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特許7023981移動情報算出装置、移動情報算出方法、および、移動情報算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】移動情報算出装置、移動情報算出方法、および、移動情報算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 3/02 20060101AFI20220215BHJP
   G01C 21/16 20060101ALI20220215BHJP
   B63B 79/40 20200101ALI20220215BHJP
   B63B 43/18 20060101ALI20220215BHJP
   B63B 49/00 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
G08G3/02 A
G01C21/16
B63B79/40
B63B43/18
B63B49/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019557164
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2018042754
(87)【国際公開番号】W WO2019107213
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2017231709
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓
(72)【発明者】
【氏名】戸田 裕行
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 奈緒美
(72)【発明者】
【氏名】肥野 明大
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第93/07448(WO,A1)
【文献】特開2002-048592(JP,A)
【文献】特開2004-318380(JP,A)
【文献】特開2004-042884(JP,A)
【文献】特開2006-044316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 3/00 ~ 3/02
G01C 21/00 ~ 21/18
B63B 49/00
B63B 79/40
B63B 43/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の位置を算出する位置算出部と、
前記移動体の速度を算出する速度算出部と、
前記移動体の姿勢を算出する姿勢算出部と、
前記位置、前記速度、および、前記姿勢を用いて、前記移動体の重心位置および重心速度を算出する重心情報算出部と、
前記重心位置および前記重心速度を用いて、前記移動体の旋回中心位置または転心位置を算出する旋回情報算出部と、
を備える、移動情報算出装置であって、
前記位置は、測地座標系で表され、
前記速度は、NED座標系で表され、
前記姿勢は、移動体座標系で表され、
前記重心情報算出部は、
前記姿勢を用いて、前記移動体座標系と前記NED座標系との座標変換を行う第1座標変換行列を算出し、
前記位置を用いて、前記NED座標系と前記移動体座標系との座標変換を行う第2座標変換行列を算出し、
前記第1座標変換行列と前記第2座標変換行列とを用いて、前記重心位置および前記重心速度を算出する、
移動情報算出装置
【請求項2】
請求項1に記載の移動情報算出装置であって、
前記旋回中心位置または前記転心位置と前記移動体の位置とを含む航跡情報を生成する航跡情報生成部を備える、
移動情報算出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の移動情報算出装置であって、
前記航跡情報生成部は、
前記転心位置と前記移動体の形状とを用いて、前記移動体の接触に関する危険区域または予測危険区域を算出する、
移動情報算出装置。
【請求項4】
移動体の位置を算出し、
前記移動体の速度を算出し、
前記移動体の姿勢を算出し、
前記位置、前記速度、および、前記姿勢を用いて、前記移動体の重心位置および重心速度を算出し、
前記重心位置および前記重心速度を用いて、前記移動体の旋回中心位置または転心位置を算出する、移動情報算出方法であって、
前記位置は、測地座標系で表され、
前記速度は、NED座標系で表され、
前記姿勢は、移動体座標系で表され、
前記姿勢を用いて、前記移動体座標系と前記NED座標系との座標変換を行う第1座標変換行列を算出し、
前記位置を用いて、前記NED座標系と前記移動体座標系との座標変換を行う第2座標変換行列を算出し、
前記第1座標変換行列と前記第2座標変換行列とを用いて、前記重心位置および前記重心速度を算出する、
移動情報算出方法
【請求項5】
移動体の位置を算出し、
前記移動体の速度を算出し、
前記移動体の姿勢を算出し、
前記位置、前記速度、および、前記姿勢を用いて、前記移動体の重心位置および重心速度を算出し、
前記重心位置および前記重心速度を用いて、前記移動体の旋回中心位置または転心位置を算出する、処理を演算処理装置に実行させる移動情報算出プログラムであって、
前記位置は、測地座標系で表され、
前記速度は、NED座標系で表され、
前記姿勢は、移動体座標系で表され、
前記姿勢を用いて、前記移動体座標系と前記NED座標系との座標変換を行う第1座標変換行列を算出し、
前記位置を用いて、前記NED座標系と前記移動体座標系との座標変換を行う第2座標変換行列を算出し、
前記第1座標変換行列と前記第2座標変換行列とを用いて、前記重心位置および前記重心速度を算出する、
処理を演算処理装置に実行させる移動情報算出プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶等の移動体の移動情報、特に、移動体の旋回に関する情報を算出する移動情報算出装置、移動情報算出方法、および、移動情報算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶等の移動体の衝突予防の技術が各種実用化されている。その中で、移動体の航跡を予測し、予測航跡を表示する装置が各種実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1の表示装置は、移動体の速度、方位、および回頭角速度を計測し、過去の移動軌跡と将来の予測軌跡とを算出する。特許文献1の表示装置は、これらの過去の移動航跡と将来の予測航跡とを表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第93/07448号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の表示装置等の過去に考案された装置による情報では、旋回時の予測データとして十分でない場合もある。したがって、移動体の旋回時の状態を示す更なるデータが望まれている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、移動体の旋回時の状態を示すデータを更に充実することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の移動情報算出装置は、移動体の位置を算出する位置算出部、移動体の速度を算出する速度算出部、移動体の姿勢を算出する姿勢算出部、重心情報算出部、および、旋回情報算出部を備える。重心情報算出部は、位置、速度、および、姿勢を用いて、移動体の重心位置および重心速度を算出する。旋回情報算出部は、重心位置および重心速度を用いて、移動体の旋回中心位置または転心位置を算出する。
【0008】
この構成では、移動体の位置、速度、姿勢を用いて、移動体の旋回時の状態を示す旋回中心位置または転心位置が算出される。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、移動体の旋回時の状態を示すデータを更に充実することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る移動情報算出装置の機能ブロック図である。
図2】船舶の旋回状態を示す平面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る移動体情報算出方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の第2の実施形態に係る移動情報算出装置の機能ブロック図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る表示画像の第1例を示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る表示画像の第2例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施形態に係る移動情報算出装置、移動状態算出方法、および、移動状態算出プログラムについて、図を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る移動情報算出装置の機能ブロック図である。図2は、船舶の旋回状態を示す平面図である。なお、本実施形態では、移動体として船舶を用いる態様を示すが、他の水上移動体、水中移動体、または、空中移動体との各種の移動体にも適用できる。船体、機体等のボディの大きな移動体に対して、本願発明の構成は、特に有効である。
【0012】
図1に示すように、移動情報算出装置10は、位置算出部20、速度算出部30、姿勢算出部40、重心情報算出部50、および、旋回情報算出部60を備える。位置算出部20は、例えば、位置センサによって実現され、速度算出部30は、例えば、速度センサによって実現され、姿勢算出部40は、例えば、姿勢センサによって実現される。重心情報算出部50および旋回情報算出部60は、これらの機能を実行するプログラムが記憶された記憶デバイスと、該記憶デバイスに記憶されたプログラムを実行する演算素子(CPU等)とによって実現される。位置センサが、本発明の「位置算出部」に対応し、速度センサが、本発明の「速度算出部」に対応し、姿勢センサが、本発明の「姿勢算出部」に対応する。
【0013】
移動情報算出装置10は、表示器70に接続されている。なお、この表示器70も含めて、移動情報算出装置10としてもよい。
【0014】
移動情報算出装置10および表示器70は、図2に示すような船体100に装備されている。船体100には、複合センサ101、複合センサ102、および、複合センサ103が設置されている。
【0015】
図2に示すように、複合センサ101および複合センサ102は、船体100の船尾付近に配置されている。複合センサ101および複合センサ102は、船体100の左舷と右舷を結ぶ方向、すなわち、Body座業系(移動体座標系)のYb方向において異なる位置に配置されている。
【0016】
図2に示すように、複合センサ103は、船体100の船首付近に配置されている。言い換えれば、複合センサ103は、船体100の船首と船尾を結ぶ方向、すなわち、Body座標系のXb方向において、複合センサ102および複合センサ103と異なる位置に配置されている。なお、複合センサ101、複合センサ102、および、複合センサ103の配置は、これに限るものではなく、船体100に装着する複合センサの個数もこれに限るものではない。
【0017】
複合センサ101、複合センサ102、および、複合センサ103は、それぞれに、測位信号を受信するアンテナ、GNSS(Grobal Navigation Satellite Systems)の測位信号を用いて位置を算出する測位演算部、対地船速を計測する速度センサ、ジャイロコンパスを備えている。これにより、複合センサ101、複合センサ102、および、複合センサ103は、位置センサ(位置算出部20の一例)、速度センサ(速度算出部30の一例)、および、姿勢センサ(姿勢算出部40の一例)を備えている。
【0018】
この構成により、複合センサ101、複合センサ102、および、複合センサ103の位置センサのそれぞれは、測位衛星からの測位信号を用いて、複合センサ101、複合センサ102、および、複合センサ103の位置Pwを計測する。測位信号を用いていることにより、位置Pwは、測地座標系によって表される。測地座標系とは、例えば、WGS84であり、地球の中心を原点とし、北極と南極を結ぶ方向をZw方向とし、基準子午線に直交する方向をXw方向とし、Zw方向とXw方向とに直交する方向をYwとする座標系である。位置センサのそれぞれは、重心情報算出部50に位置Pwを出力する。
【0019】
また、複合センサ101、複合センサ102、および、複合センサ103の速度センサは、既知の方法で、複合センサ101、複合センサ102、および、複合センサ103の速度Vnである対地船速COGを計測する。速度Vnは、NED座標系によって表される。NED座標系は、地球上の現在位置において、北方向をN方向とし、東方向をE方向とし、鉛直下方向をD方向とする座標系である。速度センサのそれぞれは、重心情報算出部50に速度Vnを出力する。
【0020】
また、複合センサ101、複合センサ102、および、複合センサ103の姿勢センサは、複合センサ101、複合センサ102、および、複合センサ103の姿勢AAを計測し、姿勢AAの時間変化量である角速度ωbを計測する。角速度ωbは、Body座標系(移動体座標系)によって表される。Body座標系とは、上述のように、船体100であれば、船首と船尾を結ぶ方向をXb方向とし、左舷と右舷を結ぶ方向をYb方向とし、これらXb、Ybに直交する方向をZb方向とする座標系である。姿勢センサのそれぞれは、重心情報算出部50に角速度ωbを出力する。
【0021】
重心情報算出部50は、位置Pw、速度Vn、および角速度ωbを用いて、船体100における重心位置PGwと重心速度VGnを算出する。具体的には、重心情報算出部50は、次の方法を用いて、重心位置PGwと重心速度VGnを算出する。
【0022】
重心情報算出部50は、複合センサ101、102、103の位置Pwから、重心位置PGwを算出する。また、重心情報算出部50は、複合センサ101、102、103の速度Vnから、重心速度PVnを算出する。複合センサ101、102、103の位置と重心位置との移動体座標系における位置関係は、予め計測等によって分かっている。したがって、この位置関係を用いることによって、重心位置PGwおよび重心速度VGnは算出可能である。
【0023】
重心情報算出部50は、重心位置PGwおよび重心速度VGnを旋回情報算出部60に出力する。
【0024】
旋回情報算出部60は、旋回半径ベクトルRbを算出する。図2に示すように、旋回半径ベクトルRbとは、船体100の旋回中心位置TCを始点として船体100の重心位置PGwを終点とするベクトルである。
【0025】
この図2に示す位置関係に基づいて、旋回情報算出部60は、重心速度VGnおよび角速度ωbと、次式とを用いて、旋回半径ベクトルRbを算出する。旋回半径ベクトルRbは、移動体座標系の三次元成分で表され、(Rbx、Rby、Rbz)からなる。
【0026】
VGn=C ・(ωb×(-Rb)) -(式1)
なお、C は、移動体座標系からNED座標系の変換行列であり、角速度ωbを用いて既知の方法から算出できる。また、この(式1)を含め、以下の各式において、「・」はベクトルの内積演算を示し、「×」はベクトルの外積演算を示す。
【0027】
旋回情報算出部60は、転心位置RCおよび旋回中心位置TCを算出する。図2に示すように転心位置RCとは、船体100が旋回しているときの船体100の軸となる位置である。例えば、船体100が船首側から旋回する場合には、転心位置RCは、重心位置PGwよりも船首側になる。一方、船体100が船尾側から旋回する場合には、転心位置RCは、重心位置PGwよりも船尾側となる。また、旋回中心位置TCは、船体100の旋回運動の中心点を表す位置である。転心位置RCおよび旋回中心位置TCは、測地座標系で表される。
【0028】
この図2に示す位置関係に基づいて、旋回情報算出部60は、重心位置PGwと旋回半径ベクトルRbと、次式とを用いて、旋回中心位置TCを算出する。
【0029】
TC=PGw+C ・C ・Rb -(式2)
また、この図2の位置関係に基づいて、旋回情報算出部60は、重心位置PGwと一成分の旋回半径ベクトルRb1と、次式とを用いて、転心位置RCを算出する。
【0030】
RC=PGw+C ・C ・Rb1 -(式3)
なお、C は、NED座標系から測地座標系への変換行列であり、位置Pwを用いて既知の方法から算出できる。また、一成分の旋回半径ベクトルRb1は、旋回半径ベクトルRbにおけるX方向成分のみからなり、Rb1=(Rbx、0、0)で定義される。
【0031】
旋回情報算出部60は、測地座標系で算出された旋回中心位置TCと転心位置RCとを、表示器70に出力する。表示器70は、旋回中心位置TCおよび転心位置RCを表示する。この際、表示器70は、重心位置PGw等、船体100に関する他の情報を、旋回中心位置TCおよび転心位置RCとともに表示してもよい。
【0032】
このように、本実施形態の移動情報算出装置10は、位置センサが計測した位置Pw、速度センサが計測した速度Vn、および、姿勢センサが計測した角速度ωbを用いて、船体100の旋回運動に関する旋回中心位置TCおよび転心位置RCを算出できる。すなわち、旋回中心位置TCおよび転心位置RCを計測するためのセンサ等を別途設けることなく、船体100の位置、速度、姿勢を算出する基本的な構成によって、旋回中心位置TCおよび転心位置RCを算出できる。
【0033】
そして、この構成によって、船体100の旋回時に必要な情報を充実させることができる。
【0034】
上述の説明では、旋回中心位置TCおよび転心位置RCを算出するための各処理を、それぞれ個別の機能部で実行する態様を示した。しかしながら、重心位置PGwおよび重心速度VGnの算出以降の各処理は、プログラム化して記憶部等に記憶しており、コンピュータ等の演算処理装置で当該プログラムを実行することで、実現してもよい。この場合、演算処理装置は、図3に示すフローチャートのステップS103以降の処理を実行すればよい。図3は、本発明の第1の実施形態に係る移動体情報算出方法を示すフローチャートである。なお、以下では、各ステップの具体的な処理は、上述しているので、詳細な説明は省略する。
【0035】
まず、複数の複合センサは、当該センサの位置Pwおよび速度Vnを計測する(S101)。また、複数の複合センサは、船体100の姿勢AAおよび角速度ωbを計測する(S102)。
【0036】
演算処理装置は、位置Pw、速度Vn、角速度ωbを用いて、重心位置PGwと重心速度VGnを算出する(S103)。
【0037】
演算処理装置は、重心速度VGnと角速度ωbを用いて、旋回半径ベクトルRbを算出する(S104)。
【0038】
演算処理装置は、旋回半径ベクトルRbと重心位置PGwとを用いて、旋回中心位置TCを算出し、旋回半径ベクトルRbの一成分旋回半径ベクトルRb1と重心位置PGwとを用いて、転心位置RCを算出する(S105)。
【0039】
なお、上述の説明では、複合センサを3個用いる態様を示したが、複合センサは1個であってもよい。この場合、重心情報算出部50は、重心位置PGwと重心速度VGnを次に示すように算出すればよい。
【0040】
重心情報算出部50は、船体100の設計形状等から重心センサ間ベクトルDbを取得する。重心センサ間ベクトルDbとは、重心位置PGwを基準とした複合センサの位置を表すベクトルである。重心センサ間ベクトルDbは、移動体座標系で表される。
【0041】
重心情報算出部50は、位置センサの計測した位置PGと、重心センサ間ベクトルDbと、次式とを用いて、重心位置PGwを算出する。
【0042】
Pw=PGw+C ・C ・Db -(式4)
また、重心情報算出部50は、速度センサが計測した速度Vnと、姿勢センサが計測した角速度ωbと、重心センサ間ベクトルDbと、次式とを用いて、重心速度VGnを算出する。
【0043】
Vn=VGn+C ・(ωb×Db) -(式5)
このように、複合センサが1個、すなわち、位置センサ、速度センサ、および、姿勢センサがそれぞれ1個であっても、重心位置PGwと重心速度VGnとは、算出可能である。そして、これにより、旋回中心位置TCと転心位置RCとは、算出可能である。
【0044】
また、上述の説明では、旋回中心位置TCと転心位置RCとを測地座標系で算出する態様を示した。しかしながら、旋回中心位置TCと転心位置RCとを移動体座標系で算出してもよい。この場合、重心位置PGwを基準点(0,0,0)とすれば、旋回中心位置TCbは、次式から算出される。
【0045】
TCb=Rb -(式6)
また、転心位置RCは、次式から算出される。
【0046】
RC=Rb1 -(式7)
このように、旋回中心位置TCおよび転心位置RCは、移動体座標系でも算出可能である。
【0047】
なお、上述の説明では、旋回中心位置TCおよび転心位置RCは、将来の1時刻に算出するだけでなく、複数時刻に対して算出することができる。例えば、算出した転心位置RCを新たな重心位置PGwとして、さらに将来の転心位置RCを算出することができる。
【0048】
次に、本発明の第2の実施形態に係る移動情報算出装置について、図を参照して説明する。図4は、本発明の第2の実施形態に係る移動情報算出装置の機能ブロック図である。図5は、本発明の第2の実施形態に係る表示画像の第1例を示す図である。図6は、本発明の第2の実施形態に係る表示画像の第2例を示す図である。
【0049】
図4に示すように、第2の実施形態に係る移動情報算出装置10Aは、第1の実施形態に係る移動情報算出装置10に対して、航跡情報生成部80を追加した点で異なる。移動情報算出装置10Aの他の構成は、移動情報算出装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0050】
航跡情報生成部80には、旋回情報算出部60から転心位置RCが入力される。航跡情報生成部80は、船体100の長さ(船体長)、および、船体100の幅(船体幅)を記憶している。
【0051】
航跡情報生成部80は、転心位置RC、船体長、および、船体幅を用いて、危険区域HA、および、予測危険区域HAEを算出する。具体的には、航跡情報生成部80は、転心位置RCを中心とし、船首または船尾のうちで転心位置RCから遠い側の位置(前進の場合は船尾)と転心位置RCとの間の距離を半径する円を算出し、当該円を危険区域HAとする。この際、航跡情報生成部80は、船体幅を加味して、幅を有する船体100の回転形状として、危険区域HAの形状を算出するとよりよい。
【0052】
また、航跡情報生成部80は、将来の複数時刻の転心位置RCから、これら複数時刻の危険区域HAを算出する。航跡情報生成部80は、複数時刻の危険区域HAから予測危険区域HAEを算出する。具体的には、航跡情報生成部80は、船体100の右舷側における複数時刻の危険区域HAを結ぶ曲線と、船体100の左舷側における複数時刻の危険区域HAを結ぶ曲線と、を算出する。航跡情報生成部80は、右舷側の曲線と左舷側の曲線とによって挟まれる領域を、予測危険区域HAEとして算出する。
【0053】
航跡情報生成部80は、船体100の現在の重心位置PGw、転心位置RC、危険区域HA、および、予測危険区域HAEを含む図5に示すような表示画像を生成し、表示器70に出力する。この際、航跡情報生成部80は、図5に示すように、船体100を示すマーク、船体100の予測位置マーク100ES等を表示してもよい。さらに、航跡情報生成部80は、過去の船体位置を表示してもよい。
【0054】
このような表示を行うことによって、操舵者は、船体100の旋回時の危険区域HA、予測危険区域HAE等の旋回時に留意すべき情報を、容易に把握できる。
【0055】
また、航跡情報生成部80は、図6に示すような表示画像を生成してもよい。航跡情報生成部80には、旋回情報算出部60から転心位置RC、旋回中心位置TC、および、旋回半径ベクトルRbが入力される。航跡情報生成部80は、転心位置RC、旋回中心位置TC、および、旋回半径ベクトルRbを含む図6に示すような表示画像を生成し、表示器70に出力する。この際、航跡情報生成部80は、旋回中心位置TC、および、旋回半径ベクトルRbから、予測される旋回円CCを算出し、図6に示すように表示画像に含むとよい。さらに、航跡情報生成部80は、図6に示すように、船体100の予測位置マーク100ES、および、過去の船体位置マーク100BCを表示してもよい。
【0056】
このような表示を行うことによっても、操舵者は、旋回時に留意すべき情報を、容易に把握できる。
【0057】
なお、速度は、位置センサで得られる位置の時間変化によって算出すること可能である。この場合、速度センサは、省略することができる。そして、この場合、速度算出部の機能は、例えば、位置センサまたは重心情報算出部50に持たせればよい。
【符号の説明】
【0058】
10、10A:移動情報算出装置
20:位置算出部
30:速度算出部
40:姿勢算出部
50:重心情報算出部
60:旋回情報算出部
70:表示器
80:航跡情報生成部
100:船体
100BC:船体位置マーク
100ES:予測位置マーク
101、102、103:複合センサ
AA:姿勢
CC:旋回円
COG:対地船速
Db:重心センサ間ベクトル
HA:危険区域
HAE:予測危険区域
PG:位置
PGw:重心位置
PVn:重心速度
Pw:位置
Rb:旋回半径ベクトル
Rb1:一成分旋回半径ベクトル
RC:転心位置
TC:旋回中心位置
TCb:旋回中心位置
VGn:重心速度
Vn:速度
【用語】
【0059】
必ずしも全ての目的または効果・利点が、本明細書中に記載される任意の特定の実施形態に則って達成され得るわけではない。従って、例えば当業者であれば、特定の実施形態は、本明細書中で教示または示唆されるような他の目的または効果・利点を必ずしも達成することなく、本明細書中で教示されるような1つまたは複数の効果・利点を達成または最適化するように動作するように構成され得ることを想到するであろう。
【0060】
本明細書中に記載される全ての処理は、1つまたは複数のコンピュータまたはプロセッサを含むコンピューティングシステムによって実行されるソフトウェアコードモジュールにより具現化され、完全に自動化され得る。コードモジュールは、任意のタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体または他のコンピュータ記憶装置に記憶することができる。一部または全ての方法は、専用のコンピュータハードウェアで具現化され得る。
【0061】
本明細書中に記載されるもの以外でも、多くの他の変形例があることは、本開示から明らかである。例えば、実施形態に応じて、本明細書中に記載されるアルゴリズムのいずれかの特定の動作、イベント、または機能は、異なるシーケンスで実行することができ、追加、併合、または完全に除外することができる (例えば、記述された全ての行為または事象がアルゴリズムの実行に必要というわけではない)。さらに、特定の実施形態では、動作またはイベントは、例えば、マルチスレッド処理、割り込み処理、または複数のプロセッサまたはプロセッサコアを介して、または他の並列アーキテクチャ上で、逐次ではなく、並列に実行することができる。さらに、異なるタスクまたはプロセスは、一緒に機能し得る異なるマシンおよび/またはコンピューティングシステムによっても実行され得る。
【0062】
本明細書中に開示された実施形態に関連して説明された様々な例示的論理ブロックおよびモジュールは、プロセッサなどのマシンによって実施または実行することができる。プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、代替的に、プロセッサは、コントローラ、マイクロコントローラ、またはステートマシン、またはそれらの組み合わせなどであってもよい。プロセッサは、コンピュータ実行可能命令を処理するように構成された電気回路を含むことができる。別の実施形態では、プロセッサは、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはコンピュータ実行可能命令を処理することなく論理演算を実行する他のプログラマブルデバイスを含む。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組み合わせ、例えば、デジタル信号プロセッサ(デジタル信号処理装置)とマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組み合わせた1つ以上のマイクロプロセッサ、または任意の他のそのような構成として実装することができる。本明細書中では、主にデジタル技術に関して説明するが、プロセッサは、主にアナログ素子を含むこともできる。例えば、本明細書中に記載される信号処理アルゴリズムの一部または全部は、アナログ回路またはアナログとデジタルの混合回路により実装することができる。コンピューティング環境は、マイクロプロセッサ、メインフレームコンピュータ、デジタル信号プロセッサ、ポータブルコンピューティングデバイス、デバイスコントローラ、または装置内の計算エンジンに基づくコンピュータシステムを含むが、これらに限定されない任意のタイプのコンピュータシステムを含むことができる。
【0063】
特に明記しない限り、「できる」「できた」「だろう」または「可能性がある」などの条件付き言語は、特定の実施形態が特定の特徴、要素および/またはステップを含むが、他の実施形態は含まないことを伝達するために一般に使用される文脈内での意味で理解される。従って、このような条件付き言語は、一般に、特徴、要素および/またはステップが1つ以上の実施形態に必要とされる任意の方法であること、または1つ以上の実施形態が、これらの特徴、要素および/またはステップが任意の特定の実施形態に含まれるか、または実行されるかどうかを決定するための論理を必然的に含むことを意味するという訳ではない。
【0064】
語句「X、Y、Zの少なくとも1つ」のような選言的言語は、特に別段の記載がない限り、項目、用語等が X, Y, Z、のいずれか、又はそれらの任意の組み合わせであり得ることを示すために一般的に使用されている文脈で理解される(例: X、Y、Z)。従って、このような選言的言語は、一般的には、特定の実施形態がそれぞれ存在するXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ、またはZの少なくとも1つ、の各々を必要とすることを意味するものではない。
【0065】
本明細書中に記載されかつ/または添付の図面に示されたフロー図における任意のプロセス記述、要素またはブロックは、プロセスにおける特定の論理機能または要素を実装するための1つ以上の実行可能命令を含む、潜在的にモジュール、セグメント、またはコードの一部を表すものとして理解されるべきである。代替の実施形態は、本明細書中に記載された実施形態の範囲内に含まれ、ここでは、要素または機能は、当業者に理解されるように、関連する機能性に応じて、実質的に同時にまたは逆の順序で、図示または説明されたものから削除、順不同で実行され得る。
【0066】
特に明示されていない限り、「一つ」のような数詞は、一般的に、1つ以上の記述された項目を含むと解釈されるべきである。従って、「~するように設定された一つのデバイス」などの語句は、1つ以上の列挙されたデバイスを含むことを意図している。このような1つまたは複数の列挙されたデバイスは、記載された引用を実行するように集合的に構成することもできる。例えば、「以下のA、BおよびCを実行するように構成されたプロセッサ」は、Aを実行するように構成された第1のプロセッサと、BおよびCを実行するように構成された第2のプロセッサとを含むことができる。加えて、導入された実施例の具体的な数の列挙が明示的に列挙されたとしても、当業者は、このような列挙が典型的には少なくとも列挙された数(例えば、他の修飾語を用いない「2つの列挙と」の単なる列挙は、通常、少なくとも2つの列挙、または2つ以上の列挙を意味する)を意味すると解釈されるべきである。
【0067】
一般に、本明細書中で使用される用語は、一般に、「非限定」用語(例えば、「~を含む」という用語は「それだけでなく、少なくとも~を含む」と解釈すべきであり、「~を持つ」という用語は「少なくとも~を持っている」と解釈すべきであり、「含む」という用語は「以下を含むが、これらに限定されない。」などと解釈すべきである。) を意図していると、当業者には判断される。
【0068】
説明の目的のために、本明細書中で使用される「水平」という用語は、その方向に関係なく、説明されるシステムが使用される領域の床の平面または表面に平行な平面、または説明される方法が実施される平面として定義される。「床」という用語は、「地面」または「水面」という用語と置き換えることができる。「垂直/鉛直」という用語は、定義された水平線に垂直/鉛直な方向を指します。「上側」「下側」「下」「上」「側面」「より高く」「より低く」「上の方に」「~を越えて」「下の」などの用語は水平面に対して定義されている。
【0069】
本明細書中で使用される用語の「付着する」、「接続する」、「対になる」及び他の関連用語は、別段の注記がない限り、取り外し可能、移動可能、固定、調節可能、及び/または、取り外し可能な接続または連結を含むと解釈されるべきである。接続/連結は、直接接続及び/または説明した2つの構成要素間の中間構造を有する接続を含む。
【0070】
特に明示されていない限り、本明細書中で使用される、「およそ」、「約」、および「実質的に」のような用語が先行する数は、列挙された数を含み、また、さらに所望の機能を実行するか、または所望の結果を達成する、記載された量に近い量を表す。例えば、「およそ」、「約」及び「実質的に」とは、特に明示されていない限り、記載された数値の10%未満の値をいう。本明細書中で使用されているように、「およそ」、「約」、および「実質的に」などの用語が先行して開示されている実施形態の特徴は、さらに所望の機能を実行するか、またはその特徴について所望の結果を達成するいくつかの可変性を有する特徴を表す。
【0071】
上述した実施形態には、多くの変形例および修正例を加えることができ、それらの要素は、他の許容可能な例の中にあるものとして理解されるべきである。そのような全ての修正および変形は、本開示の範囲内に含まれることを意図し、以下の特許請求の範囲によって保護される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6