IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウエスト ファーマスーティカル サービシーズ インコーポレイテッドの特許一覧

特許7023988埋込み電子機器を有するエラストマーアーティクルおよびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】埋込み電子機器を有するエラストマーアーティクルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/172 20060101AFI20220215BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
A61M5/172
A61M5/315 500
A61M5/315 510
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019566865
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 US2018036194
(87)【国際公開番号】W WO2018226782
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2020-01-31
(31)【優先権主張番号】62/515,775
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517229774
【氏名又は名称】ウエスト ファーマスーティカル サービシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドレイク ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ダウリング パトリック
(72)【発明者】
【氏名】サリバン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】クリザン ジェイソン
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0259913(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0233075(US,A1)
【文献】特表2002-518108(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0195182(US,A1)
【文献】特表2013-505433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/172
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が充填される容器のアセンブリであって、
第1端および対向する第2端を有し、前記第1端は、その中に埋め込まれた少なくとも一つの電子デバイスと、前記電子デバイスに接続された、第1の複数の回転可能な電気接点と、第1係合部とを有する、ピストンと、
第2係合部および第2の複数の回転可能な電気接点を有し、前記第2係合部は、前記ピストンの前記第1係合部に係合するように構成され、前記第2の複数の回転可能な電気接点は、前記ピストンの前記第1の複数の回転可能な電気接点に係合するよう構成された、ピストンロッドとを備え、アセンブルされた位置において、前記ピストンの前記第1の複数の回転可能な電気接点が、前記ピストンロッドの前記第2の複数の回転可能な電気接点と電気的に連通し、
前記第1および第2の複数の回転可能な電気接点は、円錐面または半球面上の環状の部材からなる群から選ばれたアセンブリ。
【請求項2】
前記ピストンロッドは、電池と、前記電池から前記ピストンの前記第1端まで延びている複数のワイヤとをさらに備えた
請求項1記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記第1および第2係合部は、ねじ付きの機械的インタロックにより互いに固定されるように構成された、対応するねじである
請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記第1係合部は、環状凹部であり、前記第2係合部は、前記環状凹部に受容されるように構成された環状凸部である
請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記第1係合部は、複数の離間した凹部であり、前記第2係合部は、複数の離間した凸部であり、各凸部は、前記複数の凹部の対応する一つに受容されるように構成されている 請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記容器はカートリッジ、バイアルおよびシリンジのうちの一つである
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
アクチュエータと、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアセンブリとを備えた医療機器であって、前記アセンブリは、電池と、プロセッサと、送信機とをさらに備え、前記アセンブリは、前記少なくとも一つの電子デバイスからの信号を感知し、前記医療機器を制御するためのフィードバックとして前記信号を処理するか、または外部デバイスに信号を送信するように構成され、前記外部デバイスは、前記信号を監視するか、または前記信号を受信し、前記信号を処理したのち、それに応じて前記アクチュエータの動きを調整する
医療機器。
【請求項8】
前記ピストンは、熱硬化性エラストマー、または熱可塑性エラストマーで形成されている
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記ピストンは、ブチルエラストマー、またはハロブチルエラストマーで形成されている
請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項10】
注射可能な薬品の投与を調整するシステムであって、前記システムは、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の、薬剤が充填される容器のアセンブリを備え、
前記アセンブリは、
無線通信ユニットと、
前記注射可能な薬品の管理された投与と関連づけられたデータを受信し、前記管理された投与が一つ以上の予め定められたパラメータを満たすかの評価を行うように構成されたコントローラと
をさらに備えた、システム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記注射可能な薬品の後続の投与が前記評価に基づいて管理されるよう調整するように構成されている
請求項10に記載の、システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の表示】
【0001】
本願は、2017年6月6日付けで出願された米国仮特許出願第62/515775号の優先権を主張し、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、広くは、電子機器が中に埋め込まれたエラストマーアーティクルに係り、より詳細には、一つ以上の埋込み電子デバイスを有する成形されたエラストマーアーティクルに関する。
【0003】
投薬装置において、当該装置の動作状態(例えば、使用前および/または投与完了といった諸条件)、識別情報、その他の諸条件(例えば、周囲の温度)等を通信可能とし、これにより患者のモニタリングまたは同様の目的を可能とすることが望ましい。そのような装置は、「スマート」デバイスとして知られている。
【0004】
従来の「スマート」デバイスは、少なくとも二つの異なる材料よりなる複数のパーツを有する傾向がある。例えば、ある公知のシリンジプランジャ装置は、二つのピースで形成されている。一方のピースは、エラストマー材料で形成され、他方のピースは、異なるプラスチックまたはエラストマー材料で形成され、この二つのプランジャピースの間の界面に電子回路が設けられている。他の従来の「スマート」デバイスは、プランジャ内に、センサ等の従来の電子部品を有する。この電子部品は、電子部品が耐えうる低温で形成可能な第1のエラストマー材料で形成された第1の部品内にカプセル化され、その後、形成された第1の部品が、第2のエラストマー材料内にカプセル化されて、プランジャを形成する。つまり、先行技術のスマートプランジャは、三ピースのプランジャである。
【0005】
本発明は、新規で改良された、薬剤収容用の容器のための、埋込み電子機器を有するエラストマーアーティクルを提供する。本発明はまた、電子機器が、どのように位置決めされ、電子機器の要求事項に対してどのようにより良く対処しうるかについての、より強い制御を可能にする。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、カートリッジ、シリンジまたはバイアル等の医療装置または容器の、ピストン、プランジャ、クロージャまたはストッパ等の幾つかの部品のアセンブリに係る。このアセンブリは、成形されたエラストマー本体と、部品のエラストマー材料内に埋め込まれ、完全にカプセル化された少なくとも一つの電子機器とを含む。
【0007】
本発明の一つの好ましい実施の形態は、薬剤が充填される容器のアセンブリを意図している。このアセンブリは、ピストンと、ピストンロッドとを備えている。ピストンは、第1端および対向する第2端を有し、第1端は、その中に埋め込まれた少なくとも一つの電子デバイスと、電子デバイスに接続された、第1の複数の回転可能な電気接点と、第1係合部とを有する。ピストンロッドは、第2係合部および第2の複数の回転可能な電気接点を有し、第2係合部は、ピストンの第1係合部に係合するように構成され、第2の複数の回転可能な電気接点は、ピストンの第1の複数の回転可能な電気接点に係合するよう構成されている。アセンブルされた位置において、ピストンの第1の複数の回転可能な電気接点が、ピストンロッドの第2の複数の回転可能な電気接点と電気的に連通する。第1および第2の複数の回転可能な電気接点は、円錐面または半球面上の環状の部材からなる群から選ばれている。
【0009】
本発明のもう一つの好ましい実施の形態は、アクチュエータと、上記本発明の一つの好ましい実施の形態によるアセンブリとを備えた医療機器に関する。このアセンブリは、電池と、プロセッサと、送信機とをさらに備えている。アセンブリは、少なくとも一つの電子デバイスからの信号を感知し、医療機器を制御するためのフィードバックとして信号を処理するか、または外部デバイスに信号を送信するように構成されている。外部デバイスは、信号を監視するか、または信号を受信し、信号を処理したのち、それに応じてアクチュエータの動きを調整する。
【0010】
本発明のもう一つの好ましい実施の形態は、注射可能な薬品の投与を調整するシステムに関する。このシステムは、上記本発明の一つの好ましい実施の形態の、薬剤が充填される容器のアセンブリを備えている。アセンブリは、無線通信ユニットと、コントローラとをさらに備えている。コントローラは、注射可能な薬品の管理された投与と関連づけられたデータを受信し、管理された投与が一つ以上の予め定められたパラメータを満たすかの評価を行うように構成されている。
【0012】
本発明の有利な改良は、従属項において特定されている。これらの改良は、単独で、あるいは互いに任意に組み合わせて実施されうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以上の概要は、本発明の好ましい実施の形態の、以下の詳細な説明と同じく、添付図面と併せて読むと、よりよく理解されるであろう。本発明を例示する目的のため、図面には、現在好ましい実施の形態が示されている。しかしながら、本発明は、図示された正確な配置および道具には限定されないものと理解されるべきである。図面において:
図1A図1Aは、本発明の好ましい実施の形態による、埋め込み電子デバイスを有する、ピストンおよびピストンロッドのアセンブリの側立面図である。
図1B図1Bは、本発明の好ましい実施の形態による、埋め込み電子デバイスを有する、ピストンおよびピストンロッドのアセンブリの側立面図である。
図2A図2Aは、本発明の他の好ましい実施の形態による、ピストンおよびピストンロッドの様々な嵌合構造を示す。
図2B図2Bは、本発明の他の好ましい実施の形態による、ピストンおよびピストンロッドの様々な嵌合構造を示す。
図2C図2Cは、本発明の他の好ましい実施の形態による、ピストンおよびピストンロッドの様々な嵌合構造を示す。
図3A図3Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による、埋め込み電子デバイスを有する、ピストンおよびピストンロッドのアセンブリの側立面図である。
図3B図3Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による、埋め込み電子デバイスを有する、ピストンおよびピストンロッドのアセンブリの側立面図である。
図4A図4Aは、本発明の他の好ましい実施の形態による、様々なピストン構造を示す。
図4B図4Bは、本発明の他の好ましい実施の形態による、様々なピストン構造を示す。
図5図5は、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による、埋め込み電子デバイスを有する、ピストンおよびピストンロッドのアセンブリの斜視図である。
図6図6は、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による、埋め込み電子デバイスと環状接点とを有する、ピストンおよびピストンロッドのアセンブリを示す。
図7図7は、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による、埋め込み電子デバイスとピンおよびピンレセプタクルの形の接点とを有する、ピストンおよびピストンロッドのアセンブリを示す。
図8図8は、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による、埋め込み電子デバイスとピンおよびピンレセプタクルの形の接点とを有する、ピストンおよびピストンロッドのアセンブリを示す。
図9図9は、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による、埋め込み電子デバイスとUSBポートとを有する、ピストンおよびピストンロッドのアセンブリの上平面図である。
図10A図10Aは、本発明の好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図10B図10Bは、本発明の好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図11A図11Aは、本発明の他の好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図11B図11Bは、本発明の他の好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図11C図11Cは、本発明の他の好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図11D図11Dは、本発明の他の好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図11E図11Eは、本発明の他の好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図12A図12Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図12B図12Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図12C図12Cは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図12D図12Dは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図12E図12Eは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図12F図12Fは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図12G図12Gは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図12H図12Hは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図13A図13Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図13B図13Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図13C図13Cは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図14A図14Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図14B図14Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図14C図14Cは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図15図15は、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による、電子デバイスが中に埋め込まれた医療部品を示す。
図16図16は、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による医療部品の製造方法を概略的に示す。
図17図17は、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による医療部品の製造方法を概略的に示す。
図18A図18Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図18B図18Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図18C図18Cは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図19A図19Aは、本発明のさらに好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図19B図19Bは、本発明のさらに好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図19C図19Cは、本発明のさらに好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図20A図20Aは、本発明のさらに好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図20B図20Bは、本発明のさらに好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図21A図21Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図21B図21Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
図22A図22Aは、図21A図21Bおよび図23図25に示した方法に用いられる電子デバイスを備えたプッシュロッドまたは針の、異なる構成を示す。
図22B図22Bは、図21A図21Bおよび図23図25に示した方法に用いられる電子デバイスを備えたプッシュロッドまたは針の、異なる構成を示す。
図22C図22Cは、図21A図21Bおよび図23図25に示した方法に用いられる電子デバイスを備えたプッシュロッドまたは針の、異なる構成を示す。
図23図23は、本発明の好ましい実施の形態による図22A図22Cに示したプッシュロッドまたは針を用いて医療部品に電子デバイスを埋め込む方法を概略的に示す。
図24図24は、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法の概略である。
図25図25は、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法の概略である。
図26A図26Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による様々な構成の切欠きを有する医療部品を示す。
図26B図26Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による様々な構成の切欠きを有する医療部品を示す。
図26C】図26Cは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による様々な構成の切欠きを有する医療部品を示す。
図27A図27Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図27B図27Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図27C図27Cは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図28A図28Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図28B図28Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図28C図28Cは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図29A図29Aは、図28A図28Cに示した方法により製造された部品の一部の断面図である。
図29B図29Bは、図28A図28Cに示した方法により製造された部品の一部の断面図である。
図30A図30Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図30B図30Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図30C図30Cは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図30D図30Dは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図31A図31Aは、図30A図30Dに示した方法により製造されたさまざまな医療部品を示す。
図31B図31Bは、図30A図30Dに示した方法により製造されたさまざまな医療部品を示す。
図31C図31Cは、図30A図30Dに示した方法により製造されたさまざまな医療部品を示す。
図31D図31Dは、図30A図30Dに示した方法により製造されたさまざまな医療部品を示す。
図32A図32Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
図32B図32Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ある用語法が、以下の説明において用いられているが、それは便宜のためだけで、限定するものではない。「近位」「遠位」「上方」「下方」「底」および「トップ」という単語は、言及されている図面における方向を示す。「内方」および「外方」という単語は、それぞれ、本発明による装置、およびその指定されたパーツの、幾何学的中心に向かう、およびそこから離れる方向をいう。本明細書において特に記載されない限り、「a」「an」および「the」という単語は、一つの要素に限られるのではなく、「少なくとも一つ」を意味するものとして読まれるべきである。この用語法は、上記に記載の単語、その派生語および同様の重要性をもつ単語を含む。
【0015】
詳細な図面を参照すると、図1A図5は、電子デバイスが中に埋め込まれた医療装置の部品の、好ましい実施の形態を表している。図面において、同じ符号は幾つかの図を通じて同じ要素を示している。より詳細には、図1A図5は、第1部品10、例えばピストン10と、第2部品12、例えばピストンロッド12とを有するアセンブリ16の様々な実施の形態を示す。当業者であれば、ピストンという用語は、プランジャ、ストッパ、クロージャ等の用語と、本明細書において同義に用いられてよいことを理解するであろう。
【0016】
アセンブリ16は、いかなる公知の医療装置にも、より詳細には、物質で充填可能なキャビティまたはチャンバを有するいかなる容器にも、利用されてもよいこともまた、理解されるであろう。例えば、容器は、シリンジ、カートリッジ、バイアル等であってもよいが、それらに限定されない。より詳細には、医療装置は、カートリッジ、針を有するシリンジ、針無しシリンジ、吸入器、固体製剤ディスペンサ、ペン型注射器、自己注射器、携帯式注射器、バイアル等であってもよい。
【0017】
本明細書に記載された発明は、薬品の収容または薬品との接触のための容器の、二つのパーツのアセンブリであればどのようなものにも適用可能であってよいことが理解されるであろう。例えば、カートリッジピストン(プランジャ、ストッパもしくはクロージャ)、シリンジピストン(プランジャ、ストッパもしくはクロージャ)、バイアルピストン(プランジャ、ストッパもしくはクロージャ)、シール、ガスケット、予め充填されたカートリッジの部品、予め充填されたシリンジの部品、スリーブまたは容器ストッパ、フラッシュバックバルブ、キャップ、ライナ、ワッシャ、または薬学的に純粋な材料または薬品と接触しうる他の任意の部品/装置。
【0018】
好ましい一実施の形態において、アセンブリ16が併用されうる薬学的薬品は、インスリン(またはその任意の誘導体、製剤または類似体)である。例えば、本明細書において、用語「インスリン」とは、インスリン、インスリン類似体、インスリン誘導体またはそれらの混合物を意味し、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体もしくは誘導体を含む。インスリン類似体の例は、限定されるものではないが、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリンであって、B28位のプロリンがAsp,Lys,Leu,ValまたはAlaで置換されたものであって、B29位のLysがProで置換されていてもよい;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンまたはDes(B30)ヒトインスリンを含む。インスリン誘導体の例は、限定されるものではないが、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイル ヒトインスリン;B29-Nパルミトイル ヒトインスリン;B28-N-ミリストイル LysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N(N-パルミトイル-Y-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N(N-リトコリル-Y-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(w-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(w-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンを含む。
【0019】
一部の糖尿病患者については、特に、食事、時間、処方に基づいて投薬量が頻繁に変化し、計算される必要がある。したがって、患者は、速効型(食事時)インスリンや長時間作用型(一日一回)インスリンなど、一日に複数回のインスリン注射を行わなければならないこともありうる。本発明のスマートデバイスは、投与量の計算、投与量の追跡(すなわち、どの薬剤、量および時間)、および過剰/過少投与の事故の防止を容易にする。よって、インスリン治療の統合を改善することは、糖尿病が患者に与える影響の最小化に明らかに役立ちうるとともに、ケア担当者が治療をより適切に管理するためのフィードバックを支援しうる。このような投与量計算/追跡という特徴はまた、例えば、限定されるものではないが、多発性硬化症および関節炎など、多くの他のタイプの薬学的薬品および多くの他のタイプの疾患または条件にも有用である。本発明のスマートデバイスは、例えば輸送条件のモニタリング(例えば、薬剤の有効性のためにコールドチェーンおよび/または暗所保存が維持されたことを確実にする)のための生物学的薬物/酵素に特に適している。なぜなら、これらのタイプの薬物は、多くの他の薬物よりも有意に安定性が低く、従って、一貫性および患者の安全性の確保のため「スマート」テクノロジーの恩恵を受けるであろうから。しかしながら、アセンブリ16は、公知または未だ開発中の薬学的薬品とともに使用可能であることは理解されるであろう。
【0020】
ピストン10は、好ましくはポリマー材料、より好ましくはエラストマー材料で作られている。好ましい一実施の形態では、エラストマー材料は、熱硬化性エラストマーまたは熱可塑性エラストマー(TPE)である。例えば、エラストマークロージャに使用されるエラストマー材料は、例えば、合成ゴムまたは天然ゴムであり、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム(例えば、ブロモブチルゴム)、エチレンプロピレンテルポリマー、シリコンゴム、これらの組合せ等があげられる。好ましくは、エラストマー材料は、ブチルまたはハロブチルエラストマーである。ピストン10は、任意の公知の従来のシリンジピストンとして形成されてもよい。
【0021】
好ましくは、ピストン10は、概ね円筒形の本体を有し、この本体は、開放端として形成された第1端22と、閉塞されたベース壁として形成された、対向する第2端24と、それらの間に延びる筒状の側壁26とを有する。閉塞されたベース壁24、開放端22、および筒状の側壁26は、ピストン10の内部28を規定する。内部28は、好ましくは、内側円筒部材30を有する。内側円筒部材30は、ピストンロッド12と係合または嵌合するように構成されている。一実施の形態では、図1A図1Bに示したように、内側円筒部材30は、凹部34を囲む筒状の側壁32として形成されている。
【0022】
ピストンロッド12は、第1端18と、対向する第2端20とを有する。第1端18は、ピストンロッド12の遠位の先端を規定する。ピストンロッド12の遠位の先端は、ピストン10と、より詳細にはピストン10の内側円筒部材30と、係合または嵌合するよう構成されている。ピストンロッド12の第2端20は、周辺フランジ21を有し、または、周辺フランジ21として形成されている。ピストンロッド12は、ピストン10のそれと同じポリマー材料により形成されていてもよく、あるいは、異なるポリマー材料により形成されていてもよい。あるいは、ピストンロッド12の一部のみ(例えば、第1端18)が、ピストン10のそれと同じポリマー材料により形成されていてもよい。
【0023】
ピストンロッド12の第1端18は、その中に埋め込まれた、またはそこに取り付けられた電子デバイス14を有している。電子デバイス14は、任意の公知の方法により、ピストンロッド12の第1端18に埋め込まれ、または取り付けられている。中に埋め込まれるとともにエラストマー材料により完全にカプセル化された電子デバイス14を有する、エラストマー成形部品の形成方法の幾つかの例が、本明細書に開示されている。
【0024】
電子デバイス14は、任意の公知の電子回路系、電子コーディング、マイクロプロセッサ、センサ等を有していてもよい。例えば、電子デバイス14は、集積回路(または電子チップまたはマイクロチップ)、無線周波数識別(RFID)チップ/コイル/アンテナおよび補助部品、近距離通信(NFC)チップ、EEPROMチップ、固体メモリ、筋ワイヤ、圧電センサまたはアクチュエータ、熱センサ(例えば、サーミスタまたはPTCサーミスタ)、圧力センサ、レベルセンサ、線量センサ、機械センサ、電磁センサ、光センサ、空気圧センサ、液圧センサ、感光センサ、フローセンサ、電源(例えば、RF誘導コイル、小型コインバッテリ、スーパーキャパシタ)、触覚フィードバック装置(例えば、LEDまたは圧電装置)などの一つ以上を有していてもよい。電子デバイス14は、トランスデューサおよび通信ユニットをさらに備えていてもよく、好ましくはワイヤレス通信ユニット(例えば、ブルートゥース(登録商標)またはブルートゥースローエネルギー)を備え、保存されたデータの内容を要求に応じて検索できるようになっていてもよい。例えば、電子デバイス14は、対応する読み取り装置との無線方式の通信を可能とするRFID素子であってもよい。これにより、偽造された医療部品を容易に検出することができる。
【0025】
図1A図1Bを参照すると、一実施の形態では、電子機器14は、ピストンロッド12の第1端18の本体の内部に埋め込まれ、第1端18の外面18aは、外側ねじ19を有する。また、ピストン10の内側円筒部材30の筒状の側壁32の内面は、外側ねじ19と嵌合するように構成された内側ねじ(図示せず)を有する。このように、中に埋め込まれた電子デバイス14を有するピストンロッド12の第1端18は、ピストン10の凹部34内にねじにより受容されてもよく、それにより、埋め込み電子デバイス14を備えたピストン/ピストンロッドのアセンブリ16を形成してもよい。
【0026】
ピストンロッド12の第1端18およびピストン10は、ねじ付きの機械的インタロックではなく、任意の公知の機械的インタロック構成により互いに係合してもよい。例えば、図2A図2Cを参照すると、ピストンロッド12とピストン10を互いに連結してアセンブリ16を形成するために利用しうる機械的インタロックの様々な例示的な実施の形態が示されている。特に、図2Aは、ピストンロッド12の第1端18が、環状凸部36を有する様々な実施の形態を示す。環状凸部36は、ピストンロッド12から放射状に上方に突出し、ピストン10内に形成された、対応する環状凹部38と係合するように構成されている。図2Bは、ピストンロッド12の第1端18が、複数の離間した凸部36を有する様々な実施の形態を示す。凸部36は、ピストンロッド12から放射状に上方に突出し、ピストン10に形成された、対応する離間した幾つかの凹部または幾つかのくぼみ38と係合するように構成されている。図2Cは、ピストンロッド12の第1端18が、複数の先細り凸部36を有する様々な実施の形態を示す。先細り凸部36は、ピストンロッド12から放射状に上方に突出し、ピストン10に形成された、対応する離間した幾つかの凹部または幾つかの切欠き38と(例えば、ドベテール継手で)係合するように構成されている。本明細書に開示された幾つかの実施の形態のいずれにおいても、電子デバイス14は、ピストンロッド12またはピストン10に埋め込まれてもよく、あるいは、それらに取り付けられてもよいことが理解されるであろう。
【0027】
図3A図3Bを参照すると、もう一つの実施の形態では、ピストンロッド12およびピストン10は、図1A図1Bのものと基本的に同じに構成され、図1A図1Bおよび図2A図2Cに関して本明細書に開示されたどのような方法で互いに連結されたり、係合したりしてもよい。内側円筒部材30の凹部34は、上部横壁31により閉鎖されている。ピストン12の第1端18およびピストン10の横壁31は、一つ以上の対応する露出した電気接点40(図4Aにも示した)を有する。ピストンロッド12がピストン10と係合またはインタロックされるとき、電気接点40は互いに係合するが、一方、電子デバイス14はピストンロッド12内に埋め込まれたままである。以下のことが理解されるであろう。図3A図3Bの実施の形態は、内側円筒部材30の上部の閉鎖された壁31に形成された電気接点40を有するが、凹部34は、ピストンロッド12を受容するため開放されたままであってもよく、あるいは、電気接点40は、内側円筒部材30の下部の横壁31に形成されてもよく、これにより、ピストンロッド12の第1端18が凹部34内に受容されて内側円筒部材31の下部側壁31に接すると(図1A図1Bの構成のように)、電気的接続が得られるようにしてもよい。あるいは、図4Bに示したように、ピストン10の開放端22は、電気接点40を備えた横壁25を有する円筒状の本体23によって閉塞されてもよい。
【0028】
もう一つの実施の形態では、図5に示したように、ワイヤ42が、ピストンロッド12の本体を通って延びていてもよく、電池44は、遠隔の位置(すなわち、第2端20の近傍)に設けられていてもよく、これにより、電子デバイス14が、遠隔の電池44によって動力を供給されてもよい。例えば、電池44は、電子デバイス14がアクティブになるように電子デバイス14に通電してもよく、または、さらにモータに動力を供給するようにしてもよい。
【0029】
より詳細には、電気接点40は、電源およびデータ通信の両方を可能にしてもよい。このような直接的電気通信により、電力伝送および/またはデータ通信は、より安全かつ強固な方法で実施されうる。嵌合する接点40は、図6に示したように、互いに係合するように構成された放射状または環状の部材として形成されてもよい。このことは、また、ピストンロッド12およびピストン10のアライメントを達成しようとする際に生じる問題を軽減する(すなわち、特に、嵌合を補助するために円錐形、半球形、または他のジオメトリが使用される場合)。複数の回転可能な電子接点の使用は、必要なら、ピストンロッド12の回転の容易さと、ピストン10およびピストンロッド12のアセンブリの容易さとを可能にする。
【0030】
幾つかの電気接点40は、任意の公知の形成をとりうることが理解されるであろう。例えば、図7に示したように、ピストン10は、ピンの形の複数の接点40を有していてもよく、ピストンロッド12は、ピンリセプタクルの形の複数の嵌合する接点40を有していてもよい。あるいは、図8に示したように、ピストンロッド12は、ピンの形の複数の接点40を有していてもよく、ピストン10は、ピンリセプタクルの形の複数の嵌合する接点40を有していてもよい。他の幾つかの実施の形態では、図9に示したように、プラグまたはコネクタ46が設けられていてもよく、これにより、ピストン10とピストンロッド12との間の通信および電力伝送を可能にしてもよい。これらの実施の形態のいずれにおいても、任意の密封要素(例えば、Oリング)が、薬剤製品または接点40の保護のために(すなわち、気密封止を得ることにより)、用いられていてもよい。
【0031】
電気接点40および関連する配線42は、また、無線通信を不要とする。このことは、また、干渉の可能性を防ぎ、より低い損失を伴うより大きな電力伝送を可能とし、信号の改ざん/スプーフィングをより困難にする。例えば、無線送信を回避することは、患者のプライバシーの確保に役立ちうる。
【0032】
一実施の形態では、アセンブリは、電池44、プロセッサ、および送信器を有する。これにより、アセンブリは、信号を(例えば、電池により電力を供給されたセンサを介して)感知し、その信号をフィードバックとして処理して医療機器を制御する(例えば、投与率を増減する、投与を中止する、等)ように構成されているか、または、スマートフォンまたは他の外部機器に信号を送信するように構成されている。スマートフォンまたは他の外部機器は、その信号を監視、またはその信号を受信し、それを処理したのち、それに応じて医療機器のアクチュエータの動きを調整する。
【0033】
例えば、アセンブリは、コントローラを含んでいてもよく、コントローラは、注射可能な薬品の管理された投与と関連づけられたデータを受信し、管理された投与が一つ以上の予め定められたパラメータを満たすかの評価を行うように構成されている。コントローラは、また、注射可能な薬品の後続の投与が、この評価に基づいて管理されるように調整するように構成されていてもよい。より具体的には、コントローラは、注射可能な薬品の投与に関連付けられたデータを受信し、予め定められた時間および予め定められた日に投与が服用されたかの評価を行い、調整された投与および指示を送信して、評価に基づいて投与を管理するように構成されていてもよい。
【0034】
電気的接続は、本明細書に記載された電気接点40以外の機構によって実現されてもよいことが、当業者に理解されるであろう。例えば、電気的接続は、ピストン10およびピストンロッド12のうちの、USBポートを含むほうにより実現されてもよく、ピストン10およびピストンロッド12の他方は、対応するUSBコネクタを有する。あるいは、例えば、ピストン10およびピストンロッド12は、互いに嵌合するように構成された対応するらせん状のねじを備えていてもよく、それらの各々は、電気接点として形成されるか、または電気接点を有する。
【0035】
本明細書に記載された実施の形態のいずれかによれば、電子デバイスまたはパッケージ14は、センサ等のセンシング技術を組み込み、これにより、医療機器/部品自体または周辺環境の温度、医療機器内の圧力、アセンブリ16、より具体的には、ピストン10を横断する方向の差圧を測定/検出するようにしてもよい。差圧は、例えば、薬物の分解による容器内のガス発生、液体レベルまたはピストン位置のための容量、または感光性薬物のための光曝露によって生じうる。本明細書に記載された幾つかの実施の形態のいずれかによれば、電子デバイスまたはパッケージ14は、EEPROMまたはNFCチップに符号化された情報を識別するための電子機器などの追跡技術を組み込んでもよい。デバイス14は、製造番号または使用期限を含んでいてもよく、例えば、薬物が回収中であるか否かを判断するために追跡可能であってもよい。デバイス14はまた、アセンブリ16が、第三者のグレーマーケットの複製品または他の偽造品ではなく、公式製品であることを確認するために使用されてもよい。デバイス14はまた、例えば、RFIDチェックによって、アセンブリ16が、調剤される薬物のための適切な送達装置であることを確認するために使用されてもよい。デバイス14はまた、アセンブリ16からの薬物の分注を制御し、在庫レベルを自動的に更新するために使用されてもよい。
【0036】
本明細書に記載された幾つかの実施の形態のいずれかによれば、電子デバイスまたはパッケージ14はまた、測定技術を組み込んでもよい。測定技術は、例えば、使用中のピストンの位置および/または薬物の送達速度を測定または検出するため(例えば、ピストンの移動速度をモニタリングすることによって)、またはピストンが予め設定された用量点に達したときに関するフィードバックを提供するため(例えば、デバイス14を用いてアセンブリ16内の触覚フィードバックを駆動してもよい)のものである。ピストン10が交換可能な部品である場合、電子デバイス14を使用して、交換がいつになりそうか、または薬物曝露が制限されるべきかを判断してもよい。電子デバイス14はまた、異物混入を検出するために使用してもよい。例えば、デバイス14は、針によって穿刺された場合にその値が変化する抵抗性ホイルを有していてもよい。
【0037】
本明細書に記載された幾つかの実施の形態のいずれかによれば、電子デバイスまたはパッケージ14は、様々な他のタイプの技術を組み込んでもよい。例えば、デバイス14は、電子デバイス14に接続されたコイルの形状の筋ワイヤ(フレキシノールまたは形状記憶アクチュエータ配線)技術を組み込んでもよい。電流が筋ワイヤを流れると、筋ワイヤは収縮する。このような機能性を用いて、例えば、ピストン10を締めて/緩めて、動きやすくしたり、動きにくくしたりすることができる。デバイス14はまた、ピエゾ技術(例えば、限定されないが、圧電材料であるPVDFまたは圧電デバイス)を組み込んで、使用前にアセンブリ16に含まれる薬物を攪拌してもよい。電子デバイス14のもう一つの可能な用途としては、誘導加熱を作動させて、使用前に医療部品10に収容されている薬剤を加熱すること、または、改ざんまたは誤用アラームがトリガーされた場合、もしくは患者が使用期限後に薬剤を分注しようとしている場合に、薬物の意図的な劣化を起こすことである。電子デバイス12はまた、ピストン10と作動ロッドとの間の電気的接触を可能にして、ピストン電子機器に電源を供給し、医療機器に収容されている薬剤が正しいかどうかを確認し、日時をモニタリングすること等を可能にしてもよい。
【0038】
本発明はまた、電子デバイス14のほかに、他の材料をアセンブリ16内にカプセル化するために実施されてもよい。例えば、ピストン10および/またはピストンロッド12は、電子デバイス14に代えて、その中に埋め込まれた圧縮不可能な材料を有し、これにより、部品10,12の機械的性質を変えるようにしてもよい。あるいは、ピストン10および/またはピストンロッド12は、その中に埋め込まれた高密度な材料を有し、これにより、例えば重力または加速により誘起される部品10,12の動作を目的として、部品10,12の重量を変えるようにしてもよい。あるいは、ピストン10および/またはピストンロッド12は、その中に埋め込まれた磁石または磁性体を有し、これにより、磁石または磁性体が外部センサまたは磁気パッケージングと相互作用するように構成されていてもよい。
【0039】
上述したように、電子デバイス14は、第1または第2部品(例えば、ピストン10またはピストンロッド12)に任意の公知の方法により埋め込まれていてもよい。例えば、図10A図11Eを参照すると、ワンステップ成形工程において、より詳細にはワンステップ圧縮成形工程において、型214およびエラストマーシート216を利用する医療部品210の製造方法の様々な実施の形態が示されている。型214は、開放キャビティ215aを有する上部半型215と、開放キャビティ217aを有する下部半型217とを有する。各キャビティ215a,217aは、好ましくは、開放された、加熱された型キャビティ215である。好ましい一実施の形態では、型214は、複数の上部および下部半型215,217と、それぞれに設けられたアレイ配列のキャビティ215a,217aとを有する。
【0040】
エラストマーシート216は、好ましくは、部分的に硬化された段階で、一つ以上のエラストマー材料(すなわち、上述のエラストマー材料のうちの一つ以上)で形成されている。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。他の一実施の形態において、プロセス条件は160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。そうであるから、エラストマーシート216は、基本的にエラストマープリフォームである。エラストマーシート216は、第1面219と、対向する第2面221とを有する。
【0041】
図10A図10Bの実施の形態では、下部半型217の型キャビティ217aの底面は、平坦面223を規定している。平坦面223はまた、下部半型217の内部底面にも相当する。エラストマーシート216は、その中に配置され、または埋め込まれた少なくとも一つの電子デバイス212を有する。より詳細には、電子デバイス212は、エラストマーシート216内に位置しており、これにより、電子デバイス212の露出面または遠位面212aが第2面221と同一面となっている。好ましい一実施の形態では、エラストマーシート216は、型キャビティ215a,217aのアレイに対応するアレイに配置された複数の電子デバイス212を有する。
【0042】
図10A図10Bの実施の形態では、エラストマーシート216は、第2面221の側に、保護膜またはバリア膜224をさらに有する。保護膜224は、第1面226と、対向する第2面228とを有する。保護膜224は、各電子デバイス212の露出面212aを覆うように設けられ、これにより、保護膜224の第1面226が各電子デバイス212の露出面212aに直接接触している。保護膜224は、電子デバイス212の領域のみに設けられていてもよいし、あるいは、エラストマーシート216の第2面221全体を覆うように設けられていてもよいことは理解されるであろう。
【0043】
図10A図10Bの実施の形態による製造方法では、エラストマーシート216は、下部半型217の上方に位置し、これにより、各電子デバイス212の位置がそれぞれの開放された型キャビティ217aの位置に整合する。アセンブルされた位置では、保護膜224の第2面228が平坦面223と接触し、より詳細には、平坦面223と直接接触している。各電子デバイス212は、真空アシストにより、型キャビティ217a内の所定位置に保持されることが好ましい。その後、アセンブリは圧縮成形に供され、エラストマー材料を完全に硬化させる。より詳細には、型214が閉じられて、各上部半型215が対応する各下部半型217を覆う。熱と圧力が加えられることにより、エラストマーシート216のエラストマー材料が流動し、これにより、流動するエラストマー材料を各型キャビティ215a,217aの全領域に、エラストマー材料が硬化するまで強制的に接触させて、医療部品210を形成する。
【0044】
この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0045】
得られた硬化したフォームは、型の各部につき一つの電子デバイス212を有する。得られた各医療部品210は、硬化したエラストマー材料230および保護膜224によって完全にカプセル化された電子デバイス212を有する。保護膜224は、電子デバイス212への電気的または光学的経路を可能にするであろう任意のポリマーまたはセラミック膜であってもよいが、依然として電子デバイス212のカプセル化のためのバリア性を提供してもよい。好ましい一実施の形態では、保護膜224は、フルオロポリマー膜である。好ましくは、フルオロポリマー膜224は、医療部品210の、医薬品と接触するよう構成された面(すなわち、界面または接触面)に設けられる。
【0046】
フルオロポリマーは当技術分野においてよく知られており、それらの詳細な説明は本発明の完全な理解のために必要ではない。例示的なフルオロポリマーには、限定されるものではないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),テトラフルオロエチレン(TFE)のホモポリマーおよびコポリマー,ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA),ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのコポリマー,ポリエチレンテトラフルオロエチレン(PETFE),ポリフッ化ビニル(PVF),フッ化エチレンプロピレンコポリマー(FEP),ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(PECTFE),ポリフッ化ビニリデン(PVDF),ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE),およびそれらの誘導体が含まれる。好ましくは、保護膜224は、FluoroTec(登録商標)で形成されている。
【0047】
図11A図11Eの実施の形態では、各下部半型217のキャビティ217aの底面223は凹んでおり、アセンブルされた位置でエラストマーシート216から離間するようになっている。このようにして、圧縮成形の間、エラストマーシート216のエラストマー材料は、シート216と底面223との間の空間に流れ込むことができ、その結果、電子デバイス212がエラストマー材料によって完全にカプセル化される。そのため、図11A図11Eの実施の形態では、エラストマーシート216は保護膜224を有する必要はない。
【0048】
図11Aの実施の形態では、各下部半型217は、少なくとも一つの突出部232、より好ましくは複数の突出部232を有する。これは、圧縮成形工程の間、電子デバイス212を型キャビティ217a内の所定位置に保持し、例えば電子デバイス212をセンタリングされた状態に保つためである。より詳細には、複数の突出部232が台座218を形成する。台座218の上には、圧縮成形の間、エラストマーシート216、より詳細には電子デバイス212が載っており、電子デバイス212の露出面212aがキャビティ217aの底面223から離間するようになっている。このようにして、圧縮成型の間、電子デバイス212は確実に所定位置に保持され、エラストマー材料は、電子デバイス212と底面223との間の空間に流れ込みうる。これにより、電子デバイス212は、完成した医療部品210内に、エラストマー材料によって完全にカプセル化される。圧縮成形工程の間の台座218とエラストマーシート216との相互作用の結果、完成した医療部品210は、台座218の突出部232の遠位端の位置に対応する位置に複数のくぼみ、または空隙234を有していてもよい。
【0049】
図11Bの実施の形態では、複数の電子デバイス212がエラストマーシート216に埋め込まれており、その結果、デバイス212の対向する遠位面および近位面212a,212bの両方が露出する。半型215,217の開放キャビティ215a,217aは、半型215,217のそれぞれの壁に凹設されている。これにより、圧縮成型の間、エラストマー材料が電子デバイス212の全周にわたって流れ、それにより、電子デバイス212が完成した医療部品210内にエラストマー材料により完全にカプセル化されることを確実にするようになっている。
【0050】
図11Eに示した一変形例において、エラストマーシート216は、型214内に配置される前に凍結温度にさらされる(すなわち、凍結される)。このことは、シート216が、硬化サイクルの一部においてその形状をより良く保持することを可能とし、また、ワンステップ成形工程の間、カプセル化された電子デバイス212の配置における優れた制御を可能にする。そののち、凍結されたエラストマーシート216は、下部半型217の上方に配置され、これにより、各電子デバイス212の位置がそれぞれの開放された型キャビティ217aの位置と整合する。各下部半型217のキャビティ217aの底面は凹んでおり、アセンブルされた位置でエラストマーシート216から離間するようになっている。
【0051】
そののち、第2のエラストマーシート244が、凍結されたエラストマーシート216の上方に配置される。しかしながら、第2のエラストマーシート244は凍結されていない。したがって、成形工程(例えば、圧縮成形)の間、第2のシート244のエラストマー材料は、凍結されたシート216のそれよりも速く流れ、圧縮成形の間の電子デバイス212の位置合わせのより良い制御を可能にする。両エラストマーシート216,244のエラストマー材料は、各開放された型キャビティ215a,217aの空間に流入することができ、これにより、各電子デバイス212は、エラストマー材料により完全にカプセル化されるようになっている。第1および第2のシート216,244は、同じエラストマー材料で形成されていてもよく、あるいは、異なるエラストマー材料で形成されていてもよいことが理解されるであろう。
【0052】
この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0053】
図11Cの実施の形態では、下部半型217は、突出部236を有する。突出部236は、電子デバイス212に形成された対応するくぼみ238に嵌合することにより、圧縮成形の間、電子デバイス212を所定位置に保持する。突出部236は、このように、位置合わせピンである。他の一実施の形態では、突出部236およびくぼみ238には、嵌合ねじが設けられていてもよい。繰り返しになるが、半型215,217の開放キャビティ215a,217aは、半型215,217のそれぞれの壁に凹設されており、これにより、圧縮成形の間、エラストマー材料が電子デバイス212の全周にわたって流れ、それにより、完成した医療部品210内に電子デバイス212がエラストマー材料により完全にカプセル化されていることが確実になる。
【0054】
図11Dは、電子デバイス212が突出部240を有する実施の形態を示す。突出部240は、下部半型217の壁に形成された対応するくぼみ242に嵌合する。電子デバイス212の本体は、図11Bと同様に、エラストマーシート216内に埋め込まれているが、突出部240はシート216から外方に伸びている。他の一実施の形態では、突出部240およびくぼみ242には、嵌合ねじが設けられていてもよい。繰り返しになるが、半型215,217の開放キャビティ215a,217aは、半型215,217のそれぞれの壁に凹設されており、これにより、圧縮成形の間、エラストマー材料が電子デバイス212の全周にわたって流れ、それにより、完成した医療部品210内に電子デバイス212がエラストマー材料により完全にカプセル化されていることが確実になる。
【0055】
図12A図12Hを参照すると、エラストマー管116を利用したワンステップ成形工程の医療部品210の製造方法の一実施の形態が示されている。成形工程は、公知の成形工程(例えば、圧縮成形、射出成形など)のいずれであってもよい。エラストマー管116は、未硬化または部分的に硬化された(すなわち、半硬化)状態の一つ以上のエラストマー材料(すなわち、上述のエラストマー材料のうちの一つ以上)で形成されていることが好ましい。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2であり、約8分間である。
【0056】
エラストマー管116は、基本的にエラストマープリフォームである。エラストマー管116は、全体として円筒形であって中空の内部123を有し、第1端119と、対向する第2端121とを有する。管116の第1端119を含む部分を、以下では管116の第1半分と称し、管116の第2端121を含む部分を、以下では管116の第2半分と称する。
【0057】
未硬化または半硬化エラストマー管116が形成されたのち、一つ以上の電子デバイス12が管116の中空の内部123内に配置される。次いで、様々な工程のうちの一つを行って、電子デバイス12を所定位置に固定するようにしてもよい。例えば、図12Cに示したように、管116の第1半分と第2半分の両方を、エラストマー材料がまだ柔らかく柔軟で粘着性がある間に、クリンプまたはピンチで繋ぎ合わせて、電子デバイス12を所定位置に保持するようにしてもよい。あるいは、図12Dに示したように、押し出されたエラストマーロッドまたはプラグ124を、第1半分および第2半分の中空の内部123に(すなわち、電子デバイス212の両側に)配置して、電子デバイス212を所定位置に固定するようにしてもよい。あるいは、図12Eに示したように、予め形成されたエラストマーシート126、その各々は一つ以上の突起128を有しているのだが、予め形成されたエラストマーシート126が、管116の両端119,121に配置され、これにより、突起128が管116の中空の内部123内に受容され、それによって電子デバイス12を所定位置に固定するようにしてもよい。あるいは、図12Fに示したように、電子デバイス212が既に中空の内部123内に(例えば、そのサイズゆえに)十分に納まっている場合、さらなる工程は不要である。当業者は、図12C図12Fの上記工程の組合せを行ってもよいことを理解するであろう。例えば、図12Cの工程を管116の第1半分に使用し、一方、図12Dの工程を管116の第2半分に使用してもよい。
【0058】
最後に、図12G図12Hに示したように、電子デバイス212が中に固定された未硬化または半硬化エラストマー管116は、型114内に配置され、熱および圧力が加えられて、エラストマー管116のエラストマー材料が流動する。流動するエラストマー材料は、電子デバイス212の中心を維持しながら、あらゆる空隙(すなわち、中空の内部123内)を満たす(図12H参照)。成形工程は、所定の時間、熱および圧力条件下で、エラストマー材料が硬化して医療部品210を形成するまで行われる。
【0059】
型114は、開放キャビティ115aを有する上部半型115と、開放キャビティ117aを有する下部半型117とを有する。各キャビティ115a,117aは、好ましくは、開放された、加熱された型キャビティ115である。好ましい一実施の形態では、型114は、複数の上部および下部半型115,117と、それぞれに設けられたアレイ配列のキャビティ115a,117aとを有する。このように、電子デバイス212がその中に固定された複数の半硬化エラストマー管116は、同時に圧縮成形されて医療部品210を形成してもよい。
【0060】
この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0061】
図13A図13Cを参照すると、未硬化または半硬化エラストマー管116および電子デバイス212のアセンブリを用意するための代替の実施の形態が示されている。具体的には、図13Aを参照すると、所定の時間、熱および圧力条件下で、成形ステップ/工程において、未硬化または半硬化エラストマーシート130が形成されてもよい。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0062】
シート130は、第1端132と、対向する第2端134とを有する、全体的に平坦で平らなシートである。電子デバイス212は、第1端132に近接して、より詳細には第1端132の幾何学的中心に近接して、シート130の平坦面に載置される。そののち、シート130の第1端132は、電子デバイス212をくるみ、引き続き第2端134に向かって巻かれていく。そのようにして、シート130は、電子デバイス212の周囲に巻回され、それにより、図13B図13Cに示したように、管116の中空の内部123の中心内に位置決めされた電子デバイス212を有する未硬化または半硬化エラストマー管116を形成する。次いで、管116および電子デバイス212は、医療部品210を形成するために、図12A図12Hに関して上述した固定および成形工程に供される。
【0063】
この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態では、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0064】
あるいは、図14A図14Cに示したように、複数の管116を同時に形成してもよい。具体的には、複数の電子デバイス212が、離間した間隔で第1端132に近接して半硬化エラストマーシート130の表面に載置されている(図14A参照)。次いで、シート130は、図13Aに関して本明細書に記載されているのと同じようにして、電子デバイス212をくるみ、電子デバイス212に巻回される。次いで、図14B図14Cを参照して、シート130は、電子デバイス212を隔てる間隔で切断され、それにより、複数の半硬化エラストマー管116を形成する。各管116は、その中空の内部123の中心内に位置する電子デバイス212を有する。最後に、各管116および電子デバイス212は、複数の医療部品210を形成するために、上述した時間、熱および圧力条件下で、図12A図12Hに関して上述した固定および成形工程に供される。
【0065】
図15図17を参照すると、ワンステップ成形プロセス(例えば、圧縮成形、射出成形、オーバーモールディングなど)の医療部品210の製造方法のさらなる実施の形態が示されている。具体的には、電子デバイス212は、まず、温度抵抗性で弾力性のある材料で形成されたフォームまたはレセプタクル86内に埋め込まれる。より具体的には、フォーム86は、好ましくは、熱的に安定な材料で形成されている。例えば、フォーム86は、以下の材料で形成されているがそれに限定されるものではない。アルミナまたはケイ酸塩(例えば、石英、磁器、またはガラス)を含むがこれらに限定されないセラミック材料;ステンレス鋼、チタン、アルミニウムおよび/または陽極酸化アルミニウムを含むがこれらに限定されない金属材料;またはポリアミド、フルオロポリマー、もしくはポリアリールエーテルケトン(PAEK)を含むがそれらに限定されないポリマー材料。フルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはガラス充填PTFEを含むがこれらに限定されない。ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含むがこれらに限定されない。一実施の形態において、フォーム86は、熱絶縁用のフォームまたはエアロゲル、または電子デバイス212の電気的隔離用の高温耐性ポリマーなどの絶縁材料を含んでいてもよい。このような材料は、様々な利点を有するであろう。例えば、熱絶縁を提供する場合、電子デバイス212が高温にさらされる時間を最小化するために、低温保存を使用することができる。また、微小電気機械システムまたはショック/加速度センサのような、特に脆弱または感受性の高い電気デバイス212が使用されうるようにするため、機械的に堅牢なフォーム86が好ましい。
【0066】
好ましくは、フォーム86は、形成されるべき医療部品210の所望の大きさおよび形状に対応する大きさおよび形状である。
【0067】
次いで、一実施の形態では、図15に示したように、電子回路212を備えたフォーム86を型に載置し、所定の時間、熱および圧力条件下で、エラストマー材料230をフォーム86上にオーバーモールドして、エラストマー材料230を含む医療部品210を形成する。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0068】
一変形例では、例えば、フォーム86が金属材料で形成されている場合、型は、成形の間のフォーム86の正確な位置決めおよび載置を容易にするために、磁性体(図示せず)を備えていてもよい。
【0069】
他の一実施の形態では、図16に示したように、未硬化または半硬化エラストマー管116、より詳細には、上述のように未硬化または半硬化モノリシックエラストマー管116が形成される。電子回路212を備えたフォーム86が、管116の中空の内部123に挿入される。より詳細には、管116は、フォーム86の外面上に伸張され、フォーム86上に機械的に形成される。続いて、アセンブリは、加熱および加圧され、これにより、管116のエラストマー材料をフォーム86上で硬化させ、フォーム86を収縮包装する。例えば、ブラダータイプの成形工程を用いて、フォーム86の固い本体の周囲に管116のエラストマー材料を熱成形するとともに、密封性のために十分に滑らかな表面を提供してもよい。
【0070】
この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0071】
あるいは、以下のような工程を用いてもよい。この工程では、未硬化または半硬化エラストマー管116のエラストマー材料は、圧縮され、同時に滑らかな面または車輪に巻きつけられ、これにより特定の表面特性を付与する。
【0072】
図16の実施の形態の一変形例において、加熱ステップの間、Oリングなどの密封要素(図示せず)が利用されてもよい。これにより、未硬化または半硬化エラストマー管116のエラストマー材料が、フォーム86上に完全に封着されるようにする。一実施の形態では、管116のエラストマー材料は、フォーム86上に気密に封着される。こうして、電子デバイス212が埋め込まれたフォーム86を形成するために使用された材料に関連する不純物を完全に閉じ込めることにより、追加のバリア性を提供する。
【0073】
一実施の形態では、図17に示したように、エラストマー材料230または未硬化もしくは半硬化エラストマー管116を使用せずに、Oリングなどの複数の密封要素152が利用される。フォーム86は、図15図16のものとほぼ同じである。しかしながら、フォーム86の周囲に配置されているのは、軸方向にほぼ等間隔を空けて、放射状に伸びる円周リング152であり、本発明の前述の実施の形態のエラストマー材料230または未硬化もしくは半硬化エラストマー管116ではない。そののち、アセンブリは、圧縮成形工程に供され、医療部品210を形成する。接合のため必要に応じて圧縮成形が行われる。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0074】
他の一実施の形態(図示せず)では、フォーム86の周囲に配置されているのは、軸方向にほぼ等間隔を空けて、放射状に伸びる複数の円周リング152に囲まれた薄い耐薬品性の被覆である。被覆は、別途成形され、フォーム86に施されてもよいし、あるいは、フォーム86の成形時にフォーム86に直接施され、フォーム86とともに成形されることにより、製剤との接触との親和性を可能としてもよい。被覆は、任意の耐薬品性または不浸透性材料で形成されていてもよい。例えば、フルオロポリマー(上述の例を参照)または封止に必要なエラストマー性を欠く他の不活性プラスチック材料があげられるが、これらに限定されない。例えば、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE),PTFE,ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA),ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などがあげられるが、これらに限定されない。そののち、アセンブリは、上記の圧縮成形工程に供され、この工程において、Oリング152および被覆は、フォーム86とともに完全に硬化されうる。
【0075】
図18A図18Cを参照すると、所定の時間、熱および圧力条件下におけるワンステップ成形工程の医療部品210の製造方法の他の実施の形態が示されている。まず、エラストマー材料を含むエラストマーシート216が形成される。エラストマーシート216は、完全に硬化した状態でもよく、あるいは部分的または半硬化状態でもよい。次いで、エラストマーシート216は、所定の時間、熱および圧力条件下で、任意の公知の成形工程(例えば、圧縮成形、射出成形など)によって、反転形状88(すなわち、裏返し)に成形される。より詳細には、エラストマー材料は、形成されるべき医療部品210の形状と逆の形状に成形される。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0076】
そののち、図18Bに示したように、反転成形アーティクル88は電子デバイス212と接触し、電子デバイス212の本体上で反転され、電子デバイス212の本体をくるみ、これにより電子デバイス212をカプセル化する。そののち、アーティクル88は、必要に応じて形づくられ、伸張されて、医療部品10の所望の形状および形態を達成する。より詳細には、反転成形アーティクル88は、医療部品10の形状に熱成形される。また、図18Cに示したように、最終部品210において、エラストマーのトリムエッジ90は封止され、これにより、従来の成形工程の結果である外部トリムエッジは除去される。この熱成形工程のための時間、熱および圧力は、使用されている特定のエラストマー材料などの様々な要因に依存するであろう。
【0077】
図19A図20Bを参照すると、所定の時間、熱、および圧力条件下におけるブラダー成形工程の医療部品210の製造方法の他の実施の形態が示されている。型214は、図11Eの工程に関して上述したものと同様である。
【0078】
この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0079】
具体的には、図19A図19Cを参照すると、本実施の形態の方法では、未硬化または部分的に硬化されたエラストマーシート130は、一つ以上のディンプルまたは凹部146を含む。各ディンプル146は、電子デバイス12を受容するように構成されている。このようにして、未硬化または部分的に硬化したエラストマーシート130の各ディンプル146に電子デバイス12を挿入することによってプリフォームが形成される。そののち、プリフォームは、型14内に配置される。続いて、空気圧が、型14の片側から空気弁148によって加えられ、エラストマーシート130および電子デバイス12を対向する型キャビティ15aに押し込む(図19A図19B参照)。エラストマー材料は、(例えば、熱成形によって)医療部品210の最終的な形状および寸法に伸張され、そののち、熱を加えることにより固まり、または硬化される。最後に、追加のエラストマー材料150が型214に注入され、医療部品210内の任意の空隙を埋めるようにしてもよい(図10C参照)。後に注入されたエラストマー材料150は、エラストマーシート130の材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0080】
具体的には、図19A図19Cを参照すると、本実施の形態の方法では、未硬化または部分的に硬化されたエラストマーシート130は、一つ以上のディンプルまたは凹部146を含む。各ディンプル146は、電子デバイス12を受容するように構成されている。このようにして、未硬化または部分的に硬化したエラストマーシート130の各ディンプル146に電子デバイス12を挿入することによってプリフォームが形成される。そののち、プリフォームは、型14内に配置される。続いて、空気圧が、型14の片側から空気弁148によって加えられ、エラストマーシート130および電子デバイス12を対向する型キャビティ15aに押し込む(図19A図19B参照)。エラストマー材料は、(例えば、熱成形によって)医療部品210の最終的な形状および寸法に伸張され、そののち、熱を加えることにより固まり、または硬化される。最後に、追加のエラストマー材料150が型214に注入され、医療部品210内の任意の空隙を埋めるようにしてもよい(図19C参照)。後に注入されたエラストマー材料150は、エラストマーシート130の材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0081】
図21A図23を参照すると、所定の時間、熱および圧力条件下における、ワンステップ成形工程の医療部品210の製造方法のもう一つの実施の形態が示されている。具体的には、医療部品210は、任意の所望の形状で、好ましくは従来のワンステップ圧縮成形プロセスによって成形される。しかしながら、任意の公知の成形工程(例えば、インサート成形、射出成形など)を利用してもよいことは理解されるであろう。図21A図21Bでは、医療部品210は、シリンジ、カートリッジまたはバイアル用のピストンとして示されている。
【0082】
この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0083】
次いで、一つ以上の電子デバイス12が、成形された医療部品210内に、任意の公知の技法により挿入または注入されてもよい。これにより、一つ以上の電子デバイス212が医療部品210内に、(幾つかの)所望の位置に埋め込まれる。例えば、図23に示したように、内部に電子デバイス12が配置されたプッシングロッドまたは針13(図22A図22Cに示される構成のいずれかを含むが、これらに限定されない)を用いて、電子デバイス212を医療機器210内に注入してもよい。例えば、(幾つかの)電子デバイス212は、医療部品210に、その遠位面の直下(例えば、光および/または温度測定のために医療機器を介して患者に送達される薬品に接触するように構成された面)またはその横方向の面付近(例えば、外部センサとの容易な通信のため)に埋め込まれてもよい。この方法により、(幾つかの)電子デバイスの位置を、任意の所望の場所に容易に調整することができる。電子デバイス212は、エラストマー自体の弾性によって所定位置に保持される。
【0084】
次いで、一つ以上の電子デバイス12が、成形された医療部品210内に、任意の公知の技法により挿入または注入されてもよい。これにより、一つ以上の電子デバイス212が医療部品210内に、(幾つかの)所望の位置に埋め込まれる。例えば、図23に示したように、内部に電子デバイス12が配置されたプッシングロッドまたは針13(図22A図22Cに示される構成のいずれかを含むが、これらに限定されない)を用いて、電子デバイス212を医療機器210内に注入してもよい。例えば、(幾つかの)電子デバイス212は、医療部品210に、その遠位面の直下(例えば、光および/または温度測定のために医療機器を介して患者に送達される薬品に接触するように構成された面)またはその横方向の面付近(例えば、外部センサとの容易な通信のため)に埋め込まれてもよい。この方法により、(幾つかの)電子デバイス212の位置を、任意の所望の場所に容易に調整することができる。電子デバイス212は、エラストマー自体の弾性によって所定位置に保持される。
【0085】
他の一実施の形態では、図26A図26Cに示したように、前記のプロセス条件下で、医療部品210が、既に一つ以上のキャビティ80を含むように成形されてもよい。一つ以上のキャビティ80の各々は、一つ以上の電子デバイス212を受容するように構成されている。各キャビティ80の入口、特に成形された部品の表面には、電子デバイス212のキャビティ80への挿入を容易にするために、切欠き82が設けられることが好ましい。切欠き82は、任意の公知の形を有していてよい。例えば、切欠き82は、両凸の開口、Bite Valve(商標)、複数のスリット等であってもよい。電子デバイス212がキャビティ80に挿入された後、ピストンロッドも同じ切欠き82を通ってキャビティ80内に挿入されてもよい。
【0086】
あるいは、キャビティ80および切欠き82は、エラストマーが部分的に硬化したフォームでしかないうちに形成されてもよい。そののち、電子デバイス12は、部分的に硬化した本体のキャビティ80内に配置される。そののち、部分的に硬化した本体は、圧縮成形されることにより、エラストマーを硬化させて医療部品10を形成し、切欠き82は圧縮により閉鎖される。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0087】
もう一つの実施の形態では、図25に示したように、医療部品210が、上述のプロセス条件のいずれかの下で成形されたのち、電子デバイス212が、ピストンロッド84を介してその中に挿入され、または埋め込まれてもよい。より詳細には、ピストンロッド84は、棘として形成された第1端84aと、対向する第2端84bとを有する。棘つきの第1端84aは、埋め込まれ、または確実にもしくは永久的に取り付けられた電子デバイス212を有している。そののち、ピストンロッド84は、棘つきの第1端84aから始まって、成形された部品210に挿入される。図26A図26Cを参照して、成形された部品210は、任意的に、上述のようにキャビティ80および切欠き82を有してもよい。
【0088】
そののち、差し込まれている棘84aは、電力伝送および/または電子デバイス212との通信のため、作動ロッド84に取り付けられたままにしておくことができる。無線通信を無くすことは、干渉の可能性を防ぎ、より低損失でより大きな電力伝送を可能にし、信号の改ざん/スプーフィングをより困難にする。刺し込まれている棘は、ステンレススチールまたは射出成形プラスチックなどの公知の材料で作られていてもよい。
【0089】
図27A図27C図28A図28C、および図30A図30Cを参照すると、ツーステップ成形工程の医療部品210の製造方法のさらなる実施の形態が示される。図27A図27C図28A図28C、および図30A図30Cにおいて、医療部品210は、例示の目的のため、ピストンとして描かれるが、本明細書で説明された方法のすべてが、任意の医療部品を形成するために使用することができることが理解されるであろう。
【0090】
図27A図27Cを参照すると、本方法は、エラストマー材料(例えば、熱硬化エラストマーまたは熱可塑性エラストマー)を成形することにより、第1部材すなわちベース部材50を形成することを含む。第1部材50は、形成されるべき医療部品210の形状に対応する任意の適切な形状を有していてもよいことが理解されるであろう。しかしながら、図27A図27Cはピストン210に関するものであるから、第1部材50は概ね円筒形状を有している。好ましくは、第1部材50は、ピストン210の薬剤接触端を規定する。
【0091】
第1部材50は、好ましくは、閉塞されたベース壁52、開放されたトップ端54、およびその間に延びる側壁56を有する。閉鎖されたベース壁52、開放されたトップ端54、および外側の側壁56は、第1部材50の内部58を規定する。内部58は、好ましくは、凹部62を取り囲む内側の側壁60を有する。凹部62は、電子デバイス212の一部分を受容するようなサイズおよび形状とされている。
【0092】
図27A図27Cの実施の形態による医療部品210を製造するために、第1部材50は、まず、任意の公知の成形方法(例えば、圧縮成形、インサート成形、射出成形など)によって、部分的に硬化した状態で形成される。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃以上および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0093】
そののち、図27Bに示したように、電子デバイス12は、第1部材50の凹部62内に入れ子になる。これにより、電子デバイス12は、閉鎖されたベース壁52に載り、または近接する。任意の公知の位置決め機構または本明細書に記載された幾つかの位置決め機構のいずれかを利用して、電子デバイス12を凹部62内の所定位置に固定してもよいことが理解されるであろう。例えば、電子デバイス12および閉鎖されたベース壁52は、電子デバイス12のより強固な配置および位置決めを可能にする目的で、対応する(すなわち、嵌合する)突起(例えば、ねじ付きまたは滑らかなピン)および凹部またはくぼみを有していてもよい。
【0094】
最後に、第2の成形ステップにおいて、図27Cに示したように、さらなるエラストマー材料が、アセンブルされた電子デバイス212および第1部材50上にオーバーモールドされ、硬化して、完成した医療部品210を形成する。医療部品210には、電子デバイス212がエラストマー材料によって完全にカプセル化されている。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0095】
好ましくは、オーバーモールドされたエラストマー材料は、第1部材50を形成するために使用されたエラストマー材料と同じである。しかし、異なるエラストマー材料を使用してもよいことは理解されるであろう。
【0096】
他の一実施の形態では、図28A図28Cおよび図29A図29Bに示したように、オーバーモールド工程に代えて、第2部材66が形成され(例えば、本明細書で説明した所定の時間、熱および圧力条件下で成形され)、第1部材50とアセンブルされて、医療部品210を形成する。より詳細には、第2部材66は、第1部材50を形成するために使用された同じエラストマー材料から成形されることが好ましい。しかし、異なるエラストマー材料を使用してもよいことは理解されるであろう。第2部材66は、好ましくは、閉鎖されたベース壁68、対向する開放された端70、およびそれらの間に延びる側壁72を有する。閉鎖されたベース壁68、開放されたトップ端70、および外側の側壁72は、第2部材66の内側凹部74を規定する。内側凹部74は、好ましくは、電子デバイス212の残りの部分をその中に受容するサイズおよび形状とされている。第2部材66は、医療部品10の所望の形状およびサイズを達成するため、必要に応じて第1部材50の形状およびサイズと相補的な形状およびサイズを有することが好ましい。
【0097】
他の一実施の形態では、図28A図28Cおよび図29A図29Bに示したように、オーバーモールド工程に代えて、第2部材66が形成され(例えば、本明細書で説明した所定の時間、熱および圧力条件下で成形され)、第1部材50とアセンブルされて、医療部品210を形成する。より詳細には、第2部材66は、第1部材50を形成するために使用された同じエラストマー材料から成形されることが好ましい。しかし、異なるエラストマー材料を使用してもよいことは理解されるであろう。第2部材66は、好ましくは、閉鎖されたベース壁68、対向する開放された端70、およびそれらの間に延びる側壁72を有する。閉鎖されたベース壁68、開放されたトップ端70、および外側の側壁72は、第2部材66の内側凹部74を規定する。内側凹部74は、好ましくは、電子デバイス212の残りの部分をその中に受容するサイズおよび形状とされている。第2部材66は、医療部品210の所望の形状およびサイズを達成するため、必要に応じて第1部材50の形状およびサイズと相補的な形状およびサイズを有することが好ましい。
【0098】
28A~図29Bの実施の形態による医療部品210を製造するために、まず、第1部材50および第2部材66が、任意の公知の成形方法により、本明細書に記載された予め定められた時間、熱および圧力条件下で、部分的に硬化した状態で、別々に形成される。これらの成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~70℃および約40~220kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0099】
そののち、電子デバイス212は、第1部材50の凹部62内に入れ子になる。これにより、電子デバイス212は、閉鎖されたベース壁52に載り、または近接する。任意の公知の位置決め機構または本明細書に記載された幾つかの位置決め機構のいずれかを利用して、電子デバイス212を凹部62内の所定位置に固定してもよいことは理解されるであろう。次いで、第2部材66は、型内で第1部材50とアセンブルされる。これにより、開放されたトップ端54,70が、界面76で互いに接触し、電子デバイス212が第1および第2部材50,66の凹部62,74内に受容される。
【0100】
任意的に、図29A図29Bに示したように、第1および第2部材50,66の接合を容易にするために、加熱前に硬化性ガム92の層を界面76に配置してもよい。このようなプロセス、つまり、予め成形された第1および第2部材50,66を利用することは、例えばワンステップオーバーモールド工程で生じうる、エラストマーの粘性流が電子デバイス12を損傷する可能性を回避する。
【0101】
あるいは、他の一実施の形態では、局所硬化プロセスを実施してもよい。より詳細には、第1および第2の部材50,66は、最初に、完全に硬化した状態で成形されてもよい。これらの成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0102】
次いで、電子デバイス212並びに第1および第2の部材50,66は、上述したようにアセンブルされ、界面76において接着または溶着される。任意的には、界面76にはガム層92が設けられていてもよい。接着または溶着は、界面76においてエラストマー材料およびガムの局所的な硬化を起こさせる指向性エネルギー源によって行われる。指向性エネルギー源としては、例えば、超音波溶接、マイクロ波加熱/硬化、およびレーザ加熱/硬化が挙げられるが、これらに限定されない。局所的な硬化工程は、カプセル化された電子デバイス212が極端な条件にさらされることから保護する。この局所的な硬化ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0103】
図30A図30Dを参照すると、ツーステップ成形工程の医療部品210の製造方法の他の実施の形態が示されている。まず、第1部材50は、図27A図29Bに関して本明細書に記載されたように成形される。次いで、第2部材66の本体が、第1部材50上にオーバーモールドされるか(図27A図27Cの工程と同様)、あるいは、第1部材50とは別々に形成されて溶着される(図28A図29Bの工程と同様)。第2部材66の本体は、好ましくは、電子デバイス212を受容するように構成されたポケットまたはキャビティ94と、開口96とを有する。開口96は、例えば第1本体50の薬物接触面に対向する面または横方向の面にある。電子デバイス212は、開口96を通って挿入され、医療部品10内のキャビティ94に埋め込まれる。
【0104】
図31A図31Dは、電子デバイス212を備えた医療部品210の構造および配置の様々な実施の形態を示す。
【0105】
本明細書に開示される実施の形態のいずれにおいても、図32A図32Bに示したように、収縮可能な保持ピンまたは突起98を用いて、成形工程(例えば、圧縮成形、射出成形など、好ましくは射出成形)の間、電子デバイス212を所定位置に固定してもよい。具体的には、電子デバイス212が型214内に設置されると、まず、複数の保持ピン98が電子デバイス212をセンタリングするために使用される。次いで、成形工程が始まり、エラストマー材料230が調心された電子デバイス212を取り囲み始める。エラストマー材料30が、調心された電子デバイス212を十分に取り囲むと(すなわち、電子デバイス212がその中心から容易に外れない程度)、保持ピン98は、型214の方に引き込まれて電子デバイス212から離れる。これにより、エラストマー材料230が電子デバイス212を完全にカプセル化することが可能となる。
【0106】
本明細書に記載された方法のいずれによっても達成されるように、完全にカプセル化された電子デバイス212は、その環境から完全に保護されるという利点を有し、蒸気滅菌可能でありうる。
【0107】
当業者であれば、上記の実施の形態は、その広い発明的概念から離れることなく変更をなしえることが了解されるであろう。ゆえに、この発明は、開示された特定の実施の形態に限定されず、添付の請求の範囲に記載された本発明の範囲内の変形を含むことを意図するものであることが理解される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図12G
図12H
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図22C
図23
図24
図25
図26A
図26B
図26C
図27A
図27B
図27C
図28A
図28B
図28C
図29A
図29B
図30A
図30B
図30C
図30D
図31A
図31B
図31C
図31D
図32A
図32B