nm)およびBragg-Brentanoの形状、シータ-2シータでBruker D8アドバンスモデルを使用してパターンを得た。一次元のLynx Eye検出器を使用した。10~60の2-シータ範囲、0.02°の測定ステップ、および2~8の時間/ステップで、40kVおよび40mAでサンプルを実行した。PeakFit v4ソフトウェア(Jandel Scientific Software)で回折プロファイルを処理し、OriginPro v8ソフトウェア(OriginLab Corporation, U.S.A)でグラフの描写を行った。
【0069】
(211)平面に垂直方向な結晶子サイズ(L)は、X線回折プロファイルから(211)ピーク幅および(211)ピーク線幅の広がりの測定を考慮し、Scherrer方程式(参考文献36):
【数1】
[式中、λは波長(CuKα)であり、βは(211)ピークの高さの半値全幅であり、θは回折角であり、0.9は形状因子である]
を使用して導き出された
【0070】
結晶度(χ)は、下記式(参考文献37):
【数2】
[式中、I300が(300)反射の強度であり、V112/300は非晶質サンプル中では消失する(112)と(300)の反射の間の穴の強度である]
を使用して得られた。
【0071】
X線光電子分光法(XPS)
XPS分析は、分析器軸に垂直に置かれ、150Wで作動するMg/Al(1253eV/1487eV)の高強度のツインアノードX線源XR50を備え、Phoibos 150 MCD-9 XP検出器を使用するSPECSシステムにおいて行われた。X線スポットサイズは650μmであった。パスエネルギーは、サーベイスキャンおよびナロースキャンのためにそれぞれ25および0.1eVに設定した。電荷補償は電子およびアルゴンイオンのフラッドガンの組み合わせで達成された。電子のエネルギーおよび放出電流はそれぞれ4eVおよび0.35mAであった。アルゴンガンについては、エネルギーと放出電流はそれぞれ0eVおよび0.1mAであった。スペクトルは6x10-9mbarより下の圧力で0.1eVステップにおける25eVのパスエネルギーで記録した。電荷補償のこれらの標準条件負の電荷であるが、完全に均一な静電荷をもたらした。C1sピークは、284.8eVの結合エネルギーで内部基準として使用された。高解像度XPSスペクトルはS字バックグラウンド減算後にGaussian-Lorentzian曲線フィッティングによって得た。表面組成は製造会社の感度係数を使用して決定された。
【0072】
FTIR分光法
フーリエ変換FTIR 4100 Jascoスペクトロメーターを用いて1800~700cm-1の範囲において赤外線吸収スペクトルを記録した。加熱Diamond ATR Top-Plateとともに、SpecacモデルMKII Golden Gate全反射吸収分光法(ATR)機器を使用した。
【0073】
形態
エネルギー分散X線(EDX)分光法システムを備えた5kVで作動するFocused Ion Beam Zeiss Neon 40顕微鏡を用いて走査電子顕微鏡(SEM)による研究を行った。サンプル、アルミニウムのピンスタブ上にシルバーペイントでマウントされたシリコンディスクに設置し、サンプルの帯電問題を防止するために炭素の薄層でスパッターコーティングを行った。
【0074】
接触形状測定
調製したHApディスク体の表面の粗さ(Rq)は触針式形状測定器(Veeco、Plainview、NY、USA)を使用して決定した。
【0075】
接触角
SCA20ソフトウェアを備えるOCA 15EC上(Data-Physics Instruments GmbH、Filderstadt、ドイツ)で室温にて液滴法を使用して測定を行なった。これらの実験に使用した溶媒は、脱イオン水およびFBSであり、第一および第二の状物両方接触角を決定した(それぞれθおよびθ')。θ測定について、適切な金属針を備えたマイクロメーター注射器(Hamilton 500μL)を使用して固着性滴状物をサンプルディスク体の表面にそっと置いた。測定した滴状物の輪郭に数学上の関数を適合させるために楕円法を使用した。この手順は、楕円の線に滴状物の輪郭を近似させることからなり、正確な滴状物の形状からの偏差は数パーセントの範囲内である。楕円法は、接触角の正確な測定を提供し、かつ非常に迅速であるという優位性を有する。各溶媒については、10個以上の滴状物を検査した。第一の滴状物に第二の滴状物を置いた後に1分間の平衡時間を適用しても、同一の手順を用いてθ'の測定が行なわれた。
【0076】
水分の測定
HApディスク体を15時間オーブン(100℃)の中で乾燥させた。この後、乾燥機内でサンプルは室温に達し、直ちに計量した。次にサンプルを1時間脱イオン化水の中で浸漬させた。サンプルを取り出し、リントフリーの生地で軽くたたいて乾燥させ、計量した。重量パーセントでの増加分として表現された水分は以下のように計算した:
【数3】
[式中、Mはサンプルの水分であり、Wはウェットサンプルの重量であり、Wは乾燥サンプルの重量である。WおよびWはSartorius CPA26Pの分析用微量天秤を使用して決定した]。
【0077】
サイクリックボルタンメトリー(Cyclic voltammetry)(CV)
電気化学挙動は、室温にて窒素雰囲気(純度99.995%において)下で、三電極セルで、ECDモジュールを備えたAutolab PGSTAT302N(Ecochimie、オランダ)を使用してCVによって決定した。0.1Mのリン酸緩衝液食塩水(PBS;NaOHで調整されたpH=7.2)は、三電極セル中で電解質として使用した。作用区画は、30mLの電解質溶液で充填した。作用電極と対電極の両方に1×1.5cm (厚さ0.1cm)のスチール製AISI 316シートを使用し、Ag|AgCl電極をKCl飽和水溶液(オフセット電位対標準水素電極、25℃でE =0.222V)を含有している基準電極として使用した。この報告で付与された電位はすべて、この電極に関係する。上記のように調製されたHApディスク体は、両側が吸着性の炭素層を使用して作用電極上に固着させた。最初と最後の電位は-0.40Vであった一方で、0.80Vの逆転電位が考慮された。走査速度は50mV/sであった。
【0078】
電荷可逆性を交換する能力を示す電気活性は、コントロールボルタンモグラムの陽極および陰極の領域間の類似点を検証することにより評価した。連続するコントロールボルタンモグラムの酸化および還元の領域とともに減少する電気化学安定性(即ち電気活性の損失、LEA)は下記式を使用して決定した:
【数4】
[式中、
ΔQは第二サイクルと最終サイクルとの間の電解電量計上の電荷の差異であり、Q11は第二サイクルに対応する電解電量計上の電荷である。
この作業では、すべてのLEAの値は1000回の連続する酸化還元サイクルに対して言及する。
【0079】
HApの電極中の特定の静電容量(SC;F/gで)は:
【数5】
[式中、
Qは、サイクリックボルタンモグラム曲線の酸化部分または還元部分のいずれかを積分することにより決定される電解電量計上の電荷であり、ΔVは電位窓であり、mは、作用電極の表面上のポリマーの質量である]
として計算される。後者は生産性電流(productivity current)および重合電荷に由来する(参考文献38)。
【0080】
電気化学的インピーダンス分光法(EIS)
10kHz~10mHzの周波数範囲にてAUTOLAB PGSTAT302Nを使用して、EIS測定を行い、正弦電圧の振幅は10mVであった。実験はすべて室温で行われた(carried)。適切なサイズにした(appropriated sized)フィルムをディスク形式にプレスし、分離された樹脂ホルダー内に組み立てられた2つのステンレススチール電極(直径=1.5cm)の間に挟んだ(参考文献39)。セルは一定の圧力での締まりを確保するためにスクリューで締めた。膜厚はマイクロメーターで決定して、1.68~2.00mmの間であり、面積は約1.766cmであった。分析の前に(Prior analyses)、一晩オーブン内で100℃にて加熱することによってサンプルを事前に乾燥させた。データ収集後、次にEIS結果を処理し、等価的電気回路(EEC)に適合させた。
【0081】
処理済みcHAPへの吸着
作業溶液中の吸着質の濃度はP 4-については100mMであり、polyPおよびATMPの両方については200mMであり、一方でこの研究において考慮されたpHはすべての場合において7であった。以前の種(specie)の溶解性における制限のために、P 4-の濃度は他の2つの吸着質に対して使用したものの半分であった。インキュベーションについては、吸着質を有する500μLの作業溶液は50mgのcHAp上に堆積させた。25℃で一晩撹拌した後に、4℃で5分間の間6500rpmの遠心分離によって付加物を分離させた。堆積物は蒸留水中で再懸濁させた。2回繰り返したこの方法の後に得られたペレット剤を3時間-80℃で冷凍し、続けて凍結乾燥機を使用して湿度を取り除いた。
【0082】
電気化学的アッセイおよび吸着アッセイのためのサンプルの化学的特徴化および選択
研究したcHApおよびACPサンプルのFTIRスペクトルは、950~1200cm-1の間を含む領域で典型的なPO 3- バンドを示すが、図1中で比較している。cHAp/p、cHAp/sおよびcHAp/tspのスペクトルは、v1=962cm-1ならびにV3=1016および1087cm-1PO 3- の特徴的な振動モードを示し、3つのスペクトル間の類似性は焼結および分極したにcHAp/pが著しい構造変化を受けないことを示した。対照的に、ACP/sおよびACP/tspのスペクトルにおいて新しいバンドとショルダー(即ち970および1037cm-1)、ならびに既存のバンドにおける推移(即ちそれぞれ963および1090cm-1から947および1098cm-1)は、熱および分極処理後のACP/pにおける重要な構造の再組織化を証明する。600~1000℃の範囲の温度で加熱した粉末ACPサンプルは、Raynaudらによって特徴化された(参考文献40)。新しいFTIRバンドの出現は、cHApおよびリン酸三カルシウム(TCP)の相によって形成された構造の形成に起因していた。
【0083】
WAXDによるcHAp粒子およびACP粒子の構造の分析は、(211)(112)、および(300)HAp反射の特徴である2θ=32°~34°でのピークに集中した。cHAp/pおよびcHAp/tspに対して記録した回折パターンの間の比は、小さな構造変化(図2a)を明らかにするが、熱により刺激された分極プロセスは結晶性(χ)および結晶子サイズ(L)の両方における重要な増加を引き起こす。したがって、cHAp/pおよびcHAp/tspサンプルのχは、それぞれ0.42±0.01と0.75±0.02であった一方でcHAp/tsp、L=86±2nm)の結晶子サイズはcHAp/p(L=61±2nm)より約40%大きかった。χおよびLの変動はOH欠損の形成に起因していた。Fujimoriら(参考文献41)はOHイオンは、800℃超のHApマトリックスから漏出(scape)し、この脱水工程が空白およびO2-イオンの形成を提供する。少量のOH欠損の誘導に加えて、そのような処理を適用することで単斜晶系~六方晶系の熱相転移が生じる(参考文献42~44)。六方晶系の相はOHイオンの位置の変化によって説明される秩序-無秩序相転移のために室温でもっとも安定となる(参考文献42~44)。単斜晶系HAPおよび六方晶系HAPとの間の構造差は小さいものの(図2a)、それらのいくつかの特定に対して強力な影響を与えるには十分である(次の小節を参照)。この作業においてcHAp/s(χ=0.65±0.02およびL=86±3nm)に対して記録された回折パターンは、図10においてcHAp/pのものと比較される。
【0084】
図3は、cHAp/p、cHAp/sおよびcHAp/tspのP2p、Ca2p、およびO1s領域における特徴的なXPSスペクトルを比較する。cHAp/pについては、それぞれ焼結および熱により刺激された分極の処理を適用すると、PO 3- 陰イオン(参考文献45,46)から派生する132.2eVを中心とする単一P2pピークがより高いおよびより低いエネルギーに向かう若干のシフト(ΔΒΕ=+0.4および-1.0eV)を経る。cHAp/pについて346.1および349.6eVでそれぞれ検出されるCa2p3/2およびCa2p1/2ピークの結合エネルギー(参考文献45,47)は、cHAp/sについては346.5および350.0eVへの推移、ならびにcHAp/tspについては345.1および348.6eVへの推移となる。これらの変動は、相転移に関連した構造変化の存在と完全に一致している。さらに、XPSによって決定される化学組成物の検査(表1に示される)は、熱により引き起こされたOH 空孔の形成と一致している。したがって、酸素の含有量は、cHAp/pに対してよりもcHAp/sおよびcHAp/tspに対する方が約2重量%低い。興味深いことには、cHAp/pサンプルのCa/Pモル比は、1.67化学量論値に非常に接近している。しかしながら、cHAp/sおよびcHAp/tspはそのような理想値についてわずかに減少しており、空孔の出現を裏付けている。他方では、0.28~0.40重量%まで変動するcHAp/p、cHAp/sおよびcHAp/tspにおいて見いだされた窒素は雰囲気からのN吸着に起因していた。
【0085】
【表1】
【0086】
調製された際と、熱により刺激された分極プロセスを行った後のACPサンプルについて記録した回折パターン(それぞれACP/pおよびACP/tsp)の比較は、図2bにおいて提供された。この場合、χおよびLの、ACP/pについて0.05±0.02および5±1nmからACP/tspについて0.74±0.03および52±3nmの増加によって反映されるように変化は非常に大幅である。ACP/pの結晶分画によって示された構造は、cHAp/pで観察されたものと同一である。しかしながら、焼結プロセスは、主たる層としてβ-リン酸三カルシウム(β-TCP:β-Ca(PO)の出現を促進する。2θ=31.3°および34.6°での高いピークは、粉末回折基準のための合同委員会(JCPDS)におけるβ-TCPカード(#09-0169)のものとよく一致するが、ACP/tspの微少相として共存するcHApは、2θ=31.9°、32.3°、33.0°および34.3°の持続的なピーク位置によって確認された。これらの結果は、熱により刺激された分極プロセスがACP/pの部分的分解を引き起し、β-TCPの形成につながることを示唆する。1100℃で焼結したACP(ACP/s)(即ち電場を一切適用しない)について異なる著者から同様の挙動が報告され(参考文献5,47,48)、この作業において空気中で2時間1000℃にACP/pを加熱することにより調整されたサンプルに対して得られた回折における我々の観察(図示せず)によって確証された。図10に表示されたSEM顕微鏡写真は、熱的および電気的に処理した際のACP/pサンプルにより行われた徹底的な構造変化を反映する。
【0087】
ACP/tsp遷移におけるβ-TCP相の優位を理由に、本作業の残り(即ち吸着能と同様に表面特定および電気化学的特性)は、cHAp/pとcHAp/tspの間の比較に集中した。完全性のために、そのような比較は焼結したcHApサンプル(cHAp/sと命名)にまで拡大した。
【0088】
表面特徴化
cHAp/p、cHAp/sおよびcHAp/tspサンプルの表面形態は、図4において比較されている。見受けられるように、SEM顕微鏡写真は前に議論したWAXD結果を確証する。cHAp/pサンプルは、層状の結晶および紡錘形のロッドからなり、同一の構成成分はcHAp/sおよびcHAp/tspにおいても認識される。しかしながら、そのような構成成分の量は外部的処理、特に熱により刺激される分極の適用を行うと増加する。したがって、結晶は、cHAp/pおよびc/HAp/sにおいてよりもHAp/tspにおけるほうが大きく、これは上で議論したχ変動と一致している。他方では、顕微鏡写真は結晶の量が増加するに伴い結晶子サイズが増加することを明白に反映している(即ち、WAXD結果は、Lが次のように変化することを示した:cHAp/tsp>cHAp/s>cHAp/p)。
【0089】
表2はcHAp/pサンプルの表面の粗さ(Rq)が分極および/または熱処理の適用で実際に変更されずに維持されたものの、表面エネルギーは相当に変化したことを示す。水の接触角(θ)は、cHAp/p、cHAp/sおよびcHAp/tspについて~4°であり、この3つは非常に親水性材料であることを示し、これはそれらの表面電荷のために予想されていた。コントロール的に、FBS(θFBS)中の接触角は、cHAp/pよりもcHAp/sおよびcHAp/tspに対して著しく低かった(表2)。湿潤におけるこの変動は、熱処理および特に分極処理によって引き起こされたイオンの再構成が、分極成分の表面エネルギーへの寄与を増加させることを示唆する。極性のものに対して散布的な寄与の相対的な増加を支持するために、第二水とFBS滴状物の接触角(それぞれθ'およびθ'FBS)を3つの表面に決定した(方法の章を参照)。表面は第一滴よりも湿潤化が少なかったが、挙動は上記(表2)のものと実際に同一であった。したがって、3つの親水性材料は非常に類似したθ'値に結びつき、一方でθ'FBS値中の差異はθFBSで得られたものと類似していた(表2)。
【0090】
【表2】
【0091】
この情報を補足するために、吸水率アッセイは方法の章(方程式1)に記載されていた手順を使用して行われた。残念なことに、cHAp/pディスク体は水の浸漬直後に破損したので、この場合測定は可能ではなかった。しかしながら、表2に表示される脱イオン水中の浸漬後のcHAp/sおよびcHAp/tspサンプルに対して決定された水分量は、θFBSおよびθ'FBSの値と完全に一致していた。従って、水分吸着はHAp/sよりHAp/tspで5%高かった。
【0092】
電気化学的および電気的な特性
スチールに固着されたcHAp/p、cHAp/sおよびcHAp/tspについてPBS中で記録されたサイクリックボルタンモグラムは、図5a中で比較されている。見受けられるように、cHAp/pの電気化学活性は、コントロールとして使用されたスチールより高。しかしながら、電気活性は、熱的および電気的な処理に伴って相当に増加する(即ちそれぞれ46%および150%)。cHAp/tspの場合には、そのような明白な効果には逆転電位での陽極電流強度の顕著な増強が伴う。この挙動は、熱により刺激された分極処理によって促進された構造変化が、イオンの無機マトリックスを介した拡散を容易にし、従って酸化還元プロセスの後の電気化学応答を容易にすることを示唆する。他方では、本明細書に開示されるような分極温度範囲を使用して得られた電流密度cHAp/tspは、350-400℃(それぞれ~10-5A/cmおよび~10-9A/cm)の分極温度を使用したYamashitaおよび共同研究者ら(参考文献14)によって達成されたものより数桁高く、我々の処理の成功が証明される。これは、Yamashitaおよび共同研究者ら(参考文献14)が、電流密度が450~700℃の間において減少することを見いだしたので、予期しない結果であったことは注目に値する。本発明者らの処理の成功は、Yamashitaおよび共同研究者ら(参考文献14)より低く、かついくつかの所望しない相転移を回避する焼結温度と、非常に高い分極温度(700℃~1200℃の間)の組み合わせに起因する。
【0093】
連続する酸化還元サイクルの数に伴うLEA(方程式2)の変動図5b)によって反映されるように、処理は電気安定性(electrostability)にも影響する。見受けられるように、すべての場合に、電気化学安定性は、最初の100-150の酸化還元サイクルの間に急速に減少し、LEAの低下は次のサイクルに沿って大幅に遅くなる。1000回のサイクル後に、電気活性はcHAp/p、cHAp/sおよびcHAp/tspそれぞれに72%、67%および60%減少し、熱により刺激された分極プロセスによって引き起こされた構造変化が電気化学特性の安定性も増強させることを証拠づけた。特定の静電容量(方程式3中のC)に続く挙動は電気活性のそれと完全に一致している。したがって、すべての場合においてCは非常に小さいが、cHAp/p(C=16・10-5F/g・cm)の電荷を保存する能力は、cHAp/sおよびcHAp/tspより71%および82%小さい(それぞれC=56・10-5および89・10-5F/g・cm)。酸化還元反応サイクルの数での特定の静電容量の変動図5c)は、LEAについての上記のものと類似していた。
【0094】
調製したHApサンプルの内部のイオン電導を評価するためにEIS測定を行った。したがって、この技術は、熱により刺激された分極プロセスによって材料の内部に作られた内部のインターフェースの電気特性における影響に関する情報を提供するだろう。図6は、cHAp/p、cHAp/sおよびcHAp/tspについて得られた代表的なナイキストプロットを比較する。ナイキストプロットでは、第一の半円状の応答はより高い周波数範囲での電子伝達抵抗性に相当し、これは電極-固体ディスクのインターフェース上の酸化還元プローブの電子伝達動力学を制御する。半円の直径は、通常バルク抵抗性(R)と呼ばれる電子伝達の抵抗性を定義する。cHAp/pのために記録されたナイキストプロット(図6a)は、固体ディスクを渡る1回の電荷伝達に相当する1回の誘電緩和時間(τ)のみを示し、これは材料が乾燥状態において高いバルク抵抗性(即ち低いイオン電導性)をしていることを示す。ボードプロット(図6b)は80°に近い位相角を示し、これは乾燥状態における抵抗性の材料に相当する。ナイキストプロットにおける半円の直径(図6a)は、第2の時定数(second time constant)が現れたとしてもcHAp/、特にcHAp/tspに対して相当に小さい。この特徴は、HAp結晶内の顕著な構造の変化に起因し、ディスクを横切る電荷の速い移動を可能にする。WAXDおよびSEMの観察によれば、cHAp/sおよびcHAp/tspサンプルは、cHAp/pより高い結晶濃度ならびに大きな結晶を示す。したがって、熱により刺激された分極処理が電荷移動のための良好な経路の定義に関与する一方で、熱処理工程は結晶の成長を促進する。これはEIS結果の数値的評価に反映されている(表3)。
【0095】
【表3】
【0096】
実験データに適合させるために使用した等価的電気回路(EEC)は、図6cに示されている。EECは3つの重要な要素を含んでいる:バルク抵抗性を表わすR;ならびにそれぞれcHAp厚膜および金属ディスク表面間の二重層の両方からの理想的な静電容量を表すQおよびQdl。液体の電解質がないために、~0Ω・cmと考えられていたが、Rsは電解質溶液抵抗性に相当する。CPEの実際の静電容量は、電極表面に付着したフィルムにおける不均一な拡散を説明する。CPEdlの実際の静電容量は、典型的には表面の反応性、表面の不均一性および粗さに関連し、電極形状および孔隙率に関係する。また CPE =[Q(jω) -1 として表されたCPE電気抵抗はn=1およびn=0の理想的なコンデンサーおよび純粋な抵抗器をそれぞれ表し、一方でそれはn~0.5の際の拡散プロセスに関係している。cHAp/pに対して得られたものをき、図6aに表示された電気抵抗データのすべては図6cで示されたEECと一致させた。EECについては、使用した後者のサンプルは二重層フィルムからの静電容量応答を有さずに[R(R)]に相当する。
【0097】
表3によれば、cHAp/tspサンプルのRは、cHAp/のもの(6.4×10Ω・cm)と比較して、非常に低く(6.7×10Ω・cm)、これは熱処理が分極のもの(polarization one)と組み合わさった場合に、イオン電導が1分大きくなったことを示す。別の関連性のある変化はより大きな結晶が得られた際の第二の時定数(τ)の出現であり、これらの結晶は500Vで分極された(図6a)。この特徴は、CPEによって反映される固体内の電荷経路の生成を示す。最後の観察は、SEM顕微鏡写真およびCVによって決定された電気化学的応答の両方への完全な一致である。Chaudhuriおよび共同研究者ら(参考文献49)によれば、乾燥HAp中の導電性部位は、容量性部位が動かないイオンである一方、イオンが熱により活性化されて移動(hopping)することによって動くことができるチャンネル(カラム状のOHイオンまたはプロトンなど)と見なすべきである。対照的に、温度とともにHApの導電率が増加することを見いだしたLukicら(参考文献50)はこの挙動が粒度の成長としての幾何学的因子に起因すると考えた。LiuおよびShen(参考文献51)は900℃超でのcHApの焼結中の広範囲な脱ヒドロキシル化を示し、OHイオンは高温(即ち700~1000℃の範囲)での導電率の原因であった。
【0098】
ピロホスフェート、トリホスフェートおよびトリスホスホネートの吸着
直近の研究で我々はP 4-、polyPおよびアミノ-ATMPのcHAp/p上の吸着を調査した(参考文献12)。熱処理および電気処理の両方が同一の無機化合物の吸着にどのように影響するか調査するために、基質としてcHAp/sおよびcHAp/tspサンプルを使用して徹底的な研究を行った。我々の以前の作業によれば、作業用の溶液中の吸着質の濃度はP 4-には100mMであり、polyPおよびATMPの両方には200mMであり、これはpH7でcHAp/pに対して明白な吸着シグナルをもたらした。
【0099】
図7aは、無機吸着質の存在下でのインキュベーションの前後にcHAp/sおよびcHAp/tspについて決定した両方の第一および第二のFBS滴状物に対する接触角(それぞれθFBSおよびθ'FBS)を比較する。見受けられるように、2つの基質のFBSの湿潤性はインキュベーションを行うと増加し、3つの無機吸着質は成功裡に吸着されたことが示唆される。さらに、吸着質との接触角の低下は、2つのcHAp基質に対して同一の変動(polyP<P 4- ≒ATMP)を辿った。従って、cHAp粒子に適用した処理に関係なく、polyPの吸着を行う方がP 4-およびATMPの吸着を行うよりも表面エネルギーは高くなる。
【0100】
4-、polyPおよびATMPの吸着は、XPSを使用しても調査した。無機吸着質の存在下でのインキュベーション前後のcHAp/sおよびcHAp/tspのNa1s領域における特徴的なXPSスペクトルの比較は、P 4-およびpolyPで処理したサンプルについて1074.2eVを中心とするピークを明らかにした(図12)。このシグナルは、Na・10HOおよびNa 10についてGaskellらによって報告されたものと同一であったが(参考文献52,53)、処理を行った2つのcHApの表面上へのこれらの化合物の取り込みを確証するものである。対照的に、インキュベーションを行っていないサンプルおよびATMPの存在下でインキュベーションを行ったサンプル中のNa含有量はゼロであった(表1)。Na1s原子パーセント組成物を使用して得られた比は、cHAp/tspに対する 4-およびpolyPの吸着はそれぞれcHAp/sに対する吸着の~2、および~1.5倍であることを示す。ATMPの吸着を同定するために同様の方法を辿り、それはN1s領域(図S4)のピークを介して明白に検出された。したがって、インキュベーションを行っていないサンプルならびにP 4-およびpolyPの存在下でインキュベーションを行ったサンプル中のN含有量は≦0.40重量%であり、ATMPの存在下でインキュベーションを行ったcHAp/sおよびcHAp/tsサンプルについては3.18および4.08重量%であった(表1)。インキュベーションを行ったサンプルおよびインキュベーションを行っていないサンプルについて、雰囲気から吸着したNの量は同一であることを仮定すると、cHAp/tspに対するATMPの吸着はcHAp/sに対するATMPの吸着の~1.4倍である。後者のサンプルについて404.3および402.5eVで検出された2つのピーク(図13)は、異なる化学的環境(即ち、遊離および水素結合済)でのATMPの窒素原子に起因した(参考文献54)。
【0101】
図8は、中性pHにて、P 4-、polyPおよびATMPとともに溶液中でのインキュベーションの後にcHAp/p、cHAp/sおよびcHAp/tspのFTIRスペクトルを比較する。P 4-、polyPおよびATMPのFTIRスペクトルは我々の以前の作業で報告した(参考文献12)。polyPについては、P-O-P非対称伸縮に相当する、cHAp/pについて890cm-1で同定された弱いショルダー図8cHAp/s、特にcHAp/tspについて、はっきりと画定された吸着バンドに転換する。この特徴はXPS観察に完全に一致していて、熱プロセスおよび熱により刺激された分極化プロセスを適用することはcHApのpolyPを吸着する能力を顕著に向上させることを確証した。図1および8に提示されたFTIRスペクトルに基づき、polyPを吸着するcHApサンプルの能力は1016cm-1でのピーク(鉱物に属する)の積分された領域と、890cm-1でのピーク(polyPに属する)の積分された領域の比を用いて推測された。polyPのcHAp/pの上への吸着はcHAp/sおよびcHAp/tsp上へよりも、それぞれ2.0分の1および2.6分の1であり、これはXPS結果にも十分一致していた。
【0102】
残念ながら、この特徴はP 4-では全く明白ではなかった。したがって890cm-1でのバンドは図8b中において表示されるスペクトルにおいて検出不能のままであり、吸着の唯一の証拠は、cHAp/sおよびcHAp/tspについて、P-O-P対称伸縮に起因した、740~750cm-1での非常に弱いショルダーである。polyPでインキュベーションを行ったcHApサンプルにおいてXPSによって検出されたNa1sの原子百分率含有量はP 4-でインキュベーションを行ったものより相当に高く(表1)、これはFTIR観察とも一致していた。またcHApの(100)および(001)の表面を考慮した以前の量子の機械的計算は、polyPの吸着がP 4-のものに支持されている(favored)。したがって吸着質がその形状をcHAp表面でのイオンの結晶学的位置に適応させる能力はホスフェート鎖のサイズとともに増加する。したがって吸着されたpolyPと比較して、吸着されたP 4-の方が顕著に歪んでいた(strained)ことが見いだされた。
【0103】
ATMP(図8c)でインキュベーションを行った異なるcHApサンプルについてのFTIR結果は、polyPについて観察されたものと同様の傾向を明らかにする。したがって900cm-1でcHAp/pについて同定されたショルダーは、アルキルホスホン55の非対称振動に相当するが、cHAp/sおよび特にcHAp/tspのための比較的極度かつ良好に画定されたピークへ変形する。この変動はXPS結果に合致していて、異なるcHApサンプルが次のようにATMPを吸着する能力を増加させることを示す:cHAp/p<cHAp/s<cHAp/tsp。cHAp/sおよびcHAp/tsp上へのATMPの吸着は、それぞれcHAp/p上に対して2.2および3.0倍であると推測され、XPSデータを裏付けた
【0104】
吸着により引き起こされた電気化学的保護および増強された導電率
polyP、P 4-およびATMPの存在下でインキュベーションを行ったcHAp/pについて記録されたサイクリックボルタンモグラム図14a)図5aに表示されたものに非常に類似していて、鉱物表面での吸着質の量が酸化還元挙動を変更するのには十分ではないことを示唆している。対照的に、インキュベーションを行ったcHAp/sおよび特にcHAp/tspのサイクリックボルタンモグラムは、インキュベーションを行っていないサンプルのものとは相当に異なる。これは、インキュベーションを行ったサンプルおよびインキュベーションを行っていないサンプルについて記録されたボルタンモグラムを比較する図9aおよび9bに明白に反映されている。したがって、インキュベーションを行ったcHAp/sおよびcHAp/tspサンプルの電気活性は、インキュベーションを行っていないサンプルよりそれぞれ~60%および~40%高く、吸着した分子は、酸化と還元のプロセス中に鉱物マトリックスとPBS電解質溶液との間のイオンの交換を促進させることが示唆される。
【0105】
しかしながら、最も著しい特徴は酸化還元サイクルの数に対する電気活性の変動を指す。したがって、インキュベーションを行ったcHAp/pとインキュベーションを行っていないcHAp/pについて測定されたLEA(方程式 2)の比較(図14b)は、後者の電気化学安定性がpolyP、P 4-またはATMPで吸着されたサンプルのものより低い(~10%)ことを示す。吸着質分子が鉱物へ電気化学的保護をもたらすことを示唆するこの特徴は、それぞれ図9cおよび9dにおいて証拠づけられるように、cHAp/sおよびcHAp/tspについて著しく増強される。したがって、1000回の酸化還元サイクルの後のインキュベーションを行っていないcHAp/sおよびcHAp/tspの電気活性の損失は、インキュベーションを行ったサンプルのものよりそれぞれ~20%および~25%高い。インキュベーションを行ったcHAp/tspのLEA値は特に著しい(即ち、polyP、P 4-およびATMPそれぞれに21%、27%および29%)。これらの低い値は、熱により刺激された分極処理の適用が吸着能だけでなく、電気化学的な活性および安定性も改善することを証明する。
【0106】
EIS結果(表3)は、吸着されたP 4-と比較した、処理済みcHApサンプルのイオン電導率における、吸着されたPolyPおよびATMPの好ましい効果を反映する。この現象は特にcHAp/tspに対して顕著であり、最も低いバルク抵抗性(吸着されたPolyPおよびATMPを有するサンプルに対してそれぞれ66.7および69.9kΩ・cm)を表示し、PolyPおよびATMPは、乾燥フィルム内部の電子電荷移動度を促進することを示す。したがって、熱により刺激された分極処理によって生成された構造変化は、PolyPおよびATMPの両方との鉱物の相互作用を支持し、良好な電荷移送チャネルを形成する。cHAp/tspサンプル中のc軸に沿ったOHイオンの配置は、そのような相互作用の形成に重大な役割を果たすように思われる。図15および16は、3つの検査した吸着質での、cHAp/sおよびcHAp/tspのために記録されたそれぞれナイキストプロットおよびボードプロットを比較している。
【0107】
アミノ酸合成における触媒成分としての永久分極ハイドロキシアパタイトの特定使用
非晶質ハイドロキシアパタイト(aHAp)および結晶性ハイドロキシアパタイト(cHAp)の合成
15mLの0.5M (NH HPO の脱イオン水溶液(30w/w%のアンモニア溶液でpH11に調節)を、撹拌下(400rpm)で25mLの0.5M Ca(NO エタノール溶液に滴下(2mL・分 -1 の速度)して加えた。その後、反応混合物を室温で撹拌(400rpm)によって1時間撹拌した。懸濁液は37℃にて24時間熟成させてaHAPを得、一方で続けて熱水処理(24時間150℃にて200bar)を行って、cHApを得た。沈殿物を遠心分離によって分離し、脱イオン化水およびエタノール-水の60/40v/v混合物で連続して洗浄した(2回)。1.67の理論的なCa/P比を有する白色粉末は、凍結乾燥後に回収した。
【0108】
焼結法
続けて、aHAp、cHPApおよびモンモリロナイトの粉末を、第一に空気雰囲気で実験室炉(Carbolite ELF11/6B/301)内で2時間、1000℃にて加熱し、最後に10分間620MPaで単軸にプレスして焼結した。最終的に100mmの直径および1.7mmの厚さのディスク体を得た。
【0109】
熱により刺激された分極プロセス
熱により刺激された分極HAp、Nanofil 757およびLMシステムを得るために、対応するディスク体サンプルをステンレススチール(AISI 304)プレートの間に挟み、空気中で1000℃に加熱炉中で加熱し、同時に、以前に分極HApで行なった吸着アッセイに最適なものと報告された500Vの一定直流電圧を適用することで1時間分極した(参考文献2)。分極サンプルは、p-cHAp、p-aHAp、p-N757およびp-LMと称するであろう。サンプルが事前に焼結されなければ、HApは分極し得ないことは指摘するべきであり、その理由としてはディスク体が十分な一貫性を有さないために、分極プロセスの間に壊れたためである。
【0110】
ホスホネートおよびオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl )の層の堆積
適切な基質(即ち分極プロセスに供される前と後の、雲母、焼結したaHApおよびcHAp、またはシリケート)上のATMP、オキシ塩化ジルコニウム、およびATMPの層の連続した堆積における三層システムは、5時間室温で対応する水溶液中の浸漬によって得られた。第一および第二のAMTP層を得るためのATMP溶液の濃度は、それぞれ5mMおよび1.25mMであった一方で、オキシ塩化ジルコニウムの濃度は、異なる実験で変わっていた(即ちそれぞれ1mMから10mM)。各浸漬の後に、サンプルは3時間37℃で乾燥させた。完全性ために二層および一層のシステム(即ちPhos-ZC、Phos、ZC)も考慮された。
【0111】
アミノ酸の合成
高圧ステンレススチール反応器を使用してアミノ酸(AA)の合成を行った。指定の反応器はマノメーターには、熱電温度計および外部温度制御器を有する電気ヒーターが点在していた。また反応器は触媒および水が組み込まれたテフロンの不活性の反応室(120mL)、N、CH、COのための3つの独立した入口バルブ、およびガス反応生成物を回収するための出口バルブを特徴としていた。固体試料を直接照射するために、UVランプ(GPH265T5L/4、253.7nm)を反応器の真中に設置し、このランプはUV透明な石英管によって保護されたランプであった。これは反応媒体とシリケートの間の接触を一切回避するためにテフロン薄膜でコーティングされ、他の触媒効果を排除する。
【0112】
反応は、2~96時間の反応時間の75~105℃の温度範囲内で行われた。固体サンプルはおよそ150mgに計量され、0.5mLの脱イオン化液体水は必要であると考えられた場合に反応チャンバーに当初から組み入れられた。チャンバーは、当初の空気量(即ちNまたはCO)を除去するために第一の選択されたガスで広範囲に除去した。選択されたガスはそれぞれ2つまたは3つの雰囲気(即ち、室温での最終圧は常に6barであった)中にて反応チャンバーの圧力(室温で測定)を増加させるために導入した。
【0113】
測定
アミノ酸の合成は、第一級アミンに対するニンヒドリン(2,2-ジヒドロキシインダン-1,3-ジオン)検出テスト(ninhydrin(2,2-dihydroxyindane-1,3-dione) detection test)によって慣例的に確認された。この目的のために、反応後に回収した0.5mgの固体をアセトン中の0.2w/v-%のニンヒドリン溶液を含有している試験管内に浸漬し、続けてオーブン内で75℃に加熱した。紫色の溶液の発生は2-(1,3-ジオキソインダン-2-イル)イミノインダン-1,3-ジオン)発色団の形成を示した。これに反して黄-橙色の溶液は第二アミンでの反応によって生成されたSchiff塩基の特性であり、一方で無色の溶液はATMPなどの第三級アミンに由来した。
【0114】
H、13Cおよび31Pについて、それぞれ400.1MHz、100.6および161.9の周波数で稼働するBruker Avance 111-400スペクトロメーターを用いてNMRスペクトルを得た。Hおよび13Cの化学シフトは内標準としてテトラメチルシランを使用して測定した。サンプルは、100mMのHClおよび50mMのNaClを含有している重水中に溶解させた。
【0115】
X線光電子分光法(XPS)分析は、分析器軸に垂直に設置した150Wで稼働するMg/Alの高強度ツインアノードX線源XR50(1253eV/1487eV)を備え、Phoibos 150 MCD-9 XP検出器を使用するSPECSシステムで行った。X線スポットサイズは650μmであった。パスエネルギーは、サーベイスキャンおよびナロースキャンに、それぞれ25および0.1eVを設定した。電荷補償は電子およびアルゴンイオンのフラッドガンの組み合わせで達成された。電子のエネルギーおよび放出電流はそれぞれ4eVおよび0.35mAであった。アルゴンガンについては、エネルギーおよび放出電流はそれぞれ0eVおよび0.1mAであった。スペクトルは6×10-9mbar下の圧力で0.1eVステップで25eVのパスエネルギーで記録した。電荷補償のこれらの標準条件電荷であるが、完全に均一な静電荷をもたらした。C1sピークは、284.8eVの結合エネルギーで内部基準として使用した。高解像度XPSスペクトルはs字バックグラウンド減算後のGaussian-Lorentzian曲線によって得られた。表面の組成物はメーカーの感度係数を使用して決定した。
【0116】
走査電子顕微鏡(SEM)の研究は、エネルギー分散方式X線(EDX)分光法システムを備えた5kVで稼働するFocused Ion Beam Zeiss Neon40顕微鏡を使用して行なわれた。サンプルは、アルミニウムのピンスタブ上にシルバーペイントでマウントされたシリコンディスク体上に置き、サンプルの電荷の問題を防ぐために炭素の薄層でスパッターコーティングが施された。
【0117】
赤外線吸収スペクトルは、1800-700cm-1範囲のFourier Transform FTIR 4100 Jascoスペクトロメーターで記録した。加熱Diamond ATR Top-Plateを備えたSpecacモデルMKII Golden Gate減衰全反射(ATR)装置を使用した。
X線粉末回折パターンは、ALBAシンクロトロン(Cerdanyola del Valles、Barcelona、スペイン)でのビームラインBL11-NCDにおいて、0.100nmの波長、およびCrサンプルの標準の回折で校正したRayonixからのWAXS LX255-HS検出器を使用して得た。
【0118】
結果
分極cHAp上で支持されたPhos-ZC-Phos三層触媒を使用した反応ならびにN、CO、CHおよびH Oによって構成された還元雰囲気からくるサンプル(表4中のセット1)は、陽性のニンヒドリン試験を生じさせ、したがって第一級アミンの形成が示唆された。実際、反応後に回収された固体の内部には紫の斑点が現れ、これはアミン化合物が主として固体基質に吸収されたことを示す。これらの化合物は、激しい撹拌の後にアセトン溶液中でよく溶解し、他の分析を行った反応条件(例えば、表4中のセット2およびセット4~13)で観察された無色の固体/溶液とコントラストをなした。
【0119】
【表4】
【0120】
H NMRスペクトル(図19a)は、ホスホネートメチレン基(即ち3.79-3.76ppmの二重線)の反応後の存在およびグリシンのメチレンプロトン(3.65ppmの一重線)およびアラニン基のメチン(3.91~3.85ppmでの四重線)およびメタン(1.54~1.52ppmの二重線)の両方に対応する信号のみを示した。13C NMRスペクトル(図19b)中で同一の化合物が証拠づけられ、ここではホスホネート(54.34および53.00ppm)、グリシン(171.95および41.26ppm)およびアラニン(175.25、50.25および16.01ppm)の単位に割り当てられたピークのみを検出することができた。副産物が観察されなかったことは注目すべきであり、従ってグリシンとアラニンの非常に清潔な生産プロセスが開発された。
【0121】
H NMRスペクトルは異なる反応時間(即ち2~96時間)後に回収されたサンプルに対して解析され、グリシンとホスホネートの単位(Gly/Phos)およびアラニンとホスホネート単位(Ala/Phos)、および当然グリシンとアラニンの単位(Gly/Ala)の間の比を検出することができた。具体的には、3.65および3.79~3.76ppmでのCHプロトンならびに1.54~1.52ppmのCHプロトンに対応するシグナルの領域が考慮された:
【数6】
【0122】
図20a中でプロットされた結果はグリシンが第一に生産され、続いてアラニンがこの単純なアミノ酸から派生することを推定することを可能にする。したがって、Gly/Ala比は、反応時間(即ち0.8~4.5)でGly/Phos比の連続的増加を観察しても、5.4から2.2へ減少する。
【0123】
図20bは反応温度の効果および特に24時間の反応後に検出可能なアミノ酸の量を得るためには最小値(即ち75℃)が必要であることを推測することを可能にする。Ala/Phos比は、反応温度とともに連続的に増加した一方でGly/Phos比はグリシンのアラニンへの転化の結果として最大に分析された温度(105℃)で減少し始めた。しかしながら、総アミノ酸の含有量とホスホネート含有量の間の比は、依然としてこの温度で増加した。
【0124】
図20cにはオキシ塩化ジルコニウムの含有量としてはGly/PhosおよびAla/Phos比に実際にごくわずかな効果を有し、触媒には推定可能なものであるとことが示されている。しかしながら、非常に低濃度のZrOCl(1mM)の溶液から調製されたサンプルは不完全な三層システムの結果として著しく低い比に至った。論理上、この場合アラニンがより好ましくないアミノ酸であった(即ち、Gly/Ala比は最大であった)。
【0125】
またUV放射に曝露することなく(セット2)実験を分析し、この場合はアミノ酸の形成が失敗に終わった。したがって、UVへの持続された曝露は論理上、アラニンおよびグリシンさえもの形のためのさらなる反応のための基(例えばCH)を得るための基礎的な問題として現われる。
【0126】
XPS分析はアミノ酸が分子窒素に由来し、ホスホネート化合物の仮説上の分解に由来しないことを確証するために必須であった。この点は、Gly/Phosの増加もまた分解プロセスと関係し得るために、NMRスペクトルから推論することができないことに注意すべきである。図21aは、異なる代表的なサンプルに対するN1s領域のXPSスペクトルを示し、特にホスホネートがp-cHApの表面上に組み込まれた場合、約399eVのピークとして現われる。このピークはC-N結合中の窒素に関連し、陰性および陽性反応の両方が起こった場合に、実際に同一の強度が観察される。脱プロトン化(NH)、およびプロトン化(NH3)アミノ基に対応する追加のピークは最後の場合にのみそれぞれ400.3eVおよび403.8.4eVで観察された(参考文献32)。窒素の量はPhos-Zr-Phos三層がp-cHAP基質上に堆積された際に0%から2.75-2.97%に増加し、陽性反応(即ち95℃で24時間のセット1)後に6.2%に増加した。XPSスペクトルは三層がHAp表面上に置かれた際にHApの典型的な値1.64から1.26~1.29までCa/P比の減少を決定することを可能にした。またXPSスペクトルは182.6(3d5/2)および185eV(3d3/2)の結合エネルギーでの分解されたスピン二重線として現われたZrシグナル(図21b)をも示した。測定されたZr含有量は、5mMオキシ塩化ジルコニウム溶液から調製されたPhos-Zr-Phos三層を有するすべてのサンプルについて1.26~1.29%の範囲であり、このパーセンテージは反応の進行と無関係であった。
【0127】
三層システムのHAp上への堆積は、分極サンプルに対応する、SEM顕微鏡写真で示されるような粗い、比較的に不規則(relative irregular)なディスク表面を生じさせた(図22a)。規則的な結晶が散発的に形成されたことが検出されたためにこの表面は反応後に若干変化した。図22bは、マイクロメーターの角柱状構造の成長を示し、ここでは六角形の底面がディスク表面と平行な傾向があった。実際、結晶化を引き起こすためのオルガノホスフェートフィルムの能力が報告され、配向した分子篩に成長した。このように、安定した垂直に配向した一次元のリン酸アルミニウム結晶はハイブリッド層を覆って成長することができた。正確な分子の選択性で新しい触媒性の膜として、および決定したサイズのアクセスをセンサー表面に制御することにさえも適用することができるチャネルシステム(cannel system)が形成された。どのような場合でも、現在の結果はアミノ酸結晶が三層触媒の表面にも成長することができることを実証するが、ニンヒドリン試験がディスク体サンプル内に吸収されたアミノ酸の存在を明らかにしたことを考慮すべきである。
【0128】
反応前後のセット1サンプル間の顕著な差は技術の感度が低いにもかかわらずFTIRスペクトルにおいて観察することができる。したがって1600~1400cm-1の範囲内の広い、低強度のバンドは第二の場合にしか観察されなかった(図23)。この領域が反応の前に、サンプルのスペクトル中および陰性ニンヒドリン試験(例えばセット2サンプル)からくるサンプルで完全に水平であることは注目に値する。これに反して、グリシンおよびアラニンなどのアミノ酸は、この領域において最も強力な吸収を有する(図23の挿入図を参照)。論理上、FTIRスペクトルは、HApの特徴的なピークを示し、特にPO3- の特徴的な振動モードに関連する1093、1033および962cm-1での3つの強力なバンドが常に観察された。
【0129】
三層化システムの分極c-HApを覆った堆積はX線回折パターン(図24aおよび24b)上の顕著な変更を引き起こさなかった一方で、著しい変更は化学反応(図24bおよび24c)後に観察することができた。
【0130】
アミノ酸合成に対する触媒系および分極支持体の変化の影響
p-aHApがp-cHApの代わりに使用され、セット1の実験条件が維持された際にアミノ酸も検出された。しかしながら、非晶質サンプルが、主要な相としてベータリン酸三カルシウム(β-TCP:β-Ca(PO)の形成につながった焼結プロセスの間に部分分解を受けたので、p-cHApに固執することを好んだ。
【0131】
触媒システムの基質の種類の重要性を評価するために異なる分析が行われた。分極HApを使用した場合にしか(例えば、表4のセット1および3)アミノ酸は検出されず、焼結したHAp(セット4)が基質として使用された場合、ならびにp-cHApに適用させたものと類似の条件下で分極を行った後でさえシリケート(例えばNanofil 757、セット5)およびアルミノシリケート(例えば積層雲母、セット5)などの他のシステムが試験された場合にも陰性の結果が得られたことは非常に顕著であった。
【0132】
HApの寄与の適性は興味深く、その理由としてはそれが生物系に基本的な役割を果たし、特にそれらの最も豊富な無機成分を成すためである。今日では、HApと生体分子(例えばたコラーゲンなどのタンパク質、もっと言えばホスフェート骨格によって構成されたDNA)との関係が、異なる生物医学的適用(例えば、中でも薬物および遺伝子の送達、骨修復および組織工学)のためのその使用についての集中的な研究を強化させた。
【0133】
この意味では、金属/ホスホネート層システムが分子認識可能であり、結果、ラセミ溶液からの鏡像異性化合物の選択的結合を達成することができる。さらに、高い不溶性ならびに熱処理およびジルコニウムホスホネートの化学反応物に対する安定性は、遺伝子送達でのウイルスベクターなどの他の潜在的な適用を開いた。アミノ感応性ホスホネート(例えば、アミノエトキシ誘導体)の陽電荷は、陰電荷のDNA分子の直接のインターカレーションを可能にする。さらに、結合はpH感受性であり、インターカレーションおよび放出のプロセスの間にDNAの配座がほぼ保持され得ることが見いだされた。
【0134】
完全性のために、我々は2つの潜在的な二層(PhosまたはZrの第一層の堆積および後続の第二の相補的な層の堆積、それぞれセット7および8)および単層(セット9および10)システムの効果も分析した。すべての場合に陰性結果が得られ、三層構造を使用した場合にしか、核生成活性を有する安定したPhos-Zr複合体が得られなかったことを実証する。恐らく、二層および単層の配置が考慮される場合、水反応媒体中の成分の溶解性も考慮するべきである。
【0135】
表4は、ホスホネート(セット11)のみと、ホスホネートおよびオキシ塩化ジルコニウム(セット12)の混合物までもが、コーティングされた分極支持体の代わりに反応器に導入された場合の、到達した結果も報告する。またこれらの分析は、AMTPの分解に基づいたプロセスを放棄する助けとなるので適切である。この場合、紫外線照射に供し、選択した還元雰囲気で反応できるAMTPの量は三層システムに必要なものよりはるかに高かった。
【0136】
先行技術との比較数値
連続20回の酸化還元サイクルの後に記録されたボルタンモグラムを図25に示した。陽極および陰極のスキャンの領域間の類似性は、それぞれ酸化および還元プロセスに相当し、関連するが、電気化学活性を決定するために使用した。見受けられるように、cHAp/tspボルタンモグラムの領域は異なるACP/分極サンプルについて記録されたものの領域より少なくとも20%高く、前の材料が後のサンプルよりも電荷可逆性を保管する能力が高いことを示す。さらに、最終電位および逆転電位のそれぞれで陽極および陰極の電流密度の顕著な差異が検出される。絶対値での電流密度は、cHAp/tspについての方が他のサンプルについてよりも顕著に高く、酸化および還元プロセス中の電荷の移動がより高いことを反映している。この特徴は、陽極電流密度について特に注目に値する。したがって、cHAp/tspについて決定された陽極電流密度は16.8μΑcmである一方で他のサンプルは4~9μΑcmの範囲である。
【0137】
図26は、第一サイクルに対して酸化還元サイクル(電気安定性(electrostability))の数に伴う電気化学活性の変動を表示する。結果は、ACP/分極サンプルと比べcHAp/tspの結果が優れていることを証明する。連続した1000回の酸化還元サイクルの後に、電気化学活性の損失(LEA)はcHAp/tspについて他のサンプルと比べて少なくとも10%低い。さらに、cHAp/tspは、サイクル数と無関係にすべての場合で最も高い電気安定性を保存し、この特性はその構造に固有であることを証明する。
【0138】
図25および26で表わされた結果は、cHAp/tspの高度に組織されかつ規則的な構造と完全に一致していて、それはRMN観察と合致している。したがって、後者の技術によって、cHAp/tspの高い結晶構成を同定できるようにするだけでなく、例えば調製されかつ焼結したHApのように、残りのサンプルにおいて典型的に観察されるように、表層の近くの無秩序から生じるプロトン化表面ホスフェート基の不足を証拠づけられるようにした。
【0139】
最後に、図27の比較コントロール表は、cHAp/tspの電気抵抗性がACP/分極サンプルのものよりも1ケタ分小さいことを示し、これはcHAp/sのものと実際に同一である(0.67×10Ω・cm、上述のように)。この特徴は、電気分極工程での温度の重要性を指摘する。従って表層近くのプロトンを完全に除去するためには900℃超の温度が必要であり、電場で移動することが可能な順序だった組織および電荷欠損の両方の生成を容易にする。コントロール的に、電気抵抗性という点でのcHAp/sとACP/分極の類似性はこれらの特徴が900℃よりも低い温度で実行される場合に達成されないことを反映する。
【0140】
図28および29にそれぞれ示されるように、図25および27で試験されたサンプルは、3か月後に再評価された。
【0141】
特に、すべてのサンプルの電気化学的挙動はサイクリックボルタンメトリーによって再評価された(保存は特別な配慮を行うことなく周囲条件で行われた)(図28を参照)。結果は、図25に表示されたボルタンモグラムとの比較で証拠づけられるように、cHAp/tsp(本発明による)が実際に不変のままであることを示す。コントロール的に、他のすべてのACP/分極サンプル(Nakamuraら、Ueshimaらによる)は、同一の挙動に集束し、これはcHAp/sによって表示されたものに類似している。したがって、cHAp/tspの電気活性はACP/分極サンプルよりも著しく高い。この特徴は、cHAp/tspの永久に分極された特徴と同様に分極温度の重要性を支持する。反対に3か月後にACP/分極サンプルにおいて観察された変化は<850℃の温度でもたらされた分極が永久ではなく単に一時的であることを示す。
【0142】
図29に示されるように、cHAp/tspの特定の静電容量(質量の単位あたりの静電容量、SCと省略)は、3か月後に8%低下(保存は特別な配慮を行うことなく周囲条件で行われた)する。コントロール的に、Yamashitaおよび共同研究者ら(Nakamuraら、Ueshimaら)によって調製されたACP/分極サンプルは、50%から64%の範囲のSCの大幅な減少を示す。以前の表(図27)から見受けられるように、cHAp/tspのSCはACP分極よりも1ケタ分大きい。同様の結果は電気抵抗で観察される。cHAp/tspの値は、3か月後に9%増加する一方で、Yamashitaおよび共同研究者らの手順を使用して調製されたACP/分極の抵抗性は約60~70%で増加する。
【0143】
上記の結果を考慮すると、本発明によって得られたハイドロキシアパタイトは先行技術に開示されたものとは異なることが結論付けられる。本発明のハイドロキシアパタイトが重要な異なる挙動を示すことは実験データから明白であり、それは有効に永久分極ハイドロキシアパタイトであり、一方で先行技術に示されたものは一時的な分極ハイドロキシアパタイトでしかない。
【0144】
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