(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】放射冷却機能塗料及びその応用
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20220215BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20220215BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20220215BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20220215BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20220215BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20220215BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220215BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220215BHJP
C09D 7/41 20180101ALI20220215BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D163/00
C09D167/00
C09D175/04
C09D133/04
C09D183/04
C09D7/61
C09D7/65
C09D7/41
(21)【出願番号】P 2019552633
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 CN2019097856
(87)【国際公開番号】W WO2021003777
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2019-10-07
(31)【優先権主張番号】201910607455.2
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519020764
【氏名又は名称】寧波瑞凌新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningbo Radi-Cool Advanced Energy Technologies Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 88, Dongfeng Road, Fenghua District, Ningbo City, Zhejiang Province, China
(73)【特許権者】
【識別番号】520124866
【氏名又は名称】寧波瑞凌新能源材料研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】NINGBO RUILING ADVANCED ENERGY MATERIALS INSTITUTE CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】88 Dongfeng Road,Yuelin Street,Fenghua District Ningbo,Zhejiang 315500 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】徐 紹禹
(72)【発明者】
【氏名】万 容兵
(72)【発明者】
【氏名】王 明輝
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-532919(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0042052(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108329726(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109852171(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109942865(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104449104(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102352160(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102127350(CN,A)
【文献】特開平04-230703(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1518582(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的放射冷却塗布層は、放射冷却機能塗料によって製作される放射冷却機能層を含
み、
前記放射冷却機能層は、放射冷却機能樹脂層と、この放射冷却機能樹脂層中に分布している第1の顆粒充填材及び第2の顆粒充填材を含み、
前記第1の顆粒充填材を含む放射冷却機能層は、可視光線及び近赤外線を反射する作用と、赤外放射方式で大気の窓を介して熱エネルギーを放射する作用と、を有し、
前記第1の顆粒充填材は、前記放射冷却機能樹脂層中に規則的に配列され、前記第1の顆粒充填材は、ケイ酸アルミニウム、真珠粉末、シリカ、重質炭酸カルシウム粉末、硫酸バリウム、タルク粉末、酸化チタン粉末、硫化亜鉛、セラミック粉末、セラミックビーズ、ガラスビーズの一種又は二種以上を使用することができ、
前記第2の顆粒充填材を含む放射冷却機能層は、紫外線及び可視光線を反射する作用と、赤外放射方式で大気の窓を介して熱エネルギーを放射する作用と、を有し、
前記第2の顆粒充填材は、前記放射冷却機能樹脂層中に規則的に配列され、前記第2の顆粒充填材は、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化ロジウム、酸化マグネシウムの一種又は二種以上を使用することができ、
前記放射冷却機能樹脂層は、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂の1種又は2種を使用することができることを特徴とする選択的放射冷却塗布層。
【請求項2】
前記第1の顆粒充填材及び前記前記第2の顆粒充填材の形状は、それぞれ棒状、球状、楕円体であり、
前記第1の顆粒充填材の形状及び前記第2の顆粒充填材の形状は、それぞれ棒状、楕円体である場合は、そのアスペクト比は1:1~10:1であることを特徴とする請求項1に記載の選択的放射冷却塗布層。
【請求項3】
前記第1の顆粒充填材は、前記放射冷却機能樹脂層中に規則的に配列されことは、前記第1の顆粒充填材が前記放射冷却機能樹脂中に均一に分布することと、前記第1の顆粒充填材が前記放射冷却機能樹脂中に配向的に配列することと、を含み、
前記第2の顆粒充填材は、前記放射冷却機能樹脂層中に規則的に配列されことは、前記第2の顆粒充填材が前記放射冷却機能樹脂中に均一に分布することと、前記第2の顆粒充填材が前記放射冷却機能樹脂中に配向的に配列することと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の選択的放射冷却塗布層。
【請求項4】
前記第1の顆粒充填材及び前記第2の顆粒充填材が前記放射冷却機能樹脂中に配向的に配列するとは、前記第1の顆粒充填材及び記第2の顆粒充填材の最長径は前記放射冷却機能層の表面と0~45°をなすことを特徴とする請求項3に記載の選択的放射冷却塗布層。
【請求項5】
前記第1の顆粒充填材及び前記第2の顆粒充填材が前記放射冷却機能樹脂中に配向的に配列するとは、前記第1の顆粒充填材及び記第2の顆粒充填材の最長径は前記放射冷却機能層の表面と0~30°をなすことを特徴とする請求項3に記載の選択的放射冷却塗布層。
【請求項6】
前記第1の顆粒充填材の粒径は、0.5μm~40μmであり、
前記第2の顆粒充填材の粒径は、0.01μm~40μmであることを特徴とする請求項1に記載の選択的放射冷却塗布層。
【請求項7】
前記放射冷却機能層に、前記第1の顆粒充填材の配向及び前記第2の顆粒充填材の配向を制御するための配向剤がさらに含まれることを特徴とする請求項1に記載の選択的放射冷却塗布層。
【請求項8】
前記配向剤は、水溶性カルボキシメチルアセテートブチレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体ワックスエマルション、ポリエチレンワックスやポリアミドワックスの1種又は2種以上を使用することができることを特徴とする請求項
7に記載の
選択的放射冷却塗布層。
【請求項9】
前記放射冷却機能層に、顔料がさらに含まれることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の
選択的放射冷却塗布層。
【請求項10】
前記顔料は、蛍光染料であることを特徴とする請求項
9に記載の
選択的放射冷却塗布層。
【請求項11】
前記放射冷却機能層は、第1の放射冷却機能層と、第2の放射冷却機能層と、を含み、
前記第1の放射冷却機能層は、放射冷却機能樹脂層と、この放射冷却機能樹脂層中に分布している第1の顆粒充填材とを含み、
前記第2の放射冷却機能層は、放射冷却機能樹脂層と、この放射冷却機能樹脂層中に分布している第2の顆粒充填材とを含むことを特徴とする請求項
1から10のいずれか一項に記載の選択的放射冷却塗布層。
【請求項12】
前記第1の放射冷却機能層の厚さは、30μm~300μmであり、
前記第2の放射冷却機能層の厚さは、10μm~60μmであることを特徴とする請求項
11に記載の選択的放射冷却塗布層。
【請求項13】
前記放射冷却機能層は、第1の表面と、この第1の表面から離れている第2の表面とを有し、
前記選択的放射冷却塗布層は、前記第1の表面に設けられる耐候性樹脂層、及び/又は、前記第2の表面に設けられる下塗り樹脂層をさらに含むことを特徴とする請求項
1に記載の選択的放射冷却塗布層。
【請求項14】
前記耐候性樹脂層の透過率は、80%以上であり、
前記耐候性樹脂層の材料は、フッ素含有樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂の1種又は2種であり、
前記下塗り樹脂層の材料は、エポキシ樹脂及び/又はアクリル樹脂であることを特徴とする請求項
13に記載の選択的放射冷却塗布層。
【請求項15】
前記耐候性樹脂層の厚さは、10μm~50μmであり、
前記下塗り樹脂層の厚さは、10μm~50μmであることを特徴とする請求項
13に記載の選択的放射冷却塗布層。
【請求項16】
前記
第1の顆粒充填材と前記
第1の放射冷却機能層の顔料ベース比は、1:10~6:1であ
り、
前記第2の顆粒充填材と前記第2の放射冷却機能層の顔料ベース比は、1:10~6:1であることを特徴とする請求項
11に記載の選択的放射冷却塗布層。
【請求項17】
前記選択的放射冷却
塗布層は、太陽光スペクトルのエネルギーに対する反射率が80%以上であり、大気の窓の放射率が80%以上であり、常温で100W/m
2以上の放射冷却パワーを提供することを特徴とする請求項
1から
16のいずれか一項に記載の選択的放射冷却塗布層。
【請求項18】
基材と、この基材に塗布されている請求項
1に記載の選択的放射冷却塗布層と、を含むことを特徴とする複合材料。
【請求項19】
前記基材は、金属、プラスチック、ゴム、コンクリート、セメント、アスファルト、紙、織物、木材、タイル、ガラス又は有機合成材の一種であることを特徴とする請求項
18に記載の複合材料。
【請求項20】
請求項1に記載の前記選択的放射冷却塗布層を主体の表面に形成して、この放射冷却機能層が熱エネルギーを外方へ反射及び/又は放射するようにすることを含むことを特徴とする選択的放射冷却塗布層の応用方法。
【請求項21】
前記主体は、建物、光起電モジュール及びシステム、車両、室外用品、農業及び畜産設備、航空宇宙設備、コールドチェーン輸送設備、室外タンク、紡織業設備、室外通信設備、工業設備、公共施設、冷却水システム、エネルギーシステムまたは省エネ設備の一種であることを特徴とする請求項20に記載の選択的放射冷却塗布層の応用方法。
【発明の詳細な説明】
【関連特許出願の相互参照】
【0001】
本願は、2019年7月5日に出願した、出願番号が201910607455.2であり、名称が「選択的放射冷却塗料及びその複合材料、並びに塗布方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容が参照により本願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、材料科学技術の分野に関し、特に選択的に反射及び放射する放射冷却機能塗料及びその応用に関する。
【背景技術】
【0003】
太陽は、巨大な放射源であり、太陽光の地球への照射過程でエネルギーの一部が大気によって吸収され、一部が宇宙に反射される。地表面の吸熱によって、地球上の物体表面の温度はその上方の空気の温度よりも相当高くなる。従って、物体の冷却にエネルギーが多く消費され、より多くの温室効果ガスが排出されるという問題がある。
図1に示すように、太陽光の1分間当たりの放射スペクトルにおいて、紫外線、可視光線、近赤外線が占めるエネルギーは、それぞれ6.6%、44.7%、48.7%である。
【0004】
放射冷却は、宇宙空間を冷却源とし地表面の物体を熱源として放射熱の伝達経路を確立し、エネルギーの消費がない前提で、地表面の物体の熱エネルギーを特定の波長域の電磁波放射の方式で「大気の窓」を介して直接宇宙空間に伝達して、冷却の目的を実現する。
【0005】
図2を参照すると、大気の窓とは、電磁波が大気層を通過するときに反射、吸収や散乱が少なく、透過率が高い波長域のことであり、一般的に使用される大気の窓は、0.3μm~1.155μm、1.4μm~1.9μm、2μm~2.5μm、3.5μm~5μm、7μm~14μmなどがあり、これらの大気の窓は、高い透過率を有する。地表面の物体の中赤外線は、この波長域を介して熱エネルギーを宇宙空間に伝達することができる。
【0006】
放射冷却に使用される材料は、その光学特性が大気の窓の波長域では非常に高い放射率を有し、大気の窓の波長域以外では非常に低い放射率(即ち、低吸収率)を有することが好ましい。自然素材でこれらの光学特性を得ることはできない。しかしながら、材料工学技術によって処理された材料は、選択的に大気の窓に対応できる光学特性を得ることができ、大気の窓の波長域での高放射率及び大気の窓の波長域以外での低吸収率を得ることができるので、物体の放射に対して効果的に冷却させることができる。
【0007】
一般に、省エネ塗料は、その中に充填材を添加し、可視光線や近赤外線の波長域における太陽光に対する反射率によって冷却の目的を実現する。冷却効果に限界があり、機械的強度が低く、耐候性が悪く、実用的な価値があまりないとの問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、得られる塗布層が太陽の放射スペクトル全般では高反射率を有し、大気の窓の波長(7μm~14μm)範囲では高放射率を有する放射冷却機能塗料を提供することにある。また、本発明は、この塗料に基づく対応する塗布方法及びこの塗布層に基づく対応する複合材料も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の形態に係る放射冷却機能塗料は、放射冷却機能層を製作するためのものであり、前記放射冷却機能層は、太陽光の紫外線及び/又は可視光線及び/又は近赤外線を反射するとともに、赤外放射方式で大気の窓を介して熱エネルギーを放射するためのものであり、前記放射冷却機能塗料は、放射冷却樹脂と、この放射冷却樹脂中に分布している顆粒充填材と、を含む。
【0010】
また、前記顆粒充填材の形状は棒状、球状、楕円体であり、前記顆粒充填材の形状が棒状、楕円体である場合は、そのアスペクト比は1:1~10:1である。本発明におけるアスペクト比は、顆粒内部を通る最長径と、この最長径に垂直である最長径との比率をいう。
【0011】
また、前記顆粒充填材は、前記放射冷却樹脂中に規則的に配列し、この規則的配列は、顆粒充填材が前記放射冷却樹脂中に均一に分布することと、顆粒充填材が前記放射冷却樹脂中に配向的に配列することと、を含む。
【0012】
また、前記顆粒充填材は、第1の顆粒充填材及び/又は第2の顆粒充填材を含み、前記第1の顆粒充填材の粒径は0.5μm~40μmであり、前記第1の顆粒充填材を含む放射冷却機能層は、可視光線及び近赤外線を反射する作用と、赤外放射方式で大気の窓を介して熱エネルギーを放射する作用と、を有する。
【0013】
また、前記第2の顆粒充填材の粒径は0.01μm~40μmであり、前記第2の顆粒充填材を含む放射冷却機能層は、紫外線及び可視光線を反射する作用と、赤外放射方式で大気の窓を介して熱エネルギーを放射する作用と、を有する。本発明における顆粒充填材の粒径は、体積平均径をいう。
【0014】
また、前記第1の顆粒充填材及び前記第2の顆粒充填材は、それぞれ、ケイ酸アルミニウム、真珠粉末、シリカ、重質炭酸カルシウム粉末、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化ロジウム、硫酸バリウム、タルク粉末、酸化チタン粉末、硫化亜鉛、セラミック粉末、酸化マグネシウム、セラミックビーズ、ガラスビーズの一種又は二種以上を使用することができる。
【0015】
また、前記第1の顆粒充填材は、ケイ酸アルミニウム、真珠粉末、シリカ、重質炭酸カルシウム粉末、硫酸バリウム、タルク粉末、酸化チタン粉末、硫化亜鉛、セラミック粉末、セラミックビーズ、ガラスビーズの一種又は二種以上を使用することができる。
【0016】
また、前記第2の顆粒充填材は、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化ロジウム、酸化マグネシウムの一種又は二種以上を使用することができる。
【0017】
また、前記放射冷却機能樹脂は、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂の1種又は2種を使用することができる。
【0018】
また、前記放射冷却機能塗料に、前記顆粒充填材の配向を制御するための配向剤がさらに含まれる。
【0019】
また、前記配向剤は、水溶性カルボキシメチルアセテートブチレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体ワックスエマルション、ポリエチレンワックスやポリアミドワックスの1種又は2種以上を使用することができる。
【0020】
また、前記放射冷却機能塗料に、顔料がさらに含まれる。
【0021】
また、前記顔料は、蛍光染料である。
【0022】
本発明の第2の形態に係る放射冷却機能塗料の塗布方法は、前記放射冷却機能塗料を基材又は主体の表面に塗布して放射冷却機能層を得ることによって、この放射冷却機能層が熱エネルギーを外方へ反射及び/又は放射するようにすることを含む。
【0023】
また、前記基材は、金属、プラスチック、ゴム、コンクリート、セメント、アスファルト、紙、織物、木材、タイル、ガラス又は有機合成材の一種である。
【0024】
また、前記主体は、建物、光起電モジュール及びシステム、車両、室外用品、農業及び畜産設備、航空宇宙設備、コールドチェーン輸送設備、室外タンク、紡織業設備、室外通信設備、工業設備、公共施設、冷却水システム、エネルギーシステムまたは省エネ設備の一種である。
【0025】
本発明の第3の形態に係る放射冷却塗布層は、前記放射冷却機能塗料によって製作される放射冷却機能層を含む。
【0026】
また、前記放射冷却機能層は、第1の放射冷却機能層と、第2の放射冷却機能層と、を含み、前記第1の放射冷却機能層は、放射冷却機能樹脂層と、この放射冷却機能樹脂層中に分布している第1の顆粒充填材とを含み、前記第2の放射冷却機能層は、放射冷却機能樹脂層と、この放射冷却機能樹脂層中に分布している第2の顆粒充填材とを含む。
【0027】
また、前記第1の放射冷却機能層の厚さは、30μm~300μmであり、前記第2の放射冷却機能層の厚さは、10μm~60μmである。
【0028】
また、前記放射冷却機能層は、第1の表面と、この第1の表面から離れている第2の表面とを有し、前記選択的放射冷却塗布層は、前記第1の表面に設けられる耐候性樹脂層、及び/又は、前記第2の表面に設けられる下塗り樹脂層をさらに含む。
【0029】
また、前記耐候性樹脂層の透過率は、80%以上であり、前記耐候性樹脂層の材料は、フッ素含有樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂の1種又は2種以上である。
【0030】
また、前記下塗り樹脂層の材料は、エポキシ樹脂及び/又はアクリル樹脂である。
【0031】
また、前記耐候性樹脂層の厚さは、10μm~50μmであり、前記下塗り樹脂層の厚さは、10μm~50μmである。
【0032】
また、前記顆粒充填材と前記放射冷却機能層の顔料ベース比は、1:10~6:1である。
【0033】
また、前記選択的放射冷却機能層は、太陽光スペクトルのエネルギーに対する反射率が80%以上であり、大気の窓の放射率が80%以上であり、常温で100W/m2以上の放射冷却パワーを提供する。
【0034】
本発明の第4の形態に係る複合材料は、基材と、この基材に塗布された上記第3の形態に係る選択的放射冷却塗布層と、を含む。
【0035】
また、前記基材は、金属、プラスチック、ゴム、コンクリート、セメント、アスファルト、紙、織物、木材、タイル、ガラス又は有機合成材の一種である。
【発明の効果】
【0036】
本発明の上記構成によれば、本発明は下記のような利点がある。
【0037】
(1)本発明の塗布層は、太陽光スペクトル(300nm~2500nm)のエネルギーに対する反射率が80%以上であり、7μm~14μmでの放射率が80%以上であり、常温で100W/m2以上の放射冷却パワーを提供する。
【0038】
(2)本発明の塗布層は、機械的強度や耐候性がよく、非常に大きな実用的価値がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】太陽放射スペクトルを示し、太陽光の1分間当たりの放射スペクトルにおいて、紫外線、可視光線、近赤外線が占めるエネルギーはそれぞれ6.6%、44.7%、48.7%である。
【
図2】大気透過率スペクトルを示す。大気の窓とは、電磁波が大気層を通過するときに反射、吸収や散乱が少なく、透過率が高い波長域のことである。
【
図3a】本発明の実施例における第1種の棒状構造の顆粒充填材の微視的な拡大図であり、棒状の顆粒充填材のアスペクト比は5:1であり、体積平均径は9.8μmである。
【
図3b】本発明の実施例における第2種の棒状構造の顆粒充填材の微視的な拡大図であり、棒状の顆粒充填材のアスペクト比は4:1であり、体積平均径は4.6μmである。
【
図3c】本発明の実施例における第3種の棒状構造の顆粒充填材の微視的な拡大図であり、棒状の顆粒充填材のアスペクト比は3:1であり、体積平均径は1.6μmである。
【
図4a】本発明の実施例における第1種の選択的放射冷却塗料の構造を示す図であり、下から上へ4層を含み、それぞれ下塗り樹脂層1、第1の放射冷却機能層2、第2の放射冷却機能層3、耐候性樹脂層4であり、ここで、第1の顆粒充填材21及び第2の顆粒充填材31はいずれも規則配列している。
【
図4b】本発明の実施例における第2種の選択的放射冷却塗料の構造を示す図であり、下から上へ4層を含み、
図4aの構造との相違は、第1の放射冷却機能層2と第2の放射冷却機能層3との位置関係が逆になっていることである。
【
図4c】本発明の実施例における第3種の選択的放射冷却塗料の構造を示す図であり、下から上へ3層を含み、
図4aの構造との相違は、第1の放射冷却機能層2と第2の放射冷却機能層3とが1つの層に結合されていることである。
【
図4d】本発明の実施例における第4種の選択的放射冷却塗料の構造を示す図であり、下から上へ3層を含み、
図4aの構造との相違は、耐候性樹脂層4が省略されていることである。
【
図4e】本発明の実施例における第5種の選択的放射冷却塗料の構造を示す図であり、下から上へ2層を含み、
図4aの構造との相違は、耐候性樹脂層4と下塗り樹脂層1とが省略されていることである。
【
図5a】第1の放射冷却機能層2の厚さと400nm~760nm、760nm~2500nmの反射率との関係図であり、第1の放射冷却機能層2の反射率はその厚さと関係し、厚さが厚いほど反射率が高く、厚さが130μm以上である場合、反射率の増加は緩慢となり、基本的に飽和に達する。
【
図5b】第2の放射冷却機能層3の厚さと300nm~400nm、400nm~760nmの反射率との関係図であり、第2の放射冷却機能層3の反射率はその厚さと関係し、厚さが厚いほど反射率が高く、厚さが30μm以上である場合、反射率の増加は緩慢となり、基本的に飽和に達する。
【
図6a】第1の放射冷却機能層の厚さと1μm~25μmの放射率と波長との関係図であり、第1の放射冷却機能層2は、7μm~14μmでの放射率及び第1の放射冷却機能層2の厚さと関係し、厚さが厚いほど放射率が高く、厚さが100μm以上である場合、放射率の増加が緩慢となり、基本的に飽和に達する。
【
図6b】第2の放射冷却機能層の厚さと1μm~25μmの放射率と波長との関係図であり、第2の放射冷却機能層3は、7μm~14μmでの放射率及び第2の放射冷却機能層3の厚さと関係し、厚さが厚いほど放射率が高く、厚さが15μm以上である場合、放射率の増加が緩慢となり、基本的に飽和に達する。
【
図7a】内部の長さ、幅、高さがそれぞれ5m×4m×3mであるモデルハウスAとBとの測温点を示す図である。
【
図7b】室外環境及びモデルハウスAの表面の異なる位置の測温点のグラフである。
【
図7c】モデルハウスAの縦方向に異なる位置の測温点のグラフである。
【
図7d】室外環境及びモデルハウスBの表面の異なる位置の測温点のグラフである。
【
図7e】モデルハウスBの縦方向に異なる位置の測温点のグラフである。
【
図8a】内部の長さ、幅、高さがそれぞれ800mm×800mm×80mである水槽CとDの内部測温点を示す図である。
【
図8b】水槽CとDの内部の測温点の温度グラフである。
【
図9a】テントEとFの内部の測温点を示す図である。
【
図9b】テントEとFの内部の測温点の温度差グラフである。
【
図10a】ヘルメットGとHの内部頂部の測温点を示す図である。
【
図10b】ヘルメットGとHの内部頂部の測温点の温度グラフである。
【
図11】防水シートIとJの表面及び裏面の測温点の温度グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、当業者に本発明をより容易に理解させるために、図面を参照しながら本発明の実施例の技術的事項について明瞭かつ完全に説明する。もちろん、説明する実施例は本発明の一部の実施例にすぎ、本発明の全部の実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力なしに得られる他の全ての実施例も本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【0041】
本発明の明細書、特許請求の範囲及び図面における用語「第1」、「第2」、「第3」は、各構成要素を区別するためのものであり、その順序を特定するためのものではない。また、用語「含む」、「有する」及びそれらの任意の変更は、他の構成を含む(有する)ことを排除することではない。
【0042】
本発明の実施例に係る放射冷却機能塗料は、放射冷却機能層を製作するためのものであり、放射冷却機能層は、紫外線及び/又は可視光線及び/又は近赤外線を反射するとともに、赤外放射方式で大気の窓を介して熱エネルギーを放射するためのものであり、前記放射冷却機能塗料は、放射冷却樹脂と、放射冷却樹脂中に分布している顆粒充填材と、を含む。
【0043】
顆粒充填材の形状は、棒状、直方体、立方体、球状、楕円体、多面体、桿状、板状または不規則的な形状であることができる。具体的に、顆粒充填材は、顆粒充填材が大気の窓の波長範囲内で共鳴強化(resonance enhancement)の表面プラズモン吸収を有するように、選択可能な形状を有し、放射冷却機能層の、太陽光(0.3μm~2.5μm)に対する反射率及び大気の窓(7μm~14μm)での放射率をさらに向上させるために、顆粒充填材の形状は棒状、球状、楕円体であることが好ましく、顆粒充填材の形状が棒状、楕円体である場合は、そのアスペクト比は1:1~10:1である。
【0044】
本発明の実施例では、棒状の顆粒充填材は、大気の窓の波長範囲(7μm~14μm)内でより良好な共鳴強化の表面プラズモン吸収を有するとともに、太陽光に対して複数の反射、散乱を行うことができるので、棒状の顆粒充填材を含む放射冷却機能層は、太陽光(0.3μm~2.5μm)に対する反射率がより高く、かつ棒状の顆粒充填材を含む放射冷却機能層は効果的に熱エネルギーを7μm~14μmである赤外線に転換して放射することができ、7μm~14μmでの赤外線の放射率がより高いため、顆粒充填材の形状は、
図3a~
図3cに示す棒状であることが好ましい。
【0045】
図3a~
図3cには、それぞれ3種類のアスペクト比と体積平均径とが異なる棒状の顆粒充填材が示されている。
図3aにおける棒状の顆粒充填材のアスペクト比は5:1であり、体積平均径は9.8μmであり、
図3bにおける棒状の顆粒充填材のアスペクト比は4:1であり、体積平均径は4.6μmであり、
図3cにおける棒状の顆粒充填材のアスペクト比は3:1であり、体積平均径は1.6μmである。
図3a~
図3cに示す3種類の棒状の顆粒充填材において、太陽光に対する反射や放射の効果は、アスペクト比や体積平均径の変化に伴って変化する。
【0046】
放射冷却機能塗料で放射冷却機能層を作成する場合を考慮すると、その厚さは棒状の顆粒充填材の粒径の影響を受け、棒状の顆粒充填材のアスペクト比に比較的良好な選択があることにより、この顆粒充填材は大気の窓の波長範囲(7μm~14μm)内でより良好な表面プラズモン吸収の共鳴強化を有する。従って、棒状の顆粒充填材のアスペクト比は、好ましくは3:1~8:1であり、より好ましくは4:1~6:1である。
【0047】
前記顆粒充填材は、ケイ酸アルミニウム、シリカ、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化ロジウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、酸化マグネシウムの一種又は二種以上を使用することもできるし、真珠粉末(Pearl powder)、重質炭酸カルシウム(Heavy calcium powder)粉末、タルク粉末、酸化チタン粉末、セラミック粉末、セラミックビーズ、ガラスビーズの一種又は二種以上を使用することもできる。
【0048】
また、前記顆粒充填材は、第1の顆粒充填材及び/又は第2の顆粒充填材を含むこともできる。つまり、前記放射冷却機能塗料が放射冷却機能樹脂とこの樹脂中に分布している第1の顆粒充填材とを含む場合は、それを第1の放射冷却機能塗料とすることができ、前記放射冷却機能塗料が放射冷却機能樹脂とこの樹脂中に分布している第2の顆粒充填材とを含む場合は、それを第2の放射冷却機能塗料とすることができる。第1の放射冷却機能塗料と第2の放射冷却機能塗料とを同時に使用することができ、使用時には、第1の放射冷却機能塗料と第2の放射冷却機能塗料とにおける放射冷却機能樹脂の具体的な材料は同じ材料または異なる材料を選択することができる。
【0049】
また、第1の顆粒充填材は、可視光線に対する反射率、近赤外線に対する反射率が高い(≧80%)とともに、大気の窓(7μm~14μm)での赤外放射率が80%より大きい材料を選択することができる。この材料は、ケイ酸アルミニウム、真珠粉末、シリカ、重質炭酸カルシウム粉末、硫酸バリウム、タルク粉末、酸化チタン粉末、硫化亜鉛、セラミック粉末、セラミックビーズ、ガラスビーズ等の一種又は二種以上を選択することができるが、これらに限定されず、粒径は0.5μm~40μmであり、好ましくは1μm~20μmであり、より好ましくは2μm~6μmである。
【0050】
第2の顆粒充填材は、紫外線、可視光線に対する反射率が高い(≧80%)とともに、大気の窓(7μm~14μm)での赤外放射率が80%より大きい材料を選択することができる。この材料は、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化ロジウム、酸化マグネシウム等の一種又は二種以上を選択することができるが、これらに限定されず、粒径は0.01μm~40μmであり、好ましくは0.1μm~10μmであり、より好ましくは0.6μm~5μmである。
【0051】
また、放射冷却機能塗料における顆粒充填材が第1の充填材と第2の充填材とを含む場合、または、第1の放射冷却機能塗料と第2の放射冷却機能塗料とを同時に使用する場合、第1の顆粒充填材の粒径は第2の顆粒充填材の粒径よりも大きいとともに、第1の顆粒充填材のアスペクト比は第2の顆粒充填材のアスペクト比よりも大きい。異なる粒径や異なるアスペクト比の顆粒充填材は実現する機能が異なり、粒径が大きくかつアスペクト比が大きい顆粒充填材は、可視光線や近赤外線を反射する効果がより良好で、粒径が小さくかつアスペクト比が小さい顆粒充填材は、紫外線や可視光線を反射する効果がより良好であるとともに、粒径が大きくかつアスペクト比が大きい顆粒充填材は、7μm~14μmで赤外線を放射する作用を提供し、粒径が小さくかつアスペクト比が小さい顆粒充填材は、放射冷却機能層の7μm~14μmでの赤外線に対する放射をさらに強化する作用を提供する。
【0052】
なお、放射冷却機能塗料中の顆粒充填材が一種のみであるが、異なる粒径やアスペクト比を有する場合は、上記の大粒径の顆粒充填材や小粒径の顆粒充填材の作用によって、大粒径の顆粒充填材は第1の充填材として作用し、小粒径の顆粒充填材は第2の充填材として作用することができる。
【0053】
また、前記顆粒充填材は、放射冷却機能樹脂中に規則的に配列し、この規則配列は、顆粒充填材が放射冷却機能樹脂中に均一に分布するとともに配向配列し、放射冷却機能層が作成された後にはその配列形態が不変であることが好ましい。配向配列するときの顆粒充填材の最長径は放射冷却機能層の表面と0~45°をなし、好ましくは0~30°をなす。顆粒充填材の規則配列は、顆粒充填材が放射冷却機能樹脂中に均一に分布するようにし、前記放射冷却機能層は、大気の窓の波長範囲(7μm~14μm)で共鳴強化の表面プラズモン吸収を有し、太陽光に対する反射を一定の角度で制御し、さらに放射冷却機能層の、紫外線、可視光線及び近赤外線に対する反射率と7μm~14μmでの赤外線の放射率を向上させることができる。
【0054】
顆粒充填材の配向は、放射冷却機能塗料に、例えば、水溶性カルボキシメチルアセテートブチレート(CMCAB)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)ワックスエマルション、ポリエチレン(PE)ワックスやポリアミドワックス等の配向剤などの助剤を添加することによって制御することができる。前記配向剤は、揮発速度又はアンカー効果(anchoring effect)を調節することによって、顆粒充填材の配向配列の効果を実現する。
【0055】
放射冷却機能樹脂は、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等から選択される1種又は2種以上の組合せを使用することができ、上記の放射冷却機能樹脂は、低い太陽エネルギーの吸収率及び高い選択的放射率を有する。放射冷却機能樹脂は、その中に分布している顆粒充填材を配合して、太陽光(300nm~2500nm)の反射及び大気の窓への赤外線(7μm~14μm)の放射の機能を提供する。なお、放射冷却機能樹脂は、放射冷却機能層の機械的強度の向上にも役立ち、耐候性を改善することができる。
【0056】
また、本発明の放射冷却機能塗料は、液体形態であり、水性塗料又は油性塗料を含むことができる。
【0057】
また、本発明の放射冷却機能塗料は、塗料の色の調節が可能な顔料を含むこともできる。この顔料は、通常の顔料分散剤、赤外線反射顔料、蛍光染料の一種又は二種以上であることができる。
【0058】
好ましい実施例では、蛍光染料を顔料として放射冷却機能塗料に添加することができる。蛍光染料は、放射冷却機能塗料の反射性能に基本的に影響はなく、良好な効果を有することができる。
【0059】
対応する色の顔料を添加することにより、放射冷却機能塗料の色は、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、灰、ブラウン等であることができる。色の異なる放射冷却機能塗料を製造する目的は、異なる場所での色の要求に対応するためである。
【0060】
本発明の実施例に係る上記のような放射冷却機能塗料の塗布方法は、前記放射冷却機能塗料を基材又は主体の表面に塗布して放射冷却機能層を得ることによって、この放射冷却機能層が熱エネルギーを外方へ反射及び/又は放射するようにすることを含む。
【0061】
前記基材は、金属、プラスチック、ゴム、コンクリート、セメント、アスファルト、紙、織物、木材、タイル、ガラス又は有機合成材の一種である。前記主体は、建物、光起電モジュール及びシステム、車両、室外用品、農業及び畜産設備、航空宇宙設備、コールドチェーン輸送設備、室外タンク、紡織業設備、室外通信設備、工業設備、公共施設、冷却水システム、エネルギーシステム(例えば、空調・冷房・暖房システムの組合せ)または省エネ設備の一種である。
【0062】
さらに、前記建物は、工業用建物、商業用建物、住宅建物、公共用建物などを含む。
【0063】
さらに、前記工業設備は、室外電力配分キャビネットなどを含む。
【0064】
さらに、公共施設は、街灯及びその放熱部材、トイレの天井壁面、会館の路面などを含む。
【0065】
また、本発明の放射冷却機能塗料の塗布方式は、ブラシ塗布、ロール塗布、スプレー塗布などを含むことができる。放射冷却機能塗料が第1の放射冷却機能塗料と第2の放射冷却機能塗料とを含む場合は、先の層が乾燥するまで待って、次の層を塗布することができる。
【0066】
また、塗料は、樹脂、顆粒充填材、助剤及び/又は溶媒などの原材料を準備し、高速でプレ分散を行ってから粉砕による分散を行い、その後均一に撹拌し、その後濾過して検査し、その後包装するなどの工程によって得られる。
【0067】
本発明の実施例に係る選択的放射冷却塗布層は、上記のような放射冷却機能塗料によって製造される放射冷却機能層を含む。
【0068】
また、前記放射冷却機能層において、前記顆粒充填材と前記放射冷却機能層の顔料ベース比は、1:10~6:1である。顔料ベース比とは、塗布層における顆粒充填材と樹脂固体部分との質量比を指し、顔料ベース比を低下させれば、樹脂の含有量が増加して塗布層の機械的強度及び耐候性は向上するがが、反射率や放射率の向上やコストを考慮すれば、前記顆粒充填材と前記放射冷却機能層の顔料ベース比は、1:5~3:1が好ましく、1:3~3:1がより好ましい。
【0069】
前記放射冷却機能層は、2層又は複数層に分割することができる。例えば、第1の放射冷却機能塗料による第1の放射冷却機能層と第2の放射冷却機能塗料による第2の放射冷却機能層とを含むことができる。第1の放射冷却機能層は、可視光線及び近赤外線を反射する作用と、赤外放射方式で大気の窓を介して熱エネルギーを放射する作用と、を有し、第2の放射冷却機能層は、紫外線及び可視光線を反射する作用と、赤外放射方式で大気の窓を介して熱エネルギーを放射する作用と、を有する。
【0070】
また、第1の放射冷却機能層は、可視光線及び近赤外線に対する反射率が80%以上であり、7μm~14μm波長域の放射率が80%以上であり、第2の放射冷却機能層は、紫外線及び可視光線に対する反射率が80%以上であり、7μm~14μm波長域の放射率が80%以上である。さらに、第1の放射冷却機能層は、可視光線及び近赤外線に対する反射率が90%以上であり、7μm~14μm波長域の放射率が90%以上であり、第2の放射冷却機能層は、紫外線及び可視光線に対する反射率が90%以上であり、7μm~14μm波長域の放射率が90%以上であることができる。
【0071】
他の実施例では、前記放射冷却機能層は、層が分割されていなくてもよく、第1の顆粒充填材と第2の顆粒充填材とを含む。つまり、第1の放射冷却機能層と第2の放射冷却機能層とを1層に結合することができる。
【0072】
また、放射冷却機能層は、赤外放射率(7μm~14μm波長域)が80%以上であり、熱反射率(300nm~2500nm波長域)が80%以上である。さらに、放射冷却機能層は、赤外放射率(7μm~14μm波長域)が90%以上であり、熱反射率(300nm~2500nm波長域)が90%以上であることができる。
【0073】
他の実施例では、この塗布層は、耐候性樹脂層及び/又は下塗り樹脂層を含むことができ、前記放射冷却機能層は、第1の表面と、この第1の表面から離れている第2の表面とを有し、前記耐候性樹脂層は、前記放射冷却機能層を保護するために前記放射冷却機能層の第1の表面に設けられ、前記下塗り樹脂層は、基板や主体表面と接触して選択的放射冷却塗布層を基板や主体表面に固定させるために前記放射冷却機能層の第2の表面に設けられる。
【0074】
良好な耐候性及び耐汚染性を得るために、耐候性樹脂層の材料は、フルオロカーボン樹脂(FEVE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)樹脂、フッ化エチレンプロピレン共重合体(FEP)樹脂、フッ素含有アクリル樹脂、フッ素含有ポリエステル樹脂、フッ素含有エポキシ樹脂、フッ素化ポリウレタン、フッ素含有シリコーン樹脂などのようなフッ素含有樹脂を使用することができるが、これらに限定されず、または、別の耐候性が良好な、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などのような常用の樹脂を使用することができる。なお、耐候性樹脂層4は、300nm~2500nmでの透過率が80%以上である。透過率に対する要求は、放射冷却機能層の太陽光に対する反射率に影響を与えないためである。
【0075】
下塗り樹脂層は、密着性の向上及び腐食防止の機能を有し、材料は基材のタイプによって選択され、一般にはエポキシ樹脂、アクリル樹脂の1種又は2種以上を使用するが、これらに限定されない。
【0076】
また、放射冷却機能層の厚さは、10μm~360μm、又は30μm~300μm、又は100μm~300μm、又は100μm~150μmであり、第1の放射冷却機能層の厚さは、30μm~300μm、又は100μm~300μm、又は100μm~150μmであり、第2の放射冷却機能層の厚さは、10μm~60μm、又は15μm~60μm、又は15μm~30μmであり、耐候性樹脂層の厚さは、10μm~50μmであり、下塗り樹脂層の厚さは、10μm~50μmである。
【0077】
図4a~
図4eは、選択的放射冷却塗布層のいくつかの可能な構造を示し、この選択的放射冷却塗布層は、それぞれ下から上へ、以下の各層のうちの全部又は一部を含むことができる。
【0078】
以下、
図4a~
図4eを参照しながら、本発明の選択的放射冷却塗布層のいくつかの可能な構造に対して、棒状構造の顆粒充填材を例として、詳細に説明する。棒状構造の顆粒充填材の微視的な拡大図は、
図3を参照することができる。
【0079】
第1種:
図4aに示すように、実施例では、選択的放射冷却塗布層は、下から上へ、下塗り樹脂層1、第1の放射冷却機能層2、第2の放射冷却機能層3、耐候性樹脂層4を順に含む。第1の放射冷却機能層2は、第1の放射冷却機能樹脂層22と、この第1の放射冷却機能樹脂層22中に分布している第1の顆粒充填材21とを含み、第2の放射冷却機能層3は、第2の放射冷却機能樹脂層32と、この第2の放射冷却機能樹脂層32中に分布している第2の顆粒充填材31とを含む。第1の顆粒充填材21及び第2の顆粒充填材31は、それぞれ第1の放射冷却機能樹脂層22及び第2の放射冷却機能樹脂層32中に規則的に配列する。
【0080】
図中、100は、赤外線の放射を表し、200は、太陽エネルギーを表し、210は、可視光線及び近赤外線の反射を表し、220は、紫外線及び可視光線の反射を表す。
【0081】
第2種:
図4bに示すように、実施例では、選択的放射冷却塗布層は、下から上へ、下塗り樹脂層1、第2の放射冷却機能層3、第1の放射冷却機能層2、耐候性樹脂層4を順に含む。
【0082】
図4aの構造との相違は、第1の放射冷却機能層2と第2の放射冷却機能層3との位置が逆になっていることである。
【0083】
第3種:
図4cに示すように、実施例では、選択的放射冷却塗布層は、下から上へ、下塗り樹脂層1、放射冷却機能層5、耐候性樹脂層4を順に含む。放射冷却機能層5は、放射冷却機能樹脂層52と、この放射冷却機能樹脂層52中に分布している第1の顆粒充填材21及び第2の顆粒充填材31と、を含む。
【0084】
図4aの構造との相違は、第1の放射冷却機能層2と第2の放射冷却機能層3とが1つの層に結合されていることである。
【0085】
第4種:
図4dに示すように、実施例では、選択的放射冷却塗布層は、下から上へ、下塗り樹脂層1、第1の放射冷却機能層2、第2の放射冷却機能層3を順に含む。
【0086】
図4aの構造との相違は、耐候性樹脂層4が省略されていることである。
【0087】
第5種:
図4eに示すように、実施例では、選択的放射冷却塗布層は、下から上へ、第1の放射冷却機能層2、第2の放射冷却機能層3を順に含む。
【0088】
図4aの構造との相違は、耐候性樹脂層4と下塗り樹脂層1とが省略されていることである。
【0089】
なお、第1の顆粒充填剤21及び第2の顆粒充填材31は、放射冷却機能樹脂中にランダムに配向配列することができるが、ランダムな配向配列は、放射冷却機能層の、紫外線及び/又は可視光線及び/又は近赤外線に対する反射率及び7μm~14μm波長域に対する放射率に影響を及ぼし得る。
【0090】
また、
図4a~
図4eに示す選択的放射冷却塗布層は、本発明の一部の一例に過ぎない。構造的に、耐候性樹脂層及び下塗り樹脂層を、省略することもできるし、選択的に保留することもできる。また、第1の放射冷却機能層と第2の放射冷却機能層とをまとめて1つの層にすることもできる。また、第1の放射冷却機能層と第2の放射冷却機能層との順序を交換することもできる。また、放射冷却機能層の層数は、1層又は2層に限定されず、3層、4層、5層などの複数層にすることもできる。放射冷却機能層における顆粒充填材の種類や顆粒充填材の比率、放射冷却機能層における樹脂の種類や比率、放射冷却機能層の厚さ、及び他の層の材料の種類や厚さなどは、要求によって選択されることができる。塗布層は、材料や構造の最適化によって熱反射率及び放射率、特に7μm~14μm波長域での放射率が向上し、極めて高い冷却効果を実現することができる。
【0091】
本発明の選択的放射冷却塗布層は、太陽光スペクトルのエネルギーに対する反射率が80%以上であり、大気の窓の放射率が80%以上であり、常温で100W/m2以上の放射冷却パワーを提供するとともに、機械的強度や耐候性がよく、非常に大きな実用的価値がある。放射冷却パワーの試験は、2017年「サイエンス(Science)誌」の文章「Supplementary Material for Scalable-manufactured randomized glass-polymer hybrid metamaterial for daytime radiative cooling」を参照することができ、この文章中の「Silver-coated silicon wafer」と「Hybrid metamaterial」とを本発明の放射冷却塗料で置換すればよい。
【0092】
本発明の選択的放射冷却塗布層は、下記のような特徴がある。
【0093】
1.層状構造を採用し、各層はそれぞれ異なる機能を有し、製造や応用に有利である。
【0094】
2.放射冷却機能層が第1の放射冷却機能層と第2の放射冷却機能層とを含む場合、それぞれが選択的反射や放射の作用を有するので、別々の製造や選択的な使用に有利である。
【0095】
3.顆粒充填材の形状が主に棒状であるとともに棒状のアスペクト比を限定し、前記顆粒充填材が放射冷却機能層の樹脂中に規則的に配列することにより、より良好な性能を有する。
【0096】
4.下塗り樹脂層を設けることにより、放射冷却機能層と基材との密着性を向上させることができる。
【0097】
本発明に係る上記のような放射冷却塗布層を含む複合材料は、基材と、この基材に塗布された前記放射冷却塗布層と、を含む。
【0098】
前記基材は、金属、プラスチック、ゴム、コンクリート、セメント、アスファルト、紙、織物、木材、タイル、ガラス又は有機合成材の一種である。
【0099】
以上、本発明の実施例に係る放射冷却機能塗料及びその応用に対して説明した。以下、対応する実験データ及び応用事例で、この塗料の性能及びその冷却効果に対してより詳細に説明する。
【0100】
(実験データ)
(一)反射率の試験
サンプルを、例えば、パーキンエルマー (Perkin Elmer)社のLambda 950型UV/Vis/NIR Spectrometer(紫外/可視/近赤外分光光度計)などの光度計に入れ、波長範囲が300nm~2500nm、300nm~400nm、400nm~760nm、760nm~2500nmである波長域でのサンプルの反射率を、5nmの測定波長間隔で測定した。300nm~2500nm、300nm~400nm、400nm~760nm、760nm~2500nm波長域でのサンプルの反射率の平均値を、サンプルが太陽光波長域、紫外、可視及び近赤外波長域での反射率R、R1、R2、R3とする。
【0101】
(二)放射率の試験
例えば、SOC-100 Hemispherical Directional Reflectometer(SOC-100 半球型方向性反射率計)などの反射率計を使用して、7~14μm波長の赤外放射率を試験する。
【0102】
厚さに関して:
図5aは、第1の放射冷却機能層2の厚さと400nm~760nm、760nm~2500nmの反射率との関係を示し、
図5bは、第2の放射冷却機能層3の厚さと300nm~400nm、400nm~760nmの反射率との関係を示し、
図6aは、第1の放射冷却機能層の厚さと1μm~25μmの放射率と波長との関係を示し、
図6bは、第2の放射冷却機能層の厚さと1μm~25μmの放射率と波長との関係を示す。その結果は下記の通りである。
【0103】
配合がXである第1の放射冷却機能塗料(「配合がXである」とは、第1の放射冷却機能塗料が、80質量%のアクリル樹脂、19質量%のシリカと重質炭酸カルシウム粉末(シリカと重質炭酸カルシウム粉末との質量比は1:1であり、シリカと重質炭酸カルシウム粉末の形状は棒状であり、粒径は6μmであり、アスペクト比は5:1である)、1%の配向剤(エチレン-酢酸ビニル共重合体ワックスエマルション)を含み、シリカと重質炭酸カルシウム粉末との内部の最長径と第1の放射冷却機能層の平面とがなす角は0°~30°である)を、トタン板に塗布した。塗布される厚さは、それぞれ70μm、100μm、130μm、180μm、260μmであり、乾燥後厚さの異なるサンプルを得た。
図5aによると、結果として、第1の放射冷却機能層の400nm~2500nmでの平均反射率はその厚さと関係し、厚さが厚いほど反射率が高く、厚さが130μm以上である場合、反射率の増加は緩慢となり、基本的に飽和に達する。
図6aによると、結果として、第1の放射冷却機能層の7μm~14μmでの平均放射率はその厚さと関係し、厚さが厚いほど放射率が高く、厚さが100μm以上である場合、放射率の増加が緩慢となり、基本的に飽和に達する。
【0104】
配合がYである第2の放射冷却機能塗料(「配合がYである」とは、第2の放射冷却機能塗料が、75質量%のポリウレタン樹脂、23質量%の酸化アルミニウムと酸化マグネシウム(酸化アルミニウムと酸化マグネシウムとの質量比は1:1であり、酸化アルミニウムと酸化マグネシウムとの形状は棒状であり、粒径は3μmであり、アスペクト比は6:1である)、2%の配向剤(ポリアミドワックス)を含み、酸化アルミニウムと酸化マグネシウムとの内部の最長径と、第2の放射冷却機能層の平面がなす角は0°~30°である)を、第1の放射冷却機能層(配合X)が厚さ150μmで塗布されているトタン板に塗布した。塗布される第2の放射冷却機能層の厚さは、それぞれ0μm、15μm、30μm、45μmであり、乾燥後厚さの異なるサンプルを得た。
図5bによると、結果として、第2の放射冷却機能層の反射率はその厚さと関係し、厚さが厚いほど反射率が高く、厚さが30μm以上である場合、反射率の増加は緩慢となり、基本的に飽和に達する。
図6bによると、結果として、第2の放射冷却機能層の7μm~14μmでの放射率はその厚さと関係し、厚さが厚いほど放射率が高く、厚さが15μm以上である場合、放射率の増加が緩慢となり、基本的に飽和に達する。
【0105】
顆粒充填材の形状に関して:
配合Xとの相違は、顆粒充填材の形状がそれぞれ棒状、楕円体、球状、直方体、立方体であり、塗布される厚さが80μmであることである。乾燥後、サンプルの400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを測定した結果、第1の放射冷却機能層の400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とはその顆粒充填材の形状と関係し、第1の放射冷却機能層の400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを大から小に並べると、棒状>楕円体、球状>直方体、立方体であった。
【0106】
配合Yとの相違は、顆粒充填材の形状がそれぞれ棒状、楕円体、球状、直方体、立方体であり、第1の放射冷却機能層(配合X)が厚さ150μmで塗布されているトタン板に塗布し、塗布される厚さが30μmであることである。乾燥後、サンプルの300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを測定した結果、第2の放射冷却機能層の300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とはその顆粒充填材の形状と関係し、第2の放射冷却機能層の300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを大から小に並べると、棒状>楕円体、球状>直方体、立方体であった。
【0107】
顆粒充填材のアスペクト比に関して:
配合Xとの相違は、顆粒充填材のアスペクト比がそれぞれ3:1、4:1、6:1、8:1、9:1であり、塗布される厚さが100μmであることである。乾燥後、サンプルの400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを測定した結果、第2の放射冷却機能層の400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とはその顆粒充填材のアスペクト比と関係し、第2の放射冷却機能層の400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを大から小に並べると、4:1、6:1>8:1、3:1>9:1であった。
【0108】
配合Yとの相違は、顆粒充填材のアスペクト比がそれぞれ3:1、4:1、6:1、8:1、9:1であり、第1の放射冷却機能層(配合X)が厚さ150μmで塗布されているトタン板に塗布し、塗布される厚さが30μmであることである。乾燥後、サンプルの300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを測定した結果、第2の放射冷却機能層の300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とはその顆粒充填材のアスペクト比と関係し、第2の放射冷却機能層の300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを大から小に並べると、4:1、6:1>8:1、3:1>9:1であった。
【0109】
顆粒充填材の体積平均径に関して:
配合Xとの相違は、顆粒充填材の体積平均径が異なり、その粒径がそれぞれ0.5μm、1μm、2μm、6μm、20μm、40μm、43μmであり、塗布される厚さが120μmであることである。乾燥後、サンプルの400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを測定した結果、第1の放射冷却機能層の400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とはその顆粒充填材の平均粒径と関係し、第1の放射冷却機能層の400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを大から小に並べると、2μm、6μm>1μm、20μm>0.5μm、40μm>43μmであった。
【0110】
配合Yとの相違は、顆粒充填材の体積平均径が異なり、その粒径がそれぞれ0.5μm、1μm、2μm、6μm、20μm、40μm、43μmであり、第1の放射冷却機能層(配合X)が厚さ150μmで塗布されているトタン板に塗布し、塗布される厚さが30μmであることである。乾燥後、サンプルの300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを測定した結果、第2の放射冷却機能層の300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とはその顆粒充填材の平均粒径と関係し、第2の放射冷却機能層の300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを大から小に並べると、2μm、6μm>1μm、20μm>0.5μm、40μm>43μmであった。
【0111】
顆粒充填材の配向配列に関して:
配合Xとの相違は、シリカと重質炭酸カルシウム粉末との内部の最長径と第1の放射冷却機能層の平面とがなす角が0°~45°、0°~30°であること、不規則的に配列すること、塗布される厚さが120μmであることである。乾燥後、サンプルの400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを測定した結果、第1の放射冷却機能層の400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とはその顆粒充填材の配向配列と関係し、第1の放射冷却機能層の400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを大から小に並べると、0°~30°>0°~45°>不規則配列であった。
【0112】
配合Yとの相違は、シリカと重質炭酸カルシウム粉末との内部の最長径と第1の放射冷却機能層の平面とがなす角が0°~45°、0°~30°であること、不規則的に配列すること、第1の放射冷却機能層(配合X)が厚さ150μmで塗布されているトタン板に塗布し、塗布される厚さが30μmであることである。乾燥後、サンプルの300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを測定した結果、第2の放射冷却機能層の300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とはその顆粒充填材の配向配列と関係し、第2の放射冷却機能層の300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを大から小に並べると、0°~30°>0°~45°>不規則配列であった。
【0113】
顆粒充填材の選択に関して:
配合Xとの相違は、顆粒充填材の種類が異なり、その種類がそれぞれ真珠粉末、シリカ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムであり、塗布される厚さが80μmであることである。乾燥後、サンプルの400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを測定した結果、第1の放射冷却機能層の400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とはその顆粒充填材の種類と関係し、第1の放射冷却機能層の400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを大から小に並べると、真珠粉末、シリカ>酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムであった。
【0114】
配合Yとの相違は、顆粒充填材の種類が異なり、その種類がそれぞれ1:1質量比のシリカと重質炭酸カルシウム粉末、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムであり、第1の放射冷却機能層(配合X)が厚さ150μmで塗布されているトタン板に塗布し、塗布される厚さが40μmであることである。乾燥後、サンプルの300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを測定した結果、第2の放射冷却機能層の300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とはその顆粒充填材の種類と関係し、第2の放射冷却機能層の300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを大から小に並べると、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム>1:1質量比のシリカと重質炭酸カルシウム粉末であった。
【0115】
樹脂の選択に関して:
配合Xとの相違は、樹脂の種類が異なり、その種類がそれぞれエポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素含有樹脂であり、塗布される厚さが80μmであることである。乾燥後、サンプルの400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを測定した結果、第1の放射冷却機能層の400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とはその樹脂の種類と関係し、第1の放射冷却機能層の400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを大から小に並べると、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂>フッ素含有樹脂であった。
【0116】
配合Yとの相違は、樹脂の種類が異なり、その種類がそれぞれエポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素含有樹脂であり、第1の放射冷却機能層(配合X)が厚さ150μmで塗布されているトタン板に塗布し、塗布される厚さが40μmであることである。乾燥後、サンプルの300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを測定した結果、第2の放射冷却機能層の300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とはその樹脂の種類と関係し、第2の放射冷却機能層の300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを大から小に並べると、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂>フッ素含有樹脂であった。
【0117】
顆粒充填材と樹脂との使用量比率に関して:
配合Xとの相違は、顆粒充填材と樹脂との使用量比率が異なり、その比率がそれぞれ10:89、25:74、50:49、60:39であり、塗布される厚さが100μmであることである。乾燥後、サンプルの400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを測定した結果、第1の放射冷却機能層の400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とはその顆粒充填材と樹脂との使用量比率と関係し、第1の放射冷却機能層の400nm~2500nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを大から小に並べると、25:74>10:89>50:49>60:39であった。
【0118】
配合Yとの相違は、顆粒充填材と樹脂との使用量比率が異なり、その比率がそれぞれ10:89、25:74、50:49、60:39であり、第1の放射冷却機能層(配合X)が厚さ150μmで塗布されているトタン板に塗布し、塗布される厚さが40μmであることである。乾燥後、サンプルの300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを測定した結果、第2の放射冷却機能層の300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とはその顆粒充填材と樹脂との使用量比率と関係し、第2の放射冷却機能層の300nm~760nmでの平均反射率と7μm~14μmでの平均放射率とを大から小に並べると、25:74>10:89>50:49>60:39であった。
【0119】
(三)耐候性試験
(1)キセノンランプ試験
サンプル製造:150mm×70mm×4mmのノンアスベスト繊維セメント板材に塗布して、下から上へ、下塗り樹脂層(アクリル樹脂)、第1の放射冷却機能層(配合X)、第2の放射冷却機能層(配合Y)、耐候性樹脂層を順に含む選択的放射冷却塗布層を形成し、サンプルの下塗り樹脂層、第1の放射冷却機能層、第2の放射冷却機能層はすべて同じであり、サンプルの耐候性樹脂層は、それぞれフルオロカーボン樹脂(FEVE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)樹脂、フッ素含有シリコーン樹脂とする。120μm及び80μmのワイヤーバーでそれぞれ1回ずつ塗布し168時間養生して、目的のサンプル1、サンプル2、サンプル3、サンプル4を得た。
【0120】
試験設備:キセノン試験機
試験条件:ブラックパネル55±2℃、湿度70%RH、降雨18min/2h、パワー550W/m2、放置1000時間。エージング前後の外観、粉末化、変色現象や、エージング前後の平均反射率(300nm~2500nm)の変化ΔR(エージング前の反射率からエージング後の反射率を引く)、エージング前後の平均放射率(7μm~14μm)の変化ΔE(エージング前の放射率からエージング後の放射率を引く)を観察する。
【0121】
キセノン試験結果:サンプル1、サンプル2、サンプル3、サンプル4のエージング前後の外観、粉末化、変色現象に顕著な変化はなく、エージング前後の平均反射率の変化ΔRはいずれも2%以下であり、エージング前後の平均放射率の変化ΔEはいずれも2%以下であった。
【0122】
(2)耐温度変化性能試験:
サンプル製造:第1の放射冷却機能塗料(79%のアクリル樹脂、20%のケイ酸アルミニウム、1%のポリエチレンワックス配向剤を含み、ケイ酸アルミニウムの形状は棒状であり、アスペクト比は4:1であり、粒径は2μmである)を150mm×70mm×4mmのノンアスベスト繊維セメント板材に塗布し、120μm及び80μmのワイヤーバーでそれぞれ1回ずつ塗布し168時間養生して、目的のサンプル5を得た。
【0123】
第2の放射冷却機能塗料(70%のシリコーン樹脂、27%の酸化アルミニウム、3%の水溶性カルボキシメチルアセテートブチレート配向剤を含み、酸化アルミニウムの形状は棒状であり、アスペクト比は6:1であり、粒径は0.6μmである)を150mm×70mm×4mmのノンアスベスト繊維セメント板材に塗布し、120μm及び80μmのワイヤーバーでそれぞれ1回ずつ塗布し168時間養生して、目的のサンプル6を得た。
【0124】
耐候性樹脂(フッ化エチレンプロピレン共重合体(FEP)樹脂)を150mm×70mm×4mmのノンアスベスト繊維セメント板材に塗布し、120μm及び80μmのワイヤーバーでそれぞれ1回ずつ塗布し168時間養生して、目的のサンプル7を得た。
【0125】
試験ステップ:サンプルを水中に入れて18時間浸漬した後取り出し、その表面の水滴を拭き取ってから冷蔵庫に入れて-20℃で3時間放置した後取り出し、それをオーブンに入れて50℃で3時間放置した後取り出す周期を5回行って、サンプルの表面の変化を観察したところ、各サンプルの3つの試料のうち少なくとも2つの試料に、粉末化、クラック、発泡、剥落、顕著な変色などの異常現象がなかったので、「異常なし」と評価することができる。
【0126】
耐温度変化性能試験の結果:サンプル5、サンプル6、サンプル7の表面は異常がなく、即ち粉末化、クラック、発泡、剥落、顕著な変色などの異常現象はなかった。
【0127】
(3)耐水性試験:
サンプル5、サンプル6、サンプル7の耐水性を試験する。
【0128】
サンプルの試験ステップ:サンプルの縁を密封した後に水中に入れて96時間放置し、表面塗布層に発泡、粉落ち、顕著な変色などの異常があるか否かを観察する。
【0129】
耐水性試験の結果:サンプル5、サンプル6、サンプル7の表面塗布層に発泡、粉落ち、顕著な変色などの異常はなかった。
【0130】
(4)耐汚染性試験:サンプル1、サンプル2、サンプル3、サンプル4の耐汚染性を試験する。
【0131】
試験設備:塗布層耐汚染性試験機
汚染源の調合:スタンダードグレー(標準灰)と水とを使用して1:1質量比の懸濁液を調合
【0132】
試験ステップ:まず上、中、下の3つの位置でサンプルの反射率を測定し、その平均値をPと記す。サンプル毎に0.7±0.1gの汚染源を塗布し、60℃のオーブンで30分間乾燥させ、取り出して2時間放置する。塗布層耐汚染性試験機を使用して1分間洗浄した後24時間放置し、上記の工程を繰り返した後、上、中、下の3つの位置でサンプルの塗布層の反射率を測定し、その平均値をRと記す。
【0133】
塗布層耐汚染性用塗料塗布層の反射係数の低下率(X)は、式X=|P-Q|/P×100%によって計算され、その結果としては、3つのサンプルの算術平均値を取り、2桁の有効数字を保持し、3つのサンプルの平均測定相対誤差は15%より大きくない。
【0134】
耐汚染性試験の結果:サンプル1、サンプル2、サンプル3、サンプル4の反射係数低下率(X)は、いずれも3%以下である。
【0135】
(五)機械的特性:
(1)密着性試験
サンプル5、サンプル6、サンプル7の密着性を試験する。
【0136】
密着性試験:GB/T 9286‐1998標準に従って、片刃カッターを用いてサンプル辺に平行及び垂直である方向に、線間間隔が3mmでかつ格子数が4となるように、3つの線をカッティングし、テープ剥離試験を行う。
【0137】
結果表示:結果は0、1、2、3、4、5の6つのレベルで評価する。0レベルは、格子の脱落無しでカッティング線の縁が平滑であることを表し、1レベルは、カッティング線の交差箇所にわずかな塗布層の脱落があるが、影響を受ける交差カッティング面積が顕著に5%より大きくないことを表し、2レベルは、カッティング線の交差箇所及び/又はカッティング線の縁の塗布層が脱落して影響を受ける交差カッティング面積が顕著に5%より大きいが、顕著に15%より大きくないことを表し、3レベルは、カッティング線の交差箇所及び/又はカッティング線の縁の一部又は全部の塗布層が大面積で脱落及び/又は格子の異なる部位に部分的又は完全に剥落して影響を受ける交差カッティング面積が顕著に15%より大きいが、顕著に35%より大きくないことを表し、4レベルは、カッティング線の縁の塗布層が大面積で脱落及び/又はある格子が部分的又は完全に剥落して影響を受ける交差カッティング面積が顕著に35%より大きいが、顕著に65%より大きくないことを表し、5レベルは、剥落の程度が4レベルを超えることを表す。
【0138】
密着性試験の結果:サンプル5、サンプル6、サンプル7の表面塗布層の脱落のレベルはいずれも2より小さかった。
【0139】
(2)耐屈曲性試験
試験設備:円筒形マンドレル屈曲試験機
サンプル製造:第1の放射冷却機能塗料(75%のアクリル樹脂、25%のケイ酸アルミニウムを含み、ケイ酸アルミニウムの形状は棒状であり、アスペクト比は4:1であり、粒径は6μmである)を150mm×70mm×0.25mmのブリキ板材に塗布し、80μmのワイヤーバーで1回塗布し168時間養生して、目的のサンプル8を得た。第2の放射冷却機能塗料(酸化アルミニウムを含有するシリコーン樹脂を含み、酸化アルミニウムの形状は棒状であり、アスペクト比は6:1であり、粒径は5μmである)を150mm×70mm×0.25mmのブリキ板材に塗布し、80μmのワイヤーバーで1回塗布し168時間養生して、目的のサンプル9を得た。
【0140】
耐候性樹脂(フッ化エチレンプロピレン共重合体(FEP)樹脂)を150mm×70mm×0.25mmのブリキ板材に塗布し、80μmのワイヤーバーで1回塗布し168時間養生して、目的のサンプル10を得た。
【0141】
試験ステップ:円筒形マンドレル屈曲試験機を使用してサンプルの柔軟性を試験し、サンプルの表面塗布層に視認可能な隆起やクラックがない。2mmより小さいものが合格である。
【0142】
サンプル8、サンプル9、サンプル10の耐屈曲性を試験する。
【0143】
耐屈曲性試験の結果:サンプル8、サンプル9、サンプル10の表面塗布層に視認可能な隆起やクラックはなかった。
【0144】
(3)耐ブラシ洗浄性試験
試験設備:耐ブラシ洗浄性試験機
サンプル製造:第1の放射冷却機能塗料(90%のアクリル樹脂、10%のケイ酸アルミニウムを含み、ケイ酸アルミニウムの形状は棒状であり、アスペクト比は4:1であり、粒径は4μmである)を432mm×165mm×0.25mmのPVC材質のプラスチックシートに塗布し、200μmのクリアランス型ウェットフィルム準備装置で1回ブレードコーティングし7日間養生して、目的のサンプル11を得た。第2の放射冷却機能塗料(85%のシリコーン樹脂、15%の酸化アルミニウムを含み、酸化アルミニウムの形状は棒状であり、アスペクト比は6:1であり、粒径は3μmである)を432mm×165mm×0.25mmのPVC材質のプラスチックシートに塗布し、200μmのクリアランス型ウェットフィルム準備装置で1回ブレードコーティングし7日間養生して、目的のサンプル12を得た。
【0145】
耐候性樹脂(フッ化エチレンプロピレン共重合体(FEP)樹脂)を432mm×165mm×0.25mmのPVC材質のプラスチックシートに塗布し、200μmのクリアランス型ウェットフィルム準備装置で1回ブレードコーティングし7日間養生して、目的のサンプル13を得た。
【0146】
試験ステップ:2.5g/Lのn-ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液を使用してブラシ洗浄し、ブラシの運動頻度は、毎分往復(37±2)サイクルであり、1往復ストロークの距離は300mm×2であり、中間の100mmの領域では略等速で運動し、ブラシの往復回数が10000回となった後にサンプルを取り出し、サンプルの塗布層に破損があるか否かを観察する。
【0147】
サンプル11、サンプル12、サンプル13の耐ブラシ洗浄性を試験する。
【0148】
試験の結果:サンプル11、サンプル12、サンプル13の表面塗布層に破損現象はなかった。
【0149】
(応用事例)
本発明の選択的放射冷却塗布層はさまざまな分野に適用することができる。以下、建物、貯蔵装置、織物、ヘルメット、防水シートを例として説明する。
【0150】
実例1:モデルハウス
選択的放射冷却塗布層の冷却効果を説明するために、以下、前記選択的放射冷却塗布層を建物に適用することを例として説明する。
【0151】
ステンレス材質でありかつ内部の長さ、幅、高さがそれぞれ5mx4mx3mであるモデルハウスの天井及び周壁の外部表面に選択的放射冷却塗布層を形成する。選択的放射冷却塗布層は、下から上へ、20μm厚さの下塗り樹脂層(アクリル樹脂)、100μm厚さの第1の放射冷却機能層(配合X)、15μm厚さの第2の放射冷却機能層(配合Y)、20μm厚さの耐候性樹脂層(ポリフッ化ビニリデン樹脂)を含み、選択的放射冷却塗布層は、0.3μm~2.5μmでの反射率が91%であり、7μm~14μmでの放射率が94%である。ここで、選択的放射冷却塗布層が形成されているモデルハウスをモデルハウスAと定義し、2019年8月22日、寧波市奉化区東峰路88号の芝生で熱電対(thermocouple)を使用してモデルハウスAの表面及び内部の合計9箇所の測定点の24時間内の温度変化を測定して記録した。
【0152】
大きさ、材質、構造及び形状が同じであるが天井及び周壁の外部表面に選択的放射冷却塗布層が形成されていないモデルハウスを、環境がモデルハウスAと同一の場所に配置する。ここで、選択的放射冷却塗布層が形成されていないモデルハウスをモデルハウスBと定義し、熱電対を使用してモデルハウスBの表面及び内部の合計9箇所の測定点のモデルハウスAと同日かつ同時間帯の温度変化を測定して記録した。モデルハウスAとモデルハウスBとの測定点の分布は、
図7aに示すように同じである。
【0153】
図7aにおけるA1、A6、A7、A8、A9は、それぞれモデルハウスAの天井外部表面の中央位置、西側壁外部表面の中央位置、東側壁外部表面の中央位置、南側壁外部表面の中央位置、北側壁外部表面の中央位置の測定点であり、A2、A3、A4、A5は、それぞれモデルハウスAの内部で地面に垂直である同一直線上の地面から異なる位置における空気温度の測定点である。これと同時に、室外の環境温度も測定した。
【0154】
図7aにおけるB1、B6、B7、B8、B9は、それぞれモデルハウスBの天井外部表面の中央位置、西側壁外部表面の中央位置、東側壁外部表面の中央位置、南側壁外部表面の中央位置、北側壁外部表面の中央位置の測定点であり、B2、B3、B4、B5は、それぞれモデルハウスBの内部で地面に垂直である同一直線上の地面から異なる位置における空気温度の測定点である。
【0155】
図7bは、室外環境及びモデルハウスAの表面の異なる位置の測温点のグラフである。
図7bによれば、モデルハウスAの外部表面に選択的放射冷却塗布層が形成されており、モデルハウスAの外部表面(天井、東南西北の四方向)の温度は、いずれも室外の環境温度より低く、温度が最大6.1℃ぐらい低下している。
【0156】
図7cによれば、選択的放射冷却塗布層が形成されているモデルハウスAにおいて、室内の縦方向に異なる位置の測温点の温度は、いずれも室外の環境温度より1日24時間低く、室外と比べて温度が最大5.5℃ぐらい低下しており、また、日照時間の増加に伴って天井に近いほど、その温度が低くなる現象が出現し、選択的放射冷却塗布層が顕著な受動放射冷却効果を有することを示している。
【0157】
図7dによれば、選択的放射冷却塗布層が形成されていないモデルハウスBの外部表面(天井、東南西北の四方向)の温度は、室外の環境温度に比べて最大21℃ぐらい高い。
図7b及び
図7dによれば、選択的放射冷却塗布層が形成されているモデルハウスAは、選択的放射冷却塗布層が形成されていないモデルハウスBの表面温度より24℃ぐらい低い。
【0158】
図7eによれば、選択的放射冷却塗布層が形成されていないモデルハウスBは、その縦方向に温度差が比較的大きく、太陽の放射強度の増加に伴って天井に近いほど、その温度が高く、温度成層が顕著である。
【0159】
実例2:水槽
【0160】
選択的放射冷却塗布層の冷却効果を説明するために、以下、前記選択的放射冷却塗布層を貯蔵装置に適用することを例として説明する。
【0161】
実施例1
プラスチック材質でありかつ内部の長さ、幅、高さがそれぞれ800mmx800mmx80mである水槽の上部表面に選択的放射冷却塗布層を形成する。選択的放射冷却塗布層は、下から上へ、30μm厚さの下塗り樹脂層(エポキシ樹脂)、120μm厚さの第1の放射冷却機能層(配合X)、20μm厚さの第2の放射冷却機能層(配合Y)、30μm厚さの耐候性樹脂層(フルオロカーボン樹脂)を含み、選択的放射冷却塗布層は、0.3μm~2.5μmでの反射率が91%であり、7μm~14μmでの放射率が96%である。選択的放射冷却塗布層が形成されている水槽をCと記し、水槽Cの内部の水中の中央位置に1つの測温点C1を設置する。
【0162】
比較例1
材質、大きさが同じであるが表面に対して如何なる処理も行っていない水槽をDと記し、水槽Dの内部の水中の中央位置、即ち水槽Cと同一の位置に1つの測温点D1を設置する。
図8aは、水槽CとDとの中央位置の測温点C1とD1を示す図である。2019年8月20日から2019年8月21日まで、寧波市奉化区東峰路88号の芝生で24時間内の水槽内部の測温点C1とD1との温度変化を測定した。その測温結果は
図8bの通りである。
【0163】
図8bによれば、(1)選択的放射冷却塗布層が形成されている水槽C内部の測温点C1の温度は、室外の環境温度より1日24時間低く、温度が最大5.3℃ぐらい低下している。これは、選択的放射冷却塗布層が顕著な受動放射冷却効果を有することを示している。(2)選択的放射冷却塗布層が形成されている水槽C内部の測温点C1の温度は、選択的放射冷却塗布層が形成されていない水槽D内部の測温点D1の温度より1日24時間低く、温度が最大14.4℃ぐらい低下している。これは、選択的放射冷却塗布層が顕著な受動放射冷却効果を有することを示している。
【0164】
実例3:テント
選択的放射冷却塗布層の冷却効果を説明するために、以下、前記選択的放射冷却塗布層を織物に適用することを例として説明する。
【0165】
テントEの外部表面に選択的放射冷却塗布層を形成する。選択的放射冷却塗布層は、下から上へ、40μm厚さの下塗り樹脂層(1:1質量比のアクリル樹脂とエポキシ樹脂)、130μm厚さの第1の放射冷却機能層(配合X)、30μm厚さの第2の放射冷却機能層(配合Y)、40μm厚さの耐候性樹脂層(エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体樹脂)を含み、選択的放射冷却塗布層は、0.3μm~2.5μmでの反射率が92%であり、7μm~14μmでの放射率が97%である。
【0166】
比較例1
大きさ、材質及び様式がテントEと同じであるが表面に対して如何なる処理も行っていないテントFを、2019年4月26日、寧波市奉化区東峰路88号の芝生に配置し、テントEとテントFとの内部の異なる位置の温度変化と、外の環境温度変化とを同時に測定した。
図9aは、テントEとFとの内部の測温点を示す図である。
【0167】
E1/F1、E2/F2、E3/F3は、テントE及びFの中心位置と地面の垂直線上の3つの測温点であり、E1/F1は、テントE及びFの内部表面における測温点であり、E2/F2は、テントE及びFの内部頂部から2cm離れている位置の測温点であり、E3/F3は、テントE及びFの内部中心位置の測温点である。
【0168】
図9bは、テントEとFとの内部の測温点の温度差グラフである。
【0169】
図9bによれば、(1)選択的放射冷却塗布層が形成されているテントEの内部温度は、選択的放射冷却塗布層が形成されていないテントFの内部温度より略10℃~17℃低い。(2)選択的放射冷却塗布層はテントの外部で顕著な受動放射冷却効果を有し、テント内部の温度を低下させてテントの快適度を向上させることができる。
【0170】
実例4:ヘルメット
選択的放射冷却塗布層を帽子/ヘルメット分野に適用する場合、帽子/ヘルメット内部の温度を大幅に低下させることができるので、太陽が照り付ける場合にも帽子/ヘルメットの快適度を向上させることができる。
【0171】
選択的放射冷却塗布層の効果を説明するために、以下、例を挙げて説明する。
【0172】
実施例1
ヘルメットの外部表面に選択的放射冷却塗布層を形成する。選択的放射冷却塗布層は、下から上へ、50μm厚さの下塗り樹脂層(2:1質量比のアクリル樹脂とエポキシ樹脂)、150μm厚さの第1の放射冷却機能層(配合X)、50μm厚さの第2の放射冷却機能層(配合Y)、50μm厚さの耐候性樹脂層(フッ化エチレンプロピレン共重合体樹脂)を含み、選択的放射冷却塗布層は、0.3μm~2.5μmでの反射率が92%であり、7μm~14μmでの放射率が97%である。選択的放射冷却塗布層が形成されているヘルメットをGと記し、ヘルメット内部の頂部位置に1つの測温点G1を設置する。
【0173】
比較例1
サイズが実施例1と同じであるが表面に対して如何なる処理も行っていないヘルメットをHと記し、ヘルメットH内部の頂部位置、即ちヘルメットGと同一の位置に1つの測温点H1を設置する。
図10aは、ヘルメットG及びHの内部頂部の測温点G1及びH1を示す図である。2019年4月16日から2019年4月18日まで、寧波市奉化区東峰路88号の屋上で、ヘルメットの内部頂部の測温点G1及びH1の温度変化を連続48時間測定した。その測定結果は
図10bの通りである。
【0174】
図10bによれば、(1)普通のヘルメットと冷却機能のヘルメットとの温度差を測定したところ、測温点としてのヘルメットの頂点位置での午前11時の最大温度差は略13.5℃に達した。(2)冷却効果は、太陽の放射強度と正比例し、放射強度が強いほど、冷却効果はより良好である。(3)選択的放射冷却塗布層はヘルメットの外部で顕著な受動放射冷却効果を有し、ヘルメット内部の温度を低下させてテントの快適度を向上させることができる。
【0175】
実例5:防水シート
選択的放射冷却塗布層を防水シートに適用して陸屋根や傾斜屋根の温度が高すぎる問題を解決することができることにより、防水を確保するとともに最上階の温度を低下させて、冷却のためのエネルギー消費を低減することができ、省エネや環境保護に有利である。
【0176】
選択的放射冷却塗布層の効果を説明するために、以下、例を挙げて説明する。
【0177】
実施例1
防水シートの直接空気に対向する外部表面に選択的放射冷却塗布層を形成する。選択的放射冷却塗布層は、下から上へ、50μm厚さの下塗り樹脂層(アクリル樹脂)、200μm厚さの第1の放射冷却機能層(配合X)、60μm厚さの第2の放射冷却機能層(配合Y)、10μm厚さの耐候性樹脂層(エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体樹脂)を含み、選択的放射冷却塗布層は、0.3μm~2.5μmでの反射率が92%であり、7μm~14μmでの放射率が97%である。選択的放射冷却塗布層が形成されている防水シートをIと記し、防水シートの正面に測温点I1を設置し、防水シートの背面に測温点I2を設置する。
【0178】
比較例1
表面に対して如何なる処理も行っていない同ロットの防水シートをJと記し、この防水シートの正面に測温点J1を設置し、防水シートの背面に測温点J2を設置する。
【0179】
2019年5月23日、寧波市奉化区東峰路88号の屋上で、防水シートI及びJの正面と背面との測温点の温度を測定した。防水シートI及びJの正面と背面との測温点の温度グラフは
図11の通りである。
【0180】
図11によれば、(1)選択的放射冷却塗布層が形成されている防水シートIの正面及び背面の温度は、選択的放射冷却塗布層が形成されていない防水シートJの正面及び背面の温度より顕著に低く、最大温度差は40℃に達する。(2)防水シートIの温度と防水シートJの温度との差が正午に最大となり、これは選択的放射冷却塗布層の正午における放射冷却効果が最大であることを示している。(3)防水シートIと防水シートJとの下表面の温度差は上表面の温度差より大きいが、これは上表面の測温点が大気の対流熱伝達の影響を受けるためである。(4)選択的放射冷却塗布層によって長期間効果的に防水シートの表面温度を低下させることができ、最上階の全体温度を低下させることができる。
【0181】
上記した実施例において、各実施例に対する説明にはそれぞれ独自の重点があり、ある実施例に詳細な説明がない場合は、他の実施例の関連部分を参照すればよい。
【0182】
上記した実施例は、本発明の技術構成を説明するためのものであり、本発明を限定するためのものではない。当業者であれば、本発明の技術構成の趣旨や範囲を逸脱しない前提下で、上述した実施例に対して修正することもできるし、一部の技術的特徴を均等置換することもできる。これらの修正や置換は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。