(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】X線チューブ
(51)【国際特許分類】
H01J 35/06 20060101AFI20220215BHJP
H01J 35/08 20060101ALI20220215BHJP
H01J 35/16 20060101ALI20220215BHJP
H01J 35/18 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
H01J35/06 E
H01J35/06 H
H01J35/08 B
H01J35/08 E
H01J35/16
H01J35/18
(21)【出願番号】P 2020001959
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2020-10-28
(31)【優先権主張番号】10-2019-0003460
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0127153
(32)【優先日】2019-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】596180076
【氏名又は名称】韓國電子通信研究院
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】218,Gajeong-ro Yuseong-gu Daejeon 34129,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ジン-ウ
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0287673(US,A1)
【文献】特開2012-142129(JP,A)
【文献】特開2012-004060(JP,A)
【文献】特開2001-319608(JP,A)
【文献】特開2006-286264(JP,A)
【文献】特開2016-091601(JP,A)
【文献】特開2016-167398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0080876(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0080106(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/06
H01J 35/08
H01J 35/16
H01J 35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸を中心軸とする中空の柱形状のチャンバーと、
前記チャンバーの下面上のカソード電極と、
前記カソード電極と前記第1軸とが交わる位置に提供されるエミッタと、
前記第1軸を中心軸とする貫通ホール及び前記第1軸に対して傾いたターゲット層を含むアノード電極と、
前記カソード電極及び前記アノード電極の間で前記エミッタを露出させる開口を有するゲート電極と、
前記ゲート電極及び前記アノード電極の間の集束電極と、
前記アノード電極の前記ターゲット層と離隔されるウインドーと、
前記チャンバーの上面上に提供され、前記ウインドーの側面を固定するウインドー電極と、を含み、
前記ウインドー電極は、接地されるX線チューブ。
【請求項2】
前記集束電極は、複数に提供され、
前記集束電極は、各々前記エミッタを露出させる開口を有する請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項3】
前記集束電極及び前記ゲート電極は、側面に提供される突出部を各々含み、
前記突出部は、前記開口を囲み、
前記突出部の厚さは、各々前記集束電極及び前記ゲート電極の厚さより小さい請求項2に記載のX線チューブ。
【請求項4】
前記カソード電極は、前記第1軸と垂直になる平面形状の第1部分及び前記第1部分から前記第1軸と平行である方向に突出された第2部分を含む請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項5】
前記エミッタは、前記カソード電極の前記第2部分の上面上に提供される請求項4に記載のX線チューブ。
【請求項6】
前記カソード電極の前記第1部分と連結される制御回路部をさらに含み、
前記制御回路部は、信号が印加される少なくとも1つ以上のトランジスタを含む請求項4に記載のX線チューブ。
【請求項7】
前記アノード電極は、
前記第1軸と垂直になる平面形状の第1部分と、
前記貫通ホールを囲む中空の柱形状の第2部分と、
前記第2部分の上面の一部分上に提供される第3部分と、をさらに含み、
前記第1部分の中心部に前記貫通ホールの下部開口が提供され、
前記第2部分の中心部に前記貫通ホールの上部開口が提供され、
前記第2部分の上面は、前記第1部分の上面に対して勾配を有し、
前記第3部分の側面部に前記ターゲット層が提供される請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項8】
前記ターゲット層のターゲット面は、前記第3部分の側面部と平行であり、
前記ターゲット面は、前記第1軸に対して勾配を有する請求項7に記載のX線チューブ。
【請求項9】
前記ターゲット層は、タングステン(W)及びモリブデン(Mo)の中で少なくともいずれか1つを含む請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項10】
前記ウインドー電極は、
前記第1軸と垂直になる平面形状の第1部分と、
前記第1部分と前記チャンバーの上面との間の第2部分と、
前記第2部分から前記第1軸と平行である方向に延長される第3部分と、を含み、
前記第1部分は、前記ウインドーを囲み、
前記第3部分は、前記チャンバーの側面と離隔される請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項11】
前記ウインドーの厚さは、前記第1部分の厚さより小さく、
前記第3部分が前記第1軸と平行である方向に延長される長さは、前記第2部分が前記第1軸と平行である方向に延長される長さより大きい請求項10に記載のX線チューブ。
【請求項12】
前記ウインドーは、ベリリウム(Be)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、及びモリブデン(Mo)の中で少なくともいずれか1つを含む請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項13】
前記チャンバーは、酸化アルミニウム(Al
2O
3)を含む請求項1に記載のX線チューブ。
【請求項14】
第1軸を中心軸とする中空の柱形状のチャンバーと、
前記チャンバーの下面上のカソード電極と、
前記カソード電極上に提供され、前記カソード電極の上面と垂直になる方向に電子ビームを放出するエミッタと、
前記電子ビームが通過する第1開口を有するゲート電極と、
前記電子ビームが通過する第2開口を有する第1集束電極と、
前記電子ビームが通過する第3開口を有する第2集束電極と、
前記電子ビームが通過する貫通ホール及び前記電子ビームが衝突してX線が放射されるターゲット層を含むアノード電極と、
前記X線が前記チャンバーの外部に放出されるウインドーと、
前記ウインドーの側面を固定するウインドー電極と、を含み、
前記ゲート電極、前記第1集束電極、及び前記第2集束電極は、各々が、前記第1軸と垂直に延長される第1部分と、前記第1軸と平行に延長される第2部分と、前記第1軸と垂直に延長される第3部分とを含み、
前記ゲート電極は
前記ゲート電極の前記第3部分の側面から前記第1軸に近接する方向に延長されて前記第1開口を囲む第1突出部を含み、前記第1集束電極は
前記第1集束電極の前記第3部分の側面から前記第1軸に近接する方向に延長されて前記第2開口を囲む第2突出部を含み、前記第2集束電極は
前記第2集束電極の前記第3部分の側面から前記第1軸に接近する方向に延長されて前記第3開口を囲む第3突出部を含み、
前記ゲート電極、前記第1集束電極、及び前記第2集束電極は、互いに離隔され、
前記第1乃至第3突出部は、前記ゲート電極、前記第1集束電極、及び前記第2集束電極の各々の
前記第3部分の前記垂直方向の厚さよりも小さく、
前記第2開口の第2幅は、前記第3開口の第3幅より大き
く、
前記ウインドーは、前記ターゲット層と離隔されている、X線チューブ。
【請求項15】
前記カソード電極の上面と垂直になる前記電子ビームの経路上に前記第1乃至第3開口の中心、前記貫通ホールの中心軸及び前記ターゲット層の中心が整列される請求項14に記載のX線チューブ。
【請求項16】
中空の柱形状のチャンバーと、
前記チャンバーの下面上のカソード電極と、
前記カソード電極上に提供され、前記カソード電極の上面と垂直になる方向に電子ビームを放出するエミッタと、
前記電子ビームが通過する第1開口を有するゲート電極と、
前記電子ビームが通過する第2開口を有する第1集束電極と、
前記電子ビームが通過する第3開口を有する第2集束電極と、
前記電子ビームが通過する貫通ホール及び前記電子ビームが衝突してX線が放射されるターゲット層を含むアノード電極と、
前記X線が前記チャンバーの外部に放出されるウインドーと、
前記ウインドーの側面を固定するウインドー電極と、を含み、
前記アノード電極は、前記チャンバーの側面に固定され、
前記アノード電極の一部分の側面部に前記ターゲット層が提供され、
前記ターゲット層のターゲット面は前記カソード電極の上面と垂直になる前記電子ビームの経路に対して勾配を有するX線チューブ。
【請求項17】
前記ウインドーの垂直方向の厚さは、前記ウインドー電極の垂直方向の厚さより小さく、
前記ウインドー電極は、接地される請求項14に記載のX線チューブ。
【請求項18】
中空の柱形状のチャンバーと、
前記チャンバーの下面上のカソード電極と、
前記カソード電極上に提供され、前記カソード電極の上面と垂直になる方向に電子ビームを放出するエミッタと、
前記電子ビームが通過する第1開口を有するゲート電極と、
前記電子ビームが通過する第2開口を有する第1集束電極と、
前記電子ビームが通過する第3開口を有する第2集束電極と、
前記電子ビームが通過する貫通ホール及び前記電子ビームが衝突してX線が放射されるターゲット層を含むアノード電極と、
前記X線が前記チャンバーの外部に放出されるウインドーと、
前記ウインドーの側面を固定するウインドー電極と、を含み、
前記ウインドー電極は、前記チャンバーの上面を覆い、
前記ウインドー電極は、前記チャンバーの内部で前記カソード電極に向かう方向に延長される一部分を含み、
前記一部分は、前記チャンバーの側面と離隔され、
前記一部分の下面は、前記チャンバーの上面より低いレベルに位置するX線チューブ。
【請求項19】
前記ゲート電極、前記第1集束電極、前記第2集束電極、及び前記アノード電極は、各々第1乃至第4電圧源と連結され、
前記第4電圧源は、前記第1乃至第3電圧源より高電圧である請求項14に記載のX線チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線チューブに関り、より詳細には電子ビームを小さいサイズのフォーカルスポットに集束する微小焦点X線チューブ(micro focus X-ray tube)に係る。
【背景技術】
【0002】
X線チューブは真空容器の内部で電子を発生させ、電子をアノード方向に加速させてアノードの金属ターゲットに衝突させることによって、制動放射(Bremsstrahlung)方法にX線を発生させる。この時、アノードとカソードとの間の電圧差が電子を加速する加速電圧として定義され、X線チューブの用度に応じて数kV乃至数百kVの加速電圧に電子を加速する。また、X線チューブはアノードとカソードとの間のゲート電極及び集束電極等をさらに含むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】韓国特許公開公報第10-2013-0116004号明細書
【文献】韓国特許公開公報第10-2016-0123987号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は充分なX線量及び高解像度の映像を得ることができるX線チューブを提供することにある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は以上で言及された課題に制限されなく、言及されないその他の課題は下の記載から該当技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るX線チューブは第1軸を中心軸とする中空の柱形状のチャンバー、前記チャンバーの下面上のカソード電極、前記カソード電極と前記第1軸とが交わる位置に提供されるエミッタ、前記第1軸を中心軸とする貫通ホール及び前記第1軸に対して傾いたターゲット層を含むアノード電極、前記カソード電極及び前記アノード電極の間で前記エミッタを露出させる開口を有するゲート電極、前記ゲート電極及び前記アノード電極の間の集束電極、前記アノード電極の前記ターゲット層と離隔されるウインドー、及び前記チャンバーの上面上に提供され、前記ウインドーの側面を固定するウインドー電極を含み、前記ウインドー電極は接地されることができる。
【0007】
前記集束電極は複数に提供され、前記集束電極は各々前記エミッタを露出させる開口を有することができる。
【0008】
前記集束電極及び前記ゲート電極は側面に提供される突出部を各々含み、前記突出部は前記開口を囲み、前記突出部の厚さは各々前記集束電極及び前記ゲート電極の厚さより小さいことができる。
【0009】
前記カソード電極は前記第1軸と垂直になる平面形状の第1部分及び前記第1部分から前記第1軸と平行である方向に突出された第2部分を含むことができる。
【0010】
前記エミッタは前記カソード電極の前記第2部分の上面上に提供されることができる。
【0011】
前記カソード電極の前記第1部分と連結される制御回路部をさらに含み、前記制御回路部は信号が印加される少なくとも1つ以上のトランジスタを含むことができる。
【0012】
前記アノード電極は、前記第1軸と垂直になる平面形状の第1部分、前記貫通ホールを囲む中空の柱形状の第2部分、及び前記第2部分上面の一部分上に提供される第3部分をさらに含み、前記第1部分の中心部に前記貫通ホールの下部開口が提供され、前記第2部分の中心部に前記貫通ホールの上部開口が提供され、前記第2部分の上面は前記第1部分の上面に対して勾配を有し、前記第3部分の側面部に前記ターゲット層が提供されることができる。
【0013】
前記ターゲット層のターゲット面は前記第3部分の側面部と並べ、前記ターゲット面は前記第1軸に対して勾配を有することができる。
【0014】
前記ターゲット層はタングステン(W)及びモリブデン(Mo)の中で少なくともいずれか1つを含むことができる。
【0015】
前記ウインドー電極は、前記第1軸と垂直になる平面形状の第1部分、前記第1部分と前記チャンバーの上面との間の第2部分、及び前記第2部分から前記第1軸と平行である方向に延長される第3部分を含み、前記第1部分は前記ウインドーを囲み、前記第3部分は前記チャンバーの側面と離隔されることができる。
【0016】
前記ウインドーの厚さは前記第1部分の厚さより小さく、前記第3部分が前記第1軸と平行である方向に延長される長さは前記第2部分が前記第1軸と平行である方向に延長される長さより大きいことができる。
【0017】
前記ウインドーはベリリウム(Be)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、及びモリブデン(Mo)の中で少なくともいずれか1つを含むことができる。
【0018】
前記チャンバー酸化アルミニウム(Al2O3)を含むことができる。
【0019】
また、本発明の実施形態に係るX線チューブは中空の柱形状のチャンバー、前記チャンバーの下面上のカソード電極、前記カソード電極上に提供され、前記カソード電極の上面と垂直になる方向に電子ビームを放出するエミッタ、前記電子ビームが通過する第1開口を有するゲート電極、前記電子ビームが通過する第2開口を有する第1集束電極、前記電子ビームが通過する第3開口を有する第2集束電極、前記電子ビームが通過する貫通ホール及び前記電子ビームが衝突してX線が放射されるターゲット層を含むアノード電極、前記X線が前記チャンバーの外部に放出されるウインドー、及び前記ウインドーの側面を固定するウインドー電極を含み、前記第2開口の第2幅は前記第3開口の第3幅より大きいことができる。
【0020】
前記カソード電極の上面と垂直になる前記電子ビームの経路上に前記第1乃至第3開口の中心、前記貫通ホールの中心軸、及び前記ターゲット層の中心が整列されることができる。
【0021】
前記アノード電極は前記チャンバーの側面に固定され、前記アノード電極の一部分の側面部に前記ターゲット層が提供され、前記ターゲット層のターゲット面は前記カソード電極の上面と垂直になる前記電子ビームの経路に対して勾配を有することができる。
【0022】
前記ウインドーは前記ターゲット層と離隔され、前記ウインドーの垂直方向の厚さは前記ウインドー電極の垂直方向の厚さより小さく、前記ウインドー電極は接地されることができる。
【0023】
前記ウインドー電極は前記チャンバーの上面を覆い、前記ウインドー電極は前記チャンバーの内部で前記カソード電極に向かう方向に延長される一部分を含み、前記一部分は前記チャンバーの側面と離隔され、前記一部分の下面は前記チャンバーの上面より低いレベルに位置することができる。
【0024】
前記ゲート電極、前記第1集束電極及び前記第2集束電極は各々前記第1乃至第3開口を囲む第1乃至第3突出部を含み、前記ゲート電極、前記第1集束電極、及び前記第2集束電極は互いに離隔されることができる。
【0025】
前記ゲート電極、前記第1集束電極、前記第2集束電極、及び前記アノード電極は各々第1乃至第4電圧源と連結され、前記第4電圧源は前記第1乃至第3電圧源より高電圧である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の実施形態に係るX線チューブはウインドーが接地されて被写体とアノード電極との間の距離を最小化することができ、ゲート電極及び集束電極を含んでエミッタから放出される電子ビームを効果的に集束することができる。
【0027】
したがって、本発明の実施形態に係るX線チューブは充分なX線量を有する高解像度の映像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係るX線チューブの構造を示す断面図である。
【
図3A】本発明の実施形態に係るX線チューブのアノード電極を詳細に説明するための拡大斜視図である。
【
図3B】本発明の実施形態に係るX線チューブのアノード電極を詳細に説明するための拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の構成及び効果を十分に理解するために、添付した図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳細に説明する。
【0030】
本発明は以下で開示される実施形態に限定されることではなく、様々な形態に具現されることができ、多様な修正及び変更を加えることができる。単なる、本実施形態の説明を通じて本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。添付された図面で構成要素は説明の便宜のためにそのサイズが実際より拡大して示したことであり、各構成要素の比率は誇張されるか、或いは縮小されることができる。
【0031】
本明細書で使用された用語は実施形態を説明するためのものであり、本発明を制限しようとすることではない。また、本明細書で使用される用語は異なりに定義されない限り、該当技術分野で通常の知識を有する者に通常的に公知された意味として解釈されることができる。
【0032】
本明細書で、単数形は文句で特別に言及しない限り、複数形も含む。明細書で使用される‘含む(comprises)’及び/又は‘含む(comprising)’は言及された構成要素、段階、動作、及び/又は素子は1つ以上の他の構成要素、段階、動作、及び/又は素子の存在又は追加を排除しない。
【0033】
本明細書である層が他の層‘上に’にあると言及される場合に、それは他の層の上面に直接形成されるか、或いはそれらの間に第3の層が介在されてもよい。
【0034】
本明細書で第1、第2等の用語が多様な領域、層等を記述するために使用されたが、これらの領域、層がこのような用語によって限定されてはならない。これらの用語は単なるある所定領域又は層を他の領域又は層と区別させるために使用されただけである。したがって、いずれか一実施形態で第1部分として言及された部分が他の実施形態では第2部分に言及されることもあり得る。ここに説明され、例示される実施形態はその相補的な実施形態も含む。明細書の全体に亘って同一の参照番号で表示された部分は同一の構成要素を示す。
【0035】
以下、
図1乃至
図4を参照して本発明に係るX線チューブの実施形態に対して詳細に説明する。
【0036】
図1は本発明の実施形態に係るX線チューブの構造を示す断面図である。
【0037】
図1を参照すれば、本発明の実施形態に係るX線チューブはカソード電極110、エミッタ111、ゲート電極120、第1及び第2集束電極130、140、アノード電極150、ウインドー電極160、ウインドー167、及びチャンバー170を含むことができる。
【0038】
カソード電極110はチャンバー170の下面上に提供されることができる。カソード電極110はチャンバー170の下面を覆う第1部分110a及び第1部分110aから突出された第2部分110bを含むことができる。第1部分110aの上面は第1軸AX1と垂直に交わることができる。第1部分110aは制御回路部CCと電気的に連結されることができる。制御回路部CCは少なくとも1つ以上のトランジスタを含むことができる。一例として、制御回路部CCは第1トランジスタTR1及び第2トランジスタTR2を含む。第1部分110aと第1及び第2トランジスタTR1、TR2は互いに直列に連結されることができる。第1及び第2トランジスタTR1、TR2は、一例として、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor、MOSFET)である。第1及び第2トランジスタTR1、TR2のゲート(Gate)を通じて各々第1信号S1及び第2信号S2が印加されることができる。第1信号S1及び第2信号S2は約10V以下の電圧を有することができる。但し、図示されたことと異なりに、第2トランジスタTR2は提供されなくともよい。第2部分110bは第1軸AX1と並べに延長されることができる。一例として、第2部分110bは第1軸AX1を中心軸とする柱形状である。
【0039】
カソード電極110の第2部分110b上にエミッタ111が提供されることができる。一例として、エミッタ111はカソード電極110の第2部分110bと第1軸AX1が交わる位置に提供されることができる。エミッタ111はカソード電極110の上面と垂直になる方向に電子ビームを放出することができる。電子ビームの放出方向は第1軸AX1と平行であることができる。
【0040】
ゲート電極120、第1集束電極130、及び第2集束電極140は各々チャンバー170の側面に固定されることができる。ゲート電極120、第1集束電極130、及び第2集束電極140は各々第1突出部121、第2突出部131、及び第3突出部141を含むことができる。第1乃至第3開口OP1、OP2、OP3は各々第1乃至第3突出部121、131、141で囲まれた位置に提供されることができる。第1乃至第3開口OP1、OP2、OP3はエミッタ111を露出させることができる。ゲート電極120、第1集束電極130、及び第2集束電極140は各々第1乃至第3電圧源V1、V2、V3と電気的に連結されることができる。第1乃至第3電圧源V1、V2、V3は各々ゲート電極120、第1集束電極130、及び第2集束電極140の電位を制御することができる。ゲート電極120、第1集束電極130、及び第2集束電極140の電位に応じて、電子ビームが放出されるか否か及び電子ビームの経路が制御されることができる。ゲート電極120、第1集束電極130、及び第2集束電極140に対して
図4を参照して詳細に後述する。
【0041】
アノード電極150はカソード電極110、ゲート電極120、第1及び第2集束電極130、140と離隔されることができる。アノード電極150はチャンバー170の側面に固定されることができる。アノード電極150は第1部分151、第2部分153、第3部分155、ターゲット層TL、及び貫通ホールPHを含むことができる。アノード電極150の第1部分151は第4電圧源V4と電気的に連結されることができる。第4電圧源V4はアノード電極150の電位を制御することができる。第4電圧源V4によって制御されるアノード電極150の電位はカソード電極110の電位より高い。また、第4電圧源V4は第1乃至第3電圧源V1、V2、V3より高電圧である。したがって、カソード電極110のエミッタ111から放出された電子ビームはアノード電極150に到達する時まで電位差によって加速されることができる。貫通ホールPHは第1軸AX1を中心軸とする空いた空間である。ターゲット層TLの中心は第1乃至第3開口OP1、OP2、OP3の中心及び貫通ホールPHの中心軸と整列されることができる。エミッタ111から放出された電子ビームは第1乃至第3開口OP1、OP2、OP3の中心及び貫通ホールPHの中心軸を通過してターゲット層TLの中心に到達する経路を進行することができる。
【0042】
ウインドー電極160及びウインドー167がチャンバー170の上面上に提供されることができる。ウインドー電極160は第1部分161、第2部分163及び第3部分165を含むことができる。ウインドー電極160の第1部分161はウインドー167を固定することができる。ウインドー167はアノード電極150のターゲット層TLから放射されるX線200を通過させることができる。ウインドー電極160は接地配線GLを通じて接地されることができる。アノード電極150及びウインドー電極160の構造に対して
図2、
図3A、及び
図3Bを参照して詳細に後述する。
【0043】
チャンバー170は第1軸AX1を中心軸とする中空の柱形状である。チャンバー170は絶縁物質を含むことができる。一例として、チャンバー170は酸化アルミニウム(Al2O3)を含むことができる。チャンバー170はカソード電極110、ゲート電極120、第1及び第2集束電極130、140、及びアノード電極150を囲むことができる。チャンバー170の下面はカソード電極110で覆われることができる。また、チャンバー170の上面はウインドー167及びウインドー電極160で覆われることができる。チャンバー170の内部は高真空状態である。チャンバー170内部の高真空状態が維持されることによって、エミッタ111から放出された電子ビームが散乱されなく、アノード電極150のターゲット層TLまで第1軸AX1に沿って進行することができる。
【0044】
デテクタ210及び被写体220はウインドー167から放射されるX線200の経路上に提供されることができる。被写体220はウインドー167とデテクタ210との間に提供されることができる。被写体220はウインドー167及びデテクタ210と離隔されることができる。デテクタ210が被写体220から離隔されることによって、被写体220を通過したX線映像が拡大されることができる。被写体220を通過したX線映像を分析して被写体220を破壊しなく、被写体220内部の微細構造を精密に検査することができる。また、ウインドー167が接地配線GLを通じて接地されることによって、デテクタ210及び被写体220とウインドー167との間の距離が最小化されることができる。また、被写体220とアノード電極150との間の距離が最小化されることができる。デテクタ210及び被写体220とウインドー167の間の距離及び被写体220とアノード電極150との間の距離が最小化されることによって、本発明の実施形態に係るX線チューブは充分なX線量及び高解像度の映像を得ることができる。
【0045】
図2は
図1のA部分を拡大した断面図である。
図3Aは本発明の実施形態に係るX線チューブのアノード電極を詳細に説明するための拡大斜視図である。
図3Bは本発明の実施形態に係るX線チューブのアノード電極の一部分を詳細に説明するための拡大斜視図である。
【0046】
図2、
図3A、及び
図3Bを参照すれば、アノード電極150は第1部分151、第2部分153、第3部分155、ターゲット層TL、及び貫通ホールPHを含むことができる。
【0047】
アノード電極150の第1部分151は第1軸AX1と垂直になる平面形状である。第1部分151はチャンバー170の側面に固定されることができる。第1部分151の中心部に貫通ホールPHの下部開口PHbが提供されることができる。貫通ホールPHの下部開口PHbは上部に行くほど、幅が狭くなる。
【0048】
アノード電極150の第2部分153は貫通ホールPHを囲む中空の柱形状である。第2部分153は第1部分151から貫通ホールPHの側面に沿って垂直に延長されることができる。第2部分153の上面は第1部分151の上面に対して勾配を有することができる。即ち、第2部分153の上面は位置に応じて第1部分151からの高さが異なることができる。第2部分153の上面の中心部に貫通ホールPHの上部開口PHtが提供されることができる。貫通ホールPHの上部開口PHtは第2部分153の上面と同様に第1部分151の上面に対して勾配を有することができる。
【0049】
アノード電極150の第3部分155は第2部分153の上面の一部分に提供されることができる。第3部分155と接する第2部分153の上面の一部分は第1部分151からの高さが最も高い一部分である。第3部分155の側面部155sは第2軸AX2と平行である面である。第2軸AX2は第1軸AX1と第1角度θをなすことができる。第3部分155の側面部155s上にターゲット層TLが提供されることができる。例えば、ターゲット層TLはタングステン(W)及びモリブデン(Mo)の中で少なくともいずれか1つを含むことができる。ターゲット層TLのターゲット面TLsは第2軸AX2と平行である面である。第2軸AX2はターゲット層TLのターゲット面TLs上で延長されることができる。即ち、ターゲット層TLのターゲット面TLsは第3部分155の側面部155sと平行である。第1軸AX1及び第2軸AX2はターゲット層TLのターゲット面TLsの中心と交わる。第1軸AX1及び第2軸AX2が交わるターゲット面TLsの中心周辺にフォーカルスポットFSが形成されることができる。フォーカルスポットFSは集束された電子ビームがターゲット面TLsと交わる地点である。
図3A及び
図3Bのように、フォーカルスポットFSは第2軸AX2を中心軸とする楕円形状である。電子ビームがフォーカルスポットFSに衝突することによって、ターゲット層TLからX線200が放射されることができる。X線200は第2軸AX2に対して傾いた方向に放射されることができる。
【0050】
ウインドー電極160は第1部分161、第2部分163、及び第3部分165を含むことができる。
【0051】
ウインドー電極160の第1部分161は第1軸AX1と垂直になる平面形状である。第1部分161の一部にウインドー開口WOが提供されることができる。ウインドー開口WOの内部にウインドー167が提供されることができる。第1部分161はウインドー167を囲むことができる。即ち、第1部分161はウインドー167の側面を固定することができる。ウインドー167はアノード電極150のターゲット層TLと離隔されることができる。ウインドー167の垂直方向の厚さはウインドー電極160の第1部分161の垂直方向の厚さより小さいことができる。以下で、垂直方向は第1軸AX1と平行である方向である。ウインドー167は金属を含むことができる。例えば、ウインドー167はベリリウム(Be)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、及びモリブデン(Mo)の中で少なくともいずれか1つを含むことができる。ウインドー167を通じてターゲット層TLから放射されるX線200がチャンバー170の外部に放出されることができる。
【0052】
ウインドー電極160の第2部分163は第1部分161からチャンバー170の上面に延長されることができる。第2部分163の水平方向の厚さはチャンバー170の側面の水平方向の厚さより大きいことができる。以下で、水平方向は第1軸AX1と垂直になる平面上の一方向である。第2部分163の下面はチャンバー170の上面と共面をなすことができる。
【0053】
ウインドー電極160の第3部分165は第2部分163から第1軸AX1と平行である方向に延長されることができる。一例として、第3部分165が第1軸AX1と平行である方向に延長される長さは第2部分163が第1軸AX1と平行である方向に延長される長さより大きいことができる。第3部分165はチャンバー170の側面と離隔されることができる。第3部分165の下面はチャンバー170の上面及び第2部分163の下面より低いレベルに位置することができる。第3部分165が無い場合、ウインドー電極160とチャンバー170の上面が接する部分に電界が集中され、電荷が蓄積されるやすいので、チャンバー170の絶縁特性が低下されることができる。即ち、チャンバー170の側面と離隔されて第1軸AX1と並べに延長される第3部分165はチャンバー170の絶縁特性低下を防止することができる。
【0054】
【0055】
図4を参照すれば、ゲート電極120、第1集束電極130、及び第2集束電極140がチャンバー170の側面に提供されることができる。但し、図示されたことと異なりに、集束電極が一つのみが提供されるか、或いは3つ以上が提供されることができる。
【0056】
ゲート電極120、第1集束電極130、及び第2集束電極140は各々第1軸AXと垂直に延長される部分及び第1軸AXと平行に延長される部分を含むことができる。ゲート電極120、第1集束電極130、及び第2集束電極140の形状は実質的に類似であることができる。
【0057】
ゲート電極120は第1軸AX1と垂直に延長される第1部分120a及び第3部分120cと第1軸AX1と平行に延長される第2部分120bを含むことができる。第1部分120aはチャンバー170の側面に固定されることができる。第1部分120aはチャンバー170の側面から第1軸AX1に近接する方向に延長されることができる。第2部分120bは第1部分120aの一端部からカソード電極110で遠くなる方向に延長されることができる。第2部分120bと接する第1部分120aの一端部はチャンバー170と接しなくともよい。第3部分120cは第2部分120bから第1軸AX1に近接する方向に延長されることができる。但し、図示されたことと異なりに、ゲート電極120はチャンバー170の側面から第1軸AX1と垂直に延長される平面形状であってもよい。ゲート電極120は第3部分120cの側面に提供される第1突出部121をさらに含むことができる。第1突出部121は第3部分120cの側面から第1軸AX1に近接する方向に延長されることができる。第1突出部121の垂直方向の厚さは第3部分120cの垂直方向の厚さより小さいことができる。第3部分120cの厚さより第1突出部121の厚さが小さいことによって、電子ビーム集束効率がより増大されることができる。また、第1開口OP1は第1突出部121で囲まれた空間である。第1開口OP1はエミッタ111を露出させることができる。第1開口OP1の第1幅D1はエミッタ111の水平方向の幅より大きいことができる。以上で、ゲート電極120の形状に対して叙述した内容は第1集束電極130及び第2集束電極140の形状に対しても実質的に同様に成立することができる。
【0058】
以下で、ゲート電極120、第1集束電極130及び第2集束電極140の位置関係及び相違点を説明する。
【0059】
ゲート電極120、第1集束電極130、及び第2集束電極140は互いに離隔されることができる。即ち、ゲート電極120、第1集束電極130、及び第2集束電極140は互いに電気的に分離されることができる。また、ゲート電極120はカソード電極110と離隔されることができ、第2集束電極140はアノード電極150と離隔されることができる。
【0060】
ゲート電極120の第3部分120cの側面は第1集束電極130の第3部分130cの側面より第1軸AX1と近い。また、第1集束電極130の第3部分130cの側面は第2集束電極140の第3部分140cの側面より第1軸AX1と近い。第1乃至第3開口OP1、OP2、OP3はゲート電極120、第1集束電極130、及び第2集束電極140の第1乃至第3突出部121、131、141で囲まれた空間に各々提供されることができる。第1乃至第3開口OP1、OP2、OP3はエミッタ111を露出させることができる。したがって、エミッタ111から放出される電子ビームは第1軸AX1に沿って進行することができる。この時、第2開口OP2の第2幅D2は第3開口OP3の第3幅D3より大きい。したがって、第2開口OP2を通過した電子ビームは第3開口OP3を経てさらに集束されることができる。
【0061】
以上、添付された図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更しなくとも、他の具体的な形態に実施されることができることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施形態はすべての面で例示的なことであり、限定的ではないことと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0062】
110 カソード電極
120 ゲート電極
130 第1集束電極
140 第2集束電極
150 アノード電極
160 ウインドー電極
170 チャンバー
210 デテクタ
220 被写体
PH 貫通ホール
TL ターゲット層